説明

発毛を促進する方法

【課題】ヒトおよび哺乳動物および鳥類を含む動物対象において、副作用がなく、かつ該対象の性別および年齢に無関係に有効である発毛を促進する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の、ラクトフェリンおよびその誘導体を含む組成物を対象の皮膚の下皮中の毛包の増殖および活性化の一方に有効な量で対象の皮膚に適用することを含む、対象における発毛を促進する方法により課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に発毛(hair growth)を促進する方法、そしてより具体的には発毛を促進するためのラクトフェリンの新規使用に関する。
【背景技術】
【0002】
78−80kDa糖タンパク質(Nuijens, 1996)であるラクトフェリンは、哺乳動物の乳汁、唾液、涙液および粘膜分泌物のような体液中に主に分布し、それは活性化好中球による炎症反応の結果として放出される。生理学的に、ラクトフェリンはヒトおよび動物機能において重要な調節の役割を演じる。例えば、ある濃度のラクトフェリンは大腸菌、連鎖球菌、ナイセリアおよび他の細菌の増殖を効率的に阻害し、リンパ細胞の分化を促進し、かつマクロファージおよび顆粒球の増殖を制御し得る。胃腸管において、ラクトフェリンは鉄イオンの輸送および吸収において機能する。近年の研究報告から、ラクトフェリンは腫瘍細胞増殖および転移を阻害することが判明し、かつエンテロウイルス関連疾患、重症急性呼吸器症候群(SARS)およびC型肝炎と戦うためにさえ使用された。
【0003】
肌荒れを改善するための種々の化粧品をラクトフェリンから製造する、日本特許(特開平8−40824)において、ラクトフェリンが細菌から鉄イオンを除去することにより抗菌効果を示したことが記載されている。別の日本特許(特開平5−65214)の記載によれば、ラクトフェリンは毛髪を機械的劣化から保護するための組成物に使用され、それにより、毛髪の機械的特性、特にその引張抵抗および弾力性が大気および光線への暴露による損傷から保護された。しかしながら、これら先行文献の記載はいずれも発毛を促進するためのラクトフェリンの使用を示唆も教示もしていない。
【0004】
発毛誘発の典型的方法は、若年禿頭または白髪を防止するための細胞死の操作に焦点を当てている。発毛剤に焦点を当てた多くの研究および開発にもかかわらず、既存の発毛剤の毛髪育成作用、すなわち抜け毛防止および発毛効果などは必ずしも満足のいくものではない。多くの発毛刺激物質が増殖因子、ホルモン、植物抽出物、およびそれらの混合物から開発されたが、現在まで限られた成功しか達成されていない。
【0005】
皮膚科医により認められている現在利用可能な処置は、経口投与PROPECIA(登録商標)および外用Rogaine(登録商標)を含む(Messenger AG, Rundegren J. Minoxidil: mechanisms of action on hair growth. Br J Dermatol. 2004 Feb;150(2):186-94. Review)。PROPECIA(登録商標)はFDAが承認し、男性における頭頂部(頭のてっぺん)および前方中央頭皮領域(頭の前方中央部)の男性型脱毛を処置することが証明された、最初で唯一の薬物である。しかしながら、女性が使用したときに効果がなく、男性の性機能を損なう副作用を有し得る。Rogaine(登録商標)は、ミノキシジルとして既知であり、男性の後頭部の禿げた部位の発毛を刺激するために局所的に使用する。女性では、Rogaine(登録商標)が前頭部の発毛を増加できる。その上、頭皮に炎症または異常がある患者では、ミノキシジルの頭皮からの吸収の増大が起こり、血圧の低下、心拍数の増加、体重増加(水分貯留)を含む、副作用を誘発する。結果として、Rogaine(登録商標)は、通常、高血圧患者には注意して使用される。また、Rogaine(登録商標)のアルコール基剤は、眼を刺激し得る。
【0006】
上記の副作用がない発毛促進剤を使用する、ヒトでの発毛を促進する方法に対しては、長く待望され、なお膨らみつつある要請がある。本発明はこの要請を満たすものである。
【発明の開示】
