説明

発泡樹脂容器

【課題】発泡性原料により表面硬化層を生成し、表面硬化層が剥離し難い発泡樹脂製品を提供する。
【解決手段】発泡樹脂容器は、発泡性原料が発泡溶着された発泡層36を有する発泡樹脂容器であって、容器外部の少なくとも2つの面に形成された発泡性原料からなる溶融硬化層34と、溶融硬化層34と発泡層36との間に介在する発泡層の発泡率より小さい発泡率を有する中間層35とを備える。このように中間層35を有することにより、発泡層36と溶融硬化層34との接合強度が向上する。また、容器外部の少なくとも2つの面に溶融硬化層34を有しているので、防水性を高めることができ、容器の用途が広くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、発泡樹脂製品(例えば、発泡ポリスチレン材や発泡エチレン材)は、金型に充分に充填された発泡性原料(発泡ビーズ)を発泡溶着させて成形される。発泡性樹脂製品は、軽量であると共に衝撃吸収力や断熱性に優れることから、梱包資材、建築材等として広く使用されている。また、特許文献1または特許文献2に示されるように、表面に表皮材を貼り付けた発泡樹脂製品も提案されている。このように表面に表皮材を貼り付けると、表面に光沢が生まれたり、防水性が向上したりするので、発泡樹脂製品の用途を広げることができる。
【0003】
特許文献1または特許文献2に示される発泡樹脂製品は、発泡層とは別部材からなる表皮材を貼り付けていることから剥離しやすいという欠点があった。特許文献3は、発泡性原料によって表皮材を成形する成形方法を提案している。発泡性原料を用いて表皮材を成形できると、廃棄時の分離が不要でリサイクルに適する等の効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−55650号公報
【特許文献2】特開2001−277399号公報
【特許文献3】特開平6−278143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献3に記載された成形方法では、一般的なクラッキング間隔より大きな10〜150mmの範囲内の間隔を残して型閉めし、原料粒子を過剰に充填する。そして、油圧シリンダを利用した強制型閉めを繰り返し行うことによって原料粒子を成形面に強制接触させて溶融させる。
【0006】
しかしながら、この方法では、生成しようとする表面硬化層の厚みに応じた大きさのクラッキング間隔を残して型閉めする必要があり(特許文献3、段落[0021])、装置の規模が現実的ではない大きさになってしまう。また、この方法では、発泡層の倍率を適切に制御できないため、所望の断熱特性を得ることができない。これまでに、発泡性原料からなる表面硬化層を有する発泡樹脂容器の現実的な生成方法は提案されていない。
【0007】
そこで、本発明は、発泡性原料により表面硬化層を生成し、表面硬化層が剥離し難い発泡樹脂製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発泡樹脂容器は、発泡性原料が発泡溶着された発泡層を有する発泡樹脂容器であって、容器内部または外部の少なくとも2つの面に形成された前記発泡性原料からなる溶融硬化層と、前記溶融硬化層と前記発泡層との間に介在する前記発泡層の発泡率より小さい発泡率を有する中間層とを備える。このように中間層を有することにより、発泡層と溶融硬化層との接合強度が向上する。また、容器内部または外部の少なくとも2つの面に溶融硬化層を有しているので、防水性を高めることができ、容器の用途が広くなる。
【0009】
本発明の発泡樹脂容器において、前記少なくとも2つの面は、法線が直交する関係にあってもよい。また、前記溶融硬化層は、均一の膜厚を有してもよく、前記溶融硬化層の厚さは、0.2mm〜3.0mmであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発泡樹脂容器は、中間層を有することにより、発泡層と溶融硬化層との接合強度を向上できると共に、容器内部または外部の少なくとも2つの面に溶融硬化層を有しているので、防水性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施の形態の成形機の構成を示す図である。
【図2】第1の実施の形態の製造方法を示す図である。
【図3】発泡率の低い発泡性原料を充填する工程を示す図である。
