説明

発泡性樹脂組成物及び発泡シート

【課題】 発泡後の着色が起こらず、しかも発泡性に優れたオレフィン系の発泡性樹脂組成物及び発泡シート、例えば壁紙、レザー、床材などに好適な発泡シートを提供することである。
【解決手段】 エチレン系共重合樹脂100重量部に対し、発泡剤2〜10重量部、リン酸エステルにより表面処理された水酸化マグネシウム2〜50重量を含有してなる発泡性樹脂組成物としたことであり、該発泡性樹脂組成物を成形してなる発泡シートとしたことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性樹脂組成物及び発泡シートに関し、更に詳しくは発泡性が良好で、燃焼時に環境を汚染するガスを発生することが無く、難燃性に優れた壁紙、レザー、床材などに好適な発泡性樹脂組成物及びこの組成物を用いた発泡シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、環境や安全の面から、塩化ビニル樹脂の代替として、オレフィン系樹脂を用いた壁紙、例えば特許文献1、2が提案されている。また、オレフィン系樹脂に無機充填剤や難燃剤を高充填しても発泡性が良好な発泡シート、例えば特許文献3、4が提案されている。
【0003】
しかしながらこれらの方法では、発泡時に発泡剤残渣と無機充填剤が作用して起こると考えられる着色という問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平5−200948号公報
【特許文献2】特開平10−17724号公報
【特許文献3】特開2000−26639号公報
【特許文献4】特開2000−230068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の問題点を解決し、特に発泡後の着色が起こらず、しかも発泡性に優れたオレフィン系発泡性樹脂組成物及び発泡シート、例えば壁紙、レザー、床材などに好適な発泡シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明が講じた手段は、エチレン系共重合樹脂100重量部に対し、発泡剤2〜10重量部、表面をリン酸エステル処理した水酸化マグネシウム2〜50重量部を含有してなる発泡性樹脂組成物としたことであり(請求項1)、該発泡性樹脂組成物を成形してなる発泡シートとしたことである(請求項2)。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発泡後の着色を抑えて発泡性に優れたオレフィン系発泡性樹脂組成物及び発泡シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の発泡性樹脂組成物及び発泡シートは、エチレン系共重合樹脂100重量部に対し、発泡剤2〜10重量部、表面をリン酸エステル処理した水酸化マグネシウム2〜50重量部を含有してなる発泡性樹脂組成物であり、該発泡性樹脂組成物を成形する発泡シートである。以下にその詳細を説明する。
【0009】
本発明に使用するエチレン系共重合樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(以下EVAと略す)、エチレン−アクリル酸メチル共重合樹脂(以下EMAと略す)、エチレン−アクリル酸エチル共重合樹脂(以下EEAと略す)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂(以下EMMAと略す)などが挙げられ、これらを単独で使用してもよく、2種以上を複合して使用してもよい。
【0010】
エチレン系共重合樹脂に水酸化マグネシウムを添加すると、発泡性と難燃性が向上する。本発明に使用する水酸化マグネシウムとしては、リン酸エステルで表面処理されていることが必要である。また、水酸化マグネシウムの粒径としては平均粒径0.5〜10μmが好ましく、より好ましくは1〜2μmである。水酸化マグネシウムの添加量は前記エチレン系共重合樹脂100重量部に対し、2〜50重量部であり、好ましくは5〜20重量部である。添加量が2重量部未満であると、発泡性が低下し、20重量部を超える場合、加工性、発泡性が低下する。
【0011】
発泡後の着色は、無機充填剤のなかでも特に金属水酸化物が影響を与えると考えられる。従って、表面処理された水酸化マグネシウムを使用し、発泡剤残渣との作用を防ぐことにより着色を抑えられると考えられる。水酸化マグネシウムの表面処理剤には、リン酸エステル処理、脂肪酸処理、シランカップリング処理などが考えられる。しかしながら脂肪酸処理は、水酸化マグネシウムとの結合が比較的弱いため、熱加工によって外れやすく、効果が得られない。またシランカップリング処理は外れにくいものの、その水酸化マグネシウムを添加した発泡シートは発泡性が悪い。リン酸エステル処理は、処理が外れにくく、発泡シートの発泡性は良好である。従って表面処理剤はリン酸エステル処理に限定される。
【0012】
水酸化マグネシウムの表面処理に使用されるリン酸エステルとしては、リン酸モノエステル、ジエステル、トリエステル、又はこれらの複合物が挙げられ、一般式(1)で示される。
(1)

