説明

発泡ポリスチロールの減容固化方法

【課題】作業効率が高められ、確実に所望の大きさの発泡ポリスチロールにすることのできる、発泡ポリスチロールの減容固化方法を提供すること。
【解決手段】減容固化装置1に設けられた破砕部2により食品トレーおよび魚箱を破砕し、押出機3により溶融し、その後、押出機3により溶融され、前後方向に連続する発泡ポリスチロールを、ブロワ66により傘状部材69から臭気を除臭する一方で、その発泡ポリスチロールにおいて、その表面が皮膜を形成し、その内部がゲルを形成するように、吹付部材70から、除臭後のエア、大気および混合エアのいずれかを吹き付けて、冷却し、その表面が皮膜を形成し、その内部がゲルを形成する発泡ポリスチロールを、切断部5により、自動的に、所望の大きさに切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ポリスチロールの減容固化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡ポリスチロールは、生鮮食料品用小型容器などの食品トレーや鮮魚用大型容器などの魚箱として用いられており、このような発泡ポリスチロールは、一度食品トレーや魚箱として使用されれば、使用済み発泡ポリスチロールとして、投棄して埋め立てている。
近年、このような使用済み発泡ポリスチロールを、環境保護や省資源化の観点から、投棄に際して減容することや、減容した使用済み発泡ポリスチロールをリサイクルすることが検討されている。
【0003】
例えば、使用済み発泡ポリスチロールを減容する方法として、使用済み発泡ポリスチロールを破砕処理し、押出機に供給して、溶融して連続するインゴットにした後、水槽の水に漬けて冷却して、水槽からインゴットを取り出し、適宜の大きさに切断する方法が知られている。
また、例えば、破砕された発泡ポリスチロールを、液状熱媒体と混合して、流動化しながら減容し、その後、発泡ポリスチロールの流動化物を固化部に搬送して、水に浸漬して冷却して固化する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−179727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、水槽の水にインゴットを漬けて冷却する方法では、冷却したインゴットは、通常、非常に硬く大きいため、非常に大きな剪断力が必要である。
一方、連続するインゴットを、水に冷却せず、そのままカッタなどで切断する場合には、溶融するインゴットは切断しにくく、また、溶融するインゴットの一部がカッタに付着しやすいという不具合がある。
【0005】
また、特許文献1に記載されるような発泡ポリスチロールの流動化物を水に浸漬して冷却する方法では、冷却して固化された発泡ポリスチロールの形状が不安定であるため、その後の取扱いが不便であり、また、その形状が大きい場合には、上記したように、再度切断を要するため、煩雑であるという不具合がある。
そこで、本発明の目的は、作業効率が高められ、確実に所望の大きさの発泡ポリスチロールにすることのできる、発泡ポリスチロールの減容固化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、発泡ポリスチロールを破砕する破砕工程、前記破砕工程で破砕された発泡ポリスチロールを、溶融手段により溶融する溶融工程、前記溶融工程で溶融され、発泡ポリスチロールの搬送方向に連続する発泡ポリスチロールを、その発泡ポリスチロールにおいて、その表面が皮膜を形成し、その内部がゲルを形成するように冷却する冷却工程、および、前記冷却工程で冷却され、その表面が皮膜を形成し、その内部がゲルを形成する発泡ポリスチロールを、自動的に、所望の大きさに切断する切断工程を備えていることを特徴としている。
【0007】
この構成によると、切断工程において、その表面が皮膜を形成し、その内部がゲルを形成する発泡ポリスチロールを切断する。この切断では、皮膜を形成する表面が硬くなっているため、発泡ポリスチロールの表面において切断しやすく、また、内部に形成されるゲルに、カッタの剪断力が作用しても、保形性を維持することができる。そのため、剪断力を発泡ポリスチロールの内部に形成されるゲルに確実に付与することができる。その結果、発泡ポリスチロールがカッタに付着しにくく、かつ、発泡ポリスチロールを確実に切断することができる。また、その表面が皮膜を形成し、その内部がゲルを形成する発泡ポリスチロールを、自動的に、所望の大きさに切断するので、手動により切断する従来の方法に比べて、作業効率の向上を図ることができる。さらに、冷却工程において、発泡ポリスチロールを、その表面が皮膜を形成し、その内部がゲルを形成するように冷却するのみであるので、水を用いて冷却し、その後、水から回収せずとも、簡単に冷却することができる。そのため、作業効率の向上を図ることができる。その結果、確実に切断することができながら、作業効率の向上を図ることができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記冷却工程においては、エアを吹き付けることを特徴としている。
