説明

発泡ローラの製造方法及び製造装置

【課題】発泡ローラの成形工程で生じたゴム発泡体外周面の未開口セルを開口し、また開口面積のバラツキを抑え、所定範囲の面積にセル開口を拡大可能な発泡ローラの製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】芯金の外周に円筒状のゴム発泡体を型成形する発泡ローラ成形工程と、成形された該発泡ローラのゴム発泡体外周面にTEA−CO2レーザ光をパルス照射し、少なくとも該ゴム発泡体のセル表面を開口するセル開口工程と、を含むことを特徴とする発泡ローラの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯金の外周にゴム発泡体を形成した発泡ローラの製造方法及び発泡ローラの製造装置に関する。詳しくは、電子写真方式の画像形成装置に適宜用いられるトナー供給ローラ、現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラ等各種ウレタン発泡ローラの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡ローラのゴム発泡体には、隔壁で区切られた各セルが連通する連続気泡体と、各セルが連通せず独立する独立気泡体がある。また、ゴム発泡体の外周面にスキン層が形成されたものと、スキン層が形成されずゴム発泡体外周面のセルが開口したものが有る。画像形成装置のローラには、温度変化によるゴム発泡体の外形変化が少ない連続気泡体を有し、印字用紙やトナーの搬送力を得るため、表面の摩擦抵抗が大きい外周面のセルが開口したゴム発泡体を有するものが多く使用されている。
【0003】
連続気泡体を有し、ゴム発泡体外周面のセルが開口した発泡ローラの製造方法には、製造工程の短縮化が比較的容易な型成形方法が用いられている。即ち、成形型にゴム原料を注型し、該ゴム原料の硬化工程で発泡及び開口させるものである。ここで、ゴム発泡体の連続気泡体は、ゴム原料の硬化と気泡化の競争反応により形成され、一定の安定したセル径を得るには緻密な製造条件の管理を必要とする。加えて、ゴム発泡体表面のセルの開口は、ゴム原料が直接接触する離型剤や離型剤を介して接触する成形型の表面粗さ、成形サイクルを重ねるに伴いゴム原料や離型剤が成形型表面に堆積する型汚れ等の影響を強く受ける。このため、未開口のセルが多くなったり、セル開口面積がゴム発泡体の場所によりばらつく開口ムラ等の欠陥が生じる場合があり、安定して高品質の発泡ローラを得るのは容易ではなかった。
【0004】
そこで、このような開口ムラ等の欠陥を解決する発泡ローラ表面のセル開口方法が提案されている。例えば、多数の針を具備した冶具をゴム発泡体表面に突き刺し、穿孔する方法がある(例えば、特許文献1参照)。また、軟質ポリウレタンフォーム表面のスキン層にプラズマ照射し、セルを開口する方法がある(例えば、特許文献2参照)。また、成形型の離型剤にフッ素樹脂コーティングを施したものも有る(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2001−114926号公報
【特許文献2】特開2002−039162号公報
【特許文献3】特開平09−274373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の針を突き刺す方法では、セルを機械的に裂く方法であり、ゴム発泡体の連続気泡化はできるが、発泡体表面の一部を選択的に除去する所謂アブレーション加工は困難である。そのため、ゴム発泡体のセル開口面積のバラツキを抑えるように、所定範囲の面積にセル開口を拡大することはできない。また、針の温度をゴム発泡体の溶融温度以上に昇温させてゴム発泡体に刺すことにより、針に接触したゴム発泡体が溶融または軟化することでセル開口が拡大するが、針に溶融したゴム材が付着する場合があり、安定して一定の開口率(ゴム発泡体外周表面積中の発泡体外周面のセル開口面積をいう、以下開口率と記す場合がある。)を得ることが難しい。
【0006】
