説明

発汗促進マットおよび介護用マット

【課題】
発汗促進マットとして、仰臥した着用者に掛け敷きすることによって簡易サウナまたは暖房器具として使用でき、さらに着用者を心地よく暖めるとともに汚物などの拭き取りが容易である介護用マットを提供する。
【解決手段】
補強布を有する少なくとも3層構造の表側シート3と、フレキブルな細い発熱コード4を全面に蛇行配列させて縫着した中間シート5と、補強布9を有する少なくとも3層構造の裏側シート6とからなり、これらのシートを重ね合せて周囲を帯状に加熱融着することによって完全防水を達成し、これらのシートは熱可塑性樹脂製であって軟質・軽量で折り畳み可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仰臥した着用者に掛け敷きすることによって簡易サウナや暖房器具として使用できる発汗促進マットに関し、さらに着用者を心地よく暖めるとともに汚物などの拭き取りが容易である介護用マットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、快適な生活を送るうえで健康管理が重要視され、これとともに家庭用サウナが数多く提案されている。家庭用サウナには、一般に、特開2004−194923号のようなベッド式やルーム式のサウナが多く、その設置場所が大きく且つコストも高くなり、一般家庭で容易に購入するわけにいかない。特開2001−276168号や特開2003−245326号のようなドーム型の袋体は、敷きマットの上に設置するだけであるから比較的安価であるけれども、容積が大きくて簡単に折り畳むことができないために、狭い日本家屋では使用場所や保管場所の確保が困難になり、長期の使用継続が不可能になる事態が発生しやすい。
【0003】
一方、簡易サウナとして、ポリエチレンやポリエステル樹脂などの断熱素材で縫製されたサウナスーツが存在し、該スーツを着用して運動したり入浴することにより、スーツ内部をスチーム状態にして発汗させる機能を有する。この種のサウナスーツは、スーツ内部で発汗しても容易に拭き取ることができないので継続使用時に不快感が生じることが多い。また、この種のサウナスーツは、人の形に縫製されているため、使用後における内部の洗浄および洗濯後の乾燥に手間が掛かってしまう。これに対し、特開2003−19181号は、簡易サウナとして保温断熱性フィルムを用い、使用者は2枚の保温断熱性フィルムの間に入り込み、該フィルムの上に電気毛布などの熱源を掛けることにより、フィルム内部を加熱・保温してサウナ効果を高めている。この保温フィルムは、上下2枚の端部を接着して袋状とすると、より短時間で袋内部をスチーム状態にでき、さらに開口部を紐で絞めると袋内の温度が容易に上昇する。
【特許文献1】特開2001−276168号公報
【特許文献2】特開2003−19181号公報
【特許文献3】特開2003−245326号公報
【特許文献4】特開2004−194923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2003−19181号に開示の保温フィルムは、アルミ蒸着ポリエステルフィルム、シリカ蒸着フィルムまたは酸化アルミ蒸着フィルムなどであり、素材として保温性、断熱性、防湿性、柔軟性が良好であることを要する。この保温フィルムは、薄いシート状であるため、使用者の下側のフィルムは使用者の体重が掛かると変形したり折損しやすく、長期間の使用にとうてい耐えることができない。また、この保温フィルムは、比較的固いシートで肌触りが良くないので使用者が心地よさを感じることができず、長期間サウナを楽しみながら健康増進を図ることは達成しがたい。
【0005】
本発明は、従来の簡易サウナや保温フィルムに関する前記の問題点を改善するために提案されたものであり、簡易サウナまたは暖房器具として肌触りが良く、着用者を心地よく暖める発汗促進マットを提供することを目的としている。本発明の他の目的は、完全防水で安全性が高く、軽量で折り畳みも可能な発汗促進マットを提供することである。本発明の別の目的は、汚物などの拭き取りが容易で清潔さを保てる暖房可能な介護用マットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発汗促進マットは、補強布を有する少なくとも3層構造の表側シートと、フレキブルな細い発熱コードを裏面に蛇行配列させて縫着した中間シートと、補強布を有する少なくとも3層構造の裏側シートとからなり、これらのシートを重ね合せて周囲を帯状にすることによって完全防水を達成する。これらのシートはいずれも軟質・軽量で折り畳み可能であり、コントローラを介して発熱コードの温度を調節できる。
