説明

発泡成形用金型

【課題】穴形状を利用した発泡成形用金型を適用することにより、金型内の意匠面のエアを効率良く吸引して金型外に排気することができるようにする。
【解決手段】本発明の発泡成形用金型は、可動型3を有する開閉可能な金型に発泡成形用のキャビティ14を形成し、このキャビティ14内に意匠面を設定して、カウンタープレッシャ法を適用することにより溶融樹脂をキャビティ14に供給し、溶融樹脂の発泡成形を行なうものである。発泡成形用金型は、キャビティ14内を意匠面まで貫通する突出し用金型ピン8を設け、この金型ピン8の先端に多孔質金属部材10をキャビティ14内に露出可能に設け、可動型3のコアバック時に、多孔質金属部材10が露出し、意匠面側キャビティ14a内に残る気体を多孔質金属部材10から金型ピン8内を通して金型1外に排気して溶融樹脂を発泡成形し、発泡成形品に穴形状を形成する構成としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出発泡成形を適用して樹脂製品の製作を行なう場合に成形時の外観を向上させる技術に係り、特にカウンタープレッシャ法およびその後のエア吸引を適用して、スワールマークや、あばた(痘痕)等による外観不良の発生を防止する発泡成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内装部品等には、開口部(穴形状)が形成される多くの部品が存在する。例えばドアリムボードには、装飾が施されたドアトリムボードを固定するための穴形状や、ドアトリムオーナメント、アームレスト、ポケットおよびインサイドハンドル等を取付けるための、多くの穴形状が存在し,これらの部品には所定の剛性が必要とされる。
【0003】
近年、自動車等の車両から排出される二酸化炭素(CO)を削減するため、燃費の向上が求められており、車両軽量化が必須となっている。このような車両軽量化の一環として、これまでには自動車等の内装樹脂部品を薄肉化により軽量化する手法が提案されているが、製品を薄肉化すると剛性を確保することが難しくなる。
【0004】
そこで、軽量化を図りつつ剛性を確保する方法として、射出発泡成形を適用することが知られている。射出発泡成形は、例えば1対の開閉可能な金型を適用し、これらの両金型を組立てた状態で、発泡剤を添加した溶融樹脂をシリンダから金型に射出し、その後に両金型を所定量開いて離間させた状態とすること(以下、「コアバック」という。)で発泡させる方法である。
【0005】
この射出発泡成形では、樹脂がシリンダ内から金型キャビティ内に射出された瞬間に圧力が開放され、樹脂が発泡を開始する。したがって、金型内に射出された溶融樹脂は発泡しながら金型を流動し、気泡の破裂によって起こる銀白色の条痕(以下、「スワールマーク」という。)が製品表面に発生する。また、溶融樹脂の流動過程において、溶融樹脂がエアを巻き込むと製品表面上に、窪み(以下、「あばた」と称する。)が発生する。
【0006】
このような外観不良対策のため、従来では熱可塑化した発泡樹脂を、予めエア等の気体で発泡圧以上に加圧した金型内に射出し、金型内の樹脂を充填中の発泡樹脂の発泡を抑制し、外観不良(スワールマークやあばた)や発泡ガスの抜けを抑制し(カウンタープレッシャ法)、さらに、射出完了後型内に残留した気体を吸引あるいは減圧することで、樹脂と金型との間にトラップされたエアを除去し、あばたの発生を抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0007】
しかし、金型の意匠面にはエアの排気穴を形成することができず(排気穴を形成すると穴形状が転写され、所望の外観が得られなくなるため)、成形後の製品の裏面や外面に設置されたエア排気穴等を利用してエアを吸引することを要する。金型にシボによる凹凸が形成されている場合、シボ種如何によっては、カウンタープレッシャ法で注入したエアが樹脂と金型の間にトラップされ、あばたが発生する場合がある。
【0008】