また、上述ポリウレタンフォームのスキン層をプラズマ照射しセルを開口する方法は、プラズマトーチから噴出する高温で高エネルギー密度のプラズマを連続照射するものである。プラズマの照射の制御は、被加工物とプラズマトーチの移動に限られ、微細パルス的なプラズマ照射時間の制御が困難である。特にゴム発泡体のセル隔壁が薄い場合、セル隔壁の厚みのバラツキにより隔壁を含め発泡ローラ表面が溶融し、発泡ローラの外径が縮小したり、表面にシワが発生したり、逆にセル開口部の閉口が生じたりと、安定した開口率が得られない場合がある。また、成形型の離型層に弗素樹脂コーティングを施したものは、成形回数を重ねると成形型に局部的にゴム材料が残留し、セル開口ムラの原因になる場合がある。
【0007】
本発明は、発泡ローラの成形工程で生じたゴム発泡体外周面の未開口セルを開口し、また開口面積のバラツキを抑え、所定範囲の面積にセル開口を拡大可能な発泡ローラの製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような従来の問題を解決できる発泡ローラの製造方法、製造装置を提供するものである。
【0009】
(1)本発明に係る発泡ローラの製造方法は、芯金の外周に円筒状のゴム発泡体を型成形する発泡ローラ成形工程と、成形された該発泡ローラのゴム発泡体外周面にTEA−CO2レーザ光をパルス照射し、少なくとも該ゴム発泡体のセル表面を開口するセル開口工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
(2)また、本発明に係る発泡ローラの製造装置は、TEA−CO2レーザ発振器で生成したレーザ光を発泡ローラのゴム発泡体外周面の照射面形状に整形し、該発泡ローラのゴム発泡体外周面にレーザ光を導くレーザ光照射手段と、前記発泡ローラの芯金部を把持し発泡ローラの芯金を中心に回動させるローラ回動手段と、前記ローラ回動手段を前記発泡ローラの軸方向に移動させるローラ移動手段と、前記レーザ光照射手段、前記ローラ回動手段及び前記ローラ移動手段を連動させ、前記発泡ローラのゴム発泡体外周面全体に亘りレーザ光を逐次パルス照射する制御手段と、を具備することを特徴とする。
【0011】
(3)また、本発明に係る発泡ローラの製造装置は、前記レーザ照射手段と、発泡ローラのゴム発泡体外周面との間に、該ゴム発泡体外周面へのレーザ光の照射を制限するための遮光マスクを有し、前記遮光マスクには、前記ゴム発泡体の平均セル径の0.5〜2.0倍の幅を有する複数のスリット、或いは、前記ゴム発泡体の平均セル径の0.5〜2.0倍の直径を有する複数の円形孔が存在することを特徴とする。
【0012】
(4)前記スリット間の非照射幅が、前記ゴム発泡体の平均セル径の0.5倍以上であり、前記円形孔間の非照射幅が、前記ゴム発泡体の平均セル径の0.3倍以上であることを特徴とする。
【0013】
(5)また、本発明に係る発泡ローラの製造方法は、前記(2)乃至(4)のいずれかに記載の発泡ローラの製造装置を用いて、発泡ローラを製造することを特徴とする。
【0014】
(6)また、本発明に係る発泡ローラは、前記(1)又は(5)に記載の発泡ローラの製造方法により製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、TEA−CO2レーザ光をゴム発泡体の表面にパルス照射することで、発泡ローラの成形工程で生じたゴム発泡体外周面の未開口セルを開口でき、また開口面積のバラツキを抑え、所定範囲の面積にセル開口を拡大させることができる。これにより、印字用紙やトナーの搬送力に優れる、表面の摩擦抵抗が大きい発泡ローラを安定して製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る発泡ローラの製造方法は、芯金の外周に円筒状のゴム発泡体を型成形する発泡ローラ成形工程と、成形された該発泡ローラのゴム発泡体外周面にTEA−CO2レーザ光をパルス照射し、該ゴム発泡体のセル表面を開口するセル開口工程とを含む。
【0017】
前記発泡ローラの成形工程において、発泡ローラの成形品は公知の方法で作成される。例えば、成形型の円筒状キャビティの両端部に装着する型駒で芯金を支持し、例えば、ポリイソシアネート、ポリオール、水、触媒等を主成分とする発泡ウレタンゴム原料を注型機で攪拌混合する。前記原料を金型のキャビティに注型し、所定時間加熱することで芯金の外周にゴム発泡体を形成し、芯金と一体化したゴム発泡体を芯金諸共成形型から脱型することで発泡ローラの成形品を得る。
