発光装置
【課題】発光層が積層された発光素子において、各発光層からの発光色がきれいに表示された優れた映像を表示でき、低消費電力化された発光装置を提供することを課題とする。
【解決手段】電極間に積層されて形成された発光層からなる発光素子においては、各発光層と電極との光学的距離をそれらの間に設けられた層の膜厚によりそれぞれ1/4波長の奇数倍とし、発光取り出し効率を高めることを特徴とする。さらに本発明は、当該層に導電性の高い材料を用いて、従来の素子と比較して、駆動電圧を低くすることを特徴とする。
【解決手段】電極間に積層されて形成された発光層からなる発光素子においては、各発光層と電極との光学的距離をそれらの間に設けられた層の膜厚によりそれぞれ1/4波長の奇数倍とし、発光取り出し効率を高めることを特徴とする。さらに本発明は、当該層に導電性の高い材料を用いて、従来の素子と比較して、駆動電圧を低くすることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示手段、光源などとして利用できる発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子を有する表示装置(以下、発光装置と呼ぶ)は、液晶素子を有する表示装置、つまり液晶表示装置と比較して、広視野角、高応答特性、低消費電力であり、盛んに開発が行われている。
【0003】
発光素子は、一対の電極間に有機材料や無機材料を有しており、これらに電流を与え、発光材料を励起させることにより、所定の発光色を得ることができる。このような発光素子の発光輝度を高めるためには、多くの電流を供給する、つまり電極に高い電圧を印加することが考えられるが、低消費電力化のメリットを損なうことになってしまう。また多くの電流を流すことにより、発光素子の劣化を早めてしまうことにもなる。
【0004】
そこで、複数の発光素子を積層し、単層の場合と同じ電流密度の電流を流すことによって、発光輝度が高くなるといった発光素子が提案されている(特許文献1参照)。これを利用すれば、積層構造を有する発光素子では、単層の場合の半分以下の電流密度としても、所定の輝度を得ることができる。例えばn倍の輝度を所望電流密度において得たい場合は、電極間に存在する同一の構成の発光ユニットをn個とすれば、電流密度を上昇させることなくn倍の輝度を実現できるとされている。このとき、駆動電圧もn倍、もしくはそれ以上になってしまうが、n倍の輝度が寿命を犠牲にせずに実現できることの利点は大きい、と記載されている。
【特許文献1】特開2003−272860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、発光位置が分離して複数存在しているため、各発光位置から反射電極までの光学膜厚がすべて1/4波長の約奇数倍に設定することが開示されている。特許文献1の実施例5には、青色発光ユニットと、赤色発光ユニットを備えた発光素子において、青色発光位置から反射電極までの光学的距離を、意図的に発光ユニットのα−NPDから構成されるホール輸送層の膜厚によって制御することが開示されている。
【0006】
α−NPDといったホール輸送層は、ホール注入層と比べると、その性質はより発光層に近く導電性が低いため、これを厚くすると駆動電圧が上昇してしまうので膜厚を厚くする構成は好ましくない。
【0007】
また干渉により取り出し効率が悪くならない距離は発光波長によって異なるため、複数の発光層を積層した発光素子では、α−NPDの膜厚を各発光層で異ならせる必要がある。そのため、青色発光ユニットのα−NPDの膜厚を異ならせただけでは、発光素子全体の発光効率を高めることにはならない。また特許文献1において、赤色発光ユニットのα−NPDの膜厚を異ならせると、発光素子全体の膜厚が大きくなり、駆動電圧が上昇してしまう。駆動電圧が上昇することにより、発光装置の消費電力が増加するということが問題となっていた。
【0008】
また発光色毎に発光効率が異なっている。発光装置の発光全体として輝度のバランスをとるためには、発光効率が悪い発光素子は過大な電流を流さなければならず、そのために発光素子の劣化が加速するという不具合があった。
【0009】
そこで本発明は、発光装置の消費電力を低減することを課題とする。また、発光装置における画素の輝度変化に係る劣化を低減することを課題とする。また、発光層が積層された発光素子において、各発光層からの発光色がきれいに表示された優れた映像を表示でき、低消費電力化された発光装置、及びその作製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に鑑み本発明は、電極間に積層されて形成された発光層を含む発光素子において、各発光層と電極との光学的距離(以下、単に距離と呼ぶ)を制御することを特徴とする。具体的には、反射電極と各発光層との各距離を、それらの間に設けられた層の膜厚によりそれぞれ決定させ、発光取り出し効率を高めることを特徴とする。
【0011】
さらに本発明は、発光層が積層された発光素子と、発光層が単層である発光素子とを一体形成した画素部を形成することを特徴とする。例えば、発光輝度が低いと懸念される発光素子においては、発光層を積層して形成し、その他の発光素子は単層の発光層で形成する。
【0012】
本発明の具体的な形態は、対向する第1の電極及び第2の電極間に、複数の発光層を積層し、複数の発光層と、第1の電極とのそれぞれの光学的距離は、発光層と第1の電極間に設けられた層の膜厚により、発光取り出し効率が高くなるように1/4波長の奇数倍とされたことを特徴とする発光装置である。蒸着精度を考慮し、奇数倍から±10%程度の差異は奇数倍に含まれるものとする。発光層と第1の電極間に設けられた層の膜厚とは、複数の発光層を積層した積層型発光素子において、複数の発光層のそれぞれの間に設けられた層の膜厚、および前記第1の電極に最も近い発光層と前記第1の電極との間に設けられた層の膜厚である。
【0013】
本発明の別の形態は、対向する第1の電極及び第2の電極間に、複数の発光層を積層し、複数の発光層からの発光色はそれぞれ異なり、複数の発光層と、第1の電極とのそれぞれの距離は、発光層と前記第1の電極間に設けられ、且つ複数の発光層それぞれに接した層の膜厚により、発光取り出し効率が高くなるように1/4波長の奇数倍とされたことを特徴とする発光装置である。
【0014】
本発明の別の形態は、対向する第1の電極及び第2の電極間に、複数の発光層を積層した積層型発光素子と、第1の電極及び第2の電極間に、単数の発光層を有する単層型発光素子と、を有し、積層型発光素子において、複数の発光層と、第1の電極とのそれぞれの距離は、発光層と第1の電極間に設けられた層の膜厚により、発光取り出し効率が高くなるように1/4波長の奇数倍とされたことを特徴とする発光装置である。
【0015】
本発明の別の形態は、対向する第1の電極及び第2の電極間に、複数の発光層を積層した積層型発光素子と、第1の電極及び第2の電極間に、単数の発光層を有する単層型発光素子と、を有し、積層型発光素子が有する複数の発光層からの発光色はそれぞれ異なり、積層型発光素子において、複数の発光層と、第1の電極とのそれぞれの光学的距離は、発光層と第1の電極間に設けられ、且つ複数の発光層それぞれに接した層の膜厚により、発光取り出し効率が高くなるように1/4波長の奇数倍とされたことを特徴とする発光装置である。
【0016】
本発明は発光取り出し効率が高くなるように制御する層に導電性の高い材料を用い、当該第1の層111の膜厚を制御して、反射電極と発光層との距離を1/4波長の奇数倍とすることを特徴とする。上記特許文献1と比べると、本発明の発光素子は、光学的距離を設定する膜に、導電性の高い材料を用いるため、駆動電圧を低くすることができる。
【0017】
本発明において、発光層は三重項励起状態からの発光を呈する物質、又は一重項励起状態からの発光を呈する物質を有することができる。そのため、積層された発光層は三重項励起状態からの発光と、一重項励起状態からの発光とが組み合わされた発光を得ることができる。勿論、積層された発光層から、三重項励起状態からの発光のみ、又は一重項励起状態からの発光のみを得ることもできる。
【0018】
なお、このように積層された発光層を有する発光素子を、自然数nを用いて、電極間にn個の発光層を有する発光素子と表すこともできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、単層の発光層からなる発光素子と比べて、同じ電流を供給した場合に得られる輝度を高めることができる。すなわち、同じ輝度を得るための電極間に流れる電流を低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0021】
(実施の形態1)
本実施の形態では、複数の発光ユニットが積層された発光素子の構造について説明する。
【0022】
図1には、第1の電極101と、第2の電極102との間に、第1の発光ユニット100B、第2の発光ユニット100G、第3の発光ユニット100Rが順に積層された発光素子を示す。何れの発光ユニットが、どの様な発光色を呈するかについて特に限定はないが、本形態では、第1の発光ユニットが青色の発光を呈し、第2の発光ユニットが緑色の発光を呈し、第3の発光ユニットが赤色の発光を呈する場合について説明する。なお、積層された発光ユニットとは、2以上の発光ユニットが積層された状態を指し、本実施の形態では3つの発光ユニットが積層された状態で説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
図1に示す発光素子では、第1の電極101を反射性の高い材料で形成し、第2の電極102を透光性の高い材料で形成し、第2の電極102から光を取り出す。各発光ユニット100R、100G、100Bは、それぞれ第1の層111R、111G、111B、第2の層112R、112G、112B、第3の層113R、113G、113Bを有する。
【0024】
このような発光素子において、発光層を有する層として第2の層112(112B,112G,112R)を用いる場合、各発光素子の第2の層112と第1の電極101との距離を、第1の層111(111B,111G,111R)の膜厚によって1/4波長の奇数倍とすることを特徴とする。すなわち、発光層と、第1の電極101との距離を、その間に設けられた層の厚みによって1/4波長の奇数倍とすることを特徴とする。そのため、発光ユニットごとに第1の層111R、111G、111Bの膜厚が異なる。
【0025】
発光ユニットを積層しているため、発光取り出し効率を高めるために各発光層と第1の電極101との距離はそれぞれ異なる。そのため、各発光層と第1の電極101との間に設けられた第1の層111の厚みをそれぞれ制御した発光素子を提供する。その結果、発光取り出し効率が高い状態を提供する。
【0026】
このように発光ユニットを積層することにより、発光効率を高めることができるため、流す電流量を低く維持することができ、発光素子の寿命を向上させることができる。
【0027】
なお本実施の形態では、すべての第1の層111R、111G、111Bの膜厚を制御した形態を示すが、本発明は積層された発光ユニットが有する第1の層111のいずれか一つの膜厚を制御すればよい。いずれか一つの第1の層111を制御することによって、発光取り出し効率が高い状態を提供でき、流す電流量を低く維持する効果を奏することができるからである。
【0028】
なお本発明において、積層された発光層は異色の発光を呈する層を有する必要はない。すなわち本発明は、同色の発光を呈する層を積層してもよい。同色の発光を呈する層を積層しても、発光効率が高い状態を提供でき、流す電流量を低く維持する効果を奏することができるからである。
【0029】
また本発明では、第1の層111に導電性の高い材料を用い、当該第1の層111の膜厚を制御するため、特許文献1等に記載される従来の素子と比較して、駆動電圧を低くすることができる。
【0030】
第1の層111乃至第3の層113(113B,113G,113R)は、スパッタリング法や蒸着法等を用いて形成することができる。
【0031】
次に電極について説明する。第1の電極101は反射性を有する材料から形成し、第2の電極102は透光性を有する材料で形成する。なお透光性を有するためには、非透光性を有する材料を非常に薄く形成することによって、得ることもできる。
【0032】
第1の電極101の材料は、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、若しくはパラジウム(Pd)等の金属材料を用いることができ、上記金属材料の単層、又は積層を用いることができる。なお、第1の電極101は、例えばスパッタ法や蒸着法等を用いて形成することができる。
【0033】
また、第2の電極102の材料は、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物、2〜20%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム等の透光性材料を用いることができる。その他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、若しくはパラジウム(Pd)等の非透光性を有する金属材料であって、透光性を有する程度に薄膜化して用いることができる。また第2の電極102は、上記金属材料の単層、又は積層を用いることができる。積層構造を用いる場合、上記非透光性を有する金属材料を薄膜化し、その上に透光性材料を積層する構成を用いることもできる。第2の電極102を薄く形成することにより、抵抗が高くなることを防止するため、補助配線を設けることもできる。
【0034】
なお第1の電極101又は第2の電極102は、発光素子に印加する電圧によって、それぞれ陽極又は陰極となり得る。陽極となる場合は、仕事関数の大きい(仕事関数4.0eV以上)材料とし、陰極となる場合は、仕事関数の小さい(仕事関数3.8eV以下)材料とすることが好ましい。
【0035】
第1の電極101、又は第2の電極102は、スパッタリング法や蒸着法等を用いて形成することができる。なお蒸着法を用いる場合、第1の電極101、第1の層111乃至第3の層113、第2の電極102を、大気解放することなく連続して形成することが可能となる。このように大気解放することなく連続して発光素子を形成することにより、界面等への不純物混入を低減することができる。
【0036】
このような本発明の発光素子は、各発光層と第1の電極101との間に設けられた第1の層111の厚みを制御し、発光取り出し効率が高い状態を得ることができる。さらに本発明は発光ユニットを積層することにより、同じ電流密度における発光効率を高めることができるため、電流密度を低く維持することができ、発光素子の寿命を向上させることができる。
【0037】
以上のように、積層された発光ユニットを有する発光装置は、鮮明な、画質の優れた映像を表示でき、低消費電力を図ることができる。
【0038】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態とは異なる発光素子の構造について説明する。
【0039】
本発明は、基板上に形成されたすべての発光素子に、発光層が積層された発光素子を適用する必要はない。少なくとも一つの発光素子中に発光層を積層し、発光層と第1の電極101との距離を第1の層111により1/4波長の奇数倍とすることで、発光取り出し効率が高い状態を得、同じ電流密度における発光効率を高めることができ、電流密度を低く維持することができるからである。電流密度を低く維持する結果、発光素子の寿命を向上させることができる。そこで本実施の形態では、少なくとも一つの発光色を呈する発光素子を、発光層が積層された発光素子とする場合を説明する。
【0040】
図2には、同一基板上に形成された第1の発光ユニット100B、第2の発光ユニット100G、第3の発光ユニット100Rが設けられた状態を示す。何れの発光素子が、どの様な発光色を呈するかについて特に限定はないが、本形態では、第1の発光素子が青色の発光を呈し、第2の発光素子が緑色の発光を呈し、第3の発光素子が赤色の発光を呈する場合について説明する。
【0041】
青色の発光を呈する発光素子は2つの発光ユニット100B(1)及び100B(2)が積層された発光素子とする。便宜上このように積層された発光素子を積層型発光素子と呼ぶ。また赤色及び緑色の発光を呈する発光ユニット100R、100Gはそれぞれ発光層が単層からなる発光素子とし、便宜上単層型発光素子と呼ぶ。
【0042】
第1の電極101及び第2の電極102の構成は、上記実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0043】
このような積層型発光素子において、発光層と第1の電極101との距離を第1の層111(111B(1),111B(2))により1/4波長の奇数倍とする。その結果、発光取り出し効率が向上し、同じ発光輝度を選るのに必要な電流密度を低く維持することができる。電流密度を低く維持する結果、発光素子の寿命を向上させることができる。各発光ユニットには第2の層112(112(1),112B(2))、第3の層113(113B(1),113B(2))も含まれる。
【0044】
このように積層型発光素子は、発光効率を高めることができるため、電流密度を低く維持することができ、寿命を向上させることができる。そのため、劣化の生じやすい発光素子に対して、選択的に積層型発光素子を適用すると望ましい。
【0045】
なお単層型発光素子においても、第1の層111(111G,111R)により、発光層と第1の電極101との距離を1/4波長の奇数倍とすることができる。その結果、発光取り出し効率を高めることができる。各発光ユニットには第2の層112(112G,112R)、第3の層113(113G,113R)も含まれる。
【0046】
また積層型発光素子及び単層型発光素子において、第1の層111に導電性の高い材料を用い、当該第1の層111の膜厚を制御するため、特許文献1等に記載される従来の素子と比較して、駆動電圧を低くすることができる。
【0047】
以上のように、少なくとも一つの発光色を呈する発光素子を積層型発光素子とする発光装置は、鮮明な、画質の優れた映像を表示でき、低消費電力を図ることができる。
【0048】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態とは異なる発光色を呈する発光素子に積層型発光素子を適用する場合について説明する。
【0049】
本発明では、第1の発光ユニット100B以外の発光素子を積層型発光素子としてもよく、例えば緑色の発光のように人間の眼に対する感度の高い発光色を呈する発光ユニット100Gを単層とした単層型発光素子を用い、赤色あるいは青色の発光を呈する発光ユニット100R、100Bが積層された積層型発光素子としてもよい。さらに全発光素子において積層型発光素子とし、緑色を呈する発光ユニット100Gの積層数を、赤色あるいは青色の発光を呈する発光ユニット100R、100Gの積層数よりも少なくする、つまり一対の電極間に含まれる発光層の数を少なくなるように構成してもよい。
【0050】
その他の構成は、上記実施の形態と同様であるため説明を省略する。
【0051】
このような積層型発光素子において、発光層と第1の電極101との距離を第1の層111により1/4波長の奇数倍とする。その結果、発光取り出し効率が向上し、同じ輝度を得るために必要な電流密度を低く維持することができる。電流密度を低く維持する結果、発光素子の寿命を向上させることができる。
【0052】
なお単層型発光素子においても、第1の層111により、発光層と第1の電極101との距離を1/4波長の奇数倍とすることができる。その結果、発光取り出し効率を高めることができる。
【0053】
このように、人間の眼に対する感度の低い発光色を呈する発光素子と、人間の眼に対する感度の高い発光色を呈する発光素子とで一対の電極間に設ける発光層の数を異ならせることにより効率的に各色の輝度の調和をとることができる。
【0054】
また積層型発光素子及び単層型発光素子において、第1の層111に導電性の高い材料を用い、当該第1の層111の膜厚を制御するため、特許文献1等に記載される従来の素子と比較して、駆動電圧を低くすることができる。
【0055】
以上のように、少なくとも一つの発光色を呈する発光素子を積層型発光素子とする発光装置は、鮮明な、画質の優れた映像を表示でき、低消費電力を図ることができる。
【0056】
(実施の形態4)
本実施の形態では、各発光ユニットの構造及び材料について説明する。
【0057】
図3に示すように、単層型発光ユニットは、第1電極から順に、第1の層111、第2の層112、第3の層113が積層されている。
【0058】
このような発光ユニットを有する発光素子は、第2の電極の電位よりも第1の電極101の電位が高くなるように電圧を印加すると、第1の層111から第2の層112へ正孔が注入され、第3の層113から第2の層112へ電子が注入される。そして正孔と、電子とが、第2の層112において再結合し、発光物質を励起状態にする。そして、励起状態の発光物質は、基底状態に戻るときに発光する。
【0059】
これら第1の層111から第3の層113の材料について説明する。
【0060】
第1の層111は、正孔を発生する層である。このような機能は、正孔輸送性物質と、その物質に対して電子受容性を示す物質とを含む層とにすることより奏することができる。なお正孔輸送性物質に対して電子受容性を示す物質は、正孔輸送性物質に対して、モル比が0.5〜2(=正孔輸送性物質に対して電子受容性を示す物質/正孔輸送性物質)と成るように含まれていると好ましい。
【0061】
正孔輸送性物質とは、電子よりも正孔の輸送性が高い物質であり、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:α−NPD)、4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−{4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル}−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DNTPD)等の芳香族アミン化合物や、フタロシアニン(略称:H2Pc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、バナジルフタロシアニン(略称:VOPc)等のフタロシアニン化合物等の有機化合物を用いることができる。なお、正孔輸送性物質は、これらに限定されるものではない。
【0062】
また、正孔輸送性物質に対して電子受容性を示す物質は、例えば周期表第4族乃至第12族のいずれかから選ばれた金属の酸化物(金属酸化物)を用いることができる。中でも、周期表第4族乃至第8族のいずれかの金属酸化物は電子受容性の高いものが多く、特にバナジウム酸化物、モリブデン酸化物、ニオブ酸化物、レニウム酸化物、タングステン酸化物、ルテニウム酸化物、チタン酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物が好適である。酸化物以外であっても、上記金属の窒化物、酸化窒化物を用いてもよい。なお正孔輸送性物質に対して電子受容性を示す物質は、これらに限定されるものではなく、三塩化鉄(FeCl3)、三塩化アルミ(AlCl3)、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロ−キノジメタン(略称:F4TCNQ)を用いてもよい。
【0063】
このように第1の層111は、有機化合物からなる正孔輸送性物質と、上記金属酸化物からなる正孔輸送性物質に対して電子受容性を示す物質とが混在した層から形成する。なお、混在した層とは、有機化合物と無機化合物とが混成された層、各々薄く積層された層が含まれる。
【0064】
このような有機化合物と、無機化合物とが混在した層を用いることによって、当該有機化合物の結晶化を抑制することができ、抵抗の増加を伴わずに第1の層111を厚く形成することが可能となる。さらに、有機化合物と、上記金属酸化物からなる正孔輸送性物質に対して電子受容性を示す物質とが混在した層は導電性が高くなるため、抵抗の上昇を伴わずに厚膜化を図ることができる。そのため、第1の電極101上にゴミや汚れ等に起因する凹凸がある場合であっても、第1の層111の厚膜化によりこの凹凸の影響をほとんど受けない。従って、凹凸に起因する第1の電極101と、第2の電極102とのショート等の不良を防止することができる。また第1の層111を厚膜化することにより、第1の電極101と、第2の層112とを離すことができるので、金属に起因して発光が消光することを防ぐこともできる。
