発泡樹脂成形体の製造方法及び装置
【課題】発泡樹脂成形体の強度低下を抑制しつつスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させることができる発泡樹脂成形体の製造方法及び装置を提供する。
【解決手段】固定型11と可動型16とでなる一対の成形型10を用い、溶融状態の発泡性樹脂31を成形型10のキャビティ10aに充填することによりスキン層42と発泡層43とを有する発泡樹脂成形体40を成形した後に、発泡樹脂成形体40の冷却過程において、成形型10に回転可能に挿通されるとともにキャビティ10a側の先端部にスキン層42の一部を開口させるための刃部25を有するピン状部材20を回転させ、スキン層42の一部を開口させて発泡層43を露出させる。
【解決手段】固定型11と可動型16とでなる一対の成形型10を用い、溶融状態の発泡性樹脂31を成形型10のキャビティ10aに充填することによりスキン層42と発泡層43とを有する発泡樹脂成形体40を成形した後に、発泡樹脂成形体40の冷却過程において、成形型10に回転可能に挿通されるとともにキャビティ10a側の先端部にスキン層42の一部を開口させるための刃部25を有するピン状部材20を回転させ、スキン層42の一部を開口させて発泡層43を露出させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発泡性樹脂を成形型のキャビティに充填することによりスキン層と発泡層とを有する発泡樹脂成形体を成形した後に、スキン層の一部を開口させて発泡層を露出させる発泡樹脂成形体の製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば自動車用部品などの種々の工業用部品の分野において、軽量性、断熱性及び防音性等の優れた特性を有する発泡樹脂成形体が幅広く採用されている。かかる発泡樹脂成形体は、使用される目的及び用途などに応じて、好適な使用材料を選定し、また、成形体内部の気泡の形態や発泡倍率などの諸条件を好適に設定して成形されている。
【0003】
このような発泡樹脂成形体の成形方法として、樹脂に発泡剤を含有させた発泡性樹脂を固定型と可動型とでなる成形型のキャビティに充填した後に、可動型を型開き方向に移動させてキャビティの容積を拡大することにより、発泡性樹脂の発泡を促進させるようにした成形方法(所謂コアバック法)が知られている。
【0004】
かかる成形方法によって成形された発泡樹脂成形体は、成形型のキャビティに充填した発泡性樹脂が成形型によって表面から冷却されることにより、発泡樹脂成形体の表面に表面層である非発泡のスキン層が形成されるとともに該スキン層の内側に発泡性樹脂の発泡が促進された発泡層が形成されることとなる。
【0005】
このようにして成形される発泡樹脂成形体を断熱材や防音材として使用する場合、発泡樹脂成形体の表面に形成されるスキン層によって断熱効果や防音効果が低下することとなるので、断熱効果や防音効果を効果的に得るためには表面に形成されるスキン層を取り除くことが望まれる。
【0006】
断熱効果や防音効果が低下することを抑制するためにスキン層を取り除くものではないが、例えば特許文献1には、発泡体の表面に接着性シートを積層した後に、接着性シートと反対側の発泡体面に形成されたスキン層全体をスライス刃によりスライス除去するようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−344459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に記載されるように、表面に形成されるスキン層全体をスライス除去することにより、発泡層が露出して発泡樹脂成形体において断熱効果や防音効果を効果的に得ることができるものの、スキン層全体を除去すると発泡樹脂成形体の強度が大きく低下することが問題となる。
【0009】
これに対し、発泡樹脂成形体を成形した後に表面に形成されるスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させることにより、発泡樹脂成形体の強度が低下することを抑制しつつ断熱効果や防音効果を効果的に得ることができるものと考えられる。
【0010】
このように表面に形成されるスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させる方法として、リブ部を発泡樹脂成形体の本体部と一体的に成形した後に、このリブ部を折除することによってリブ部に対応する部分のスキン層を開口させて発泡層を露出させることが考えられる。
【0011】
図15は、発泡樹脂成形体においてスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させる方法を説明するための説明図であり、図15(a)は、発泡樹脂成形体の本体部とリブ部とを一体的に成形した状態を示し、図15(b)は、リブ部を折除して発泡樹脂成形体の発泡層を露出させた状態を示している。
【0012】
図15(a)に示すように、表面に形成されるスキン層102と該スキン層102の内側に設けられた発泡層103とを有する本体部101と、該本体部101の表面のスキン層102から延びる非発泡のリブ部105とが一体的に形成された発泡樹脂成形体100を成形した後に、前記リブ部105に外部から所定の倒し込み力F1を作用させることにより、図15(b)に示すように、該リブ部105とともに本体部101のスキン層102の一部を開口させて、スキン層102に開口部102aを形成して発泡層103を露出させることが考えられる。
【0013】
図16は、発泡樹脂成形体の本体部とリブ部とを一体的に形成する方法を説明するための説明図であり、図16(a)は、固定型と可動型とでなる成形型のキャビティに発泡性樹脂を充填した状態を示し、図16(b)は、成形型のキャビティに発泡性樹脂を充填した後に可動型を型開き方向に移動した状態を示している。
【0014】
図15(a)に示す発泡樹脂成形体100は、図16(a)に示すように、固定型111と可動型121とによってキャビティ110aが形成されるとともに固定型111のキャビティ面111aにリブ部105を形成するための凹部111bが設けられた成形型110を用い、成形型110のキャビティ110aに注入経路116を通じて発泡性樹脂131を充填した後に、図16(b)に示すように、可動型121を型開き方向(矢印X1で示す方向)に移動させて発泡性樹脂131の発泡を促進させることにより成形することができる。
【0015】
図17は、発泡樹脂成形体のリブ部を折除した状態を説明するための説明図である。図14に示すようにして成形された発泡樹脂成形体100においてリブ部105を折除するために、図17(a)に示すように、発泡樹脂成形体100のリブ部105に該リブ部105の延びる方向と略直交する方向に外部から所定の倒し込み力F1を作用させると、図17(b)に示すように、リブ部105に連続するスキン層102がリブ部105とともに大きく剥離して発泡樹脂成形体100の強度が低下する畏れがある。