この構成によると、エアを吹き付けるので、簡単に冷却することができる。そのため、装置構成を簡単にすることができる。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記冷却工程においては、前記溶融工程で溶融された発泡ポリスチロールの臭気を吸引し、前記切断工程においては、前記冷却工程において吸引したエアを、除臭後に、その表面が皮膜を形成し、その内部がゲルを形成する発泡ポリスチロールに、吹き付けることを特徴としている。
【0009】
この構成によると、発泡ポリスチロールの臭気を吸引するので、作業環境の向上を図ることができる。また、吸引したエアを、除臭後に、そのまま発泡ポリスチロールに吹き付けるので、吸引したエアを効率的に活用することができる。そのため、装置構成を簡単にすることができる。その結果、作業環境の向上を図りつつ、装置構成を簡単にすることができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、確実に切断することができながら、作業効率の向上を図ることができる。
請求項2に記載の発明によれば、装置構成を簡単にすることができる。
請求項3に記載の発明によれば、作業環境の向上を図りつつ、装置構成を簡単にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の発泡ポリスチロールの減容固化装置の一実施形態を示す側断面図、図2は、図1の減容固化装置に設けられる破砕部の拡大背断面図、図3は、図2の破砕部の拡大平面図、図4は、図1の減容固化装置に設けられる切断部の拡大側断面図である。なお、図1において、紙面右側を「前側」、紙面左側を「後側」、紙面上側を「上側」、紙面下側を「下側」、紙面手前側を「左側」、紙面奥側を「右側」とする。
【0012】
図1において、この発泡ポリスチロールの減容固化装置1は、発泡ポリスチロールの破砕装置としての破砕部2と、溶融手段としての押出機3と、固化手段としての固化部4と、切断部5と、排出部6とを備えている。
破砕部2は、使用済みのトレーや魚箱などの発泡ポリスチロールを破砕して減容するものであり、減容固化装置1の前側において押出機3の上方に設置されている。破砕部2は、図2および図3に示すように、破砕ケーシング19と、破砕ケーシング19内の破砕室12に設けられる第1刃部8、第1刃部8と隣接するように対向配置される第2刃部9、第1固定刃部10および第2固定刃部11とを備えている。
【0013】
破砕ケーシング19は、角筒形状に形成されており、左右に対向する第1壁13および第2壁14と、前後に対向する第3壁15および第4壁16とを備えている。
第1刃部8は、破砕部2の右側に配置され、第1ドラム24と、第1ドラム24に設けられる第1刃31と、第1ドラム24の回転軸である、第1刃部8の回転軸としての第1回転軸22と、第1ドラム24および第1回転軸22を回転させる第1モータ20とを備えている。
【0014】
第1ドラム24は、破砕室12の前後方向にわたって配置され、円筒形状に形成されている。第1ドラム24には、第1ドラム24から径方向に突出する複数(2個)の第1台座板26が軸方向にわたって形成されている。この各第1台座板26は、それぞれ、第1ドラム24の周方向に所定間隔を隔てて配置され、第1刃31を支持している。
各第1刃31は、それぞれ第1ドラム24の第1台座板26に、ボルト28、ナット29およびワッシャ30を介して取り付けられている。また、各第1刃31は、第1刃基端部32と、複数(7個)の第1刃遊端部17とを連続して一体的に備えている。
【0015】
第1刃基端部32は、第1台座板26における第1ドラム24の回転方向(一方向:時計方向)下流側の表面に対向配置され、径方向および軸方向に延びる平面視矩形板状に形成されている。ボルト28は、それぞれ、第1刃基端部32と第1台座板26とを第1ドラム24の周方向に貫通して、さらに、ナット29およびワッシャ30に螺着することにより、それらを一体的に固定している。
【0016】
