説明

発光装置

【課題】低温から高温、すなわち低電流から高電流範囲で優れた発光効率を実現する発光装置を提供する。
【解決手段】基板と、基板上に実装され、波長250nm乃至500nmの光を発する複数の第1の発光素子と、基板上に実装され、波長250nm乃至500nmの光を発する複数の第2の発光素子と、第1の発光素子上に形成され、第1の蛍光体を含有する第1の蛍光体層と、第2の発光素子上に形成され、50℃での発光効率が第1の蛍光体より高く、150℃での発光効率が第1の蛍光体より低い第2の蛍光体を含有する第2の蛍光体層と、を有することを特徴とする発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、青色の発光ダイオード(LED)にYAG:Ceなどの黄色蛍光体を組合せ、単一のチップで白色光を発する、いわゆる白色LEDに注目が集まっている。従来、LEDは赤色、緑色、青色と単色で発光するものであり、白色または中間色を発するためには、単色の波長を発する複数のLEDを用いてそれぞれ駆動しなければならなかった。しかし、現在では、発光ダイオードと、蛍光体とを組合せることにより、上述の煩わしさを排し、簡便な構造によって白色光を得ることができるようになっている。
【0003】
発光ダイオードを用いたLEDランプは、携帯機器、PC周辺機器、OA機器、各種スイッチ、バックライト用光源、および表示板などの各種表示装置に用いられている。これらLEDランプは高効率化が強く望まれており、加えて一般照明用途には高演色化、バックライト用途には高色域化の要請がある。高効率化には、蛍光体の高効率化が必要であり、高演色化あるいは高色域化には、青色の励起光と青色で励起され緑色の発光を示す蛍光体および青色で励起され赤色の発光を示す蛍光体を組み合わせた白色光源が望ましい。
【0004】
また、高負荷LEDは駆動により発熱し、蛍光体の温度が100〜200℃程度まで上昇することが一般的である。このような温度上昇が起こると蛍光体の発光強度は一般に低下し、いわゆる温度消光が生ずる。このため、特に、高温領域、すなわち高電流(高電力)範囲で発光効率が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−220830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、低温から高温、すなわち低電流から高電流範囲で優れた発光効率を実現する発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態の発光装置は、基板と、基板上に実装され、波長250nm乃至500nmの光を発する複数の第1の発光素子と、基板上に実装され、波長250nm乃至500nmの光を発する複数の第2の発光素子と、第1の発光素子上に形成され、第1の蛍光体を含有する第1の蛍光体層と、第2の発光素子上に形成され、50℃での発光効率が第1の蛍光体より高く、150℃での発光効率が第1の蛍光体より低い第2の蛍光体を含有する第2の蛍光体層と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施の形態の発光装置の模式上面図である。
【図2】図1のA−A模式断面図である。
【図3】蛍光体の発光効率の比較図である。
【図4】発光装置の発光効率を示す図である。
【図5】第2の実施の形態の発光装置の模式上面図である。
【図6】第3の実施の形態の発光装置の模式上面図である。
【図7】第4の実施の形態の発光装置の模式上面図である。
【図8】図7のB−B模式断面図である。
【図9】緑色蛍光体G1のXRDプロファイルである。
【図10】緑色蛍光体G2のXRDプロファイルである。
【図11】赤色蛍光体R1のXRDプロファイルである。
【図12】赤色蛍光体R2のXRDプロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて実施の形態を説明する。
【0010】
なお、本明細書中、「温度上昇率」とは、発光装置の入力電流(または入力電力)に対する温度の上昇比率を意味する。発光装置の所定の位置の入力電力に対する温度変化を、例えば、熱電対や放射温度計等の測定装置で計測することで算出することが可能である。
【0011】
また、本明細書中、「蛍光体の発光効率」とは、励起光の光エネルギーに対する、蛍光体の発する蛍光の光エネルギーの割合を意味する。また、「発光装置の発光効率」とは、発光装置の入力電力に対し、発光装置から発せられる全光束を意味する。
【0012】
また、本明細書中、「白色光」とは一般的に照明装置に用いられる異なる波長の光が混合した電球色、温白色、白色、昼白色、昼光色等を包含する概念である。