このあばたが発生する現象について、図9および図10を参照して具体的に説明する。図9は金型を閉状態として樹脂を注入した状態を示す断面図であり、図10は樹脂成形における製品固化後の状態を示す断面図である。
【0009】
図9に示すように、金型100は断面凸形に構成された固定型101と、この固定型101に嵌合する断面凹形の可動型102とを備える。金型100は、固定型101の凸部101aと可動型102の凹部102bとの間にキャビティ103が形成されるとともに、両型101,102の嵌合面には、カウンタープレッシャ用Oリング104が設けられる。また、固定型101にはエア供給および排気用の空気穴105が形成され、キャビティ103には樹脂供給用のスプル106が連通して形成されている。
【0010】
カウンタープレッシャ法では、金型100内に空気穴105を通してエアを注入し、金型内圧が発泡圧以上の必要圧力に到達後に、熱可塑化した溶融樹脂aをキャビティ103内に射出することで、金型100内に樹脂を充填中に溶融樹脂表面の発泡や破泡を抑制し、外観不良(スワールマークやあばた)や発泡ガスの抜けを抑制している。
【0011】
そして、金型100内に樹脂充填完了後に図10に示すように可動型102を矢印d方向に移動(コアバック)させ、発泡させる一方、このコアバックと同じタイミングで金型100内に残留したエアを吸引あるいは減圧している。
【0012】
一方、自動車部品等の成形品については、商品性向上のため、意匠面に模様として凹凸を形成するシボ加工を行なっており、金型にシボによる凹凸が形成されている。金型100内にシボによる凹凸が形成されている場合、シボ種如何によっては、カウンタープレッシャ法で注入したエアが樹脂と金型の間にトラップされ、あばたが発生する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特公昭51−27266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
射出発泡成形用金型では、金型の意匠面にエアの排気穴を設けることができず、金型の裏面や製品外に設置されたエアの排気穴よりエアを吸引しなければならない。このため、排気が困難となり、樹脂と金型との間にトラップされたエア圧によって発泡が妨げられ、あばたが発生していた。
【0015】
特に、自動車内装部品等の成形品については、商品性向上のためシボ加工を行なっており、金型にシボによる凹凸が形成されている。この場合、シボ種如何によってはカウンタープレッシャ法で注入したエアが樹脂と金型との間にトラップされ、あばたが発生する問題がある。
【0016】
本発明は上記事情に基づいてなされたものであり、穴形状を利用した発泡成形用金型を適用することにより、金型と溶融樹脂に挟まれた意匠面側のエアを効率良く吸引して排気することができ、特に成形品の意匠面について、スワールマーク(条痕)やあばた状の外観不良の発生を防止して、外観の良好な成形品を得ることができる発泡成形用金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明では、上述した課題を解決するために、可動型を有する開閉可能な金型に発泡成形用のキャビティを形成し、このキャビティ内に意匠面を設定して、カウンタープレッシャ法を適用することにより溶融樹脂を前記キャビティに供給し、前記樹脂の発泡成形を行なう発泡成形用金型において、前記キャビティ内を意匠面まで貫通する突出し用金型ピンを設け、この金型ピンの先端に多孔質金属部材を前記キャビティ内に露出可能に設け、前記可動型のコアバック時に、可動型の意匠面側キャビティ内に前記多孔質金属部材が露出し、意匠面側キャビティ内に残る気体を前記多孔質金属部材から金型ピン内を通して金型外に排気して前記溶融樹脂を発泡成形し、発泡成形品に穴形状を形成する構成としたことを特徴とする発泡成形用金型を提供する。
【0018】
本実施形態において、前記金型ピンの先端部のみを多孔質金属部材とすることが望ましい。
【0019】
