説明

発光顔料/アルミニウム基複合材料及びその製造方法

【課題】発光機能を有する発光顔料/アルミニウム基複合材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】蓄光顔料又は蛍光顔料粒子がアルミニウム中に分散されてなる発光顔料/アルミニウム基複合材料、及び、発光顔料の粉体を加圧成形してプリフォームを形成し、前記プリフォームにアルミニウム溶湯を加圧浸透させることを特徴とする、発光顔料/アルミニウム基複合材料の製造方法。発光顔料の質量比率は27〜63%であることが好ましく、発光顔料の粒子径は1〜20μmであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光機能を有する発光顔料/アルミニウム基複合材料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平4−351258
【特許文献2】特開平8−176703
【0003】
複合材料は異なる二つ以上の相を混在させることにより、単一相にはない特性を持たせることができる。特許文献1には、密閉された鋳型内に鋳型容積の5〜10%に相当する体積を持つ粉末粒子を挿入しておき、この鋳型内にマトリックス金属の溶湯を噴射して、マトリックス金属内に粉末粒子を分散させた後、高圧付加状態のまま鋳型底部より一方向凝固させる、低体積率粒子分散型複合材料の製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、TiO2粒子で造粒粉を作り、該造粒粉で作成したプリフォームにAl合金を加圧含浸させ、Al合金の領域が全体で体積率20〜95%、残部は中実又は中空の球状又は不規則形状のチタニア粒子とAl合金との複合領域からなり、かつ複合材料全体としてTiO2粒子の体積率が30%以下となるように処理する、TiO2を強化材とするAl基複合材料の製造方法が開示されている。
【0005】
アルミニウムは銀白色の色調及び金属光沢を有すると共に成形加工性に優れた材料であり、アルミニウム材料に視覚的な機能性を付与する目的では種々の表面処理方法が提案されている。アルミニウム独自の色調や金属光沢を活かす方法としては鏡面光沢仕上げ等があり、発色性を付与する方法としては陽極酸化皮膜による自然発色や電解着色、メッキ処理、塗装処理等が挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2に開示された粒子分散型複合材料の製造方法においては、分散される粉末粒子(強化材)としてアルミナ粉末、ウィスカ、又はTiO2粒子の例が開示されているのみで、発光性の顔料を分散させて複合させた例は開示されていない。
【0007】
また、アルミニウム材料の表面に発光機能を付与する表面処理方法は一般的ではない。アルミニウム材料の表面に発光機能を付与するためには、例えば、蛍光塗料による塗装が考えられる。しかし、耐摩耗性、耐候性、耐熱性等の点で満足できない、優れた加工性が損なわれてしまうなどの理由から用途が限られてしまう。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、優れた成形加工性を維持しつつ発光機能を有する発光顔料/アルミニウム基複合材料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の発光顔料/アルミニウム基複合材料は、発光顔料粒子がアルミニウム中に分散されてなる。また、本発明の発光顔料/アルミニウム基複合材料の製造方法は、発光顔料粒子を加圧成形してプリフォームを形成し、前記プリフォームにアルミニウム溶湯を加圧浸透させることを特徴とする。本発明の発光顔料/アルミニウム基複合材料は、同製造方法により製造することができる。
【0010】