【0013】
また、本明細書中、「蛍光体層」とは単層、複層いずれの場合も含む概念である。
【0014】
(第1の実施の形態)
本実施の形態の発光装置は、基板と、基板上に実装され、波長250nm乃至500nmの光を発する複数の第1の発光素子と、基板上に実装され、波長250nm乃至500nmの光を発する複数の第2の発光素子と、第1の発光素子上に形成され、第1の蛍光体を含有する第1の蛍光体層と、第2の発光素子上に形成され、50℃での発光効率が第1の蛍光体より高く、150℃での発光効率が第1の蛍光体より低い第2の蛍光体を含有する第2の蛍光体層と、を有する。
【0015】
本実施の形態の発光装置は、低温で発光効率が高い蛍光体を含有する蛍光体層と、高温で発光効率が高い蛍光体含有する蛍光体層とを別個の発光素子上に備えることにより、全温度範囲すなわち、発光装置に入力される電流が低電流から高電流の全範囲で優れた発光効率を簡易に実現する。
【0016】
図1は、本実施の形態の発光装置の模式上面図である。図2は、図1のA−A模式断面図である。
【0017】
本実施の形態の発光装置は、ヒートシンク10上に基板12が形成されている。そして、基板10上に複数の第1の白色LED14と、複数の第2のLED16とが配置されている。
【0018】
第1の白色LED14は、基板上に実装される第1の発光素子14aと、第1の発光素子14a上に形成される第1の蛍光体層14bとで構成される。また、第2の白色LED16は、基板上に実装される第2の発光素子16aと、第2の発光素子16a上に形成される第2の蛍光体層16bとで構成される。
【0019】
第1の発光素子14aおよび第2の発光素子16aは、それぞれ、第1の蛍光体層14bと第2の蛍光体層16bとにそれぞれ含まれる第1の蛍光体および第2の蛍光体を励起するための光源である。第1の発光素子14aおよび第2の発光素子16aは、近紫外から青色の光、すなわち、波長250nm乃至500nmの光を発する。第1の発光素子14aおよび第2の発光素子16aは、例えば、青色LEDチップである。第1の発光素子14aと第2の発光素子16aは、同種の発光素子であっても異種の発光素子であってもかまわない。
【0020】
各発光素子14a、16aは、例えば金のワイヤ20を介して図示しない配線に接続されている。そして、この配線を介して外部から駆動電流が発光素子14a、16aに供給されることにより、発光素子14a、16aが励起用の青色光を発生する。
【0021】
第1の蛍光体層14bには第1の蛍光体が含有され、第2の蛍光体層16bには第2の蛍光体が含有される。第2の蛍光体は、温度50℃での発光効率が第1の蛍光体より高く、150℃での発光効率が第1の蛍光体より低いという特性を有する。
【0022】
本実施の形態では、上記特性を有する第1の蛍光体として、いわゆるサイアロン系の蛍光体を適用する。また、第2の蛍光体として、いわゆるシリケート系蛍光体を適用する。
【0023】
本実施の形態のサイアロン系の緑色蛍光体は下記一般式(1)で表わされる組成を有し、赤色蛍光体は下記一般式(2)で表わされる組成を有する。サイアロン系蛍光体は、比較的高温での発光効率の低下が少ない。すなわち、温度消光が少ないという特性を有する。
【0024】
(M1−x1Eux13−y1Si13−z1Al3+z12+u21−w (1)
(上記一般式(1)中、MはIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x1、y1、z1、u、wは、次の関係を満たす。
0<x1<1、
−0.1<y1<0.3、
−3<z1≦1、
−3<u−w≦1.5)
【0025】
ここで、MはSr(ストロンチウム)であることが望ましい。また、Mは、Srに加え、Ca(カルシウム)等の他の元素を約10mol%以下の割合で混ぜても良い。
【0026】
上記一般式(1)で表わされる組成を有するサイアロン系蛍光体は緑色蛍光体(G)であり、波長250nm乃至500nmの光、すなわち、近紫外光もしくは青色光で励起した際、励起光よりも長波長であり、青緑色から黄緑色にわたる領域の発光、すなわち波長490〜580nmの間にピークを有する発光を示す。
【0027】
(M’1−x2Eux2a1Sib1AlOc1d1 (2)
(上記一般式(2)中、M’はIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x2、a1、b1、c1、d1は、次の関係を満たす。
0<x2<1、
0.55<a1<0.95
2.0<b1<3.9、
0<c1<0.6、
4<d1<5.7)
【0028】