【0007】
本発明の一つの局面は、ラクトフェリンを含む組成物を対象の皮膚の下皮中の毛包の増殖および活性化の少なくとも一方に有効な量で対象の皮膚に適用することを含む、対象における発毛を促進する方法に関する。
【0008】
さらに、本発明によって、対象の発毛を促進するためのラクトフェリンの新規な使用が提供される。
【0009】
図面の簡単な説明
前記の本発明の概要ならびに下記の詳細な記載は、添付の図面と関連させて読んだときにさらによく理解されるであろう。本発明を説明する目的で、現時点で好ましい態様を図面で示す。しかしながら、本発明は示された詳細な態様および装置に限定されるべきでないことが理解されなければならない。
【0010】
図面中:
図1Aは、2ヶ月齢ICRマウスの剃毛した背面皮膚の一部の上面図を示す巨視的写像であり、その皮膚はさらに3処置領域にマークされている;
【0011】
図1Bは、図1Aで印をつけた3処置領域の拡大図である;
【0012】
図2Aは、コントロール媒体(水)で処置した2ヶ月齢ICRマウス由来の皮膚組織の組織学スライドを示す顕微鏡写像であり、該図は100μmの目盛りを付した100倍拡大像である;
【0013】
図2Bは、ラクトフェリンで処置した、図2Aに示すのと同じ2ヶ月齢ICRマウス由来の皮膚組織の組織スライドを示す顕微鏡写像であり、図2Aと同じ倍率である;
【0014】
図3Aから3Dは、11ヶ月齢マウスの連続0日目(d0)、3日目(d3)、5日目(d5)および11日目(d11)の3処置領域での発毛の進行を示す、巨視的写像である;
【0015】
図4Aは、コントロール媒体(水)で処置した11ヶ月齢ICRマウス由来の皮膚組織の組織学スライドを示す顕微鏡写像であり、該図は100μmの目盛りを付して100倍拡大像である;そして
【0016】
図4Bは、図4Aに示すのと同じ11ヶ月齢ICRマウス由来の皮膚組織の組織スライドを示す顕微鏡写像であり、図4Aと同じ倍率である。
【0017】
図5は、4ヶ月齢雌ICRマウスの剃毛した背面皮膚の一部の上面図を示す巨視的写像、であり、印をつけた領域で3種の異なる処置に付されたものである。
【0018】
発明の詳細な記載
本発明のよりよい理解のために、本明細書で使用する用語のいくつかを詳細に説明する。
【0019】
本明細書で使用する単数形の冠詞は、その冠詞の単数形の意味での特定の使用が他から明らかでない限り、1個またはそれ以上(すなわち、少なくとも1個)のその冠詞の文法的対象を意味する。
【0020】
本明細書で使用する“毛包”は、異なる機能を有する複数層から成るストッキング様構造を有する、皮膚面より下の毛髪構造を意味する。それぞれの毛は、成長の開始から数年後の脱落までに、3つの異なる相、すなわち成長期、中間期および休止期を通過する。“成長期”は、毛包の活発な増殖相である。毛根の細胞は急速に分裂し、毛幹を増やす。“中間期”は、成長期の最後に起こる短い一過性の相を意味する。それは毛髪の活発な増殖の終末を示す。“休止期”は、毛包の休止相である。この相中、毛包は完全に静止し、棍毛(毛根が、完全に角質化細胞から成る球根状の増殖物で囲まれている場所)が完全に形成される。
【0021】
本発明は、対象の皮膚に、ラクトフェリンを含む組成物を対象の皮膚の下皮中の毛包の増殖および活性化の少なくとも一方に有効な量で対象の皮膚に適用することを含む、対象における発毛を促進する方法を提供する。本明細書で使用する“対象”は、ヒトまたは毛を有する動物、好ましくは毛包または毛包上皮細胞を有する哺乳類を含む温血動物、ならびに鳥類を意味する。
【0022】
本明細書で量が“有効”であるのは、その量が対象における発毛促進効果をもたらしたときである。当業者にとって、有効量ならびに投与の用量および頻度は、彼らの知識および本明細書の記載に基づいた慣用的実験だけの標準法に従って、容易に決定し得る。
【0023】
本明細書で使用する“ラクトフェリン”は、ウシラクトフェリン、ウサギラクトフェリン、ヒトラクトフェリン、他の動物種から抽出したラクトフェリン、合成由来のラクトフェリンならびに、優れた発毛促進特性を有する、ラクトフェリシンのような前記ラクトフェリンの誘導体を含む。本発明の好ましい態様において、組成物中のラクトフェリンはウシラクトフェリンを含み、それは市販品として、例えば、Sigma Chemical Company, St. Louis, Missouri, U.S.A.から容易に入手できる。
