発光装置、電子機器および補正値の決定方法
【課題】発光素子の特性を精緻に反映した補正値を発光素子に流れる電流に応じて決定する。
【解決手段】単位回路Uは、給電線17から供給される電流IELに応じて発光する発光素子Eと電流IELをゲートの電圧に応じて制御する駆動トランジスタTdrとを含む。電圧制御部52は、給電線17の電源電圧VELを駆動期間にて電圧値V1に設定して設定期間にて電圧値V2に設定する。電圧値V1は駆動トランジスタTdrを飽和領域にて動作させる電圧であり、電圧値V2は非飽和領域にて動作させる電圧である。電流測定部53は、設定期間にて給電線17から発光素子Eに流れる電流値Qを測定する。データ生成部54および補正値決定部421は、電流値Qに応じて補正値Aを決定する。駆動期間においては、階調データG2と補正値Aとに応じた電圧が駆動トランジスタTdrのゲートに印加されることで各発光素子Eが駆動される。
【解決手段】単位回路Uは、給電線17から供給される電流IELに応じて発光する発光素子Eと電流IELをゲートの電圧に応じて制御する駆動トランジスタTdrとを含む。電圧制御部52は、給電線17の電源電圧VELを駆動期間にて電圧値V1に設定して設定期間にて電圧値V2に設定する。電圧値V1は駆動トランジスタTdrを飽和領域にて動作させる電圧であり、電圧値V2は非飽和領域にて動作させる電圧である。電流測定部53は、設定期間にて給電線17から発光素子Eに流れる電流値Qを測定する。データ生成部54および補正値決定部421は、電流値Qに応じて補正値Aを決定する。駆動期間においては、階調データG2と補正値Aとに応じた電圧が駆動トランジスタTdrのゲートに印加されることで各発光素子Eが駆動される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード素子などの発光素子の輝度(光量)を補正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子の制御のためにトランジスタ(以下「駆動トランジスタ」という)を利用した発光装置が従来から提案されている。駆動トランジスタは、例えば電源線と発光素子との間に介在する。電源線から発光素子に供給される電流は、駆動トランジスタのゲートの電圧に応じて制御される。
【0003】
ところで、発光素子の電圧−電流特性(発光素子に印加される電圧と発光素子に流れる電流との関係)や電流−輝度特性(発光素子に流れる電流と発光素子の輝度との関係)といった様々な特性には初期的または経時的に誤差が発生する場合がある。この誤差の影響を低減するために各発光素子の輝度を補正する技術が従来から提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、駆動トランジスタを導通状態としたときに各発光素子に流れる電流を測定し、この測定の結果に基づいて各発光素子の補正値を決定する技術が開示されている。発光装置の実際の使用時には、発光素子の階調(輝度)を指定する階調データと予め決定された補正値とに応じた電圧が駆動トランジスタのゲートに供給される。
【特許文献1】特開2002−278513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術のもとで補正値の決定に際して測定される電流は、実際には駆動トランジスタのゲートの電圧に応じて支配的に決定され、各発光素子の特性(特に電圧−電流特性)がこの電流に与える影響は僅かである。したがって、以上の技術においては発光素子の特性の誤差を高い感度で検出することができず、各発光素子の特性を高精度に反映した補正の実現が困難であるという問題があった。このような事情に鑑みて、本発明は、発光素子の特性を精緻に反映した補正値を発光素子に流れる電流に応じて決定するという課題の解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明に係る発光装置は、給電線に供給される電圧を第1期間(例えば以下の各形態における駆動期間)にて第1電圧(例えば各形態における電圧値V1)に制御するとともに第2期間(例えば各形態における設定期間)にて第1電圧よりも低い第2電圧(例えば各形態における電圧値V2)に設定する電圧制御手段(例えば図2の電圧制御部52)と、給電線を経由して供給される電流に応じて発光する発光素子と、給電線を経由して発光素子に供給される電流の経路上に配置されて当該電流をゲートの電圧に応じて制御する駆動トランジスタと、第2期間にて給電線を経由して発光素子に流れる電流を測定する電流測定手段(例えば図2の電流測定部53)と、電流測定手段が測定した電流に応じて補正値を決定する補正値決定手段(例えば図2のデータ生成部54や補正値決定部421)と、階調データと補正値決定手段が決定した補正値とに応じた電圧を第1期間にて駆動トランジスタのゲートに供給する駆動手段(例えばデータ線駆動回路25)とを具備する。
【0007】
以上の構成においては、補正値の決定の基礎となる電流値を電流測定手段が測定するときに、給電線の電圧が第1期間(すなわち発光素子の輝度が補正値に応じて補正される期間)の第1電圧よりも低い第2電圧に設定される。したがって、電流測定手段が測定する電流には発光素子の電圧−電流特性(以下「IV特性」という)が顕著に影響するから、発光素子の特性を精緻に反映した補正値を決定することが可能となる。
【0008】
本発明の好適な態様において、第1電圧は、駆動トランジスタを飽和領域にて動作させる電圧であり、第2電圧は、駆動トランジスタを非飽和領域(線形領域)にて動作させる電圧である。この態様によれば、第1期間にて駆動トランジスタが飽和領域にて動作するから、発光素子に供給される電流が駆動トランジスタのゲートの電圧に応じて高精度に制御される。一方、補正値を決定する第2期間においては駆動トランジスタが非飽和領域にて動作するから、電流測定手段が測定する電流に発光素子の特性(特にIV特性)を顕著に反映させることが可能となる。
【0009】
なお、本発明においては、複数の発光素子について共通の補正値が決定される構成(例えば後述する第1実施形態)が採用される。ただし、発光素子ごとの特性の相違を補正するためには発光素子ごとに個別に補正値を決定する構成が好適である。この構成においては、例えばひとつの発光素子に流れる電流を測定した結果に応じて補正値が決定される。ただし、ひとつの発光素子に流れる電流は極めて微弱であるから、これを検出するためには高性能な電流検出手段が必要となって発光装置の製造コストが嵩むという問題がある。
そこで、本発明の好適な態様に係る発光装置は、各々が発光素子と駆動トランジスタとを含む複数の単位回路を含み、電流測定手段は、複数の発光素子を区分した素子群(例えば図7の領域B0に属する発光素子Eの集合)の各々について、当該素子群に属する所定数の発光素子(例えば図7の領域B1に属する複数の発光素子E)に流れる電流を測定し、補正値決定手段は、電流測定手段が測定した各電流に応じて素子群ごとに補正値(例えば図7の部分(b)に白丸で示された補正値)を決定し、各補正値の補間によって各発光素子の補正値(例えば図7の部分(b)に黒丸で示された補正値)を決定する。なお、以上の態様の具体例は第2実施形態として後述される。
この態様によれば、所定数の発光素子に流れる電流を測定した結果に応じた各素子群の補正値を補間することで各発光素子の補正値が決定される。したがって、ひとつの発光素子に流れる微弱な電流を検出するような性能は電流測定手段に要求されない。したがって、発光素子の製造コストを低減しながら各発光素子の補正値を決定できるという利点がある。
【0010】
また、発光素子の特性は温度によっても変化する。そこで、本発明の好適な態様においては、当該発光装置の周囲の温度を測定する温度測定手段がさらに配置され、補正値決定手段は、電流測定手段が測定した電流と温度測定手段が測定した温度とに応じて補正値を決定する。この態様によれば、発光素子の温度に応じた最適な補正を実現することが可能である。以上の態様の具体例は第4実施形態として後述される。
【0011】
本発明に係る発光装置は各種の電子機器に利用される。この電子機器の典型例は、発光装置を表示装置として利用した機器である。この種の電子機器としては、パーソナルコンピュータや携帯電話機などがある。もっとも、本発明に係る発光装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光線の照射によって感光体ドラムなどの像担持体に潜像を形成するための露光装置(露光ヘッド)、液晶装置の背面側に配置されてこれを照明する装置(バックライト)、あるいは、スキャナなどの画像読取装置に搭載されて原稿を照明する装置など各種の照明装置など、様々な用途に本発明の発光装置を適用することができる。
【0012】
本発明は、発光素子の輝度の補正値を決定する方法としても特定される。本発明に係る方法が利用される発光装置は、給電線を経由して供給される電流に応じて発光する発光素子と電流の経路上に配置された駆動トランジスタとを具備し、給電線に第1電圧が供給される期間にて駆動トランジスタのゲートを階調データと補正値とに応じた電圧に設定することで発光素子が制御される装置である。この補正値の決定方法は、給電線を第1電圧よりも低い第2電圧に設定する電圧制御過程と、駆動トランジスタを導通状態に制御することで、電圧制御過程にて第2電圧に設定した給電線を経由して発光素子に電流を流す電流供給過程と、電流供給過程にて発光素子に流れた電流を測定する電流測定過程と、電流測定過程にて測定した電流に応じて補正値を決定する補正値決定過程とを含む。以上の方法によれば、本発明に係る発光装置と同様の理由により、発光素子の特性を精緻に反映した補正値を発光素子に流れる電流に応じて決定することが可能となる。
【0013】
各々が発光素子と駆動トランジスタとを含む複数の単位回路を具備する発光装置については、電流測定過程においては、複数の発光素子を区分した複数の素子群の各々について、当該素子群に属する所定数の発光素子に流れる電流を測定し、補正値決定過程においては、電流測定過程にて測定した各電流に応じて素子群ごとに補正値を決定し、各補正値の補間によって各発光素子の補正値を決定することが望ましい。この方法によれば、発光素子の電流の測定に要求される精度を抑制しながら各発光素子について補正値を決定することが可能である。なお、この態様の具体例は第2実施形態として後述される。
【0014】
本発明に係る方法の好適な態様においては、当該発光装置の周囲の温度を測定する温度測定過程が実行され、補正値決定過程においては、電流測定過程にて測定した電流と温度測定過程にて測定した温度とに応じて補正値を決定する。この態様によれば、発光素子の温度に応じた最適な補正を実現することが可能である。以上の態様の具体例は第4実施形態として後述される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<A:第1実施形態>
図1は、画像を表示する手段として各種の電子機器に使用される発光装置の具体的な形態を示すブロック図である。同図に示すように、発光装置Dは、画像を表示する表示パネル10と、発光装置Dの各部を制御する制御回路40と、電源電圧VELおよび接地電圧Gndを生成して表示パネル10に供給する電源回路50とを具備する。
【0016】
表示パネル10は、複数の単位回路(画素回路)Uが配列された素子アレイ部11と、制御回路40による制御のもとに各単位回路Uを制御する走査線駆動回路22、発光制御回路23およびデータ線駆動回路25とを具備する。各単位回路Uは、電気エネルギの供給によって発光する発光素子Eを含む。各発光素子Eは、複数の発光色(赤色・緑色・青色)の何れかに発光する。赤色・緑色・青色に発光する3個の発光素子Eによって、画像の最小の単位である画素が構成される。
【0017】
素子アレイ部11には、X方向に延在するm本の走査線12と、各走査線12に対をなしてX方向に延在するm本の発光制御線13と、X方向に直交するY方向に延在するn本のデータ線15とが形成される(mおよびnの各々は2以上の自然数)。各単位回路Uは、走査線12および発光制御線13の対とデータ線15との各交差に対応した位置に配置される。したがって、これらの単位回路Uは、縦m行×横n列のマトリクス状に配列する。また、素子アレイ部11には、電源回路50から各単位回路Uに至る給電線17が形成される。電源回路50から出力された電源電圧VELは給電線17を経由して各単位回路Uに供給される。
【0018】
制御回路40は、クロック信号や同期信号など各種の制御信号の供給によって発光装置Dの各部の動作のタイミングを規定する。本実施形態の制御回路40は、階調データG1の補正によって階調データG2を生成する補正回路42を含む。階調データG1は、各発光素子Eの階調(輝度)を指定するデータであり、発光装置Dが搭載される電子機器のCPUなど各種の上位装置から補正回路42に対してシリアルに供給される。
【0019】