【図4】金型を閉鎖する工程を示す図である。
【図5】溶融硬化層を生成する工程を示す図である。
【図6】発泡率の高い発泡性原料を充填する工程を示す図である。
【図7】発泡層を生成する工程を示す図である。
【図8】発泡樹脂容器を取り出す工程を示す図である。
【図9】第1の実施の形態の製造方法にて生成された発泡樹脂容器を示す図である。
【図10】第2の実施の形態の成形機の構成を示す図である。
【図11】発泡率の低い発泡性原料を充填する工程を示す図である。
【図12】金型を閉鎖する工程を示す図である。
【図13】溶融硬化層を生成する工程を示す図である。
【図14】発泡率の高い発泡性原料を充填する工程を示す図である。
【図15】発泡層を生成する工程を示す図である。
【図16】発泡樹脂容器を取り出す工程を示す図である。
【図17】第2の実施の形態の製造方法にて生成された発泡樹脂容器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態の発泡樹脂製品の製造方法および成形機について、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の成形機1の構成を示す断面図である。発泡樹脂容器の成形機1は、凸型金型10と凹型金型40とを有している。成形機1は、凸型金型10と凹型金型40を閉じたときに形成される空間(これを「成形空間」という)に発泡性原料を導入し、溶融および溶着することによって発泡樹脂容器を成形する。本実施の形態においては、凸型金型10を固定しておき、凸型金型10に対して凹型金型40を移動することにより、成型空間を形成する。なお、凹型金型40を固定しておき、凸型金型10の方を移動させることとしてもよい。
【0013】
凸型金型10は、発泡性原料を導入する原料供給管12を有している。原料供給管12内には、封止部材14が設けられている。封止部材14は、原料供給管12内において移動可能である。封止部材14は、成形空間側に移動したときに、封止部材14の端部に取り付けられた封止面16が原料供給管12を封止し、成形空間を画成する壁面の一部を構成する。これにより、発泡性原料の原料供給管12への逆流を防止する。また、封止面16が位置Aに来るまで封止部材14を移動することにより、原料供給管12を通じて成形空間に原料を導入することが可能となる。
【0014】
凸型金型10は、凸部の上面(凹型金型40のある側)に、スライド式の金型(以下、「正面スライド」という)18を有している。正面スライド18は、エアシリンダ20によって、金型の閉鎖方向Bに沿って前後に移動する。また、凸型金型10は、凸部の側面にも、スライド式の金型(以下、「側面スライド」という)22を有している。側面スライド22は、エアシリンダ24によって、金型の閉鎖方向Bと垂直方向に沿って前後に移動する。側面スライド22は、本発明の「移動金型」に該当する。
【0015】
凸型金型10は、中空構造を有している。凸型金型10は、内部の空間26に蒸気を供給する蒸気供給口28と、冷却水を供給する冷却水供給口30と、内部の空間26から蒸気または冷却水を排出するドレン管32を有している。正面スライド18および側面スライド22には、無数の微小なベントホールが形成されている。凸型金型10の内部に供給された蒸気および冷却水は、ベントホールを通じて成形空間に供給される。
【0016】
凹型金型40には、液状熱媒体を循環させるための熱媒体循環路41が通っている。熱媒体循環路41に液状熱媒体を流すことにより、凹型金型40を加熱または冷却することができる。凹型金型40は、本発明の「加熱用金型」に該当する。なお、本実施の形態では、熱媒体循環路41に液状熱媒体を流すことにより凹型金型40を加熱する例について説明しているが、例えば、高圧蒸気、ヒーター、IH(Induction Heating)等の別の加熱手段を用いることも可能である。
【0017】
凸型金型10、凹型金型40の材質は、例えば、アルミニウム、真鍮、ステンレスである。本実施の形態では、発泡性原料を溶融するときには、溶着させるときより高い圧力で金型を閉じる必要がある。従って、溶融時の金型の閉鎖圧力に耐え得る材質を選択する。
【0018】
図2は、発泡樹脂容器の製造工程を示す図、図3〜図8は、各工程における成形機1の動きを示す図である。以下、図2〜図8を参照して、本実施の形態の発泡樹脂容器の製造方法について説明する。
【0019】
