説明

発光装置

【課題】 周期構造による、発光素子の外部に取り出される光の特性のバラツキを抑制する。
【解決手段】 発光素子を有する発光装置で、発光領域100a,100b,100cの外側の非発光領域101があり、発光素子を構成する有機化合物層43内の発光層で発生し、基板10の面内方向に導波する光を発光素子の外部に取り出すための周期構造70a,70b,70cが、薄膜トランジスタ20と発光素子の第1電極41とを電気的に接続するためのコンタクトホール部60以外の非発光領域101に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄膜で自発光を特徴とした有機発光素子で構成される発光装置は、新方式のフラットパネルディスプレイとして応用されている。有機発光素子は、陽極と、陰極と、陽極と陰極の間に形成される有機化合物層とで構成されている。有機発光素子の発光は、陰極から電子を、陽極から正孔を、有機化合物層に注入し、有機化合物層中の発光層で励起子を生成させ、この励起子よって発光層内の分子が励起状態にされ、分子が励起状態から基底状態にもどる際に光が放出される原理を利用している。発光層は、蛍光性有機化合物若しくは燐光性有機化合物、量子ドットなどの発光性材料からなる。
【0003】
アクティブマトリクス型の発光装置では、各有機発光素子を駆動させるための薄膜トランジスタ(以下、TFTと称す場合がある)が基板上に形成され、そのTFTの上には平坦化層が形成される。この上に有機発光素子を構成する第1電極(陽極)、有機化合物層、第2電極(陰極)が、この順で形成される。また、一般的に、隣り合う有機発光素子の間には隔壁が設けられ、この隔壁の下には、平坦化層を貫いて、第1電極とTFTとを電気的に接続するためのコンタクトホール部が形成されている。第1電極とTFTが電気的に接続する構成は、導電性部材がコンタクトホール部に配置され、導電性部材が第1電極とTFTに接する構成や、第1電極の一部がコンタクトホール部に配置され、第1電極の一部とTFTが直接接する構成が挙げられる。よって、導電性部材あるいは第1電極の一部をコンタクトホール部に設ける際に、導電性部材あるいは第1電極の一部が断切れして第1電極とTFTの電極とが電気的に非接続とならないように、コンタクトホール部には傾斜面が設けられている。
【0004】
一方、発光装置の開発課題の一つとして、発光効率の向上が挙げられる。有機発光素子の構成は、陽極、発光層を含む有機化合物層、および陰極が、1次元的に積層された構成となっている。このとき、空気の屈折率(約1.0)よりも有機化合物層の各層の屈折率(約1.7〜1.9程度)の方が大きい。このため、発光層の内部から放出された光の大部分は、高屈折率から低屈折率へ変化する積層膜の界面で全反射されて、基板に水平な方向に伝播する導波光となり、素子内部に閉じ込められることになる。発光層の内部で発生した光のうち外部に取り出して利用できる光の割合(光取り出し効率)は、通常、約20%程度でしかない。
【0005】
よって、発光装置の発光効率を改善するためには、この光取り出し効率を向上することが重要である。特許文献1では、全反射を低減し、素子内部への光閉じ込めを抑制することを目的として、有機化合物層の上部や下部(光取り出し側やその反対側)に周期構造(例えば回折格子)を配置する方法が提案されている。
【0006】
この周期構造の周期や高さなどを設定することによって、特定の取り出したい波長の光を選択的に素子から取り出すことができたり、取り出される光の方向を制御することができる。
【0007】
さらに、有機化合物層の上部や下部に限らず、隣り合う素子の間にある隔壁の下に周期構造を配置して、隔壁内にまで伝播する光を素子の外部に取り出し、光取り出し効率を向上させる方法が提案されている。
【特許文献1】特開平11−283751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、隔壁の下に周期構造を配置する場合、隔壁の下のコンタクトホール部の傾斜面に周期構造が配置されると、コンタクトホール部の傾斜面における周期構造の加工精度が低下して、その周期が乱されたり、その高さが均一でなくなってしまう。このため、コンタクトホール部に配置した周期構造によって、素子の外部に取り出される光の出射方向や波長は、取り出したい方向や波長からずれてしまう。つまり、コンタクトホール部に配置した周期構造によって取り出される光の特性は、取り出したい光の特性や他の領域に設けた周期構造によって素子の外部に取り出される光の特性とは異なってしまう。