本実施形態において、前記金型ピンを多孔質金属部材により構成し、この金型ピンをコアバックに追従して突き出す構成とすることが望ましい。
【0020】
本実施形態において、多孔質部分の表面積を大きくするため、前記金型ピンの突き出し量を、前記可動型のコアバック量より少なく設定することが望ましい。
【0021】
本実施形態において、コアバック時の前記金型ピンの突き出し量は、固定型と可動型との間の隙間を0.02mm以上、0.5mm以下に設定することが望ましい。
【0022】
本実施形態において、多孔質金属部材の前記金型ピンの先端部は、コアバック前にはキャビティを貫通して前記可動型に達する構成とし、前記可動型のコアバックによって生じる空間に露出する構成とすることが望ましい。
【0023】
本実施形態において、成形する樹脂を熱可塑性樹脂とし、発泡剤として化学発泡剤または物理発泡剤を適用することが望ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、可動型のコアバック時に金型内の意匠面側キャビティ内に残る気体を金型ピンの多孔質部材から効率よく吸引して金型外に排気でき、樹脂と金型との間にトラップされた気体圧力によって溶融樹脂の発泡が妨げられることがなく、外観不良(スワールマークやあばた)を発生させることがない。
【0025】
したがって、樹脂部品を射出発泡成形する際に外観品質を改善することができる。
【0026】
特に、本発明では例えば自動車部品等の成形品において、スワールマークやあばた、破泡などの外観形状を阻害する不要な凹凸が形成されず、商品性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態による発泡成形用金型(樹脂充填状態)を示す縦断面図。
【図2】図1に示した発泡成形用金型のコアバック直後の状態を示す縦断面図。
【図3】図2に示した発泡成形用金型のコアバック後、樹脂発泡時の状態を示す作用説明図。
【図4】本発明の第2実施形態による発泡成形用金型の樹脂充填時の状態を示す断面図。
【図5】図4に示した発泡成形用金型のコアバック直後の状態を示す縦断面図。
【図6】図5に示した発泡成形用金型コアバック後、樹脂発泡時の状態を示す縦断面図。
【図7】本発明の第3実施形態による発泡成形用金型を示す縦断面図。
【図8】(a),(b)は本発明の第4実施形態による金型構造および成形方法を示す説明図。
【図9】従来例による発泡成形用金型を示す縦断面図。
【図10】図9に示した発泡成形用金型のコアバック後、樹脂発泡時の状態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図1−図8を参照して発泡成形用金型の実施形態について説明する。
【0029】
[第1実施形態(図1−図3)]
図1は、第1実施形態による発泡成形用金型を示す縦断面図である。
【0030】
この図1に示すように、本実施形態の発泡成形用金型1は、1対の成形用金型として、樹脂供給側から溶融樹脂の供給を受ける固定型2と、この固定型2に摺動可能に組合せて樹脂成形を行なうキャビティを形成する可動型3とを備えている。
【0031】
固定型2は全体として凸形をなすブロック体として構成されており、例えば底部周辺が一定の肉厚を有する略平坦な鍔状をなし、その中央位置から上向きに凸部2aが突出する形状としてある。すなわち、固定型2の凸部2aの外周縁形状はこの固定型2の中心側に向って先細形状となる外面傾斜状の柱状に形成されている。
【0032】
また、固定型2に組合う可動型3は、固定型2の凸部2aに嵌合し得る凹形状をなしており、その凹面側(底面側)が下向きとなる凹部3aを有する断面凹形のブロック体として構成されている。この可動型3は凹部3aの凹形内面である開口面側を下向きとして、固定型2に対して上下方向に移動(昇降ストローク)することで、互いに嵌合深さを調整できる構成としてある。
【0033】
そして、固定型2は例えば図示省略の支持台等に載置されて所定位置に固定配置され、可動型3は固定型2の上向きの凸部2aに対して上下方向に沿って移動可能に嵌合することができる。