【0016】
そこで、本発明は、比較的簡単な方法によって発泡樹脂成形体の強度低下を抑制しつつスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させることができる発泡樹脂成形体の製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このため、本願の請求項1に係る発明は、固定型と可動型とでなる一対の成形型を用い、溶融状態の発泡性樹脂を前記成形型のキャビティに充填することにより表面層であるスキン層と該スキン層の内側に設けられる発泡層とを有する発泡樹脂成形体を成形した後に、前記スキン層の一部を開口させて前記発泡層を露出させる発泡樹脂成形体の製造方法であって、前記成形型のキャビティに前記発泡性樹脂を充填してスキン層と発泡層とを有する発泡樹脂成形体を成形した後に、前記発泡樹脂成形体の冷却過程において、前記成形型に回転可能に挿通されるとともに前記キャビティ側の先端部に前記スキン層の一部を開口させるための刃部を有するピン状部材を回転させ、前記スキン層の一部を開口させて前記発泡層を露出させるようにした、ことを特徴とする。
【0018】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記ピン状部材は、略円柱状又は略円筒状に形成されるとともに前記刃部が該ピン状部材の外周側において該ピン状部材の中心軸と略平行に突出して延びるように形成されている、ことを特徴とする。
【0019】
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記ピン状部材は、前記キャビティ側の先端部に略円筒状に形成された円筒部を有し、前記刃部は、前記円筒部のキャビティ側から該ピン状部材の中心軸方向に延びるように設けられている、ことを特徴とする。
【0020】
また更に、本願の請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明において、前記刃部は、前記成形型のキャビティ面から少なくとも前記発泡樹脂成形体のスキン層の厚さ以上前記キャビティ内に突出するように設けられている、ことを特徴とする。
【0021】
また更に、本願の請求項5に係る発明は、請求項3又は請求項4に係る発明において、前記ピン状部材は、該ピン状部材の内部に前記キャビティ側の先端部からエアを噴出するためのエア供給孔を有し、前記成形型から前記発泡樹脂成形体を離型させる際に、前記刃部に前記エア供給孔を通じてエアを噴出するようにした、ことを特徴とする。
【0022】
また更に、本願の請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5の何れか1項に係る発明において、前記ピン状部材は、前記成形型から前記発泡樹脂成形体を離型させるためのエジェクタピンを兼ねている、ことを特徴とする。
【0023】
また更に、本願の請求項7に係る発明は、請求項1から請求項6の何れか1項に係る発明において、前記成形型は、前記発泡樹脂成形体を成形するときに、前記ピン状部材近傍に位置する前記発泡樹脂成形体のスキン層を前記発泡樹脂成形体のスキン層の他の部分よりも薄くさせるように構成されている、ことを特徴とする。
【0024】
また更に、本願の請求項8に係る発明は、固定型と可動型とでなる一対の成形型と、前記成形型のキャビティに溶融状態の発泡性樹脂を注入する注入手段と、を備え、前記キャビティに溶融状態の発泡性樹脂を注入することにより表面層であるスキン層と該スキン層の内側に設けられる発泡層とを有する発泡樹脂成形体を成形した後に、前記スキン層の一部を開口させて前記発泡層を露出させる発泡樹脂成形体の製造装置であって、前記成形型に回転可能に挿通されるとともに前記キャビティ側の先端部に前記スキン層の一部を開口させるための刃部を有するピン状部材と、前記ピン状部材を回転駆動させる回転駆動手段と、前記回転駆動手段の作動を制御する回転制御手段と、を有し、前記回転制御手段は、前記キャビティに前記発泡性樹脂を注入することによりスキン層と発泡層とを有する発泡樹脂成形体を成形した後に、前記発泡樹脂成形体の冷却過程において、前記ピン状部材を回転させ、前記刃部により前記スキン層の一部を開口させて前記発泡層を露出させるように前記回転駆動手段の作動を制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本願の請求項1に係る発明によれば、成形型のキャビティに発泡性樹脂を充填してスキン層と発泡層とを有する発泡樹脂成形体を成形した後に、発泡樹脂成形体の冷却過程において、成形型に回転可能に挿通されるとともにキャビティ側の先端部にスキン層の一部を開口させるための刃部を有するピン状部材を回転させ、スキン層の一部を開口させて発泡層を露出させる。
【0026】
これにより、スキン層が大きく剥離することを抑制して、比較的簡単な方法によって発泡樹脂成形体の強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形体のスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させることができる。したがって、強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形体の防音効果及び断熱効果を向上させることができる発泡樹脂成形体を比較的容易に製造することができる。また、スキン層を開口させて発泡層を露出させるためのリブ部を発泡樹脂成形体の本体部と一体的に成形した後に作業者や機械によってリブ部を切除する後工程を別途設ける必要がなく、発泡樹脂成形体の製造工程及び製造コストの低減を図ることができる。
【0027】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、ピン状部材は、略円柱状又は略円筒状に形成されるとともに刃部が該ピン状部材の外周側において該ピン状部材の中心軸と略平行に突出して延びるように形成されていることにより、前記効果をより具体的に実現し得るピン状部材を提供することができる。
【0028】
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、ピン状部材は、キャビティ側の先端部に略円筒状に形成された円筒部を有し、刃部は、円筒部のキャビティ側から該ピン状部材の中心軸方向に延びるように設けられていることにより、前記効果をより具体的に実現し得るピン状部材を提供することができる。
【0029】
また更に、本願の請求項4に係る発明によれば、刃部は、成形型のキャビティ面から少なくとも発泡樹脂成形体のスキン層の厚さ以上キャビティ内に突出するように設けられていることにより、発泡樹脂成形体のスキン層の一部を確実に開口させることができ、前記効果を有効に奏することができる。
【0030】