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、光取り出し効率を向上させ、周期構造によって素子の外部に取り出される光の特性のバラツキを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段として、本発明に係る発光装置は、基板上に配置される薄膜トランジスタと、薄膜トランジスタ上を平坦化する平坦化層と、平坦化層上に配置される発光素子と、を有し、発光素子が、基板側から順に第1電極、発光層、第2電極を有している発光装置であって、記第1電極と第2電極の間に電圧を印加することによって発光層が発光する発光領域と、発光領域の外側に位置する非発光領域と、を有し、発光層で発生し、基板の面内方向に導波する光を発光素子の外部に取り出すための周期構造と、平坦化層を貫き、薄膜トランジスタと第1電極を電気的に接続するためのコンタクトホール部と、が前記非発光領域に配置され、周期構造は、コンタクトホール部に配置されていないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、周期構造によって、発光装置の光取り出し効率が向上し、かつ、その周期構造がコンタクトホール部に配置されているので、素子の外部に取り出される光の特性のバラツキを抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の原理を構成例に基づいて説明する。なお、本発明の発光装置を構成する発光素子は、有機発光素子を例示して説明するが、無機発光素子やQD−LED発光素子などで構成してもよい。
【0013】
本発明では、有機発光素子の光取り出し効率を向上させるために、周期構造が構成される。ここで言う周期構造は、発光領域内の発光層で発生した光のうち、有機発光素子の面内方向に導波する光を有機発光素子の外部に取り出すための構造である。なお、発光領域とは、基板に垂直な方向において、有機層を挟む2つの電極のうち、一方の電極を他方の電極に投影させたときに重なる領域であって、この2つの電極の間に隔壁が形成されていない領域を指す。一方、非発光領域は、基板に垂直な方向において、有機層を挟む2つの電極のうち、一方の電極を他方の電極に投影させたときに重ならない領域、または、この2つの電極の間に隔壁が形成されている領域である。
【0014】
本発明の発光装置を模式的に表した鳥瞰概略図を図1に、図1中のA−A´断面概略図を図2に、図1中のB−B´断面外略図を図3に示す。また、図4は、図2に記した一点破線で囲った部分の拡大概略図である。図2、図3において、10は基板であり、基板10上に薄膜トランジスタ(TFT)20が配置され、TFT20の上を平坦化する平坦化層30が配置されている。さらに、平坦化層30の上には反射層41があり、反射層41の上に、基板側から順に配置される、第1電極42と、発光層を有する有機化合物層43と、第2電極44とからなる有機発光素子(以下、素子と称す場合がある)が設けられている。この有機発光素子の、第1電極(陽極)42と第2電極(陰極)44との間に電圧を印加すると、陽極と陰極からそれぞれ正孔と電子が、有機化合物層43内に注入される。この正孔と電子が有機化合物層43内の発光層で再結合し、励起子を生成し、この励起子よって発光層内の分子が励起状態にされ、この分子が励起状態から基底状態にもどる際に発光層から光が放出される原理により、有機発光素子は発光することができる。
【0015】
また、図2、図3において、発光領域100bの外側には、隔壁50が設けられ、この隔壁50が形成されている領域が非発光領域101となる。また、図2で示すように、この隔壁50の下側、つまり非発光領域101に、素子の第1電極42とTFT20とを電気的に接続するためのコンタクトホール部60が平坦化層30を貫くように設けられている。さらに本発明の発光装置においては、図1、図3で示すように、発光領域100a,100b,100cそれぞれの外側の非発光領域101には、反射層41と一体で形成される周期構造70a,70b,70cが配置されている。なお、図1では見やすくするために隔壁50等が省略されている。
【0016】
また、図2に示すように、薄膜トランジスタ(TFT)20は、ソース・ドレイン絶縁層21、層間絶縁層22、ゲート絶縁層23、ソース電極(またはドレイン電極)24、ゲート電極25、Poly−Si26で構成されている。
【0017】
そして、TFT20と第1電極42は、平坦化層30を貫いて形成されているコンタクトホール部60を介して、電気的に接続されている。より詳しくは、TFT20のソース電極(またはドレイン電極)24と反射層41の一部がコンタクトホール部60で接して形成される構成を採ることで、反射層41と接して形成される第1電極42とTFT20が電気的に接続されている。なお、反射層41を介さず、第1電極42とTFT20のソース電極(またはドレイン電極)24と直接接する構成を採ってもよい。