【0034】
さらに、固定型2と可動型3との凹凸嵌合部間、すなわち固定型2の凸部2a(外周面)と可動型3の凹部3a(内周面)とが互いに摺接する面には、カウンタープレッシャ用Oリング4が設けられている。このカウンタープレッシャ用Oリング4により、固定型2の凸部2aと可動型3の凹部3aとの摺接面がシール状態に保持される。
【0035】
また、固定型2にはエア供給および排気用のエア供給・排気穴5が形成されている。このエア供給・排気穴5は外部配管に接合されて、図示省略のエア供給源および排気先設備に弁等を介して切替え可能に接続されており、カウンタープレッシャ法で使用するエア等を供給及び排気できる。
【0036】
また、固定型2の凸部と可動型3の凹部との接合部間には樹脂成形用のキャビティ14が形成され、このキャビティ14の例えば型中央位置に樹脂供給用のスプル6が連通して形成されている。
【0037】
このような構成のもとで、上側配置の可動型3が下部開口の逆凹形として形成される一方、下側配置とされる固定型2については、その内部に配置された金型ピン8およびバネ・油圧駆動装置9と、これらによって駆動される多孔質金属部材10とを適用することで、金型ピン8をコアバックに追従して突き出す構成としている。可動型3のコアバック前には、金型ピン8は、バネ・油圧駆動装置9のバネ力または油圧力により、ピン先端部が可動型3の凹部3aに接触している。
【0038】
発泡成形用金型1は型締め後、金型1内にエア供給・排気穴5からエアを供給する。このエア注入により金型内圧を溶融樹脂aの発泡を抑制する圧力(0.3MPa〜1MPa未満)に高め、金型1内が必要(指定)圧力に到達後、キャビティ14内が発泡圧以上に保たれた状態で熱可塑性の溶融樹脂aを射出することで、金型1内が溶融樹脂aの充填中に溶融樹脂aの発泡や破泡を抑制し、外観不良(スワールマーク、あばた)や発泡ガスの抜けを抑制している。また、エア供給・排気穴5は発泡圧に保たれた状態でエア供給とエア吸引が切り替わるようになっている。
【0039】
金型1のキャビティ14内の溶融樹脂aの充填完了後に可動型3が固定型2から離間する方向dに移動(コアバック)する。可動型3のコアバック時には、金型ピン8は、バネ・油圧駆動装置9のバネ力または油圧力により同期的に押圧駆動され、可動型3の移動に追従して突き出され、可動型3の凹部3a側に移動される。その際、金型ピン8の突出し量は、可動型3のコアバック量より少なく設定される。
【0040】
コアバック時には、金型ピン8の先端と可動型3(の凹部3a)との間に、0.02mm以上で0.5mm以下、好ましくは0.03mm程度の隙間が生じる構成とされる。溶融樹脂aの発泡圧は、その射出圧より小さいために、金型ピン8の先端と可動型3との間に0.5mm以下の隙間が存在することで、この隙間に溶融樹脂aが入り込むのを防止することができる。
【0041】
また、金型ピン8の先端部には、多孔質金属部材10が設けられるが、この多孔質金属部材10の穴径は、数十μmφ、例えば平均穴径30μmφ程度と小さく、穴形状内に溶融金属が流入することはない。
【0042】
そして、可動型3のコアバック時には、図2に示すように、金型ピン8が可動型3の凹部3a側に移動し、金型ピン8の先端部に設けられた多孔質金属部材10が、発泡前(膨らむ前)の溶融樹脂aと可動型3の凹部3aの意匠面(凹凸模様面)との間の意匠面側キャビティ(空間)14aに露出する。
【0043】
可動型3のコアバック時には、コアバックとタイミングをとって、溶融樹脂aと可動型3の凹部3aの隙間7である意匠面側キャビティ14a内に残るエアを吸引してエア供給・吸引用通路11からエア通路12を通ってエア供給・排気穴5から金型1の外部に排気させる。可動型凹部3aの意匠面側キャビティ14a内をエア吸引して排気することで、コアバックにより溶融樹脂aの発泡が促進される。なお、符号11aは金型ピン8の外周部に形成された縦連通溝である。この縦連通溝11aは、固定型2の金型ピンガイド穴に形成してもよい。