【0065】
なお第1の層111に、その他の有機化合物を含んでいてもよい。その他の有機化合物には、ルブレン等が挙げられる。ルブレンを加えることにより、信頼性を向上させることができる。
【0066】
このような第1の層111は、蒸着法により形成することができる。第1の層111として、複数の化合物が混在した層を形成する場合には共蒸着法を用いるとよい。共蒸着法は、抵抗加熱蒸着同士による共蒸着法、電子ビーム蒸着同士による共蒸着法、抵抗加熱蒸着と電子ビーム蒸着による共蒸着法がある。また、その他抵抗加熱蒸着とスパッタリング法による成膜、電子ビーム蒸着とスパッタリングによる成膜など、同種、異種方法を組み合わせて、第1の層111を形成してもよい。また、上記例は2種の材料を含む層を示しているが、3種以上の材料を含む場合も同様に、同種、異種方法を組み合わせて形成することができる。
【0067】
次に、発光層を含む層である第2の層112について説明する。発光層を含む層とは、発光層のみからなる単層であっても、発光層を含む多層でも構わない。具体的な多層の構造は、発光層の他、電子輸送層、及び正孔輸送層のいずれから選ばれた層を含む。図3では、第2の層112が正孔輸送層122、発光層123、電子輸送層124を含む多層の場合を示す。
【0068】
正孔輸送層122は、公知な材料から形成することができる。典型的な例としては、芳香族アミン系化合物であり、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(以下、α−NPDと示す)や、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(以下、TDATAと示す)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(以下、MTDATAと示す)などのスターバースト型芳香族アミン化合物が挙げられる。
【0069】
発光層123は、発光物質が、発光物質の有するエネルギーギャップよりも大きいエネルギーギャップを有する物質からなる層中に、分散して含まれた層であることが好ましい。なお、エネルギーギャップとはLUMO準位とHOMO準位との間のエネルギーギャップをいう。また発光物質は、発光効率が良好で、所望の発光波長の発光をし得る物質を用いればよい。
【0070】
発光物質を分散状態にするために用いる物質は、例えば、9,10−ジ(2−ナフチル)−2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)等のアントラセン誘導体、または4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)等のカルバゾール誘導体の他、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称:Znpp2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:ZnBOX)等の金属錯体等を用いることができる。但し、発光物質を分散状態にするために用いる物質はこれらの材料に限定されない。発光物質を分散状態として有する発光層123は、発光物質からの発光が、濃度に起因して消光してしまうことを防ぐことができる。
【0071】
次に発光層123の発光物質を示す。赤色の発光を得たいときには、4−ジシアノメチレン−2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJTI)、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJT)、4−ジシアノメチレン−2−tert−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJTB)やペリフランテン、2,5−ジシアノ−1,4−ビス[2−(10−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]ベンゼン等を用いることができる。但しこれらの材料に限定されず、600nmから680nmに発光スペクトルのピークを有する発光を呈する物質を用いることができる。
【0072】
緑色の発光を得たいときは、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、クマリン6やクマリン545T、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)等を用いることができる。但しこれらの材料に限定されず、500nmから550nmに発光スペクトルのピークを有する発光を呈する物質を用いることができる。
【0073】
青色の発光を得たいときは、9,10−ジ(2−ナフチル)−2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)、9,9’−ビアントリル、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPA)、9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−ガリウム(略称:BGaq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)等を用いることができる。但しこれらの材料に限定されず、420nmから500nmに発光スペクトルのピークを有する発光を呈する物質を用いることができる。
【0074】
このような発光物質を選択することにより、フルカラー表示の発光装置を作製することができる。
【0075】
また白色の発光を得たいときは、例えば、第1の電極101側から順に、TPD(芳香族ジアミン)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、赤色発光色素であるナイルレッドをドープしたAlq3、そしてAlq3を蒸着法等により積層して形成する。
【0076】
その他にも、第1の電極101側から順に、α−NPD、ペリレンをドープしたα−NPD、DCM1をドープしたビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)、Alq3を蒸着法等により積層してもよい。
【0077】
また、30wt%の2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)を電子輸送剤としてポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)に分散し、4種類の色素(TPB、クマリン6、DCM1、ナイルレッド)を適当量分散することで白色の発光を得ることができる。
【0078】
なお上記の赤色、青色、緑色、白色のいずれかの単色表示の発光装置を形成する場合であっても、カラーフィルターによって所望の発光を呈することができ、フルカラー表示を行うこともできる。
【0079】
このような発光層123として、有機化合物に金属酸化物を混在させた層を用いてもよい。有機化合物と、金属酸化物とが混在した層を用いることによって、抵抗の増加を伴わずに第2の層112を厚く形成することが可能となる。
【0080】
次いで電子輸送層124について説明する。電子輸送層124とは、第2の電極102から注入された電子を発光層123へ輸送する機能を有する層である。このように、電子輸送層124を設け、第2の電極102と発光層123とをより離すことによって、発光が金属に起因して消光することを防ぐことができる。
【0081】
電子輸送層124は、正孔の移動度よりも電子の移動度が高い物質を用いて形成することが好ましい。また、電子輸送層124は、10−6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質を用いて形成することがより好ましい。また、電子輸送層124は、以上に述べた物質からなる層を二以上組み合わせて形成した多層構造の層であってもよい。具体的な電子輸送層の材料は、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、先に述べたBAlqなど、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体が好適である。
また、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体もある。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。
【0082】
このような第2の層112は、単層構造であっても、積層構造であっても、蒸着法により作製することができる。なお第2の層112を構成する層のうち、混在した層を形成する場合には共蒸着法を用いることができる。共蒸着法は、抵抗加熱蒸着同士による共蒸着法、電子ビーム蒸着同士による共蒸着法、抵抗加熱蒸着と電子ビーム蒸着による共蒸着法がある。また、その他抵抗加熱蒸着とスパッタリング法による成膜、電子ビーム蒸着とスパッタリングによる成膜など、同種、異種方法を組み合わせて第2の層112を形成することができる。また、上記例は2種の材料を含む層を示しているが、3種以上の材料を含む場合も同様に、同種、異種方法を組み合わせて形成することができることは、上述のとおりである。
【0083】
次いで電子を発生する層である第3の層113について説明する。このような第3の層113は、例えば、電子輸送性物質と、その物質に対して電子供与性を示す物質とを含む層が挙げられる。
【0084】
なお電子輸送性物質とは、正孔よりも電子の輸送性が高い物質であり、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)等の金属錯体の他、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、4,4’ −ビス(5−メチル−ベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン(略称:BzOs)等を用いることができる。また第3の層113は、n型の半導体を用いて形成することができる。但し、電子輸送性物質はこれらに限定されない。
【0085】
また、電子輸送性物質に対して電子供与性を示す物質は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の中から選ばれた物質、具体的にはリチウム(Li)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)等を用いることができる。
【0086】
また、アルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属窒化物、アルカリ土類金属窒化物等も電子輸送性物質に対して電子供与性を示すことができる。これらの具体的な材料としては、リチウム酸化物(Li2O)、カルシウム酸化物(CaO)、ナトリウム酸化物(Na2O)、カリウム酸化物(K2O)、マグネシウム酸化物(MgO)等である。同等の効果が期待される材料として、アルカリ金属の窒化物又はフッ化物、アルカリ土類金属の窒化物又はフッ化物があり、具体的にはフッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)等が挙げられる。但し、電子輸送物質に対して電子供与性を示す物質は、これらに限定されない。なお、電子輸送性物質に対して電子供与性を示す物質は、電子輸送性物質に対して、モル比が0.5〜2(=電子輸送性物質に対して電子供与性を示す物質/電子輸送性物質)と成るように含まれていることが好ましい。
【0087】
また、第3の層113は、酸化亜鉛、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、酸化スズ、酸化チタンのような物質からなる層であってもよい。
【0088】
また第3の層113は、有機化合物からなる電子輸送性物質と、電子輸送性物質に対して電子供与性を示す物質とが混在した層から形成すると、好ましい。このような有機化合物と、無機化合物とが混在した層を用いることによって、第3の層113に用いる有機化合物の結晶化を抑制することができ、抵抗の増加を伴わずに第3の層113を厚く形成することが可能となるからである。さらに、有機化合物と、上記金属酸化物からなる電子輸送性物質に対して電子供与性を示す物質とが混在した層は導電性が高くなるため、抵抗の増加を伴わずに厚膜化を図ることができる。そのため、基板上にゴミや汚れ等に起因する凹凸がある場合であっても、第3の層113の厚膜化により凹凸の影響をほとんど受けない。従って、凹凸に起因する第1の電極101と、第2の電極102とのショート等の不良を防止することができる。このように第3の層113を厚膜化することにより、第1の電極101と、第2の層112とを離すことができるので、金属に起因して発光が消光することを防ぐこともできる。
【0089】
電子輸送性物質に対して電子供与性を示す物質は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の中から選ばれた物質、具体的にはリチウム(Li)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)等から選ばれた金属の酸化物が挙げられる。具体的な金属酸化物としては、上記アルカリ金属の酸化物またはアルカリ土類金属の酸化物が挙げられる。具体的には、リチウム酸化物(Li2O)、カルシウム酸化物(CaO)、ナトリウム酸化物(Na2O)、カリウム酸化物(K2O)、マグネシウム酸化物(MgO)等である。同等の効果が期待される材料として、アルカリ金属の窒化物又はフッ化物、アルカリ土類金属の窒化物又はフッ化物があり、具体的にはフッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)等が挙げられる。また同等の効果を得ることができれば、当該金属の酸化窒化物を用いてもよい。
【0090】
このような第3の層113は、蒸着法により作製することができる。第3の層113として、混在した層を形成する場合には共蒸着法を用いることができる。共蒸着法は、抵抗加熱蒸着同士による共蒸着法、電子ビーム蒸着同士による共蒸着法、抵抗加熱蒸着と電子ビーム蒸着による共蒸着法がある。また、その他抵抗加熱蒸着とスパッタリング法による成膜、電子ビーム蒸着とスパッタリングによる成膜など、同種、異種方法を組み合わせて第3の層113を形成することができる。また、上記例は2種の材料を含む層を示しているが、3種以上の材料を含む場合も同様に、同種、異種方法を組み合わせて形成することができることは、上述のとおりである。
【0091】
なお積層型の発光ユニットを有する発光素子では、発光層間に設けられた第3の層113は、いずれか一方の発光層にのみ励起エネルギーが移動してしまうことを阻止する層としても機能する。このような第3の層113は、その下方に形成される発光層のイオン化ポテンシャルよりも大きいイオン化ポテンシャルを有すると共に、その上方に形成される発光層のLUMO準位よりも大きいLUMO準位を有する層であることが好ましい。
【0092】
第3の層113の厚さは1nm〜30nmとなるように形成されていることが好ましい。
【0093】
なお積層型の発光ユニットを有する発光素子では、各第1の層111、各第3の層113にバイポーラ性の物質を用いてもよい。バイポーラ性の物質とは、電子または正孔のいずれか一方のキャリアの移動度と他方のキャリアの移動度とを比較したときに、一方のキャリアの移動度に対する他方のキャリアの移動度の比の値が100以下、好ましくは10以下である物質をいう。バイポーラ性の物質の中でも特に、正孔及び電子の移動度が1×10−6cm2/Vs以上の物質を用いることが好ましい。バイポーラ性の物質として、例えば、2,3−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)キノキサリン(略称:TPAQn)、2,3−ビス{4−[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]フェニル}−ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:NPADiBzQn)等が挙げられる。また同一のバイポーラ性の物質を用いて、各第1の層111、各第3の層113を形成しても構わない。
【0094】
なお、本発明は発光取り出し効率が高くなるように、各発光素子の第1の層111の膜厚を1/4波長の奇数倍とすることを特徴としており、図3に示す発光ユニットを有する発光素子構成に限定されるものではない。例えば図3では、第3の層113に接して形成された電子輸送層124設ける構成を示したが、電子輸送層124を有しない場合もある。この場合、発光層123が第3の層113と接する構成となるため、当該発光層123には、発光物質を分散状態とするための物質を用いるとよい。同様に、正孔輸送層122を有しない場合もあり得る。
【0095】
また、Alq3等のように分散状態としなくても発光することができる物質を発光層123に用いてもよい。Alq3等は、キャリアの輸送性の良い発光物質であるため、分散状態とすることなくAlq3のみからなる層を発光層123として機能させることができる。
【0096】
このような第1の層111から第3の層113の作製は、蒸着法等の同一方法により形成することができる。そのため、大気解放することなく連続して形成することができる。このように大気解放することなく連続して第1の層111から第3の層113を形成することにより、界面等への不純物混入を低減することができる。
【0097】
次に、図3とは異なる発光ユニットの構造を図4に示す。
【0098】
図4に示すように、本実施の形態に示す発光ユニットは、第1電極101から順に、第1の層111、第2の層112、第3の層113、第4の層128が積層されており、第4の層128を設けたことを特徴とする。第4の層128は、第1の層111と同様の材料から形成することができ、その他の構成は、上述したとおりのため、説明を省略する。
【0099】
このように第4の層128を設けると、第2の電極102を形成するときの各層へのダメージを低減することができる。
【0100】
そして積層された発光ユニットにおいて、発光取り出し効率が高くなるように、各発光ユニットの第1の層111の膜厚を異ならせる。膜厚を異ならせる場合、第4の層128も第1の層111と同様に、有機化合物と金属酸化物とが混在された層を用いるとよい。第4の層128に混在された層を用いることにより、厚膜化しても駆動電圧が上昇せず好ましいためである。なお金属酸化物と同等の効果を得ることができれば、金属の窒化物であってもよいし、酸化窒化物であってもよい。
【0101】
そして第4の層128を厚膜化することにより、第2の電極102を形成するときのダメージの、さらなる低減を期待できる。
【0102】
また本発明は積層された発光ユニットにおいて、第1の層111、第4の層128に有機化合物と、金属酸化物とが混在した層を用い、該層の膜厚により発光取り出し効率を高め、さらには低駆動電圧化を達成した発光装置を提供することができる。また該層を厚くすることにより、発光層123と第1の電極101、又は発光層123と第2の電極102とを離すことができるため、発光の消光を防止できる。そして発光ユニットを厚く形成することができるので、電極間の短絡を防止でき、量産性を高めることができる。
【0103】
以上のような層を有する積層型の発光ユニットを有する発光素子を備えた発光装置は、鮮明な、画質の優れた映像を表示でき、低消費電力を図ることができる。
【0104】
(実施の形態5)
本実施の形態では、図5を用いて発光素子への電流の供給を制御するトランジスタ(駆動用トランジスタ)がp型の薄膜トランジスタ(TFT)611の場合における、発光素子603から発せられる光を第2の電極102側から取り出す上面出射型であって、3つ分の画素の断面図について説明する。本実施の形態では、各RGBの発光を呈する発光ユニット100R、100G、100Bを積層しているため、それぞれの色が混在し、白色として視認することができる。そのため、対向基板610に形成された各色カラーフィルター612R、612G、612Bにより、フルカラー表示を行う形態を示す。
【0105】
他に白色を呈する積層された発光素子は、赤色の発光が呈される発光ユニットと、青緑色の発光が呈される発光ユニットとを積層する構成がある。それぞれの色が混合することにより、白色として視認することができる。このように、積層型発光素子が有する複数の発光ユニットからの発光色はそれぞれ異なっていてもよく、各発光ユニットの発光層と電極との光学的距離は決定される。
【0106】
図5に示すように、基板600上にp型のTFT611を形成し、第1の電極101と、TFT611が電気的に接続されている。また第1の電極101上に、各RGBの発光を呈する発光ユニットが積層され、第2の電極102が順に積層されている。なお発光素子の構造は、上記実施の形態で示したように第1の層111から第3の層113を有し、またさらに第4の層128からなる場合がある。
【0107】
TFT611は、厚さが10nm乃至200nmであって、島状に分離された半導体膜に形成されたチャネル形成領域、不純物元素が添加されたソース領域、及びドレイン領域を有している。半導体膜は、非晶質半導体膜、結晶性半導体膜、微結晶半導体膜のいずれを用いてもよい。例えば、結晶性半導体膜の場合、非晶質半導体膜を形成し、加熱処理により得られた結晶性半導体膜がある。なお加熱処理とは、加熱炉、レーザー照射、若しくはレーザー光の代わりにランプから発する光の照射(以下、ランプアニールと表記する)、又はそれらを組み合わせて用いた処理のことである。レーザー照射を用いる場合、連続発振型のレーザー(CWレーザー)又はパルス発振型のレーザー(パルスレーザー)を用いることができ、さらにそれらを併せて用いてもよい。例えば連続発振の基本波のレーザー光と、連続発振の高調波のレーザー光とを照射するようにしてもよいし、連続発振の基本波のレーザー光と、パルス発振の高調波のレーザー光とを照射するようにしてもよい。複数のレーザー光を照射することにより、エネルギーを補うことができる。
【0108】
さらにレーザー照射では、レーザーの入射角を半導体膜に対してθ(0°<θ<90°)となるようにしてもよい。その結果、レーザーの干渉を防止することができる。
【0109】
またパルス発振型のレーザーであって、半導体膜がレーザー光によって溶融してから固化するまでに、次のパルスのレーザー光を照射できるような発振周波数でレーザー光を発振させることで、走査方向に向かって連続的に成長した結晶粒を得ることができるレーザーを用いてもよい。このようなレーザーは、パルス発振の周期が、半導体膜が溶融してから完全に固化するまでの時間よりも短くなるように、周波数の下限を定めたパルスビームを用いる。実際に用いることができるパルスビームの発振周波数は10MHz以上であって、通常用いられている数十Hz〜数百Hzの周波数帯よりも著しく高い周波数帯を使用する。
【0110】
その他の加熱処理による結晶化手段として、加熱炉を用いる場合、非晶質半導体膜を500〜550℃で2〜20時間かけて加熱する方法がある。このとき、徐々に高温となるように温度を500〜550℃の範囲で多段階に設定するとよい。最初の低温加熱工程により、半導体膜の水素等が出てくるため、結晶化の際の膜荒れを低減し、さらにダングリングボンドの終端を行うことができる。さらに、結晶化を促進させる金属元素、例えばNiを非晶質半導体膜上に形成すると、加熱温度を低減することができ好ましい。このような金属元素を用いた結晶化であっても、600〜950℃に加熱しても構わない。
【0111】
但し、金属元素を形成する場合、半導体素子の電気特性に悪影響を及ぼすことが懸念されるので、該金属元素を低減又は除去するためのゲッタリング工程を施す必要が生じる。例えば、非晶質半導体膜をゲッタリングシンクとして金属元素を捕獲するよう工程を行えばよい。
【0112】
さらにTFT611は、該半導体膜を覆うゲート絶縁膜、ゲート電極を有し、該ゲート電極上には水素を含む絶縁膜が設けられていてもよい。該水素によって、結晶性半導体膜中のダングリングボンドを終端することができる。