【0007】
本発明の発汗促進マットは、補強布を有する少なくとも3層構造の表側シートと、該表側シートの下方に配置する断熱性シートと、フレキブルな細い発熱コードを裏面に蛇行配列させて縫着した中間シートと、該中間シートの下方に配置する均熱性シートと、補強布を有する少なくとも3層構造の裏側シートとからなっていてもよく、これらのシートを重ね合せて周囲を帯状に加熱融着することによって完全防水を達成する。このマットでは、裏側シートの表面に、セラミックス、トルマリン、無機ゲルマニウムまたは雲母石などの粉末を含有する表面発熱層を形成する。
【0008】
発汗促進マットにおいて、表側シートおよび裏側シートは、金属粉末を含有する表面樹脂層と、中間に配置する補強布と、該補強布とラミネートした下側樹脂層との3層構造であり、表側シート、裏側シートおよび中間シートがいずれも発泡ウレタン樹脂からなると好ましく、高周波ウェルダによって加熱融着できる。また、発熱コードは、心糸にスパイラル状に巻き付ける発熱線と、該発熱線を被覆する温度−インピーダンス特性の感熱樹脂製の内方シースと、内方シースの周囲にスパイラル状に巻き付ける検知線と、検知線を被覆する表面シースとからなると好ましく、発熱線の一端で検知線と短絡することにより、発熱線が所定の温度に到達すると、該発熱線への通電を一定期間停止して所定の温度に制御できる。
【0009】
一方、本発明に係る介護用マットは、補強布を有する少なくとも3層構造の表側シートと、フレキブルな細い発熱コードを裏面に蛇行配列させて縫着した中間シートと、少なくとも2層構造の裏側シートとからなり、これらのシートを重ね合せて周囲を帯状にすることによって完全防水を達成する。これらのシートは、熱可塑性樹脂製であって軟質・軽量で折り畳み可能であり、コントローラを介して発熱コードの温度を調節できる。
【0010】
本発明を図面によって説明すると、図1に本発明に係る発汗促進マット1または介護用マットを例示し、該マット1は掛け用である。一方、敷き用マットの例を図9に示し、横幅の大小を除いて掛け用と敷き用はほぼ対称の層構成を有する。発汗促進マット1または介護用マットは、図1のように着用者2の全身を覆うことができる平面形状であればよく、一般に掛け布団と同様の長方形または上辺が多少凹んだ異形の平面形状であり、図10から明らかなように敷き用マット46は掛け用マット1に比べて多少横幅を狭くする。
【0011】
発汗促進マット1は、図2または図3に示すように複数枚の樹脂製のシートで構成し、基本的には、表側シート3と、細い発熱コード4を裏面に縫着した中間シート5と、裏側シート6との3枚構成である。表側シート3および裏側シート6は、ポリエステルやナイロンなどの薄い補強布9を有する少なくとも3層構造であって、通常、3から5層構造であると好ましい。シート3,6は、全体が軟質および軽量の素材であることを要し、肌触りの点で発泡性の熱可塑性樹脂またはゴム製が好ましく、特に発泡ウレタン樹脂製であると望ましい。
【0012】
所望に応じて、図2に示すように、断熱性シート7を表側シート3と中間シート5との間に、および/または均熱性シート8を中間シート5と裏側シート6との間に配置し、マット1にさらに厚みとクッション性を付与する。シート7,8は、いずれも軟質且つ軽量の発泡ウレタン樹脂製であると好ましい。熱を遮断する役目の断熱性シート7は、熱を均一に分散させる役目の均熱シートに比べて厚くなっている。シート7,8は、シート3,5,6とほぼ同様の平面形状を有するけれども、周縁を融着しなくてもよいので若干小さめでよい。
【0013】
図3に示すマット10は、断熱性シート7および均熱性シート8を有していない代わりに、表側シート3および裏側シート6が比較的厚く、シート3はシート6よりも厚い。シートを厚くする代わりに、表側シート3および裏側シート6を4層または5層以上の層構造にしてもよい。
【0014】