また更に、本願の請求項5に係る発明によれば、ピン状部材は、該ピン状部材の内部にキャビティ側の先端部からエアを噴出するためのエア供給孔を有し、成形型から発泡樹脂成形体を離型させる際に、刃部にエア供給孔を通じてエアを噴出することにより、刃部にスキン層や発泡層が付着した場合においても取り除く工程を別途設けることなく、刃部にスキン層や発泡層が残存することを防止することができる。
【0031】
また更に、本願の請求項6に係る発明によれば、ピン状部材は、成形型から発泡樹脂成形体を離型させるためのエジェクタピンを兼ねていることにより、エジェクタピンをピン状部材の近傍に別途配置する必要がなく、エジェクタピンをピン状部材の近傍に別途設ける場合に比べて製造コストの低減を図ることができる。
【0032】
また更に、本願の請求項7に係る発明によれば、成形型は、発泡樹脂成形体を成形するときに、ピン状部材近傍に位置する発泡樹脂成形体のスキン層を発泡樹脂成形体のスキン層の他の部分よりも薄くさせるように構成されていることにより、発泡樹脂成形体のスキン層の一部をより確実に開口させることができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0033】
また更に、本願の請求項8に係る発明によれば、成形型に回転可能に挿通されるとともにキャビティ側の先端部にスキン層の一部を開口させるための刃部を有するピン状部材と、ピン状部材を回転駆動させる回転駆動手段と、回転駆動手段の作動を制御する回転制御手段と、を有し、回転制御手段は、キャビティに前記発泡性樹脂を注入することによりスキン層と発泡層とを有する発泡樹脂成形体を成形した後に、発泡樹脂成形体の冷却過程において、ピン状部材を回転させ、刃部によりスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させるように回転駆動手段の作動を制御する。
【0034】
これにより、比較的簡単な構成によって、スキン層が大きく剥離することを抑制して、発泡樹脂成形体の強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形体のスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させることができる。したがって、強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形体の防音効果及び断熱効果を向上させることができる発泡樹脂成形体を比較的容易に製造することができる。また、スキン層を開口させて発泡層を露出させるためのリブ部を発泡樹脂成形体の本体部と一体的に成形した後に作業者や機械によってリブ部を切除する後工程を別途設ける必要がなく、発泡樹脂成形体の製造工程及び製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発泡樹脂成形体の製造装置を示す概略説明図である。
【図2】第1実施形態に係る前記製造装置の成形型に用いるピン状部材を示す図である。
【図3】発泡樹脂成形体の製造工程を説明するための説明図である。
【図4】第1実施形態に係る前記製造装置において製造された発泡樹脂成形体の要部を示す図である。
【図5】第1実施形態に係る前記製造装置において製造された別の発泡樹脂成形体の要部を示す図である。
【図6】前記ピン状部材の変形例を説明するための説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る発泡樹脂成形体の製造装置の成形型の要部を示す図である。
【図8】第2実施形態に係る前記成形型に用いるピン状部材を示す図である。
【図9】第2実施形態に係る前記製造装置において製造された発泡樹脂成形体の要部を示す図である。
【図10】第2実施形態に係る前記成形型に用いるピン状部材の刃部の変形例を示す断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る発泡樹脂成形体の製造装置の成形型の要部を示す図である。
【図12】第3実施形態に係る前記成形型に用いるピン状部材を示す図である。
【図13】第3実施形態に係る前記製造装置において製造された発泡樹脂成形体の要部を示す図である。
【図14】第3実施形態に係る前記成形型に用いるピン状部材の刃部の変形例を示す断面図である。
【図15】発泡樹脂成形体においてスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させる方法を説明するための説明図である。
【図16】発泡樹脂成形体の本体部とリブ部とを一体的に成形する方法を説明するための説明図である。
【図17】発泡樹脂成形体のリブ部を折除した状態を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る発泡樹脂成形体の製造装置を示す概略説明図である。図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る発泡樹脂成形体を製造するための製造装置Mは、固定型11と可動型16とでなる一対の成形型10と、成形型10のキャビティ10aに溶融状態の発泡性樹脂を注入する注入手段として射出装置30とを備えている。
【0037】
成形型10は、常時静止状態に維持される固定型11と、固定型11に対して成形型10の開閉方向(図1の矢印X2方向)に移動可能に設けられた可動型16とで構成され、固定型11と可動型16を互いに組み合わせることで、発泡樹脂成形体の所定形状に対応したキャビティ10aが形成されている。
【0038】
固定型11は、発泡樹脂成形体の所定形状に対応して形成されたキャビティ面11aを有するとともに、射出装置30からキャビティ10aに溶融状態の発泡性樹脂を注入するための注入経路12を有している。
【0039】
一方、可動型16は、発泡樹脂成形体の所定形状に対応して形成されたキャビティ面17aを有するとともに固定型11と組み合わせられる本体部17を備えている。本体部17には、成形型10の開閉方向において断面円形状に形成される孔部17bが形成され、この孔部17bには、断面円形状に形成されたピン状部材20が回転可能に挿通されている。
【0040】
図2は、第1実施形態に係る前記製造装置の成形型に用いるピン状部材を示す図であり、図2(a)は、前記ピン状部材の側面図、図2(b)は、図2(a)における矢印V1方向から見た前記ピン状部材の正面図である。図2(a)及び図2(b)に示すように、ピン状部材20は、略円柱状に形成され、円柱状に形成された円柱部21と、該円柱部21のキャビティ面21aに備えられた刃部25とを有している。
【0041】
ピン状部材20の刃部25は、ピン状部材20の円柱部21のキャビティ面21aにおいてピン状部材20の外周側に備えられ、ピン状部材20の中心軸C1と略平行に突出して延びるように設けられている。ピン状部材20は、キャビティ面21aが、ピン状部材20の外周に位置する本体部17のキャビティ面17aと略面一になるように配置されている。