【0113】
TFT611のソース領域及びドレイン領域は、高濃度不純物領域のみを有するシングルドレイン構造とする。またTFT611は、半導体膜のソース領域及びドレイン領域は、低濃度不純物領域、及び高濃度不純物領域を有するLDD(低濃度ドレイン)構造としてもよい。なお低濃度不純物領域がゲート電極と重なったGOLD構造としてもよい。
【0114】
TFT611は層間絶縁膜607で覆われており、層間絶縁膜607上には開口部を有する絶縁膜608が形成されている。なお本実施の形態において、層間絶縁膜607及び絶縁膜608を有する構成に限定されず、層間絶縁膜607のみが設けられた構成であってもよい。層間絶縁膜607は、単層構造であっても、積層構造であってもよく、無機材料、又は有機材料、若しくは無機材料と有機材料との積層構造から形成することができる。有機材料を用いると、平坦性を高めることができる。有機材料としては、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジスト又はベンゾシクロブテンを用いることができる。層間絶縁膜607は、シロキサン、ポリシラザンを用いることができる。シロキサンとは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む絶縁膜である。またポリシラザンとは、珪素(Si)と窒素(N)の結合を有するポリマー材料を含む液体材料を出発原料として形成される絶縁膜である。本実施の形態では、層間絶縁膜607を無機材料から形成した構成を示す。
【0115】
絶縁膜608の開口部において、第1の電極101が一部露出しており、該開口部において第1の電極101、発光ユニット100B、100G、100R、第2の電極102が順に積層された積層型発光素子を形成している。
【0116】
各発光ユニット100R、100G、100Bにおいては、各発光層123からの発光取り出し効率が高くなるように、それぞれの第1の層111の膜厚が1/4波長の奇数倍とされている。そして第1の層111には、有機化合物と、金属酸化物とが混在する層を用い、厚膜化による駆動電圧の上昇を防止する。
【0117】
また各発光素子は、発光層123を有する第2の層112の他に、正孔輸送性物質を有する第1の層111、電子輸送性物質を有する第3の層113等を有していることは上述の通りである。
【0118】
本実施の形態では、TFT611がpチャネル型のため、第1の電極101を陽極とし、第1の電極101から正孔輸送性物質を有する第1の層111、発光層123を有する第2の層112、電子輸送性物質を有する第3の層113の順に積層する。なおTFT611がn型の場合、第1の電極101を陰極とすると好ましく、第1の電極101から、電子輸送性物質を有する第3の層113、発光層123を有する第2の層112、正孔輸送性物質を有する第1の層111の順に積層する。
【0119】
本実施の形態では、上面出射型であるため、第1の電極101は反射性(つまり非透光性)を有し、第2の電極102は透光性を有する材料から形成する。これら材料は、上記実施の形態を参照することができる。
【0120】
図5に示した画素の場合、発光素子603から発せられる光を、矢印で示すように第2の電極102側から取り出すことができ、カラーフィルター612R、612G、612Bによりフルカラー表示を行うことができる。
【0121】
このような本発明により、単層の白色材料を用いた発光素子と比較して、各RGBの発光波長が重なった広範囲な白色発光を得ることができる。また各RGBの発光ユニットにおいて、発光取り出し効率が大きくなるように第1の層111の膜厚を1/4波長の奇数倍とする。そのため、各RGBによって、第1の層111の膜厚が異なり、特に厚くする必要がある第1の層111には有機化合物と、金属酸化物とが混在した層を用いると好ましい。厚膜化した場合であっても、駆動電圧の上昇を防止できるからである。
【0122】
なお本実施の形態において、TFT611をn型とすることができる。その場合、第1の電極101を陰極とし第1の電極101から順に、電子輸送性物質を有する第3の層113、発光層123を有する第2の層112、正孔輸送性物質を有する第1の層111の順に積層するとよい。
【0123】
(実施の形態6)
本実施の形態では、TFT611がp型で、発光素子603から発せられる光を第1の電極101側から取り出す下面出射型であって、基板600に形成された各色カラーフィルター612R、612G、612Bにより、フルカラー表示を行う形態を示す。
【0124】
図6では、発光素子603の第1の電極101と、TFT611が電気的に接続されている。また第1の電極101上に各発光ユニット100B、100G、100Rが積層され、第2の電極102が順に積層されている。
【0125】
TFT611は、上記実施の形態と同様に形成することができる。なお本実施の形態においても、層間絶縁膜607及び絶縁膜608を有する構成に限定されず、層間絶縁膜607のみが設けられた構成であってもよい。また下面出射型であるため、第1の電極101は透光性を有し、第2の電極102は反射性を有する。これら材料は、上記実施の形態を参照することができる。そして、光の出射側である第1の電極101側となる基板600に、各色カラーフィルター612R、612G、612Bが設けられている。なおカラーフィルター612R、612G、612Bは、基板600に設ける必要はなく、光の出射方向であればよい。例えば、層間絶縁膜607と同じ層に設けることができる。
【0126】
積層された発光素子603も、上記実施の形態と同様に形成することができる。すなわち各発光ユニット100R、100G、100Bにおいては、各発光層123からの発光取り出し効率が高くなるように、それぞれの第3の層113の膜厚を1/4波長の奇数倍とする。そして第3の層113には、有機化合物と、金属酸化物とが混在する層を用い、厚膜化による駆動電圧の上昇を防止する。第3の層113の具体的な材料としては、リチウム酸化物(Li2O)、カルシウム酸化物(CaO)、ナトリウム酸化物(Na2O)、カリウム酸化物(K2O)、マグネシウム酸化物(MgO)等である。同等の効果が期待される材料として、アルカリ金属の窒化物又はフッ化物、アルカリ土類金属の窒化物又はフッ化物があり、具体的にはフッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)等が挙げられる。
【0127】
図6に示した画素の場合、発光素子603から発せられる光を、矢印で示すように第1の電極101側から取り出すことができ、カラーフィルター612R、612G、612Bによりフルカラー表示を行うことができる。
【0128】
このような本発明により、単層の白色材料を用いた発光素子と比較して、各RGBの発光波長が重なった広範囲な白色発光を得ることができる。また各RGBの発光ユニットにおいて、発光取り出し効率が大きくなるように第3の層113の膜厚を1/4波長の奇数倍とする。そのため、各RGBによって、第3の層113の膜厚が異なり、特に厚くする必要がある第3の層113には有機化合物と、金属酸化物とが混在した層を用いるとよい。厚膜化した場合であっても、駆動電圧の上昇を防止できるからである。
【0129】
なお本実施の形態において、TFT611をn型とする場合、第1の電極101を陰極とする。そのため第1の電極101から順に、電子輸送性物質を有する第3の層113、発光層123を有する第2の層112、正孔輸送性物質を有する第1の層111の順に積層するとよい。
【0130】
(実施の形態7)
本実施の形態では、各発光ユニット100R、100G、100Bに各発光色を呈する発光材料を用い、カラーフィルターを用いることなくフルカラー表示を行う場合を説明する。
【0131】
図7に示すように、TFT611がp型で、発光素子603から発せられる光を第2の電極102側から取り出す上面出射型の発光装置を説明する。基板600上にTFT611、各発光ユニット100R、100G、100Bを設ける。このとき、青色(B)は積層型発光素子、つまり積層された発光ユニット100Bとし、赤色(R)及び緑色(G)は単層型発光素子、つまり単層の発光ユニット100R、100Bとする。そして発光取り出し効率を高めるため、各発光ユニットの第1の層111の膜厚を1/4波長の奇数倍とする。積層型発光素子では、発光ユニット毎に第1の層111の膜厚を1/4波長の奇数倍とする。
【0132】
このように青色の発光ユニットを積層するのは、青色を発する発光素子はその他の色を発する発光素子と比べて、寿命が短く、発光効率が低いからである。発光効率が低いため、高い電圧で駆動することが要求され、劣化が生じやすい。このような発光素子を積層した積層型発光素子とすることにより、同じ電流密度における発光効率を高めることができるため、印加する電流密度を低く維持することができ、寿命を向上させることができる。
【0133】
その他、TFT611、層間絶縁膜607、絶縁膜608の構成は上記実施の形態と同様であるため、説明を省略する。この場合、第1の電極101は反射性材料、第2の電極102は透光性材料から形成する。
【0134】
図7に示すようにフルカラー表示を行う場合であっても、上記実施の形態で示したように基板600又は対向基板610にカラーフィルター612R、612G、612Bを設けてもよい。カラーフィルターにより、発光スペクトルの幅を細くすることができ、きれいな映像を提供することができる。
【0135】
なおTFT611はn型であってもよく、その場合第1の電極101を陰極とすると好ましい。そして第1の電極101から順に、電子輸送性物質を有する第3の層113、発光層123を有する第2の層112、正孔輸送性物質を有する第1の層111を積層する。
【0136】
また積層型発光素子は、青色(B)以外の赤色(R)及び緑色(G)の発光素子に用いてもよい。積層することにより、同じ電流密度における発光効率を高めることができるため、電流密度を低く維持することができ、寿命を向上させることができる。
【0137】
(実施の形態8)
本実施の形態では、対向基板610により封止された状態の発光装置において、外部回路と接続可能な状態であるモジュールの形態について説明する。なお本実施の形態では、層間絶縁膜607及び絶縁膜608を有する構成ではなく、層間絶縁膜607のみが設けられた構成を用いて説明する。このように層間絶縁膜607のみが設けられた構成であると、工程数が削減されるため、量産性を高くすることができる。
【0138】
図8(A)には、基板600上に画素部720、画素部の周囲に第1の走査線駆動回路721、第2の走査線駆動回路722、信号線駆動回路723が一体形成された発光装置を示す。第1の走査線駆動回路721、第2の走査線駆動回路722、信号線駆動回路723は、外部回路とフレキシブルプリントサーキット716を介して接続している。
【0139】
発光装置は、発光素子が直接大気に触れることがないように封止される。本実施の形態では、シール材712を用いて、基板600と対向基板610を貼り合わせ、封止を行っている。
【0140】
図8(B)には、図8(A)のE−Fの断面を示す。図8(B)をみると、封止した内部751は中空状態となっており、ここに窒素ガス若しくは不活性ガス等の気体、又は樹脂を充填させるとよい。発光素子の劣化の原因となる酸素や水分の侵入を防止することができるからである。また外部回路から入力された信号がフレキシブルプリントサーキット716を介して接続配線705から第1の走査線駆動回路721、第2の走査線駆動回路722、信号線駆動回路723に入力され、当該駆動回路からの信号よって発光素子ごとに発光・非発光を制御することができ、映像として映し出される。フレキシブルプリントサーキット716と、接続配線705とは、異方性導電材料715により接続されている。
【0141】
そして基板600と対向基板610とはシール材712で貼り合わせられているが、この間隔を保持するために、スペーサー752が設けられている。スペーサー752は、TFT611の層間絶縁膜607上に設けられているが、これに限定されない。またスペーサー752は、柱状であっても球状であってもよい。
【0142】
発光素子603が単色発光を呈す、又はRGBの発光を呈する場合において、対向基板610にカラーフィルター612を設けてもよい。カラーフィルター612を設ける位置も、対向基板610側でなく、基板600側であってもよい。カラーフィルター612により、きれいな映像を提供することができる。
【0143】
図8(C)にも、図8(A)のE−Fの断面を示し、図8(B)とは基板600と対向基板610との貼り合わせにシール材712を用いず、樹脂753を用いた点が異なる。樹脂753を用いて行うことにより、シール材712の形成不良をなくすことができる。このような樹脂753には乾燥剤を添加してもよい。また出射方向に応じて、透光性を有する樹脂753を用いるとよい。
【0144】
本実施の形態において、基板上に画素部720のみが形成されて、第1の走査線駆動回路721、第2の走査線駆動回路722、信号線駆動回路723がTAB方式により実装されたり、画素部720とその周辺に第1の走査線駆動回路721、第2の走査線駆動回路722、信号線駆動回路723がCOG(Chip On Glass)方式により実装されたり、画素部720と第1の走査線駆動回路721、第2の走査線駆動回路722を基板600上に一体形成し、信号線駆動回路723を別途ICとして実装してもよい。本発明の発光装置は、いずれの駆動回路の形態であってもその効果を奏することができる。また駆動回路において、結晶性半導体膜からなるTFT、又は非晶質半導体膜からなるTFTを用いてもよい。例えば、第1の走査線駆動回路721、第2の走査線駆動回路722は、信号線駆動回路723と比較して高速動作が要求されないため、非晶質半導体膜を用いたTFTを用いることができる。また信号線駆動回路723であっても、その一部の回路、例えばバッファ回路には、非晶質半導体膜を用いたTFTを用いることができる。
【0145】
(実施の形態9)
本実施の形態では、上記実施の形態と異なる発光装置の形態を例示する。なお本実施の形態では、層間絶縁膜607及び絶縁膜608を有する構成ではなく、層間絶縁膜607のみが設けられた構成を用いて説明する。このように層間絶縁膜607のみが設けられた構成であると、工程数が削減されるため、量産性を高くすることができる。
【0146】
図15(A)には、図5に示すような上面出射型の発光装置と、図6に示すような下面出射型の発光装置とを貼り合わせて、一つの発光装置とした形態を示す。この場合、下面出射型の発光装置の対向基板として、上面出射型の発光装置の基板600を用いることができる。
【0147】
例えば、下面出射型の発光装置において発光素子603まで形成する。そして、シール材712により、上面出射型の発光装置と、当該下面出射型の発光装置とを貼り合わせる。このとき、上面出射型の発光装置は、対向基板610が張り合わされた状態であるとよい。
【0148】
上記実施の形態と同様に、貼り合わせたことにより生じた空間には、窒素ガス若しくは不活性ガス、又は樹脂を充填するとよい。例えば、樹脂として、エポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂は接着性も有するため、接着強度を高めることができる。
【0149】
図15(B)には、図5に示すような上面出射型の発光装置と、図6に示すような下面出射型の発光装置とを貼り合わせて、一つの発光装置とした形態であって、走査線駆動回路や信号線駆動回路723を共有する形態を示す。走査線駆動回路や信号線駆動回路723を共有するとは、一方の発光装置の基板600上に設けられた走査線駆動回路や信号線駆動回路から、他方の発光装置に設けられた発光素子603へ信号を供給するよう配線する。そのため、他方の発光装置は、基板600上に画素部720のみが設けられた状態で、貼り合わせることができる。
【0150】
上記実施の形態と同様に、貼り合わせたことにより生じた空間には、窒素ガス若しくは不活性ガス、又は樹脂を充填するとよい。例えば、樹脂として、エポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂は接着性も有するため、接着強度を高めることができる。
【0151】
また本発明を適用できる発光装置は、上面出射型の発光装置と、下面出射型の発光装置といった、異なる出射方向である発光装置に限定されず、同じ出射方向である発光装置同士を貼り合わせてもよい。例えば、図6に示すような下面出射型の発光装置同士を貼り合わせて、一つの発光装置とすることができる。この場合、出射方向が同じであるため、下面出射型の発光装置同士を向き合うように配置し、シール材712により貼り合わせ、外部方向に光を出射する。同様に、図5に示すような上面出射型の発光装置同士を貼り合わせて、一つの発光装置とすることもできる。この場合、外部方向に光を出射するように基板600同士を貼り合わせればよい。
【0152】
下面出射型の発光装置を向き合うように貼り合わせる場合、図15(C)に示すように対向基板610を設けることなく貼り合わせることが可能である。その結果、発光装置を薄型化することができる。例えば、下面出射型の発光装置において、発光素子603まで形成する。そして、シール材712を用いて、他方の下面出射型の発光装置を貼り合わせる。このように形成することにより、対向基板610を兼ねることができる。勿論、それぞれの下面出射型の発光装置において対向基板610が張り合わされた状態で、貼り合わせてもよい。
【0153】
上記実施の形態と同様に、貼り合わせたことにより生じた空間には、窒素ガス若しくは不活性ガス、又は樹脂を充填するとよい。例えば、樹脂として、エポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂は接着性も有するため、接着強度を高めることができる。
【0154】
本実施の形態は、上記実施の形態と自由に組み合わせることができる。例えば本実施の形態で示した発光装置に、図8(C)で示したシール材を用いずに樹脂753で封止する構造を用いてもよい。
【0155】
このような発光装置により、表示装置の高付加価値化を図り、新たな用途を提供することができる。
【0156】
(実施の形態10)
本実施の形態では、発光装置が有する画素の等価回路について、図9を用いて説明する。
【0157】
図9(A)は、画素の等価回路の一例を示したものであり、信号線912、電源線915、走査線910発光素子603、トランジスタ611、911、容量素子904を有する画素の等価回路である。トランジスタにはTFTを適用することができる。
【0158】
このような等価回路において、信号線912には信号線駆動回路から、映像信号が入力される。トランジスタ911は、スイッチング用トランジスタと呼び、走査線910に入力される選択信号に従って、トランジスタ611のゲートへの、該映像信号の電位の供給を制御することができる。トランジスタ611は、駆動用トランジスタと呼び、該映像信号の電位に従って、発光素子603への電流の供給を制御することができる。供給される電流に伴う発光素子の発光状態により、表示を行うことができる。容量素子904は、トランジスタ611のゲート・ソース間の電圧を保持することができる。
【0159】
図9(B)は、図9(A)に示した画素の等価回路に、新たに走査線919、トランジスタ918を設けた画素の等価回路である。
【0160】
トランジスタ918は、消去用トランジスタと呼び、トランジスタ611のゲートとソースを同電位とし、強制的に発光素子603に電流が流れない状態を作ることができる。そのため、時間階調表示において、全画素に映像信号が入力され終わる前に、映像信号を入力することができ、デューティー比を高くすることができる。
【0161】
図9(C)に示すように、消去用トランジスタ918のかわりに、ダイオードとして機能する素子(ダイオード素子)938を設けてもよい。その結果、消去用トランジスタ918を用いる場合と同様に、強制的に発光素子603に電流が流れない状態を作ることができる。
【0162】
動作方法としては、走査線910を選択して、トランジスタ911をオン状態とし、信号線912から信号を容量素子904に入力する。すると、その信号に応じて、トランジスタ611の電流が制御され、電源線915から発光素子603へ電流が流れ、発光する。この発光素子603へ電流を流すための電圧が駆動電圧に相当する。
【0163】
信号を消去したい場合は、走査線919を選択して、ダイオード素子938をオン状態として、トランジスタ611へ電流が流れるようにする。その結果、駆動トランジスタ611がオフ状態となる。すると、電源線915から発光素子603へ電流が流れないようになる。その結果、非点灯期間を作ることができ、点灯期間の長さを自由に制御できるようになる。これにより、デューティー比を高くすることができる。
【0164】
なお、ダイオード素子938は、整流性がある素子であればよい。PN型ダイオードでもよいし、PIN型ダイオードでもよいし、ショットキー型ダイオードでもよいし、ツェナー型ダイオードでもよい。また、トランジスタを用いて、ダイオード接続(ゲート電極と高電位側電極とを接続)して、用いてもよい。図9(C)ではダイオード素子938に、ダイオード接続(ゲート電極とドレイン電極が接続)したN型のトランジスタを用いているが、これに限定されず、P型を用いてもよい。P型のトランジスタを用いる場合、ゲート電極とソース電極とを接続する。
【0165】
図9(D)は、図9(B)に示した画素の等価回路に、新たにトランジスタ925と、配線926を設けた画素の等価回路である。トランジスタ925は、そのゲートの電位が、配線926によって固定されている。そして、トランジスタ611とトランジスタ925は、電源線915と発光素子603との間に直列に接続されている。よって図9(D)では、トランジスタ925により発光素子603に供給される電流の値が制御され、トランジスタ611により発光素子603への該電流の供給の有無が制御できる。
【0166】
以上、図9(A)(B)(C)(D)に示した画素の等価回路は、デジタル方式で駆動させることができる。デジタル方式で駆動させる場合、各駆動用トランジスタに多少の電気特性ばらつきがあっても、スイッチング素子として使用するため、問題にならない。
【0167】
本発明の発光装置が有する画素の等価回路は、デジタル方式であっても、アナログ方式であっても駆動させることができる。例えば図10に示す画素の等価回路は、信号線912、電源線915、走査線910、発光素子603、トランジスタ911、920、921、容量素子904を有する。図10において、トランジスタ920、921はカレントミラー回路を構成しており、p型のトランジスタからなる。このような画素の等価回路では、デジタル方式の場合、信号線912からデジタルビデオ信号が入力され、時間階調により発光素子603に供給される電流の値が制御される。またアナログ方式の場合、信号線912からアナログビデオ信号が入力され、その値に応じて発光素子603に供給される電流の値が制御される。アナログ方式で駆動させる場合、低消費電力化を図ることができる。
【0168】
以上のような画素において、信号線912、電源線915、配線926には、信号線駆動回路から信号が入力される。また走査線910、919には、走査線駆動回路から信号が入力される。信号線駆動回路や走査線駆動回路は、単数、又は複数設けることができる。例えば、画素部を介して第1の走査線駆動回路、第2の走査線駆動回路を設けることができる。
【0169】
また図9(A)に示す画素を用いても、図9(B)を用いて説明したように、強制的に発光素子603に電流が流れない状態を作ることができる。例えば、第1の走査線駆動回路により、発光素子603が点灯するタイミングで、トランジスタ911を選択し、第2の走査線駆動回路により発光素子603へ強制的に電流が流れないような信号を走査線910に供給する。強制的に電流が流れないような信号(Write Erase Signal)とは、発光素子603の第1の電極101と、第2の電極102とが同電位となるための電位を与える信号である。このように、駆動方法によっても、強制的に発光素子603に電流が流れない状態を作ることができ、デューティー比を高めることができる。
【0170】
なお、図9(A)(B)(C)(D)図10では、容量素子904を図示したが、トランジスタのゲート容量や他の寄生容量で賄うことが可能な場合には、設けなくてもよい。
【0171】