表側シート3は、図2に例示するように、通常、表面に適当な図柄模様11を印刷する表面樹脂層12と、中間に配置する補強布9と、該補強布とラミネートした下側樹脂層13との3層構造であると望ましい。表面樹脂層12は、例えば、ウレタン樹脂などの樹脂中にアルミニウムや銀などの金属微粉末を添加し、且つ補強布9によってシート3の引張り強度を高める。表面樹脂層12では、金属微粉末を添加する代わりに、一方が薄い保護層である2層の樹脂層の間に金属箔や金属フィルムを挟着したり、一方の樹脂表面にアルミニウムや銀などの金属を蒸着してもよい。
【0015】
一方、下側樹脂層13は、表面樹脂層12の下方に位置し、シート5,6と加熱融着して完全防水を達成するように、発泡ウレタン樹脂のようなシート5,6と同じ素材であると好ましい。下側樹脂層13には、隠蔽力の大きい白色顔料である酸化チタンを添加し、光触媒による抗菌性を付与してもよい。
【0016】
中間シート5では、図4に示すように細い発熱コード4をシート本体16の裏面に蛇行配列させ、図5のようにミシン糸14で発熱コード4を全体的にシート本体16に縫着する。発熱コード4の配列態様は、図示のように発熱コード4がシート本体16の全面に平均的に延設されればどのような蛇行形状でもよい。
【0017】
シート本体16は、発熱コード4を緩衝するために、該発熱コードが嵌り込むようなスポンジ状の発泡ウレタン樹脂製であると好ましい。シート本体16には、通常、ポリエステルなどの薄布17(図5)をラミネートすることによって引張り強度を高め、このような薄布はシート7,8でもラミネートすると好ましい。発熱コード4は、シート本体16に縫着されることにより、シート本体16に対して若干ずれることが可能になってさらに曲げやすくなる。
【0018】
発熱コード4の両端は、一般に、箱形または楕円形平面などであるコントローラ18(図1)に接続する。コントローラ18は、発熱コード4の温度と時間を検出して通電を制御する。介護用マットのように温度管理が重要な場合には、図1のように身体全体を覆った際に、使用者の脚部付近が比較的高温になるように発熱コード4を密に蛇行させ、且つ頭部付近が比較的低温になるように粗に蛇行させると好ましい。発熱コード4の敷設広さは、1100×1800mmの掛け用マット1(図1)で920×1600mm程度、850×1800の敷き用マット46(図10)で670×1600mm程度である。
【0019】
発熱コード4は、それ自体曲がりやすくフレキシブル性を有していれば、細い金属線である発熱線を樹脂シースで被覆した単純な線構成でよく、温度管理に別の線状センサーを利用することも可能である。また、この発熱コードとして、合成または天然繊維の心糸に、直径0.1mm程度の銅ニッケル合金線のような発熱線を複数本そろえてスパイラル状に巻き付けてもよく、その両端部を商用電源に接続すれば発熱する。この心線の材質は、ポリエステル樹脂、ナイロン、木綿などである。
【0020】
温度管理可能な発熱コード4を図6に示す。図6に示す発熱コード4では、合成または天然繊維の心糸20に、銅ニッケル合金線のような発熱線22を巻き付け、ついで熱可塑性樹脂製の内方シース24で被覆する。内方シース24の周面には、金属抵抗線などの検知線26を巻き付け、ついでシリコン樹脂やポリ塩化ビニル樹脂などの表面シース30で被覆する。表面シース30は、発熱コード4の最外層に位置し、検知線26を保持する機能を有する。
【0021】
発熱コード4において、内方シース24は、発熱線22の異常発熱時に溶融し、溶断によってヒューズの機能の働きをする。また、検知線26である金属抵抗線の抵抗値変化を利用して、発熱コード4の一部または全体を温度コントロールできる。
【0022】
好適な発熱コードの他の例を図7に示し、発熱コード31も温度管理可能であり、同様の部材には図6と同じ番号を用いる、発熱コード31では、心糸20に直径0.1mm程度の銅ニッケル合金線のような発熱線22を複数本そろえてスパイラル状に巻き付ける。発熱線22の巻装後に、ポリ塩化ビニル樹脂を主成分とする内方シース24で被覆する。内方シース24は、イオン性の添加剤を加えることにより、温度上昇でインピーダンスが低下する負の温度−インピーダンス特性を有する。内方シース24の周面には、矩形断面の鉄線などの検知線26をスパイラル状に巻き付け、さらにポリエステル樹脂などの短冊状の絶縁テープ28をスパイラル状に巻き付ける。絶縁テープ28を巻き付けてから表面シース30で被覆する。絶縁テープ28の材質は、ポリエステル樹脂だけでなく、ナイロン、ポリプロピレン樹脂のような熱可塑性プラスチックや紙などの絶縁材料であればよく、絶縁テープ28の厚さとラップ寸法も任意である。