各第1刃遊端部17は、第1刃基端部32の径方向外側端部から、第1ドラム24の径方向外側に向かって延び、その途中から、第1ドラム24の周方向一方向に向かうように屈曲する、断面視略L字形状で、平面視略板状に形成されている。各第1刃遊端部17は、第1回転軸22の軸方向、すなわち、前後方向においてそれぞれ所定間隔を隔てて設けられており、その遊端縁には、それぞれ刃先33が、周方向一方向に向かうように設けられている。この刃先33は、後述する第2刃部9の第2刃基端部38の遊端縁と齟齬状に噛合するように、設けられている。
【0017】
第1回転軸22は、第1モータ20から後側に向かって、粉砕室12を前後方向に貫通するように配置されている。この第1回転軸22は、後述する第2回転軸23とともに水平方向において並列して配置されている。また、第1回転軸22は、後述する第2回転軸23に対して、右側斜め上方に配置されている。第1回転軸22の前端部は、第1モータ20にカップリング装置97を介して接続され、その途中が、第3壁15の前側に設けられる第1フランジユニット40に回転自在に支持され、その後端部が、第4壁16の後側に設けられる第1フランジユニット41に回転自在に支持されている。また、第1回転軸22は、第1ドラム24の軸心に配置され、この第1ドラム24と一体的に回転するように設けられている。
【0018】
第1モータ20は、減速機付ギヤードモータから構成され、第1回転軸22の前端部にカップリング装置97を介して接続されており、第3壁15に設けられるモータケーシング46に支持されている。この第1モータ20は、駆動力を、カップリング装置97を介して第1回転軸22に入力している。
そして、この第1刃部8では、第1モータ20の第1回転軸22への駆動力の入力により、第1ドラム24と第1刃31とを、ともに一方向に回転させている。
【0019】
第2刃部9は、破砕部2の左側で、第1刃部8の左側斜め下方に配置され、第2ドラム25と、第2ドラム25に設けられる第2刃37と、第2ドラム25の回転軸である、第2刃部9の回転軸としての第2回転軸23と、第2ドラム25および第2回転軸23を回転させる第2モータ21とを備えている。
第2ドラム25は、破砕室12の前後方向にわたって配置され、第1ドラム24と同一の円筒形状に形成されている。第2ドラム25には、第2ドラム25から径方向に突出する複数(第1台座板26よりも多数:10個)の第2台座板27が軸方向にわたって形成されている。この各第2台座板27は、それぞれ、第2ドラム25の周方向に所定間隔を隔てて配置され、第2刃37を支持している。なお、図3においては、2個の第2台座板27および第2刃37のみを図示している。
【0020】
各第2刃37は、それぞれ第2ドラム25の第2台座板27に、ボルト34、ナット35およびワッシャ36を介して取り付けられている。また、第2刃37は、第2刃基端部38と、複数(8個)の第2刃遊端部18とを連続して一体的に備えている。
第2刃基端部38は、第2台座板27における第2ドラム25の回転方向(他方向:反時計方向)上流側の表面に対向配置され、径方向および軸方向に延びる、第1刃基端部32と同一形状の平面視矩形板状に形成されている。ボルト34は、それぞれ、第2刃基端部38と第2台座板27とを周方向に貫通して、さらに、ナット35およびワッシャ36に螺着することにより、それらを一体的に固定している。
【0021】
第2刃遊端部18は、第1刃遊端部17と同一形状であって、第2刃基端部28の径方向外側端部から、径方向外側に向かって延び、その途中から、周方向一方向に向かうように屈曲する、断面視略L字形状で、平面視略板状に形成されている。各第2刃遊端部18は、第2回転軸23の軸方向、すなわち、前後方向においてそれぞれ所定間隔を隔てて設けられており、その遊端縁には、それぞれ刃先39が、周方向一方向に向かうように設けられている。この刃先39は、第1刃部8の第1刃基端部32の遊端縁と齟齬状に噛合するように、設けられている。
【0022】
第2回転軸23は、第2モータ21から後側に向かって、粉砕室12を前後方向に貫通するように配置されている。第2回転軸23の前端部は、第2モータ21にカップリング装置97を介して接続され、その途中が、第3壁15の前側に設けられる第2フランジユニット98に回転自在に支持され、その後端部が、第4壁16の後側に設けられる第2フランジユニット99に回転自在に支持されている。また、第2回転軸23は、第2ドラム25の軸心に配置され、この第2ドラム25と一体的に回転するように設けられている。
【0023】
第2モータ21は、減速機付ギヤードモータから構成され、第2回転軸23の前端部にカップリング装置97を介して接続されており、モータケーシング46に支持されている。この第2モータ21は、駆動力を、カップリング装置97を介して第2回転軸23に入力している。また、第2ドラム25の第2刃37の回転速度は、第1ドラム24の第1刃31の回転速度よりも遅く設定されている。すなわち、第1ドラム24の第1刃31の回転速度は、第2ドラム25の第2刃37の回転速度よりも速く設定されている。第2刃37の回転速度は、先端周速で、第1刃31の回転速度を100%としたとき、例えば、10〜20%に設定される。具体的には、第2刃37の回転速度が、例えば、0.07〜0.15m/s、第1刃31の回転速度が、0.7〜1.5m/sに設定される。