発光装置Dが動作する期間は、設定期間と駆動期間とに区分される。設定期間は、補正回路42による補正に適用される数値(以下「補正値」という)を各発光素子Eの特性に応じて決定するための期間である。駆動期間は、設定期間にて決定された補正値と上位装置から供給される階調データG1とに応じて各発光素子Eを駆動する期間(補正回路42が生成した階調データG2に応じて各単位回路Uの発光素子Eを駆動する期間)である。換言すると、駆動期間は、上位装置によって指定された画像が素子アレイ部11に実際に表示される期間である。
【0020】
本実施形態における設定期間は、発光装置Dの電源が投入された直後の期間であり、駆動期間は設定期間の経過後の期間である。制御回路40は、設定期間および駆動期間の何れかを指定する制御信号Sc(例えば設定期間と駆動期間とで論理レベルが変化する信号)を電源回路50に出力する。なお、設定期間の時機や回数は任意である。例えば、補正値を決定する動作が複数回にわたって周期的に(例えば所定数のフレーム期間ごとに)実行される構成としてもよい。
【0021】
走査線駆動回路22は、m本の走査線12の各々を選択するための走査信号Y1〜Ymを生成して各走査線12に出力する。駆動期間において走査信号Y1〜Ymの各々は順番にハイレベルに遷移する。すなわち、第i行目(iは1≦i≦mを満たす整数)の走査線12に出力される走査信号Yiは、フレーム期間のうち第i番目の水平走査期間にてハイレベルとなり(すなわち第i行目の走査線12が選択され)、それ以外の期間にてローレベルを維持する。
【0022】
発光制御回路23は、各単位回路Uの発光素子Eが実際に発光する期間を規定する発光制御信号C1〜Cmを生成して各発光制御線13に出力する。駆動期間において、第i行目の発光制御線13に供給される発光制御信号Ciは、走査信号Yiがハイレベルとなる水平走査期間にてローレベルに遷移し、それ以外の期間にてハイレベルを維持する。したがって、走査信号Yiの論理レベルを反転した信号が発光制御信号Ciとして利用される。なお、図1においては発光制御回路23と走査線駆動回路22とが別個の回路として図示されているが、発光制御回路23と走査線駆動回路22とが単一のICチップに搭載された構成も採用される。
【0023】
データ線駆動回路25は、各データ線15にデータ信号X1〜Xnを出力する。データ信号X1〜Xnは、各単位回路Uの発光素子Eの輝度を指定する電圧信号である。駆動期間のうち走査信号Yiがハイレベルを維持する水平走査期間において、第j列目(jは1≦j≦nを満たす整数)のデータ線15に供給されるデータ信号Xjは、第i行に属する第j列目の単位回路Uの発光素子Eに指定された輝度に応じた電圧Vdataとなる。各発光素子Eの輝度(データ信号Xjの電圧Vdata)は、制御回路40からデータ線駆動回路25に供給される階調データG2によって指定される。
【0024】
図2は、電源回路50および補正回路42の具体的な構成を示すブロック図である。なお、同図においては制御回路40のうち補正回路42以外の部分の図示が省略されている。図2に示すように、補正回路42は、補正値決定部421および分離部422と、各々が別個の発光色に対応する3個の補正部423(423r・423g・423b)とを含む。補正値決定部421は、各発光素子Eの実際の特性に基づいて発光色ごとに補正値A(Ar・Ag・Ab)を決定する手段である。本実施形態においては、発光色が共通する各発光素子Eについて共通の補正値Aが決定される。なお、補正値Aを決定する動作の具体例については後述する。
【0025】
駆動期間において分離部422には上位装置から階調データG1がシリアルに供給される。分離部422は、階調データG1を発光色ごとに別個の系統の階調データ(G1[r]・G1[g]・G1[b])に分離する。赤色の発光素子Eに対応する階調データG1[r]は分離部422から補正部423rに供給される。同様に、緑色に対応する階調データG1[g]は補正部423gに供給され、青色に対応する階調データG1[b]は補正部423bに供給される。
【0026】
各補正部423は、駆動期間において、分離部422から供給される階調データG1と補正値決定部421から供給される補正値Aとの演算(例えば加算や乗算)によって階調データG2を生成する手段である。例えば、補正部423rは、階調データG1[r]と補正値Arとの演算によって階調データG2[r]を生成して出力する。同様に、補正部423gは、階調データG1[g]と補正値Agとから階調データG2[g]を生成し、補正部423bは、階調データG1[b]と補正値Abとから階調データG2[b]を生成する。各補正部423から出力された3系統の階調データG2(G2[r]・G2[g]・G2[b])はデータ線駆動回路25に入力されてデータ信号Xjの生成に使用される。したがって、データ線駆動回路25が駆動期間にて出力するデータ信号Xjの電圧Vdataは補正値A(Ar・Ag・Ab)と階調データG1(G1[r]・G1[g]・G1[b])とに応じた電圧値となる。
【0027】
次に、図3を参照して、各単位回路Uの構成を説明する。なお、同図においては第i行に属する第j列目のひとつの単位回路Uのみが図示されているが、素子アレイ部11の総ての単位回路Uは同様の構成である。図3に示すように、単位回路Uは、給電線17から接地線(接地電圧Gnd)に至る経路上に配置された発光素子Eを含む。本実施形態の発光素子Eは、有機EL(ElectroLuminescent)材料からなる発光層が陽極と陰極との間に介在する有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)素子である。発光層は、給電線17から供給される電流IELの電流値に応じた輝度(光度)で発光する。発光素子Eの陰極は接地(接地電圧Gnd)される。
【0028】
電流IELの経路上(給電線17と発光素子Eとの間)にはpチャネル型のトランジスタ(以下「駆動トランジスタ」という)Tdrが配置される。駆動トランジスタTdrは、電流IELの電流値をゲートの電圧に応じて制御するMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。駆動トランジスタTdrのソースは給電線17に電気的に接続される。駆動トランジスタTdrのゲートとソース(給電線17)との間には容量素子Cが介挿される。
【0029】
駆動トランジスタTdrのドレインと発光素子Eの陽極との間には両者間の電気的な接続(導通/非導通)を制御するnチャネル型のトランジスタ(以下「発光制御トランジスタ」という)Telが介在する。第i行の各単位回路Uにおける発光制御トランジスタTelのゲートは第i行目の発光制御線13に対して共通に接続される。また、駆動トランジスタTdrのゲートとデータ線15との間には両者間の電気的な接続を制御するnチャネル型のトランジスタ(以下「選択トランジスタ」という)Tslが介在する。第i行の各単位回路Uにおける選択トランジスタTslのゲートは第i行目の走査線12に対して共通に接続される。
【0030】
次に、駆動期間における単位回路Uの動作を説明する。各フレーム期間のうち第i番目の水平走査期間にて走査信号Yiがハイレベルに遷移して選択トランジスタTslがオン状態に変化すると、その時点でデータ線15に供給されているデータ信号Xjの電圧Vdataが駆動トランジスタTdrのゲートに印加される。また、走査信号Yiがハイレベルである期間においては発光制御信号Ciがローレベルとなって発光制御トランジスタTelはオフ状態を維持するから、電流IELの経路が遮断されて発光素子Eは消灯する。
【0031】
走査信号Yiがハイレベルを維持する期間においては電圧Vdataに応じた電荷が容量素子Cに蓄積されるから、走査信号Yiがローレベルに遷移して選択トランジスタTslがオフ状態に変化しても、駆動トランジスタTdrのゲートは電圧Vdataに維持される。一方、発光制御信号Ciがハイレベルに遷移すると、発光制御トランジスタTelがオン状態に変化して電流IELの経路が確立される。したがって、発光素子Eには、駆動トランジスタTdrのゲートの電圧Vdataに応じた電流IELが供給される。電流IELの供給によって発光素子Eは電圧Vdataに応じた輝度で発光する。電圧Vdataは階調データG1と補正値Aとに応じて生成されるから、本実施形態においては発光素子Eの輝度が補正値Aに応じて補正されると言うことができる。
【0032】
電源回路50から各単位回路Uに供給される電源電圧VELは、駆動期間において電圧値V1に設定される。電圧値V1は、駆動トランジスタTdrのソース(給電線17)に印加されたときに駆動トランジスタTdrを飽和領域にて動作させるレベルである。すなわち、駆動トランジスタTdrのゲート−ソース間の電圧VGSとドレイン−ソース間の電圧VDSと閾値電圧Vthとが「VGS−Vth>VDS」という条件を満たすように電圧値V1は設定される。以上のように駆動期間では駆動トランジスタTdrが飽和領域で動作するから、駆動トランジスタTdrが駆動期間で非飽和領域にある構成と比較して、ドレイン−ソース間の電圧VDSが電流IELに与える影響は低減される(理想的には電流IELは電圧VDSに依存しない)。したがって、電流IELの電流値やそれに対応する発光素子Eの輝度を、ゲート−ソース間の電圧VGS(データ信号Xjの電圧Vdata)に応じて高精度に設定することが可能となる。
【0033】
次に、図2を参照して、電源回路50の具体的な構成を説明する。同図に示すように、電源回路50は制御部51と電圧制御部52と電流測定部53とデータ生成部54とを含む。制御部51は、制御回路40から供給される制御信号Scに応じて電源回路50の各部を制御する。
【0034】
電流測定部53は、素子アレイ部11の発光素子Eに実際に流れる電流(給電線17に流れる電流)を設定期間にて検出する。本実施形態の電流測定部53は、給電線17に流れる電流の電流値Qをデジタルデータとして出力するDAC(Digital to Analog Converter)である。一方、データ生成部54は、補正回路42の補正値決定部421とともに、電流測定部53から出力される電流値Qに基づいて補正値A(Ar・Ag・Ab)を決定する手段として機能する。以上のように本実施形態においては、発光素子Eに実際に流れる電流を検出した結果に基づいて補正値Aが決定される。制御部51は、制御信号Scが設定期間を指定する場合には電流測定部53およびデータ生成部54を作動させ、制御信号Scが駆動期間を指定する場合には電流測定部53およびデータ生成部54の動作を停止させる。
【0035】
ここで、図4の部分(a)は、飽和領域で動作する駆動トランジスタTdrのゲートの電圧(データ信号Xjの電圧Vdata)と発光素子Eに流れる電流IELとの関係を示すグラフである。同図の曲線Fa1は、発光素子Eが劣化していない初期的な段階(すなわち製造の直後)の特性を示し、曲線Fa2は、発光素子Eが経時的に劣化した段階の特性を示す。曲線Fa1と曲線Fa2とが殆ど合致することから理解されるように、駆動トランジスタTdrが飽和領域にて動作している状態で発光素子Eに流れる電流IELは、駆動トランジスタTdrのゲートの電圧Vdataに応じて支配的に決定され、各発光素子Eの特性は電流IELに殆ど反映されない。したがって、駆動トランジスタTdrが飽和領域にて動作しているときに電流測定部53が電流値Qを測定するとすれば、発光素子Eの特性の変化が高感度に検出されず、各発光素子Eの特性を精緻に反映した補正値Aを設定できない(発光素子Eの輝度を補正する精度が制限される)という問題がある。なお、駆動トランジスタTdrが飽和領域で動作する場合であっても、ゲートの電圧Vdataを充分に低下させれば、発光素子Eの特性の劣化に伴なう電流IELの変化(曲線Fa1と曲線Fa2との差異)は有効な補正値を選定できる程度に拡大する。しかしながら、この場合には図4の部分(a)に示すように所定の許容値を上回る過大な電流が発光素子Eに流れるから、発光素子Eが電気的に破壊される可能性がある。
【0036】
以上の事情に鑑みて、本実施形態では、設定期間における駆動トランジスタTdrの動作点が非飽和領域に設定される。図4の部分(b)は、非飽和領域で動作する駆動トランジスタTdrのゲートの電圧Vdataと発光素子Eに流れる電流IELとの関係を示すグラフである。同図の曲線Fb1は、発光素子Eが劣化していない段階(部分(a)の特性Fa1と同じ段階)の特性を示し、曲線Fb2は、発光素子Eが経時的に劣化した段階(部分(b)の曲線Fa2と同じ段階)の特性を示す。
【0037】