【0044】
そして、コアバック時に多くのエアを吸引して、コアバック作用によって発泡を行なわせ、エア吸引の表面積を大きく設定する。また、発泡成形品に穴形状を形成するために、意匠面10aまで貫通する金型ピン8等を利用し、その先端に多孔質金属(平均穴径数十μm、例えばφ0.03mm)からなる多孔質金属部材10を設けている。
【0045】
また、金型ピン8の先端部は穴形状の一部のみが多孔質金属である多孔質金属部材10として構成し、またコアバック時に多くのエアを吸引することにより、コアバックで発泡をスムーズに行わせ、エア吸引の表面積を大きく設定する構成としてある。コアバック時には、金型ピン8は多孔質部分の表面積をより広くとるために、金型ピン8の先端部と可動型3の凹部3aの間に隙間13が設けられる。なお、エア供給・排気用穴5は、金型外に設置される図示省略のエア供給設備およびエア吸引設備に連結されており、切替操作によりエア供給とエア吸引とが切替るようにしてある。
【0046】
図2は発泡成形用金型1のコアバック直後の状態を示す縦断面図であり、図3は図2に示した発泡成形用金型に充填された溶融樹脂のコアバックよる発泡状態を示す作用説明図である。
【0047】
まず、図2により発泡成形用金型1のコアバック作用を説明する。金型1aによる樹脂成形時には、金型1のキャビティ14内にエア供給・排気穴5よりエアを供給してキャビティ14内を発泡圧以上にセットし、その後、スプル6を介して固定型2と可動型3との間のキャビティ14内に溶融樹脂aを供給し、キャビティ14内を発泡圧以上に保って樹脂の発泡と発泡ガスの抜けを抑制し、キャビティ14内に樹脂を充填させる。続いて、エア供給・排気穴5をエア供給からエア排気に切り替える。この切替により型外部に連通するエア供給・排気穴5からエアbが排気される一方、可動型3のコアバックにより樹脂は図3に示すように発泡されて成形が行われる。
【0048】
具体的には、樹脂発泡成形時においては、まず発泡成形用金型1を閉じた状態とし、この型閉め状態で金型1内にエアを注入し、金型1内を昇圧する。この場合、金型1の内圧は、樹脂の発泡を抑制できる圧力(0.3MPa〜1MPa未満)とすることが望ましい。指定圧力に達した後、発泡剤を添加した樹脂を金型1に射出し、金型1内に発泡剤を添加した溶融樹脂を充填する。
【0049】
また、金型1による樹脂成形時には、スプル6を介して固定型2と可動型3との間のキャビティ14内に樹脂(溶融樹脂)aが供給されて樹脂充填状態となり、成形が行われる。
【0050】
そして、樹脂成形時には可動型3を固定型2から離間させる方向dに移動(コアバック)させることにより、キャビティ14の容積を拡大して意匠面側キャビティ14aが形成され、エア供給・排気穴5から意匠面側キャビティ14a内のエア吸引が、コアバックとタイミングをとって行なわれ、金型1外に排気されて溶融樹脂を発泡させる。なお、金型ピン8の多孔質金属部材10の多孔質部の穴径は樹脂が入り込まないサイズに成形され、多孔質金属部材10の多数の小孔から樹脂が入り込むことはない。
【0051】
また、可動型3は固定型2の凸部2aに嵌合する凹部3aを有するブロック体として構成とされており、その凹部3aの底面が樹脂製品の意匠面10aとされている。
【0052】
このように、固定型2と可動型3とは互いに対向し、それぞれ対向する側面部に成形面を持つ構成とされていて、固定型2に対して可動型3が互いに接離する方向(例えば水平方向)にスライド移動可能に摺接されている。そして、固定型2と可動型3とが摺接する接合部には、カウンタープレッシャ用のOリング4が設けられ、これにより摺接部のシール性が保持される。
【0053】
なお、発泡成形品を成形する金型1において、製品に穴形状を形成するために、意匠面10aまで貫通する金型ピン8等を利用してその先端に多孔質金属部材10を設けてある。多孔質金属部材10を使用した金型ピン8は、コアバックに追従して突き出すことができる。多孔質金属部材10は、平均穴径数十μmφ、例えば0.03mmφの多数の穴を有し、その穴により通気性を有する。
