説明

発泡成形体および発泡成形体の製造方法

【課題】耐衝撃性に優れた発泡成形体とその製造方法を提供すること。
【解決手段】全芳香族ポリエステルフィラメント(A−I)100重量部、および収束剤(A−II)0.1〜20重量部を含む全芳香族ポリエステル繊維(A)と、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂である変性ポリオレフィン樹脂(B)を含有する樹脂成分(I)とを含有する全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物からなり、発泡倍率が1.3倍〜5倍の範囲内である発泡成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全芳香族ポリエステルフィラメントおよび収束剤を含有する全芳香族ポリエステル繊維と、変性ポリオレフィン樹脂を含有する樹脂成分とを含有する全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物からなる発泡成形体、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂の成形品の機械物性や耐熱性を向上させるための手段として、成形する樹脂に強化繊維を含有させることが広く採用されている。また、熱可塑性樹脂成形品の軽量化のため、発泡剤を用いる射出発泡成形方法が採用されている。例えば、特許文献1には、繊維含有熱可塑性樹脂から化学発泡剤を用いる射出発泡方法により製造した繊維強化熱可塑性樹脂軽量成形品が開示されている。
【特許文献1】特開平10−119079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、専ら化学発泡剤を用いる射出発泡成形法で製造された従来の繊維強化熱可塑性樹脂軽量成形品については、耐衝撃性についての更なる改良の要求があった。
【0004】
以上の課題に鑑み、本発明は、耐衝撃性に優れた発泡成形体とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、全芳香族ポリエステルフィラメント(A−I)100重量部、および収束剤(A−II)0.1〜20重量部を含む全芳香族ポリエステル繊維(A)と、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂である変性ポリオレフィン樹脂(B)を含有する樹脂成分(I)とを含有する全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物からなり、発泡倍率が1.3倍〜5倍の範囲内である発泡成形体
に関する。
【0006】
また、本発明は、発泡成形体の製造方法であって、下記(1)〜(6)の工程を含む方法に関する。
(1)全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物を射出成形機のシリンダ内で溶融させて、溶融された樹脂組成物を得る工程(ここで、前記全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物は、全芳香族ポリエステルフィラメント(A−I)100重量部、および収束剤(A−II)0.1〜20重量部を含む全芳香族ポリエステル繊維(A)と、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂である変性ポリオレフィン樹脂(B)を含有する樹脂成分(I)とを含有する全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物である。)
(2)前記射出成形機の前記シリンダ内に物理発泡剤を供給して、前記溶融された樹脂組成物に前記物理発泡剤を溶解させて、溶融された発泡性樹脂組成物を得る工程
(3)雌雄一対の金型にて形成された金型キャビティに該キャビティの容積以下の体積の前記溶融された発泡性樹脂組成物を射出供給する工程
(4)供給された前記発泡性樹脂組成物を前記金型キャビティ内で発泡させる工程
(5)発泡させた前記樹脂組成物を前記金型キャビティ内で冷却し、固化させて発泡成形体を与える工程
(6)前記両金型を開き前記発泡成形体を取り出す工程
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐衝撃性に優れた発泡成形体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係る発泡成形体は全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物からなる発泡成形体である。
【0009】
[樹脂組成物]
<全芳香族ポリエステル繊維(A)>
全芳香族ポリエステル繊維(A)は、全芳香族ポリエステルフィラメント(A−I)および収束剤(A−II)を含む繊維であり、全芳香族ポリエステルフィラメント(A−I)の表面に、収束剤(A−II)を付着させて得られた表面処理繊維である。全芳香族ポリエステルフィラメント(A−I)に収束剤を付着させる方法は、特に限定されないが、例えば、収束剤を入れた槽にフィラメントを浸漬し、ニップ後に熱風炉、ホットローラーあるいはホットプレートで乾燥する方法などが挙げられる。
【0010】
全芳香族ポリエステル繊維フィラメント(A−I)は、溶融相において光学的異方性を示す全芳香族ポリエステルからなる繊維である。光学的異方性は、例えば全芳香族ポリエステルをホットステージに載せ窒素雰囲気下で加熱し、試料の透過光を観察することにより認定できる。全芳香族ポリエステルは芳香族ヒドロキシカルボン酸のみからなる反復構成単位、および芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸からなる群から選ばれる2種以上が反応して得られる化合物の反復構成単位を主成分とするものであるが、特に下記式(P)および下記式(Q)で表される反復構成単位の双方を含有するものであることが好ましく、中でも(Q)の成分の量が4〜45モル%の範囲である芳香族ポリエステルであることが更に好ましい。