【0023】
発熱コード31において、絶縁テープ28は、内方シース24と検知線26の上に少しずつ位置をずらしながら多重に巻き付ける。絶縁テープ28の多重巻き付けにより、厚みが均一な電気絶縁層を比較的容易に形成でき、該絶縁テープがスパイラル状であるため、発熱コード4は曲がりやすくフレキシブルである。また、絶縁テープ28は、内方シース24の温度−インピーダンス特性を安定させる機能を有する。絶縁テープ28が内方シース24と表面シース30との間に介在することにより、テープ24とシース30がいずれもポリ塩化ビニル樹脂製であっても、内方シース24の可塑剤が表面シース30に移行することを妨げ、可塑剤の濃度低下による内方シース24の硬化によって温度−インピーダンス特性が変化することを防止する。
【0024】
発熱コード31において、発熱線22と検知線26を短絡しておくと、発熱温度に応じて、発熱線22から内方シース24を介して、特性電流が検知線26に流れ込む。この特性電流が検知線26に流れると、検知線26の両端間に特性電圧が発生するから、この特性電圧を電子回路で検出する。電子回路が発熱温度が所定の温度に到達したことを検知すると、発熱線22への通電を停止するように構成することにより、発熱コード31を所定の発熱温度に制御できる。また、検知線2を商業用電力の通電によって発熱するように構成すれば、発熱線22へ流れ込む特性電流を検知すればよい。
【0025】
裏側シート6は、図2に示すように、通常、表面樹脂層32と、中間に配置する補強布33と、該補強布とラミネートした下側樹脂層34との3層構造であると望ましい。表面樹脂層32は、中間シート5からの熱を下方へ透過しても、表面発熱層36から発生する遠赤外線やマイナスイオンを反射できるように、ウレタン樹脂やアクリル樹脂のラテックスまたはこれと同等の軟質樹脂からなる樹脂バインダ中にアルミニウムや銀などの金属微粉末を適量添加すると好ましい。
【0026】
一方、下側樹脂層34は、表面樹脂層32より内方に位置し、シート3,5と加熱融着して完全防水を達成するように、発泡ウレタン樹脂のようなシート3,5と同じ素材であると好ましい。下側樹脂層13には、隠蔽力の大きい白色顔料である酸化チタンを添加し、光触媒による抗菌性を付与してもよい。
【0027】
表面発熱層36は、図8に示すように裏側シート6の表面において、ウレタン樹脂などの樹脂バインダ中に、セラミックス、トルマリン、無機ゲルマニウムまたは雲母石などの微粉末を含有し、スクリーン印刷法またはロールコータ法などによって形成する。裏側シート6の表面には、感触性を高めるために、例えば、表面樹脂層32上に薄い布地を貼り付けたり、植毛加工を施すことも可能である。
【0028】
表面発熱層36にセラミックス粉末を添加する場合、該セラミックス粉末が波長4〜20μmの遠赤外線を常温域で高度に放射することが必要であり、例えば、アルミナ系、ジルコニウム系、ランタン系などが使用できる。セラミックスの放射特性は、同一の素材でも粒径、粒子形状、表面状態、充填量、充填樹脂、分配構造などによって大幅に変わるため、高度な材料評価技術が不可欠である。例えば、アルミナ−シリカ系セラミックスや酸化物系セラミックスは、樹脂バインダ中に分散しても高い選択放射性を有し、非酸化物系セラミックス粉末は高い全域放射性を有する。
【0029】
この種のセラミックス粉末は、表面発熱層36を構成する樹脂が所定の機械的強度を備え、耐磨耗性と耐洗濯性を保持させるために、平均粒径が約5μm以下であると好ましい。また、平均粒径が10μm程度であっても、ロールミル(図示しない)によって樹脂と練磨・分散する際に、必然的に平均粒径を5μm程度まで粉砕する。このセラミックス粉末は、表面発熱層36において25〜35重量%添加しており、含量が25重量%未満であると量的に遠赤外線を高度に放射することができない。一方、セラミックス粉末の含量が35重量%を超えると、樹脂中の充填分が多くなりすぎ、機械的強度が低下して所定の耐磨耗性と耐洗濯性を保持しにくい。
【0030】