上記一般式(2)で表わされる組成を有するサイアロン系蛍光体は赤色蛍光体(R)であり、波長250nm乃至500nmの光、すなわち、近紫外光もしくは青色光で励起した際、励起光よりも長波長であり、橙色から赤色にわたる領域の発光、すなわち波長580〜700nmの間にピークを有する発光を示す。
【0029】
ここで、M’はSr(ストロンチウム)であることが望ましい。また、M’は、Srに加え、Ca(カルシウム)等の他の元素を約10mol%以下の割合で混ぜても良い。
【0030】
本実施の形態のシリケート系の蛍光体は、下記一般式(3)で表わされる組成を有する。シリケート系蛍光体は、比較的低温での発光効率が高いが、高温での発光効率の低下が大きい。すなわち、温度消光が大きいという特性を有する。
【0031】
(Ba1−y2−z2−x3Cay2Srz2Eux3a2Sib2c2 (3)
(上記一般式(3)中、x3、y2、z2、a2、b2、c2は、次の関係を満たす。
0<x3≦1、
0≦y2≦1、
0≦z2≦1、
1.5<a2<2.5
0.5<b2<1.5、
3.5<c2<4.5)
【0032】
図3は、蛍光体の発光効率の比較図である。横軸は蛍光体の温度、縦軸は室温(25℃)でのサイアロン系蛍光体の発光効率で規格化した発光効率である。上記組成範囲内のサイアロン系とシリケート系の特性をプロットしている。
【0033】
サイアロン系蛍光体は、比較的高温での発光効率の低下が少ない。シリケート系蛍光体は、比較的低温での発光効率が高いが、高温での発光効率の低下が大きい。シリケート系蛍光体は、温度50℃での発光効率がサイアロン系より高く、150℃での発光効率が第1の蛍光体より低いという特性を有する。
【0034】
図4は、発光装置の発光効率を示す図である。上記組成範囲内のサイアロン系蛍光体を用いた白色LEDの発光モジュールと、上記組成範囲内のシリケート系蛍光体を用いた白色LEDの発光モジュールの注入電流と全光束との関係を占めしている。発光モジュールは、縦4個×横4個の計16個の白色LEDを配置したモジュールである。
【0035】
サイアロン系蛍光体を用いた白色LEDの発光モジュールの場合は、低注入電流での発光効率はシリケート系蛍光体を用いた白色LEDの発光モジュールに比べ低い。しかし、高注入電流での発光効率はシリケート系蛍光体が低下するのに対し、サイアロン系蛍光体では低下が見られない。これは、サイアロン系蛍光体の高温側での発光効率の低下が小さいためである。
【0036】
図4では、注入電流が1100mA(電力にすると13W)近傍で、サイアロン系蛍光体を用いた場合の発光効率が、シリケート系蛍光体を用いた場合の発光効率を上回る。この時の白色LEDまたは基板の温度が約100℃である。
【0037】
本実施の形態は、比較的高温での発光効率の低下が少ないサイアロン蛍光体を用いた白色LEDと、比較的低温での発光効率が高いが、高温での発光効率の低下が大きいシリケート系蛍光体を用いた白色LEDを同一基板上に配置する。したがって、低注入電流の低温域では、シリケート系蛍光体の寄与により発光効率を維持し、高注入電流の高温域では、サイアロン蛍光体の寄与により発光効率を維持することが可能となる。よって、低温から高温、すなわち低電流から高電流範囲で優れた発光効率を実現する発光装置を提供することが可能となる。特に、異なる2種の白色LEDを同一基板に配置するだけであるので製造も容易である。
【0038】
そして、シリケート系蛍光体を用いた第2の蛍光体層の温度が100℃未満であることが、発光効率を維持する観点から望ましい。なお、蛍光体層、発光素子および発光素子が実装された直下の基板は、極めて近接しているため、蛍光体層の温度は、発光素子または発光素子が実装された直下の基板の温度を測定することによっても評価可能である。
【0039】
なお、本実施の形態において、例えば、発光装置や白色LEDの発色を調整するために、第1または第2の蛍光体層に、サイアロン系蛍光体やシリケート系蛍光体に加え、その他の組成の蛍光体を用いてもかまわない。蛍光体層は複数の蛍光体が混合されて形成されていても、異なる蛍光体を含有する蛍光体層が積層されるものであってもかまわない。
【0040】
また、第1の白色LED14と、第2の白色LED16との配置パターンは、図1に限られることなく、例えば、市松模様等の配置パターンであってもかまわない。また、第1のLED14と第2のLED16の配置個数についても、発光効率等を考慮して最適な配置個数を選択すれば良い。
【0041】
(第2の実施の形態)
本実施の形態の発光装置は、第1の発光素子が基板上の第1の領域に実装され、第2の発光素子が基板上の第2の領域に実装され、第1の領域の温度上昇率が、第2の領域の温度上昇率に対して高いこと以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、重複する内容については記載を省略する。