このように本発明の発光装置が有する画素の等価回路は、多くの形態をとることができる。
【0172】
(実施の形態11)
本実施の形態では、上記実施の形態と異なり、パッシブ型の発光装置について説明する。
【0173】
図19に示すように、基板600上に下地絶縁膜311が設けられ、電極となる第1の導電体312、第2の導電体313が積層されている。これら電極を制御することにより、発光素子603に電流を供給し、表示を行うことができる。発光素子603はマトリクス状に二次元的に配置され、それにより画像を表示する画面を構成する。
【0174】
電極を制御する信号は、異方性導電材料324、325を介して接続されたICチップ323によって作製される。またICチップ323には、異方性導電材料715によって接続されたフレキシブルプリントサーキット716を介して外部信号等が入力される。
【0175】
発光素子603の封止はパッシベーション膜713、封止材317及び対向基板610で構成されている。パッシベーション膜713は窒化珪素膜など水蒸気を透過しにくい絶縁膜で形成する。また、窒化珪素膜は近紫外域での光透過率が若干下がるので、それを改善するために酸素を加えた窒化酸化珪素膜を用いても良い。その他に窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムをパッシベーション膜713に適用しても良い。対向基板610はガラス、プラスチックなどの他に、ステンレス、アルミニウムなどの金属を用いても良い。発光素子603の発光を対向基板610側から放射させる場合には、対向基板610は光を透過するガラスやプラスチックを用いることが好ましい。プラスチックはアクリル、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate :PET)などを用いることができ、平板状若しくはフィルム状のものを用いることができる。対向基板610にプラスチックを用いる場合は、水蒸気などを遮断するガスバリア膜や、表面の硬度を高めるハードコート膜を設けても良い。対向基板610とパッシベーション膜713との間に設ける封止材317は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂材料を用いる。封止材317は、対向基板610と基板600を固定すると共に、この両者の間隔を一定に保持している。そのために、封止材317にスペーサーとなるシリカ粒子などを含ませておいても良い。このような構成により、発光素子603の劣化の原因となる水分等の侵入を防止することができる。
【0176】
また発光素子603は、積層型発光素子であるため、発光効率を高めることができる。また、発光層と反射電極間の距離を/4波長の奇数倍とすることで、発光取り出し効率を高めることができる。そのため、流す電流量を低く維持することができ、発光素子の寿命を向上させることができる。
【0177】
このようなパッシブ型の発光装置は、画素部における走査線と信号線との交差部に半導体素子を設けない構成であるため、開口率を高めることができる。
【0178】
また対向基板610等にカラーフィルターを設けることによって、フルカラー表示を行うことができる。
【0179】
(実施の形態12)
本実施の形態では、本発明の発光装置を適用したテレビ受像機について説明する。
【0180】
図11は本発明の発光装置と、回路基板802とを組み合わせたモジュールを示している。回路基板802には、例えば、コントロール回路や信号分割回路などが設けられている。発光装置は上記実施の形態により作製される。
【0181】
この発光装置には、発光素子が各画素に設けられた画素部720と、第1及び第2の走査線駆動回路721、722、選択された画素にビデオ信号を供給する信号線駆動回路723が備えられている。また、回路基板802から発光装置へは、フレキシブルプリントサーキット716を介して信号が送られる。回路基板802にはコントロール回路814や信号分割回路815が設けられている。
【0182】
本発明の発光装置を実装して、低消費電力、高精細なテレビ受像機を完成させることができる。
【0183】
図12は、テレビ受像機の主要な構成を示すブロック図を示している。回路基板802に形成される外部回路の構成として、図12に示すように、映像信号の入力側では、チューナ811で受信した信号のうち、映像信号を増幅する映像信号増幅回路812と、そこから出力される信号を赤色、緑色、青色の各色に対応した色信号に変換する映像信号処理回路813と、その映像信号をドライバICの入力仕様に変換するためのコントロール回路814などがある。コントロール回路814から、第1及び第2の走査線駆動回路721、722と信号線駆動回路723にそれぞれ信号が出力される。デジタル駆動する場合には、信号線駆動回路723とコントロール回路814との間に信号分割回路815を設け、入力デジタル信号をm個に分割して供給する構成とすることができる。
【0184】
チューナ811で受信した信号のうち、音声信号は、音声信号増幅回路816に送られ、その出力は音声信号処理回路817を経てスピーカ818に供給される。制御回路819は受信局(受信周波数)や音量の制御情報を入力部820から受け、チューナ811や音声信号処理回路817に信号を送出する。
【0185】
このような外部回路を実装した発光装置を、図13に示すように、筐体831に組みこんで、テレビ受像機を完成させることができる。当該発光装置により表示画面832が形成され、その他付属設備としてスピーカ818、操作スイッチ834などが適宜備えられている。このように、本発明を適用してテレビ受像機を完成させることができる。
【0186】
このテレビ受像機は、発光装置を含んで構成されることにより、鮮明な、画質の優れた映像を表示することができる。
【0187】
(実施の形態13)
本発明の発光装置を表示部に備えた電子機器として、テレビ受像機以外に、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、携帯電話装置(単に携帯電話機、携帯電話ともよぶ)、PDA等の携帯情報端末、携帯型ゲーム機、コンピュータ用のモニター、コンピュータ、カーオーディオ等の音響再生装置、家庭用ゲーム機等の記録媒体を備えた画像再生装置等が挙げられる。その具体例について、図14を参照して説明する。
【0188】
図14(A)に示す携帯情報端末機器は、本体9201、表示部9202等を含んでいる。表示部9202には、本発明の発光装置を適用することができる。その結果、鮮明な、画質の優れた映像を表示でき、低消費電力化された携帯情報端末機器を提供することができる。
【0189】
図14(B)に示すデジタルビデオカメラは、表示部9701、表示部9702等を含んでいる。表示部9701には、本発明の発光装置を適用することができる。その結果、鮮明な、画質の優れた映像を表示でき、低消費電力化されたデジタルビデオカメラを提供することができる。
【0190】
図14(C)に示す携帯電話機は、本体9101、表示部9102等を含んでいる。表示部9102には、本発明の発光装置適用することができる。その結果、鮮明な、画質の優れた映像を表示でき、低消費電力化された携帯電話機を提供することができる。
【0191】
図14(D)に示す携帯型のテレビジョン装置は、本体9301、表示部9302等を含んでいる。表示部9302には、本発明の発光装置を適用することができる。その結果、鮮明な、画質の優れた映像を表示でき、低消費電力化された携帯型のテレビジョン装置を提供することができる。なお携帯型のテレビジョン装置としては、携帯電話機などの携帯端末に搭載する小型のものから、持ち運びをすることができる中型のものまで、幅広く本発明の発光装置を適用することができる。
【0192】
図14(E)に示す携帯型のコンピュータは、本体9401、表示部9402等を含んでいる。表示部9402には、本発明の発光装置を適用することができる。その結果、鮮明な、画質の優れた映像を表示でき、低消費電力化された携帯型のコンピュータを提供することができる。
【0193】
このような電子機器は、発光装置を含んで構成されることにより、鮮明な、画質の優れた映像を表示でき、低消費電力化することができる。
【実施例】
【0194】
(実施例1)
本実施例では、第1の電極101から順に、青色を呈する発光ユニット、緑色を呈する発光ユニット、赤色を呈する発光ユニットが積層された素子構造を説明する。
【0195】
第1の電極101はアルミニウムを有し反射性の高い電極とし、第2の電極102は酸化珪素を含むインジウム錫酸化物を用いて透光性の高い電極とした。
【0196】
青色を呈する発光ユニットは、第1の層111Bに酸化珪素を含むインジウム錫酸化物を用い、第2の層112Bにα−NPDの蒸着層と、t−BuDNAの蒸着層と、Alq3の蒸着層とが順に積層した層を用い、第3の層113BにBzOsとLiとの共蒸着層を用いた。緑色を呈する発光ユニットは、第1の層111Gにα−NPDとモリブデン酸化物とが混在した層(共蒸着法により形成されているため共蒸着層をもいう)を用い、第2の層112Gにα−NPDの蒸着層と、Alq3とクマリン6との共蒸着層と、Alq3の蒸着層とが順に積層した層を用い、第3の層113GにBzOsとLiとの共蒸着層を用いた。Alq3とクマリン6の質量比は1:0.005となるようにした。
【0197】
赤色を呈する発光ユニットは、第1の層111Rに有機化合物としてα−NPDを用い、α−NPDとモリブデン酸化物とが混在した層(共蒸着法により形成されているため共蒸着層をもいう)を用い、第2の層112Rにα−NPDの蒸着層と、Alq3とルブレンとDCJTIとの共蒸着層とが順に積層した層を用い、第3の層113にBzOsとLiとの共蒸着層を用いた。Alq3、ルブレン、DCJTIの質量比は、1:1:0.02となるようにした。また各発光素子の第3の層113Rに用いたBzOs、Liの質量比は1:0.01となるようにした。また第1の層111に用いたモリブデン酸化物、α−NPDの質量比は1:0.25となるようにした。
【0198】
このように、発光層と第1の電極101との距離を制御するための第1の層111Bには、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物を適用することができる。その場合、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物からなる第1の層111Bと、第2の層112Bとの間にはDNTPD等の正孔注入性に優れた材料からなる層を設けるとよい。
【0199】
本実施例の発光素子は、緑色を呈する発光ユニット及び赤色を呈する発光ユニットにおいて、発光層と第1の電極101との距離を制御するための層に、α−NPDに代表される有機化合物と、モリブデン酸化物とが混在した層を用いることを特徴とする。このようなモリブデン酸化物と有機化合物とが混在した層を用いることで、厚くしても駆動電圧が上昇しないことがわかっている。そのため、各発光層(t−BuDNAを含む層、Alq3とクマリン6を含む層、Alq3、ルブレン、DCJTIを含む層)、とアルミニウムからなる第1の電極101との距離を制御するために、積層された緑色及び赤色を呈する発光ユニットにおいて、モリブデン酸化物と有機化合物とが混在した層を用いると、駆動電圧を上昇させずに膜厚を厚くすることができ好適である。
【0200】
(実施例2)
本実施例では、発光層と第1の電極101との距離を制御するための第1の層111Bに、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物に代えて、α−NPDとモリブデン酸化物とが混在した層を用い、上記実施例と同様な材料を用いて、第1の電極101から順に、青色を呈する発光ユニット、緑色を呈する発光ユニット、赤色を呈する発光ユニットを積層した素子構造を説明する。
【0201】
本実施例の発光素子は、発光層と第1の電極101との距離を制御するための層に、α−NPDを代表とする有機化合物と、モリブデン酸化物とが混在した層を用いることを特徴とする。このようなモリブデン酸化物と有機化合物とが混在した層を用いることで、厚くしても駆動電圧が高まらないことがわかっている。そのため、各発光層(t−BuDNAを含む層、Alq3とクマリン6を含む層、Alq3、ルブレン、DCJTIを含む層)、とアルミニウムからなる第1の電極101との距離を制御するために、積層されたすべての発光ユニットにおいて、モリブデン酸化物と有機化合物とが混在した層を用いると、膜厚を厚くすることができ好適である。
【0202】
(実施例3)
本実施例では、シミュレーションにより、本発明の積層型発光素子、及び単層型発光素子を用いて輝度の比較を行った。積層型発光素子は、図18(A)に示すように、第1の電極101及び第2の電極102間に、緑色を呈する発光ユニット100a及び100bを積層した構造を用いた。緑色を呈する発光ユニット100a、100bは、それぞれ第1の層111a、111b、第2の層112a、112b、及び第3の層113a、113bを有し、これら第1の層乃至第3の層の材料は上記実施例1と同様とし、第1の層111aには酸化珪素を含むインジウム錫酸化物からなる層を用い、第1の層111bにはα−NPDとモリブデン酸化物とが混在した層を用いた。なお第1の電極101にアルミニウムを用い、第2の電極102として酸化珪素を含むインジウム錫酸化物を用いた。また、第1の電極101の膜厚は100nm、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物からなる第1の層111aの膜厚は40nm、α−NPDの蒸着層の膜厚は10nm、Alq3とクマリン6との共蒸着層の膜厚は40nm、Alq3の蒸着層の膜厚は20nm、BzOsとLiとの共蒸着層の膜厚は20nm、α−NPDとモリブデン酸化物とが混在した第1の層111bの膜厚は30nm、第2の電極102の膜厚は110nmとしてシミュレーションを行った。
【0203】
単層型発光素子は、図18(B)に示すように、第1の電極101及び第2の電極102間に緑色を呈する発光ユニット100aを有する構造を用いた。緑色を呈する発光ユニット100aは、第1の層111a、第2の層112a、第3の層113aを有し、これら第1の層乃至第3の層の材料は図18(A)に示すユニットと同様とし、第1の層111aには酸化珪素を含むインジウム錫酸化物からなる層を用いた。
【0204】
図16には、図18(A)(B)に示す発光素子における、波長(nm)に対する輝度のグラフを示す。素子Aは、図18(B)示した発光素子であって、第1の電極101と発光層との距離を、第1の層111の膜厚により1/4波長の奇数倍としていない単層型発光素子の結果である。素子Bは、図18(A)示した発光素子であって、第1の電極101と発光層との距離を、第1の層111の膜厚により1/4波長の奇数倍とした積層型発光素子の上側発光素子の結果である。素子Cは、図18(A)示した発光素子であって、第1の電極101と発光層との距離を、第1の層111の膜厚により1/4波長の奇数倍とした積層型発光素子の下側発光素子の結果である。素子Dは、素子Bと素子Cの発光を合わせたものである。
【0205】
図16において素子Aと、素子B又はCとを比較することにより、本発明の積層型発光素子で、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物からなる第1の層111a又はα−NPDとモリブデン酸化物とが混在した第1の層111bにより、第1の電極101と発光層との距離を1/4波長の奇数倍とした場合、輝度が向上することがわかる。
【0206】
図17には、図18で示した第1の層111aにα−NPDとモリブデン酸化物とが混在した層を用いてシミュレーションを行った結果である、波長(nm)に対する輝度のグラフを示す。すなわち素子AからDの条件において、α−NPDとモリブデン酸化物とが混在した層からなる第1の層111aを有する点が図16の場合と異なっている。素子Aでのα−NPDとモリブデン酸化物とが混在した層からなる第1の層111aの膜厚は35nmであった。
【0207】
図17において素子Aと、素子B又はCとを比較することにより、単層型発光素子を積層型発光素子とし、α−NPDとモリブデン酸化物とが混在した第1の層111a、111bにより、第1の電極101と発光層との距離を1/4波長の奇数倍とした場合、輝度が向上することがわかる。
【0208】
さらに図17と図16とを比較すると、α−NPDとモリブデン酸化物とが混在した層からなる第1の層111aを用いた発光素子の方が、発光輝度が高いことがわかる。さらにα−NPDとモリブデン酸化物とが混在した第1の層111aは、α−NPDのみの層と比較して導電性が高く、厚膜化しても駆動電圧が上昇せず好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0209】
【図1】本発明の発光素子を示す図である。
【図2】本発明の発光素子を示す図である。
【図3】本発明の発光素子を示す図である。
【図4】本発明の発光素子を示す図である。
【図5】本発明の発光装置を示す図である。
【図6】本発明の発光装置を示す図である。
【図7】本発明の発光装置を示す図である。
【図8】本発明の発光装置を示す図である。
【図9】本発明の発光装置の画素回路を示す図である。
【図10】本発明の発光装置の画素回路を示す図である。
【図11】本発明のテレビ受像機を示す図である。
【図12】本発明のテレビ受像機のシステムを示す図である。
【図13】本発明のテレビ受像機を示す図である。
【図14】本発明の電子機器を示す図である。
【図15】本発明の発光装置を示す図である。
【図16】積層された発光素子の波長に対する輝度を示したグラフである。
【図17】積層された発光素子の波長に対する輝度を示したグラフである。
【図18】本実施例の発光素子を示す図である。
【図19】本発明の発光装置を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示手段、光源などとして利用できる発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子を有する表示装置(以下、発光装置と呼ぶ)は、液晶素子を有する表示装置、つまり液晶表示装置と比較して、広視野角、高応答特性、低消費電力であり、盛んに開発が行われている。
【0003】
発光素子は、一対の電極間に有機材料や無機材料を有しており、これらに電流を与え、発光材料を励起させることにより、所定の発光色を得ることができる。このような発光素子の発光輝度を高めるためには、多くの電流を供給する、つまり電極に高い電圧を印加することが考えられるが、低消費電力化のメリットを損なうことになってしまう。また多くの電流を流すことにより、発光素子の劣化を早めてしまうことにもなる。
【0004】
そこで、複数の発光素子を積層し、単層の場合と同じ電流密度の電流を流すことによって、発光輝度が高くなるといった発光素子が提案されている(特許文献1参照)。これを利用すれば、積層構造を有する発光素子では、単層の場合の半分以下の電流密度としても、所定の輝度を得ることができる。例えばn倍の輝度を所望電流密度において得たい場合は、電極間に存在する同一の構成の発光ユニットをn個とすれば、電流密度を上昇させることなくn倍の輝度を実現できるとされている。このとき、駆動電圧もn倍、もしくはそれ以上になってしまうが、n倍の輝度が寿命を犠牲にせずに実現できることの利点は大きい、と記載されている。
【特許文献1】特開2003−272860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、発光位置が分離して複数存在しているため、各発光位置から反射電極までの光学膜厚がすべて1/4波長の約奇数倍に設定することが開示されている。特許文献1の実施例5には、青色発光ユニットと、赤色発光ユニットを備えた発光素子において、青色発光位置から反射電極までの光学的距離を、意図的に発光ユニットのα−NPDから構成されるホール輸送層の膜厚によって制御することが開示されている。
【0006】
α−NPDといったホール輸送層は、ホール注入層と比べると、その性質はより発光層に近く導電性が低いため、これを厚くすると駆動電圧が上昇してしまうので膜厚を厚くする構成は好ましくない。
【0007】
また干渉により取り出し効率が悪くならない距離は発光波長によって異なるため、複数の発光層を積層した発光素子では、α−NPDの膜厚を各発光層で異ならせる必要がある。そのため、青色発光ユニットのα−NPDの膜厚を異ならせただけでは、発光素子全体の発光効率を高めることにはならない。また特許文献1において、赤色発光ユニットのα−NPDの膜厚を異ならせると、発光素子全体の膜厚が大きくなり、駆動電圧が上昇してしまう。駆動電圧が上昇することにより、発光装置の消費電力が増加するということが問題となっていた。
【0008】
また発光色毎に発光効率が異なっている。発光装置の発光全体として輝度のバランスをとるためには、発光効率が悪い発光素子は過大な電流を流さなければならず、そのために発光素子の劣化が加速するという不具合があった。
【0009】
そこで本発明は、発光装置の消費電力を低減することを課題とする。また、発光装置における画素の輝度変化に係る劣化を低減することを課題とする。また、発光層が積層された発光素子において、各発光層からの発光色がきれいに表示された優れた映像を表示でき、低消費電力化された発光装置、及びその作製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に鑑み本発明は、電極間に積層されて形成された発光層を含む発光素子において、各発光層と電極との光学的距離(以下、単に距離と呼ぶ)を制御することを特徴とする。具体的には、反射電極と各発光層との各距離を、それらの間に設けられた層の膜厚によりそれぞれ決定させ、発光取り出し効率を高めることを特徴とする。
【0011】
さらに本発明は、発光層が積層された発光素子と、発光層が単層である発光素子とを一体形成した画素部を形成することを特徴とする。例えば、発光輝度が低いと懸念される発光素子においては、発光層を積層して形成し、その他の発光素子は単層の発光層で形成する。
【0012】
本発明の具体的な形態は、対向する第1の電極及び第2の電極間に、複数の発光層を積層し、複数の発光層と、第1の電極とのそれぞれの光学的距離は、発光層と第1の電極間に設けられた層の膜厚により、発光取り出し効率が高くなるように1/4波長の奇数倍とされたことを特徴とする発光装置である。蒸着精度を考慮し、奇数倍から±10%程度の差異は奇数倍に含まれるものとする。発光層と第1の電極間に設けられた層の膜厚とは、複数の発光層を積層した積層型発光素子において、複数の発光層のそれぞれの間に設けられた層の膜厚、および前記第1の電極に最も近い発光層と前記第1の電極との間に設けられた層の膜厚である。
【0013】
本発明の別の形態は、対向する第1の電極及び第2の電極間に、複数の発光層を積層し、複数の発光層からの発光色はそれぞれ異なり、複数の発光層と、第1の電極とのそれぞれの距離は、発光層と前記第1の電極間に設けられ、且つ複数の発光層それぞれに接した層の膜厚により、発光取り出し効率が高くなるように1/4波長の奇数倍とされたことを特徴とする発光装置である。
【0014】
本発明の別の形態は、対向する第1の電極及び第2の電極間に、複数の発光層を積層した積層型発光素子と、第1の電極及び第2の電極間に、単数の発光層を有する単層型発光素子と、を有し、積層型発光素子において、複数の発光層と、第1の電極とのそれぞれの距離は、発光層と第1の電極間に設けられた層の膜厚により、発光取り出し効率が高くなるように1/4波長の奇数倍とされたことを特徴とする発光装置である。
【0015】
本発明の別の形態は、対向する第1の電極及び第2の電極間に、複数の発光層を積層した積層型発光素子と、第1の電極及び第2の電極間に、単数の発光層を有する単層型発光素子と、を有し、積層型発光素子が有する複数の発光層からの発光色はそれぞれ異なり、積層型発光素子において、複数の発光層と、第1の電極とのそれぞれの光学的距離は、発光層と第1の電極間に設けられ、且つ複数の発光層それぞれに接した層の膜厚により、発光取り出し効率が高くなるように1/4波長の奇数倍とされたことを特徴とする発光装置である。
【0016】
本発明は発光取り出し効率が高くなるように制御する層に導電性の高い材料を用い、当該第1の層111の膜厚を制御して、反射電極と発光層との距離を1/4波長の奇数倍とすることを特徴とする。上記特許文献1と比べると、本発明の発光素子は、光学的距離を設定する膜に、導電性の高い材料を用いるため、駆動電圧を低くすることができる。