【0011】
[化1]

本発明で補強繊維として用いられる全芳香族ポリエステル繊維の繊維径は3〜200μmであることが好ましく、より好ましくは5〜20μmである。繊維径が3μmより小さいと、十分な補強性能が得られない場合がある。また繊維径が200μmを超えると、十分な補強性能が得られない場合がある。
【0012】
収束剤(A−II)としては、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、澱粉、植物油、変性ポリオレフィン等が挙げられる。中でも、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、変性ポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリオレフィン樹脂、変性ポリオレフィン樹脂がより好ましく、ポリプロピレン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂が更に好ましい。変性ポリオレフィンとしては、例えば、酸変性ポリオレフィンが挙げられる。なお、収束剤として、1種類の樹脂を用いてもよく、2種以上の樹脂を併用してもよい。
【0013】
全芳香族ポリエステルフィラメント(A−I)に対する、収束剤(A−II)をの付与量は、全芳香族ポリエステルフィラメント(A−1)100重量部に対し、収束剤(A−II)を0.1〜20重量部である。当該付与量は、好ましくは0.1〜18重量部であり、より好ましくは0.2〜16重量部である。収束剤(A−II)の付与量が0.1重量部末満では、十分な収束性が得られないために、後述するプルトルージョン法でペレット状樹脂組成物を製造する際に、全芳香族ポリエステル繊維の錘れやタクレが発生し、製造が困難となる。また、付与量が0.1重量部未満では、全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物を成形した場合に十分な強度物性が得られない。収束剤(A−II)の付与量が20重量部を超える場合には、製品の強度が損なわれることがある。
【0014】
収束剤(A−1I)には、全芳香族ポリエステルフィラメント(A−I)と樹脂成分(I)との濡れ性や接着性等を改良するために、収束剤(A−II)に表面処理剤を配合してもよい。この表面処理剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタネ−ト系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、クロム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤、ボラン系カップリング剤等が挙げられ、好ましくはシラン系カップリング剤またはチタネート系カップリング剤であり、より好ましくはシラン系カップリング剤である。
【0015】
前記のシラン系カップリング剤としては、例えば、トリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、好ましくはγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン類である。
【0016】
収束剤(A−II)には、表面処理剤以外にも、パラフインワックス等の潤滑剤を配合することもできる。
【0017】
(樹脂成分(I))
樹脂成分(I)は、上述のように、ポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂である変性ポリオレフィン樹脂(B)を含有する。変性ポリオレフィン樹脂(B)の原料となるポリオレフィン樹脂は、オレフィンの単独重合体または2種類以上のオレフィンの共重合体からなる樹脂である。変性ポリオレフィン樹脂(B)は、換言すれば、オレフィンの単独重合体または2種類以上のオレフィンの共重合体に、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体を反応させて生成した樹脂であって、分子中に不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸誘導体に由来する部分構造を有している樹脂である。変性ポリオレフィン樹脂(B)の例として、次の(B−a)、(B−b)および(B−c)の変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。変性ポリオレフィン樹脂(B)として、下記(B−a)、(B−b)および(B−c)の変性ポリオレフィン樹脂の中から選択される1種以上を使用することができる。
【0018】
(B−a) オレフィンの単独重合体に、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体をグラフト重合して得られる変性ポリオレフィン樹脂
(B−b) 2種以上のオレフィンを共重合して得られる共重合体に、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体をグラフト重合して得られる変性ポリオレフィン樹脂
(B−c) オレフィンを単独重合した後に2種以上のオレフィンを共重合して得られるブロック共重合体に、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体をグラフト重合して得られる変性ポリオレフィン樹脂