本発明においては、発光顔料として蓄光顔料及び/又は蛍光顔料を用いることができ、また、複数種類の蓄光顔料及び/又は蛍光顔料を適宜混合して用いることにより、発光色を黄色、青色、桃色、緑色等、自在に選択することができる。ここで、蛍光顔料は蛍光を発する顔料であり、蓄光顔料は太陽光や蛍光灯等が発する光を吸収して自ら発光する顔料のことである。
【0011】
本発明の発光顔料/アルミニウム基複合材料において、発光顔料の質量比率は27〜63%であることが好ましく、発光顔料の粒子径は1〜20μmであることが好ましい。
【0012】
また、本発明の発光顔料/アルミニウム基複合材料は、紫外線照射下(ブラックライト15W×2灯点灯下30cm)における表面の輝度が0.7cd/m2以上であることが好ましく、同条件下における表面の輝度が1〜25cd/m2であることがより好ましい。本発明の発光顔料/アルミニウム基複合材料は、前記発光顔料がユウロピウム、テルビウム、イットリウム、ジルコニウム、ジスプロシウム及びバリウムからなる群から選ばれる1種類又は2種類以上の元素で賦活されたアルミン酸スロトンチウムを含むことが好ましい。
【0013】
本発明の発光顔料/アルミニウム基複合材料の製造方法において、発光顔料粒子をプリフォーム成形する際には、0.02〜0.1MPaの加圧力で加圧することが好ましく、前記発光顔料の体積比率が20〜46%のプリフォームを形成することが好ましく、20〜40%のプリフォームを形成することがより好ましい。原料として用いる発光顔料粒子の粒子径は1〜20μmであることが好ましい。発光顔料粒子の平均粒子径や加圧力を調整することにより、発光顔料が発光機能を維持するに好適なように、発光顔料の体積比率を比較的高く調節して、圧粉体からなる所望のバルク形状のプリフォーム形成することが可能となる。発光顔料粒子の平均粒子径は、小さ過ぎると凝集してダマになり易く、大き過ぎるとプリフォームの発光顔料比率が低くなる。また、発光顔料粒子は不定形のものよりも、比較的、球形のものが好ましい。ただし、複数種類の蓄光顔料及び/又は蛍光顔料を適宜混合して用いる場合にあっては、比較的球形のものと、形状がいびつなものとを混合した顔料が好ましい。
【0014】
これは発光顔料粒子の形状が均一な球状で粒度分が整っているのであれば、加圧浸透による溶融アルミニウムとの複合が問題なく行える。しかし、そのような形状の発光顔料の入手は困難である。一般には、発光顔料の形状は不均一で粒度分も整っていない、あるいは複数種の発光顔料を混合する必要がある。これらの場合には、溶融アルミニウムは発光顔料粒子と均一に複合することが困難となる。その改善には加圧浸透するプレス圧力あるいは溶融アルミニウムと金型温度を上げればよいが、溶融アルミニウムと発光顔料粒子とが反応する危険性がある。これを回避する目的で、圧力と溶融アルミの温度を低くし、かつ粒子間間隔を不均一、つまり粒度分布と粒子形状を不均一にすることで溶融アルミの浸透を容易にできる効果がある。
【0015】
プリフォームにアルミニウム溶湯を加圧浸透させる際には、予め加熱した金型にそのプリフォームを挿入することが好ましい。例えば、金型を予備加熱炉にて823〜1023Kに加熱する。この場合、金型加熱時間は、90〜180秒で充分である。
【0016】
加圧浸透させる際のアルミニウム溶湯の温度はその変質を防ぐため1123K以下が好ましく、1093K以下がより好ましい。低圧力でアルミニウム溶湯を浸透させるため、923K以上が好ましい。プリフォームに温度923〜1123Kのアルミニウム溶湯を加圧浸透させるには5〜10MPaの加圧力で足りる。また、アルミニウム溶湯を加圧浸透させると同時に、急冷することが好ましい。急冷することにより、アルミニウム溶湯が発光顔料と反応して変質し発光特性が低下することを更に防止することができる。加圧浸透の時間は5分以内が好ましい。
【0017】