駆動トランジスタTdrのドレイン−ソース間の電圧VDSは、発光素子Eの特性(より詳細には、発光素子Eの特性に応じた電源電圧VELの分圧比)によって変化する。そして、非飽和領域で動作する駆動トランジスタTdrに流れる電流IELはドレイン−ソース間の電圧VDSによって変化する。したがって、図4の部分(b)に示すように、駆動トランジスタTdrを非飽和領域にて動作させた場合、初期的な段階で発光素子Eに流れる電流IELと特性が劣化した段階で発光素子Eに流れる電流との相違は、駆動トランジスタTdrが飽和領域で動作する場合と比較して増大する。しかも、発光素子Eに流れる電流は、電圧Vdataが充分に低い場合(例えばデータ電圧がゼロ(Gnd)である場合)であっても許容値を下回る電流値に抑制される。すなわち、発光素子Eに対する過電流の供給を抑制しながら、各発光素子Eの変化の影響を高感度に反映した電流値Qを電流測定部53によって検出することが可能である。
【0038】
以上のように、駆動トランジスタTdrは、駆動期間においては飽和領域で動作するとともに設定期間においては非飽和領域で動作する。図2の電圧制御部52は、給電線17に供給される電源電圧VELの電圧値の制御によって駆動トランジスタTdrの動作点を決定する手段である。すなわち、電圧制御部52は、電源電圧VELを電圧値V1および電圧値V2の何れかに設定する。
【0039】
電圧値V1は、既に説明したように駆動トランジスタTdrを飽和領域にて動作させるレベルである。一方、電圧値V2は、ソースに印加されたときに駆動トランジスタTdrが非飽和領域にて動作するように電圧値V1よりも低位に設定される。より具体的には、駆動トランジスタTdrのゲート−ソース間の電圧VGSとドレイン−ソース間の電圧VDSと閾値電圧Vthとが「VGS−Vth<VDS」という条件を満たすように電圧値V2は設定される。
【0040】
制御部51は、制御信号Scが駆動期間を指定する場合には電圧制御部52に電圧値V1を指示し、制御信号Scが設定期間を指定する場合には電圧制御部52に電圧値V2を指示する。したがって、電圧制御部52は、駆動期間にて電源電圧VELを電圧値V1に設定して駆動トランジスタTdrを飽和領域にて動作させる一方、設定期間にて電源電圧VELを電圧値V2に設定して駆動トランジスタTdrを非飽和領域にて動作させる。
【0041】
次に、設定期間における発光装置Dの動作(補正値Aを決定する動作)を説明する。設定期間においては、電源電圧VELが電圧制御部52によって電圧値V2に設定されることで駆動トランジスタTdrの動作点は非飽和領域に設定される。また、制御回路40は、赤色・緑色・青色のうちひとつの発光色(以下「測定対象色」という)に対応した各単位回路Uの発光制御トランジスタTelおよび選択トランジスタTslがオン状態となるように走査線駆動回路22と発光制御回路23とを制御する。さらに、制御回路40は、各データ信号X1〜Xnの電圧Vdataが接地電圧Gndとなるようにデータ線駆動回路25を制御する。
【0042】
以上の動作によって、測定対象色の単位回路Uにおける駆動トランジスタTdrは、ゲートに対する接地電圧Gnd(電圧Vdata)の供給によって非飽和領域でオン状態となる。したがって、測定対象色の各発光素子Eには、当該発光素子Eの特性を反映した電流IEL(図4の部分(b)における電流値I1)が流れる。電流測定部53は、このときに給電線17に流れる電流(すなわち測定対象色の総ての発光素子Eに流れる電流IELの総和)を検出してその電流値Qを特定する。
【0043】
本実施形態においては、発光素子Eに供給される電流とその供給時の発光素子Eの輝度との関係(以下「IL特性」という)に基づいて発光色ごとに補正値Aが決定される。一方、電流値Qは、発光素子Eに印加される電圧とその印加時に流れる電流との関係(IV特性)を反映した数値である。発光素子Eの劣化に伴なうIV特性とIL特性との変化には相関があるから、本実施形態においては、第1に、測定対象色の各発光素子Eの平均的なIV特性が電流値Qから特定され、第2に、IV特性とIL特性との相関に基づいてIV特性からIL特性が特定され、このIL特性に基づいて補正値Aが決定される。以上の手順について詳述すると以下の通りである。
【0044】
電流測定部53が電流値Qを測定するときに発光素子Eに印加される電圧は駆動トランジスタTdrの特性(電源電圧VEL(電圧値V2)の分圧比)によって変化するから、電流値Qが発光素子EのIV特性のみを反映した数値とならない場合(駆動トランジスタTdrの特性の影響を受ける場合)もある。そこで、図2のデータ生成部54は、各発光素子EのIV特性のみを反映した数値(以下「IV特性値」という)Rを電流値Qから算定する。IV特性値Rは、発光素子Eにおける電流の流れ易さの指標(所定の電圧を発光素子Eの陽極と陰極との間に印加したときに流れる電流)となる数値である。
【0045】
図5は、電流値QとIV特性値Rとの関係を示すグラフである。同図に示される特性は、駆動トランジスタTdrの電気的な特性などを考慮して実験的または統計的に決定される。データ生成部54は、電流測定部53が測定した電流値Qとの間で図5の関係が成立するようにIV特性値Rを特定する。例えば、図5に示すように、電流値Qが「Q1」であれば、データ生成部54はIV特性値Rを「R1」と特定する。データ生成部54は、電流値QとIV特性値Rとを対応付けるテーブル(電流測定部53から供給される電流値Qに対応したIV特性値Rを出力するテーブル)によって実現される。あるいは、図5の特性を反映した係数(例えば図5のグラフの傾斜)と電流値Qとの乗算によってデータ生成部54がIV特性値Rを算定する構成としてもよい。
【0046】
次に、補正値決定部421は、データ生成部54が特定したIV特性値Rから、発光素子EのIL特性に応じた数値(以下「IL特性値」という)Sを決定する。IL特性値Sは、例えば、発光素子Eに供給される電流が単位量だけ変化したときの発光素子Eの輝度の変化量である発光効率(すなわち電流−輝度の関係を示すグラフの傾斜)の指標となる数値である。
【0047】
図6は、IV特性値RとIL特性値Sとの相関を示すグラフである。なお、同図においては、IV特性値RとIL特性値Sとの相関が赤色(Fr)・緑色(Fg)・青色(Fb)の各々について図示されている。図6に図示された各相関は実験的または統計的に決定される。なお、図6の「Sr0」は、赤色の発光素子Eの初期的なIL特性値S(発光素子Eが劣化していない段階のIL特性値S)である。同様に、「Sg0」は緑色のIL特性値Sの初期値であり、「Sb0」は青色のIL特性値Sの初期値である。図6に示すように、IV特性値RおよびIL特性値Sとの間には、発光素子Eの経時的な劣化に伴なって双方の数値が低下する(発光素子Eが劣化するほどその特性が同図の矢印に沿って変化する)という相関がある。
【0048】
補正値決定部421は、データ生成部54が特定したIV特性値Rとの間で、図6のうち測定対象色に対応した関係が成立するようにIL特性値Sを特定する。例えば、測定対象色が赤色(特性Fr)である場合、IV特性値Rが「R1」であれば補正値決定部421はIL特性値Sを「S1」と特定する。補正値決定部421は、IV特性値RとIL特性値Sとを対応付けるテーブル(データ生成部54から供給されるIV特性値Rに対応したIL特性値Sを出力するテーブル)によって実現される。あるいは、図6の各特性を反映した係数(例えば図6の各グラフの傾斜)とIV特性値Rとの乗算によって補正値決定部421がIL特性値Sを算定する構成としてもよい。そして、補正値決定部421は、IV特性値Rに応じて特定したIL特性値Sが、発光素子Eの初期的なIL特性値(Sr0・Sg0・Sb0)となるように測定対象色の補正値Aを決定する。以上の過程を総ての発光色について実行することで発光色ごとの補正値A(Ar・Ag・Ab)が決定される。
【0049】
以上のように、本実施形態においては、電流値Qの測定に際して駆動トランジスタTdrが非飽和領域にて動作するから、発光素子Eの特性の僅かな変化をも忠実に反映した補正値を決定することができる。したがって、発光素子Eの特性を高い精度で初期的な状態に近づけることが可能である。
【0050】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態においては補正値が発光色ごとに決定される構成を例示した。これに対し、本実施形態においては、素子アレイ部11を区分した複数の領域の各々について補正値が決定される。なお、以下に示す各形態のうち作用や機能が第1実施形態と共通する要素については、図1ないし図3と同じ符号を付してその詳細な説明を適宜に省略する。
【0051】
図7の部分(a)は、素子アレイ部11における単位回路Uの部分的な配列の様子を示す概念図である。同図に示すように、素子アレイ部11は複数の領域B0に区分される。各領域B0は複数の単位回路U(発光素子E)を含む。さらに、各領域B0内には、所定数の単位回路Uを含む領域(図7の部分(a)において斜線が付された領域)B1が画定される。
【0052】
本実施形態においては、第1実施形態と同様の手順で複数の領域B1の各々について補正値が決定される。すなわち、ひとつの領域B1に属する各単位回路Uの駆動トランジスタTdrが非飽和領域にてオン状態とされたうえで当該領域B1の各発光素子Eに流れる電流の総和が電流値Qとして特定され、この電流値Qに基づいて補正値Aが決定される。
【0053】
図7の部分(b)は、各単位回路Uの位置(横軸)と補正値(縦軸)との関係を示すグラフである。同図に図示された白丸は、各領域B1について決定された補正値Aを示す。以上のように各領域B1について決定された補正値Aを、当該領域B1を含む領域B0の総ての発光素子Eの輝度の補正に適用する構成も考えられる。しかしながら、この構成においては、領域B0の境界を挟んで隣接する発光素子Eの輝度の相違が顕著となって利用者に明確に知覚される可能性がある。そこで、本実施形態においては、図7の部分(b)に黒丸で示すように、領域B1について決定された各補正値Aを補間することで、総ての単位回路Uの各々について補正値Aが決定される。この構成によれば、各領域B0の境界を挟んで隣接する各発光素子Eの輝度の不連続性を解消することが可能である。なお、補正値Aを補間によって算定する方法としては公知の様々な技術が適用される。例えば、各領域B1のX方向またはY方向に沿った補正値の変動を直線で近似して各単位回路Uの補正値を決定してもよいし、補正値の変動を曲線で近似して各単位回路Uの補正値を決定してもよい。
【0054】
なお、以上の形態においては領域B0の部分である領域B1の各単位回路Uを対象として補正値Aが算定される構成を例示したが、領域B0に属する総ての単位回路Uを対象として補正値Aを算定してもよい。また、領域B0や領域B1の画定の仕方(各領域の形状や単位回路Uの個数)は任意に変更される。
【0055】
<C:第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態においては補正値Aと階調データG1との演算によって各発光素子Eの輝度が補正される構成を例示したが、補正値Aを各発光素子Eの輝度に反映させるための構成は以下の例示のように適宜に変更される。
【0056】
本実施形態の制御回路40は、上位装置から供給される階調データG1をそのまま階調データG2としてデータ線駆動回路25に出力する。データ線駆動回路25は、階調データG2に応じた電圧Vdataのデータ信号X1〜Xnを所定の電圧(以下「基準電圧」という)に基づいて生成する電圧出力型のDACを含む。制御回路40は、補正値決定部421が決定した補正値Aに応じて基準電圧を変化させる。例えば、発光素子Eは劣化によって発光効率が低下する。したがって、発光素子Eの経時的な劣化が進行するほど(すなわちIV特性値RやIL特性値Sが低下するほど)、データ信号Xjの電圧Vdataの範囲が拡大するように(より具体的には電圧Vdataの最低値が低下するように)、制御回路40は基準電圧を補正値Aに基づいて補正する。この構成によれば、発光素子Eに供給される電流の最大値が上昇するから、発光素子Eの劣化の程度に拘わらず輝度を所定値(例えば初期値)に維持することが可能である。また、各発光色の発光素子Eの輝度の相対比が維持されるようにデータ線駆動回路25の基準電圧を補正してもよい。以上に説明したように、階調データG1と補正値Aとの演算は本発明において必須ではない。
【0057】
なお、発光素子Eが経時的に劣化していくとIV特性値Rが低下して発光素子Eに電流が流れ難くなる。以上においては電圧Vdataの調整によって発光素子Eの輝度を維持する構成を例示したが、駆動期間における電源電圧VELの電圧値V1を調整することで発光素子Eの輝度を所定値に維持する構成も採用される。すなわち、発光素子Eの経時的な劣化が進行するほど電圧値V1が高くなるように、制御回路40が補正値に基づいて電源回路50(電圧制御部52)を制御してもよい。以上のように、発光装置Dにおいては発光素子Eの輝度に補正値が反映される構成であれば足り、輝度を補正する具体的な構成や方法は任意である。
【0058】
<D:第4実施形態>