【0054】
次に、図3により、発泡成形用金型1に注入された樹脂がコアバックにより発泡した状態での作用を説明する。発泡成形用金型1において、製品に穴形状を形成するために、意匠面10aまで貫通する金型ピン8(押出し部材)を備え、金型ピン8の先端には多孔質金属部材10を設けてある。
【0055】
この構成において、多孔質金属部材10に形成されている多数の小孔は数十μmφ、例えば平均孔径が、例えば0.03mmφである。多孔質金属部材10からなる金型ピン8は、バネ・油圧駆動装置9のバネ力または油圧力によりコアバックに追従して突き出す構成としてある。なお、金型ピン8の突き出し量は、可動型3のコアバック量より若干少なく、コアバック後は金型ピン8の先端と可動型3の凹部3aとの間に0.02mm以上で0.5mm以下の隙間13好ましくは数十μm、例えば0.02〜0.03mm程度生じるようにしてある。
【0056】
一方、本実施形態では、多孔質金属製の金型ピン8の先端部は、コアバック前にキャビティ14を貫通し、可動型3がコアバックしたとき、コアバックのタイミングで油圧やバネにより常にコアバックに追従移動し、その空間(意匠面側キャビティ)14aに露出するようにしてある(図2参照)。なお、樹脂は熱可塑性樹脂とし、発泡剤は化学発泡剤または物理発泡剤のどちらでも良い。
【0057】
本実施形態によれば、穴形状を利用した発泡成形用金型1を適用することにより、金型内の意匠面10aのエアを効率良く吸引して金型1外に排気することができ、特に成形品の意匠面10aについて、スワールマークやあばた等の発生を防止することができ、外観の良好な成形品を得ることができる。
【0058】
そして、発泡成形用金型1の裏面や製品外に設置されたエア供給・排気穴5からエアを吸引して排気することができ、樹脂と金型との間にエアがトラップされることを防止し、樹脂の発泡作用が十分に得られ、外観不良(スワールマークやあばた)の発生等を防止して良好な意匠面10aを形成することができる。
【0059】
本実施形態によれば、樹脂部品を射出発泡成形する際に外観品質を改善することができ、外観不良(スワールマークやあばた)の発生を防止し、外観が良好な意匠面を形成することができる。
【0060】
なお、本実施形態の発泡成形用金型1においては、金型ピン8の先端形状は穴形状の一部のみを多孔質金属部材10とし、またはコアバック時に多くのエアを吸引することにより、コアバックで発泡させ、表面積を大きく設定することが望ましい。また、金属ピン8に設けられるエア供給・吸引用通路11は、固定型2に設けられるエア供給・排気穴5にエア通路12を介して連通される。金属ピン8の通路11を縦連通溝11aから固定型2のエア通路12にスムーズに連通させるために、金属ピン8の外周面および接触する固定型2のピン穴内周面の少なくとも一方に軸方向の凹連通溝が設けられる。
【0061】
[第2実施形態(図4−図6)]
図4は、第2実施形態による発泡成形用金型1Aの樹脂充填時の状態を示す断面図であり、図5は図4に示した発泡成形用金型のコアバック直後の状態を示す縦断面図である。図6は図5に示した発泡成形用金型のコアバック後の発泡状態を示す縦断面図である。なお、以下の説明において、第1実施形態と同様の構成および作用については説明を省略する。
【0062】
図4に示すように、本実施形態の発泡成形用金型1Aでは、可動型3の下面部位に下向きに開口する開口穴15を形成するとともに、この開口穴15に多孔質金属部材10を上下方向に沿って挿入および引抜き可能に設けてある。その他の構成については同一符号を付して第1実施形態と略同様である。
【0063】
本実施形態では、可動型3Aのコアバックに追従して、金型ピン8の先端に設けられた多孔質金属部材10が、図5に示した隙間(意匠面側キャビティ)14aに露出し、このタイミングで金型(可動型3)の外部に設置した真空ポンプ(図示省略)を使用して、多孔質金属部材10の小孔からエアを吸引し、エア供給・吸引用通路11、エア通路12を通して固定型2および可動型3の外部にエアをエア供給・排気用穴5から排気する。