変性ポリオレフィン樹脂(B)は、溶液法、バルク法、溶融混練法等によって製造することができ、2種以上の方法を併用してもよい。
【0019】
溶液法、バルク法、溶融混練法等の具体的な例としては、例えば、“実用ポリマ−アロイ設計”(井出文雄著、工業調査会(1996年発行))、Prog. Polym. Sci., 24, 81−142(1999)、特開2002−308947号公報、特開2004−292581号公報、特開2004−217753号公報、特開2004−217754号公報等に記載されている方法が挙げられる。
【0020】
変性ポリオレフィン樹脂(B)としては、市販されている変性ポリオレフィン樹脂を用いてもよく、例えば、商品名モディパー(日本油脂(株)製)、商品名ブレンマ−CP(日本油脂(株)製)、商品名ボンドファースト(住友化学(株)製)、商品名ボンダイン(住友化学(株)製)、商品名レクスパール(目本ポリエチレン(株)製)、商品名アドマー(三井化学(株)製)、商品名モディックAP(三菱化学(株)製)、商品名ポリボンド(クロンプトン(株)製)、商品名ユーメックス(三洋化成(株)製)等が挙げられる。
【0021】
変性ポリオレフィン樹脂(B)の製造に用いられる不飽和カルボン酸としては、炭素数3以上の不飽和カルボン酸、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。また、不飽和カルボン酸誘導体としては、不飽和カルボン酸の酸無水物、エステル化合物、アミド化合物、イミド化合物、金属塩等が挙げられ、不飽和カルボン酸誘導体の具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸モノアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、メタクリル酸ナトリウム等が挙げられる。不飽和カルボン酸によるポリオレフィンの変性には、該不飽和カルボン酸の源として、クエン酸やリンゴ酸のように、ポリオレフィンにグラフトする工程で脱水して不飽和カルボン酸を生じるものを用いることが出来る。不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸誘導体として、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸グリシジル、無水マレイン酸、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルである。
【0022】
変性ポリオレフィン樹脂(B)として、好ましくは、次の(B−d)ある。
(B−d) エチレンおよび/またはプロピレンのオレフィンに由来する単位を主な構成単位として含有するポリオレフィン樹脂に、無水マレイン酸、メタクリル酸グリシジルまたはメタクリル酸2−ヒドロキシエチルをグラフト重合することによって得られる変性ポリオレフィン樹脂
【0023】
変性ポリオレフィン樹脂(B)の、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体に由来する構成単位の含有量は、衝撃強度、疲労特性、剛性等の機械的強度という観点から、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは、0.1〜5重量%、さらに好ましくは、0.2〜2重量%、特に好ましくは、0.4〜1重量%である。なお、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体に由来する構成単位の含有量は、赤外吸収スペクトルまたはNMRスペクトルによって、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体に基づく吸収を定量して算出した値である。
【0024】
全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物の剛性や衝撃強度等の機械的強度という観点や、全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物の繊維束への樹脂成分の含浸性の観点から、全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物中の、全芳香族ポリエステル繊維(A)および樹脂成分(I)の含有量は、それぞれ、1〜99.5重量%および0.5〜99重量%であることが好ましく、5〜99.5重量%および0.5〜95重量%であることがより好ましく、10〜99重量%および1〜90重量%であることが更に好ましく、20〜99重量%および1〜80重量%であることが特に好ましい。
【0025】
樹脂成分(I)は、ポリオレフィン樹脂(C)を更に含有することができる。ポリオレフィン樹脂(C)は、オレフィンの単独重合体または2種類以上のオレフィンの共重合体からなる樹脂であり、変性ポリオレフィン樹脂、例えば不飽和カルボン酸や不飽和カルボン酸誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂はこれに該当しない。具体的には、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂(C)として好ましくは、ポリプロピレン樹脂である。ポリオレフィン樹脂(C)は、単一のポリオレフィン樹脂でもよく、2種以上のポリオレフィン樹脂の混合物でもよい。
【0026】