【0017】
本発明において、発光層は三重項励起状態からの発光を呈する物質、又は一重項励起状態からの発光を呈する物質を有することができる。そのため、積層された発光層は三重項励起状態からの発光と、一重項励起状態からの発光とが組み合わされた発光を得ることができる。勿論、積層された発光層から、三重項励起状態からの発光のみ、又は一重項励起状態からの発光のみを得ることもできる。
【0018】
なお、このように積層された発光層を有する発光素子を、自然数nを用いて、電極間にn個の発光層を有する発光素子と表すこともできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、単層の発光層からなる発光素子と比べて、同じ電流を供給した場合に得られる輝度を高めることができる。すなわち、同じ輝度を得るための電極間に流れる電流を低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0021】
(実施の形態1)
本実施の形態では、複数の発光ユニットが積層された発光素子の構造について説明する。
【0022】
図1には、第1の電極101と、第2の電極102との間に、第1の発光ユニット100B、第2の発光ユニット100G、第3の発光ユニット100Rが順に積層された発光素子を示す。何れの発光ユニットが、どの様な発光色を呈するかについて特に限定はないが、本形態では、第1の発光ユニットが青色の発光を呈し、第2の発光ユニットが緑色の発光を呈し、第3の発光ユニットが赤色の発光を呈する場合について説明する。なお、積層された発光ユニットとは、2以上の発光ユニットが積層された状態を指し、本実施の形態では3つの発光ユニットが積層された状態で説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
図1に示す発光素子では、第1の電極101を反射性の高い材料で形成し、第2の電極102を透光性の高い材料で形成し、第2の電極102から光を取り出す。各発光ユニット100R、100G、100Bは、それぞれ第1の層111R、111G、111B、第2の層112R、112G、112B、第3の層113R、113G、113Bを有する。
【0024】
このような発光素子において、発光層を有する層として第2の層112(112B,112G,112R)を用いる場合、各発光素子の第2の層112と第1の電極101との距離を、第1の層111(111B,111G,111R)の膜厚によって1/4波長の奇数倍とすることを特徴とする。すなわち、発光層と、第1の電極101との距離を、その間に設けられた層の厚みによって1/4波長の奇数倍とすることを特徴とする。そのため、発光ユニットごとに第1の層111R、111G、111Bの膜厚が異なる。
【0025】
発光ユニットを積層しているため、発光取り出し効率を高めるために各発光層と第1の電極101との距離はそれぞれ異なる。そのため、各発光層と第1の電極101との間に設けられた第1の層111の厚みをそれぞれ制御した発光素子を提供する。その結果、発光取り出し効率が高い状態を提供する。
【0026】
このように発光ユニットを積層することにより、発光効率を高めることができるため、流す電流量を低く維持することができ、発光素子の寿命を向上させることができる。
【0027】
なお本実施の形態では、すべての第1の層111R、111G、111Bの膜厚を制御した形態を示すが、本発明は積層された発光ユニットが有する第1の層111のいずれか一つの膜厚を制御すればよい。いずれか一つの第1の層111を制御することによって、発光取り出し効率が高い状態を提供でき、流す電流量を低く維持する効果を奏することができるからである。
【0028】
なお本発明において、積層された発光層は異色の発光を呈する層を有する必要はない。すなわち本発明は、同色の発光を呈する層を積層してもよい。同色の発光を呈する層を積層しても、発光効率が高い状態を提供でき、流す電流量を低く維持する効果を奏することができるからである。
【0029】
また本発明では、第1の層111に導電性の高い材料を用い、当該第1の層111の膜厚を制御するため、特許文献1等に記載される従来の素子と比較して、駆動電圧を低くすることができる。
【0030】
第1の層111乃至第3の層113(113B,113G,113R)は、スパッタリング法や蒸着法等を用いて形成することができる。
【0031】
次に電極について説明する。第1の電極101は反射性を有する材料から形成し、第2の電極102は透光性を有する材料で形成する。なお透光性を有するためには、非透光性を有する材料を非常に薄く形成することによって、得ることもできる。
【0032】
第1の電極101の材料は、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、若しくはパラジウム(Pd)等の金属材料を用いることができ、上記金属材料の単層、又は積層を用いることができる。なお、第1の電極101は、例えばスパッタ法や蒸着法等を用いて形成することができる。
【0033】
また、第2の電極102の材料は、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物、2〜20%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム等の透光性材料を用いることができる。その他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、若しくはパラジウム(Pd)等の非透光性を有する金属材料であって、透光性を有する程度に薄膜化して用いることができる。また第2の電極102は、上記金属材料の単層、又は積層を用いることができる。積層構造を用いる場合、上記非透光性を有する金属材料を薄膜化し、その上に透光性材料を積層する構成を用いることもできる。第2の電極102を薄く形成することにより、抵抗が高くなることを防止するため、補助配線を設けることもできる。
【0034】
なお第1の電極101又は第2の電極102は、発光素子に印加する電圧によって、それぞれ陽極又は陰極となり得る。陽極となる場合は、仕事関数の大きい(仕事関数4.0eV以上)材料とし、陰極となる場合は、仕事関数の小さい(仕事関数3.8eV以下)材料とすることが好ましい。
【0035】
第1の電極101、又は第2の電極102は、スパッタリング法や蒸着法等を用いて形成することができる。なお蒸着法を用いる場合、第1の電極101、第1の層111乃至第3の層113、第2の電極102を、大気解放することなく連続して形成することが可能となる。このように大気解放することなく連続して発光素子を形成することにより、界面等への不純物混入を低減することができる。
【0036】
このような本発明の発光素子は、各発光層と第1の電極101との間に設けられた第1の層111の厚みを制御し、発光取り出し効率が高い状態を得ることができる。さらに本発明は発光ユニットを積層することにより、同じ電流密度における発光効率を高めることができるため、電流密度を低く維持することができ、発光素子の寿命を向上させることができる。
【0037】
以上のように、積層された発光ユニットを有する発光装置は、鮮明な、画質の優れた映像を表示でき、低消費電力を図ることができる。
【0038】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態とは異なる発光素子の構造について説明する。
【0039】
本発明は、基板上に形成されたすべての発光素子に、発光層が積層された発光素子を適用する必要はない。少なくとも一つの発光素子中に発光層を積層し、発光層と第1の電極101との距離を第1の層111により1/4波長の奇数倍とすることで、発光取り出し効率が高い状態を得、同じ電流密度における発光効率を高めることができ、電流密度を低く維持することができるからである。電流密度を低く維持する結果、発光素子の寿命を向上させることができる。そこで本実施の形態では、少なくとも一つの発光色を呈する発光素子を、発光層が積層された発光素子とする場合を説明する。
【0040】
図2には、同一基板上に形成された第1の発光ユニット100B、第2の発光ユニット100G、第3の発光ユニット100Rが設けられた状態を示す。何れの発光素子が、どの様な発光色を呈するかについて特に限定はないが、本形態では、第1の発光素子が青色の発光を呈し、第2の発光素子が緑色の発光を呈し、第3の発光素子が赤色の発光を呈する場合について説明する。
【0041】
青色の発光を呈する発光素子は2つの発光ユニット100B(1)及び100B(2)が積層された発光素子とする。便宜上このように積層された発光素子を積層型発光素子と呼ぶ。また赤色及び緑色の発光を呈する発光ユニット100R、100Gはそれぞれ発光層が単層からなる発光素子とし、便宜上単層型発光素子と呼ぶ。
【0042】
第1の電極101及び第2の電極102の構成は、上記実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0043】
このような積層型発光素子において、発光層と第1の電極101との距離を第1の層111(111B(1),111B(2))により1/4波長の奇数倍とする。その結果、発光取り出し効率が向上し、同じ発光輝度を選るのに必要な電流密度を低く維持することができる。電流密度を低く維持する結果、発光素子の寿命を向上させることができる。各発光ユニットには第2の層112(112(1),112B(2))、第3の層113(113B(1),113B(2))も含まれる。
【0044】
このように積層型発光素子は、発光効率を高めることができるため、電流密度を低く維持することができ、寿命を向上させることができる。そのため、劣化の生じやすい発光素子に対して、選択的に積層型発光素子を適用すると望ましい。
【0045】
なお単層型発光素子においても、第1の層111(111G,111R)により、発光層と第1の電極101との距離を1/4波長の奇数倍とすることができる。その結果、発光取り出し効率を高めることができる。各発光ユニットには第2の層112(112G,112R)、第3の層113(113G,113R)も含まれる。
【0046】
また積層型発光素子及び単層型発光素子において、第1の層111に導電性の高い材料を用い、当該第1の層111の膜厚を制御するため、特許文献1等に記載される従来の素子と比較して、駆動電圧を低くすることができる。
【0047】
以上のように、少なくとも一つの発光色を呈する発光素子を積層型発光素子とする発光装置は、鮮明な、画質の優れた映像を表示でき、低消費電力を図ることができる。
【0048】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態とは異なる発光色を呈する発光素子に積層型発光素子を適用する場合について説明する。
【0049】
本発明では、第1の発光ユニット100B以外の発光素子を積層型発光素子としてもよく、例えば緑色の発光のように人間の眼に対する感度の高い発光色を呈する発光ユニット100Gを単層とした単層型発光素子を用い、赤色あるいは青色の発光を呈する発光ユニット100R、100Bが積層された積層型発光素子としてもよい。さらに全発光素子において積層型発光素子とし、緑色を呈する発光ユニット100Gの積層数を、赤色あるいは青色の発光を呈する発光ユニット100R、100Gの積層数よりも少なくする、つまり一対の電極間に含まれる発光層の数を少なくなるように構成してもよい。
【0050】
その他の構成は、上記実施の形態と同様であるため説明を省略する。
【0051】
このような積層型発光素子において、発光層と第1の電極101との距離を第1の層111により1/4波長の奇数倍とする。その結果、発光取り出し効率が向上し、同じ輝度を得るために必要な電流密度を低く維持することができる。電流密度を低く維持する結果、発光素子の寿命を向上させることができる。
【0052】
なお単層型発光素子においても、第1の層111により、発光層と第1の電極101との距離を1/4波長の奇数倍とすることができる。その結果、発光取り出し効率を高めることができる。
【0053】
このように、人間の眼に対する感度の低い発光色を呈する発光素子と、人間の眼に対する感度の高い発光色を呈する発光素子とで一対の電極間に設ける発光層の数を異ならせることにより効率的に各色の輝度の調和をとることができる。
【0054】
また積層型発光素子及び単層型発光素子において、第1の層111に導電性の高い材料を用い、当該第1の層111の膜厚を制御するため、特許文献1等に記載される従来の素子と比較して、駆動電圧を低くすることができる。
【0055】
以上のように、少なくとも一つの発光色を呈する発光素子を積層型発光素子とする発光装置は、鮮明な、画質の優れた映像を表示でき、低消費電力を図ることができる。
【0056】
(実施の形態4)
本実施の形態では、各発光ユニットの構造及び材料について説明する。
【0057】
図3に示すように、単層型発光ユニットは、第1電極から順に、第1の層111、第2の層112、第3の層113が積層されている。
【0058】
このような発光ユニットを有する発光素子は、第2の電極の電位よりも第1の電極101の電位が高くなるように電圧を印加すると、第1の層111から第2の層112へ正孔が注入され、第3の層113から第2の層112へ電子が注入される。そして正孔と、電子とが、第2の層112において再結合し、発光物質を励起状態にする。そして、励起状態の発光物質は、基底状態に戻るときに発光する。
【0059】
これら第1の層111から第3の層113の材料について説明する。
【0060】
第1の層111は、正孔を発生する層である。このような機能は、正孔輸送性物質と、その物質に対して電子受容性を示す物質とを含む層とにすることより奏することができる。なお正孔輸送性物質に対して電子受容性を示す物質は、正孔輸送性物質に対して、モル比が0.5〜2(=正孔輸送性物質に対して電子受容性を示す物質/正孔輸送性物質)と成るように含まれていると好ましい。
【0061】
正孔輸送性物質とは、電子よりも正孔の輸送性が高い物質であり、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:α−NPD)、4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−{4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル}−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DNTPD)等の芳香族アミン化合物や、フタロシアニン(略称:H2Pc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、バナジルフタロシアニン(略称:VOPc)等のフタロシアニン化合物等の有機化合物を用いることができる。なお、正孔輸送性物質は、これらに限定されるものではない。
【0062】
また、正孔輸送性物質に対して電子受容性を示す物質は、例えば周期表第4族乃至第12族のいずれかから選ばれた金属の酸化物(金属酸化物)を用いることができる。中でも、周期表第4族乃至第8族のいずれかの金属酸化物は電子受容性の高いものが多く、特にバナジウム酸化物、モリブデン酸化物、ニオブ酸化物、レニウム酸化物、タングステン酸化物、ルテニウム酸化物、チタン酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物が好適である。酸化物以外であっても、上記金属の窒化物、酸化窒化物を用いてもよい。なお正孔輸送性物質に対して電子受容性を示す物質は、これらに限定されるものではなく、三塩化鉄(FeCl3)、三塩化アルミ(AlCl3)、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロ−キノジメタン(略称:F4TCNQ)を用いてもよい。
【0063】
このように第1の層111は、有機化合物からなる正孔輸送性物質と、上記金属酸化物からなる正孔輸送性物質に対して電子受容性を示す物質とが混在した層から形成する。なお、混在した層とは、有機化合物と無機化合物とが混成された層、各々薄く積層された層が含まれる。
【0064】
このような有機化合物と、無機化合物とが混在した層を用いることによって、当該有機化合物の結晶化を抑制することができ、抵抗の増加を伴わずに第1の層111を厚く形成することが可能となる。さらに、有機化合物と、上記金属酸化物からなる正孔輸送性物質に対して電子受容性を示す物質とが混在した層は導電性が高くなるため、抵抗の上昇を伴わずに厚膜化を図ることができる。そのため、第1の電極101上にゴミや汚れ等に起因する凹凸がある場合であっても、第1の層111の厚膜化によりこの凹凸の影響をほとんど受けない。従って、凹凸に起因する第1の電極101と、第2の電極102とのショート等の不良を防止することができる。また第1の層111を厚膜化することにより、第1の電極101と、第2の層112とを離すことができるので、金属に起因して発光が消光することを防ぐこともできる。
【0065】
なお第1の層111に、その他の有機化合物を含んでいてもよい。その他の有機化合物には、ルブレン等が挙げられる。ルブレンを加えることにより、信頼性を向上させることができる。
【0066】
このような第1の層111は、蒸着法により形成することができる。第1の層111として、複数の化合物が混在した層を形成する場合には共蒸着法を用いるとよい。共蒸着法は、抵抗加熱蒸着同士による共蒸着法、電子ビーム蒸着同士による共蒸着法、抵抗加熱蒸着と電子ビーム蒸着による共蒸着法がある。また、その他抵抗加熱蒸着とスパッタリング法による成膜、電子ビーム蒸着とスパッタリングによる成膜など、同種、異種方法を組み合わせて、第1の層111を形成してもよい。また、上記例は2種の材料を含む層を示しているが、3種以上の材料を含む場合も同様に、同種、異種方法を組み合わせて形成することができる。
【0067】
次に、発光層を含む層である第2の層112について説明する。発光層を含む層とは、発光層のみからなる単層であっても、発光層を含む多層でも構わない。具体的な多層の構造は、発光層の他、電子輸送層、及び正孔輸送層のいずれから選ばれた層を含む。図3では、第2の層112が正孔輸送層122、発光層123、電子輸送層124を含む多層の場合を示す。
【0068】
正孔輸送層122は、公知な材料から形成することができる。典型的な例としては、芳香族アミン系化合物であり、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(以下、α−NPDと示す)や、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(以下、TDATAと示す)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(以下、MTDATAと示す)などのスターバースト型芳香族アミン化合物が挙げられる。
【0069】
発光層123は、発光物質が、発光物質の有するエネルギーギャップよりも大きいエネルギーギャップを有する物質からなる層中に、分散して含まれた層であることが好ましい。なお、エネルギーギャップとはLUMO準位とHOMO準位との間のエネルギーギャップをいう。また発光物質は、発光効率が良好で、所望の発光波長の発光をし得る物質を用いればよい。
【0070】
発光物質を分散状態にするために用いる物質は、例えば、9,10−ジ(2−ナフチル)−2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)等のアントラセン誘導体、または4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)等のカルバゾール誘導体の他、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称:Znpp2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:ZnBOX)等の金属錯体等を用いることができる。但し、発光物質を分散状態にするために用いる物質はこれらの材料に限定されない。発光物質を分散状態として有する発光層123は、発光物質からの発光が、濃度に起因して消光してしまうことを防ぐことができる。
【0071】
次に発光層123の発光物質を示す。赤色の発光を得たいときには、4−ジシアノメチレン−2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJTI)、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJT)、4−ジシアノメチレン−2−tert−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJTB)やペリフランテン、2,5−ジシアノ−1,4−ビス[2−(10−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]ベンゼン等を用いることができる。但しこれらの材料に限定されず、600nmから680nmに発光スペクトルのピークを有する発光を呈する物質を用いることができる。
【0072】
緑色の発光を得たいときは、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、クマリン6やクマリン545T、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)等を用いることができる。但しこれらの材料に限定されず、500nmから550nmに発光スペクトルのピークを有する発光を呈する物質を用いることができる。
【0073】
青色の発光を得たいときは、9,10−ジ(2−ナフチル)−2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)、9,9’−ビアントリル、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPA)、9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−ガリウム(略称:BGaq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)等を用いることができる。但しこれらの材料に限定されず、420nmから500nmに発光スペクトルのピークを有する発光を呈する物質を用いることができる。
【0074】
このような発光物質を選択することにより、フルカラー表示の発光装置を作製することができる。
【0075】
また白色の発光を得たいときは、例えば、第1の電極101側から順に、TPD(芳香族ジアミン)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、赤色発光色素であるナイルレッドをドープしたAlq3、そしてAlq3を蒸着法等により積層して形成する。
【0076】
その他にも、第1の電極101側から順に、α−NPD、ペリレンをドープしたα−NPD、DCM1をドープしたビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)、Alq3を蒸着法等により積層してもよい。
【0077】
また、30wt%の2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)を電子輸送剤としてポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)に分散し、4種類の色素(TPB、クマリン6、DCM1、ナイルレッド)を適当量分散することで白色の発光を得ることができる。
【0078】
なお上記の赤色、青色、緑色、白色のいずれかの単色表示の発光装置を形成する場合であっても、カラーフィルターによって所望の発光を呈することができ、フルカラー表示を行うこともできる。
【0079】
このような発光層123として、有機化合物に金属酸化物を混在させた層を用いてもよい。有機化合物と、金属酸化物とが混在した層を用いることによって、抵抗の増加を伴わずに第2の層112を厚く形成することが可能となる。
【0080】