本発明の発光顔料/アルミニウム基複合材料は、研磨処理等により表面のアルミニウム層が除去されていることが好ましく、特に、表面が電解研磨されていることが好ましい。電解研磨された表面を有する本発明の発光顔料/アルミニウム基複合材料は、アルミニウム本来の高い光沢が得られると共に、発光顔料を複合材料の表面に露出させ、浮き上がらせることができ、発光特性が向上する。電解研磨としては、発光顔料/アルミニウム基複合材料を陽極として、リン酸−ブチルアルコール溶液、過塩素酸−エチルアルコール溶液、又はリン酸水溶液中等でアノード電解する処理方法がある。
【0018】
また、本発明の発光顔料/アルミニウム基複合材料は、研磨処理された後、通常の脱脂、エッチング及びスマット除去による前処理を経て、表面が陽極酸化処理されることが更に好ましい。脱脂と陽極酸化処理の段階で表面のアルミ母相が溶解し発光顔料粒子が露出すると考えられ、陽極酸化処理された表面を有する発光顔料/アルミニウム基複合材料は、発光性及び蓄光性により優れた特性を示す。陽極酸化処理としては、発光顔料/アルミニウム基複合材料を硫酸、リン酸等の鉱酸又はシュウ酸、酒石酸等の有機酸の1種類以上を含む水溶液中で電解処理する方法がある。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、大量のバインダー添加や造粉粒作成の工程なしに個々の発光顔料粒子から直接プリフォームを成形し、アルミニウム母相に発光顔料粒子を略均一に分散させ比較的高体積率の発光顔料を複合させて、発光機能を有する発光顔料/アルミニウム基複合材料を提供することができる。発光顔料として、蓄光顔料を用いることにより、暗闇で光るアルミニウム材を提供することができる。
【0020】
本発明の発光顔料/アルミニウム基複合材料は、加工製品にしても良好な発光機能が得られて成形加工性に優れ、耐磨耗性、耐蝕性にも優れる。また、蓄光顔料及び/又は蛍光顔料を含有する発光性樹脂材料に比べて、耐熱性、耐候性に優れる。更に、発光機能を表面処理で付加した材料と異なり、表面を破損しても下地に発光顔料粒子があることから、長期間にわたって発光機能を保持できる。そして、本発明の発光顔料/アルミニウム基複合材料は、建築部材、車輌、家電部材、道路標識、屋内標識、高意匠性のパチンコ部品、各種ランプ類のケースやカバー、玩具、文具、レジャー用品等の装飾用素材等として、アルミニウムのカラーバリエーションを豊富にして、多くの分野に様々な用途での利用が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に用いる蓄光顔料及び/又は蛍光顔料は、特に制限されるものではないが、希土類元素を賦活させた構造が好ましく、本発明における蓄光顔料及び/又は蛍光顔料の主成分としては、硫化亜鉛、硫化カルシウム、硫化ゲルマニウム、硫化ストロンチウム、硫化イットリウム等の硫化物、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、アルミナ、酸化セリウム等の金属酸化物、アルミン酸カルシウム、アルミン酸ストロンチウム、アルミン酸バリウム等のアルミン酸塩等を挙げることができ、特に、アルミニウム母相との分散性、耐光性が優れる点でアルミン酸塩を含むことが好ましい。
【0022】
さらに、本発明における蓄光顔料の賦活剤としては、ユウロピウム、テルビウム、ジスプロシウムが好ましく、賦活助剤としてランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジウム、サマリウム、ガドリニウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、マンガン、スズ、ビスマス等の金属元素を添加してもよい。希土類元素の含有量が蓄光顔料の全体量に対して0.0001〜30質量%程度含有するものが適当であり、好ましくは0.1〜10質量%程度、より好ましくは0.5〜5質量%程度のものを挙げることができる。
【0023】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0024】