ポリプロピレン樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム其重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレンを単独重合してプロピレン単独重合体を生成させた後に、該プロピレン単独重合体の存在下にエチレンとプロピレンを共重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体等が挙げられる。耐熱性の観点から、ポリプロピレン樹脂として好ましくは、プロピレン単独重合体、プロピレンを単独重合した後にエチレンとプロピレンを共重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体である。
【0027】
プロピレン−エチレンランダム共重合体の、エチレンに由来する構成単位の含有量(ただし、プロピレンとエチレンの合計量を100モル%とする)、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体の、α−オレフィンに由来する構成単位の含有量(ただし、プロピレンとα−オレフィンの合計量を100モル%とする)、プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体の、エチレンとα−オレフィンに由来する構成単位の合計含有量(ただし、プロピレンとエチレンとα−オレフィンの合計量を100モル%とする)は、いずれも50モル%未満である。前記エチレンの含有量、α−オレフィンの含有量およびエチレンとα−オレフィンの合計含有量は、“新版 高分子分析ハンドブック”(日本化学会、高分子分析研究懇談会編 紀伊国屋書店(1995))に記載されているIR法またはNMR法を用いて測定される。ポリエチレン樹脂としては、例えば、エチレン単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体等が挙げられる。
【0028】
エチレン−プロピレンランダム共重合体の、プロピレンに由来する構成単位の含有量(ただし、エチレンとプロピレンの合計量を100モル%とする)、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体に含有されるα−オレフィンの含有量(ただし、エチレンとα−オレフィンの合計量を100モル%とする)、エチレン−プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体に含有されるプロピレンとα−オレフィンの合計含有量(ただし、エチレンとプロピレンとα−オレフィンの合計量を100モル%とする)は、いずれも50モル%未満である。
【0029】
α−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が挙げられる。好ましくは、炭素数4〜8のα−オレフィン(例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン)である。ポリオレフィン樹脂(C)は、溶液重合法、スラリー重合法、バルク重合法、気相重合法等によって製造することができる。また、これらの重合法を単独で用いてもよく、2種以上の重合法を組み合わせてもよい。
【0030】
ポリオレフィン樹脂(C)のより具体的な製造方法の例としては、例えば、“新ポリマー製造プロセス”(佐伯康治編集、工業調査会(1994年発行))、特開平4−323207号公報、特開昭61−287917号公報等に記載されている重合法が挙げられる。ポリオレフィン樹脂(C)の製造に用いられる触媒としては、マルチサイト触媒やシングルサイト触媒が挙げられる。好ましいマルチサイト触媒として、チタン原子、マグネシウム原子およびハロゲン原子を含有する固体触媒成分を用いて得られる触媒が挙げられ、また、好ましいシングルサイト触媒として、メタロセン触媒が挙げられる。ポリオレフィン樹脂(C)としてのポリプロピレン樹脂の製造に用いられる好ましい触媒として、上記のチタン原子、マグネシウム原子およびハロゲン原子を含有する固体触媒成分を用いて得られる触媒が挙げられる。
【0031】
ポリオレフィン樹脂(C)のメルトフローレート(MFR)は、成形体中における全芳香族ポリエステル繊維(A)の分散性、成形体の外観不良や衝撃強度という観点から、好ましくは1〜500g/10分であり、より好ましくは10〜400g/10分であり、さらに好ましくは20〜300g/10分であり、一層好ましくは50〜200g/10分である。なお、MFRは、ASTM D1238に従い、230℃、21.2N荷重で測定した値である。
【0032】
ポリオレフィン樹脂(C)としてのプロピレン単独重合体のアイソタクチックペンタッド分率は、好ましくは0.95〜1.0、より好ましくは0.96〜1.0、さらに好ましくは0.97〜1.0である。アイソタクチックペンタッド分率とは、A. ZambelliらによってMacromolecules, 第6巻, 第925頁(1973年)に発表されている方法、すなわち13C−NMRを使用して測定されるプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。ただし、NMR吸収ピ−クの帰属は、Macromolecules, 第8巻, 第687頁(1975年)に基づいて行う。
【0033】
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂(C)が、プロピレンを単独重合した後にエチレンとプロピレンを共重合して得られるプロピレンブロック共重合体の場合、前記プロピレン単独重合体部のアイソタクチックペンタッド分率は、好ましくは0.95〜1.0、より好ましくは0.96〜1.0であり、さらに好ましくは0.97〜1.0である。
【0034】