図2に示すように、最初に、凹型金型40の熱媒体循環路41に、発泡性原料の融点以上の温度(例えば、150℃)の液状熱媒体を循環させることにより、凹型金型40の表面を加熱する(S10)。この状態で、凸型金型10の正面スライド18を凹型金型40の方向に移動させ(S10)、この状態で凹型金型40を凸型金型10に対して近づける。この段階では、図3に示すように、凸型金型10と凹型金型40を完全に閉鎖するのではなく、わずかな隙間を開けておく。この隙間を「クラッキング間隔」という。なお、正面スライド18の移動と金型の閉鎖の順序は、必ずしも上記した順序でなくてもよく、クラッキング間隔を残して金型を閉じた後に、正面スライド18を凹型金型40の方向に移動させてもよい。
【0020】
次に、原料供給管12を通じて、低発泡率(例えば、3〜20倍)の発泡性原料を供給し、成形空間に充填する(S12)。発泡性原料としては、例えば、ブタジエン5〜20%含有の発泡スチレンビーズを用いる。成形空間に向かって空気を流すことにより、発泡性原料を成形空間に流し込む。成形空間に流れ込んだ空気は、ベントホールおよびクラッキング間隔から外部に逃げる。
【0021】
成形空間に発泡性原料を充填した後、図4に示すように、凹型金型40を凸型金型10に対してプレスして金型を閉じ、成形空間を閉鎖する(S14)。また、封止部材14を凹型金型40の側に移動し、封止面16によって原料供給管12の出口を閉じる。
【0022】
続いて、図5に示すように、凸型金型10の側面スライド22を凹型金型40の側面に近づける方向に移動させる(S16)。成形空間内の発泡性原料は、凹型金型40の側面に押し付けられる。ここで、凸型金型10から成形空間内に高温の蒸気を供給する(S18)。具体的には、凸型金型10の内部26に、高圧ボイラーによって圧力がかけられた100℃以上の高温(例えば110℃)の蒸気を供給する。凸型金型10の内部に供給された蒸気は、ベントホールを通じて成形空間に供給される。金型の閉鎖方向Bに関しては、金型の閉鎖圧力によって、発泡性原料が凹型金型40の底面に押し付けられる。融点以上に加熱された凹型金型40の側面および底面において、発泡性原料が溶融する。
【0023】
次に、凹型金型40の熱媒体循環路41に、発泡性原料の融点未満の温度(例えば、80℃)の液状熱媒体を循環させることにより、凹型金型40の表面を冷却する(S20)。凹型金型40の表面で溶融された発泡性原料は冷却されると硬化し、溶融硬化層34が形成される。なお、凹型金型40の表面から離れるに従って、発泡性原料が溶融する割合が低下するので、低発泡率の発泡性原料が溶着した発泡層(以下、「中間層」という)35が形成される。中間層35については、後述する。
【0024】
以上、溶融硬化層34を形成する工程について説明した。なお、上記の工程を複数回繰り返し行ってもよい。これにより、溶融硬化層34を厚くすることができると共に、より平滑化することができる。
【0025】
溶融硬化層34の生成に続いて、発泡層を生成する。図2に示すように、凸型金型10の正面スライド18および側面スライド22を凹型金型40から遠ざける方向に移動する(S22)。凸型金型10と凹型金型40を少し離隔させてクラッキング間隔を開ける。また、原料供給管12内の封止部材14を封止面16が位置Aに来るように移動させておく。これにより、成形機1は図6に示す状態になる。この状態で、原料供給管12を通じて、高発泡率(例えば、10〜70倍)の発泡性原料を充填する(S24)。発泡性原料としては、溶融硬化層34の原料と同じ原料を用いる。ここでは、同じ原料を用いる例について説明しているが、例えば、耐熱グレード、着色、自己消火性グレード等が異なる発泡性原料を用いることとしてもよい。
【0026】
成形空間に発泡性原料を充填した後、図7に示すように、凹型金型40を凸型金型10に対してプレスして金型を閉じ、成形空間を閉鎖する(S26)。また、封止部材14を凹型金型40の側に移動し、封止面16によって原料供給管12の出口を閉じる。この状態で、凸型金型10の内部26に高温の蒸気を供給する(S26)。ここで、蒸気は高圧ボイラーによって圧力がかけられ、100℃以上の高温に加熱される。本実施の形態では、110℃に加熱した蒸気を凸型金型10の内部26に供給する。凸型金型10の内部に供給された蒸気は、ベントホールを通じて成形空間に供給される。成形空間内では、高温の蒸気によって、発泡性原料(高発泡率の発泡性ビーズ)が溶着し、高発泡率の発泡層36が形成される。発泡層36は、中間層を介して、溶融硬化層34に対しても溶着する。