発光顔料として、市販の蓄光顔料 (グリーン、株式会社ネクスト・アイ製、超残光性蓄光材料、品名:L-11、フィラーなし)を、図1に示すように、内径が30mmの筒状のプレフォーム作成用容器2に充填し、シリンダ3に分銅を載せて挿入することにより、0.05MPaの加圧力で室温にて押し固めて、直径が30mmで高さが47mmの円柱形状のプリフォームを作製した。このプリフォームのみかけ体積に対する蓄光顔料の体積比率は25%であった。ここで用いた蓄光顔料粒子1のSEM像を図2に示す。蓄光顔料(グリーン)は、形状がいびつでAlを多く含む粒子(含有する主な元素は、Al、Sr、O、平均粒子径は12μm)との混合物からなる。蓄光顔料(グリーン)のEDS分析結果を図3に示す。
【0025】
なお、この蓄光顔料(グリーン)について、その蓄光顔料粒子自体の発光を、紫外線照射下(東芝ライテック株式会社製ネオボール(登録商標)5ブラックライト、100V、15W×2灯点灯下30cm、薄黄緑色ブラインドで遮光した室内で10分間点灯)、米国PHOTO RESEARCH社、マルチ分光測色計(型式PR-650、測定波長領域380〜780nm)にて測定したところ、発光強度は33.5cd/m2、XYZ表色系色度座標はx=0.15、y=0.31であった。
【0026】
図4に示すように、予め金型16を923Kに加熱した。ここで金型16は、キャビティとして筒状の複合部16aと筒状の注入部16bとを有する。複合部16aの内径は33mmで、注入部16bの内径は50mmである。
【0027】
プリフォーム11を、予め加熱した金型16の複合部16aの中に入れ、プリフォーム11の上に黒鉛内蓋13を置き、更に注入部16bの最下部に絞り14を挿入した。さらに金型16を2分間873Kに加熱した。絞り14の中心部付近に、内径10〜15mmの大きさの孔を設けることが好ましい。ここで用いた黒鉛内蓋13は外径が約29mmであり、絞り14の外径は注入部16bの内径と略同じである。次にあらかじめ大気中で1073Kに溶解した99.99質量%純度のアルミニウム溶湯12をこの金型16の注入部16b中に注いだ。この時、アルミニウム溶湯12は金型16の上部注入部16に止まっている。
【0028】
図4に示すように、金型16を電気炉18に設置した。アルミニウム溶湯12の上部より、直径50mm、高さ40mmの黒鉛外蓋15にて加圧することによりプリフォーム11中にアルミニウム溶湯12を加圧浸透させた。黒鉛内蓋13及び絞り14によってアルミニウム溶湯12がプレフォーム11の外側面と金型16の複合部16b内壁面との間を伝って進入し、プレフォーム11の周りから内側に均一に浸透するように規制されている。また、金型16を下側から水冷できるように銅製のシールジャケット17が設けられており、これにより加圧浸透と同時に冷却水にて下部より間接強制冷却した。直径が25mmで高さが45mmの円柱形状の発光顔料/アルミニウム基複合材料からなるビレットを得た(蓄光顔料の質量比率は34%)。
【0029】
得られた発光顔料/アルミニウム基複合材料の縦切断面をバフ研磨及び1500番エメリー紙で機械研磨した。機械研磨されたこの断面のSEM像を図5に示す。発光顔料粒子がアルミニウム中で分散している様子が分かる。
【0030】
機械研磨されたこの断面について、紫外線照射下(東芝ライテック株式会社製ネオボール(登録商標)5ブラックライト、100V、15W×2灯点灯下30cm、薄黄緑色ブラインドで遮光した室内で10分間点灯)の発光を、米国PHOTO RESEARCH社、マルチ分光測色計(型式PR-650、測定波長領域380〜780nm)にて測定したところ、発光強度は2.65cd/m2、XYZ表色系色度座標はx=0.16、y=0.18であった。
【0031】
発光顔料/アルミニウム基複合材料の発光強度は蓄光顔料粒子だけの場合の前記発光強度よりも低い。これは蓄光顔料粒子とアルミニウム母相とが反応したためではなく、発光顔料/アルミニウム基複合材料の表面に露出する蓄光顔料粒子の面積が少ないためと考えられる。
【0032】