【0024】
ラクトフェリンで処置した皮膚上で、増加した数の毛包が活性化され、下皮の肥厚を伴い毛包が代謝的に高度に活性されて成長期に再び入り、毛髪が急速に成長することが本発明により判明した。本発明によって、ラクトフェリンが対象の性別または年齢に関係なく発毛の促進に有用であることが判明し、ラクトフェリン処置動物において、非処置の動物よりも毛が、より早く、より大きな容積および総量で成長した。
【0025】
ラクトフェリンを含む組成物は、ラクトフェリンを含む組成物を発毛の促進を望む皮膚上または皮膚中への、局所塗布、噴霧、スチーミング、または注射を含むが、これらに限定されない当分野で既知の任意の方法によって、対象の皮膚に適用できる。あるいは、発毛に問題を有する対象を、ラクトフェリンを含む組成物中に浸すかまたは漬けてもよい。本発明によれば、組成物中のラクトフェリンの量は、約50mg/mlから約500mg/ml、好ましくは約100mg/mlから約250mg/ml、およびより好ましくは、約200mg/mlである。
【0026】
ラクトフェリンを含む組成物は、ラクトフェリンと他の活性もしくは不活性成分を、使用に簡便な種々の形に混合することにより製造できる。このような他の成分は、非限定的例示として、アジュバント、媒体または賦形剤、香料、着色剤、安定化剤または任意の他の不活性成分、またはそれらの任意の組み合わせを、場合によって他の活性成分とともに含み得る。好ましい不活性成分は、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、コラーゲン、およびヒアルロナン(HA)を含むが、これらに限定されない。例えば、該組成物は軟膏、シャンプー、コンディショナー、ローション、トニック、ジェルまたはムースに製剤され得るが、これらに限定されない。本発明の組成物は、該当する分野の当業者に既知の成長因子、ホルモンおよび細胞増殖因子を含む、通常局所製剤で使用されている種々の付加的活性成分および補助的成分を、ラクトフェリンの発毛促進効果に不利に影響しない量で含んでいてよい。
【0027】
本明細書で先に定義したラクトフェリン活性成分の適当な投与量は、本明細書を観れば、過度の実験を要することなく容易に決定できる。ラクトフェリン活性成分の適当な投与量は、例えば、約1mgまたはそれ以下から約20mgまたはそれ以上のラクトフェリン、好ましくは約3mgから約15mgラクトフェリン、より好ましくは約6mgから約12mgラクトフェリンを含むが、これらに限定されない。該ラクトフェリン組成物は、発毛を促進する対象の個々の必要性に応じて、好都合であれば1日1回、好ましくは朝と夜の1日2回、もしくは1日2回より多く投与できる。
【0028】
本発明はまた動物における発毛を促進するためのラクトフェリンの新規使用を提供する。
【0029】
本発明はまた下記の具体的、非限定的実施例を参照してさらに詳述する。
【0030】
実施例1
若いマウスの発毛増加におけるラクトフェリンの効果
若いマウスの発毛におけるラクトフェリンの効果を試験するために、それぞれ2ヶ月齢である5匹の雄ICR(異系交配)マウスを剃毛し、背面皮膚の一部を露出させた。各処置マウスに関して、背面皮膚の露出領域を図1Aに図説する通りの3領域にさらに印をつけ、続いて異なる処置を投与した。図1Bにおいて、印をつけた3領域は(左から右に)、60μlのウシラクトフェリン(100mg/mlの水溶液として)、60μlのウシラクトフェリン(200mg/mlの水溶液として)および60μlのコントロール媒体(水)を各々1日2回基準で露出した皮膚領域上への塗布により局所的に処置した。印をつけた領域の発毛についての観察を最初の処置後毎日行った。図1Aおよび1Bに示すように、ラクトフェリン−処置皮膚で、コントロール媒体−処置皮膚より早い発毛が観察された。発毛は、200mg/mlのラクトフェリンを投与したマウス全5匹で、処置後2から4日に観察された。100mg/mlのラクトフェリンを投与したマウスは、処置後3から5日後に発毛が見られた。対照的に、コントロール媒体(水)単独に暴露された皮膚は、処置後15−17日のみに発毛が示された。
