説明

発泡ポリプロピレンの成形方法

【課題】真空熱成形(vacuum Thermoform)工程と組み合わせられた発泡ポリプロピレンの一次成形方法を提供する。
【解決手段】発泡ポリプロピレンの成形方法は、真空熱成形用シート上にスクリーン印刷を行うステップと、当該真空熱成形用シートに対し真空熱成形を行なって真空熱成形製品を得るステップ、及び発泡ポリプロピレンフォームと真空熱成形製品とを一体成形させるステップとを含む。当該成形方法によって製造された発泡ポリプロピレンの真空熱成形製品は、生産プロセスがより優れているだけでなく、耐衝撃性にも優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ポリプロピレンの成形方法に関する。特に、本発明は、真空熱成形(vacuum Thermoform)工程と組み合わせられた発泡ポリプロピレンの一次成形方法に関する。
【0002】
背景技術
現在、発泡プラスチックは、密度が小さく、比強度が高く、エネルギー吸収能が高くで、遮音・断熱性能がよいなどの特徴を有することから、日用品、交通運輸、工業生産、航空宇宙などの分野で広く用いられている。
【0003】
ヘルメット、例えば自転車用ヘルメット、スキー・スケート用ヘルメット、アイスホッケー用ヘルメット、登山用ヘルメット、乗馬用ヘルメット、水上スポーツ用ヘルメット、産業用ヘルメットなどを製造する場合、最終製品の強度に対して高い要求があり、前記製品に使用される発泡ポリプロピレンプラスチックに対して、真空熱成形(vacuum Thermoform)工程の処理をさらに行い、製品の強度をさらに向上させる必要がある。
【0004】
現在、発泡ポリプロピレンと真空熱成形工程の組み合わせにおいて、一般に採用される成形方法は、真空熱成形金型により特定形状の真空熱成形製品(真空熱成形により得られた製品)を得た後、該製品に穴を打ち抜き、特定の形状にトリミングする二次成形方法である。EPP粒子を射出して発泡成形(第一成形)してEPPフォーム製品を得た後、EPPフォーム製品と真空熱成形製品とを一体成形させる(第二成形)。しかしながら、当該方法での生産工程が複雑で、生産周期が長く、真空熱成形と真空熱成形との結合強度が不充分であるため、生産周期と製品強度に影響を与える。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、従来における上記問題点を解決し、耐衝撃性がより強い発泡ポリプロピレンの真空熱成形製品を製造できる成形方法を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、
(1)真空熱成形用シート上にスクリーン印刷を行うステップと、
(2)前記真空熱成形用シートに対し真空熱成形を行なって、真空熱成形製品を得るステップと、
(3)発泡ポリプロピレンを発泡させて、発泡ポリプロピレンと真空熱成形製品とを一体成形させるステップとを含む、発泡ポリプロピレンの成形方法を提供する。
【0007】
本発明の発泡ポリプロピレンの成形方法において、真空熱成形用シート上にスクリーン印刷を行なうステップ(1)の代わりに、既に成形された真空熱成形製品にインクをスプレーコートする方法を採用することもできる。
【0008】
本発明の成形方法のステップ(1)において、使用されるインクは発泡ポリプロピレン用インクであることが好ましい。
【0009】
本発明の成形方法のステップ(1)において、使用される真空熱成形用シートの厚みは0.5〜2.5mmであることが好ましい。
【0010】
本発明の成形方法のステップ(3)において、使用される発泡ポリプロピレンは変性発泡ポリプロピレンであることが好ましい。
【0011】
本発明の成形方法のステップ(3)において、一体成形する場合の操作圧力は280KPa〜500KPaであることが好ましい。
【0012】
本発明の成形方法のステップ(3)において、一体成形する場合の操作温度は125〜150℃であることが好ましい。
【0013】
本発明の成形方法のステップ(3)において、一体成形する場合の蒸気操作時間は25秒〜60秒であることが好ましく、異なる厚みに要される蒸気操作時間も異なる。
【0014】