【0042】
図5は、本実施の形態の発光装置の模式上面図である。図に示すように、第1の白色LED14が基板12上の第1の領域24に配置され、第2の白色LED16が基板12上の第2の領域16に実装されている。すなわち、第1の発光素子14aが基板12上の第1の領域24に実装され、第2の発光素子16bが基板12上の第2の領域16に実装されている。そして、第1の領域24が、第2の領域26に囲まれている。
【0043】
第1の領域24では、第2の領域26に比べ内側にあるため、発光素子の発熱による熱がこもりやすい。したがって、結果的に、任意の注入電流量(入力電力)において、第1の領域の温度上昇率が、第2の領域の温度上昇率に対して高くなる。
【0044】
このように、本実施の形態によれば、温度上昇率が高い領域に、高温で発光効率の低下が小さい蛍光体を用いた白色LEDを配置し、温度上昇率が低い領域に、比較的低温での発光効率が高いが、高温での発光効率の低下が大きい蛍光体を用いた白色LEDを配置する。したがって、2種の白色LEDを用いた発光装置において、高い実装密度を維持しつつ、低温、高温での発光効率を一層向上させる発光装置を提供することが可能となる。
【0045】
(第3の実施の形態)
本実施の形態の発光装置は、第1の領域における第1の発光素子の実装密度が、第2の領域における第2の発光素子の実装密度よりも高いこと以外は、第2の実施の形態と同様である。したがって、重複する内容については記載を省略する。
【0046】
図6は、本実施の形態の発光装置の模式上面図である。図に示すように、図に示すように、第1の白色LED14が基板12上の第1の領域24に配置され、第2の白色LED16が基板12上の第2の領域16に実装されている。すなわち、第1の発光素子14aが基板12上の第1の領域24に実装され、第2の発光素子16aが基板12上の第2の領域16に実装されている。そして、第1の領域24における第1の発光素子14aの実装密度が、第2の領域26における第2の発光素子16aの実装密度よりも高くなっている。
【0047】
このように、第1の領域24では、第2の領域26に比べ発光素子の実装密度が高いため、発光素子の発熱による熱がこもりやすい。したがって、結果的に、任意の注入電流量(入力電力)において、第1の領域の温度上昇率が、第2の領域の温度上昇率に対して高くなる。
【0048】
このように、本実施の形態によれば、温度上昇率が高い領域に、高温で発光効率の低下が小さい蛍光体を用いた白色LEDを配置し、温度上昇率が低い領域に、比較的低温での発光効率が高いが、高温での発光効率の低下が大きい蛍光体を用いた白色LEDを配置する。したがって、2種の白色LEDを用いた発光装置において、低温、高温での発光効率を一層向上させる発光装置を提供することが可能となる。
【0049】
(第4の実施の形態)
本実施の形態の発光装置は、第1の領域の基板の熱抵抗が、第2の領域の基板の熱抵抗よりも大きいこと以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、重複する内容については記載を省略する。
【0050】
図7は、本実施の形態の発光装置の模式上面図である。図8は、図1のB−B模式断面図である。
【0051】
本実施の形態の発光装置は、基板12の第2の領域24の下側にあたる領域に、基板12の他の領域よりも熱伝導率の大きい材料12aが備えられている。このため、第1の領域14の基板の熱抵抗、すなわち、白色LED14とヒートシンク10間の熱抵抗Rthが、第2の領域24の基板の熱抵抗、すなわち、白色LED24とヒートシンク10間の熱抵抗Rthよりも大きくなっている。
【0052】
本実施の形態によれば、上記構成により、第1の領域の温度上昇率が、第2の領域の温度上昇率に対して高くなる。
【0053】
このように、本実施の形態によれば、温度上昇率が高い領域に、高温で発光効率の低下が小さい蛍光体を用いた白色LEDを配置し、温度上昇率が低い領域に、比較的低温での発光効率が高いが、高温での発光効率の低下が大きい蛍光体を用いた白色LEDを配置する。したがって、2種の白色LEDを用いた発光装置において、低温、高温での発光効率を一層向上させる発光装置を提供することが可能となる。
【0054】
なお、ここでは、第1の領域の基板の熱抵抗Rthを、第2の領域の基板の熱抵抗Rthより高くするために、異種の基板の材料を適用する場合を例にした。もっとも、例えば、基板12とヒートシンク10間の距離を第2の領域で短くするなどして、材料を変えずに熱抵抗Rthを、熱抵抗Rthよりも大きくする構成であってもかまわない。