【0031】
ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色を行い、200mg/mlのラクトフェリンまたはコントロール媒体で14日間処置した皮膚領域を顕微鏡的に試験した。処置14日後、皮膚の組織学的分析は、図2Aおよび2Bに矢印で示すように、著しい数の成長期毛包が皮膚のコントロール媒体−処置およびラクトフェリン−処置の両方で見られた。図2Bに示すように、ラクトフェリン−処置領域中の成長期の毛包の数は、図2Aから明らかなコントロール媒体で処置した領域におけるよりも約2倍多かった。したがって、成長期の毛包の増加は、ラクトフェリン−処置領域で観察された発毛を明らかに反映した。しかしながら、ラクトフェリン−処置およびコントロール媒体−処置皮膚の皮膚厚に有意差はなかった。故に、これらのデータは、有効量のラクトフェリンの投与が、若いマウスで発毛をもたらすことを示した。
【0032】
実施例2
老齢マウスにおける発毛増加のためのラクトフェリンの使用
ラクトフェリンが老齢マウスで発毛を誘発できるか否かをさらに試験するために、各々11ヶ月齢である5匹のICRマウスを、実施例1に記載の通りに、同様に剃毛し、露出された背面皮膚の3領域を印をつけた。マウスの印をつけた領域に、露出した皮膚領域上に60μlのウシラクトフェリン水溶液(100mg/ml)、60μlのウシラクトフェリン水溶液(200mg/ml)および60μlのコントロール媒体(水)を1日2回塗布することにより局所的に適用した。印をつけた領域の発毛についての観察を最初の処置後毎日行った。図3Aから3Dに示されるように、処置11日後、顕著な発毛が、200mg/mlのラクトフェリン処置した皮膚領域で観察されたが、コントロール媒体単独では見られなかった。一般に、200mg/mlのラクトフェリンで処置したマウスは、処置後4−6日から処置領域の発毛が始まった。100mg/mlラクトフェリンを投与したマウスは、処置後6−8日の処置領域の発毛が判明した。コントロール領域における自然の発毛は、処置後21−23日後にのみ観察された。ラクトフェリンの発毛促進効果が、すべての試験したマウスで一貫して観察された。
【0033】
組織学的試験は、図4Aおよび4Bに示すように、毛包の活性化におけるラクトフェリンの効果を確認した。H&E染色法を実施例1と同様の方法で行い、14日間200mg/mlのラクトフェリンまたはコントロール媒体で処置した皮膚領域を試験した。図4Bに示すように、多数の成長期(活発に増殖する段階)毛包(矢印で示す)が、ラクトフェリン−処置領域の下皮で見られた。対照的に、コントロール領域は、図4Aに示す通り、皮膚中の均一な休止期(休止段階)毛包を示した。したがって、毛包は明らかに活性化されるかまたは誘発され、休止期から成長期に再移行する。毛包の活性化はまたラクトフェリン−処置領域で観察された発毛を反映する。加えて、増加した皮下脂肪および増加した皮膚厚が、同じマウスのコントロール領域と比較して、ラクトフェリン−処置領域で観察された。ラクトフェリン−処置マウスの皮膚で、炎症または形態学的異常は見られなかった。したがって、本結果は、有効量のラクトフェリンの投与は、老齢マウスにおける発毛を劇的に刺激することを示唆する。
【0034】
実施例3
ラクトフェリシンの調製
ラクトフェリシンは、ラクトフェリン由来の、殺菌ドメインを含む、生物活性ペプチドフラグメント(3196Da)である。ラクトフェリシンは抗微生物ペプチドであり、通常ラクトフェリンの胃ペプシン開裂により産生する。
【0035】
ラクトフェリシンは、一般に、ラクトフェリンをタンパク質切断酵素ペプシンで切断することにより製造されていたが、他の酸性プロテアーゼも使用できた。具体的に、5gのラクトフェリンを調製し、100mlの2回脱イオン水(ddHO)と混合し、市販のウシラクトフェリン溶液とした。次いで、該溶液を1Mの塩酸(HCl)で2.5のpH値となるように調整した。次に、30mgのペプシンA粉末を該溶液に溶解し、ラクトフェリンをラクトフェリシンに切断する酵素反応を37℃で少なくとも4時間進行させた。反応を、80℃の熱湯浴でさらに15分加熱して停止し、その後室温に冷却した。該溶液を1MのNaOHを使用して中和し、高速遠心分離(17000rpm、4℃)で15分沈降させた。遠心分離から分離された上清を回収し、ラクトフェリシンを得た。上記のようにして得たラクトフェリシンを他の成分と混合し、その後の方法において発毛を促進する組成物を形成してよい。