【0018】
図3で示す周期構造は、凸部が面内に周期的に形成された構造を指しているが、凹部、あるいは、凹部と凸部の両方が面内に周期的に形成された構造であってもよい。また、周期構造の凹部、凸部は、図3に示すように直角の頂点を有するテーパ構造である必要はなく、順テーパ構造、逆テーパ構造等様々な構造にすることができる。また、周期構造は、完全に周期的である必要はなく、略周期的であればよく、準結晶構造やフラクタル構造、連続的に周期が変化する構造、若しくはこれらを組み合わせたものでもよい。
【0019】
また、周期構造は、反射層41と同じ材料で反射層41と一体で形成しているが、反射層41と異なる材料で一体に形成しない構成でもよく、金属や誘電体もしくはこれらの組み合わせでもよい。周期構造の材料としては、金属であれば、Al,Ag,Cr、誘電体ならば、酸化珪素等を用いることができる。さらに、周期構造の表面は、絶縁層、光透過性電極や他の層などにより、平坦化されてもよいし、されなくてもよい。さらに、周期構造は、1次元方向に周期をもった1次元周期構造であってもよいし、2次元方向に周期をもった2次元周期構造でもよいし、さらに、2次元周期構造を積層し3次元周期構造としてもよい。
【0020】
基板10としては、特に限定するものではないが、金属、セラミックス、ガラス、石英等が用いられる。また、プラスティックシート等のフレキシブルシートを用いたフレキシブルな発光装置とすることも可能である。
【0021】
反射層41としては、第1電極42との界面における反射率が少なくとも50%以上、好ましくは、80%以上となる材料からなる層が望ましい。その条件を満たす材料としては、例えば、Al,Ag,Cr等の金属や、それらの合金が挙げられる。また、反射層41が金属のような導電性部材で構成される必要はなく、誘電体多層膜ミラーのような絶縁性部材を反射層として用いることもできる。
【0022】
第1電極42としては、酸化物導電膜、具体的には、酸化インジウムと酸化錫の化合物膜(ITO)や、酸化インジウムと酸化亜鉛の化合物膜(IZO)等を用いることができる。また、第1電極42は反射層41と同じ材料を用いることができ、この場合には、反射層41を設けずに、第1電極42を反射層を兼ねる電極とすることができる。
【0023】
有機化合物層43を構成する有機化合物としては、低分子材料で構成されても、高分子材料で構成されても、両者を用いて構成されてもよく、特に限定されるものではない。必要に応じてこれまで知られている材料を使用できる。
【0024】
また、有機化合物層43は、単層型(発光層)、2層型(正孔輸送層/発光層)、3層型(正孔輸送層/発光層/電子輸送層)、4層型(正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層)、5層型(正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層)のいずれの構成でもよい。この有機化合物層の層数や積層順は、電極の構成によって適宜決定される。
【0025】
有機化合物層43を構成する層は、一般には真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング、プラズマ、あるいは、適当な溶媒に溶解させて公知の塗布法(例えば、スピンコーティング、ディッピング、キャスト法、インクジェット法等)により形成される。
【0026】
第2電極44は、発光層で発光した光を素子から取り出すために光透過性を有している必要がある。なお、光透過性を有するとは、可視光に対して50%以上の透過率を有していることである。このような第2電極44としては、第1電極42と同様の酸化物導電膜を用いることができる他、銀などの金属薄膜を用いることができる。さらに、第2電極44は、酸化物導電膜と金属薄膜の2層構成であっても良い。第2電極44の膜厚としては、光透過性を有していれば特に限定されないが、10nm以上1000nm以下、好ましくは30nm以上300nm以下の範囲で設定されると、電極のシート抵抗と透過率の観点から望ましい。
【0027】
平坦化層30としては、フッ素樹脂やアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の有機材料、または、SiOや酸化窒化珪素(SiN)等の無機材料を用いることができ、スピンコーティング法などの公知の方法で形成することができる。
【0028】