【0027】
次に、凸型金型10の内部に冷却水を供給する(S28)。また、図示しないバキューム装置を用いて凸型金型10の内部を減圧して冷却水を蒸発させる。このときの蒸発潜熱を利用して、成形空間において成形された発泡樹脂容器を冷却する。また、発泡性樹脂に付着した冷却水を揮発させる。次に、図8に示すように、凸型金型10と凹型金型40を開いて、成形された発泡樹脂容器38を取り出す(S30)。
【0028】
図9は、成型された発泡樹脂容器38の構成を示す図である。発泡樹脂容器38は、その外底面および外側面に溶融硬化層34を有する。容器の内部は、高発泡率の発泡層36によって構成されている。溶融硬化層34と発泡層36の間には、発泡層36より低倍率の中間層35が介在している。なお、図では、説明の便宜上、溶融硬化層34、中間層35の境界を明確に記載しているが、溶融硬化層34および中間層35は同一プロセスにより生成され、発泡率が徐々に変化しており、実際には境界は明確ではない。溶融硬化層34と発泡層36との間に、発泡層36と発泡率の近い中間層35があるため、溶融硬化層34が剥離しにくい構成となっている。
【0029】
また、発泡樹脂容器38は、発泡性原料が発泡溶着された発泡層36を有する発泡樹脂容器であって、容器外面に形成された発泡性原料からなる溶融硬化層34と、溶融硬化層34と発泡層36との間に介在する発泡層36の発泡率より小さい発泡率を有する中間層35とを備え、中間層35は、底面と側面との接続部分において、他の部分より肉厚な構成を有している。この構成により、発泡率の低い中間層35によって応力が集中しやすい接続部分を補強することにより、発泡樹脂容器38の強度を高めることができる。
【0030】
また、発泡樹脂容器38の上端縁部付近に中間層を形成して、上端縁部の強度を高めることとしてもよい。さらに、上端縁部を加熱して溶融硬化層を形成してもよい。
【0031】
第1の実施の形態の発泡樹脂製品の製造方法は、金型の閉鎖圧力によって発泡性原料を凹型金型40の凹型底面に押し付けるので、適切に溶融硬化層34を生成することができる。また、側面スライド22を凹型金型40の側面に近づける方向に移動して発泡性原料を側面に押し付けるので、凹型金型40の側面においても溶融硬化層34を適切に生成でき、発泡樹脂容器38の外底面と外側面に均一の溶融硬化層34を生成できる。溶融硬化層34の厚さは、0.2〜3.0mmである。ここで、溶融硬化層34の厚さとは、溶融硬化層34のソリッドの部分の厚さを意味する。このような厚さの溶融硬化層34を有することに発泡樹脂容器の強度を高めることができる。
【0032】
なお、本明細書において、「均一」とは、溶融硬化層34の膜厚のバラツキがその中心値の±10%の範囲に収まっている状態を意味する。溶融硬化層34を均一にすることにより、溶融硬化層34の強度を一定にできる。
【0033】
第1の実施の形態の発泡樹脂製品の製造方法は、溶融硬化層34を生成する際には、正面スライド18を凹型金型40に近づける方向に移動しておき、発泡層36を生成する際には、凹型金型40から遠ざける方向に移動する。これにより、一つの凸型金型10を用いて大きさの異なる成形空間を形成することができる。
【0034】
第1の実施の形態の発泡樹脂製品の製造方法は、液状熱媒体を用いて凹型金型40の加熱および冷却を行っているので、凹型金型40の温度制御を速やかに行える。従来は、高温の水蒸気を成形空間に供給することによって溶着を行っていたが、この構成を利用して発泡性原料の融点以上に蒸気を加熱しようとした場合には、より高圧な水蒸気が必要になる。例えば、110℃の蒸気圧力は約0.15MPaなのに対し、150℃では約0.5MPaが必要となる。このため、大型ボイラーの配置、配管の高圧対応化が必要となる。これに対し、液状熱媒体を用いる本実施の形態では、高圧対応化の必要がない。
【0035】
第1の実施の形態の発泡樹脂製品の製造方法は、溶融硬化層34を生成した後、高発泡率の発泡性原料を用いて発泡層36を生成するので、発泡層36の発泡倍率を適切に制御することができる。特許文献3に記載した方法では、表面硬化層を生成する際の熱によって、成り行きで発泡層の倍率が制御されてしまうため、所望の断熱特性を得ることはできない。
【0036】
上記した実施の形態において、凹型金型40に微細パターンを形成しておいてもよい。これにより、溶融硬化層34の表面に微細な形状(テクスチャー)を形成することができる。