【0024】
そして、この第2刃部9では、第2モータ21の第2回転軸23への駆動力の入力により、第2ドラム25と第2刃37とを、ともに他方向に回転させている。つまり、第1刃部8および第2刃部9は、互いに逆方向に回転するように設けられている。また、上記したように、第1刃31の数が、第2刃37の数よりも少なく、かつ、第1刃31の回転速度が、第2刃37の回転速度よりも速く設定されているので、第1刃31は、数が多く、かつ、遅く回転する第2刃37に、確実に齟齬状に噛合することができる。
【0025】
第1固定刃部10は、第1刃部8の第1回転ドラム24の右側であって、第1回転軸22に対して水平方向右側に対向配置され、第1台座42と、第1台座42に支持される第1固定刃45とを備えている。
第1台座42は、第1壁13の内側に前後方向に沿って設けられ、台座用ボルト44が、第1壁13を左右方向に貫通して、第1台座42に設けられた図示しない雌ねじに螺着することにより、それらを一体的に固定している。
【0026】
第1固定刃45は、第1台座42の上側で支持される第1固定刃基端部100と、第1固定刃基端部100から左方向に向かって延びる、複数(8個)の第1固定刃遊端部101とを、連続して一体的を備えている。
第1固定刃基端部100は、前後方向に沿って延びる平面視矩形状の平板形状に形成され、ボルト43が、第1固定刃基端部100を上下方向に貫通して、第1台座42に設けられた図示しない雌ねじに螺着することにより、それらを一体的に固定している。
【0027】
各第1固定刃遊端部101は、平面視矩形状の平板形状に形成され、前後方向においてそれぞれ所定間隔を隔てて設けられている。
そして、第1固定刃部10では、一方向に回転する第1刃31の各第1刃遊端部17を各第1固定刃遊端部101の間で受け入れることにより、第1刃31と齟齬状に噛合するようにしている。
【0028】
第2固定刃部11は、第2刃部9の第2回転ドラム25の左側であって、第2回転軸23に対して水平方向左側に対向配置され、第2台座47と、第2台座47に支持される第2固定刃50とを備えている。
第2台座47は、第2壁14の内側に前後方向に沿って設けられ、台座用ボルト44が、第2壁14を左右方向に貫通して、第2台座47に設けられた図示しない雌ねじに螺着することにより、それらを一体的に固定している。
【0029】
第2固定刃50は、第2台座47の上側で支持される第2固定刃基端部102と、第2固定刃基端部102から右方向に向かって延びる、複数(7個)の第2固定刃遊端部103とを、連続して一体的を備えている。
第2固定刃基端部102は、第1固定刃基端部100と同一形状で、前後方向に沿って延びる平面視矩形状の平板形状に形成され、ボルト48が、第2固定刃基端部102を上下方向に貫通して、第2台座47に設けられた図示しない雌ねじに螺着することにより、それらを一体的に固定している。
【0030】
各第2固定刃遊端部103は、第1固定刃遊端部101と同一形状の平面視矩形状の平板形状に形成され、前後方向においてそれぞれ所定間隔を隔てて設けられている。
そして、第2固定刃部11では、他方向に回転する第2刃37の各第2刃遊端部18を各第2固定刃遊端部103の間で受け入れることにより、第2刃37と齟齬状に噛合するようにしている。
【0031】
この破砕部2では、第1モータ20により第1刃部8が一方向に回転され、第2モータ21により第2刃部9が他方向に回転されながら、互いに隣り合う第1刃部8の第1刃遊端部17が、互いに隣り合う第2刃部9の第2刃遊端部18の間に、齟齬状に噛合(嵌入)される。また、第1モータ20により第1刃部8が一方向に回転されながら、互いに隣り合う第1刃部8の第1刃遊端部17が、互いに隣り合う第1固定刃45の第1固定刃遊端部101の間に、齟齬状に噛合(嵌入)される。また、第2モータ21により第2刃部9が他方向に回転されながら、互いに隣り合う第2刃部9の第2刃遊端部18が、互いに隣り合う第2固定刃50の第2固定刃遊端部103の間に、齟齬状に噛合(嵌入)される。
【0032】
そして、発泡ポリスチロールが破砕部2に投入されると、発泡ポリスチロールは、互いに齟齬状に嵌入されている第1刃部8の第1刃遊端部17と第2刃部9の第2刃遊端部18との間で、主に剪断されて破砕され、また、第1刃部8の第1刃遊端部17と第1固定刃部45の第1固定刃遊端部101との間、および、第2刃部9の第2遊端部18と第2固定刃部50の第2固定刃遊端部103との間でも、剪断されて破砕される。