発光素子EのIV特性値RやIL特性値Sは、発光素子Eの経時的な劣化の程度のほかに発光素子Eの温度によっても変化する。温度に応じた変化の態様はIV特性値RとIL特性値Sとで相違するから、図4に例示したIV特性値RとIL特性値Sとの相関は発光素子Eの温度に応じて相違する。以上の事情を考慮して、本実施形態においては、電流測定部53が検出した電流値Qと発光装置Dの周囲の温度(理想的には発光素子Eの温度)とに応じて補正値Aが決定される。
【0059】
図8は、本実施形態に係る発光装置Dの構成を示すブロック図である。同図に示すように、発光装置Dは、第1実施形態の要素に加えて温度センサ60を具備する。温度センサ60は、発光装置Dまたはその周囲の温度を測定する手段である。温度センサ60によって測定された温度(以下では単に「計測温度」という)Tは補正回路42の補正値決定部421に出力される。
【0060】
図9は、IV特性値RとIL特性値Sとの関係を示すグラフ(図4に対応するグラフ)である。同図の曲線Fc1は計測温度Tが「T1」である場合の特性を示し、曲線Fc2は計測温度Tが「T2(T2>T1)」である場合の特性を示す。図9に示すように、IV特性値RとIL特性値Sとの相関は発光装置Dの温度に応じて変化する。例えば、発光素子Eが劣化していない段階におけるIV特性値RおよびIL特性値Sは、計測温度Tが「T1」であれば点P1の数値となるのに対し、計測温度Tが「T2」であれば点P2の数値となる。なお、点P1と点P2とを通過する曲線CLは、未だ劣化していない発光素子EのIV特性値RとIL特性値Sとの関係が温度の変化に応じて変化する様子を示している。
【0061】
補正値決定部421は、温度センサ60による計測温度Tが「T1」であれば、データ生成部54が特定したIV特性値Rとの間で特性Fc1の関係を満たすようにIL特性値Sを特定し、温度センサ60による計測温度が「T2」であれば、IV特性値Rとの間で特性Fc2の関係を満たすようにIL特性値Sを特定する。例えば、IV特性値Rが「R1」である場合、補正値決定部421は、計測温度Tが「T1」であればIL特性値Sとして「Sa」を特定し、計測温度Tが「T2」であればIL特性値Sとして「Sb」を特定する。そして、補正値決定部421は、第1実施形態と同様にIL特性値Sに応じた補正値Aを決定する。したがって、階調データG1の補正に適用される補正値Aは計測温度Tに応じて相違する。
【0062】
補正値決定部421は、IV特性値RとIL特性値Sとを対応付けるテーブルを計測温度Tの数値(範囲)ごとに設定することで実現される。すなわち、補正値決定部421は、複数のテーブルのうち温度センサ60から通知される計測温度Tに対応したテーブルを選択するとともに、データ生成部54が特定したIV特性値Rに対応するIL特性値Sを、この選択したテーブルから特定して出力する。あるいは、図6の特性を反映した係数を計測温度Tの範囲ごとに保持し、これらの係数のうち温度センサ60から通知される計測温度Tに対応する係数とIV特性値Rとの演算(例えば乗算)によってIL特性値Sを算定してもよい。
【0063】
以上に説明したように、本実施形態によれば、電流値Qと計測温度Tとに応じて補正値Aが決定されるから、電流値Qや計測温度Tに拘わらず各発光素子Eの輝度を所定値に調整することが可能となる。なお、以上においては第1実施形態を基礎として本実施形態の構成を説明したが、本実施形態のように計測温度Tに応じて補正値Aを決定する構成は第2実施形態や第3実施形態にも同様に採用される。
【0064】
<E:変形例>
以上の各形態には様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0065】
(1)変形例1
以上の各形態においては、電流値Qの測定からIV特性値RおよびIL特性値Sの特定を経て補正値Aが決定される構成を例示したが、電流値Qに対応した補正値Aを決定するための具体的な手順は適宜に変更される。例えば、電流値Qと補正値Aとの相関を予め設定し、この相関に基づいて電流値Qから直接的に補正値Aが決定される構成としてもよい。この構成は、例えば、電流値Qと補正値Aとが対応付けられたテーブル(電流測定部53から供給される電流値Qに対応した補正値Aを出力するテーブル)によって実現される。あるいは、電流値Qと補正値Aとの相関を示す演算式に基づいて、電流値Qの演算によって補正値Aが算定される構成としてもよい。
【0066】
(2)変形例2
各単位回路Uの構成は適宜に変更される。例えば、図3の発光制御トランジスタTelが省略された構成(駆動トランジスタTdrのドレインが発光素子Eに対して直接に接続された構成)としてもよい。また、例えば画像形成装置において感光体ドラムを露光するラインヘッド(光ヘッド)として、複数の単位回路Uがひとつの方向のみに配列されて単位回路Uごとにデータ線15が形成された発光装置Dが利用される。この発光装置Dにおいては、選択トランジスタTslが省略された構成(駆動トランジスタTdrのゲートがデータ線15に対して直接に接続された構成)としてもよい。また、単位回路Uを構成する各トランジスタの導電型は任意に変更される。
【0067】
(3)変形例3
以上の各形態においては発光素子Eとして有機発光ダイオード素子を例示したが、これ以外の発光素子を利用した発光装置にも本発明は適用される。例えば、無機EL材料からなる発光層を含む発光素子や発光ダイオード素子、電界放出(FE:Field Emission)素子、表面導電型電子放出(SE:Surface-conduction Electron-emitter)素子、弾道電子放出(BS:Ballistic electron Surface emitting)素子など様々な発光素子を本発明の発光装置に採用することができる。
【0068】
<F:応用例>
次に、本発明に係る発光装置を利用した電子機器について説明する。図10ないし図12には、以上の何れかの形態に係る発光装置Dを表示装置として採用した電子機器の形態が図示されている。
【0069】
図10は、発光装置Dを採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、各種の画像を表示する発光装置Dと、電源スイッチ2001やキーボード2002が設置された本体部2010とを具備する。発光装置Dは有機発光ダイオード素子を発光素子Eとして使用しているので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0070】
図11は、発光装置Dを適用した携帯電話機の構成を示す斜視図である。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002と、各種の画像を表示する発光装置Dとを備える。スクロールボタン3002を操作することによって、発光装置Dに表示される画面がスクロールされる。
【0071】
図12は、発光装置Dを適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す斜視図である。携帯情報端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002と、各種の画像を表示する発光装置Dとを備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった様々な情報が発光装置Dに表示される。
【0072】
なお、本発明に係る発光装置が適用される電子機器としては、図10から図12に示した機器のほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。また、本発明に係る発光装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光書込型のプリンタや電子複写機といった画像形成装置においては、用紙などの記録材に形成されるべき画像に応じて感光体を露光する光ヘッド(書込ヘッド)が使用されるが、この種の光ヘッドとしても本発明の発光装置は利用される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成を示すブロック図である。
【図2】電源回路および補正回路の構成を示すブロック図である。
【図3】単位回路の構成を示すブロック図である。
【図4】駆動期間および設定期間の各々について駆動トランジスタのゲートの電圧と発光素子に流れる電流との関係を示すグラフである。
【図5】電流値QとIV特性値Rとの関係を示すグラフである。
【図6】IV特性値RとIL特性値Sとの関係を示すグラフである。
【図7】第2実施形態において補正値を決定する方法を説明する概念図である。
【図8】第4実施形態に係る発光装置の構成を示すブロック図である。
【図9】IV特性値RとIL特性値Sとの相関が温度に応じて変化する様子を示すグラフである。
【図10】本発明に係る電子機器の形態(パーソナルコンピュータ)を示す斜視図である。
【図11】本発明に係る電子機器の形態(携帯電話機)を示す斜視図である。
【図12】本発明に係る電子機器の形態(携帯情報端末)を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0074】
D……発光装置、10……表示パネル、11……素子アレイ部、U……単位回路、E……発光素子、12……走査線、13……発光制御線、15……データ線、17……給電線、22……走査線駆動回路、23……発光制御回路、25……データ線駆動回路、40……制御回路、42……補正回路、421……補正値決定部、422……分離部、423(423r,423g,423b)……補正部、50……電源回路、51……制御部、52……電圧制御部、53……電流測定部、54……データ生成部、60……温度センサ、Tdr……駆動トランジスタ、Tel……発光制御トランジスタ、Tsl……選択トランジスタ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード素子などの発光素子の輝度(光量)を補正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子の制御のためにトランジスタ(以下「駆動トランジスタ」という)を利用した発光装置が従来から提案されている。駆動トランジスタは、例えば電源線と発光素子との間に介在する。電源線から発光素子に供給される電流は、駆動トランジスタのゲートの電圧に応じて制御される。
【0003】
ところで、発光素子の電圧−電流特性(発光素子に印加される電圧と発光素子に流れる電流との関係)や電流−輝度特性(発光素子に流れる電流と発光素子の輝度との関係)といった様々な特性には初期的または経時的に誤差が発生する場合がある。この誤差の影響を低減するために各発光素子の輝度を補正する技術が従来から提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、駆動トランジスタを導通状態としたときに各発光素子に流れる電流を測定し、この測定の結果に基づいて各発光素子の補正値を決定する技術が開示されている。発光装置の実際の使用時には、発光素子の階調(輝度)を指定する階調データと予め決定された補正値とに応じた電圧が駆動トランジスタのゲートに供給される。
【特許文献1】特開2002−278513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術のもとで補正値の決定に際して測定される電流は、実際には駆動トランジスタのゲートの電圧に応じて支配的に決定され、各発光素子の特性(特に電圧−電流特性)がこの電流に与える影響は僅かである。したがって、以上の技術においては発光素子の特性の誤差を高い感度で検出することができず、各発光素子の特性を高精度に反映した補正の実現が困難であるという問題があった。このような事情に鑑みて、本発明は、発光素子の特性を精緻に反映した補正値を発光素子に流れる電流に応じて決定するという課題の解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明に係る発光装置は、給電線に供給される電圧を第1期間(例えば以下の各形態における駆動期間)にて第1電圧(例えば各形態における電圧値V1)に制御するとともに第2期間(例えば各形態における設定期間)にて第1電圧よりも低い第2電圧(例えば各形態における電圧値V2)に設定する電圧制御手段(例えば図2の電圧制御部52)と、給電線を経由して供給される電流に応じて発光する発光素子と、給電線を経由して発光素子に供給される電流の経路上に配置されて当該電流をゲートの電圧に応じて制御する駆動トランジスタと、第2期間にて給電線を経由して発光素子に流れる電流を測定する電流測定手段(例えば図2の電流測定部53)と、電流測定手段が測定した電流に応じて補正値を決定する補正値決定手段(例えば図2のデータ生成部54や補正値決定部421)と、階調データと補正値決定手段が決定した補正値とに応じた電圧を第1期間にて駆動トランジスタのゲートに供給する駆動手段(例えばデータ線駆動回路25)とを具備する。
【0007】