本発明によれば、前記発泡ポリプロピレンと変性発泡プロピレンは、射出発泡成形方法、押出成形方法又は圧縮成形方法などの本分野で公知の全ての方法により製造することができる。本発明の一つの好ましい実施形態において、前記発泡ポリプロピレンと変性発泡プロピレンは、射出発泡成形方法により製造される。また、もう一つの実施形態において、前記発泡ポリプロピレンと変性発泡プロピレンは、押出成形方法又は圧縮成形方法により製造される。
【0015】
本発明の一次成形方法のメリット及び有益効果は、当該方法により製造された発泡ポリプロピレンの真空熱成形製品の耐衝撃性がより強く、生産工程が更に優れている点にある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の発泡ポリプロピレンプラスチックの一次成形方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施形態により、本発明の原理と構成を詳細に説明するが、該実施形態は本発明を説明・解釈するために用いられるものであり、本発明の特許請求の範囲を限定するものではない。
【0018】
実施例1
以下、発泡ポリプロピレン(Expandable Polypropylene, EPP)を例に、本発明の成形方法について説明する。発泡ポリプロピレンの原料は日本JSP社により提供される。図1に示すように、本発明の発泡ポリプロピレンの成形方法は、真空熱成形用シート上にスクリーン印刷を行う工程と、該シートに対し真空熱成形及び加工を行う工程と、EPPと真空熱成形製品とを一体成形させる工程の三つの工程を含む。
【0019】
工程1:真空熱成形用シート上にスクリーン印刷をする。
1)トップコートを二層スクリーン印刷した。各層のインクによるスクリーン印刷が終わった後、約80℃の温度で、約20分加熱した。そして、十分に冷却した後でのみ、次のインク層をスクリーン印刷した。使用するインクは、美麗華(Miramar)社により提供されたPUインクである。
2)EPPプライマーを二層スクリーン印刷した(プライマー材は、美麗華社により提供された塩素化ポリオレフィン(chlorinated polyolefin)樹脂である)。各層のスクリーン印刷が終わった後、約80℃の温度で、約20分加熱した。そして、十分に冷却した後でのみ、次のインク層をスクリーン印刷した。上記プライマーは、発泡ポリプロピレン用インクに属する。
【0020】
工程2:前記シートに対し真空熱成形及び加工を行う。
1)シートを加熱する。即ち、シートを約95℃の温度で、約90分間加熱した。
2)真空熱成形機のパラメータを調節する。つまり、加熱温度を約500℃、加熱時間を18秒、冷却時間を10秒と設定した。
3)真空熱成形金型を利用して特定形状を持つ真空熱成形製品を製造した。
4)真空熱成形製品に対して加工を行った。つまり、真空熱成形製品に穴を打ち抜き、特定の形状にトリミングした。
【0021】
工程3:発泡ポリプロピレンを発泡させて、発泡ポリプロピレンと真空熱成形製品とを一体成形させる。
1)発泡成形機のパラメータを調節する。つまり、蒸気圧を300KPa、蒸気時間を35秒、冷却時間を120秒、真空状態の維持時間を20秒、成形する際の金型内温度を約130℃、と設定した。
2)前記加工後の真空熱成形製品をEPPフォーム金型に入れた。
3)発泡成形機のスイッチをオンにし、EPPを供給し、設定されたパラメータでEPP発泡を行い、且つEPPフォームを真空熱成形製品に密着して、EPPフォームと真空熱成形製品とが一体化された製品を製造した。
4)金型から取り出して、EPPフォームと真空熱成形製品とが強固に結合された製品を得た。
【0022】
実施例2
以下、変性発泡ポリプロピレン(原料は日本JSP社により提供)を例に,本発明の成形方法について説明する。当該成形方法は、真空熱成形用シート上にスクリーン印刷を行う工程と、前記シートに対して真空熱成形及び加工を行う工程と、EPPと真空成形製品とを一体成形させる工程の三つの工程を含む。
【0023】
工程1:真空熱成形用シート上にスクリーン印刷を行う。
1)トップコートを二層スクリーン印刷する。各層のスクリーン印刷が終わった後、約80℃の温度で、約20分加熱した。そして、十分に冷却してから、次のインク層をスクリーン印刷した。
2)EPPプライマーを二層スクリーン印刷する。各層のスクリーン印刷が終わった後、約80℃の温度で、約20分加熱した。そして、十分に冷却してから、次のインク層をスクリーン印刷した。上記プライマーは、発泡ポリプロピレン用インクに属する。