【0033】
押出機3は、図1において、破砕部2の下方に配置される、1軸押出機であって、シリンダ57と、シリンダ57内に配置されるスクリュー58とを備え、さらに、押出モータ59と、ホッパ62と、ヒータ64とを備えている。
シリンダ57は、前後方向に沿って配置される筒状部材からなり、そのシリンダ57内に内装される1本のスクリュー58の軸方向一端部(発泡ポリスチロールの搬送方向上流側端部、すなわち、前端部)を、回転可能に軸受支持している。
【0034】
また、このシリンダ57におけるスクリュー58の軸方向他端部(発泡ポリスチロールの搬送方向下流側端部、すなわち、後端部)には、溶融した発泡ポリスチロールを固化部4に押し出すためのダイ63が設けられている。ダイ63は、公知のTダイとして形成され、その開放口から溶融する発泡ポリスチロールを圧縮(減容)しながら、前後方向に連続するシート状に押し出すようにしている。
【0035】
スクリュー58は、シリンダ57内において、前後方向に沿って配置されている。このスクリュー58の径、条数などは、その用途および目的によって、適宜選択される。
押出モータ59は、スクリュー58の前端部において、減速装置89を介して、スクリュー58の前端部に連結されている。この押出モータ59は、スクリュー58に駆動力を入力している。
【0036】
ホッパ62は、破砕ケーシング19の下端部に連続して配置されており、シリンダ57に向けて開放される供給口60が形成されている。
ヒータ64は、シリンダ57の後端部における外周面に、前後方向に沿って複数(3個)のブロックごとに設けられている。
そして、この押出機3では、破砕された発泡ポリスチロールが、ホッパ62に投入され、供給口60を通過して、シリンダ57に供給され、押出モータ59の駆動力に基づくスクリュー58の回転によって、後方に向かって、搬送され、後端部において、ヒータ64により溶融されて、ダイ63によって、圧縮されながら、溶融して連続するシート状に押し出される。
【0037】
固化部4は、押出機3の後側に配置され、搬送板65、傘状部材69および除臭装置67を備えている。
搬送板65は、ダイ63から押し出され、溶融して連続するシート状の発泡ポリスチロールを切断部5に向けて案内するものであって、平面視矩形板状に形成されている。
傘状部材69は、搬送板65の上方に設けられており、吸引ダクト68を介して除臭装置67に接続されている。
【0038】
除臭装置67は、ブロワ66と、吸引ダクト68の途中に介装され、ブロワ66が吸引したエアの臭気を除臭するための触媒フィルタ94とを備えている。また、除臭装置67には、吹出ダクト105を介して、後述する上部ケース116に設けられる吹付部材70が接続されている。なお、この除臭装置67のブロワ66には、大気を吸引するための図示しない吸気口と、除臭したエアを除臭装置67外に排気するための図示しない排気口とが設けられている。
【0039】
この除臭装置67は、溶融する発泡ポリスチロールから生じる塩素ガスなどの臭気を、ブロワ66が、傘状部材69から、吸引ダクト68を介して吸引しつつ、触媒フィルタ94により、それらの臭気を除臭して、そのエアを、吹出ダクト105を介して、吹付部材70から、上部ケース116内の切断される発泡ポリスチロールに吹き付けている。
また、この除臭装置67では、除臭したエアを使用せず、ブロワ66の吸気口(図示せず)から大気を吸引し、その大気を、吹出ダクト105を介して、吹付部材70から、発泡ポリスチロールに吹き付けることもできる。なお、この場合に、除臭したエアは、ブロワ66の排気口(図示せず)から除臭装置67外に排気される。
【0040】
また、上記除臭したエアと上記大気とを、適宜の割合で混合した混合エアを、上記発泡ポリスチロールに吹き付けることもできる。すなわち、この除臭装置67では、除臭したエア、大気および混合エアのいずれかを適宜選択して、発泡ポリスチロールに吹き付けることができる。
切断部5は、図1および図4に示すように、固化部4の後側に配置され、下部ケース117および上部ケース116と、回転刃部71と、固定刃部72とを備えている。
【0041】
下部ケース117は、上部ケース116を支持しており、この上部ケース116の上側には、その吹付口が搬送板65および上部ケース116内に向かうように吹付部材70が配置されている。
回転刃部71は、図4に示すように、回転軸106と、回転軸106とともに一体的に回転するように支持される枠部材74と、枠部材74に設けられる回転刃107とを備えている。
【0042】
回転軸106は、上部ケース116内において、左右方向に配置され、その左側端部が、上部ケース116の外側において図示しない切断モータに接続され、上部ケース116に回転自在に支持されている。