以上の構成においては、補正値の決定の基礎となる電流値を電流測定手段が測定するときに、給電線の電圧が第1期間(すなわち発光素子の輝度が補正値に応じて補正される期間)の第1電圧よりも低い第2電圧に設定される。したがって、電流測定手段が測定する電流には発光素子の電圧−電流特性(以下「IV特性」という)が顕著に影響するから、発光素子の特性を精緻に反映した補正値を決定することが可能となる。
【0008】
本発明の好適な態様において、第1電圧は、駆動トランジスタを飽和領域にて動作させる電圧であり、第2電圧は、駆動トランジスタを非飽和領域(線形領域)にて動作させる電圧である。この態様によれば、第1期間にて駆動トランジスタが飽和領域にて動作するから、発光素子に供給される電流が駆動トランジスタのゲートの電圧に応じて高精度に制御される。一方、補正値を決定する第2期間においては駆動トランジスタが非飽和領域にて動作するから、電流測定手段が測定する電流に発光素子の特性(特にIV特性)を顕著に反映させることが可能となる。
【0009】
なお、本発明においては、複数の発光素子について共通の補正値が決定される構成(例えば後述する第1実施形態)が採用される。ただし、発光素子ごとの特性の相違を補正するためには発光素子ごとに個別に補正値を決定する構成が好適である。この構成においては、例えばひとつの発光素子に流れる電流を測定した結果に応じて補正値が決定される。ただし、ひとつの発光素子に流れる電流は極めて微弱であるから、これを検出するためには高性能な電流検出手段が必要となって発光装置の製造コストが嵩むという問題がある。
そこで、本発明の好適な態様に係る発光装置は、各々が発光素子と駆動トランジスタとを含む複数の単位回路を含み、電流測定手段は、複数の発光素子を区分した素子群(例えば図7の領域B0に属する発光素子Eの集合)の各々について、当該素子群に属する所定数の発光素子(例えば図7の領域B1に属する複数の発光素子E)に流れる電流を測定し、補正値決定手段は、電流測定手段が測定した各電流に応じて素子群ごとに補正値(例えば図7の部分(b)に白丸で示された補正値)を決定し、各補正値の補間によって各発光素子の補正値(例えば図7の部分(b)に黒丸で示された補正値)を決定する。なお、以上の態様の具体例は第2実施形態として後述される。
この態様によれば、所定数の発光素子に流れる電流を測定した結果に応じた各素子群の補正値を補間することで各発光素子の補正値が決定される。したがって、ひとつの発光素子に流れる微弱な電流を検出するような性能は電流測定手段に要求されない。したがって、発光素子の製造コストを低減しながら各発光素子の補正値を決定できるという利点がある。
【0010】
また、発光素子の特性は温度によっても変化する。そこで、本発明の好適な態様においては、当該発光装置の周囲の温度を測定する温度測定手段がさらに配置され、補正値決定手段は、電流測定手段が測定した電流と温度測定手段が測定した温度とに応じて補正値を決定する。この態様によれば、発光素子の温度に応じた最適な補正を実現することが可能である。以上の態様の具体例は第4実施形態として後述される。
【0011】
本発明に係る発光装置は各種の電子機器に利用される。この電子機器の典型例は、発光装置を表示装置として利用した機器である。この種の電子機器としては、パーソナルコンピュータや携帯電話機などがある。もっとも、本発明に係る発光装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光線の照射によって感光体ドラムなどの像担持体に潜像を形成するための露光装置(露光ヘッド)、液晶装置の背面側に配置されてこれを照明する装置(バックライト)、あるいは、スキャナなどの画像読取装置に搭載されて原稿を照明する装置など各種の照明装置など、様々な用途に本発明の発光装置を適用することができる。
【0012】
本発明は、発光素子の輝度の補正値を決定する方法としても特定される。本発明に係る方法が利用される発光装置は、給電線を経由して供給される電流に応じて発光する発光素子と電流の経路上に配置された駆動トランジスタとを具備し、給電線に第1電圧が供給される期間にて駆動トランジスタのゲートを階調データと補正値とに応じた電圧に設定することで発光素子が制御される装置である。この補正値の決定方法は、給電線を第1電圧よりも低い第2電圧に設定する電圧制御過程と、駆動トランジスタを導通状態に制御することで、電圧制御過程にて第2電圧に設定した給電線を経由して発光素子に電流を流す電流供給過程と、電流供給過程にて発光素子に流れた電流を測定する電流測定過程と、電流測定過程にて測定した電流に応じて補正値を決定する補正値決定過程とを含む。以上の方法によれば、本発明に係る発光装置と同様の理由により、発光素子の特性を精緻に反映した補正値を発光素子に流れる電流に応じて決定することが可能となる。
【0013】
各々が発光素子と駆動トランジスタとを含む複数の単位回路を具備する発光装置については、電流測定過程においては、複数の発光素子を区分した複数の素子群の各々について、当該素子群に属する所定数の発光素子に流れる電流を測定し、補正値決定過程においては、電流測定過程にて測定した各電流に応じて素子群ごとに補正値を決定し、各補正値の補間によって各発光素子の補正値を決定することが望ましい。この方法によれば、発光素子の電流の測定に要求される精度を抑制しながら各発光素子について補正値を決定することが可能である。なお、この態様の具体例は第2実施形態として後述される。
【0014】
本発明に係る方法の好適な態様においては、当該発光装置の周囲の温度を測定する温度測定過程が実行され、補正値決定過程においては、電流測定過程にて測定した電流と温度測定過程にて測定した温度とに応じて補正値を決定する。この態様によれば、発光素子の温度に応じた最適な補正を実現することが可能である。以上の態様の具体例は第4実施形態として後述される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<A:第1実施形態>
図1は、画像を表示する手段として各種の電子機器に使用される発光装置の具体的な形態を示すブロック図である。同図に示すように、発光装置Dは、画像を表示する表示パネル10と、発光装置Dの各部を制御する制御回路40と、電源電圧VELおよび接地電圧Gndを生成して表示パネル10に供給する電源回路50とを具備する。
【0016】
表示パネル10は、複数の単位回路(画素回路)Uが配列された素子アレイ部11と、制御回路40による制御のもとに各単位回路Uを制御する走査線駆動回路22、発光制御回路23およびデータ線駆動回路25とを具備する。各単位回路Uは、電気エネルギの供給によって発光する発光素子Eを含む。各発光素子Eは、複数の発光色(赤色・緑色・青色)の何れかに発光する。赤色・緑色・青色に発光する3個の発光素子Eによって、画像の最小の単位である画素が構成される。
【0017】
素子アレイ部11には、X方向に延在するm本の走査線12と、各走査線12に対をなしてX方向に延在するm本の発光制御線13と、X方向に直交するY方向に延在するn本のデータ線15とが形成される(mおよびnの各々は2以上の自然数)。各単位回路Uは、走査線12および発光制御線13の対とデータ線15との各交差に対応した位置に配置される。したがって、これらの単位回路Uは、縦m行×横n列のマトリクス状に配列する。また、素子アレイ部11には、電源回路50から各単位回路Uに至る給電線17が形成される。電源回路50から出力された電源電圧VELは給電線17を経由して各単位回路Uに供給される。
【0018】
制御回路40は、クロック信号や同期信号など各種の制御信号の供給によって発光装置Dの各部の動作のタイミングを規定する。本実施形態の制御回路40は、階調データG1の補正によって階調データG2を生成する補正回路42を含む。階調データG1は、各発光素子Eの階調(輝度)を指定するデータであり、発光装置Dが搭載される電子機器のCPUなど各種の上位装置から補正回路42に対してシリアルに供給される。
【0019】
発光装置Dが動作する期間は、設定期間と駆動期間とに区分される。設定期間は、補正回路42による補正に適用される数値(以下「補正値」という)を各発光素子Eの特性に応じて決定するための期間である。駆動期間は、設定期間にて決定された補正値と上位装置から供給される階調データG1とに応じて各発光素子Eを駆動する期間(補正回路42が生成した階調データG2に応じて各単位回路Uの発光素子Eを駆動する期間)である。換言すると、駆動期間は、上位装置によって指定された画像が素子アレイ部11に実際に表示される期間である。
【0020】
本実施形態における設定期間は、発光装置Dの電源が投入された直後の期間であり、駆動期間は設定期間の経過後の期間である。制御回路40は、設定期間および駆動期間の何れかを指定する制御信号Sc(例えば設定期間と駆動期間とで論理レベルが変化する信号)を電源回路50に出力する。なお、設定期間の時機や回数は任意である。例えば、補正値を決定する動作が複数回にわたって周期的に(例えば所定数のフレーム期間ごとに)実行される構成としてもよい。
【0021】
走査線駆動回路22は、m本の走査線12の各々を選択するための走査信号Y1〜Ymを生成して各走査線12に出力する。駆動期間において走査信号Y1〜Ymの各々は順番にハイレベルに遷移する。すなわち、第i行目(iは1≦i≦mを満たす整数)の走査線12に出力される走査信号Yiは、フレーム期間のうち第i番目の水平走査期間にてハイレベルとなり(すなわち第i行目の走査線12が選択され)、それ以外の期間にてローレベルを維持する。
【0022】
発光制御回路23は、各単位回路Uの発光素子Eが実際に発光する期間を規定する発光制御信号C1〜Cmを生成して各発光制御線13に出力する。駆動期間において、第i行目の発光制御線13に供給される発光制御信号Ciは、走査信号Yiがハイレベルとなる水平走査期間にてローレベルに遷移し、それ以外の期間にてハイレベルを維持する。したがって、走査信号Yiの論理レベルを反転した信号が発光制御信号Ciとして利用される。なお、図1においては発光制御回路23と走査線駆動回路22とが別個の回路として図示されているが、発光制御回路23と走査線駆動回路22とが単一のICチップに搭載された構成も採用される。
【0023】
データ線駆動回路25は、各データ線15にデータ信号X1〜Xnを出力する。データ信号X1〜Xnは、各単位回路Uの発光素子Eの輝度を指定する電圧信号である。駆動期間のうち走査信号Yiがハイレベルを維持する水平走査期間において、第j列目(jは1≦j≦nを満たす整数)のデータ線15に供給されるデータ信号Xjは、第i行に属する第j列目の単位回路Uの発光素子Eに指定された輝度に応じた電圧Vdataとなる。各発光素子Eの輝度(データ信号Xjの電圧Vdata)は、制御回路40からデータ線駆動回路25に供給される階調データG2によって指定される。
【0024】
図2は、電源回路50および補正回路42の具体的な構成を示すブロック図である。なお、同図においては制御回路40のうち補正回路42以外の部分の図示が省略されている。図2に示すように、補正回路42は、補正値決定部421および分離部422と、各々が別個の発光色に対応する3個の補正部423(423r・423g・423b)とを含む。補正値決定部421は、各発光素子Eの実際の特性に基づいて発光色ごとに補正値A(Ar・Ag・Ab)を決定する手段である。本実施形態においては、発光色が共通する各発光素子Eについて共通の補正値Aが決定される。なお、補正値Aを決定する動作の具体例については後述する。
【0025】
駆動期間において分離部422には上位装置から階調データG1がシリアルに供給される。分離部422は、階調データG1を発光色ごとに別個の系統の階調データ(G1[r]・G1[g]・G1[b])に分離する。赤色の発光素子Eに対応する階調データG1[r]は分離部422から補正部423rに供給される。同様に、緑色に対応する階調データG1[g]は補正部423gに供給され、青色に対応する階調データG1[b]は補正部423bに供給される。
【0026】
各補正部423は、駆動期間において、分離部422から供給される階調データG1と補正値決定部421から供給される補正値Aとの演算(例えば加算や乗算)によって階調データG2を生成する手段である。例えば、補正部423rは、階調データG1[r]と補正値Arとの演算によって階調データG2[r]を生成して出力する。同様に、補正部423gは、階調データG1[g]と補正値Agとから階調データG2[g]を生成し、補正部423bは、階調データG1[b]と補正値Abとから階調データG2[b]を生成する。各補正部423から出力された3系統の階調データG2(G2[r]・G2[g]・G2[b])はデータ線駆動回路25に入力されてデータ信号Xjの生成に使用される。したがって、データ線駆動回路25が駆動期間にて出力するデータ信号Xjの電圧Vdataは補正値A(Ar・Ag・Ab)と階調データG1(G1[r]・G1[g]・G1[b])とに応じた電圧値となる。
【0027】