また、平坦化層30の膜厚は、0.5μm(500nm)以上であることが好ましい。これは、平坦化層30の下に配置されているTFTや配線による影響により、平坦化層30と反射層41との界面に図4に示すような傾斜部分80が表れ、この傾斜部分80の傾斜角度θ(図4参照)が10°以下となるようにするためである。この傾斜角度θが10°以下であれば、この傾斜部分80の上に形成される有機発光素子の発光にほとんど影響せず、さらに、周期構造が傾斜部分80の上に形成されても、周期構造の周期や高さが略均一となる。また、平坦化層30の膜厚は、薄型の発光装置を得る上で10μm以下であることが望ましく、より好ましくは5μm以下がよい。
【0029】
また、傾斜部分80を除く平坦化層30と反射層41との面は、その中心線平均粗さRaが10nm以下であることが好ましく、この場合には、平坦化層30と反射層41との面の粗さが、周期構造の周期や高さに影響を与えることがほとんどない。
【0030】
隔壁50としては、絶縁性部材であれば特に限定されないが、平坦化層30と同じ材料を用いることができる。また、隔壁50の膜厚は、第1電極42と第2電極44とが電気的に接続されなければ特に限定されないが、1μm以上であることが好ましい。一方、隔壁50の膜厚は10μm以下、さらに好ましくは5μm以下であれば、薄型の発光装置を得られるのでよい。この隔壁50は、フォトリソグラフィーなどの公知の方法で形成される。
【0031】
上述したように、発光領域100a,100b,100cからの発光光の多くは、基板に水平な面内方向に伝播する導波光となる。この導波光の一部を周期構造で回折や屈折によって、素子の外部に取り出す光とすることで光取り出し効率を向上させる。また、周期構造の周期や高さを調整することで、素子の外部に取り出される光は正面方向に対して均一に出射されること、または、正面方向により強く指向性を持たせることで正面における輝度を向上させることができる。このとき、素子の外部に取り出される光の出射方向が不均一になると、正面における輝度や色にムラが生じたり、輝度や色の視野角特性に影響を与えたりする。このため、周期構造は略均一の周期で、略均一の高さに形成されることが望ましい。
【0032】
図3のように、周期構造70bはTFT20や配線(不図示)の凹凸を平坦化する平坦化層30上に形成されている。また、図2、図4のように、ソース電極(またはドレイン電極)24と反射層41はコンタクトホール部60で段切れすることなく電気的に接続されるように、コンタクトホール部60は傾斜面を有している。このコンタクトホール部60の傾斜面の傾斜角度φは、30°以上50°以下となることが一般的である。一般的に、この傾斜角度φが30°より小さくなると、コンタクトホール部60が大きくなり、それを覆う隔壁50の形成される領域、つまり、非発光領域101が大きくなり、発光領域が小さくなってしまう。また、傾斜角度φが50°より大きくなると、反射層41がコンタクトホール部60で断切れする可能性が高くなり、第1電極42とTFT20とが電気的に接続されなくなる恐れがある。
【0033】
このコンタクトホール部60の傾斜面に周期構造を配した場合、周期構造の加工精度が低下するので、周期構造の周期が乱れたり、高さが均一でなくなる。そのため、周期構造によって素子の外部に取り出される光の出射方向、出射強度、波長依存性等が、発光領域から取り出される光、または、コンタクトホール部60に配置されていない周期構造によって取り出される光のものとは異なってしまう。そこで、図1のように、本発明の周期構造70bは、コンタクトホール部60に配置せずに、発光領域100bの長辺2辺の外側の非発光領域101に配置することで、周期構造によって素子の外部に取り出される光の特性がばらつくことを抑制している。
【0034】
なお、取り出される光の特性とは、取り出される光の発光強度や波長依存性、出射方向、視野角依存性などである。
【0035】
また、周期構造70a,70cもそれぞれ、発光領域100a,100bの長辺2辺の外側の非発光領域101に配置されている。
【0036】
発光領域100a,100b,100cは、全て同じ色を発光してもいいし、互いに異なる色を発光してもよい。つまり、各発光領域を構成する有機発光素子の発光層が全て同じ色を発光する材料で構成されていても良いし、それぞれ異なる色を発光する材料で構成されても良い。また各発光領域が互いに異なる色を発光する場合、それぞれの発光領域外に配置される周期構造70a,70b,70cの周期、高さ等の形状は、それぞれが対応する発光領域からの色の波長に合わせて、それぞれ異なる形状としても良い。また、周期構造70a,70b,70cは発光効率向上の効果を最も期待する色に適した形状で、均一に形成されも良い。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の発光装置の構成および製造方法を実施例として説明するが、本発明は本実施例によって何ら限定されるものではない。