枠部材74は、回転軸106に設けられ、回転軸106とともに一体的に回転するように設けられている。
【0043】
回転刃107は、回転軸106の径方向における枠部材74の一端部に設けられ、平面視矩形平板状に形成されている。
そして、この回転刃部71は、図示しない切断モータにより、回転軸106と枠部材74と回転刃107とが一体的に時計方向に向かうように所定回転数で回転する。
固定刃部72は、回転刃部71の前側に対向配置され、固定刃台座114と、固定刃台座114に支持される固定刃115とを備えている。
【0044】
固定刃台座114は、上部ケース116に設けられ、左右方向に長く延びる平面視略矩形厚板状で、ボルト119によって、固定刃115を下側から支持して固定している。
固定刃115は、固定刃台座114の上側に固定され、左右方向に長く延びる平面視略矩形平板状に形成されている。また、固定刃115には、その後端縁に、刃先118が設けられており、回転する回転刃107と対向配置されている。
【0045】
そして、この切断部5は、吹付部材70から、除臭後のエア、大気および混合エアのいずれかが、固化部4から案内される発泡ポリスチロールに吹き付けられて冷却しながら、その発泡ポリスチロールを、自動的に、所定回転数で回転する回転刃部71の回転刃107と、固定刃部72の固定刃115とにより、切断している。
排出部6は、図1に示すように、切断部5の後側に配置され、ベルトコンベア88と、フレコン受け台91とを備えている。
【0046】
ベルトコンベア88は、斜めに配置され、その前端部が、切断部5の下部ケース117の下部に設けられ、その後端部が、フレコン受け台91の上側に設けられている。
フレコン受け台91は、ベルトコンベア88の後端部の下側に配置され、その内側にフレコン(フレキシブルコンテナ)90をセットできるように、設けられている。
そして、この排出部6では、切断部5の下部ケース117の下部に落下する、切断された発泡ポリスチロールを、ベルトコンベア88の前端部で受け、その発泡ポリスチロールを後端部に向かって搬送して、ベルトコンベア88の後端部から、フレコン受け台91のフレコン90に落下させて排出するようにしている。
【0047】
次に、この減容固化装置1を用いて、ポリエチレン製の回収袋に入った多数の小型の食品トレーと、発泡ポリスチロールからなる大型の魚箱とを一緒に、減容固化する方法について、説明する。
まず、回収袋に入った多数の食品トレーおよび魚箱を破砕部2により同時に破砕する(破砕工程)。
【0048】
この工程では、まず、回収袋に入った多数の食品トレーおよび魚箱を、破砕部2の破砕室12に一緒に投入する。そうすると、回収袋に入った多数の小型の食品トレーは、第1刃部8の第1刃遊端部17と第2刃部9の第2刃遊端部18との間に掻き込まれて剪断されて破砕される。このとき、ポリエチレン製の回収袋は、上記した破砕により、第1刃部8の刃先33によって下方へ押圧されながら破られ、第2刃部9の刃先39に受けられて引っ掛かかるが、第2刃部9の刃先39に引っ掛かった回収袋は、他方向に回転する第2刃37とともに回転され、第2固定刃部11の第2固定刃50に至り、第2固定刃部11の第2固定刃50に当接して、容易に第2刃部9の刃先39から抜け落ちる。そして、多数の食品トレーは、破れた回収袋から飛散して、容易に破砕される
一方、大型の魚箱は、投入直後は、第1刃部8の第1ドラム24と第2刃部9の第2ドラム25とに跨って載置され、第1刃部8の第1刃遊端部17と第2刃部9の第2刃遊端部18とによって掻き込まれないが、第1ドラム24から第2ドラム25に向かって下方へ傾斜して載置されるので、その姿勢が不安定となって、第1刃部8の第1刃遊端部17と第2刃部9の第2刃遊端部18とによって、ただちに掻き込まれて破砕される。
【0049】
つまり、この破砕部2によれば、第1刃部8の第1ドラム24および第2刃部9の第2ドラム25は、互いに逆方向に回転され、第1刃部8の第1ドラム24は、第1刃部8の第1ドラム24の回転方向、すなわち、一方向に向かうように刃先33が設けられた第1刃31を備え、第2刃部9の第2ドラム25は、第2刃部9の回転方向(他方向)と逆方向、すなわち、一方向に向かうように刃先29が設けられた第2刃37を備えている。そのため、回収袋に入った小型の食品トレーをそのまま投入して、回収袋が、第2刃部9の第2ドラム25の第2刃37に引っ掛かっても、その回収袋は、第2刃部9の第2ドラム25の第2刃37ととともに刃先39の向かう方向と逆方向、すなわち、他方向に回転するため、第2刃37の刃先39から容易に抜け落ちる。そのため、回収袋に入った小型の食品トレーの投入前に、回収袋から食品トレーを取り出すことなく、回収袋に入った小型の食品トレーをそのまま投入しても、破砕効率の低下を防止することができる。その結果、回収袋に入った小型の食品トレーを作業効率よく破砕することができる。