樹脂成分(I)がポリオレフィン樹脂(C)を含む場合の、樹脂成分(I)中の変性ポリオレフィン樹脂(B)の含有量およびポリオレフィン樹脂(C)の含有量は、全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物の剛性や衝撃強度等の機械的強度という観点や、全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物の繊維束への樹脂成分の含浸性の観点から、それぞれ、0.5〜40重量%および60〜99.5重量%であることが好ましく、0.5〜30重量%および70〜99.5重量%であることがより好ましく、1〜20重量%および80〜99重量%であることが更に好ましい。
【0035】
樹脂成分(I)がポリオレフィン樹脂(C)を含む場合の、全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物中の全芳香族ポリエステル繊維(A)の含有量および樹脂成分(I)の含有量は、全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物の剛性や衝撃強度等の機械的強度という観点や、全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物の成形品の外観の観点から、それぞれ、1〜70重量%および30〜99重量%であることが好ましく、5〜68重量%および32〜95重量%であることがより好ましく、10〜65重量%および35〜90重量%であることが更に好ましく、15〜60重量%および40〜85重量%であることが特に好ましく、20〜55重量%および45〜80重量%であることが最も好ましい。
【0036】
本発明の樹脂組成物の製造で用いられる全芳香族ポリエステル繊維(A)の重量平均繊維長は、得られる樹脂組成物の剛性や衝撃強度等の機械的強度という観点や、樹脂組成物の製造および成形の容易さという観点から、好ましくは2〜50mmであり、より好ましくは3〜20mmであり、特に好ましくは4〜20mmである。
【0037】
全芳香族ポリエステル繊維(A)の前記重量平均繊維長は、本発明の発泡成形体を構成している全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物中における長さである。全芳香族ポリエステル繊維(A)の重量平均繊維長は、溶媒抽出など公知の技術により、全芳香族ポリエステル繊維(A)を、全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物から回収した後、特開2002−5924号公報に記載されている方法(ただし、灰化工程は除く)により、回収した全芳香族ポリエステル繊維(A)を測定した値である。
【0038】
樹脂成分(I)には、1種または複数種のエラストマーを配合してもよい。エラストマーとしては、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、PVC系エラストマー等が挙げられる。
【0039】
本発明の発泡成形体の全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物には、一般に、ポリオレフィン樹脂に添加される公知の物質、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤等の安定剤、気泡防止剤、難燃剤、難燃助剤、分散剤、帯電防止剤、滑剤、シリカ等のアンチブロッキング剤、染料や顔料等の着色剤、可塑剤、造核剤や結晶化促進剤等を配合してもよい。ガラスフレーク、マイカ、ガラス粉、ガラスビーズ、タルク、クレー、アルミナ、カーボンブラック、ウォラストナイト等の板状、粉粒状、ウィスカー状の無機化合物等を配合してもよい。
【0040】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の発泡成形体を構成する樹脂組成物の製造方法としては、例えば、次の(1)〜(3)の方法等が挙げられる。
(1) 各成分の全てを混合して混合物とした後、その混合物を溶融混練する方法。
(2) 全成分を逐次添加することにより混合物を得た後、その混合物を溶融混練する方法。
(3) プルトルージョン法。
上記の(1)または(2)の方法において、溶融混練する混合物を得る方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、ブレンダー等によって混合する方法が挙げられる。そして、溶融混練する法としては、バンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダープラストグラフ、一軸または二軸押出機等によって溶融混練する方法が挙げられる。
【0041】
本発明の発泡成形体を構成する樹脂組成物はプルトルージョン法で製造することができる。プルトルージョン法は、樹脂組成物の製造の容易さ、得られる成形体の剛性と衝撃強度等の機械的強度や制振特性の観点から好ましい。プルトルージョン法とは、基本的には連続した繊維束を引きながら、繊維束に樹脂を含浸させる方法であり、例えば、次の(1)〜(3)の方法等が挙げられる。
(1) 樹脂成分と溶媒からなるエマルジョン、サスペンジョンあるいは溶液を入れた含浸槽の中に繊維束を通し、繊維束に該エマルジョン、サスペンジョンまたは溶液を含浸させた後、溶媒を除去する方法、
(2) 樹脂成分の粉末を繊維束に吹き付けたのち、または、樹脂成分の粉末を入れた槽の中に繊維束を通し繊維に樹脂成分粉末を付着させたのち、該粉末を溶融して繊維束に樹脂成分を含浸させる方法、
(3) クロスヘッドの中に繊維束を通しながら、押出機等からクロスヘッドに溶融樹脂成分を供給し、繊維束に該樹脂成分を含浸させる方法。
【0042】
本発明の発泡成形体を構成する樹脂組成物は、上記(3)のクロスヘッドを用いるプルトルージョン法、より好ましくは、特開平3−272830号公報等に記載されているクロスヘッドを用いるプルトルージョン法で製造することが好ましい。
【0043】