また、表面発熱層36に無機ゲルマニウムを添加する場合、例えば5μm以下の微粉末の形態で使用し、この微粉末を樹脂バインダと均一且つ十分に混練する。無機ゲルマニウムの微粉末は、バインダの樹脂液に対して5〜10重量%添加する。この表面発熱層の厚みは10〜40μmであればよい。この樹脂溶液は、無機ゲルマニウムの微粉末を均一に混練できれば、樹脂ラテックス、樹脂エマルジョン、樹脂懸濁液、親水性共重合体、化学反応性の水溶性樹脂などのいずれでもよい。
【0031】
セラミックス粉末や無機ゲルマニウムを含む表面発熱層36は、ポリウレタン系樹脂またはこれと同等の軟質樹脂からなると好ましく、該樹脂は例えば熱架橋性または経時架橋性である。ポリウレタン系樹脂は、一般に密度が小さいため、他の樹脂に比べて波長4〜20μmの遠赤外線の透過性が良好である。ポリウレタン系樹脂は、伸び、耐磨耗性、反発弾性および圧縮疲労強さが優れており、繊維製品における使用時に層剥離や亀裂の発生が少ない。表面発熱層36は、図示のような適宜の模様のほかに、文字や記号またはこれらを組み合わせた平面図柄であり、一般に単純な円形や角形平面の図柄を裏側シート6上に均等に形成し、転写ラベルとしてベースシートごと切り取って裏側シート6に接着してもよい。表面発熱層36の厚みが8〜40μm程度であると、所定の遠赤外線放射の効果を得る。
【0032】
発汗促進マット1は、シート3,5,6を重ね合せて周囲を帯状に加熱融着することにより、環状平面の加熱融着部38を形成して完全防水を達成する(図1、図4、図8参照)。加熱融着部38は、高周波ウェルダ、インパルス溶接法や超音波溶接法の圧子による加熱融着時の加圧によって図2のように帯状に凹んでおり、この融着に熱線溶接法または誘導加熱法などを利用してもよい。また、シート3または5を2倍の長さに定め、中央で折り返してマット三辺だけを加熱融着したり、シート3と5が離れないように適当な個所でスポット溶接を行ってもよい。好ましくは、加熱融着したマット周縁を縁布40で包み込んで縫着し、防水性を阻害しないように、この縫着の際に縫い糸が加熱融着部38の個所に掛からないようにする。
【0033】
発汗促進マット1または介護用マットは、防水シートを敷いたマットの上に寝た着用者2について、図1のようにその全身を覆うように敷き、コントローラ18でやや高温に設定して30分から1時間着用する。この結果、マット1が温度40〜50℃に発熱するとともに、裏側シート6の表面発熱層36から遠赤外線などを放射するから、着用者2の全身から発汗させて身体を芯から暖め、健康な人であれば40分程度の間に大量の発汗を促す。この汗には、普通の汗以外に、皮脂腺やエクリン腺からの排泄物が含まれ、特に重金属などの有害老廃物を体外に効率良く排泄するサウナ効果がある。
【0034】
発汗促進マット1または介護用マットは、図10に示すように敷き用マット46とともに2枚使用してもよい。着用者42が、タオルシーツなどを敷いた2枚のマット1,46の間に入り込んで両マットを発熱させると、着用者42の背中部分の発汗も促すことになり、サウナ効果がいっそう増す。この際に、両マット1,46の周辺をスライドファスナ44、ドットボタン、スナップなどで着脱可能にしたり、着用者42の首部分に空気遮蔽布などを取り付けると、両マット内で生じた熱がマット外へ逃散することが少なくなる。
【0035】
このマットは、コントローラ18で30〜40℃に発熱させると、通常の電気毛布と同様に暖房器具としても使用できる。このマットを介護用マットとして用いる際には、要介護者を2枚のマット1,46の間に寝かせ、30℃前後に発熱させて心地よくなるように暖める。マット1,46は、表面が軟質の樹脂であるので汗を拭き取りやすく、こぼした食べ物や尿などなどの拭き取りも簡単である。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る発汗促進マットは、細い発熱コードを縫着した中間シートを表側シートと裏側シートとの間に配置し、簡易サウナとして、コントローラでやや高温に設定して30分から1時間身体に掛ければよい。この発汗促進マットは、身体に掛けると軽くて肌触りが良く、着用者の全身から発汗させて身体を芯から暖め、健康な人であれば40分程度の間に大量の発汗を促す。この発汗促進マットは、コントローラで温度を30〜40℃に設定すると、通常の暖房器具として着用者を心地よく暖めることも可能である。
【0037】