【0024】
工程2:上記シートに対し真空熱成形及び加工を行う。
1)シートを加熱する。即ち、シートを約95℃の温度で、約90分間加熱した。
2)真空熱成形機のパラメータを調節する。つまり、加熱温度を約500℃、加熱時間を18秒、冷却時間を10秒、と設定した。
3)真空熱成形金型を利用して特定形状を持つ真空熱成形製品を製造した。
4)真空熱成形製品に対して加工を行う。つまり、真空熱成形製品に穴を打ち抜き、特定の形状にトリミングした。
【0025】
工程3:変性発泡ポリプロピレンを発泡させて、変性発泡ポリプロピレンと真空熱成形製品を一体成形させる。
1)発泡成形機のパラメータを調節する。つまり、蒸気圧を500KPa、蒸気時間を35秒、冷却時間を120秒、真空状態の維持時間を20秒、成形する際の金型内温度を約150℃、と設定した。
2)前記加工後の真空熱成形製品をEPPフォーム金型に入れた。
3)発泡成形機のスイッチをオンにし、変性発泡ポリプロピレンを供給し、設定されたパラメータで変性発泡ポリプロピレンの発泡を行い、且つ変性発泡プロピレンを真空熱成形製品に密着して、変性発泡ポリプロピレンと真空熱成形製品とが一体化された製品を製造した。
4)金型から取り出して、変性発泡ポリプロピレンと真空熱成形製品とが強固に結合された製品を得た。
【0026】
上記実施例1と2の工程3において、発泡ポリプロピレン(EPP)と変性発泡プロピレンは射出発泡工程によって成形されるが、当業者にとって、発泡プロピレン(EPP)と変性発泡プロピレンが、所定形状が得られる他の全ての方法によって成形できることは、自明なことである。例えば、押出成形方法、圧縮成形方法などによって成形することができる。
【0027】
前記の通り、本発明の具体的な実施形態について説明しているが、本発明の様々な改良及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱せずに実施できることは、当業者には明らかである。従って、本発明の特許請求の範囲及びその同等物の範囲内で行なわれる全ての変更と修飾は、本発明の範囲に包含されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)真空熱成形用シート上にスクリーン印刷を行うステップと、
(2)前記真空熱成形用シートに対し真空熱成形を行なって、真空熱成形製品を得るステップと、
(3)発泡ポリプロピレンを発泡させて、発泡ポリプロピレンと真空熱成形製品とを一体成形させるステップとを含むこと、を特徴とする発泡ポリプロピレンの成形方法。
【請求項2】
前記ステップ(1)で、インクを使用して真空熱成形用シート上にスクリーン印刷を行い、使用されるインクが、発泡ポリプロピレン用インクであることを特徴とする、請求項1に記載の発泡ポリプロピレンの成形方法。
【請求項3】
前記ステップ(1)で使用される真空熱成形用シートの厚みが0.5〜2.5mmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の発泡ポリプロピレンの成形方法。
【請求項4】
前記ステップ(3)で使用される発泡ポリプロピレンが変性発泡ポリプロピレンであることを特徴とする、請求項1に記載の発泡ポリプロピレンの成形方法。
【請求項5】
前記ステップ(3)で一体成形する場合の操作圧力が280KPa〜500KPaであることを特徴とする、請求項1又は4に記載の発泡ポリプロピレンの成形方法。
【請求項6】
前記ステップ(3)で一体成形する場合の操作温度が125〜150℃であることを特徴とする、請求項1、4又は5に記載の発泡ポリプロピレンの成形方法。
【請求項7】
前記ステップ(3)で一体成形する場合の蒸気操作時間が25秒〜60秒であることを特徴とする、請求項1、4、5又は6に記載の発泡ポリプロピレンの成形方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−116180(P2012−116180A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172371(P2011−172371)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(511192425)
【Fターム(参考)】