上記のプルトルージョン法において、樹脂成分の含浸操作は1段で行っても良く、2段以上に分けて行っても良い。また、プルトルージョン法によって製造された樹脂組成物ペレットと、溶融混練法によって製造された樹脂組成物ペレットをブレンドしても良い。
【0044】
本発明の発泡成形体の全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物を、射出成形に適用した場合、射出成形における金型キャビティへの充填しやすさ、強度が高い成形品が得られるという観点から、プルトルージョン法で製造された樹脂組成物ペレットの長さは、2〜50mmであることが好ましい。全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物のより好ましい長さは3〜20mmであり、特に好ましい長さは5〜15mmである。樹脂組成物ペレットの全長が2mm未満の場合、全芳香族ポリエステル繊維(A)を含有していない樹脂成分と比較して、剛性、耐熱性、衝撃強度および制振特性の改良効果が低いことがある。また、樹脂組成物ペレットの全長が50mmを超えた場合、成形が困難となることがある。
【0045】
前記ペレット状の本発明の全芳香族ポリエステル紙維含有ポリオレフィン樹脂組成物は、含有される全芳香族ポリエステル繊維(A)の重量平均繊維長とペレット状の全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物の全長は等しい。全芳香族ポリエステル繊維(A)とペレット状の全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物の全長が等しいということは、ペレットの長さとそのペレット中に含有される全芳香族ポリエステル繊維(A)の長さとが等しい、とは、ペレットに含有され全芳香族ポリエステル繊維(A)の重量平均繊維長が、ペレットの全長の90〜110%の範囲内にあることをいう。
【0046】
プルトルージョン法で製造されたペレットでは、全芳香族ポリエステル繊維(成分(A))は、通常、互いに平行に配列している。
【0047】
[発泡成形体の製造方法]
上記の樹脂組成物から発泡成形体を製造する際には、射出発泡成形を用いる。射出発泡成形としては、下記(1)〜(6)の工程を含む方法。
(1) 全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物を射出成形機のシリンダ内で溶融させて、溶融された樹脂組成物を得る工程(ここで、前記全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物は、全芳香族ポリエステルフィラメント(A−I)100重量部、および収束剤(A−II)0.1〜20重量部を含む全芳香族ポリエステル繊維(A)と、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂である変性ポリオレフィン樹脂(B)を含有する樹脂成分(I)とを含有する全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物である。)
(2) 前記射出成形機の前記シリンダ内に物理発泡剤を供給して、前記溶融された樹脂組成物に前記物理発泡剤を溶解させて、溶融された発泡性樹脂組成物を得る工程
(3) 雌雄一対の金型にて形成された金型キャビティに該キャビティの容積以下の体積の前記溶融された発泡性樹脂組成物を射出供給する工程
(4) 供給された前記発泡性樹脂組成物を前記金型キャビティ内で発泡させる工程
(5) 発泡させた前記樹脂組成物を前記金型キャビティ内で冷却し、固化させて発泡成形体を与える工程
(6) 前記両金型を開き前記発泡成形体を取り出す工程
【0048】
射出発泡成形方法において、溶融樹脂組成物に物理発泡剤を溶融する方法としては、例えば、シリンダ中で溶融された樹脂組成物に後述する気体状態または超臨界状態の物理発泡剤を注入する方法、液体状態のプランジャーポンプ等で注入する方法等が挙げられる。
【0049】
射出発泡成形において、溶融発泡性樹脂組成物を発泡させる方法は、特に限定されるものでない。例えば、所謂コアバック成形法のように、キャビティ壁面を後退させてキャビティ容積を拡大することにより、発泡剤由来のガスを膨張させキャビティ内に充填された溶融状樹脂組成物を発泡させる方法が挙げられる。
キャビティへの溶融発泡性樹脂組成物の注入量は、注入終了直後の時点でキャビティ全体が該溶融発泡性樹脂組成物で充満される量であることが好ましい。
【0050】
射出発泡成形における射出方法は、単軸射出、多軸射出、高圧射出、低圧射出、プランジャーを用いる射出方法等が挙げられる。
【0051】
射出発泡成形は、ガスアシスト成形、メルトコア成形、インサート成形、コアバック成形、2色成形等の成形方法と組み合して行ってもよい。
本熱可塑性樹脂発泡成形体の形状は、如何なる形状でもよい。
【0052】
射出発泡成形における温度としては、射出成形機のシリンダ温度が170℃〜300℃、好ましくは180℃〜280℃であり、さらに好ましくは200℃〜250℃であり、キャビティ温度が0℃〜100℃、好ましくは5℃〜60℃、より好ましくは20℃〜50℃である。
【0053】
成形時の背圧は1MPa〜30MPa、好ましくは5MPa〜20MPa、より好ましくは6〜15MPaである。背圧をこのような範囲とすることにより、溶融状樹脂組成物がシリンダ内で発泡せずに発泡剤を溶解させることができる。
【0054】
本発明の発泡成形体の製造に好ましく用いられる発泡剤は物理発泡剤である。
【0055】
物理発泡剤としては、例えば、窒素、二酸化炭素等の不活性ガス、ブタン、ペンタン等の揮発性有機化合物などが挙げられる。2種以上の物理発泡剤を併用してもよい。
【0056】