【0037】
(第2の実施の形態)
図10は、第2の実施の形態の成形機2を示す断面図である。第1の実施の形態では、容器の外底面および外側面に溶融硬化層を生成したが、第2の実施の形態では、容器の内底面および内側面に溶融硬化層を生成する成形機2の例について説明する。
【0038】
第2の実施の形態の成型機は、凸型金型10aと凹型金型40aとを有している。第1の実施の形態では、凸型金型10が原料供給管16、正面スライド18および側面スライド22を備えていたが、第2の実施の形態では、凹型金型40aがこれらの構成を備えている。また、第1の実施の形態では、凹型金型40が熱媒体循環路41を備えていたが、第2の実施の形態では、凸型金型10aが熱媒体循環路33を備えている。すなわち、第2の実施の形態の成形機2の凸型金型10aおよび凹型金型40aは、第1の実施の形態の成形機1の凸型金型10および凹型金型40と反対の役割を有する。
【0039】
第2の実施の形態の成形機2による発泡樹脂容器の製造方法は、基本的には、第1の実施の形態と同様である(図2参照)。以下、各処理工程における第2の実施の形態の成形機2の動作について図面を参照しながら説明する。
【0040】
図11に示すように、最初に、凸型金型10aの熱媒体循環路33に、発泡性原料の融点以上の温度(例えば、150℃)の液状熱媒体を循環させることにより、凸型金型10aの表面を加熱する。凹型金型40aの正面スライドを凸型金型10aの方向に移動させ、クラッキング間隔を残して金型を閉じる。次に、原料供給管42を通じて、低発泡率(例えば、3〜20倍)の発泡性原料を供給する。
【0041】
成形空間に発泡性原料を充填した後、図12に示すように、凸型金型10aを凹型金型40aに対してプレスして金型を閉じ、成形空間を閉鎖すると共に、封止部材44によって原料供給管42の出口を閉じる。
【0042】
続いて、図13に示すように、凹型金型40aの側面スライド52を凸型金型10aの側面の方向に移動させ、融点以上に加熱された凸型金型10aの側面および上面において、発泡性原料を溶融する。このときに、凹型金型40aから成形空間内に高温の蒸気(例えば、110℃)を供給する。次に、凸型金型10aの熱媒体循環路33に、発泡性原料の融点未満の温度(例えば、80℃)の液状熱媒体を循環させることにより、凸型金型10aの表面を冷却する。凸型金型10aの表面で溶融された発泡性原料は、冷却されることにより硬化し、溶融硬化層64を形成する。
【0043】
以上の工程により溶融硬化層64を形成する。なお、上記の工程を複数回繰り返し行ってもよい。これにより、溶融硬化層64を厚くすることができると共に、溶融硬化層64の表面をより平滑化することができる。
【0044】
溶融硬化層64の生成に続いて、発泡層66を生成する。図14に示すように、凹型金型40aの正面スライド48および側面スライド52を凸型金型10aから遠ざける方向に移動する。凸型金型10aと凹型金型40aを少し離隔させてクラッキング間隔を開ける。また、原料供給管42内の封止部材44を封止面46が位置Aに来るまで移動しておく。この状態で、原料供給管42を通じて、高発泡率(例えば、10〜70倍)の発泡性原料を充填する。発泡性原料としては、溶融硬化層64の原料と同じ原料を用いる。
【0045】
成形空間に発泡性原料を充填した後、図15に示すように、凸型金型10aを凹型金型40aに対してプレスして金型を閉じ、成形空間を閉鎖する。また、封止面46が正面スライド48の上面と同じ位置に来るまで封止部材44を移動し、原料供給管42の出口を閉じる。この状態で、凹型金型40aの内部に高温(例えば、110℃)の蒸気を供給し、成形空間内で高発泡率の発泡層66を形成する。
【0046】
次に、凹型金型40aの内部に冷却水を供給する。また、図示しないバキューム装置を用いて凹型金型40aの内部を減圧して冷却水を蒸発させる。このときの蒸発潜熱を利用して、成形空間において成形された発泡性樹脂を冷却する。また、発泡性樹脂に付着した冷却水を揮発させる。次に、図16に示すように、凸型金型10aと凹型金型40aを開いて、成形された発泡樹脂容器68を取り出す。
【0047】