【0036】
実施例4
4ヶ月齢雌マウスの発毛を増加させるためのラクトフェリンおよびラクトフェリシンの使用
発毛をまた各々4ヶ月齢である、実施例1に記載の通りであり、一方のマウスを図5に示す通り、剃毛し、露出された背面皮膚の3領域を印をつけた2匹の雌マウスを使用して試験した。マウスの印をつけた領域に、60μlのウシラクトフェリン水溶液(200mg/ml)、60μlのコントロール媒体(水)、および60μlのウシラクトフェリシン(実施例3に記載の通りに得た)(200mg/ml)を1日2回塗布することにより局所的に適用した。印をつけた領域の発毛についての観察を最初の処置後毎日行った。図5に示すように、処置10日後、顕著な発毛が200mg/mlのラクトフェリンおよび200mg/mlのラクトフェリシンで処置した皮膚領域で観察されたが、コントロール媒体単独では見られなかった。また、200mg/mlのラクトフェリシンで処置した領域は、同量のラクトフェリンで処置した領域と比較して、多い量の発毛が見られたことは注目であった。ラクトフェリンまたはラクトフェリシンの発毛促進効果は、全試験マウスで一貫して見られた。ラクトフェリシンは上記実施例3に記載の方法で製造したが、本発明はこのような方法で製造したラクトフェリシンの使用に限定されるべきではない。他の方法で製造したラクトフェリシンもまだ本発明の範囲内に入る。
【0037】
したがって、本発明は、動物に、その性別または年齢にかかわらず有効な発毛を促進する方法を提供する。動物を有効量のラクトフェリンまたはラクトフェリシンを含む組成物で処置した後、発毛がマウスの処置皮膚領域で観察された。さらに、ラクトフェリシンおよびラクトフェリンの他の誘導体またはアナログが、疾患のためまたは普通の原因としてのいずれかの脱毛を有する動物の発毛を促進するための、本発明の方法にも使用し得ることは、本明細書を観れば、当業者には理解されよう。
【0038】
上記を要約すると、本発明は、動物の発毛を促進するためのラクトフェリンの新規使用を提供する。ラクトフェリンはFDAにより安全な組成物であることが一般的に承認されているが、試験された動物に対して低アレルギー性および非炎症性であるというさらなる利点を有する。
【0039】
態様を、発毛を促進するためのラクトフェリンの新規使用を示すための例として、マウスで記載したが、本発明はそれに限定すべきではない。本明細書を観れば、本方法は、ヒト、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、および愛玩動物のような商業的に関係する哺乳動物、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、および七面鳥のような商業的に関係する鳥類を含む、発毛のための毛包または毛包上皮細胞を有する任意の温血動物に同等に適用できることは、通常のレベルの当業者には理解されるべきである。本発明は、倫理的問題を伴わず獲得できるラクトフェリンの他の起源も使用し得るため、ウシラクトフェリンのみに限定すべきではない。
【0040】
当業者には、広い発明の概念から逸脱することなく、上記の態様を変化し得ることが明らかであろう。したがって、本発明は記載の特定の態様に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲により定義された本発明の精神および範囲内での修飾を包含することを意図することは、理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1Aは、背面皮膚の一部を剃毛し、その皮膚にさらに3処置領域に印をつけた2ヶ月齢ICRマウスの上面図を示す、巨視的写像である;図1Bは、図1Aで印をつけた3処置領域の拡大図である。