本発明の発汗促進マットは、樹脂シートを重ね合せて周囲を帯状に加熱融着することで完全防水を達成し、大量に発汗しても漏電がなくて安全であり、軟質・軽量で折り畳み可能であるから保管も容易である。この発汗促進マットは、温度40〜50℃に加熱されると表面発熱層から遠赤外線などを放射し、着用者の全身から発汗するとマイナスイオンも発生しうるから、着用者の健康促進にとって有益である。
【0038】
また、本発明の介護用マットは、コントローラで30〜40℃に発熱させると、要介護者について通常の電気毛布と同様に暖房器具として使用できる。この介護用マットは、表面が軟質の樹脂であるので汗を拭き取りやすく、こぼした食べ物や尿などなどの拭き取りも簡単である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。発汗促進マット1は、図1と図2に示すように、平面寸法が1100×1800mmである表側シート3と、細い発熱コード4を裏面に縫着した中間シート5と、裏側シート6とからなる。
【0040】
表側シート3および裏側シート6は、発泡ウレタンの表面樹脂層12,32と、中間に配置する補強布9,33と、該補強布とラミネートした発泡ウレタンの下側樹脂層13,34との3層構造であり、厚さは1mm程度である。表側シート3の表面樹脂層12には、樹脂中にアルミニウム微粉末を添加し、且つ表面に適当な図柄模様11を印刷する。一方、裏側シート6の表面樹脂層32にも、遠赤外線を反射できるように樹脂中にアルミニウム微粉末を添加し、且つ表面に表面発熱層36を印刷する。
【0041】
表面発熱層36は、図8に示すように、裏側シート6の表面にスクリーン印刷法によって形成する。例えば、用いる遠赤外線放射性のセラミックス粉末は、例えば、平均粒径1.2μmのアルミナ−シリカ系セラミックス粉末である。このセラミックス粉末30重量%と、固形分20%のポリウレタン系樹脂溶液70重量%とを混合する。この混合溶液100gに、シリカゲル2gおよび有機溶剤5gを加えて攪拌し、さらにイソシアネートを5g添加する。表面発熱層36は、180メッシュのスクリーン版によって、裏側シート6の上に形成され、同じスクリーン版で2回刷りして厚さを11μm前後にする。
【0042】
発汗促進マット1において、断熱性シート7を表側シート3と中間シート5との間におよび均熱性シート8を中間シート5と裏側シート6との間に配置し、シート7,8は、シート3,5,6よりも若干小さめの平面形状である。シート7,8は、いずれもポリエステル薄布をラミネートした発泡ウレタン樹脂のスポンジシートであり、断熱性シート7は均熱性シート8に比べて厚く、例えば、シート7は厚さ5mm、シート8は厚さ3mmである。
【0043】
中間シート5のシート本体16は、ポリエステル薄布17(図5)をラミネートした発泡ウレタン樹脂のスポンジシートである。中間シート5において、図4と図5に示すように、細い発熱コード4をシート本体16の裏面に蛇行配列させ、コーディング縫いによってミシン糸14で発熱コード4を全体的にシート本体16に縫着し、該コードをシート本体16内に一部を埋設する。発熱コード4は、シート本体16に縫着されることにより、シート本体16に対して若干ずれることができるので曲げやすくなる。発熱コード4の両端は、楕円形平面のコントローラ18(図1)に接続し、該コントローラに商用電源に接続するためのコンセントプラグ(図示しない)を取り付ける。
【0044】
温度管理可能な発熱コード4として、図6に示すように、ポリエステル繊維糸を撚糸しの心糸20に、銅ニッケル合金線のような細い発熱線22をスパイラル状に巻き付け、ついでポリ塩化ビニル樹脂の内方シース24で被覆する。内方シース24の周面には、矩形断面の鉄線である検知線26をスパイラル状に巻き付け、ついでシリコン樹脂の表面シース30で被覆する。表面シース30は、発熱コード4の最外層に位置し、検知線26を保持する機能を有する。発熱コード4において、検知線26である金属抵抗線の抵抗値変化を利用して、発熱コード4の全体を正確に温度コントロールできる。
【0045】
発熱コード4は1線式であり、図示しないけれども、コード端末をモールドブロックに端末加工する。このモールドブロックには、他端面に発熱線22と検知線26のピン端子2本を並列設置し、両ピン端子をコントローラ18に差し込む。このモールドブロックは防水性であるから、水洗いによるマット1の丸洗いが可能である。
【0046】