次いで電子輸送層124について説明する。電子輸送層124とは、第2の電極102から注入された電子を発光層123へ輸送する機能を有する層である。このように、電子輸送層124を設け、第2の電極102と発光層123とをより離すことによって、発光が金属に起因して消光することを防ぐことができる。
【0081】
電子輸送層124は、正孔の移動度よりも電子の移動度が高い物質を用いて形成することが好ましい。また、電子輸送層124は、10−6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質を用いて形成することがより好ましい。また、電子輸送層124は、以上に述べた物質からなる層を二以上組み合わせて形成した多層構造の層であってもよい。具体的な電子輸送層の材料は、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、先に述べたBAlqなど、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体が好適である。
また、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体もある。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。
【0082】
このような第2の層112は、単層構造であっても、積層構造であっても、蒸着法により作製することができる。なお第2の層112を構成する層のうち、混在した層を形成する場合には共蒸着法を用いることができる。共蒸着法は、抵抗加熱蒸着同士による共蒸着法、電子ビーム蒸着同士による共蒸着法、抵抗加熱蒸着と電子ビーム蒸着による共蒸着法がある。また、その他抵抗加熱蒸着とスパッタリング法による成膜、電子ビーム蒸着とスパッタリングによる成膜など、同種、異種方法を組み合わせて第2の層112を形成することができる。また、上記例は2種の材料を含む層を示しているが、3種以上の材料を含む場合も同様に、同種、異種方法を組み合わせて形成することができることは、上述のとおりである。
【0083】
次いで電子を発生する層である第3の層113について説明する。このような第3の層113は、例えば、電子輸送性物質と、その物質に対して電子供与性を示す物質とを含む層が挙げられる。
【0084】
なお電子輸送性物質とは、正孔よりも電子の輸送性が高い物質であり、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)等の金属錯体の他、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、4,4’ −ビス(5−メチル−ベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン(略称:BzOs)等を用いることができる。また第3の層113は、n型の半導体を用いて形成することができる。但し、電子輸送性物質はこれらに限定されない。
【0085】
また、電子輸送性物質に対して電子供与性を示す物質は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の中から選ばれた物質、具体的にはリチウム(Li)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)等を用いることができる。
【0086】
また、アルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属窒化物、アルカリ土類金属窒化物等も電子輸送性物質に対して電子供与性を示すことができる。これらの具体的な材料としては、リチウム酸化物(Li2O)、カルシウム酸化物(CaO)、ナトリウム酸化物(Na2O)、カリウム酸化物(K2O)、マグネシウム酸化物(MgO)等である。同等の効果が期待される材料として、アルカリ金属の窒化物又はフッ化物、アルカリ土類金属の窒化物又はフッ化物があり、具体的にはフッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)等が挙げられる。但し、電子輸送物質に対して電子供与性を示す物質は、これらに限定されない。なお、電子輸送性物質に対して電子供与性を示す物質は、電子輸送性物質に対して、モル比が0.5〜2(=電子輸送性物質に対して電子供与性を示す物質/電子輸送性物質)と成るように含まれていることが好ましい。
【0087】
また、第3の層113は、酸化亜鉛、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、酸化スズ、酸化チタンのような物質からなる層であってもよい。
【0088】
また第3の層113は、有機化合物からなる電子輸送性物質と、電子輸送性物質に対して電子供与性を示す物質とが混在した層から形成すると、好ましい。このような有機化合物と、無機化合物とが混在した層を用いることによって、第3の層113に用いる有機化合物の結晶化を抑制することができ、抵抗の増加を伴わずに第3の層113を厚く形成することが可能となるからである。さらに、有機化合物と、上記金属酸化物からなる電子輸送性物質に対して電子供与性を示す物質とが混在した層は導電性が高くなるため、抵抗の増加を伴わずに厚膜化を図ることができる。そのため、基板上にゴミや汚れ等に起因する凹凸がある場合であっても、第3の層113の厚膜化により凹凸の影響をほとんど受けない。従って、凹凸に起因する第1の電極101と、第2の電極102とのショート等の不良を防止することができる。このように第3の層113を厚膜化することにより、第1の電極101と、第2の層112とを離すことができるので、金属に起因して発光が消光することを防ぐこともできる。
【0089】
電子輸送性物質に対して電子供与性を示す物質は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の中から選ばれた物質、具体的にはリチウム(Li)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)等から選ばれた金属の酸化物が挙げられる。具体的な金属酸化物としては、上記アルカリ金属の酸化物またはアルカリ土類金属の酸化物が挙げられる。具体的には、リチウム酸化物(Li2O)、カルシウム酸化物(CaO)、ナトリウム酸化物(Na2O)、カリウム酸化物(K2O)、マグネシウム酸化物(MgO)等である。同等の効果が期待される材料として、アルカリ金属の窒化物又はフッ化物、アルカリ土類金属の窒化物又はフッ化物があり、具体的にはフッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)等が挙げられる。また同等の効果を得ることができれば、当該金属の酸化窒化物を用いてもよい。
【0090】
このような第3の層113は、蒸着法により作製することができる。第3の層113として、混在した層を形成する場合には共蒸着法を用いることができる。共蒸着法は、抵抗加熱蒸着同士による共蒸着法、電子ビーム蒸着同士による共蒸着法、抵抗加熱蒸着と電子ビーム蒸着による共蒸着法がある。また、その他抵抗加熱蒸着とスパッタリング法による成膜、電子ビーム蒸着とスパッタリングによる成膜など、同種、異種方法を組み合わせて第3の層113を形成することができる。また、上記例は2種の材料を含む層を示しているが、3種以上の材料を含む場合も同様に、同種、異種方法を組み合わせて形成することができることは、上述のとおりである。
【0091】
なお積層型の発光ユニットを有する発光素子では、発光層間に設けられた第3の層113は、いずれか一方の発光層にのみ励起エネルギーが移動してしまうことを阻止する層としても機能する。このような第3の層113は、その下方に形成される発光層のイオン化ポテンシャルよりも大きいイオン化ポテンシャルを有すると共に、その上方に形成される発光層のLUMO準位よりも大きいLUMO準位を有する層であることが好ましい。
【0092】
第3の層113の厚さは1nm〜30nmとなるように形成されていることが好ましい。
【0093】
なお積層型の発光ユニットを有する発光素子では、各第1の層111、各第3の層113にバイポーラ性の物質を用いてもよい。バイポーラ性の物質とは、電子または正孔のいずれか一方のキャリアの移動度と他方のキャリアの移動度とを比較したときに、一方のキャリアの移動度に対する他方のキャリアの移動度の比の値が100以下、好ましくは10以下である物質をいう。バイポーラ性の物質の中でも特に、正孔及び電子の移動度が1×10−6cm2/Vs以上の物質を用いることが好ましい。バイポーラ性の物質として、例えば、2,3−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)キノキサリン(略称:TPAQn)、2,3−ビス{4−[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]フェニル}−ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:NPADiBzQn)等が挙げられる。また同一のバイポーラ性の物質を用いて、各第1の層111、各第3の層113を形成しても構わない。
【0094】
なお、本発明は発光取り出し効率が高くなるように、各発光素子の第1の層111の膜厚を1/4波長の奇数倍とすることを特徴としており、図3に示す発光ユニットを有する発光素子構成に限定されるものではない。例えば図3では、第3の層113に接して形成された電子輸送層124設ける構成を示したが、電子輸送層124を有しない場合もある。この場合、発光層123が第3の層113と接する構成となるため、当該発光層123には、発光物質を分散状態とするための物質を用いるとよい。同様に、正孔輸送層122を有しない場合もあり得る。
【0095】
また、Alq3等のように分散状態としなくても発光することができる物質を発光層123に用いてもよい。Alq3等は、キャリアの輸送性の良い発光物質であるため、分散状態とすることなくAlq3のみからなる層を発光層123として機能させることができる。
【0096】
このような第1の層111から第3の層113の作製は、蒸着法等の同一方法により形成することができる。そのため、大気解放することなく連続して形成することができる。このように大気解放することなく連続して第1の層111から第3の層113を形成することにより、界面等への不純物混入を低減することができる。
【0097】
次に、図3とは異なる発光ユニットの構造を図4に示す。
【0098】
図4に示すように、本実施の形態に示す発光ユニットは、第1電極101から順に、第1の層111、第2の層112、第3の層113、第4の層128が積層されており、第4の層128を設けたことを特徴とする。第4の層128は、第1の層111と同様の材料から形成することができ、その他の構成は、上述したとおりのため、説明を省略する。
【0099】
このように第4の層128を設けると、第2の電極102を形成するときの各層へのダメージを低減することができる。
【0100】
そして積層された発光ユニットにおいて、発光取り出し効率が高くなるように、各発光ユニットの第1の層111の膜厚を異ならせる。膜厚を異ならせる場合、第4の層128も第1の層111と同様に、有機化合物と金属酸化物とが混在された層を用いるとよい。第4の層128に混在された層を用いることにより、厚膜化しても駆動電圧が上昇せず好ましいためである。なお金属酸化物と同等の効果を得ることができれば、金属の窒化物であってもよいし、酸化窒化物であってもよい。
【0101】
そして第4の層128を厚膜化することにより、第2の電極102を形成するときのダメージの、さらなる低減を期待できる。
【0102】
また本発明は積層された発光ユニットにおいて、第1の層111、第4の層128に有機化合物と、金属酸化物とが混在した層を用い、該層の膜厚により発光取り出し効率を高め、さらには低駆動電圧化を達成した発光装置を提供することができる。また該層を厚くすることにより、発光層123と第1の電極101、又は発光層123と第2の電極102とを離すことができるため、発光の消光を防止できる。そして発光ユニットを厚く形成することができるので、電極間の短絡を防止でき、量産性を高めることができる。
【0103】
以上のような層を有する積層型の発光ユニットを有する発光素子を備えた発光装置は、鮮明な、画質の優れた映像を表示でき、低消費電力を図ることができる。
【0104】
(実施の形態5)
本実施の形態では、図5を用いて発光素子への電流の供給を制御するトランジスタ(駆動用トランジスタ)がp型の薄膜トランジスタ(TFT)611の場合における、発光素子603から発せられる光を第2の電極102側から取り出す上面出射型であって、3つ分の画素の断面図について説明する。本実施の形態では、各RGBの発光を呈する発光ユニット100R、100G、100Bを積層しているため、それぞれの色が混在し、白色として視認することができる。そのため、対向基板610に形成された各色カラーフィルター612R、612G、612Bにより、フルカラー表示を行う形態を示す。
【0105】
他に白色を呈する積層された発光素子は、赤色の発光が呈される発光ユニットと、青緑色の発光が呈される発光ユニットとを積層する構成がある。それぞれの色が混合することにより、白色として視認することができる。このように、積層型発光素子が有する複数の発光ユニットからの発光色はそれぞれ異なっていてもよく、各発光ユニットの発光層と電極との光学的距離は決定される。
【0106】
図5に示すように、基板600上にp型のTFT611を形成し、第1の電極101と、TFT611が電気的に接続されている。また第1の電極101上に、各RGBの発光を呈する発光ユニットが積層され、第2の電極102が順に積層されている。なお発光素子の構造は、上記実施の形態で示したように第1の層111から第3の層113を有し、またさらに第4の層128からなる場合がある。
【0107】
TFT611は、厚さが10nm乃至200nmであって、島状に分離された半導体膜に形成されたチャネル形成領域、不純物元素が添加されたソース領域、及びドレイン領域を有している。半導体膜は、非晶質半導体膜、結晶性半導体膜、微結晶半導体膜のいずれを用いてもよい。例えば、結晶性半導体膜の場合、非晶質半導体膜を形成し、加熱処理により得られた結晶性半導体膜がある。なお加熱処理とは、加熱炉、レーザー照射、若しくはレーザー光の代わりにランプから発する光の照射(以下、ランプアニールと表記する)、又はそれらを組み合わせて用いた処理のことである。レーザー照射を用いる場合、連続発振型のレーザー(CWレーザー)又はパルス発振型のレーザー(パルスレーザー)を用いることができ、さらにそれらを併せて用いてもよい。例えば連続発振の基本波のレーザー光と、連続発振の高調波のレーザー光とを照射するようにしてもよいし、連続発振の基本波のレーザー光と、パルス発振の高調波のレーザー光とを照射するようにしてもよい。複数のレーザー光を照射することにより、エネルギーを補うことができる。
【0108】
さらにレーザー照射では、レーザーの入射角を半導体膜に対してθ(0°<θ<90°)となるようにしてもよい。その結果、レーザーの干渉を防止することができる。
【0109】
またパルス発振型のレーザーであって、半導体膜がレーザー光によって溶融してから固化するまでに、次のパルスのレーザー光を照射できるような発振周波数でレーザー光を発振させることで、走査方向に向かって連続的に成長した結晶粒を得ることができるレーザーを用いてもよい。このようなレーザーは、パルス発振の周期が、半導体膜が溶融してから完全に固化するまでの時間よりも短くなるように、周波数の下限を定めたパルスビームを用いる。実際に用いることができるパルスビームの発振周波数は10MHz以上であって、通常用いられている数十Hz〜数百Hzの周波数帯よりも著しく高い周波数帯を使用する。
【0110】
その他の加熱処理による結晶化手段として、加熱炉を用いる場合、非晶質半導体膜を500〜550℃で2〜20時間かけて加熱する方法がある。このとき、徐々に高温となるように温度を500〜550℃の範囲で多段階に設定するとよい。最初の低温加熱工程により、半導体膜の水素等が出てくるため、結晶化の際の膜荒れを低減し、さらにダングリングボンドの終端を行うことができる。さらに、結晶化を促進させる金属元素、例えばNiを非晶質半導体膜上に形成すると、加熱温度を低減することができ好ましい。このような金属元素を用いた結晶化であっても、600〜950℃に加熱しても構わない。
【0111】
但し、金属元素を形成する場合、半導体素子の電気特性に悪影響を及ぼすことが懸念されるので、該金属元素を低減又は除去するためのゲッタリング工程を施す必要が生じる。例えば、非晶質半導体膜をゲッタリングシンクとして金属元素を捕獲するよう工程を行えばよい。
【0112】
さらにTFT611は、該半導体膜を覆うゲート絶縁膜、ゲート電極を有し、該ゲート電極上には水素を含む絶縁膜が設けられていてもよい。該水素によって、結晶性半導体膜中のダングリングボンドを終端することができる。
【0113】
TFT611のソース領域及びドレイン領域は、高濃度不純物領域のみを有するシングルドレイン構造とする。またTFT611は、半導体膜のソース領域及びドレイン領域は、低濃度不純物領域、及び高濃度不純物領域を有するLDD(低濃度ドレイン)構造としてもよい。なお低濃度不純物領域がゲート電極と重なったGOLD構造としてもよい。
【0114】
TFT611は層間絶縁膜607で覆われており、層間絶縁膜607上には開口部を有する絶縁膜608が形成されている。なお本実施の形態において、層間絶縁膜607及び絶縁膜608を有する構成に限定されず、層間絶縁膜607のみが設けられた構成であってもよい。層間絶縁膜607は、単層構造であっても、積層構造であってもよく、無機材料、又は有機材料、若しくは無機材料と有機材料との積層構造から形成することができる。有機材料を用いると、平坦性を高めることができる。有機材料としては、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジスト又はベンゾシクロブテンを用いることができる。層間絶縁膜607は、シロキサン、ポリシラザンを用いることができる。シロキサンとは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む絶縁膜である。またポリシラザンとは、珪素(Si)と窒素(N)の結合を有するポリマー材料を含む液体材料を出発原料として形成される絶縁膜である。本実施の形態では、層間絶縁膜607を無機材料から形成した構成を示す。
【0115】
絶縁膜608の開口部において、第1の電極101が一部露出しており、該開口部において第1の電極101、発光ユニット100B、100G、100R、第2の電極102が順に積層された積層型発光素子を形成している。
【0116】
各発光ユニット100R、100G、100Bにおいては、各発光層123からの発光取り出し効率が高くなるように、それぞれの第1の層111の膜厚が1/4波長の奇数倍とされている。そして第1の層111には、有機化合物と、金属酸化物とが混在する層を用い、厚膜化による駆動電圧の上昇を防止する。
【0117】
また各発光素子は、発光層123を有する第2の層112の他に、正孔輸送性物質を有する第1の層111、電子輸送性物質を有する第3の層113等を有していることは上述の通りである。
【0118】
本実施の形態では、TFT611がpチャネル型のため、第1の電極101を陽極とし、第1の電極101から正孔輸送性物質を有する第1の層111、発光層123を有する第2の層112、電子輸送性物質を有する第3の層113の順に積層する。なおTFT611がn型の場合、第1の電極101を陰極とすると好ましく、第1の電極101から、電子輸送性物質を有する第3の層113、発光層123を有する第2の層112、正孔輸送性物質を有する第1の層111の順に積層する。
【0119】
本実施の形態では、上面出射型であるため、第1の電極101は反射性(つまり非透光性)を有し、第2の電極102は透光性を有する材料から形成する。これら材料は、上記実施の形態を参照することができる。
【0120】
図5に示した画素の場合、発光素子603から発せられる光を、矢印で示すように第2の電極102側から取り出すことができ、カラーフィルター612R、612G、612Bによりフルカラー表示を行うことができる。
【0121】
このような本発明により、単層の白色材料を用いた発光素子と比較して、各RGBの発光波長が重なった広範囲な白色発光を得ることができる。また各RGBの発光ユニットにおいて、発光取り出し効率が大きくなるように第1の層111の膜厚を1/4波長の奇数倍とする。そのため、各RGBによって、第1の層111の膜厚が異なり、特に厚くする必要がある第1の層111には有機化合物と、金属酸化物とが混在した層を用いると好ましい。厚膜化した場合であっても、駆動電圧の上昇を防止できるからである。
【0122】
なお本実施の形態において、TFT611をn型とすることができる。その場合、第1の電極101を陰極とし第1の電極101から順に、電子輸送性物質を有する第3の層113、発光層123を有する第2の層112、正孔輸送性物質を有する第1の層111の順に積層するとよい。
【0123】
(実施の形態6)
本実施の形態では、TFT611がp型で、発光素子603から発せられる光を第1の電極101側から取り出す下面出射型であって、基板600に形成された各色カラーフィルター612R、612G、612Bにより、フルカラー表示を行う形態を示す。
【0124】
図6では、発光素子603の第1の電極101と、TFT611が電気的に接続されている。また第1の電極101上に各発光ユニット100B、100G、100Rが積層され、第2の電極102が順に積層されている。
【0125】
TFT611は、上記実施の形態と同様に形成することができる。なお本実施の形態においても、層間絶縁膜607及び絶縁膜608を有する構成に限定されず、層間絶縁膜607のみが設けられた構成であってもよい。また下面出射型であるため、第1の電極101は透光性を有し、第2の電極102は反射性を有する。これら材料は、上記実施の形態を参照することができる。そして、光の出射側である第1の電極101側となる基板600に、各色カラーフィルター612R、612G、612Bが設けられている。なおカラーフィルター612R、612G、612Bは、基板600に設ける必要はなく、光の出射方向であればよい。例えば、層間絶縁膜607と同じ層に設けることができる。
【0126】
積層された発光素子603も、上記実施の形態と同様に形成することができる。すなわち各発光ユニット100R、100G、100Bにおいては、各発光層123からの発光取り出し効率が高くなるように、それぞれの第3の層113の膜厚を1/4波長の奇数倍とする。そして第3の層113には、有機化合物と、金属酸化物とが混在する層を用い、厚膜化による駆動電圧の上昇を防止する。第3の層113の具体的な材料としては、リチウム酸化物(Li2O)、カルシウム酸化物(CaO)、ナトリウム酸化物(Na2O)、カリウム酸化物(K2O)、マグネシウム酸化物(MgO)等である。同等の効果が期待される材料として、アルカリ金属の窒化物又はフッ化物、アルカリ土類金属の窒化物又はフッ化物があり、具体的にはフッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)等が挙げられる。
【0127】
図6に示した画素の場合、発光素子603から発せられる光を、矢印で示すように第1の電極101側から取り出すことができ、カラーフィルター612R、612G、612Bによりフルカラー表示を行うことができる。
【0128】
このような本発明により、単層の白色材料を用いた発光素子と比較して、各RGBの発光波長が重なった広範囲な白色発光を得ることができる。また各RGBの発光ユニットにおいて、発光取り出し効率が大きくなるように第3の層113の膜厚を1/4波長の奇数倍とする。そのため、各RGBによって、第3の層113の膜厚が異なり、特に厚くする必要がある第3の層113には有機化合物と、金属酸化物とが混在した層を用いるとよい。厚膜化した場合であっても、駆動電圧の上昇を防止できるからである。
【0129】
なお本実施の形態において、TFT611をn型とする場合、第1の電極101を陰極とする。そのため第1の電極101から順に、電子輸送性物質を有する第3の層113、発光層123を有する第2の層112、正孔輸送性物質を有する第1の層111の順に積層するとよい。
【0130】
(実施の形態7)