【0038】
<実施例1>
図1、図2、図3に示す構成の発光装置を以下に示す方法で作製する。つまり、本実施例の発光装置は、複数の画素を有し、各画素が赤を発光する発光素子(以下R素子と称す)、緑を発光する発光素子(以下G素子と称す)、青を発光する発光素子(以下B素子と称す)、つまり赤、緑、青の3色の副画素からなる発光装置である。本実施例では、図1の3つの副画素(発光領域100a,100b,100c)は左から、R素子、G素子、B素子で構成されているが、画素内の3色の素子の配置位置はどのようであってもよい。また、特に本実施例の発光装置は、フルカラーの表示装置として好ましく適用することができる。
【0039】
まず、基板10としてのガラス基板上に、低温Poly−SiからなるTFT20が形成され、その上にアクリル樹脂からなる平坦化層30が1.5μmの膜厚で形成される。
【0040】
次に、TFT20の電極が露出するように、平坦化層30をエッチングすることによって、コンタクトホール部60が形成される。
【0041】
また、この平坦化層30上に、反射層41として、スパッタリングによりAg合金が約150nmの膜厚で形成される。Ag合金からなる反射層41は、可視光の波長域(λ=380nm〜780nm)で分光反射率75%以上の高反射率を有している。このとき、反射層41は、コンタクトホール部60内の露出しているTFT20の電極と接するようにコンタクトホール部60内まで形成される。
【0042】
この反射層41上に、まず、ポジ型のレジストをスピンコートしプリベークを行う。その後、正方格子の周期構造のパターンを露光し、現像、ポストベークを行い、レジストパターンを形成する。この際、周期構造は、コンタクトホール部60内の反射層41上には形成されない。
【0043】
次に、IZOのリフトオフ加工により、各周期構造の凹状に窪んだエッチング部分を平坦化する。まず、レジストパターンを残した状態で、スパッタリングにより透明導電性材料のIZOが40nmの膜厚で形成される。エッチング部分ではAg合金上にIZOが、エッチング部分以外ではレジスト上にIZOが形成される。その後、レジストをレジスト上のIZOごと取り除いて平坦化する。この上に、スパッタリングによりIZOを20nmの膜厚で形成して、第1電極42のパターニングをし、フォトニック結晶(周期構造)付きの陽極を形成する。
【0044】
エッチング加工により、反射層41の表面に周期構造70a,70b,70cが形成される。本実施例では、R素子の発光領域100aの外側に配置される周期構造70aは、周期345nm、凸部の最上面の一辺の長さ200nm、エッチング深さ(周期構造の凸部の高さ)40nmで形成される。G素子の周期構造70bは周期250nm、凸部の最上面の一辺の長さ140nm、エッチング深さ40nmで形成される。B素子の周期構造70cは周期200nm、凸部の最上面の一辺の長さ145nm、エッチング深さ40nmで形成される。各素子の周期構造の周期等は、各素子から取り出される光の特性が、取り出したい光の特性となるように設定されている。
【0045】
さらに、酸化窒化珪素(SiN)を320nmの膜厚で形成した後、各副画素に発光領域となる開口部をエッチングする。これにより、開口部(発光領域)外の周期構造の上に隔壁50が配置された構成となる。
【0046】
これをイソプロピルアルコール(IPA)で超音波洗浄し、次いで、煮沸洗浄後乾燥する。その後、UV/オゾン洗浄してからR素子、G素子、B素子それぞれの有機化合物層43を真空蒸着により形成する。各素子の有機化合物層43の各層は、発光層のみ異なる材料で形成されるが、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層は同じ材料で形成される。
【0047】
有機化合物層43を形成した基板10を、真空を破ること無しにスパッタ装置に移動し、第2電極44として、スパッタリングによりAg合金を24nmの膜厚で形成する。
【0048】
さらに、誘電体層(不図示)として、スパッタリングにより酸化珪素が290nmの膜厚で形成される。
【0049】
さらに、発光装置の周辺部に吸湿剤(不図示)を配置し、エッチングされたキャップガラス(不図示)で封止することにより、発光装置を得る。
【0050】
本実施例の周期構造は、発光領域には配置されず、非発光領域で、かつ、コンタクトホール部60以外に配置されている。この構成により、光取り出し効率を向上させ、さらに、周期構造によって素子の外部に取り出される光の特性のバラツキを低減することができる。また、発光領域には周期構造を配置していないので、周期構造の凹凸による有機発光素子の発光への影響を軽減することができる。