【0042】
成形型10には、ピン状部材20を回転駆動させるサーボモータなどの回転駆動手段(不図示)が配設され、ピン状部材20は、前記回転駆動手段に連結されて中心軸C1に対して矢印R1に示す方向に回転できるように構成されている。なお、ピン状部材20の刃部25は、後述するように、発泡樹脂成形体のスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させるために設けられている。
【0043】
本実施形態では、成形型10は金属製の材料を用いて形成されるが、可動型16の本体部17において、孔部17bの周囲のキャビティ面17aが成形型10の他の部分よりも熱伝導率の低い材料、例えば耐熱性を有するポリイミド材料からなるシート部材18によって形成されている。シート部材18は、これに限定されるものではないが、円盤状に形成されている。なお、シート部材18に代えて、孔部17bの周囲のキャビティ面17aをアルミナやシリカなどの熱伝導率の低い無機酸化物によってコーティングするようにすることも可能である。
【0044】
また、製造装置Mには、可動型16を成形型10の開閉方向に移動させるサーボモータなどの型移動手段(不図示)が配設され、可動型16は、前記型移動手段に連結されている。これにより、成形型10は、固定型11に対して可動型16が成形型10の開閉方向に移動可能に構成され、固定型11と可動型16とを型閉めした後に可動型16を成形型10の型開き方向に移動させることによりキャビティの容積が拡大可能に構成されている。
【0045】
射出装置30は、溶融状態の発泡性樹脂31を成形型10のキャビティ10aに注入するものであり、樹脂32を混練溶融させるシリンダ33を備え、シリンダ33の内部にはスクリュー34が備えられている。また、スクリュー34の後端には、スクリュー駆動機構及び射出機構(共に不図示)が連結されている。
【0046】
射出装置30では、シリンダ33の周囲に設けられた加熱ヒータ(不図示)とスクリュー34とによって、シリンダ33に投入された樹脂32を順次加熱するとともに混練溶融させる。そして、混練溶融された樹脂32に対し、二酸化炭素又は窒素等の不活性ガスを含むボンベ35から超臨界流体発生装置36を介して超臨界状態にされた前記不活性ガスが、超臨界流体注入装置37によって注入され、樹脂32に発泡剤を含有させた発泡性樹脂31が形成される。
【0047】
シリンダ33内の発泡性樹脂31は、スクリュー34が前記スクリュー駆動機構によって回転されるとともに前記射出機構によって射出されることによって成形型10のキャビティ10aに固定型11の注入経路12を通じて注入される。
【0048】
本実施形態では、樹脂32としては、例えばポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂が用いられる。また、本実施形態では、発泡性樹脂31に含有される発泡剤に、物理発泡剤として超臨界状態にある流体を用いているが、その他の物理発泡剤を用いてもよい。あるいは、化学発泡剤を使用することも可能である。
【0049】
また、製造装置Mは、該製造装置Mを総合的に制御する制御ユニット(不図示)を備えている。該制御ユニットは、成形型10の開閉駆動、成形型10のピン状部材20の回転駆動、射出装置30の発泡性樹脂31の注入機構等の各種制御を行うように構成されている。なお、前記制御ユニットは、例えばマイクロコンピュータを主要部として構成されている。
【0050】
次に、前記製造装置Mを用いた発泡樹脂成形体の製造について説明する。
図1に示すように、先ず、可動型16の本体部17のキャビティ面17aとピン状部材20の円柱部21のキャビティ面21aとが略面一に配置された状態で、成形型10が型閉じされる。そして、成形型10のキャビティ10aに、樹脂32に発泡剤として超臨界状態の流体を含有させた発泡性樹脂31が射出装置30から注入され、溶融状態の発泡性樹脂31が成形型10のキャビティ10aに充填された後に、成形型10のキャビティ10aの容積を拡大させるように可動型16が型開き方向に移動される。
【0051】
図3は、発泡樹脂成形体の製造工程を説明するための説明図であり、図3(a)は、成形型10のキャビティ10aに発泡性樹脂31が充填された状態を示し、図3(b)は、キャビティ10aに発泡性樹脂31が充填された後に可動型16が型開き方向に移動された状態を示している。
【0052】
図3(a)に示すように、成形型10のキャビティ10aに注入経路12を通じて発泡性樹脂31が充填された後に、図3(b)に示すように、キャビティ10aの容積を拡大するようにピン状部材20とともに可動型16を型開き方向(矢印X3で示す方向)に移動させて発泡性樹脂31の発泡を促進させる。
【0053】
可動型16が型開き方向に所定位置まで移動されると、所定形状の発泡樹脂成形体40が成形される。発泡性樹脂31は、成形型10によってその表面から冷却され、発泡樹脂成形体40は、表面層である非発泡のスキン層42と該スキン層42の内側に発泡性樹脂31の発泡が促進された発泡層43とを有するように成形される。
【0054】
成形型10に挿通されたピン状部材20の刃部25は、発泡樹脂成形体40が成形されるときに、ピン状部材20近傍に位置する発泡樹脂成形体40のスキン層42の厚さ以上キャビティ10a内に突出するように設けられており、図3(b)に示すように、発泡樹脂成形体40には、ピン状部材20の刃部25によってスキン層42に三角錐状に切り欠かれた切欠部40aが形成されている。
【0055】
本実施形態では、ピン状部材20の周囲のキャビティ面17aが成形型10の他の部分よりも熱伝導率の低い材料からなるシート部材18によって形成されているので、発泡樹脂成形体40が成形されるときに、ピン状部材20近傍に位置する発泡樹脂成形体40のスキン層42が発泡樹脂成形体40のスキン層42の他の部分よりも薄く形成されている。
【0056】
このようにしてスキン層42と発泡層43とを有する発泡樹脂成形体40を成形した後に、可動型16を所定位置に保持した状態で成形型10内において発泡樹脂成形体40を冷却する発泡樹脂成形体40の冷却過程において、可動型16に対してピン状部材20を回転させ、発泡樹脂成形体40を製造する。
【0057】
図4は、第1実施形態に係る前記製造装置において製造された発泡樹脂成形体の要部を示す図であり、図4(a)は、スキン層42の一部が開口された発泡樹脂成形体40の要部を示す断面図、図4(b)は、図4(a)における矢印V2方向から見た発泡樹脂成形体40の要部を示す正面図である。
【0058】
発泡樹脂成形体40が成形された後に、ピン状部材20を中心軸C1に対して矢印R1で示す方向に360度以上回転させることにより、図4(a)及び図4(b)に示すように、発泡樹脂成形体40には、ピン状部材20の刃部25によって正面視で円形状に形成されるとともに断面三角状に形成された開口部40bが形成されることとなる。