次に、図3を参照して、各単位回路Uの構成を説明する。なお、同図においては第i行に属する第j列目のひとつの単位回路Uのみが図示されているが、素子アレイ部11の総ての単位回路Uは同様の構成である。図3に示すように、単位回路Uは、給電線17から接地線(接地電圧Gnd)に至る経路上に配置された発光素子Eを含む。本実施形態の発光素子Eは、有機EL(ElectroLuminescent)材料からなる発光層が陽極と陰極との間に介在する有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)素子である。発光層は、給電線17から供給される電流IELの電流値に応じた輝度(光度)で発光する。発光素子Eの陰極は接地(接地電圧Gnd)される。
【0028】
電流IELの経路上(給電線17と発光素子Eとの間)にはpチャネル型のトランジスタ(以下「駆動トランジスタ」という)Tdrが配置される。駆動トランジスタTdrは、電流IELの電流値をゲートの電圧に応じて制御するMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。駆動トランジスタTdrのソースは給電線17に電気的に接続される。駆動トランジスタTdrのゲートとソース(給電線17)との間には容量素子Cが介挿される。
【0029】
駆動トランジスタTdrのドレインと発光素子Eの陽極との間には両者間の電気的な接続(導通/非導通)を制御するnチャネル型のトランジスタ(以下「発光制御トランジスタ」という)Telが介在する。第i行の各単位回路Uにおける発光制御トランジスタTelのゲートは第i行目の発光制御線13に対して共通に接続される。また、駆動トランジスタTdrのゲートとデータ線15との間には両者間の電気的な接続を制御するnチャネル型のトランジスタ(以下「選択トランジスタ」という)Tslが介在する。第i行の各単位回路Uにおける選択トランジスタTslのゲートは第i行目の走査線12に対して共通に接続される。
【0030】
次に、駆動期間における単位回路Uの動作を説明する。各フレーム期間のうち第i番目の水平走査期間にて走査信号Yiがハイレベルに遷移して選択トランジスタTslがオン状態に変化すると、その時点でデータ線15に供給されているデータ信号Xjの電圧Vdataが駆動トランジスタTdrのゲートに印加される。また、走査信号Yiがハイレベルである期間においては発光制御信号Ciがローレベルとなって発光制御トランジスタTelはオフ状態を維持するから、電流IELの経路が遮断されて発光素子Eは消灯する。
【0031】
走査信号Yiがハイレベルを維持する期間においては電圧Vdataに応じた電荷が容量素子Cに蓄積されるから、走査信号Yiがローレベルに遷移して選択トランジスタTslがオフ状態に変化しても、駆動トランジスタTdrのゲートは電圧Vdataに維持される。一方、発光制御信号Ciがハイレベルに遷移すると、発光制御トランジスタTelがオン状態に変化して電流IELの経路が確立される。したがって、発光素子Eには、駆動トランジスタTdrのゲートの電圧Vdataに応じた電流IELが供給される。電流IELの供給によって発光素子Eは電圧Vdataに応じた輝度で発光する。電圧Vdataは階調データG1と補正値Aとに応じて生成されるから、本実施形態においては発光素子Eの輝度が補正値Aに応じて補正されると言うことができる。
【0032】
電源回路50から各単位回路Uに供給される電源電圧VELは、駆動期間において電圧値V1に設定される。電圧値V1は、駆動トランジスタTdrのソース(給電線17)に印加されたときに駆動トランジスタTdrを飽和領域にて動作させるレベルである。すなわち、駆動トランジスタTdrのゲート−ソース間の電圧VGSとドレイン−ソース間の電圧VDSと閾値電圧Vthとが「VGS−Vth>VDS」という条件を満たすように電圧値V1は設定される。以上のように駆動期間では駆動トランジスタTdrが飽和領域で動作するから、駆動トランジスタTdrが駆動期間で非飽和領域にある構成と比較して、ドレイン−ソース間の電圧VDSが電流IELに与える影響は低減される(理想的には電流IELは電圧VDSに依存しない)。したがって、電流IELの電流値やそれに対応する発光素子Eの輝度を、ゲート−ソース間の電圧VGS(データ信号Xjの電圧Vdata)に応じて高精度に設定することが可能となる。
【0033】
次に、図2を参照して、電源回路50の具体的な構成を説明する。同図に示すように、電源回路50は制御部51と電圧制御部52と電流測定部53とデータ生成部54とを含む。制御部51は、制御回路40から供給される制御信号Scに応じて電源回路50の各部を制御する。
【0034】
電流測定部53は、素子アレイ部11の発光素子Eに実際に流れる電流(給電線17に流れる電流)を設定期間にて検出する。本実施形態の電流測定部53は、給電線17に流れる電流の電流値Qをデジタルデータとして出力するDAC(Digital to Analog Converter)である。一方、データ生成部54は、補正回路42の補正値決定部421とともに、電流測定部53から出力される電流値Qに基づいて補正値A(Ar・Ag・Ab)を決定する手段として機能する。以上のように本実施形態においては、発光素子Eに実際に流れる電流を検出した結果に基づいて補正値Aが決定される。制御部51は、制御信号Scが設定期間を指定する場合には電流測定部53およびデータ生成部54を作動させ、制御信号Scが駆動期間を指定する場合には電流測定部53およびデータ生成部54の動作を停止させる。
【0035】
ここで、図4の部分(a)は、飽和領域で動作する駆動トランジスタTdrのゲートの電圧(データ信号Xjの電圧Vdata)と発光素子Eに流れる電流IELとの関係を示すグラフである。同図の曲線Fa1は、発光素子Eが劣化していない初期的な段階(すなわち製造の直後)の特性を示し、曲線Fa2は、発光素子Eが経時的に劣化した段階の特性を示す。曲線Fa1と曲線Fa2とが殆ど合致することから理解されるように、駆動トランジスタTdrが飽和領域にて動作している状態で発光素子Eに流れる電流IELは、駆動トランジスタTdrのゲートの電圧Vdataに応じて支配的に決定され、各発光素子Eの特性は電流IELに殆ど反映されない。したがって、駆動トランジスタTdrが飽和領域にて動作しているときに電流測定部53が電流値Qを測定するとすれば、発光素子Eの特性の変化が高感度に検出されず、各発光素子Eの特性を精緻に反映した補正値Aを設定できない(発光素子Eの輝度を補正する精度が制限される)という問題がある。なお、駆動トランジスタTdrが飽和領域で動作する場合であっても、ゲートの電圧Vdataを充分に低下させれば、発光素子Eの特性の劣化に伴なう電流IELの変化(曲線Fa1と曲線Fa2との差異)は有効な補正値を選定できる程度に拡大する。しかしながら、この場合には図4の部分(a)に示すように所定の許容値を上回る過大な電流が発光素子Eに流れるから、発光素子Eが電気的に破壊される可能性がある。
【0036】
以上の事情に鑑みて、本実施形態では、設定期間における駆動トランジスタTdrの動作点が非飽和領域に設定される。図4の部分(b)は、非飽和領域で動作する駆動トランジスタTdrのゲートの電圧Vdataと発光素子Eに流れる電流IELとの関係を示すグラフである。同図の曲線Fb1は、発光素子Eが劣化していない段階(部分(a)の特性Fa1と同じ段階)の特性を示し、曲線Fb2は、発光素子Eが経時的に劣化した段階(部分(b)の曲線Fa2と同じ段階)の特性を示す。
【0037】
駆動トランジスタTdrのドレイン−ソース間の電圧VDSは、発光素子Eの特性(より詳細には、発光素子Eの特性に応じた電源電圧VELの分圧比)によって変化する。そして、非飽和領域で動作する駆動トランジスタTdrに流れる電流IELはドレイン−ソース間の電圧VDSによって変化する。したがって、図4の部分(b)に示すように、駆動トランジスタTdrを非飽和領域にて動作させた場合、初期的な段階で発光素子Eに流れる電流IELと特性が劣化した段階で発光素子Eに流れる電流との相違は、駆動トランジスタTdrが飽和領域で動作する場合と比較して増大する。しかも、発光素子Eに流れる電流は、電圧Vdataが充分に低い場合(例えばデータ電圧がゼロ(Gnd)である場合)であっても許容値を下回る電流値に抑制される。すなわち、発光素子Eに対する過電流の供給を抑制しながら、各発光素子Eの変化の影響を高感度に反映した電流値Qを電流測定部53によって検出することが可能である。
【0038】
以上のように、駆動トランジスタTdrは、駆動期間においては飽和領域で動作するとともに設定期間においては非飽和領域で動作する。図2の電圧制御部52は、給電線17に供給される電源電圧VELの電圧値の制御によって駆動トランジスタTdrの動作点を決定する手段である。すなわち、電圧制御部52は、電源電圧VELを電圧値V1および電圧値V2の何れかに設定する。
【0039】
電圧値V1は、既に説明したように駆動トランジスタTdrを飽和領域にて動作させるレベルである。一方、電圧値V2は、ソースに印加されたときに駆動トランジスタTdrが非飽和領域にて動作するように電圧値V1よりも低位に設定される。より具体的には、駆動トランジスタTdrのゲート−ソース間の電圧VGSとドレイン−ソース間の電圧VDSと閾値電圧Vthとが「VGS−Vth<VDS」という条件を満たすように電圧値V2は設定される。
【0040】
制御部51は、制御信号Scが駆動期間を指定する場合には電圧制御部52に電圧値V1を指示し、制御信号Scが設定期間を指定する場合には電圧制御部52に電圧値V2を指示する。したがって、電圧制御部52は、駆動期間にて電源電圧VELを電圧値V1に設定して駆動トランジスタTdrを飽和領域にて動作させる一方、設定期間にて電源電圧VELを電圧値V2に設定して駆動トランジスタTdrを非飽和領域にて動作させる。
【0041】
次に、設定期間における発光装置Dの動作(補正値Aを決定する動作)を説明する。設定期間においては、電源電圧VELが電圧制御部52によって電圧値V2に設定されることで駆動トランジスタTdrの動作点は非飽和領域に設定される。また、制御回路40は、赤色・緑色・青色のうちひとつの発光色(以下「測定対象色」という)に対応した各単位回路Uの発光制御トランジスタTelおよび選択トランジスタTslがオン状態となるように走査線駆動回路22と発光制御回路23とを制御する。さらに、制御回路40は、各データ信号X1〜Xnの電圧Vdataが接地電圧Gndとなるようにデータ線駆動回路25を制御する。
【0042】
以上の動作によって、測定対象色の単位回路Uにおける駆動トランジスタTdrは、ゲートに対する接地電圧Gnd(電圧Vdata)の供給によって非飽和領域でオン状態となる。したがって、測定対象色の各発光素子Eには、当該発光素子Eの特性を反映した電流IEL(図4の部分(b)における電流値I1)が流れる。電流測定部53は、このときに給電線17に流れる電流(すなわち測定対象色の総ての発光素子Eに流れる電流IELの総和)を検出してその電流値Qを特定する。
【0043】
本実施形態においては、発光素子Eに供給される電流とその供給時の発光素子Eの輝度との関係(以下「IL特性」という)に基づいて発光色ごとに補正値Aが決定される。一方、電流値Qは、発光素子Eに印加される電圧とその印加時に流れる電流との関係(IV特性)を反映した数値である。発光素子Eの劣化に伴なうIV特性とIL特性との変化には相関があるから、本実施形態においては、第1に、測定対象色の各発光素子Eの平均的なIV特性が電流値Qから特定され、第2に、IV特性とIL特性との相関に基づいてIV特性からIL特性が特定され、このIL特性に基づいて補正値Aが決定される。以上の手順について詳述すると以下の通りである。
【0044】
電流測定部53が電流値Qを測定するときに発光素子Eに印加される電圧は駆動トランジスタTdrの特性(電源電圧VEL(電圧値V2)の分圧比)によって変化するから、電流値Qが発光素子EのIV特性のみを反映した数値とならない場合(駆動トランジスタTdrの特性の影響を受ける場合)もある。そこで、図2のデータ生成部54は、各発光素子EのIV特性のみを反映した数値(以下「IV特性値」という)Rを電流値Qから算定する。IV特性値Rは、発光素子Eにおける電流の流れ易さの指標(所定の電圧を発光素子Eの陽極と陰極との間に印加したときに流れる電流)となる数値である。
【0045】
図5は、電流値QとIV特性値Rとの関係を示すグラフである。同図に示される特性は、駆動トランジスタTdrの電気的な特性などを考慮して実験的または統計的に決定される。データ生成部54は、電流測定部53が測定した電流値Qとの間で図5の関係が成立するようにIV特性値Rを特定する。例えば、図5に示すように、電流値Qが「Q1」であれば、データ生成部54はIV特性値Rを「R1」と特定する。データ生成部54は、電流値QとIV特性値Rとを対応付けるテーブル(電流測定部53から供給される電流値Qに対応したIV特性値Rを出力するテーブル)によって実現される。あるいは、図5の特性を反映した係数(例えば図5のグラフの傾斜)と電流値Qとの乗算によってデータ生成部54がIV特性値Rを算定する構成としてもよい。