〔リン酸モノエステル、ジエステルの場合、式中、RはHを表し、RはH、C−C30のアルキル基、C−C30のアリール基を表し、RはC−C30のアルキル基、C−C30のアリール基を表す。また、リン酸トリエステルの場合、式中R、R、RはC−Cのアルキル基、C−C10のアリール基を表す。〕
【0013】
水酸化マグネシウムは他の無機充填剤(以下、無機充填剤は水酸化マグネシウム以外のものを指す)と併用することもできる。無機充填剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、ハイドロタルサイト等の水和金属化合物、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、硫酸バリウム等が挙げられ、単独又は2種以上混合して、水酸化マグネシウムと併用しても良い。無機充填剤の粒径としては、平均粒径0.1〜20μmのものが好ましく、より好ましくは0.5〜10μmである。水酸化マグネシウムと無機充填剤の合計添加量は前記エチレン系共重合樹脂100重量部に対し、30〜100重量部が一般的である。
【0014】
本発明に使用する発泡剤としては、この種の技術分野において周知の熱分解型発泡剤が使用でき、例えばアゾジカルボン酸アミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ系化合物、P,P’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)等のスルホニルヒドラジド化合物、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等のニトロソ化合物などの化学発泡剤が挙げられる。これらは単独で使用しても良く、2種以上を併用することもできる。これらの中で、加工性と安定性の面からアゾジカルボン酸アミドが好ましい。発泡剤の添加量は前記エチレン系共重合樹脂100重量部に対して2〜10重量部であり、2重量部未満の場合は発泡倍率が充分に得られず、10重量部を超える場合には効果が飽和する。発泡剤の分解温度を調整するものとして発泡調整剤が用いられ、例えば金属石鹸、金属酸化物、尿素系化合物、酸無水物、有機酸等の添加剤を単独又は併用して使用することができる。その添加量は0.1〜5重量部程度である。
【0015】
他の添加剤としては、可塑剤、安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、充填剤、難燃剤、抗菌剤、着色剤、消臭剤などが挙げられ、本発明の目的を損なわない範囲でエチレン系共重合樹脂に適宜添加することができる。
【0016】
本発明の発泡性樹脂組成物は、公知の混合装置を使用して混合することができ、その混合装置としては、例えば、バンバリーミキサー、コニーダ、押出機などが挙げられる。また、公知の装置を用いてシート化することができ、例えば、カレンダー装置等のロール加工装置、押出機、インフレーション装置などである。
【0017】
さらに、意匠性を向上させるために、各種の方法で印刷を施したり、エンボス加工してもよい。
【実施例】
【0018】
実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明する。なお、実施例及び比較例の配合部数は、全て重量部である。
【0019】
<実施例1〜2>
表1に示す配合をヘンシェルミキサーで混合した後、温度140℃の逆L型カレンダー成形機を使用し、シート厚み0.1mmにシーティングし未発泡シートを得た。この未発泡シートを0.11mmの裏打ち紙と積層した後、オーブンで220℃、70秒間加熱し発泡させた。この壁紙の発泡後の着色性及び発泡倍率を測定した。その結果を表1に示す。
【0020】
<比較例1〜5>
表1に示す配合を混合した後、実施例1〜2と同様にして壁紙を作製し、同様な測定をしてその結果を表1に表す。
【0021】
実施例、比較例の評価項目、評価方法、評価基準を以下に示す。
<着色性>
JIS Z8722の4(分光測定方法)に準じて測定をこない、JIS Z8730の6.1に準じて赤みを示す値a*を算出し、着色性を評価した。
a*が−0.5未満であれば、目視でほとんど赤みは認識されないが、−0.5以上であれば、目視で赤みが認識される。
○:a*−0.5未満
×:a*−0.5以上
<発泡倍率>
発泡前のシートの厚みと発泡後のシートの厚みを測定し、下記式で発泡倍率を算出した。
発泡倍率が5倍以上あると、発泡後に行うエンボス加工で凹凸模様が入り易くなり意匠性と風合いが良好となる。発泡倍率が3倍以上、5倍未満では、凹凸模様が入りにくくなる傾向にはあるが、意匠性、風合いともに使用できるレベルである。発泡倍率が3倍未満になると、意匠性、風合いがともに劣って使用できなくなる。
○:発泡倍率5倍以上。
△:発泡倍率3倍以上、5倍未満。
×:発泡倍率3倍未満。

【0022】
【表1】

EVA :エチレン酢酸ビニル共重合樹脂
(東ソー製 MFR=1.5、酢酸ビニル含有20%)
水酸化マグネシウム(1): リン酸エステル処理(協和化学製 キスマ5J)
水酸化マグネシウム(2): 無処理(TMG製 ファインマグMO)
水酸化マグネシウム(3): ステアリン酸処理(協和化学工業製 キスマ5A)
水酸化マグネシウム(4): オレイン酸処理(協和化学工業製 キスマ5B)
水酸化マグネシウム(5): シランカップリング処理(神島化学工業製 マグシーズS3)
【0023】
表1から明らかなように、無処理品はもちろんのこと、ステアリン酸、オレイン酸処理品でも着色性は改良されず、また、シランカップリング材では、着色性は改良できるが発泡性におとることになり、リン酸エステルで表面処理された水酸化マグネシウムを使用することにより、発泡後に着色が起こらず発泡性が良好なシートが得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によれば、発泡後の着色を抑えて発泡性に優れたオレフィン系発泡性樹脂組成物及び発泡シートを得られるため、壁紙、レザー、床材等に広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン系共重合樹脂100重量部に対し、発泡剤2〜10重量部、表面をリン酸エステル処理した水酸化マグネシウムを2〜50重量部含有してなることを特徴とする発泡性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の発泡性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする発泡シート。

【公開番号】特開2007−277372(P2007−277372A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104300(P2006−104300)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(000010010)ロンシール工業株式会社 (84)
【Fターム(参考)】