図17は、成形された発泡樹脂容器68の構成を示す図である。発泡樹脂容器68は、その内底面および内側面に溶融硬化層64を有する。発泡樹脂容器68の外部は、高発泡率の発泡層66によって構成されている。溶融硬化層64と発泡層66との間には、発泡層66より低倍率の中間層65が介在している。溶融硬化層64と発泡層66との間に中間層65が介在することにより、溶融硬化層64が剥離しにくい構成となっている。
【0048】
また、発泡樹脂容器68は、発泡性原料が発泡溶着された発泡層66を有する発泡樹脂容器であって、容器内面に形成された発泡性原料からなる溶融硬化層64と、溶融硬化層64と発泡層66との間に介在する発泡層66の発泡率より小さい発泡率を有する中間層65とを備え、中間層65は、底面と側面との接続部分において、他の部分より肉厚な構成を有している。この構成により、発泡率の低い中間層65によって応力が集中しやすい接続部分を補強することにより、発泡樹脂容器68の強度を高めることができる。
【0049】
また、発泡樹脂容器68の上端縁部には、中間層65が形成されているので、上端縁部の強度を高めることができる。なお、上端縁部を加熱して溶融硬化層を形成してもよい。
【0050】
第2の実施の形態の発泡樹脂製品の製造方法は、金型の閉鎖圧力によって発泡性原料を凸型金型10aの凸部上面に押し付けるので、適切に溶融硬化層64を生成することができる。また、側面スライド52を凸型金型10aの側面に近づける方向に移動して発泡性原料を側面に押し付けるので、凸型金型10aの側面においても溶融硬化層64を適切に生成でき、発泡樹脂容器68の内底面と内側面に均一の溶融硬化層64を生成できる。
【0051】
第2の実施の形態の発泡樹脂製品の製造方法は、第1の実施の形態と同様に、一つの凹型金型40aを用いて大きさの異なる成形空間を形成することができると共に、凸型金型10aの温度制御を速やかに行える。また、発泡層66の発泡倍率を適切に制御できる。
【0052】
上記した実施の形態において、凸型金型10aに微細パターンを形成しておいてもよい。これにより、溶融硬化層64の表面に微細な形状(テクスチャー)を形成することができる。
【0053】
以上、本発明の発泡樹脂容器について実施の形態を挙げて詳細に説明したが、本発明の発泡樹脂容器は、上記した実施の形態にて説明した製造方法および成形機にて製造された容器に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上説明したように、本発明は、発泡樹脂容器は、中間層を有することにより、発泡層と溶融硬化層との接合強度を向上できるという効果を有し、冷凍空調機器や産業用空調設備のドレンパンや、クーラーボックス、プランター等の発泡樹脂容器として有用である。また、上記した例に限らず、本発明の発泡樹脂容器は、保温、断熱、緩衝性能を有し、これらの性能を必要とする容器として有用である。
【符号の説明】
【0055】
1,2 成形機
10 凸型金型
12 原料供給管
14 封止部材
16 封止面
18 正面スライド
20 エアシリンダ
22 側面スライド
24 エアシリンダ
26 内部の空間
28 蒸気供給口
30 冷却水供給口
32 ドレン管
34 溶融硬化層
35 中間層
36 発泡層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性原料が発泡溶着された発泡層を有する発泡樹脂容器であって、
容器内部または外部の少なくとも2つの面に形成された前記発泡性原料からなる溶融硬化層と、
前記溶融硬化層と前記発泡層との間に介在する前記発泡層の発泡率より小さい発泡率を有する中間層と、
を備える発泡樹脂容器。
【請求項2】
前記少なくとも2つの面は、法線が直交する関係にあることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂容器。
【請求項3】
前記溶融硬化層は、均一の膜厚を有する請求項1または2に記載の発泡樹脂容器。
【請求項4】
前記溶融硬化層の厚さは、0.2mm〜3.0mmである請求項1〜3のいずれかに記載の発泡樹脂容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−110836(P2011−110836A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269969(P2009−269969)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(594207447)旭化成株式会社 (7)
【Fターム(参考)】