【0050】
また、通常、上下方向において同じ位置に並列配置されるような1組の回転刃を備える破砕装置において、1組の回転刃に跨って載置されるような大型の魚箱が投入された場合には、1組の回転刃が上下方向において同じ位置に配置されるので、大型の魚箱は、水平方向の姿勢を安定して維持しやすく、1組の回転刃に掻き込まれにくく、破砕することが困難である。
【0051】
しかし、この破砕部2によれば、第1刃部8の第1回転軸22は、第2刃部9の第2回転軸23に対して、上方に配置されているので、大型の魚箱は、たとえ、第1刃部8の第1ドラム24と第2刃部9の第2ドラム25とに跨って載置されても、第1刃部8の第1ドラム24から左側斜め下方の第2刃部9の第2ドラム25に向かって下方へ傾斜して載置されるので、水平方向の姿勢を安定して維持できず、第1刃部8の第1刃31と第2刃部9の第2刃37とにより容易に掻き込まれて破砕される。そのため、大型の魚箱を確実に破砕することができる。その結果、小型の食品トレーと大型の魚箱とを一緒に破砕することができる。
【0052】
また、この破砕部2によれば、第1刃部8の第1刃31の回転速度が速く、第2刃部9の第2刃37の回転速度が遅いので、第1刃31と第2刃37とを齟齬状に噛合させる状態をより長く維持することができる。そのため、破砕効率の向上を図ることができる。また、上方から投入された大型の魚箱は、回転速度が速い第1刃部8の第1刃31によって、水平方向の姿勢をただちに崩し、第1刃部8の第1刃31と第2刃部9の第2刃37とにより容易に掻き込まれて破砕される。その結果、大型の魚箱を含む発泡スチロールの破砕効率の向上を図ることができる。
【0053】
次いで、破砕工程で破砕された食品トレーおよび魚箱を、押出機3により溶融する(溶融工程)。
破砕部2により破砕された食品トレーおよび魚箱は、まず、ホッパ62に投入され、次いで、供給口60を通過して、シリンダ57に供給され、スクリュー58の回転によって、後方に向かって、搬送する。次いで、スクリュー58の後端部において、ヒータ64により溶融されて、ダイ63によって、圧縮されながら、溶融して前後方向に連続するシート状に押し出される。
【0054】
次いで、溶融工程で溶融され、前後方向に連続する発泡ポリスチロールを、その発泡ポリスチロールにおいて、その表面が皮膜を形成し、その内部がゲルを形成するように冷却する(冷却工程)。
発泡ポリスチロールを、表面が皮膜を形成し、その内部がゲルを形成するように、冷却するには、上記したように固化部4の搬送板65上において、溶融され、前後方向に連続する発泡ポリスチロールを切断部5に向けて案内しながら、溶融する発泡ポリスチロールの臭気を傘状部材69によって吸引して、上部ケース116の吹付部材70から、除臭後の臭気(エア)、大気および混合エアのいずれかを吹き付けて、冷却する。溶融する発泡ポリスチロールの臭気の吸引は、ブロワ66の吸引により、傘状部材69から吸引することができ、このブロワ66の吸引において、吸引された臭気は、触媒フィルタ94により、除臭される。
【0055】
除臭後のエアを吹き付ける場合には、吹付部材70からの吹付により、除臭されたエアを吹き付ける。これにより、溶融する発泡ポリスチロールの臭気を吸引することができると同時に、除臭後に、エアを吹き付けて、冷却することができる。
また、大気を吹き付ける場合には、ブロワ66の図示しない吸気口から大気を吸引し、次いで、その大気を、溶融する発泡ポリスチロールに吹き付ける。なお、除臭後のエアは、吹付に使用せず、除臭装置67の排気口から除臭装置67外に排気する。
【0056】
また、混合エアを吹き付ける場合には、上記除臭後のエアと上記大気とを、適宜の割合混合し、次いで、その混合エアを、溶融する発泡ポリスチロールに吹き付ける。
この冷却工程における発泡ポリスチロールにおいて、表面に形成される皮膜は、吹付に基づく冷却により、溶融した発泡ポリスチロールの表面のみが固化した形態(表面スキン層)であり、また、内部に形成されるゲルは、吹付に基づく冷却により、溶融した発泡ポリスチロールの内部の流動性が低下した形態である。
【0057】
次いで、冷却工程で冷却され、その表面が皮膜を形成し、その内部がゲルを形成する発泡ポリスチロールを、自動的に、所望の大きさに切断する(切断工程)。
その表面が皮膜を形成し、その内部がゲルを形成する発泡ポリスチロールを、自動的に、所望の大きさに切断するには、図4に示すように、回転する回転刃部71の回転刃107と固定刃部72の固定刃115とにより、上記した形態の発泡ポリスチロールを切断する。切断は、例えば、前後方向に連続する発泡ポリスチロールを、回転刃部71により、その回転刃部71の回転刃107の所定回転数に基づいて、一定間隔ごとに切断して、ほぼ同じ大きさの発泡ポリスチロールの塊状物にする。