【0059】
ピン状部材20の刃部25は、ピン状部材20近傍に位置する発泡樹脂成形体40のスキン層42の厚さ以上キャビティ10a内に突出するように設けられているので、開口部40bは、発泡樹脂成形体40のスキン層42を貫通するように形成され、発泡樹脂成形体40では、スキン層42の一部が開口されて発泡層43が露出させられる。
【0060】
そして、発泡樹脂成形体40が製造された後には、可動型16が型開き方向にさらに移動されて成形型10の型開きが行われ、次いで、成形型10から発泡樹脂成形体40が離型され、発泡樹脂成形体40が取り出される。
【0061】
成形型10には、発泡樹脂成形体40を離型させるためのエジェクタピン(不図示)が備えられており、成形型10から発泡樹脂成形体40が離型されるようになっている。なお、ピン状部材20が、成形型10から発泡樹脂成形体40を離型させるためのエジェクタピンを兼ねるようにすることも可能である。かかる場合には、エジェクタピンをピン状部材20の近傍に別途配置する必要がなく、エジェクタピンをピン状部材20の近傍に別途設ける場合に比べて製造コストの低減を図ることができる。
【0062】
このように、本実施形態では、成形型10のキャビティ10aに発泡性樹脂31を充填してスキン層42と発泡層43とを有する発泡樹脂成形体40を成形した後に、発泡樹脂成形体40の冷却過程において、成形型10に回転可能に挿通されるとともにキャビティ10a側の先端部にスキン層42の一部を開口させるための刃部25を有するピン状部材20を回転させ、スキン層42の一部を開口させて発泡層43を露出させる。
【0063】
これにより、スキン層42が大きく剥離することを抑制して、比較的簡単な方法によって発泡樹脂成形体40の強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形体40のスキン層42の一部を開口させて発泡層43を露出させることができる。したがって、強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形体40の防音効果及び断熱効果を向上させることができる発泡樹脂成形体40を比較的容易に製造することができる。また、スキン層を開口させて発泡層を露出させるためのリブ部を発泡樹脂成形体の本体部と一体的に成形した後に作業者や機械によってリブ部を切除する後工程を別途設ける必要がなく、発泡樹脂成形体の製造工程及び製造コストの低減を図ることができる。
【0064】
また、成形型10は、発泡樹脂成形体40を成形するときに、ピン状部材20近傍に位置する発泡樹脂成形体40のスキン層42を発泡樹脂成形体40のスキン層42の他の部分よりも薄くさせるように構成されていることにより、発泡樹脂成形体40のスキン層42の一部をより確実に開口させることができる。
【0065】
前述した実施形態では、発泡樹脂成形体40が成形された後に、発泡樹脂成形体40の冷却過程において、ピン状部材20が中心軸C1に対して矢印R1で示す方向に360度以上回転されているが、ピン状部材20を所定角度回転させるようにすることも可能である。
【0066】
図5は、第1実施形態に係る前記製造装置において製造された別の発泡樹脂成形体の要部を示す図であり、図5では、ピン状部材20を180度回転させて製造した発泡樹脂成形体の要部を示している。図5に示すように、ピン状部材20を中心軸C1に対して矢印R1で示す方向に180度回転させることにより、発泡樹脂成形体40に、ピン状部材20の刃部25によって正面視で略半円状に形成されるとともに断面三角状に形成された開口部40cを形成するようにすることも可能である。
【0067】
このように、ピン状部材20の回転角度を調整することで、発泡樹脂成形体40のスキン層42を開口させて発泡層43を露出させる大きさを調整することができ、発泡樹脂成形体40の強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形体40の防音効果及び断熱効果を効果的に得ることができる。
【0068】
また、前述した実施形態では、成形型10は、ピン状部材20の周囲のキャビティ面17aが成形型10の他の部分よりも熱伝導率の低い材料からなるシート部材18によって形成されているが、ピン状部材20の内部のキャビティ10a側に成形型10の他の部分よりも熱伝導率の低い材料からなるシート部材を挿入させ、ピン状部材20近傍に位置する発泡樹脂成形体40のスキン層42を発泡樹脂成形体40のスキン層42の他の部分よりも薄くさせるようにすることも可能である。
【0069】
図6は、前記ピン状部材の変形例を説明するための説明図である。図6に示すように、円柱部21のキャビティ側の内部に成形型10の他の部分よりも熱伝導率の低い材料からなるシート部材28を挿入したピン状部材50を用い、発泡樹脂成形体40を成形したときに、ピン状部材50近傍に位置する発泡樹脂成形体40のスキン層42を発泡樹脂成形体40のスキン層42の他の部分よりも薄くさせるようにすることも可能である。
【0070】
図6では、ピン状部材50の円柱部21の内部に成形型10の他の部分よりも熱伝導率の低い材料からなるシート部材28が挿入されているが、円柱部21のキャビティ面21aをシート部材28によって形成するようにすることも可能である。また、円柱部21のキャビティ面21aをアルミナやシリカなどの熱伝導率の低い無機酸化物によってコーティングするようにすることも可能である。さらに、ピン状部材50の刃部25を成形型10の他の部分よりも熱伝導率の低い材料から形成したり、刃部25の表面25aをアルミナやシリカなどの熱伝導率の低い無機酸化物によってコーティングしたりするようにしてもよい。
【0071】
また、本実施形態では、ピン状部材20,50は、略円柱状に形成され、円柱部21と刃部25とを有しているが、キャビティ面を備えて略円筒状に形成された円筒部と該円筒部のキャビティ面に備えられた刃部とを有し、略円筒状に形成されたピン状部材を用いることも可能である。
【0072】
図7は、本発明の第2実施形態に係る発泡樹脂成形体の製造装置の成形型の要部を示す図である。また、図8は、第2実施形態に係る前記成形型に用いるピン状部材を示す図であり、図8(a)は、前記ピン状部材の断面図、図8(b)は、図8(a)における矢印V3方向から見た前記ピン状部材の正面図、図8(c)は、図8(b)におけるY8c−Y8c線に沿った前記ピン状部材の刃部の断面図である。
【0073】
本発明の第2実施形態に係る発泡樹脂成形体の製造装置は、本発明の第1実施形態に係る製造装置Mと、成形型10のピン状部材が異なっているとともに該ピン状部材にエアを供給するためのエア供給手段が備えられていること以外は同様であるので、本発明の第1実施形態に係る成形装置Mと同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0074】