【0051】
<実施例2>
図5は、本実施例の発光装置の画素を示す鳥瞰概略図である。基本的な断面構成および製法は実施例1と同様である為、実施例1との相違点のみを説明する。実施例1では、各発光領域100a,100b,100cの周囲2辺に周期構造70a,70b,70cが配置されているが、本実施例では、各発光領域100a,100b,100cの周囲4辺に周期構造70a,70b,70cが配置されている。この場合、周期構造が発光領域を囲むように発光領域の周囲4辺に配置されるので、光取り出し効率が大きくなるとともに、指向性がつきにくくなる。
【0052】
<実施例3>
図6は、本実施例の発光装置の画素を示す鳥瞰概略図である。実施例1、2では、各発光領域100a,100b,100cの外側の非発光領域のみに周期構造70a,70b,70cを配置したが、本実施例では、周期構造70a,70b,70cが発光領域100a,100b,100cにも配置されている。
【0053】
また、この構成において、周期構造は、発光領域内の全域に形成されるようにしてもよいし、発光領域内の一部に形成されてもよく、発光領域内のどこに設けてもよい。
【0054】
このように発光領域内にも周期構造を設ける場合には、周期構造によって素子の外部に取り出される光の強度が強くなり、光取り出し効率が向上する。さらに、周期構造の高さをそれぞれ10nm以上60nm以下に設定するとすると、光取り出し効率が5%以上向上し、周期構造の凹凸による、発光領域から取り出される光の特性への影響が低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明における実施例1の発光装置を示す鳥瞰概略図である。
【図2】図1に示すA―A´断面を示す断面概略図である。
【図3】図1に示すB−B´断面を示す断面概略図である。
【図4】図2に示す一点破線で囲われた領域の拡大概略図である。
【図5】本発明における実施例2の発光装置を示す鳥瞰概略図である。
【図6】本発明における実施例3の発光装置を示す鳥瞰概略図である。
【符号の説明】
【0056】
10 基板
20 薄膜トランジスタ
30 平坦化層
41 反射層
42 第1電極
43 有機化合物層
44 第2電極
50 隔壁
60 コンタクトホール部
70a,70b,70c 周期構造
100a,100b,100c 発光領域
101 非発光領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置される薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタの上を平坦化する平坦化層と、前記平坦化層の上に配置される発光素子と、を有し、
前記発光素子が、前記基板側から順に第1電極、発光層、第2電極を有している発光装置であって、
前記第1電極と前記第2電極の間に電圧を印加することによって発光層が発光する発光領域と、前記発光領域の外側に位置する非発光領域と、を有し、
前記発光層で発生し、前記基板の面内方向に導波する光を前記発光素子の外部に取り出すための周期構造と、前記平坦化層を貫き、前記薄膜トランジスタと前記第1電極とを電気的に接続するためのコンタクトホール部とが前記非発光領域に配置され、
前記周期構造は、前記コンタクトホール部に配置されていないことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記周期構造が前記発光領域にも配置されていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記周期構造の高さが10nm以上60nm以下であることを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記周期構造が前記非発光領域にのみ配置されていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記周期構造が前記発光領域を囲むように配置されていることを特徴とする請求項4に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−146919(P2010−146919A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324482(P2008−324482)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】