本実施の形態では、各発光ユニット100R、100G、100Bに各発光色を呈する発光材料を用い、カラーフィルターを用いることなくフルカラー表示を行う場合を説明する。
【0131】
図7に示すように、TFT611がp型で、発光素子603から発せられる光を第2の電極102側から取り出す上面出射型の発光装置を説明する。基板600上にTFT611、各発光ユニット100R、100G、100Bを設ける。このとき、青色(B)は積層型発光素子、つまり積層された発光ユニット100Bとし、赤色(R)及び緑色(G)は単層型発光素子、つまり単層の発光ユニット100R、100Bとする。そして発光取り出し効率を高めるため、各発光ユニットの第1の層111の膜厚を1/4波長の奇数倍とする。積層型発光素子では、発光ユニット毎に第1の層111の膜厚を1/4波長の奇数倍とする。
【0132】
このように青色の発光ユニットを積層するのは、青色を発する発光素子はその他の色を発する発光素子と比べて、寿命が短く、発光効率が低いからである。発光効率が低いため、高い電圧で駆動することが要求され、劣化が生じやすい。このような発光素子を積層した積層型発光素子とすることにより、同じ電流密度における発光効率を高めることができるため、印加する電流密度を低く維持することができ、寿命を向上させることができる。
【0133】
その他、TFT611、層間絶縁膜607、絶縁膜608の構成は上記実施の形態と同様であるため、説明を省略する。この場合、第1の電極101は反射性材料、第2の電極102は透光性材料から形成する。
【0134】
図7に示すようにフルカラー表示を行う場合であっても、上記実施の形態で示したように基板600又は対向基板610にカラーフィルター612R、612G、612Bを設けてもよい。カラーフィルターにより、発光スペクトルの幅を細くすることができ、きれいな映像を提供することができる。
【0135】
なおTFT611はn型であってもよく、その場合第1の電極101を陰極とすると好ましい。そして第1の電極101から順に、電子輸送性物質を有する第3の層113、発光層123を有する第2の層112、正孔輸送性物質を有する第1の層111を積層する。
【0136】
また積層型発光素子は、青色(B)以外の赤色(R)及び緑色(G)の発光素子に用いてもよい。積層することにより、同じ電流密度における発光効率を高めることができるため、電流密度を低く維持することができ、寿命を向上させることができる。
【0137】
(実施の形態8)
本実施の形態では、対向基板610により封止された状態の発光装置において、外部回路と接続可能な状態であるモジュールの形態について説明する。なお本実施の形態では、層間絶縁膜607及び絶縁膜608を有する構成ではなく、層間絶縁膜607のみが設けられた構成を用いて説明する。このように層間絶縁膜607のみが設けられた構成であると、工程数が削減されるため、量産性を高くすることができる。
【0138】
図8(A)には、基板600上に画素部720、画素部の周囲に第1の走査線駆動回路721、第2の走査線駆動回路722、信号線駆動回路723が一体形成された発光装置を示す。第1の走査線駆動回路721、第2の走査線駆動回路722、信号線駆動回路723は、外部回路とフレキシブルプリントサーキット716を介して接続している。
【0139】
発光装置は、発光素子が直接大気に触れることがないように封止される。本実施の形態では、シール材712を用いて、基板600と対向基板610を貼り合わせ、封止を行っている。
【0140】
図8(B)には、図8(A)のE−Fの断面を示す。図8(B)をみると、封止した内部751は中空状態となっており、ここに窒素ガス若しくは不活性ガス等の気体、又は樹脂を充填させるとよい。発光素子の劣化の原因となる酸素や水分の侵入を防止することができるからである。また外部回路から入力された信号がフレキシブルプリントサーキット716を介して接続配線705から第1の走査線駆動回路721、第2の走査線駆動回路722、信号線駆動回路723に入力され、当該駆動回路からの信号よって発光素子ごとに発光・非発光を制御することができ、映像として映し出される。フレキシブルプリントサーキット716と、接続配線705とは、異方性導電材料715により接続されている。
【0141】
そして基板600と対向基板610とはシール材712で貼り合わせられているが、この間隔を保持するために、スペーサー752が設けられている。スペーサー752は、TFT611の層間絶縁膜607上に設けられているが、これに限定されない。またスペーサー752は、柱状であっても球状であってもよい。
【0142】
発光素子603が単色発光を呈す、又はRGBの発光を呈する場合において、対向基板610にカラーフィルター612を設けてもよい。カラーフィルター612を設ける位置も、対向基板610側でなく、基板600側であってもよい。カラーフィルター612により、きれいな映像を提供することができる。
【0143】
図8(C)にも、図8(A)のE−Fの断面を示し、図8(B)とは基板600と対向基板610との貼り合わせにシール材712を用いず、樹脂753を用いた点が異なる。樹脂753を用いて行うことにより、シール材712の形成不良をなくすことができる。このような樹脂753には乾燥剤を添加してもよい。また出射方向に応じて、透光性を有する樹脂753を用いるとよい。
【0144】
本実施の形態において、基板上に画素部720のみが形成されて、第1の走査線駆動回路721、第2の走査線駆動回路722、信号線駆動回路723がTAB方式により実装されたり、画素部720とその周辺に第1の走査線駆動回路721、第2の走査線駆動回路722、信号線駆動回路723がCOG(Chip On Glass)方式により実装されたり、画素部720と第1の走査線駆動回路721、第2の走査線駆動回路722を基板600上に一体形成し、信号線駆動回路723を別途ICとして実装してもよい。本発明の発光装置は、いずれの駆動回路の形態であってもその効果を奏することができる。また駆動回路において、結晶性半導体膜からなるTFT、又は非晶質半導体膜からなるTFTを用いてもよい。例えば、第1の走査線駆動回路721、第2の走査線駆動回路722は、信号線駆動回路723と比較して高速動作が要求されないため、非晶質半導体膜を用いたTFTを用いることができる。また信号線駆動回路723であっても、その一部の回路、例えばバッファ回路には、非晶質半導体膜を用いたTFTを用いることができる。
【0145】
(実施の形態9)
本実施の形態では、上記実施の形態と異なる発光装置の形態を例示する。なお本実施の形態では、層間絶縁膜607及び絶縁膜608を有する構成ではなく、層間絶縁膜607のみが設けられた構成を用いて説明する。このように層間絶縁膜607のみが設けられた構成であると、工程数が削減されるため、量産性を高くすることができる。
【0146】
図15(A)には、図5に示すような上面出射型の発光装置と、図6に示すような下面出射型の発光装置とを貼り合わせて、一つの発光装置とした形態を示す。この場合、下面出射型の発光装置の対向基板として、上面出射型の発光装置の基板600を用いることができる。
【0147】
例えば、下面出射型の発光装置において発光素子603まで形成する。そして、シール材712により、上面出射型の発光装置と、当該下面出射型の発光装置とを貼り合わせる。このとき、上面出射型の発光装置は、対向基板610が張り合わされた状態であるとよい。
【0148】
上記実施の形態と同様に、貼り合わせたことにより生じた空間には、窒素ガス若しくは不活性ガス、又は樹脂を充填するとよい。例えば、樹脂として、エポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂は接着性も有するため、接着強度を高めることができる。
【0149】
図15(B)には、図5に示すような上面出射型の発光装置と、図6に示すような下面出射型の発光装置とを貼り合わせて、一つの発光装置とした形態であって、走査線駆動回路や信号線駆動回路723を共有する形態を示す。走査線駆動回路や信号線駆動回路723を共有するとは、一方の発光装置の基板600上に設けられた走査線駆動回路や信号線駆動回路から、他方の発光装置に設けられた発光素子603へ信号を供給するよう配線する。そのため、他方の発光装置は、基板600上に画素部720のみが設けられた状態で、貼り合わせることができる。
【0150】
上記実施の形態と同様に、貼り合わせたことにより生じた空間には、窒素ガス若しくは不活性ガス、又は樹脂を充填するとよい。例えば、樹脂として、エポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂は接着性も有するため、接着強度を高めることができる。
【0151】
また本発明を適用できる発光装置は、上面出射型の発光装置と、下面出射型の発光装置といった、異なる出射方向である発光装置に限定されず、同じ出射方向である発光装置同士を貼り合わせてもよい。例えば、図6に示すような下面出射型の発光装置同士を貼り合わせて、一つの発光装置とすることができる。この場合、出射方向が同じであるため、下面出射型の発光装置同士を向き合うように配置し、シール材712により貼り合わせ、外部方向に光を出射する。同様に、図5に示すような上面出射型の発光装置同士を貼り合わせて、一つの発光装置とすることもできる。この場合、外部方向に光を出射するように基板600同士を貼り合わせればよい。
【0152】
下面出射型の発光装置を向き合うように貼り合わせる場合、図15(C)に示すように対向基板610を設けることなく貼り合わせることが可能である。その結果、発光装置を薄型化することができる。例えば、下面出射型の発光装置において、発光素子603まで形成する。そして、シール材712を用いて、他方の下面出射型の発光装置を貼り合わせる。このように形成することにより、対向基板610を兼ねることができる。勿論、それぞれの下面出射型の発光装置において対向基板610が張り合わされた状態で、貼り合わせてもよい。
【0153】
上記実施の形態と同様に、貼り合わせたことにより生じた空間には、窒素ガス若しくは不活性ガス、又は樹脂を充填するとよい。例えば、樹脂として、エポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂は接着性も有するため、接着強度を高めることができる。
【0154】
本実施の形態は、上記実施の形態と自由に組み合わせることができる。例えば本実施の形態で示した発光装置に、図8(C)で示したシール材を用いずに樹脂753で封止する構造を用いてもよい。
【0155】
このような発光装置により、表示装置の高付加価値化を図り、新たな用途を提供することができる。
【0156】
(実施の形態10)
本実施の形態では、発光装置が有する画素の等価回路について、図9を用いて説明する。
【0157】
図9(A)は、画素の等価回路の一例を示したものであり、信号線912、電源線915、走査線910発光素子603、トランジスタ611、911、容量素子904を有する画素の等価回路である。トランジスタにはTFTを適用することができる。
【0158】
このような等価回路において、信号線912には信号線駆動回路から、映像信号が入力される。トランジスタ911は、スイッチング用トランジスタと呼び、走査線910に入力される選択信号に従って、トランジスタ611のゲートへの、該映像信号の電位の供給を制御することができる。トランジスタ611は、駆動用トランジスタと呼び、該映像信号の電位に従って、発光素子603への電流の供給を制御することができる。供給される電流に伴う発光素子の発光状態により、表示を行うことができる。容量素子904は、トランジスタ611のゲート・ソース間の電圧を保持することができる。
【0159】
図9(B)は、図9(A)に示した画素の等価回路に、新たに走査線919、トランジスタ918を設けた画素の等価回路である。
【0160】
トランジスタ918は、消去用トランジスタと呼び、トランジスタ611のゲートとソースを同電位とし、強制的に発光素子603に電流が流れない状態を作ることができる。そのため、時間階調表示において、全画素に映像信号が入力され終わる前に、映像信号を入力することができ、デューティー比を高くすることができる。
【0161】
図9(C)に示すように、消去用トランジスタ918のかわりに、ダイオードとして機能する素子(ダイオード素子)938を設けてもよい。その結果、消去用トランジスタ918を用いる場合と同様に、強制的に発光素子603に電流が流れない状態を作ることができる。
【0162】
動作方法としては、走査線910を選択して、トランジスタ911をオン状態とし、信号線912から信号を容量素子904に入力する。すると、その信号に応じて、トランジスタ611の電流が制御され、電源線915から発光素子603へ電流が流れ、発光する。この発光素子603へ電流を流すための電圧が駆動電圧に相当する。
【0163】
信号を消去したい場合は、走査線919を選択して、ダイオード素子938をオン状態として、トランジスタ611へ電流が流れるようにする。その結果、駆動トランジスタ611がオフ状態となる。すると、電源線915から発光素子603へ電流が流れないようになる。その結果、非点灯期間を作ることができ、点灯期間の長さを自由に制御できるようになる。これにより、デューティー比を高くすることができる。
【0164】
なお、ダイオード素子938は、整流性がある素子であればよい。PN型ダイオードでもよいし、PIN型ダイオードでもよいし、ショットキー型ダイオードでもよいし、ツェナー型ダイオードでもよい。また、トランジスタを用いて、ダイオード接続(ゲート電極と高電位側電極とを接続)して、用いてもよい。図9(C)ではダイオード素子938に、ダイオード接続(ゲート電極とドレイン電極が接続)したN型のトランジスタを用いているが、これに限定されず、P型を用いてもよい。P型のトランジスタを用いる場合、ゲート電極とソース電極とを接続する。
【0165】
図9(D)は、図9(B)に示した画素の等価回路に、新たにトランジスタ925と、配線926を設けた画素の等価回路である。トランジスタ925は、そのゲートの電位が、配線926によって固定されている。そして、トランジスタ611とトランジスタ925は、電源線915と発光素子603との間に直列に接続されている。よって図9(D)では、トランジスタ925により発光素子603に供給される電流の値が制御され、トランジスタ611により発光素子603への該電流の供給の有無が制御できる。
【0166】
以上、図9(A)(B)(C)(D)に示した画素の等価回路は、デジタル方式で駆動させることができる。デジタル方式で駆動させる場合、各駆動用トランジスタに多少の電気特性ばらつきがあっても、スイッチング素子として使用するため、問題にならない。
【0167】
本発明の発光装置が有する画素の等価回路は、デジタル方式であっても、アナログ方式であっても駆動させることができる。例えば図10に示す画素の等価回路は、信号線912、電源線915、走査線910、発光素子603、トランジスタ911、920、921、容量素子904を有する。図10において、トランジスタ920、921はカレントミラー回路を構成しており、p型のトランジスタからなる。このような画素の等価回路では、デジタル方式の場合、信号線912からデジタルビデオ信号が入力され、時間階調により発光素子603に供給される電流の値が制御される。またアナログ方式の場合、信号線912からアナログビデオ信号が入力され、その値に応じて発光素子603に供給される電流の値が制御される。アナログ方式で駆動させる場合、低消費電力化を図ることができる。
【0168】
以上のような画素において、信号線912、電源線915、配線926には、信号線駆動回路から信号が入力される。また走査線910、919には、走査線駆動回路から信号が入力される。信号線駆動回路や走査線駆動回路は、単数、又は複数設けることができる。例えば、画素部を介して第1の走査線駆動回路、第2の走査線駆動回路を設けることができる。
【0169】
また図9(A)に示す画素を用いても、図9(B)を用いて説明したように、強制的に発光素子603に電流が流れない状態を作ることができる。例えば、第1の走査線駆動回路により、発光素子603が点灯するタイミングで、トランジスタ911を選択し、第2の走査線駆動回路により発光素子603へ強制的に電流が流れないような信号を走査線910に供給する。強制的に電流が流れないような信号(Write Erase Signal)とは、発光素子603の第1の電極101と、第2の電極102とが同電位となるための電位を与える信号である。このように、駆動方法によっても、強制的に発光素子603に電流が流れない状態を作ることができ、デューティー比を高めることができる。
【0170】
なお、図9(A)(B)(C)(D)図10では、容量素子904を図示したが、トランジスタのゲート容量や他の寄生容量で賄うことが可能な場合には、設けなくてもよい。
【0171】
このように本発明の発光装置が有する画素の等価回路は、多くの形態をとることができる。
【0172】
(実施の形態11)
本実施の形態では、上記実施の形態と異なり、パッシブ型の発光装置について説明する。
【0173】
図19に示すように、基板600上に下地絶縁膜311が設けられ、電極となる第1の導電体312、第2の導電体313が積層されている。これら電極を制御することにより、発光素子603に電流を供給し、表示を行うことができる。発光素子603はマトリクス状に二次元的に配置され、それにより画像を表示する画面を構成する。
【0174】
電極を制御する信号は、異方性導電材料324、325を介して接続されたICチップ323によって作製される。またICチップ323には、異方性導電材料715によって接続されたフレキシブルプリントサーキット716を介して外部信号等が入力される。
【0175】
発光素子603の封止はパッシベーション膜713、封止材317及び対向基板610で構成されている。パッシベーション膜713は窒化珪素膜など水蒸気を透過しにくい絶縁膜で形成する。また、窒化珪素膜は近紫外域での光透過率が若干下がるので、それを改善するために酸素を加えた窒化酸化珪素膜を用いても良い。その他に窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムをパッシベーション膜713に適用しても良い。対向基板610はガラス、プラスチックなどの他に、ステンレス、アルミニウムなどの金属を用いても良い。発光素子603の発光を対向基板610側から放射させる場合には、対向基板610は光を透過するガラスやプラスチックを用いることが好ましい。プラスチックはアクリル、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate :PET)などを用いることができ、平板状若しくはフィルム状のものを用いることができる。対向基板610にプラスチックを用いる場合は、水蒸気などを遮断するガスバリア膜や、表面の硬度を高めるハードコート膜を設けても良い。対向基板610とパッシベーション膜713との間に設ける封止材317は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂材料を用いる。封止材317は、対向基板610と基板600を固定すると共に、この両者の間隔を一定に保持している。そのために、封止材317にスペーサーとなるシリカ粒子などを含ませておいても良い。このような構成により、発光素子603の劣化の原因となる水分等の侵入を防止することができる。
【0176】
また発光素子603は、積層型発光素子であるため、発光効率を高めることができる。また、発光層と反射電極間の距離を/4波長の奇数倍とすることで、発光取り出し効率を高めることができる。そのため、流す電流量を低く維持することができ、発光素子の寿命を向上させることができる。
【0177】
このようなパッシブ型の発光装置は、画素部における走査線と信号線との交差部に半導体素子を設けない構成であるため、開口率を高めることができる。
【0178】
また対向基板610等にカラーフィルターを設けることによって、フルカラー表示を行うことができる。
【0179】
(実施の形態12)
本実施の形態では、本発明の発光装置を適用したテレビ受像機について説明する。
【0180】
図11は本発明の発光装置と、回路基板802とを組み合わせたモジュールを示している。回路基板802には、例えば、コントロール回路や信号分割回路などが設けられている。発光装置は上記実施の形態により作製される。
【0181】
この発光装置には、発光素子が各画素に設けられた画素部720と、第1及び第2の走査線駆動回路721、722、選択された画素にビデオ信号を供給する信号線駆動回路723が備えられている。また、回路基板802から発光装置へは、フレキシブルプリントサーキット716を介して信号が送られる。回路基板802にはコントロール回路814や信号分割回路815が設けられている。
【0182】
本発明の発光装置を実装して、低消費電力、高精細なテレビ受像機を完成させることができる。
【0183】
図12は、テレビ受像機の主要な構成を示すブロック図を示している。回路基板802に形成される外部回路の構成として、図12に示すように、映像信号の入力側では、チューナ811で受信した信号のうち、映像信号を増幅する映像信号増幅回路812と、そこから出力される信号を赤色、緑色、青色の各色に対応した色信号に変換する映像信号処理回路813と、その映像信号をドライバICの入力仕様に変換するためのコントロール回路814などがある。コントロール回路814から、第1及び第2の走査線駆動回路721、722と信号線駆動回路723にそれぞれ信号が出力される。デジタル駆動する場合には、信号線駆動回路723とコントロール回路814との間に信号分割回路815を設け、入力デジタル信号をm個に分割して供給する構成とすることができる。
【0184】
チューナ811で受信した信号のうち、音声信号は、音声信号増幅回路816に送られ、その出力は音声信号処理回路817を経てスピーカ818に供給される。制御回路819は受信局(受信周波数)や音量の制御情報を入力部820から受け、チューナ811や音声信号処理回路817に信号を送出する。
【0185】
このような外部回路を実装した発光装置を、図13に示すように、筐体831に組みこんで、テレビ受像機を完成させることができる。当該発光装置により表示画面832が形成され、その他付属設備としてスピーカ818、操作スイッチ834などが適宜備えられている。このように、本発明を適用してテレビ受像機を完成させることができる。
【0186】
このテレビ受像機は、発光装置を含んで構成されることにより、鮮明な、画質の優れた映像を表示することができる。
【0187】
(実施の形態13)
本発明の発光装置を表示部に備えた電子機器として、テレビ受像機以外に、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、携帯電話装置(単に携帯電話機、携帯電話ともよぶ)、PDA等の携帯情報端末、携帯型ゲーム機、コンピュータ用のモニター、コンピュータ、カーオーディオ等の音響再生装置、家庭用ゲーム機等の記録媒体を備えた画像再生装置等が挙げられる。その具体例について、図14を参照して説明する。
【0188】
図14(A)に示す携帯情報端末機器は、本体9201、表示部9202等を含んでいる。表示部9202には、本発明の発光装置を適用することができる。その結果、鮮明な、画質の優れた映像を表示でき、低消費電力化された携帯情報端末機器を提供することができる。
【0189】
図14(B)に示すデジタルビデオカメラは、表示部9701、表示部9702等を含んでいる。表示部9701には、本発明の発光装置を適用することができる。その結果、鮮明な、画質の優れた映像を表示でき、低消費電力化されたデジタルビデオカメラを提供することができる。
【0190】
図14(C)に示す携帯電話機は、本体9101、表示部9102等を含んでいる。表示部9102には、本発明の発光装置適用することができる。その結果、鮮明な、画質の優れた映像を表示でき、低消費電力化された携帯電話機を提供することができる。
【0191】
図14(D)に示す携帯型のテレビジョン装置は、本体9301、表示部9302等を含んでいる。表示部9302には、本発明の発光装置を適用することができる。その結果、鮮明な、画質の優れた映像を表示でき、低消費電力化された携帯型のテレビジョン装置を提供することができる。なお携帯型のテレビジョン装置としては、携帯電話機などの携帯端末に搭載する小型のものから、持ち運びをすることができる中型のものまで、幅広く本発明の発光装置を適用することができる。