図7に示すように、本発明の第2実施形態に係る発泡樹脂成形体の製造装置の成形型においても、可動型16の本体部17に形成された孔部17bに、断面円形状に形成されたピン状部材60が回転可能に挿通されており、図8(a)、図8(b)及び図8(c)に示すように、ピン状部材60は、略円柱状に形成され、円柱状に形成された円柱部61と、該円柱部61のキャビティ側において円筒状に形成された円筒部62と、該円筒部62のキャビティ側に備えられた刃部65とを有している。
【0075】
ピン状部材60の刃部65は、円筒部62のキャビティ10a側からピン状部材60の中心軸C1方向に該中心軸C1まで延びるように設けられている。刃部65は、中心軸C1と直交する方向に延び、円筒部62内に形成された空間部62aのキャビティ10a側の一部を覆うように扇形状に形成されている。
【0076】
ピン状部材60においても、該ピン状部材60は、中心軸C1に対して矢印R1で示す方向に回転可能に構成されている。ピン状部材60の刃部65において、回転方向前方側の端面65aと回転方向後方側の端面65bとのなす角度は、これに限定されるものではないが、60度に設定されている。
【0077】
刃部65は、刃部65のキャビティ側の端面65cが中心軸C1と略直交する方向に延びるように形成され、刃部65のキャビティ側と反対側の端面65dが、回転方向前方側の端面65aから回転方向後方側に向かうにつれてキャビティ側の端面65cから離間するように形成され、回転方向前方側が先細り状に形成されている。具体的には、図8(c)に示すように、刃部65は、回転方向前方側の端面65aがシャープエッジとされていると共に断面台形状に形成されている。
【0078】
刃部65はまた、可動型16の本体部17のキャビティ面17aから少なくとも発泡樹脂成形体のスキン層の厚さ以上キャビティ10a内に突出するように設けられている。図7では、二点鎖線を用いて成形型10のキャビティ10aに発泡性樹脂を充填することにより成形される発泡樹脂成形体のスキン層を示しているが、図7に示すように、刃部65は、本体部17のキャビティ面17aから発泡樹脂成形体のスキン層72の厚さ分だけキャビティ10a内に突出するように設けられている。
【0079】
第2実施形態に係るピン状部材60には、ピン状部材60の内部に、具体的には円柱部60の内部にキャビティ10a側の先端部からエアを噴出するためのエア供給孔61aが設けられている。
【0080】
本発明の第2実施形態に係る製造装置では、ピン状部材60にエアを供給するための圧縮機などのエア供給手段(不図示)が備えられ、該エア供給手段からピン状部材60にエアを供給することができるように構成されている。また、前記製造装置では、前記制御ユニットによって、成形型10から発泡樹脂成形体を離型させる際に、前記エア供給手段の作動が制御され、刃部65にエア供給孔61aを通じてエアが噴出される。
【0081】
このようにして構成される本発明の第2実施形態に係る発泡樹脂成形体の製造装置においても、本体部17のキャビティ面17aから刃部65が発泡樹脂成形体のスキン層の厚さ分だけキャビティ10a側に突出するようにピン状部材60が配置された状態で、成形型10が型閉じされて成形型10のキャビティ10aに発泡性樹脂が充填される。
【0082】
その後に、成形型10のキャビティ10aの容積を拡大させるように可動型16が型開き方向に移動され、所定形状の発泡樹脂成形体が成形される。前記発泡樹脂成形体は、表面層である非発泡のスキン層と該スキン層の内側に発泡性樹脂の発泡が促進された発泡層とを有するように成形される。
【0083】
前記発泡樹脂成形体ではまた、ピン状部材60の円筒部62内の空間部62aのキャビティ10a側において表面層であるスキン層が形成されることとなるが、ピン状部材60の刃部62が設けられた部分において、前記発泡樹脂成形体のスキン層が扇形状に切り欠かれることとなる。
【0084】
そして、前記発泡樹脂成形体を成形した後に、可動型16を所定位置に保持した状態で成形型10内において前記発泡樹脂成形体を冷却する前記発泡樹脂成形体の冷却過程において、可動型16に対してピン状部材60を回転させ、前記発泡樹脂成形体を製造する。
【0085】
図9は、第2実施形態に係る前記製造装置において製造された発泡樹脂成形体の要部を示す図であり、図9(a)は、スキン層の一部が開口された前記発泡樹脂成形体の要部を示す断面図、図9(b)は、図9(a)における矢印V4方向から見た発泡樹脂成形体の要部を示す正面図である。
【0086】
前記発泡樹脂成形体が成形された後に、図7に示すように、ピン状部材60を中心軸C1に対して矢印R1で示す方向に360度以上回転させることにより、図9(a)及び図9(b)に示すように、発泡樹脂成形体70には、ピン状部材60の刃部65によって正面視で円形状に形成される開口部70aが形成されることとなる。
【0087】
刃部65は、ピン状部材60近傍に位置する発泡樹脂成形体70のスキン層72の厚さ以上キャビティ10a内に突出するように設けられているので、開口部70aは、発泡樹脂成形体70のスキン層72を貫通するように形成され、発泡樹脂成形体70では、スキン層72の一部が開口されて発泡層73が露出させられる。なお、ピン状部材60を回転させながら当該ピン状部材60を徐々にキャビティ10a側に向かってスキン層72の厚さ以上押し出すことで、スキン層72及び発泡層73の一部の切欠きが行え、より確実に発泡層73を露出させることが可能となる。
【0088】
発泡樹脂成形体70が製造された後には、可動型16が型開き方向にさらに移動されて成形型10の型開きが行われ、次いで、成形型10から発泡樹脂成形体70が離型され、発泡樹脂成形体70が取り出されるが、第2実施形態に係る製造装置では、成形型10から発泡樹脂成形体70を離型させる際に、刃部65にエア供給孔61aを通じてエアが噴出される。
【0089】
このように、本実施形態においても、成形型10のキャビティ10aに発泡性樹脂31を充填してスキン層72と発泡層73とを有する発泡樹脂成形体70を成形した後に、発泡樹脂成形体70の冷却過程において、成形型10に回転可能に挿通されるとともに刃部65を有するピン状部材60を回転させ、スキン層72の一部を開口させて発泡層73を露出させることにより、スキン層72が大きく剥離することを抑制して、比較的簡単な方法によって発泡樹脂成形体70の強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形体70のスキン層72の一部を開口させて発泡層73を露出させることができる。
【0090】
また、刃部65は、成形型10のキャビティ面17aから少なくとも発泡樹脂成形体70のスキン層72の厚さ以上キャビティ10a内に突出するように設けられていることにより、発泡樹脂成形体70のスキン層72の一部を確実に開口させることができ、前記効果を有効に奏することができる。
【0091】