【0046】
次に、補正値決定部421は、データ生成部54が特定したIV特性値Rから、発光素子EのIL特性に応じた数値(以下「IL特性値」という)Sを決定する。IL特性値Sは、例えば、発光素子Eに供給される電流が単位量だけ変化したときの発光素子Eの輝度の変化量である発光効率(すなわち電流−輝度の関係を示すグラフの傾斜)の指標となる数値である。
【0047】
図6は、IV特性値RとIL特性値Sとの相関を示すグラフである。なお、同図においては、IV特性値RとIL特性値Sとの相関が赤色(Fr)・緑色(Fg)・青色(Fb)の各々について図示されている。図6に図示された各相関は実験的または統計的に決定される。なお、図6の「Sr0」は、赤色の発光素子Eの初期的なIL特性値S(発光素子Eが劣化していない段階のIL特性値S)である。同様に、「Sg0」は緑色のIL特性値Sの初期値であり、「Sb0」は青色のIL特性値Sの初期値である。図6に示すように、IV特性値RおよびIL特性値Sとの間には、発光素子Eの経時的な劣化に伴なって双方の数値が低下する(発光素子Eが劣化するほどその特性が同図の矢印に沿って変化する)という相関がある。
【0048】
補正値決定部421は、データ生成部54が特定したIV特性値Rとの間で、図6のうち測定対象色に対応した関係が成立するようにIL特性値Sを特定する。例えば、測定対象色が赤色(特性Fr)である場合、IV特性値Rが「R1」であれば補正値決定部421はIL特性値Sを「S1」と特定する。補正値決定部421は、IV特性値RとIL特性値Sとを対応付けるテーブル(データ生成部54から供給されるIV特性値Rに対応したIL特性値Sを出力するテーブル)によって実現される。あるいは、図6の各特性を反映した係数(例えば図6の各グラフの傾斜)とIV特性値Rとの乗算によって補正値決定部421がIL特性値Sを算定する構成としてもよい。そして、補正値決定部421は、IV特性値Rに応じて特定したIL特性値Sが、発光素子Eの初期的なIL特性値(Sr0・Sg0・Sb0)となるように測定対象色の補正値Aを決定する。以上の過程を総ての発光色について実行することで発光色ごとの補正値A(Ar・Ag・Ab)が決定される。
【0049】
以上のように、本実施形態においては、電流値Qの測定に際して駆動トランジスタTdrが非飽和領域にて動作するから、発光素子Eの特性の僅かな変化をも忠実に反映した補正値を決定することができる。したがって、発光素子Eの特性を高い精度で初期的な状態に近づけることが可能である。
【0050】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態においては補正値が発光色ごとに決定される構成を例示した。これに対し、本実施形態においては、素子アレイ部11を区分した複数の領域の各々について補正値が決定される。なお、以下に示す各形態のうち作用や機能が第1実施形態と共通する要素については、図1ないし図3と同じ符号を付してその詳細な説明を適宜に省略する。
【0051】
図7の部分(a)は、素子アレイ部11における単位回路Uの部分的な配列の様子を示す概念図である。同図に示すように、素子アレイ部11は複数の領域B0に区分される。各領域B0は複数の単位回路U(発光素子E)を含む。さらに、各領域B0内には、所定数の単位回路Uを含む領域(図7の部分(a)において斜線が付された領域)B1が画定される。
【0052】
本実施形態においては、第1実施形態と同様の手順で複数の領域B1の各々について補正値が決定される。すなわち、ひとつの領域B1に属する各単位回路Uの駆動トランジスタTdrが非飽和領域にてオン状態とされたうえで当該領域B1の各発光素子Eに流れる電流の総和が電流値Qとして特定され、この電流値Qに基づいて補正値Aが決定される。
【0053】
図7の部分(b)は、各単位回路Uの位置(横軸)と補正値(縦軸)との関係を示すグラフである。同図に図示された白丸は、各領域B1について決定された補正値Aを示す。以上のように各領域B1について決定された補正値Aを、当該領域B1を含む領域B0の総ての発光素子Eの輝度の補正に適用する構成も考えられる。しかしながら、この構成においては、領域B0の境界を挟んで隣接する発光素子Eの輝度の相違が顕著となって利用者に明確に知覚される可能性がある。そこで、本実施形態においては、図7の部分(b)に黒丸で示すように、領域B1について決定された各補正値Aを補間することで、総ての単位回路Uの各々について補正値Aが決定される。この構成によれば、各領域B0の境界を挟んで隣接する各発光素子Eの輝度の不連続性を解消することが可能である。なお、補正値Aを補間によって算定する方法としては公知の様々な技術が適用される。例えば、各領域B1のX方向またはY方向に沿った補正値の変動を直線で近似して各単位回路Uの補正値を決定してもよいし、補正値の変動を曲線で近似して各単位回路Uの補正値を決定してもよい。
【0054】
なお、以上の形態においては領域B0の部分である領域B1の各単位回路Uを対象として補正値Aが算定される構成を例示したが、領域B0に属する総ての単位回路Uを対象として補正値Aを算定してもよい。また、領域B0や領域B1の画定の仕方(各領域の形状や単位回路Uの個数)は任意に変更される。
【0055】
<C:第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態においては補正値Aと階調データG1との演算によって各発光素子Eの輝度が補正される構成を例示したが、補正値Aを各発光素子Eの輝度に反映させるための構成は以下の例示のように適宜に変更される。
【0056】
本実施形態の制御回路40は、上位装置から供給される階調データG1をそのまま階調データG2としてデータ線駆動回路25に出力する。データ線駆動回路25は、階調データG2に応じた電圧Vdataのデータ信号X1〜Xnを所定の電圧(以下「基準電圧」という)に基づいて生成する電圧出力型のDACを含む。制御回路40は、補正値決定部421が決定した補正値Aに応じて基準電圧を変化させる。例えば、発光素子Eは劣化によって発光効率が低下する。したがって、発光素子Eの経時的な劣化が進行するほど(すなわちIV特性値RやIL特性値Sが低下するほど)、データ信号Xjの電圧Vdataの範囲が拡大するように(より具体的には電圧Vdataの最低値が低下するように)、制御回路40は基準電圧を補正値Aに基づいて補正する。この構成によれば、発光素子Eに供給される電流の最大値が上昇するから、発光素子Eの劣化の程度に拘わらず輝度を所定値(例えば初期値)に維持することが可能である。また、各発光色の発光素子Eの輝度の相対比が維持されるようにデータ線駆動回路25の基準電圧を補正してもよい。以上に説明したように、階調データG1と補正値Aとの演算は本発明において必須ではない。
【0057】
なお、発光素子Eが経時的に劣化していくとIV特性値Rが低下して発光素子Eに電流が流れ難くなる。以上においては電圧Vdataの調整によって発光素子Eの輝度を維持する構成を例示したが、駆動期間における電源電圧VELの電圧値V1を調整することで発光素子Eの輝度を所定値に維持する構成も採用される。すなわち、発光素子Eの経時的な劣化が進行するほど電圧値V1が高くなるように、制御回路40が補正値に基づいて電源回路50(電圧制御部52)を制御してもよい。以上のように、発光装置Dにおいては発光素子Eの輝度に補正値が反映される構成であれば足り、輝度を補正する具体的な構成や方法は任意である。
【0058】
<D:第4実施形態>
発光素子EのIV特性値RやIL特性値Sは、発光素子Eの経時的な劣化の程度のほかに発光素子Eの温度によっても変化する。温度に応じた変化の態様はIV特性値RとIL特性値Sとで相違するから、図4に例示したIV特性値RとIL特性値Sとの相関は発光素子Eの温度に応じて相違する。以上の事情を考慮して、本実施形態においては、電流測定部53が検出した電流値Qと発光装置Dの周囲の温度(理想的には発光素子Eの温度)とに応じて補正値Aが決定される。
【0059】
図8は、本実施形態に係る発光装置Dの構成を示すブロック図である。同図に示すように、発光装置Dは、第1実施形態の要素に加えて温度センサ60を具備する。温度センサ60は、発光装置Dまたはその周囲の温度を測定する手段である。温度センサ60によって測定された温度(以下では単に「計測温度」という)Tは補正回路42の補正値決定部421に出力される。
【0060】
図9は、IV特性値RとIL特性値Sとの関係を示すグラフ(図4に対応するグラフ)である。同図の曲線Fc1は計測温度Tが「T1」である場合の特性を示し、曲線Fc2は計測温度Tが「T2(T2>T1)」である場合の特性を示す。図9に示すように、IV特性値RとIL特性値Sとの相関は発光装置Dの温度に応じて変化する。例えば、発光素子Eが劣化していない段階におけるIV特性値RおよびIL特性値Sは、計測温度Tが「T1」であれば点P1の数値となるのに対し、計測温度Tが「T2」であれば点P2の数値となる。なお、点P1と点P2とを通過する曲線CLは、未だ劣化していない発光素子EのIV特性値RとIL特性値Sとの関係が温度の変化に応じて変化する様子を示している。
【0061】
補正値決定部421は、温度センサ60による計測温度Tが「T1」であれば、データ生成部54が特定したIV特性値Rとの間で特性Fc1の関係を満たすようにIL特性値Sを特定し、温度センサ60による計測温度が「T2」であれば、IV特性値Rとの間で特性Fc2の関係を満たすようにIL特性値Sを特定する。例えば、IV特性値Rが「R1」である場合、補正値決定部421は、計測温度Tが「T1」であればIL特性値Sとして「Sa」を特定し、計測温度Tが「T2」であればIL特性値Sとして「Sb」を特定する。そして、補正値決定部421は、第1実施形態と同様にIL特性値Sに応じた補正値Aを決定する。したがって、階調データG1の補正に適用される補正値Aは計測温度Tに応じて相違する。
【0062】
補正値決定部421は、IV特性値RとIL特性値Sとを対応付けるテーブルを計測温度Tの数値(範囲)ごとに設定することで実現される。すなわち、補正値決定部421は、複数のテーブルのうち温度センサ60から通知される計測温度Tに対応したテーブルを選択するとともに、データ生成部54が特定したIV特性値Rに対応するIL特性値Sを、この選択したテーブルから特定して出力する。あるいは、図6の特性を反映した係数を計測温度Tの範囲ごとに保持し、これらの係数のうち温度センサ60から通知される計測温度Tに対応する係数とIV特性値Rとの演算(例えば乗算)によってIL特性値Sを算定してもよい。
【0063】
以上に説明したように、本実施形態によれば、電流値Qと計測温度Tとに応じて補正値Aが決定されるから、電流値Qや計測温度Tに拘わらず各発光素子Eの輝度を所定値に調整することが可能となる。なお、以上においては第1実施形態を基礎として本実施形態の構成を説明したが、本実施形態のように計測温度Tに応じて補正値Aを決定する構成は第2実施形態や第3実施形態にも同様に採用される。
【0064】
<E:変形例>
以上の各形態には様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0065】
(1)変形例1
以上の各形態においては、電流値Qの測定からIV特性値RおよびIL特性値Sの特定を経て補正値Aが決定される構成を例示したが、電流値Qに対応した補正値Aを決定するための具体的な手順は適宜に変更される。例えば、電流値Qと補正値Aとの相関を予め設定し、この相関に基づいて電流値Qから直接的に補正値Aが決定される構成としてもよい。この構成は、例えば、電流値Qと補正値Aとが対応付けられたテーブル(電流測定部53から供給される電流値Qに対応した補正値Aを出力するテーブル)によって実現される。あるいは、電流値Qと補正値Aとの相関を示す演算式に基づいて、電流値Qの演算によって補正値Aが算定される構成としてもよい。
【0066】
(2)変形例2
各単位回路Uの構成は適宜に変更される。例えば、図3の発光制御トランジスタTelが省略された構成(駆動トランジスタTdrのドレインが発光素子Eに対して直接に接続された構成)としてもよい。また、例えば画像形成装置において感光体ドラムを露光するラインヘッド(光ヘッド)として、複数の単位回路Uがひとつの方向のみに配列されて単位回路Uごとにデータ線15が形成された発光装置Dが利用される。この発光装置Dにおいては、選択トランジスタTslが省略された構成(駆動トランジスタTdrのゲートがデータ線15に対して直接に接続された構成)としてもよい。また、単位回路Uを構成する各トランジスタの導電型は任意に変更される。
【0067】
(3)変形例3