【0192】
図14(E)に示す携帯型のコンピュータは、本体9401、表示部9402等を含んでいる。表示部9402には、本発明の発光装置を適用することができる。その結果、鮮明な、画質の優れた映像を表示でき、低消費電力化された携帯型のコンピュータを提供することができる。
【0193】
このような電子機器は、発光装置を含んで構成されることにより、鮮明な、画質の優れた映像を表示でき、低消費電力化することができる。
【実施例】
【0194】
(実施例1)
本実施例では、第1の電極101から順に、青色を呈する発光ユニット、緑色を呈する発光ユニット、赤色を呈する発光ユニットが積層された素子構造を説明する。
【0195】
第1の電極101はアルミニウムを有し反射性の高い電極とし、第2の電極102は酸化珪素を含むインジウム錫酸化物を用いて透光性の高い電極とした。
【0196】
青色を呈する発光ユニットは、第1の層111Bに酸化珪素を含むインジウム錫酸化物を用い、第2の層112Bにα−NPDの蒸着層と、t−BuDNAの蒸着層と、Alq3の蒸着層とが順に積層した層を用い、第3の層113BにBzOsとLiとの共蒸着層を用いた。緑色を呈する発光ユニットは、第1の層111Gにα−NPDとモリブデン酸化物とが混在した層(共蒸着法により形成されているため共蒸着層をもいう)を用い、第2の層112Gにα−NPDの蒸着層と、Alq3とクマリン6との共蒸着層と、Alq3の蒸着層とが順に積層した層を用い、第3の層113GにBzOsとLiとの共蒸着層を用いた。Alq3とクマリン6の質量比は1:0.005となるようにした。
【0197】
赤色を呈する発光ユニットは、第1の層111Rに有機化合物としてα−NPDを用い、α−NPDとモリブデン酸化物とが混在した層(共蒸着法により形成されているため共蒸着層をもいう)を用い、第2の層112Rにα−NPDの蒸着層と、Alq3とルブレンとDCJTIとの共蒸着層とが順に積層した層を用い、第3の層113にBzOsとLiとの共蒸着層を用いた。Alq3、ルブレン、DCJTIの質量比は、1:1:0.02となるようにした。また各発光素子の第3の層113Rに用いたBzOs、Liの質量比は1:0.01となるようにした。また第1の層111に用いたモリブデン酸化物、α−NPDの質量比は1:0.25となるようにした。
【0198】
このように、発光層と第1の電極101との距離を制御するための第1の層111Bには、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物を適用することができる。その場合、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物からなる第1の層111Bと、第2の層112Bとの間にはDNTPD等の正孔注入性に優れた材料からなる層を設けるとよい。
【0199】
本実施例の発光素子は、緑色を呈する発光ユニット及び赤色を呈する発光ユニットにおいて、発光層と第1の電極101との距離を制御するための層に、α−NPDに代表される有機化合物と、モリブデン酸化物とが混在した層を用いることを特徴とする。このようなモリブデン酸化物と有機化合物とが混在した層を用いることで、厚くしても駆動電圧が上昇しないことがわかっている。そのため、各発光層(t−BuDNAを含む層、Alq3とクマリン6を含む層、Alq3、ルブレン、DCJTIを含む層)、とアルミニウムからなる第1の電極101との距離を制御するために、積層された緑色及び赤色を呈する発光ユニットにおいて、モリブデン酸化物と有機化合物とが混在した層を用いると、駆動電圧を上昇させずに膜厚を厚くすることができ好適である。
【0200】
(実施例2)
本実施例では、発光層と第1の電極101との距離を制御するための第1の層111Bに、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物に代えて、α−NPDとモリブデン酸化物とが混在した層を用い、上記実施例と同様な材料を用いて、第1の電極101から順に、青色を呈する発光ユニット、緑色を呈する発光ユニット、赤色を呈する発光ユニットを積層した素子構造を説明する。
【0201】
本実施例の発光素子は、発光層と第1の電極101との距離を制御するための層に、α−NPDを代表とする有機化合物と、モリブデン酸化物とが混在した層を用いることを特徴とする。このようなモリブデン酸化物と有機化合物とが混在した層を用いることで、厚くしても駆動電圧が高まらないことがわかっている。そのため、各発光層(t−BuDNAを含む層、Alq3とクマリン6を含む層、Alq3、ルブレン、DCJTIを含む層)、とアルミニウムからなる第1の電極101との距離を制御するために、積層されたすべての発光ユニットにおいて、モリブデン酸化物と有機化合物とが混在した層を用いると、膜厚を厚くすることができ好適である。
【0202】
(実施例3)
本実施例では、シミュレーションにより、本発明の積層型発光素子、及び単層型発光素子を用いて輝度の比較を行った。積層型発光素子は、図18(A)に示すように、第1の電極101及び第2の電極102間に、緑色を呈する発光ユニット100a及び100bを積層した構造を用いた。緑色を呈する発光ユニット100a、100bは、それぞれ第1の層111a、111b、第2の層112a、112b、及び第3の層113a、113bを有し、これら第1の層乃至第3の層の材料は上記実施例1と同様とし、第1の層111aには酸化珪素を含むインジウム錫酸化物からなる層を用い、第1の層111bにはα−NPDとモリブデン酸化物とが混在した層を用いた。なお第1の電極101にアルミニウムを用い、第2の電極102として酸化珪素を含むインジウム錫酸化物を用いた。また、第1の電極101の膜厚は100nm、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物からなる第1の層111aの膜厚は40nm、α−NPDの蒸着層の膜厚は10nm、Alq3とクマリン6との共蒸着層の膜厚は40nm、Alq3の蒸着層の膜厚は20nm、BzOsとLiとの共蒸着層の膜厚は20nm、α−NPDとモリブデン酸化物とが混在した第1の層111bの膜厚は30nm、第2の電極102の膜厚は110nmとしてシミュレーションを行った。
【0203】
単層型発光素子は、図18(B)に示すように、第1の電極101及び第2の電極102間に緑色を呈する発光ユニット100aを有する構造を用いた。緑色を呈する発光ユニット100aは、第1の層111a、第2の層112a、第3の層113aを有し、これら第1の層乃至第3の層の材料は図18(A)に示すユニットと同様とし、第1の層111aには酸化珪素を含むインジウム錫酸化物からなる層を用いた。
【0204】
図16には、図18(A)(B)に示す発光素子における、波長(nm)に対する輝度のグラフを示す。素子Aは、図18(B)示した発光素子であって、第1の電極101と発光層との距離を、第1の層111の膜厚により1/4波長の奇数倍としていない単層型発光素子の結果である。素子Bは、図18(A)示した発光素子であって、第1の電極101と発光層との距離を、第1の層111の膜厚により1/4波長の奇数倍とした積層型発光素子の上側発光素子の結果である。素子Cは、図18(A)示した発光素子であって、第1の電極101と発光層との距離を、第1の層111の膜厚により1/4波長の奇数倍とした積層型発光素子の下側発光素子の結果である。素子Dは、素子Bと素子Cの発光を合わせたものである。
【0205】
図16において素子Aと、素子B又はCとを比較することにより、本発明の積層型発光素子で、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物からなる第1の層111a又はα−NPDとモリブデン酸化物とが混在した第1の層111bにより、第1の電極101と発光層との距離を1/4波長の奇数倍とした場合、輝度が向上することがわかる。
【0206】
図17には、図18で示した第1の層111aにα−NPDとモリブデン酸化物とが混在した層を用いてシミュレーションを行った結果である、波長(nm)に対する輝度のグラフを示す。すなわち素子AからDの条件において、α−NPDとモリブデン酸化物とが混在した層からなる第1の層111aを有する点が図16の場合と異なっている。素子Aでのα−NPDとモリブデン酸化物とが混在した層からなる第1の層111aの膜厚は35nmであった。
【0207】
図17において素子Aと、素子B又はCとを比較することにより、単層型発光素子を積層型発光素子とし、α−NPDとモリブデン酸化物とが混在した第1の層111a、111bにより、第1の電極101と発光層との距離を1/4波長の奇数倍とした場合、輝度が向上することがわかる。
【0208】
さらに図17と図16とを比較すると、α−NPDとモリブデン酸化物とが混在した層からなる第1の層111aを用いた発光素子の方が、発光輝度が高いことがわかる。さらにα−NPDとモリブデン酸化物とが混在した第1の層111aは、α−NPDのみの層と比較して導電性が高く、厚膜化しても駆動電圧が上昇せず好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0209】
【図1】本発明の発光素子を示す図である。
【図2】本発明の発光素子を示す図である。
【図3】本発明の発光素子を示す図である。
【図4】本発明の発光素子を示す図である。
【図5】本発明の発光装置を示す図である。
【図6】本発明の発光装置を示す図である。
【図7】本発明の発光装置を示す図である。
【図8】本発明の発光装置を示す図である。
【図9】本発明の発光装置の画素回路を示す図である。
【図10】本発明の発光装置の画素回路を示す図である。
【図11】本発明のテレビ受像機を示す図である。
【図12】本発明のテレビ受像機のシステムを示す図である。
【図13】本発明のテレビ受像機を示す図である。
【図14】本発明の電子機器を示す図である。
【図15】本発明の発光装置を示す図である。
【図16】積層された発光素子の波長に対する輝度を示したグラフである。
【図17】積層された発光素子の波長に対する輝度を示したグラフである。
【図18】本実施例の発光素子を示す図である。
【図19】本発明の発光装置を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極及び第2の電極間に、複数の発光層を積層し、
前記複数の発光層のそれぞれと前記第1の電極との光学的距離は、前記複数の発光層のそれぞれの間に設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚、および前記第1の電極に最も近い発光層と前記第1の電極との間に設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚により、発光効率が高くなるように決定された
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
第1の電極及び第2の電極間に、複数の発光層を積層し、
前記複数の発光層のそれぞれと前記第1の電極との光学的距離は、前記複数の発光層のそれぞれの間に設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚、および前記第1の電極に最も近い発光層と前記第1の電極との間に設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚によって異なる
ことを特徴とする発光装置。
【請求項3】
第1の電極及び第2の電極間に、複数の発光層を積層し、
前記複数の発光層からの発光色はそれぞれ異なり、
前記複数の発光層のそれぞれと前記第1の電極との光学的距離は、前記複数の発光層のそれぞれの間に、前記発光層に接して設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層、および前記第1の電極に最も近い発光層と前記第1の電極との間に、接して設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚により、発光効率が高くなるように決定された
ことを特徴とする発光装置。
【請求項4】
第1の電極及び第2の電極間に、複数の発光層を積層し、
前記複数の発光層からの発光色はそれぞれ異なり、
前記複数の発光層のそれぞれと前記第1の電極との光学的距離は、前記複数の発光層のそれぞれの間に、前記発光層に接して設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層、および前記第1の電極に最も近い発光層と前記第1の電極との間に、接して設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚によって異なる
ことを特徴とする発光装置。
【請求項5】
第1の電極及び第2の電極間に、複数の発光層を積層した積層型発光素子と、
前記第1の電極及び前記第2の電極間に、一つの発光層を有する単層型発光素子と、を有し、
前記積層型発光素子において、前記複数の発光層のそれぞれと前記第1の電極との光学的距離は、前記複数の発光層のそれぞれの間に設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚、および前記第1の電極に最も近い発光層と前記第1の電極との間に設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚により、発光効率が高くなるように決定された
ことを特徴とする発光装置。
【請求項6】
第1の電極及び第2の電極間に、複数の発光層を積層した積層型発光素子と、
前記第1の電極及び前記第2の電極間に、一つの発光層を有する単層型発光素子と、を有し、
前記積層型発光素子において、前記複数の発光層のそれぞれと前記第1の電極との光学的距離は、前記複数の発光層のそれぞれの間に設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚、および前記第1の電極に最も近い発光層と前記第1の電極との間に設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚によって異なる
ことを特徴とする発光装置。
【請求項7】
第1の電極及び第2の電極間に、複数の発光層を積層した積層型発光素子と、
前記第1の電極及び前記第2の電極間に、一つの発光層を有する単層型発光素子と、を有し、
前記積層型発光素子が有する前記複数の発光層からの発光色はそれぞれ同じであり、
前記積層型発光素子において、前記複数の発光層のそれぞれと前記第1の電極との光学的距離は、前記複数の発光層のそれぞれの間に設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚、および前記第1の電極に最も近い発光層と前記第1の電極との間に設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚により、発光効率が高くなるように決定された
ことを特徴とする発光装置。
【請求項8】
第1の電極及び第2の電極間に、複数の発光層を積層した積層型発光素子と、
前記第1の電極及び前記第2の電極間に、一つの発光層を有する単層型発光素子と、を有し、
前記積層型発光素子が有する前記複数の発光層からの発光色はそれぞれ同じであり、
前記積層型発光素子において、前記複数の発光層のそれぞれと前記第1の電極との光学的距離は、前記複数の発光層のそれぞれの間に設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚、および前記第1の電極に最も近い発光層と前記第1の電極との間に設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚によって異なる
ことを特徴とする発光装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一において、
前記有機化合物と金属酸化物とを有する層の金属酸化物は、バナジウム酸化物、モリブデン酸化物、ニオブ酸化物、レニウム酸化物、タングステン酸化物、ルテニウム酸化物、チタン酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、又はタンタル酸化物であることを特徴とする発光装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一において、
前記有機化合物と金属酸化物とを有する層の有機化合物は、正孔輸送性物質に対して電子受容性を有する物質であることを特徴とする発光装置。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか一において、
前記有機化合物と金属酸化物とを有する層の有機化合物は、前記発光層へホールを注入する機能を有することを特徴とする発光装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一において、
前記複数の発光層は、赤色、青色、及び緑色を呈することを特徴とする発光装置。
【請求項1】
第1の電極及び第2の電極間に、複数の発光層を積層し、
前記複数の発光層のそれぞれと前記第1の電極との光学的距離は、前記複数の発光層のそれぞれの間に設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚、および前記第1の電極に最も近い発光層と前記第1の電極との間に設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚により、発光効率が高くなるように決定された
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
第1の電極及び第2の電極間に、複数の発光層を積層し、
前記複数の発光層のそれぞれと前記第1の電極との光学的距離は、前記複数の発光層のそれぞれの間に設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚、および前記第1の電極に最も近い発光層と前記第1の電極との間に設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚によって異なる
ことを特徴とする発光装置。
【請求項3】
第1の電極及び第2の電極間に、複数の発光層を積層し、
前記複数の発光層からの発光色はそれぞれ異なり、
前記複数の発光層のそれぞれと前記第1の電極との光学的距離は、前記複数の発光層のそれぞれの間に、前記発光層に接して設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層、および前記第1の電極に最も近い発光層と前記第1の電極との間に、接して設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚により、発光効率が高くなるように決定された
ことを特徴とする発光装置。
【請求項4】
第1の電極及び第2の電極間に、複数の発光層を積層し、
前記複数の発光層からの発光色はそれぞれ異なり、
前記複数の発光層のそれぞれと前記第1の電極との光学的距離は、前記複数の発光層のそれぞれの間に、前記発光層に接して設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層、および前記第1の電極に最も近い発光層と前記第1の電極との間に、接して設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚によって異なる
ことを特徴とする発光装置。
【請求項5】
第1の電極及び第2の電極間に、複数の発光層を積層した積層型発光素子と、
前記第1の電極及び前記第2の電極間に、一つの発光層を有する単層型発光素子と、を有し、
前記積層型発光素子において、前記複数の発光層のそれぞれと前記第1の電極との光学的距離は、前記複数の発光層のそれぞれの間に設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚、および前記第1の電極に最も近い発光層と前記第1の電極との間に設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚により、発光効率が高くなるように決定された
ことを特徴とする発光装置。
【請求項6】
第1の電極及び第2の電極間に、複数の発光層を積層した積層型発光素子と、
前記第1の電極及び前記第2の電極間に、一つの発光層を有する単層型発光素子と、を有し、
前記積層型発光素子において、前記複数の発光層のそれぞれと前記第1の電極との光学的距離は、前記複数の発光層のそれぞれの間に設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚、および前記第1の電極に最も近い発光層と前記第1の電極との間に設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚によって異なる
ことを特徴とする発光装置。
【請求項7】
第1の電極及び第2の電極間に、複数の発光層を積層した積層型発光素子と、
前記第1の電極及び前記第2の電極間に、一つの発光層を有する単層型発光素子と、を有し、
前記積層型発光素子が有する前記複数の発光層からの発光色はそれぞれ同じであり、
前記積層型発光素子において、前記複数の発光層のそれぞれと前記第1の電極との光学的距離は、前記複数の発光層のそれぞれの間に設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚、および前記第1の電極に最も近い発光層と前記第1の電極との間に設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚により、発光効率が高くなるように決定された
ことを特徴とする発光装置。
【請求項8】
第1の電極及び第2の電極間に、複数の発光層を積層した積層型発光素子と、
前記第1の電極及び前記第2の電極間に、一つの発光層を有する単層型発光素子と、を有し、
前記積層型発光素子が有する前記複数の発光層からの発光色はそれぞれ同じであり、
前記積層型発光素子において、前記複数の発光層のそれぞれと前記第1の電極との光学的距離は、前記複数の発光層のそれぞれの間に設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚、および前記第1の電極に最も近い発光層と前記第1の電極との間に設けられた有機化合物と金属酸化物とを有する層の膜厚によって異なる
ことを特徴とする発光装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一において、
前記有機化合物と金属酸化物とを有する層の金属酸化物は、バナジウム酸化物、モリブデン酸化物、ニオブ酸化物、レニウム酸化物、タングステン酸化物、ルテニウム酸化物、チタン酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、又はタンタル酸化物であることを特徴とする発光装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一において、
前記有機化合物と金属酸化物とを有する層の有機化合物は、正孔輸送性物質に対して電子受容性を有する物質であることを特徴とする発光装置。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか一において、
前記有機化合物と金属酸化物とを有する層の有機化合物は、前記発光層へホールを注入する機能を有することを特徴とする発光装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一において、
前記複数の発光層は、赤色、青色、及び緑色を呈することを特徴とする発光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−228712(P2006−228712A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6873(P2006−6873)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
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