本発明で用いられる発泡剤は、不活性ガスであることが好ましい。不活性ガスは、発泡させる樹脂組成物に対し反応性を示さず、樹脂を劣化させる恐れのない、常温常圧でガス状の無機物質であることが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ネオン、ヘリウム、酸素等が挙げられる。安価、安全性という観点から、二酸化炭素、窒素、これらの混合物が好ましく用いられる。発泡剤として超臨界状態の不活性ガスを用いることは、樹脂組成物への溶解性、拡散性という観点からより好ましい。
【0057】
発泡剤の添加量は、上記樹脂組成物100質量部に対し、0.3質量部〜10質量部、好ましくは0.6質量部〜5質量部、より好ましくは0.6質量部〜4質量部である。
【0058】
発泡剤には化学発泡剤を加えてもよく、適用可能な化学発泡剤としては、無機系化学発泡剤や有機系化学発泡剤などが挙げられる。
【0059】
無機系化学発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩、炭酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0060】
有機系化学発泡剤としては、例えば、ポリカルボン酸、アゾ化合物、スルホンヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、イソシアネート化合物などが挙げられる。
【0061】
ポリカルボン酸としては、例えば、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、フタル酸などが挙げられる。
【0062】
本発明に係る発泡成形体の発泡倍率は、樹脂組成物の密度を発泡成形体の密度で除した値であり、1.3倍〜5倍であることが好ましく1.5倍〜3.5倍であることがより好ましい。
【0063】
本発明の発泡成形体に含有される表面処理繊維(A)の重量平均繊維長は2〜50mmであり、好ましくは5〜20mm、より好ましくは5〜12mmである。
【実施例】
【0064】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0065】
実施例又は比較例では、以下に示した樹脂を用いた。
(1)全芳香族ポリエステル繊維(A−1)
全芳香族ポリエステルフィラメント(株式会社クラレ製「商品名:ベクトランHT1670/600−T506ME(繊維径:16μm)」)(A−I)にカルボン酸変性ポリプロピレンエマルジョン(東邦化学製「商品名:HYTEC P−6000」)(A−II)を5重量部付与して得たもの。
(2)全芳香族ポリエステル繊維(A−2)
全芳香族ポリエステルフィラメント(株式会社クラレ製「商品名:ベクトランHT1670/600−T506ME(繊維径:16μm)」)(A−I)に収束剤(A−II)を付与しなかったもの。
【0066】
(3)変性ポリオレフィン樹脂(B)
特開2004−197068公報の実施例1(米国特許出願公開第2004/0002569号に記載された実施例1がこれに対応する)に記載された方法に従って作成した無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂。
MFR:60g/10分
無水マレイン酸グラフト量:0.6重量%
(4)ポリオレフィン樹脂(C)
住友化学株式会社製プロピレン単独重合体「商品名:U501E1」
MFR:120g/10分
(5)ガラス繊維強化ポリプロピレン樹脂(D)
無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(MFR:60g/10分、無水マレイン酸グラフト量:0.6重量%)を2.5重量%、ガラス繊維(繊維径:17μm)を50重量%、プロピレン単独重合体(MFR:100g/10分)を47重量%、硫黄系酸化防止剤(住友化学株式会社製 商品名:スミライザーTPM)を0.3重量%、フェノール系酸化防止剤(チバジャパン社製 商品名:イルガノックス1010)を0.1重量%、フェノール系酸化防止剤(チバジャパン社製 商品名:イルガノックス1330)を0.1重量%とした組成で、特開平3−121146号公報に記載されている方法によって、長さ9mmのガラス繊維強化ポリプロピレン樹脂ペレットを作成した。なお含浸温度は270℃、引き取り速度は13m/分であった。

【0067】
[評価方法]
(1)メルトフローレート(MFR)
JIS K7210に準拠して、温度230℃、荷重21.2Nなる条件で測定した。
【0068】
(2)密度
発泡成形体の密度は、比重計(ミラージュ貿易株式会社製、電子比重計 EW−200SG)で該発泡成形体の比重を測定し、純水の密度を1.0g/cm3として求めた。樹脂組成物の密度も、同様の方法で測定した。
【0069】
(3)発泡倍率
発泡成形体の発泡倍率は、上記の密度測定法により測定された樹脂組成物の密度および発泡成形体の密度について、該樹脂組成物の密度を該発泡成形体の密度で除して求めた。
【0070】
(4)衝撃値
発泡成形体の衝撃値はHIGH RATE IMPACT TESTER(Reometrics.Inc製)により、測定温度:23℃、ダート径:1/2インチ、速度:5m/secで、内径が3インチのリングにより固定したサンプルを打ち抜き、変位と荷重の波形を測定した。その後、打ち抜きに要するエネルギー値を算出し、これを「衝撃値」とした。
【0071】
〔実施例1〕
評価する発泡成形体を次の方法で製造した。
特開平3−121146号公報に記載されている方法に準じて、表1に記載した組成で、繊維含有量が29.3重量%であり、ペレット長が9mmの繊維強化ペレットを作成した。