発汗促進マット1は、シート3,5,6を重ね合せ、超音波溶接法の圧子によって周囲を帯状に加熱融着する。矩形環状平面の加熱融着部38は、高周波ウェルダの圧子によって凹んで融着され、良好な完全防水を達成する。装飾のために、加熱融着したマット周縁を縁布40で包み込んでミシン糸で縫着し、この縫着の際に縫い糸が加熱融着部38の個所に掛からないようにする。
【0047】
発汗促進マット1は、防水シートを敷いたマットの上に寝た着用者2について、図1のようにその全身を覆うように敷き、コントローラ18でやや高温に設定して30分から1時間着用する。発熱コード4から発生した熱は、下側に向かうと均熱性シート8を通過するとほぼマット全面に分散され、裏側シート6をほぼ均一に暖める。一方、マット上側に向かう熱は、マット本体16および断熱性シート7で遮断され、さらに表側シート3の表面樹脂層12で熱反射されることにより、表側シート3の表面はわずかに暖かくなる程度である。マット1が温度40〜50℃に発熱するとともに、裏側シート表面の表面発熱層36から遠赤外線も放射して、着用者2の全身から発汗させて身体を芯から暖め、40分程度の間に大量の発汗を促すサウナ効果がある。
【0048】
図9には、敷き用マット46を示し、掛け用マット1(図2)と同様の部材には同じ図番を用いる。マット46は、平面寸法が850×1800mmである表側シート48と、細い発熱コード31を表面に縫着した中間シート5と、裏側シート50とからなる。
【0049】
表側シート48および裏側シート50は、発泡ウレタンの表面樹脂層と、中間に配置する補強布と、該補強布とラミネートした発泡ウレタンの下側樹脂層との3層構造であり、厚さは1mm程度である。表側シート48の表面樹脂層52には、遠赤外線を反射できるように樹脂中にアルミニウム微粉末を添加し、且つ表面に表面発熱層54を印刷する。一方、裏側シート50の表面樹脂層56には、樹脂中にアルミニウム微粉末を添加する。
【0050】
敷き用マット46において、均熱性シート8を表側シート48と中間シート5との間におよび断熱性シート7を中間シート5と裏側シート50との間に配置する。シート7,8は、いずれもポリエステル薄布をラミネートした発泡ウレタン樹脂のスポンジシートであり、例えば、シート7は厚さ5mm、シート8は厚さ3mmである。
【0051】
中間シート5のシート本体16は、ポリエステル薄布をラミネートした発泡ウレタン樹脂のスポンジシートである。中間シート5において、細い発熱コード31をシート本体16の表面に蛇行配列させ、コーディング縫いによって発熱コード31を全体的にシート本体16に縫着する。発熱コード31の両端は、コントローラ(図示しない)に接続する。
【0052】
好適な発熱コード31として、図7に示すように、ポリエステル繊維糸を撚糸した1500デニールの心糸20を用い、銅ニッケル合金からなる直径0.1mmの発熱線22を3本そろえて多条にスパイラル状に巻き付ける。発熱線22の巻き付け後に、ポリ塩化ビニル樹脂を押出成形することによって内方シース24で被覆する。内方シース24は、イオン性の添加剤を加えることにより、温度上昇でインピーダンスが低下する負の温度−インピーダンス特性を有する。内方シース24の周面には、矩形断面の鉄線である検知線26をスパイラル状に巻き付ける。検知線26は、その一端で発熱線22と短絡しており、発熱温度に応じて、発熱線22から内方シース24を介して特性電流が検知線26に流れ込む。
【0053】
絶縁テープ28は、ポリエステル樹脂製で厚さ15μmの短冊状であり、横幅の2/3ずつ巻き付け位置をずらしながら多重に巻き付ける。絶縁テープ28の多重巻き付けにより、厚みが均一な電気絶縁層を比較的容易に形成でき、該絶縁テープがスパイラル状であるため、発熱コード31は曲がりやすくてフレキシブルである。絶縁テープ28をスパイラル状に多重にラップすることにより、1回のテープ巻き工程において、複数本の絶縁テープ28を同時に巻き付けることができて生産性も良好である。発熱コード31の最外層に位置する表面シース30は、ポリ塩化ビニル樹脂の押出成形によって被覆し、該シースは絶縁テープ28を保持する機能を有する。
【0054】