紫外線照射下、肉眼では緑乃至青色の発光が視認できた。また、ブラックライトを消灯した後も、この発光は10分間以上暗闇で視認可能であった。
【実施例2】
【0033】
発光顔料として、市販の蛍光顔料(ブルー、株式会社ネクスト・アイ製、フィラーなし)を用いた他は、実施例1と同様にして、発光顔料/アルミニウム基複合材料を得た(プリフォームの体積比率は29〜30%、蛍光顔料の質量比率は37〜38%)。ここで、蛍光顔料(ブルー)は、比較的球形でSrを多く含む粒子(含有する主な元素は、Sr、Cl、平均粒子径は4μm)と、形状がいびつでAlを多く含む粒子(含有する主な元素は、Al、Sr、Ba、Eu、平均粒子径は5μm)との混合物からなる。
【0034】
得られた発光顔料/アルミニウム基複合材料の縦切断面を、実施例1と同様に機械研磨し、紫外線照射したところ、肉眼で青色の発光が視認できた。
【実施例3】
【0035】
発光顔料として、市販の蛍光顔料(ピンク、株式会社ネクスト・アイ製、フィラーなし)を用いた他は、実施例1と同様にして、発光顔料/アルミニウム基複合材料を得た(プリフォームの体積比率は41〜46%、蛍光顔料の質量比率は50〜52%)。ここで、蛍光顔料(ピンク)は、比較的球形に近くYを多く含む粒子(含有する主な元素は、Y、S、Ge、Eu、Dy、平均粒子径は4μm)と、形状がいびつでSrを多く含む粒子(含有する主な元素は、Sr、Zr、Eu、平均粒子径は7μm)との混合物からなる。
【0036】
得られた発光顔料/アルミニウム基複合材料の縦切断面を、実施例1と同様に機械研磨し、紫外線照射したところ、肉眼で桃色の発光が視認できた。これをマルチ分光測色計にて測定したところ、発光強度は1.4cd/m2、XYZ表色系色度座標はx=0.28、y=0.099であった。
【実施例4】
【0037】
発光顔料として、市販の蛍光顔料(イエロー、株式会社ネクスト・アイ製蛍光材料、フィラーなし)を用いた他は、実施例1と同様にして、発光顔料/アルミニウム基複合材料を得た(プリフォームの体積比率は20%、蛍光顔料の質量比率は27%)。ここで、蛍光顔料(イエロー)は、比較的球形でYを多く含む粒子(含有する主な元素は、S、Y、Eu、Dy、平均粒子径は4μm)と、形状がいびつなAlを多く含む粒子(含有する主な元素は、Al,S、Y、Ba、Eu、Ce、平均粒子径は5μm)との混合物からなる。
【0038】
得られた発光顔料/アルミニウム基複合材料の縦切断面を、実施例1と同様に機械研磨し、紫外線照射したところ、肉眼で黄色の発光が視認できた。これをマルチ分光測色計にて測定したところ、発光強度は3.6cd/m2、XYZ表色系色度座標はx=0.38、y=0.42であった。
【0039】
実施例1、3及び4で得られた発光顔料/アルミニウム基複合材料の縦切断面(機械研磨済み)を、紫外線照射下(上)及び昼白色蛍光灯下(下)で観察した写真を図6に示す。蛍光灯の下ではアルミ独特の金属光沢を示し発光は視認されないが、紫外線下ではそれぞれの色としての蛍光を発していることが視認できた。
【実施例5】
【0040】
実施例1乃至4で得られた発光顔料/アルミニウム基複合材料の縦切断面(機械研磨済み)を、エチルアルコール:過塩素酸=9:1の電解研磨液を用いて、電圧20V、液温-10℃にて電解研磨し、アルミニウム母相を極力除去して発光顔料粒子が複合材料の表面にできるだけ露出した状態にて発光度合いを確認した。このうち、実施例1で得られた発光顔料/アルミニウム基複合材料の機械研磨面(左)及び電解研磨面(右)の観察写真を図7に示す。それぞれ、昼白色蛍光灯下紫外線照射なし(上)、昼白色蛍光灯下紫外線照射あり(中)及び紫外線5分間照射して消灯した直後(下)を示したものである。機械研磨後及び電解研磨後を比較すると、いずれの場合も電解研磨後のものがより良い発光を示した。
【0041】
また、同じ電解研磨後の発光顔料/アルミニウム基複合材料について、昼白色蛍光灯(27W)の点灯下30cmでの発光、及び、この昼白色蛍光灯(27W)の点灯下30cmに5分間照射し消灯して5分間経過後の発光を観察したところ、消灯して5分後も点灯時と同様の発光が視認でき、蓄光効果が確認された。