【0018】
前記ゴム発泡体の原料としては、所謂軟質ウレタンフォームの各種ウレタン原料が適用できる。例えば、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート他のポリオールが、またポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)他が単独または複数併用され、触媒、発泡剤、整泡剤他と共に用いられる。発泡方法としては、発泡剤として水を用いる水発泡法或いは原料中に細かな空気を混合するメカニカルフロス法等が例示できる。
【0019】
前記セル開口工程において、前記発泡ローラの成形品のゴム発泡体外周面に照射するレーザ光には、TEA−CO2レーザ発振器で発生させたレーザ光を用いる。
【0020】
前記レーザ光は、発泡ローラのゴム発泡体外周面にパルス照射される。TEA−CO2レーザでは1μsecのパルス照射が可能であり、その照射面積もYAGレーザ等照射面積の小さいスポットではなく比較的広範囲のエリアを同時に照射できる。
【0021】
レーザ光照射によるセルの開口は、セル骨格部(スキン層内側のセル形成領域)とセル薄肉部(スキン層)の微細な熱容量差によると考えられ、照射パルス数、照射間隔、照射時間等の照射条件を適宜選択することにより、セル開口径を均質化することができる。また、ゴム発泡体の変形を抑え、ゴム発泡体表面に発生するシワを低減することができる。
【0022】
さらに、レーザ光の照射により、ゴム発泡体表面のセル薄肉部がアブレーションされ、セル未開口部が開口し、セルが開口している部分の開口面積も拡大し、セル開口率が増加する。例えば、図2に示すように、ゴム発泡体41表面のセル開口不十分部41bにレーザ光照射をすることにより、セル開口十分部41aのごとくセル開口率を向上させ、セル開口径を均質化することができる。
【0023】
前記セル開口工程には、図1に示す発泡ローラの製造装置を用いることができる。
【0024】
まず、発泡ローラ4を、ローラ移動手段5上のローラ回動手段3上に載せ、芯金部を支持させた後、ローラ回動手段3を起動させ、発泡ローラ4を周方向に回動させる。その後、レーザ1を発泡ローラ4表面に照射する。レーザ光1の照射は、回動する発泡ローラ4をゴム発泡体の軸方向一端からゴム発泡体の軸方向他端の位置までローラ移動手段5により移動させることで、ゴム発泡体外周表面全体をスキャニングしつつレーザ光1を逐次パルス照射する。
【0025】
レーザ光1のパルス照射は、不図示の制御手段により、レーザ光照射手段、ローラ回動手段3、ローラ移動手段5と連動させて行われる。具体的には、制御手段は公知の制御技術でよく、図5は制御手段の概念図で、統合コントローラは、回動手段の回動ドライバ、移動手段の移動ドライバ及びレーザ光照射手段の照射ドライバと電気信号を入出可能に接続される。回動ドライバにはエンコーダ付きのサーボモータの回動モータが、移動ドライバにはエンコーダ付きのサーボモータの移動モータが、照射ドライバにはレーザ発振器が各々接続される。統合コントローラはパソコン或いはシーケンサが用いられ、回動、移動、照射の各手ドライバにパルス信号を適宜送信することで、回動手段の回転方向、回転速度及び回転数を、移動手段の移動方向、移動速度及び移動量を、照射手段の照射パルス速度及び照射パルス数等を制御することで、ゴム発泡体の回転と軸方向の移動及びレーザ照射を連動させゴム発泡体の外周表面全体に亘りレーザ光を照射する。通常、回動、移動の各手段は高精度な制御が可能なフィードバック制御が用いられる。
【0026】
前記レーザ光1の照射には、例えば図4に示すレーザ照射装置100を用いることができる。
【0027】