敷き用マット46は、図10に示すように掛け用マット1とともに使用すると好ましい。マット46は、その上に寝た着用者42について、背中部分の発汗も促すことによってサウナ効果を増大させる。発熱コード31から発生した熱は、上側に向かうと均熱性シート8を通過するとほぼマット全面に分散され、表側シート48をほぼ均一に暖める。一方、マット下側に向かう熱は、マット本体16および断熱性シート7で遮断され、さらに裏側シート50の表面樹脂層で熱反射されることにより、裏側シート50の表面はわずかに暖かくなる程度である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る掛け用の発汗促進マットまたは介護用マットの使用状態を示す概略平面図である。
【図2】図1に示す掛け用マットの要部を示す拡大断面図である。
【図3】本発明のマットの変形例の要部を示す拡大断面図である。
【図4】図2のマットで用いる中間シートの裏側の一例を示す平面図である。
【図5】図4に示す中間シートの要部を示す概略拡大断面図である。
【図6】本発明のマットで用いる発熱コードを示す部分斜視図である。
【図7】発熱コードの他の例を示す部分斜視図である。
【図8】本発明のマットで用いる裏側シートの一例を示す裏面図である。
【図9】本発明に係る敷き用マットの要部を示す拡大断面図である。
【図10】本発明のマットの別の使用例を着用者の頭部側から示す端面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 発汗促進マット
3 表側シート
4 発熱コード
5 中間シート
6 裏側シート
7 断熱性シート
8 均熱性シート
9 補強布
16 シート本体
18 コントローラ
36 表面発熱層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強布を有する少なくとも3層構造の表側シートと、フレキブルな細い発熱コードを裏面に蛇行配列させて縫着した中間シートと、補強布を有する少なくとも3層構造の裏側シートとからなり、これらのシートを重ね合せて周囲を帯状に加熱融着することによって完全防水を達成し、これらのシートはいずれも軟質・軽量で折り畳み可能であり、コントローラを介して発熱コードの温度を調節できる発汗促進マット。
【請求項2】
補強布を有する少なくとも3層構造の表側シートと、該表側シートの下方に配置する断熱性シートと、フレキブルな細い発熱コードを裏面に蛇行配列させて縫着した中間シートと、該中間シートの下方に配置する均熱性シートと、補強布を有する少なくとも3層構造の裏側シートとからなり、これらのシートを重ね合せて周囲を帯状に加熱融着することによって完全防水を達成し、裏側シートの表面にセラミックス、トルマリン、無機ゲルマニウムまたは雲母石などの微粉末を含有する表面発熱層を形成する発汗促進マット。
【請求項3】
表側シートおよび裏側シートは、金属微粉末を含有する表面樹脂層と、中間に配置する補強布と、該補強布とラミネートした下側樹脂層との3層構造であり、表側シート、裏側シートおよび中間シートがいずれも発泡ウレタン樹脂からなり、高周波ウェルダによって加熱融着できる請求項1または2記載のマット。
【請求項4】
発熱コードは、心糸にスパイラル状に巻き付ける発熱線と、該発熱線を被覆する温度−インピーダンス特性の感熱樹脂製の内方シースと、内方シースの周囲にスパイラル状に巻き付ける検知線と、検知線を被覆する表面シースとからなり、発熱線の一端で検知線と短絡することにより、発熱線が所定の温度に到達すると、該発熱線への通電を一定期間停止して所定の温度に制御できる請求項1または2記載のマット。
【請求項5】
補強布を有する少なくとも3層構造の表側シートと、フレキブルな細い発熱コードを裏面に蛇行配列させて縫着した中間シートと、補強布を有する少なくとも3層構造の裏側シートとからなり、これらのシートを重ね合せて周囲を帯状にすることによって完全防水を達成し、これらのシートは熱可塑性樹脂製であって軟質・軽量で折り畳み可能であり、コントローラを介して発熱コードの温度を調節できる介護用マット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−204393(P2006−204393A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17717(P2005−17717)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(592181543)株式会社西淀マーク製作所 (5)
【Fターム(参考)】