【0042】
また、実施例1で得られた発光顔料/アルミニウム基複合材料の機械研磨面及び電解研磨面について、紫外線を10分間照射し、消灯して5分間経過後の発光強度をマルチ分光測色計にて測定したところ、機械研磨面は測定不能(測定可能輝度(0.15cd/m2)未満)であったが、電解研磨面の発光強度は0.25cd/m2、XYZ表色系色度座標はX=0.23、y=0.35であり、電解研磨面の蓄光効果が確認された。機械研磨試料でも肉眼ではぼんやりとした発光が確認できたが、機械研磨では、アルミ母相に発光粒子が埋まっている割合が多いため、発光輝度そのものが低くなったものと考えられる。
【実施例6】
【0043】
実施例1乃至4で得られた発光顔料/アルミニウム基複合材料の電解研磨面について、紫外線照射下(東芝ライテック株式会社製ネオボール(登録商標)5ブラックライト、100V、15W×2灯点灯下30cm、薄黄緑色ブラインドで遮光した室内で10分間点灯)で観察したところ、蓄光顔料粒子又は蛍光顔料粒子そのものを同条件下で観察したときと同様の明瞭な発光が視認できた。
【実施例7】
【0044】
実施例1で得られた発光顔料/アルミニウム基複合材料について、機械研磨をし、次に通常の脱脂、エッチング及びスマット除去による前処理を行った後、180g/l硫酸水溶液中で浴温20℃、電流密度120A/m2の条件で30分間陽極酸化処理を行い、酸化皮膜厚さ11μmの陽極酸化面を得た。
【0045】
この陽極酸化面と蓄光顔料粒子自体の発光性及び蓄光性について、実施例1と同様に、紫外線を10分間点灯して、その発光強度をマルチ分光測色計にて測定したところ、陽極酸化面の紫外線照射時の発光強度は21.5cd/m2、XYZ表色系色度座標はX=0.14、y=0.31であった。陽極酸化処理をしても、蓄光顔料粒子が処理溶液との反応あるいは溶解により変質せず、蓄光顔料粒子が十分に複合材料に残っていること、さらに陽極酸化皮膜が発光を妨げないため十分な発光効果が得られたことと考えられる。
【0046】
さらに、実施例5と同様に紫外線を10分間照射し、消灯して5分間経過後の発光強度をマルチ分光測色計にて測定したところ、陽極酸化面の発光強度は0.32cd/m2、XYZ表色系色度座標はX=0.21、y=0.35であり、陽極酸化面の蓄光効果が確認された。
【0047】
また、蓄光顔料粒子自体の紫外線を10分間照射し、消灯して5分間経過後の発光強度を測定したところ、発光強度は0.36cd/m2、XYZ表色系色度座標はX=0.27、y=0.36あった。発光顔料/アルミニウム基複合材料の陽極酸化面は、蓄光顔料粒子自体と同等の蓄光特性があることがわかる。
【0048】
表1に実施例1で得られた発光顔料/アルミニウム基複合材料の機械研磨面、電解研磨面、陽極酸化面及び蓄光顔料粒子自体の紫外線10分間照射の後、消灯して5分間経過後の発光強度及びXYZ表色系色度を示す。陽極酸化面及び電解研磨面の紫外線消灯後の発光状態を図8に示す。
【0049】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、プリフォーム形成に用いた容器1及びシリンダ2を示す概略図である。
【図2】図2は、実施例1で用いた蓄光顔料粒子のSEM像である。
【図3】図3は、実施例1で用いた蓄光顔料粒子のSEM像とEDS分析結果である。
【図4】図4は、実施例において使用した製造装置の概略断面図である。
【図5】図5は、発光顔料/アルミニウム基複合材料の縦切断面のSEM像である。
【図6】図6は、紫外線照射下(上)及び昼白色蛍光灯下(下)での観察写真である。
【図7】図7は、昼白色蛍光灯下紫外線照射なし(上)、昼白色蛍光灯下紫外線照射あり(中)及び紫外線5分間照射して消灯後暗闇(下)での、機械研磨後(左)及び電解研磨後(右)の観察写真である。
【図8】図8は、発光顔料/アルミニウム基複合材料の陽極酸化面及び電解研磨面の消灯後の発光状態を示す観察写真である。