【0055】
さらに、第1の蛍光体にサイアロン蛍光体を適用し、第2の蛍光体にシリケート系蛍光体を適用する場合に、第1の領域の熱抵抗Rthが、Rth>8(℃/W)を充足し、第2の領域の熱抵抗Rthが、Rth≦8(℃/W)を充足することが望ましい。
【0056】
図4に示すように、注入電流が1100mA(電力にすると13W)近傍で、サイアロン系蛍光体を用いた場合の発光効率が、シリケート系蛍光体を用いた場合の発光効率を上回る。したがって、第2の領域の熱抵抗Rthが、Rth≦8(℃/W)を充足することで、最大使用電力が13Wの場合の発光装置で、第2の領域の温度が100℃以上となることを抑制でき、高い発光効率を実現することが可能となる。
【0057】
なお、実施の形態で用いた上記一般式(1)で表されるサイアロン系緑色蛍光体の結晶構造は、斜方晶であり、CuKα特性X線(波長1.54056Å)を用いたX線回折において、図9、10に示すように、30.5−30.9°、25.6−30.0°、31.8−32.2°、37.2−37.6°、37.0−37.4°、29.3−29.7°、34.0−34.4°、21.7―22.1°、48.9―49.3°、45.7−46.1°、62.8−63.2°、15.2−15.6°、61.3−61.7°、40.5−40.9°、55.8°−56.2°の回折角度(2θ)、15箇所のうち、少なくとも6箇所に同時に回折ピークを示す一成分を含有するものである。図9、図10の評価に用いた組成は表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
さらに、実施の形態で用いた上記一般式(2)で表されるサイアロン系赤色蛍光体の結晶構造は、斜方晶であり、CuKα特性X線(波長1.54056Å)を用いたX線回折において、図11、12に示すように、31.6−31.8°、30.9−31.1°、24.85−25.05°、35.25−35.45°、15.0−15.25°、56.4−56.65°、36.1−36.25°、33.0―33.20°、23.1―23.20°、29.3−29.6°、26.95−26.15°の回折角度(2θ)、11箇所のうち、少なくとも9箇所に同時に回折ピークを示す一成分を含有するものである。図11、図12の評価に用いた組成は表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。上記、実施の形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、各実施の形態の構成要素を適宜組み合わせてもかまわない。
【0062】
例えば、発光装置に使用する励起光を発生する発光素子は、紫外領域または青色の発光をする半導体発光素子であれば足りる。窒化ガリウム系化合物半導体を用いたLED等を用いることが可能である。
【0063】
また、蛍光体は、発光素子として青色LEDが用いられた場合は、赤色蛍光体と緑色蛍光体との組み合わせに限られず、黄色発光蛍光体、黄色蛍光体と赤色蛍光体との組み合わせ、赤色蛍光体と黄色蛍光体と緑色蛍光体との組み合わせ、橙色蛍光体と緑色蛍光体との組み合わせ、赤色蛍光体と青緑色蛍光体との組み合わせ、橙色蛍光体と青緑色蛍光体との組み合わせも考えられる。さらに、発光素子として近紫外LEDが用いられた場合は、赤色蛍光体と緑色蛍光体と青色蛍光体との組み合わせ、赤色蛍光体と黄色蛍光体と緑色蛍光体と青色蛍光体との組み合わせなどが考えられる。
【0064】
2種類以上の蛍光体を用いる場合には、一層の蛍光体層に混合して用いてもかまわないが、蛍光体間の再吸収を防ぐため、より長波長発光する蛍光体を内側に、短波長発光する蛍光体を外側に塗布した多層構造塗布が好ましい。加えて、長波長発光蛍光体と短波長発光の蛍光体の間に透明樹脂層を挟む構造の多層塗布とすることがより好ましい。
【0065】
また、実施の形態においては、第1の蛍光体にサイアロン系蛍光体を適用する場合を例に説明した。温度消光を抑制する観点からはサイアロン系蛍光体、特に上記一般式(1)(2)で表される蛍光体を適用することが望ましいが、その他の蛍光体を適用するものであっても構わない。また、実施の形態においては、第2の蛍光体にシリケート系蛍光体を適用する場合を例に説明した。低温で高発光効率を実現する観点からはシリケート系蛍光体、特に上記一般式(3)で表わされる蛍光体を適用することが望ましいが、その他の蛍光体を適用するものであっても構わない。
【0066】
また、2種の白色LEDを例に説明したが、必ずしも白色LEDに限られるものではない。また、3種以上の白色LEDを用いる構成であってもかまわない。
【0067】