【0064】
これにより、意匠面10aについても可動型3の凹部3aの意匠面側キャビティ14aに残ったエアを、多孔質金属部材10で吸引して意匠面10a側に残ったエア(気体)を効率よく吸気して金型1Bの外部に排気することができ、図6に示したように、意匠面10aにあばたのない製品を製作することができる。
【0065】
[第3実施形態(図7)]
図7は、第3実施形態による発泡成形用金型1Bを示す縦断面図である。なお、本実施形態では、第2実施形態の一部、すなわち多孔質金属部材の構成のみ変更したものであり、その変更部分について説明し、上記各実施形態と同一の構成および作用については同一符号を付して説明を省略する。
【0066】
図7に示すように、本実施形態では製品の穴形状を形成する意匠面10aまで貫通している金型ピン8の先端に、スリーブ状ヘッド部8aを一体に設け、このスリーブ状ヘッド部8a内に多孔質金属部材10Aを挿設したものである。なお、図7において、スリーブ状ヘッド部8aの孔形状は、ピン先端に向って拡開するものでもよく、種々の穴形状が考えられる。第3実施形態は、第1,2の実施形態では、ピン先端部の全体を多孔質金属材としていたが、ピン先端部の一部を多孔質金属材としてもよい。
【0067】
本実施形態では、上記各実施形態で示した発泡形成用金型1,1Aに設けられる金型ピン8のピン形状と同様に、金型ピン8の内部にエア供給・吸引用通路11を設け、多孔質金属部材10Aから吸込んだエアをエア供給・吸引用通路11から縦連通溝11a、エア通路12を経て金型外に排気することを可能としてある。
【0068】
また、図6に示した場合と同様に、金型ピン8はコアバック動作とは関係なく固定しているが、コアバック動作の際、金型ピン8の先端側の多孔質金属部がコアバック動作によって形成される隙間に部分的に露出されるようにしてある。このため、意匠面10aのエアが効率よく吸引できるようになる。そして、図7に示したように、可動型3の凹部3aと樹脂aが発泡によるスワールマークやあばたのない製品を構成することができる。
【0069】
第3実施形態によれば、第1,第2実施形態と同様の作用効果が計れるとともに、発泡成形品を成形する金型において、意匠面10aまで貫通する金型ピン8等を利用して、その先端に多孔質金属部材10A(平均穴径φ0.03mm)を使用することにより製品に穴形状を形成することができ、通気性を確保することができる。
【0070】
また、多孔質金属部材10Aにより構成した金型ピン8は、コアバックによってピン先端部の一部が露出することにより、コアバックによって形成される発泡樹脂と可動型3との間の空間に突出し、効率よくエアを吸引して金型外に排気することができる。
【0071】
さらに、金型ピン8の突き出し量は、可動型3のコアバック量より若干少なく、コアバック後は可動型3との間に隙間(例えば0.02mm〜0.5mm)を生じる構成としたことで、金型ピン8の先端(多数の小孔)からも吸気することが可能となり、エアが効率よく排気できる。
【0072】
また、多孔質金属部材10Aにより構成した金型ピン8の先端部は、コアバック前には、キャビティ14を貫通し、可動型3がコアバックしたときに初めて生じる空間(意匠面側キャビティ)に露出することで、樹脂射出時に多孔質金属部材10Aは、キャビティ14内(樹脂の流動部)に露出していないため、多孔質金属部材10の穴に樹脂などの詰まりによるエア供給および排気能力が低下することを有効的に防止することができる。
【0073】
なお、以上の実施形態において、成形する樹脂は、熱可塑性樹脂が望ましく、発泡剤は化学発泡剤、物理発泡剤のいずれを使用してもよい。
【0074】
[第4実施形態(図8)]
図8(a)は第4実施形態による発泡成形用金型1Dを説明するためのカウンタープレッシャ前の状態を示す断面図であり、同図(b)は第4実施形態による金型構造のコアバック状態を示す断面図である。