【0051】
1:発光顔料粒子、2:プレフォーム作成用容器、3:シリンダ、11:プレフォーム、12:アルミニウム溶湯、13:黒鉛内蓋、14:絞り、15:黒鉛外蓋、16:金型、16a:複合部、16b:注入部、17:ウォータージャケット、18:電気炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光顔料粒子がアルミニウム中に分散されてなる発光顔料/アルミニウム基複合材料。
【請求項2】
前記発光顔料が、蓄光顔料及び/又は蛍光顔料であることを特徴とする、請求項1記載の発光顔料/アルミニウム基複合材料。
【請求項3】
前記発光顔料の質量比率が27〜63%であることを特徴とする、請求項1又は2記載の発光顔料/アルミニウム基複合材料。
【請求項4】
発光顔料の粒子径が1〜20μmであることを特徴とする、請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の発光顔料/アルミニウム基複合材料。
【請求項5】
紫外線照射下(ブラックライト15W×2灯点灯下30cm)における表面の輝度が0.7cd/m2以上であることを特徴とする、請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の発光顔料/アルミニウム基複合材料。
【請求項6】
前記発光顔料がユウロピウム、テルビウム、イットリウム、ジルコニウム、ジスプロシウム及びバリウムからなる群から選ばれる1種類又は2種類以上の元素で賦活されたアルミン酸スロトンチウムを含むことを特徴とする、請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の発光顔料/アルミニウム基複合材料。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか一項記載の発光顔料/アルミニウム基複合材料の表面に陽極酸化処理が施された発光顔料/アルミニウム基複合材料。
【請求項8】
発光顔料粒子を加圧成形してプリフォームを形成し、前記プリフォームにアルミニウム溶湯を加圧浸透させることを特徴とする、発光顔料/アルミニウム基複合材料の製造方法。
【請求項9】
発光顔料粒子を加圧成形して前記発光顔料の体積比率が20〜46%のプリフォームを形成することを特徴とする、請求項8記載の発光顔料/アルミニウム基複合材料の製造方法。
【請求項10】
前記発光顔料粒子を0.02〜0.1MPaの加圧力で加圧成形してプリフォームを形成することを特徴とする、請求項8又は9記載の発光顔料/アルミニウム基複合材料の製造方法。
【請求項11】
前記プリフォームに温度923〜1123Kのアルミニウム溶湯を加圧浸透させることを特徴とする、請求項8乃至10のうちいずれか一項記載の発光顔料/アルミニウム基複合材料の製造方法。
【請求項12】
前記アルミニウム溶湯を加圧浸透させると同時に、急冷することを特徴とする、請求項8乃至11のうちいずれか一項記載の発光顔料/アルミニウム基複合材料の製造方法。
【請求項13】
表面を電解研磨する工程を含むことを特徴とする、請求項8乃至12のうちいずれか一項記載の発光顔料/アルミニウム基複合材料の製造方法。
【請求項14】
表面に陽極酸化処理を施す工程を含むことを特徴とする、請求項8乃至13のうちいずれか一項記載の発光顔料/アルミニウム基複合材料の製造方法。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−225754(P2006−225754A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−113570(P2005−113570)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(000191065)新日軽株式会社 (545)
【Fターム(参考)】