以上の各形態においては発光素子Eとして有機発光ダイオード素子を例示したが、これ以外の発光素子を利用した発光装置にも本発明は適用される。例えば、無機EL材料からなる発光層を含む発光素子や発光ダイオード素子、電界放出(FE:Field Emission)素子、表面導電型電子放出(SE:Surface-conduction Electron-emitter)素子、弾道電子放出(BS:Ballistic electron Surface emitting)素子など様々な発光素子を本発明の発光装置に採用することができる。
【0068】
<F:応用例>
次に、本発明に係る発光装置を利用した電子機器について説明する。図10ないし図12には、以上の何れかの形態に係る発光装置Dを表示装置として採用した電子機器の形態が図示されている。
【0069】
図10は、発光装置Dを採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、各種の画像を表示する発光装置Dと、電源スイッチ2001やキーボード2002が設置された本体部2010とを具備する。発光装置Dは有機発光ダイオード素子を発光素子Eとして使用しているので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0070】
図11は、発光装置Dを適用した携帯電話機の構成を示す斜視図である。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002と、各種の画像を表示する発光装置Dとを備える。スクロールボタン3002を操作することによって、発光装置Dに表示される画面がスクロールされる。
【0071】
図12は、発光装置Dを適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す斜視図である。携帯情報端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002と、各種の画像を表示する発光装置Dとを備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった様々な情報が発光装置Dに表示される。
【0072】
なお、本発明に係る発光装置が適用される電子機器としては、図10から図12に示した機器のほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。また、本発明に係る発光装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光書込型のプリンタや電子複写機といった画像形成装置においては、用紙などの記録材に形成されるべき画像に応じて感光体を露光する光ヘッド(書込ヘッド)が使用されるが、この種の光ヘッドとしても本発明の発光装置は利用される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成を示すブロック図である。
【図2】電源回路および補正回路の構成を示すブロック図である。
【図3】単位回路の構成を示すブロック図である。
【図4】駆動期間および設定期間の各々について駆動トランジスタのゲートの電圧と発光素子に流れる電流との関係を示すグラフである。
【図5】電流値QとIV特性値Rとの関係を示すグラフである。
【図6】IV特性値RとIL特性値Sとの関係を示すグラフである。
【図7】第2実施形態において補正値を決定する方法を説明する概念図である。
【図8】第4実施形態に係る発光装置の構成を示すブロック図である。
【図9】IV特性値RとIL特性値Sとの相関が温度に応じて変化する様子を示すグラフである。
【図10】本発明に係る電子機器の形態(パーソナルコンピュータ)を示す斜視図である。
【図11】本発明に係る電子機器の形態(携帯電話機)を示す斜視図である。
【図12】本発明に係る電子機器の形態(携帯情報端末)を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0074】
D……発光装置、10……表示パネル、11……素子アレイ部、U……単位回路、E……発光素子、12……走査線、13……発光制御線、15……データ線、17……給電線、22……走査線駆動回路、23……発光制御回路、25……データ線駆動回路、40……制御回路、42……補正回路、421……補正値決定部、422……分離部、423(423r,423g,423b)……補正部、50……電源回路、51……制御部、52……電圧制御部、53……電流測定部、54……データ生成部、60……温度センサ、Tdr……駆動トランジスタ、Tel……発光制御トランジスタ、Tsl……選択トランジスタ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電線に供給される電圧を第1期間にて第1電圧に制御するとともに第2期間にて第1電圧よりも低い第2電圧に設定する電圧制御手段と、
前記給電線を経由して供給される電流に応じて発光する発光素子と、
前記給電線を経由して前記発光素子に供給される電流の経路上に配置されて当該電流をゲートの電圧に応じて制御する駆動トランジスタと、
前記第2期間にて前記給電線を経由して前記発光素子に流れる電流を測定する電流測定手段と、
前記電流測定手段が測定した電流に応じて補正値を決定する補正値決定手段と、
階調データと前記補正値決定手段が決定した補正値とに応じた電圧を前記第1期間にて前記駆動トランジスタのゲートに供給する駆動手段と
を具備する発光装置。
【請求項2】
前記第1電圧は、前記駆動トランジスタを飽和領域にて動作させる電圧であり、前記第2電圧は、前記駆動トランジスタを非飽和領域にて動作させる電圧である
請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
各々が発光素子と駆動トランジスタとを含む複数の単位回路を具備し、
前記電流測定手段は、前記複数の発光素子を区分した素子群の各々について、当該素子群に属する所定数の発光素子に流れる電流を測定し、
前記補正値決定手段は、前記電流測定手段が測定した各電流に応じて前記素子群ごとに補正値を決定し、前記各補正値の補間によって前記各発光素子の補正値を決定する
請求項1または請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
当該発光装置の周囲の温度を測定する温度測定手段を具備し、
前記補正値決定手段は、前記電流測定手段が測定した電流と前記温度測定手段が測定した温度とに応じて補正値を決定する
請求項1から請求項3の何れかに記載の発光装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載の発光装置を具備する電子機器。
【請求項6】
給電線を経由して供給される電流に応じて発光する発光素子と前記電流の経路上に配置された駆動トランジスタとを具備し、前記給電線に第1電圧が供給される期間にて前記駆動トランジスタのゲートを階調データと補正値とに応じた電圧に設定することで前記発光素子が制御される発光装置について、前記補正値を決定する方法であって、
前記給電線を前記第1電圧よりも低い第2電圧に設定する電圧制御過程と、
前記駆動トランジスタを導通状態に制御することで、前記電圧制御過程にて前記第2電圧に設定した前記給電線を経由して前記発光素子に電流を流す電流供給過程と、
前記電流供給過程にて前記発光素子に流れた電流を測定する電流測定過程と、
前記電流測定過程にて測定した電流に応じて前記補正値を決定する補正値決定過程と
を有する補正値の決定方法。
【請求項7】
前記第1電圧は、前記駆動トランジスタを飽和領域にて動作させる電圧であり、前記第2電圧は、前記駆動トランジスタを非飽和領域にて動作させる電圧である
請求項6に記載の補正値の決定方法。
【請求項8】
前記発光装置は、各々が発光素子と駆動トランジスタとを含む複数の単位回路を具備し、
前記電流測定過程においては、前記複数の発光素子を区分した複数の素子群の各々について、当該素子群に属する所定数の発光素子に流れる電流を測定し、
前記補正値決定過程においては、前記電流測定過程にて測定した各電流に応じて前記素子群ごとに補正値を決定し、前記各補正値の補間によって前記各発光素子の補正値を決定する
請求項6または請求項7に記載の補正値の決定方法。
【請求項9】
当該発光装置の周囲の温度を測定する温度測定過程を含み、
前記補正値決定過程においては、前記電流測定過程にて測定した電流と前記温度測定過程にて測定した温度とに応じて前記補正値を決定する
請求項6から請求項8の何れかに記載の補正値の決定方法。
【請求項1】
給電線に供給される電圧を第1期間にて第1電圧に制御するとともに第2期間にて第1電圧よりも低い第2電圧に設定する電圧制御手段と、
前記給電線を経由して供給される電流に応じて発光する発光素子と、
前記給電線を経由して前記発光素子に供給される電流の経路上に配置されて当該電流をゲートの電圧に応じて制御する駆動トランジスタと、
前記第2期間にて前記給電線を経由して前記発光素子に流れる電流を測定する電流測定手段と、
前記電流測定手段が測定した電流に応じて補正値を決定する補正値決定手段と、
階調データと前記補正値決定手段が決定した補正値とに応じた電圧を前記第1期間にて前記駆動トランジスタのゲートに供給する駆動手段と
を具備する発光装置。
【請求項2】
前記第1電圧は、前記駆動トランジスタを飽和領域にて動作させる電圧であり、前記第2電圧は、前記駆動トランジスタを非飽和領域にて動作させる電圧である
請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
各々が発光素子と駆動トランジスタとを含む複数の単位回路を具備し、
前記電流測定手段は、前記複数の発光素子を区分した素子群の各々について、当該素子群に属する所定数の発光素子に流れる電流を測定し、
前記補正値決定手段は、前記電流測定手段が測定した各電流に応じて前記素子群ごとに補正値を決定し、前記各補正値の補間によって前記各発光素子の補正値を決定する
請求項1または請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
当該発光装置の周囲の温度を測定する温度測定手段を具備し、
前記補正値決定手段は、前記電流測定手段が測定した電流と前記温度測定手段が測定した温度とに応じて補正値を決定する
請求項1から請求項3の何れかに記載の発光装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載の発光装置を具備する電子機器。
【請求項6】
給電線を経由して供給される電流に応じて発光する発光素子と前記電流の経路上に配置された駆動トランジスタとを具備し、前記給電線に第1電圧が供給される期間にて前記駆動トランジスタのゲートを階調データと補正値とに応じた電圧に設定することで前記発光素子が制御される発光装置について、前記補正値を決定する方法であって、
前記給電線を前記第1電圧よりも低い第2電圧に設定する電圧制御過程と、
前記駆動トランジスタを導通状態に制御することで、前記電圧制御過程にて前記第2電圧に設定した前記給電線を経由して前記発光素子に電流を流す電流供給過程と、
前記電流供給過程にて前記発光素子に流れた電流を測定する電流測定過程と、
前記電流測定過程にて測定した電流に応じて前記補正値を決定する補正値決定過程と
を有する補正値の決定方法。
【請求項7】
前記第1電圧は、前記駆動トランジスタを飽和領域にて動作させる電圧であり、前記第2電圧は、前記駆動トランジスタを非飽和領域にて動作させる電圧である
請求項6に記載の補正値の決定方法。
【請求項8】
前記発光装置は、各々が発光素子と駆動トランジスタとを含む複数の単位回路を具備し、
前記電流測定過程においては、前記複数の発光素子を区分した複数の素子群の各々について、当該素子群に属する所定数の発光素子に流れる電流を測定し、
前記補正値決定過程においては、前記電流測定過程にて測定した各電流に応じて前記素子群ごとに補正値を決定し、前記各補正値の補間によって前記各発光素子の補正値を決定する
請求項6または請求項7に記載の補正値の決定方法。
【請求項9】
当該発光装置の周囲の温度を測定する温度測定過程を含み、
前記補正値決定過程においては、前記電流測定過程にて測定した電流と前記温度測定過程にて測定した温度とに応じて前記補正値を決定する
請求項6から請求項8の何れかに記載の補正値の決定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−240694(P2007−240694A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60566(P2006−60566)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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