図4のレーザ照射装置100は、レーザ照射手段としてTEA−CO2(Transversely Excited Atmospheric Pressure−CO2)レーザ光学系を用いる。レーザ発振器101からのレーザ光を反射ミラー103にて方向変換し、一次遮光マスク102でレーザ光外縁部のレーザ出力密度の不安定部を除去し、シリンドリカルレンズ104で集光し矩形の照射面形状に整形される。更に、整形されたレーザ光1は直接或いは遮光マスク2を経由して発泡ローラ4のゴム発泡体外周面に照射される。
【0028】
前記遮光マスク2によりレーザ光照射部とレーザ光非照射部を隣接させることにより、レーザ光照射部のアブレーションによるゴム発泡体の変形をレーザ非照射部即ち非加熱部が制限する。これにより、遮光マスク2を使用しない場合と比較して、ゴム発泡体表面に発生するシワを低減できる。
【0029】
図3は、本発明で利用可能な遮光マスク2の例を示す。本発明では、遮光マスク2a、2b、2c及び2dのいずれも用いることができるが、発泡ローラの回動速度、移動速度及びレーザ光パルス照射速度等のレーザ光の照射条件により、遮光マスク2a、2b、2c及び2dから適宜選択される。
【0030】
遮光マスク2aには、発泡ローラ軸方向に対し傾斜したスリット状の照射窓2a1が存在する。遮光マスク2bには、発泡ローラ軸方向に平行なスリット状の照射窓2b1が存在する。遮光マスク2cには、発泡ローラ軸方向に直交するスリット状の照射窓2c1が存在する。遮光マスク2dには、円形状の照射孔2d1が存在する。
【0031】
遮光マスク2a、2b及び2cの照射窓2a1、2b1及び2c1のスリット幅は、ゴム発泡体の平均セル径の0.5倍以上、2倍以下であることが好ましい。また、遮光マスク2dの照射窓(円形孔)2d1の直径は、ゴム発泡体の平均セル径の0.5倍以上、2倍以下が好ましい。照射窓2a1、2b1及び2c1のスリット幅及び照射窓2d1の直径がゴム発泡体の平均セル径の0.5倍未満のとき、加工時間が延長したり、ゴム発泡体セルの開口が不十分となる場合がある。逆に、照射窓2a1、2b1及び2c1のスリット幅及び照射窓2d1の直径がゴム発泡体の平均セル径の2倍を超えるとき、ゴム発泡体の表面が荒れる場合がある。
【0032】
照射窓2a1、2b1及び2c1のスリット間の非照射幅、ゴム発泡体の平均セル径の0.5倍以上、照射窓2d1の円形孔間の照射部の間隔は、ゴム発泡体の平均セル径の0.3倍以上であれば、ゴム発泡体表面のシワ発生を抑制できるため好ましい。
【0033】
ここで、ゴム発泡体の平均セル径は、ゴム発泡体を軸に対して垂直方向に輪切し、輪切されたゴム発泡体の外周近傍で、各セルの最大径で切断されていると思われるセルを10個選択し、光学顕微鏡で該セルの直径を測定し、各セルの直径を加算し、加算したセルの個数で除算し算出したものである。また、セルの開口率(%)は、ゴム発泡体表面の軸方向直線上10mm間にある全セルの開口長を光学顕微鏡で測定・加算し、この加算値を測定範囲長で除算し、100倍して算出したものである。
【0034】
なお、遮光マスクのレーザ照射窓形状は、図3に示した遮光マスク2a、2b、2c及び2dの照射窓形状に限らず、レーザ光が通過すれば良く、また、遮光マスクの加工が容易な丸穴、長穴に限らず楕円、多角形穴等でも良い。
【0035】
また、図4では遮光マスク2を使用する例を示したが、ゴム発泡体のセル骨格とセル薄肉部の厚みの比が、即ちセル骨格部の熱容量がセル薄肉部の熱容量より十分大きい場合は、遮光マスク2が無い場合でも、セル薄肉部に対してセル骨格部のアブレーションされる度合が軽微であるため、ゴム発泡体41のセル開口率を増加させることができる。
【0036】
また、図4ではレーザ照射手段として、短パルス照射で一時に比較的大面積のレーザ照射が可能なTEA−CO2レーザ発振器を例示したが、同様の機能を有するレーザ光なら良く、エキシマレーザ発振器も適用可能である。
【0037】
本発明に係る製造方法により得られる発泡ローラは、電子写真装置に用いられるトナー除去・供給ローラ、現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラ等に用いることができる。なお、トナー除去・供給ローラとは、現像ローラと当接し、現像ローラ上に残留する旧トナーを摺擦除去すると同時に、新トナーを現像ローラ上に供給するローラである。
【実施例】
【0038】
[実施例1]