【0075】
本実施形態が前記各実施形態と異なる点は、固定型2の凸部2aにガイドスリーブ2bを設けるとともに、このガイドスリーブ2bから突出する金型ピン8の先端形状を多孔質金属部材10として構成した点にある。
【0076】
すなわち、本実施形態では、図8(a)に示すように、金型ピン8の先端形状については穴形状の全体ではなく、金型ピン8の一部のみが多孔質金属部材10としてある。ただし、一部のみを多孔質金属部材10とした場合には、コアバック時にエアを吸引量が少なくなる。このため、コアバック時に多くのエアを吸引することを考慮すると、多孔質金属部材10はできるだけ表面積を多くすることが望ましい。
【0077】
また、図8(b)に示すように、コアバック時においては、さらに、金型ピン8の先端形状は穴形状の一部のみを多孔質金属部材10とし、またはコアバック時に多くのエアを吸引することにより、表面積を大きく設定することが望ましい。
【0078】
本実施形態によれば、内装(インナー)を主とする広い成形面を対象として、発泡成形品の高外観化が図れる。なお、以上の各実施形態において、図示した金型ピン8については同一径としているが、各金型ピン8の径について同一径のものに限定されることはなく、種々の異なる径とすることが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1,1A,1B,1C 発泡成形用金型
2 固定型
2a 凸部
3 可動型
3a 凹部
4 Oリング
5 エア供給・排気穴
6 スプル
7 隙間
8 金型ピン
9 バネ・油圧駆動装置
10,10A 多孔質金属部材
10a 意匠面
11 エア供給・吸引用通路
11a 縦連通溝
12 エア通路
13 隙間
14 キャビティ
14a 意匠面側キャビティ
15 開口穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動型を有する開閉可能な金型に発泡成形用のキャビティを形成し、このキャビティ内に意匠面を設定して、カウンタープレッシャ法を適用することにより溶融樹脂を前記キャビティに供給し、前記樹脂の発泡成形を行なう発泡成形用金型において、
前記キャビティ内を意匠面まで貫通する突出し用金型ピンを設け、この金型ピンの先端に多孔質金属部材を前記キャビティ内に露出可能に設け、
前記可動型のコアバック時に、可動型の意匠面側キャビティ内に前記多孔質金属部材が露出し、意匠面側キャビティ内に残る気体を前記多孔質金属部材から金型ピン内を通して金型外に排気して前記溶融樹脂を発泡成形し、発泡成形品に穴形状を形成する構成としたことを特徴とする発泡成形用金型。
【請求項2】
前記金型ピンを多孔質金属部材により構成し、この金型ピンを、前記可動型のコアバックに追従して突き出す構成とした請求項1記載の発泡成形用金型。
【請求項3】
前記金型ピンの突き出し量を、前記可動型のコアバック量より少なく設定し、コアバック後に可動型との間に0.02mm以上0.5mm以下の隙間を生じる構成とした請求項1記載の発泡成形用金型。
【請求項4】
多孔質金属部材による前記金型ピンの先端部は、コアバック前に、キャビティを貫通し、可動型がコアバックしたによって生じる空間に露出する構成とした請求項1記載の発泡成形用金型。
【請求項5】
成形する樹脂は熱可塑性樹脂とし、発泡剤は化学発泡剤または物理発泡剤とした請求項1記載の発泡成形用金型。
【請求項6】
前記金型ピンの先端形状は穴形状の一部のみを多孔質金属部材とし、またはコアバック時に生ずるエアを吸引可能な構造に設定した請求項1記載の発泡成形用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−81713(P2012−81713A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231995(P2010−231995)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】