【図2】図2Aは、コントロール媒体(水)で処置した2ヶ月齢ICRマウス由来の皮膚組織の組織学スライドを示す顕微鏡写像であり、該図は100倍拡大であり、100μmの目盛りを含む;図2Bは、ラクトフェリンで処置した、図2Aに示すのと同じ2ヶ月齢ICRマウス由来の皮膚組織の組織スライドを示す顕微鏡写像であり、図2Aと同じ倍率である。
【図3】図3Aから3Dは、11ヶ月齢マウスの連続0日目(d0)、3日目(d3)、5日目(d5)および11日目(d11)の3処置領域での発毛の進行を示す、巨視的写像である;
【図4】図4Aは、コントロール媒体(水)で処置した11ヶ月齢ICRマウス由来の皮膚組織の組織学スライドを示す顕微鏡写像であり、該図は100倍拡大であり、100μmの目盛りを含む;図4Bは、図4Aに示すのと同じ11ヶ月齢ICRマウス由来の皮膚組織の組織スライドを示す顕微鏡写像であり、図4Aと同じ倍率である。
【図5】図5は、背面皮膚の一部を剃毛し、印をつけた領域で3種の異なる処置に付された4ヶ月齢雌ICRマウスの上面図を示す巨視的写像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトフェリンを含む組成物を対象の皮膚の下皮中の毛包の増殖および活性化の少なくとも一方に有効な量で対象の皮膚に適用することを含む、対象における発毛を促進する方法。
【請求項2】
ラクトフェリンを含む組成物を、ラクトフェリンを含む組成物で処置する皮膚上または皮膚中への塗布、噴霧、スチーミングまたは注射の少なくとも一つによって対象の皮膚に適用する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ラクトフェリンを含む組成物を、ラクトフェリンを含む組成物中に対象を浸すかまたは漬けることにより適用する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ラクトフェリンの組成物を、対象の皮膚上への局所的塗布によって適用する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
組成物が約50mg/mlから約500mg/mlのラクトフェリンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
組成物が少なくとも約100mg/mlから約250mg/mlのラクトフェリンを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
組成物が約200mg/mlのラクトフェリンを含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
対象が、発毛のための毛包または毛包上皮細胞を有する温血動物である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
ラクトフェリンがウシラクトフェリンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
ラクトフェリンを含む組成物が、軟膏、シャンプー、コンディショナー、ローション、トニック、ジェルおよびムースからなる群から選択される形に製剤されている、請求項1記載の方法。
【請求項11】
組成物がさらに薬学的に許容される担体を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
組成物がさらにジメチルスルホキシド、グリセロール、コラーゲン、ヒアルロナン、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される少なくとも1個の付加的成分を含む、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−31418(P2007−31418A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−377477(P2005−377477)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(506002890)アニマル・テクノロジー・インスティテュート・タイワン (1)
【氏名又は名称原語表記】Animal Technology Institute Taiwan
【Fターム(参考)】