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、「部」は質量基準である。
【0039】
発泡ローラのゴム発泡体の原料として、以下に示すA系原料及びB系原料を用いた。
【0040】
A系原料には、以下の化合物を予め混合したものを用いた。
【0041】
ポリエーテルポリオール(商品名:「FA−908」、三洋化成工業(株)製)90部
ポリマーポリオール(商品名:「POP−31−28」、三井武田ケミカル(株)製)10部
第3級アミン触媒(商品名:「TOYOCAT−ET」、東ソー(株)製)0.10部
第3級アミン触媒(商品名:「TOYOCAT−MR」、東ソー(株)製)0.30部
水(発泡剤)2部
シリコン整泡剤(商品名:「L5366」、日本ユニカー(株)製)1部。
【0042】
また、B系原料には、イソシアネート(商品名:「コロネート1025」、日本ポリウレタン工業(株)製)22部を用いた。
【0043】
まず、成形型の円筒状キャビティの両端部に装着する型駒で棒鋼に無電解ニッケルメッキを施した芯金を支持した。次に、注型機にA系、B系原料を投入し、注型機の混合ヘッドで攪拌し、60℃に予熱された前記成形型に注型・硬化させた。その後脱型し、ローラ端部を突切り、発泡ローラの成形品を得た。得られた発泡ローラの成形品のゴム発泡体の発泡状態を調べた結果、セル開口径の分布、セル開口率は表2に示す通りであった。
【0044】
その後、図1に示す発泡ローラの製造装置及び図4に示すTEA−CO2レーザ照射装置を用いて、前記発泡ローラの成形品のゴム発泡体表面に対してレーザ光を照射した。TEA−CO2レーザ照射装置100には、「IMPACT2500」(商品名、(株)篠崎製作所製)を用いた。レーザ発振器101出口でのレーザ光のサイズは、長さ9mm×幅8mmであり、これを一次遮光マスク102に通してレーザ光のサイズを長さ8mm×幅7mmにカットした。さらに、シリンドリカルレンズ104でゴム発泡体の表面に接するレーザ光1のサイズが、長さ8mm×幅2mmに集光するよう調節し、レーザ光の長さ方向が発泡ローラ4の軸方向と平行になるようにした。レーザ光1のサイズより大きい照射窓範囲を有する遮光マスク2は、図4に示すように発泡ローラ4の軸中心と同心となるように、また、ゴム発泡体の表面までの距離が5mmとなるように配置した。また、遮光マスク2には、図3に示す遮光マスク2aを用いた。遮光マスク2aの照射窓2a1のスリット幅は900μmであり、ゴム発泡体の平均セル径の1.5倍であった。
【0045】
表1に示すレーザ照射条件で、図1に示す製造装置を用いてゴム発泡体表面にレーザを照射したところ、レーザ照射前には図2の41bに示されるような開口ムラがあったのに対し、レーザ照射後には41aに示されるように開口ムラが減少した。また、表2に示すように、レーザ照射後のセル開口径の分布及びセル開口率は共に大幅に改善した。また、レーザ照射前後での発泡ローラの外形の変化及び発泡ローラ表面のシワの発生は認められなかった。本実施例で得られた発泡ローラは、トナー除去・供給ローラとして用いた場合、高い性能を示した。
【0046】
[実施例2]
発泡ローラのゴム発泡体の原料のうち、ウレタン発泡用泡化触媒である第3級アミン触媒(商品名:「TOYOCAT−ET」、東ソー(株)製)の量を、0.10部から0.07部に減量した以外は、実施例1と同一原料、同一条件で成形した。これにより、ゴム発泡体表面にスキン層が形成された発泡ローラの成形品を得た。
【0047】
この発泡ローラの成形品を実施例1と同一条件でレーザ光を照射したところ、表2に示すようにセル開口径の分布及びセル開口率共に大幅に改善した。また、レーザ照射前後での発泡ローラの外形の変化及び発泡ローラ表面のシワの発生は認められなかった。本実施例で得られた発泡ローラは、トナー除去・供給ローラとして用いた場合、高い性能を示した。
【0048】
[実施例3]