【0058】
次いで、切断した発泡ポリスチロールを、ベルトコンベア88の前端部で受け、その発泡ポリスチロールを後端部に向かって搬送して、ベルトコンベア88の後端部から、フレコン受け台91のフレコン90に排出する。
そして、この減容固化方法によれば、切断工程において、その表面が皮膜を形成し、その内部がゲルを形成する発泡ポリスチロールを切断する。この切断では、皮膜を形成する表面が硬くなっているため、発泡ポリスチロールの表面において切断しやすく、また、内部に形成されるゲルに、回転刃部71の回転刃107と固定刃部72の固定刃115との剪断力が作用しても、保形性を維持することができる。そのため、剪断力を発泡ポリスチロールの内部に形成されるゲルに確実に付与することができる。その結果、発泡ポリスチロールが回転刃部71の回転刃107と固定刃部72の固定刃115とに付着しにくく、かつ、発泡ポリスチロールを確実に切断することができる。また、その表面が皮膜を形成し、その内部がゲルを形成する発泡ポリスチロールを、自動的に、所望の大きさに切断するので、ノコギリを備えた手動の装置などにより切断する従来の方法に比べて、作業効率の向上を図ることができる。さらに、冷却工程において、ブロワ66により吹付部材70からエアを吹き付けて、発泡ポリスチロールを、その表面が皮膜を形成し、その内部がゲルを形成するように冷却するのみであるので、水を用いて冷却し、その後、水から回収せずとも、簡単に冷却することができる。そのため、作業効率の向上を図ることができる。その結果、確実に切断することができながら、作業効率の向上を図ることができる。
【0059】
また、この減容固化方法によれば、エア、すなわち、除臭後のエア、大気および混合エアのいずれかを、吹き付けるので、溶融する発泡ポリスチロールを、簡単に冷却することができる。そのため、減容固化装置1の装置構成を簡単にすることができる。
また、この減容固化方法によれば、発泡ポリスチロールの臭気を、ブロワ66により吸引するので、作業環境の向上を図ることができる。また、除臭後のエアまたは混合エアを吹き付ける場合には、ブロワ66により傘状部材69から吸引したエア(臭気)を、触媒フィルタ94を用いた除臭の後に、そのまま、または、大気と混合して、吹付部材70から吹き付けるので、吸引したエアを効率的に活用することができる。そのため、減容固化装置1の装置構成を簡単にすることができる。その結果、作業環境の向上を図りつつ、減容固化装置1の装置構成を簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の発泡ポリスチロールの減容固化装置の一実施形態を示す側断面図である。
【図2】図1の減容固化装置に設けられる破砕部の拡大背断面図である。
【図3】図2の破砕部の拡大平面図である。
【図4】図1の減容固化装置に設けられる切断部の拡大側断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 減容固化装置
2 破砕部
3 押出機
4 固化部
5 切断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡ポリスチロールを破砕する破砕工程、
前記破砕工程で破砕された発泡ポリスチロールを、溶融手段により溶融する溶融工程、
前記溶融工程で溶融され、発泡ポリスチロールの搬送方向に連続する発泡ポリスチロールを、その発泡ポリスチロールにおいて、その表面が皮膜を形成し、その内部がゲルを形成するように冷却する冷却工程、および、
前記冷却工程で冷却され、その表面が皮膜を形成し、その内部がゲルを形成する発泡ポリスチロールを、自動的に、所望の大きさに切断する切断工程
を備えていることを特徴とする、発泡ポリスチロールの減容固化方法。
【請求項2】
前記冷却工程においては、エアを吹き付けることを特徴とする、請求項1に記載の発泡ポリスチロールの減容固化方法。
【請求項3】
前記冷却工程においては、前記溶融工程で溶融された発泡ポリスチロールの臭気を吸引し、
前記切断工程においては、前記冷却工程において吸引したエアを、除臭後に、その表面が皮膜を形成し、その内部がゲルを形成する発泡ポリスチロールに、吹き付けることを特徴とする、請求項1または2に記載の発泡ポリスチロールの減容固化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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