そして、実施の形態の説明においては、発光装置等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる発光装置に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0068】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての発光装置は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。
【符号の説明】
【0069】
10 ヒートシンク
12 基板
14 第1の白色LED
14a 第1の発光素子
14b 第1の蛍光体層
16 第2の白色LED
16a 第2の発光素子
16b 第2の蛍光体層
20 ワイヤ
24 第1の領域
26 第2の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に実装され、波長250nm乃至500nmの光を発する複数の第1の発光素子と、
前記基板上に実装され、波長250nm乃至500nmの光を発する複数の第2の発光素子と、
前記第1の発光素子上に形成され、第1の蛍光体を含有する第1の蛍光体層と、
前記第2の発光素子上に形成され、50℃での発光効率が前記第1の蛍光体より高く、150℃での発光効率が前記第1の蛍光体より低い第2の蛍光体を含有する第2の蛍光体層と、
を有することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記第1の発光素子が前記基板上の第1の領域に実装され、
前記第2の発光素子が前記基板上の第2の領域に実装され、
前記第1の領域の温度上昇率が、前記第2の領域の温度上昇率に対して高いことを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1の領域における前記第1の発光素子の実装密度が、前記第2の領域における前記第2の発光素子の実装密度よりも高いことを特徴とする請求項1または請求項2記載の発光装置。
【請求項4】
前記第1の領域が、前記第2の領域に囲まれていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1の領域の前記基板の熱抵抗が、前記第2の領域の基板の熱抵抗よりも大きいことを特徴とする請求項1または請求項2記載の発光装置。
【請求項6】
前記第1の蛍光体は、下記一般式(1)または下記一般式(2)で表わされる組成を有し、前記第2の蛍光体は下記一般式(3)で表わされる組成を有することを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれか一項記載の発光装置。
(M1−x1Eux13−y1Si13−z1Al3+z12+u21−w (1)
(上記一般式(1)中、MはIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x1、y1、z1、u、wは、次の関係を満たす。
0<x1<1、
−0.1<y1<0.3、
−3<z1≦1、
−3<u−w≦1.5)
(M’1−x2Eux2a1Sib1AlOc1d1 (2)
(上記一般式(2)中、M’はIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x2、a1、b1、c1、d1は、次の関係を満たす。
0<x2<1、
0.55<a1<0.95
2.0<b1<3.9、
0.<c1<0.6、
4<d1<5.7)
(Ba1−y2−z2−x3Cay2Srz2Eux3a23Sib2c2 (3)
(上記一般式(3)中、x3、y2、z2、a2、b2、c2は、次の関係を満たす。
0<x3≦1、
0≦y2≦1、
0≦z2≦1、
1.5<a2<2.5
0.5<b2<1.5、
3.5<c2<4.5)
【請求項7】
前記第2の蛍光体層の温度が使用状態で100℃未満であることを特徴とする請求項6記載の発光装置。
【請求項8】
前記第1の発光素子と前記第1の蛍光体層により白色光が出射され、かつ、前記第2の発光素子と前記第2の蛍光体層により白色光が出射されることを特徴とする請求項1ないし請求項7いずれか一項記載の発光装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−80083(P2012−80083A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177806(P2011−177806)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】