得られたペレットを用い、エンゲル社製射出成形機 ES2550/400HL−MuCell(型締力400トン)、寸法が290mm×370mm、高さ45mm、厚み1.5mmtの箱型形状(ゲート構造:バルブゲート、成形体中央部分)のキャビティを有する雌雄一対の金型を用いて発泡成形を実施した。発泡剤である窒素ガスを前記射出成形機のシリンダ内に10MPaに加圧して供給した(発泡剤注入量 充填する樹脂組成物100重量部に対し0.9重量部)。成形温度250℃、型温50℃で、金型内にフル充填するように発泡性樹脂組成物を射出し、射出完了後から4秒が経過した後、一方の金型の金型キャビティ壁面を2mm後退させてキャビティの容積を増加させて前記発泡性樹脂組成物を発泡させ、次いで発泡樹脂組成物を冷却し、固化して発泡成形体を得た。得られた発泡成形体を評価し、結果を表1に示す。
【0072】
〔実施例2〕
繊維含有量が28重量%、ペレット長が5mmであること以外は実施例1と同様の方法で発泡成形体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0073】
〔比較例1〕
射出完了後にキャビティ内の容積を増加させずに溶融樹脂を発泡させた以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0074】
〔比較例2〕
射出完了後にキャビティ内の容積を増加させずに溶融樹脂を発泡させた以外は、実施例2と同様にして発泡成形体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0075】
〔比較例3〕
用いた繊維が(A−2)、繊維含有量が26重量%であること以外は実施例1と同様の製造方法で発泡成形体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0076】
〔比較例4〕
樹脂としてガラス長繊維強化ポリプロピレン(D)のペレットを用いた以外は実施例1と同様の方法で発泡成形体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0077】
〔比較例5〕
射出完了後にキャビティ内の容積を増加させずに溶融樹脂を発泡させた以外は、実施例4と同様にして発泡成形体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0078】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
全芳香族ポリエステルフィラメント(A−I)100重量部、および収束剤(A−II)0.1〜20重量部を含む全芳香族ポリエステル繊維(A)と、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂である変性ポリオレフィン樹脂(B)を含有する樹脂成分(I)と、
を含有する全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物からなり、発泡倍率が1.3倍〜5倍の範囲内であることを特徴とする発泡成形体。
【請求項2】
前記樹脂成分(I)が、さらに、ポリオレフィン樹脂(C)を含有し、前記樹脂成分(I)中の変性ポリオレフィン樹脂(B)およびポリオレフィン樹脂(C)の含有量が、それぞれ、0.5〜40重量%および60〜99.5重量%であり、前記全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物中の、全芳香族ポリエステル繊維(A)および前記樹脂成分(I)の含有量が、それぞれ、1〜70重量%および30〜99重量%であることを特徴とする請求項1に記載の発泡成形体。
【請求項3】
収束剤(A−II)が、ポリプロピレン樹脂および/または変性ポリプロピレン樹脂である、請求項1または2に記載の発泡成形体。
【請求項4】
発泡成形体に含まれる全芳香族ポリエステル繊維(A)の重量平均繊維長が2〜50mmである請求項1〜3いずれかに記載の発泡成形体。
【請求項5】
発泡成形体の製造方法であって、下記(1)〜(6)の工程を含む方法。
(1)全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物を射出成形機のシリンダ内で溶融させて、溶融された樹脂組成物を得る工程(ここで、前記全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物は、全芳香族ポリエステルフィラメント(A−I)100重量部、および収束剤(A−II)0.1〜20重量部を含む全芳香族ポリエステル繊維(A)と、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂である変性ポリオレフィン樹脂(B)を含有する樹脂成分(I)とを含有する全芳香族ポリエステル繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物である。)
(2)前記射出成形機の前記シリンダ内に物理発泡剤を供給して、前記溶融された樹脂組成物に前記物理発泡剤を溶解させて、溶融された発泡性樹脂組成物を得る工程
(3)雌雄一対の金型にて形成された金型キャビティに該キャビティの容積以下の体積の前記溶融された発泡性樹脂組成物を射出供給する工程
(4)供給された前記発泡性樹脂組成物を前記金型キャビティ内で発泡させる工程
(5)発泡させた前記樹脂組成物を前記金型キャビティ内で冷却し、固化させて発泡成形体を与える工程
(6)前記両金型を開き前記発泡成形体を取り出す工程

【公開番号】特開2009−255570(P2009−255570A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78935(P2009−78935)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】