更に、ピン状部材60は、該ピン状部材60の内部にキャビティ10a側の先端部からエアを噴出するためのエア供給孔61aを有し、成形型10から発泡樹脂成形体70を離型させる際に、刃部65にエア供給孔61aを通じてエアを噴出することにより、刃部65にスキン層や発泡層が付着した場合においても取り除く工程を別途設けることなく、刃部65にスキン層や発泡層が残存することを防止することができる。
【0092】
図10は、第2実施形態に係る前記成形型に用いるピン状部材の刃部の変形例を示す断面図であり、図10では、前記刃部の変形例を図8(c)に示す断面に対応する断面で示している。第2実施形態に係る前記成形型に用いるピン状部材60の刃部65として、図10(a)に示すように、回転方向前方側の端面65aがシャープエッジとされていると共に断面三角形状に形成されているもの、図10(b)に示すように、回転方向前方側の端面65aがシャープエッジとされていると共に断面台形状に形成され、且つ前記端面65aがキャビティ10a側に突出するように形成されているもの、あるいは、図10(c)に示すように、回転方向前方側の端面65aがシャープエッジとされていると共に断面三角形状に形成され、且つ前記端面65aがキャビティ10a側に突出するように形成されているものを用いることが可能である。刃部65として、図10(b)及び図10(c)に示すように、前記端面65aがキャビティ10a側に突出するように形成されているものを用いる場合、刃部65のキャビティ側の端面65cの表面に形成されるスキン層の除去も容易に行うことができる。
【0093】
図11は、本発明の第3実施形態に係る発泡樹脂成形体の製造装置の成形型の要部を示す図である。また、図12は、第3実施形態に係る前記成形型に用いるピン状部材を示す図であり、図12(a)は、前記ピン状部材の断面図、図12(b)は、図12(a)における矢印V5方向から見た前記ピン状部材の正面図、図12(c)は、図12(b)におけるY12c−Y12c線に沿った前記ピン状部材の刃部の断面図である。
【0094】
本発明の第3実施形態に係る発泡樹脂成形体の製造装置は、本発明の第2実施形態に係る製造装置と、成形型10のピン状部材の刃部が、ピン状部材の中心軸に向かうにつれてキャビティ側に傾斜するように設けられていること以外は同様であるので、本発明の第2実施形態に係る製造装置と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0095】
図11に示すように、本発明の第3実施形態に係る発泡樹脂成形体の製造装置の成形型においても、可動型16の本体部17に形成された孔部17bに、断面円形状に形成されたピン状部材80が回転可能に挿通されており、図12(a)、図12(b)及び図12(c)に示すように、ピン状部材80は、略円柱状に形成され、円柱状に形成された円柱部61と、該円柱部61のキャビティ側において円筒状に形成された円筒部62と、該円筒部62のキャビティ側に備えられた刃部85を有している。
【0096】
ピン状部材80の刃部85は、円筒部62のキャビティ10a側からピン状部材80の中心軸C1方向に該中心軸C1まで延びるように設けられ、円筒部62内に形成された空間部62aのキャビティ10a側の一部を覆うように扇形状に形成されているが、ピン状部材80の中心軸C1に向かうにつれてキャビティ10a側に傾斜するように形成されている。
【0097】
ピン状部材80においても、該ピン状部材80は、中心軸C1に対して矢印R1で示す方向に回転可能に構成されている。ピン状部材80の刃部85において、回転方向前方側の端面85aと回転方向後方側の端面85bとのなす角度は、これに限定されるものではないが、60度に設定されている。
【0098】
刃部85は、刃部85のキャビティ側の端面85cが中心軸C1と所定角度を有するように形成され、刃部85のキャビティ側と反対側の端面85cが、回転方向前方側の端面85aから回転方向後方側に向かうにつれてキャビティ側の端面85cから離間するように形成され、回転方向前方側が先細り状に形成されている。具体的には、図12(c)に示すように、刃部85は、回転方向前方側の端面85aがシャープエッジとされていると共に断面台形状に形成されている。
【0099】
刃部85はまた、可動型16の本体部17のキャビティ面17aから少なくとも発泡樹脂成形体のスキン層の厚さ以上キャビティ10a内に突出するように設けられている。図11では、二点鎖線を用いて成形型10のキャビティ10aに発泡性樹脂を充填することにより成形される発泡樹脂成形体のスキン層を示しているが、図11に示すように、刃部85は、本体部17のキャビティ面17aから発泡樹脂成形体のスキン層92の厚さ以上キャビティ10a内に突出するように設けられている。
【0100】
このようにして構成される本発明の第3実施形態に係る発泡樹脂成形体の製造装置においても、本体部17のキャビティ面17aから刃部85が発泡樹脂成形体のスキン層の厚さ分以上キャビティ10a側に突出するようにピン状部材80が配置された状態で、成形型10が型閉じされて成形型10のキャビティ10aに発泡性樹脂が充填される。
【0101】
その後に、成形型10のキャビティ10aの容積を拡大させるように可動型16が型開き方向に移動され、所定形状の発泡樹脂成形体が成形される。前記発泡樹脂成形体は、表面層である非発泡のスキン層と該スキン層の内側に発泡性樹脂の発泡が促進された発泡層とを有するように成形される。そして、前記発泡樹脂成形体の冷却過程において、可動型16に対してピン状部材80を回転させ、前記発泡樹脂成形体を製造する。
【0102】
図13は、第3実施形態に係る前記製造装置において製造された発泡樹脂成形体の要部を示す図であり、図13(a)は、スキン層の一部が開口された前記発泡樹脂成形体の要部を示す断面図、図13(b)は、図13(a)における矢印V5方向から見た発泡樹脂成形体の要部を示す正面図である。
【0103】
前記発泡樹脂成形体が成形された後に、図11に示すように、ピン状部材80を中心軸C1に対して矢印R1で示す方向に360度以上回転させることにより、図13(a)及び図13(b)に示すように、発泡樹脂成形体90には、ピン状部材80の刃部85によって円錐状の開口部90aが形成されることとなる。
【0104】
刃部85は、ピン状部材80近傍に位置する発泡樹脂成形体90のスキン層92の厚さ以上キャビティ10a内に突出するように設けられているので、開口部90aは、発泡樹脂成形体90のスキン層92を貫通するように形成され、発泡樹脂成形体90では、スキン層92の一部が開口されて発泡層93が露出させられる。
【0105】
このように、本実施形態においても、成形型10のキャビティ10aに発泡性樹脂31を充填してスキン層92と発泡層93とを有する発泡樹脂成形体90を成形した後に、発泡樹脂成形体90の冷却過程において、成形型10に回転可能に挿通されるとともに刃部85を有するピン状部材80を回転させ、スキン層92の一部を開口させて発泡層93を露出させることにより、スキン層92が大きく剥離することを抑制して、比較的簡単な方法によって発泡樹脂成形体90の強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形体90のスキン層92の一部を開口させて発泡層93を露出させることができる。