実施例1の遮光マスク2aを他の遮光マスク2b、2cの長円の照射窓2b1、2c1に変更する以外実施例1の装置及び加工品を使用し、ゴム発泡体全表面に亘りレーザ光を照射したところ、実施例1と同様の効果が得られた。また実施例1の装置及び加工品を使用し、遮光マスク2dの照射窓2d1の直径を前記長円の幅と同一にした遮光マスクを使用しゴム発泡体全表面に亘りレーザ光を照射したところ、セル開口率は80(%)と僅かに低下したがシワの発生は長円より更に改善した。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る発泡ローラの製造装置を用いた、発泡ローラのゴム発泡体表面へのレーザ照射状態の斜視図である。
【図2】本発明に係る製造方法により製造された発泡ローラのゴム発泡体表面の発泡状態を示す部分拡大図である。
【図3】本発明に係る製造装置に用いる各種遮光マスクを示す斜視図である。
【図4】本発明に係る製造方法に用いるTEA−CO2レーザ照射装置の概略図である。
【図5】本発明に係る製造装置に用いる制御手段の概念図である。
【符号の説明】
【0052】
1 レーザ光
2 遮光マスク
2a 発泡ローラ軸方向に対し傾斜した照射窓を有する遮光マスク
2a1 発泡ローラ軸方向に対し傾斜した照射窓
2b 発泡ローラ軸方向に平行な照射窓を有する遮光マスク
2b1 発泡ローラ軸方向に平行な照射窓
2c 発泡ローラ軸方向に垂直な照射窓を有する遮光マスク
2c1 発泡ローラ軸方向に垂直な照射窓
2d 円形状の照射窓を有する遮光マスク
2d1 円形状の照射窓
3 ローラ回動手段
4 発泡ローラ
5 ローラ移動手段
41 ゴム発泡体
41a レーザ照射前の開口状態
41b レーザ照射後の開口状態
42 芯金
100 レーザ照射装置
101 TEA−CO2レーザ発振器
102 一次遮光マスク
103 反射ミラー
104 シリンドリカルレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金の外周に円筒状のゴム発泡体を型成形する発泡ローラ成形工程と、
成形された該発泡ローラのゴム発泡体外周面にTEA−CO2レーザ光をパルス照射し、少なくとも該ゴム発泡体のセル表面を開口するセル開口工程と、
を含むことを特徴とする発泡ローラの製造方法。
【請求項2】
TEA−CO2レーザ発振器で発生させたレーザ光を発泡ローラのゴム発泡体外周面の照射面形状に整形し、該発泡ローラのゴム発泡体外周面にレーザ光を導くレーザ光照射手段と、
前記発泡ローラの芯金部を支持し、該発泡ローラの芯金を中心に回動させるローラ回動手段と、
前記ローラ回動手段を前記発泡ローラの軸方向に移動させるローラ移動手段と、
前記レーザ光照射手段、前記ローラ回動手段及び前記ローラ移動手段を連動させ、前記発泡ローラのゴム発泡体外周面の全体に亘りレーザ光を逐次パルス照射する制御手段と、
を具備することを特徴とする発泡ローラの製造装置。
【請求項3】
前記レーザ光照射手段と、発泡ローラのゴム発泡体外周面との間に、該ゴム発泡体外周面へのレーザ光の照射を制限するための遮光マスクを有し、
前記遮光マスクには、前記ゴム発泡体の平均セル径の0.5倍以上、2倍以下の幅を有する複数のスリット、或いは、前記ゴム発泡体の平均セル径の0.5倍以上、2倍以下の直径を有する複数の円形孔が存在することを特徴とする請求項2に記載の発泡ローラの製造装置。
【請求項4】
前記スリット間の非照射幅が、前記ゴム発泡体の平均セル径の0.5倍以上であり、
前記円形孔間の非照射幅が、前記ゴム発泡体の平均セル径の0.3倍以上であることを特徴とする請求項3に記載の発泡ローラの製造装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の発泡ローラの製造装置を用いて、発泡ローラを製造することを特徴とする請求項1に記載の発泡ローラの製造方法。
【請求項6】
請求項1又は5に記載の発泡ローラの製造方法により製造される発泡ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−19332(P2010−19332A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180135(P2008−180135)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】