【0106】
図14は、第3実施形態に係る前記成形型に用いるピン状部材の刃部の変形例を示す断面図であり、図14では、前記刃部の変形例を図12(c)に示す断面に対応する断面で示している。第3実施形態に係る前記成形型に用いるピン状部材80の刃部85として、図14(a)に示すように、回転方向前方側の端面85aがシャープエッジとされていると共に断面三角形状に形成されているもの、図14(b)に示すように、回転方向前方側の端面85aがシャープエッジとされていると共に断面台形状に形成され、且つ前記端面85aがキャビティ10a側に突出するように形成されているもの、あるいは、図14(c)に示すように、回転方向前方側の端面85aがシャープエッジとされていると共に断面三角形状に形成され、且つ前記端面85aがキャビティ10a側に突出するように形成されているものを用いることが可能である。刃部85として、図14(b)及び図14(c)に示すように、前記端面85aがキャビティ10a側に突出するように形成されているものを用いる場合、刃部85のキャビティ側の端面85cの表面に形成されるスキン層の除去も容易に行うことができる。
【0107】
第2実施形態及び第3実施形態に係るピン状部材60,80を使用する場合においても、ピン状部材60,80の内部に成形型10の他の部分よりも熱伝導率の低い材料からなるシート部材を挿入したり、円柱部61のキャビティ側を前記シート部材によって形成したりするようにしてもよい。また、ピン状部材60,80についても、成形型10から発泡樹脂成形体70,90を離型させるためのエジェクタピンを兼ねるようにすることも可能である。
【0108】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0109】
以上のように、本発明によれば、発泡樹脂成形体の強度低下を抑制しつつスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させることができることが可能となるから、樹脂成形の技術分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0110】
11,111 固定型
16,121 可動型
10,110 成形型
31,131 発泡性樹脂
10a,110a キャビティ
42,72,92,102 スキン層
43,73,93,103 発泡層
40,70,90,100 発泡樹脂成形体
25,65,85 刃部
20,60,80 ピン状部材
C1 中心軸
62 円筒部
61a エア供給孔
30 射出装置
M 製造装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、発泡性樹脂を成形型のキャビティに充填することによりスキン層と発泡層とを有する発泡樹脂成形体を成形した後に、スキン層の一部を開口させて発泡層を露出させる発泡樹脂成形体の製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば自動車用部品などの種々の工業用部品の分野において、軽量性、断熱性及び防音性等の優れた特性を有する発泡樹脂成形体が幅広く採用されている。かかる発泡樹脂成形体は、使用される目的及び用途などに応じて、好適な使用材料を選定し、また、成形体内部の気泡の形態や発泡倍率などの諸条件を好適に設定して成形されている。
【0003】
このような発泡樹脂成形体の成形方法として、樹脂に発泡剤を含有させた発泡性樹脂を固定型と可動型とでなる成形型のキャビティに充填した後に、可動型を型開き方向に移動させてキャビティの容積を拡大することにより、発泡性樹脂の発泡を促進させるようにした成形方法(所謂コアバック法)が知られている。
【0004】
かかる成形方法によって成形された発泡樹脂成形体は、成形型のキャビティに充填した発泡性樹脂が成形型によって表面から冷却されることにより、発泡樹脂成形体の表面に表面層である非発泡のスキン層が形成されるとともに該スキン層の内側に発泡性樹脂の発泡が促進された発泡層が形成されることとなる。
【0005】
このようにして成形される発泡樹脂成形体を断熱材や防音材として使用する場合、発泡樹脂成形体の表面に形成されるスキン層によって断熱効果や防音効果が低下することとなるので、断熱効果や防音効果を効果的に得るためには表面に形成されるスキン層を取り除くことが望まれる。
【0006】
断熱効果や防音効果が低下することを抑制するためにスキン層を取り除くものではないが、例えば特許文献1には、発泡体の表面に接着性シートを積層した後に、接着性シートと反対側の発泡体面に形成されたスキン層全体をスライス刃によりスライス除去するようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−344459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に記載されるように、表面に形成されるスキン層全体をスライス除去することにより、発泡層が露出して発泡樹脂成形体において断熱効果や防音効果を効果的に得ることができるものの、スキン層全体を除去すると発泡樹脂成形体の強度が大きく低下することが問題となる。
【0009】
これに対し、発泡樹脂成形体を成形した後に表面に形成されるスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させることにより、発泡樹脂成形体の強度が低下することを抑制しつつ断熱効果や防音効果を効果的に得ることができるものと考えられる。
【0010】
このように表面に形成されるスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させる方法として、リブ部を発泡樹脂成形体の本体部と一体的に成形した後に、このリブ部を折除することによってリブ部に対応する部分のスキン層を開口させて発泡層を露出させることが考えられる。
【0011】
図15は、発泡樹脂成形体においてスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させる方法を説明するための説明図であり、図15(a)は、発泡樹脂成形体の本体部とリブ部とを一体的に成形した状態を示し、図15(b)は、リブ部を折除して発泡樹脂成形体の発泡層を露出させた状態を示している。
【0012】
図15(a)に示すように、表面に形成されるスキン層102と該スキン層102の内側に設けられた発泡層103とを有する本体部101と、該本体部101の表面のスキン層102から延びる非発泡のリブ部105とが一体的に形成された発泡樹脂成形体100を成形した後に、前記リブ部105に外部から所定の倒し込み力F1を作用させることにより、図15(b)に示すように、該リブ部105とともに本体部101のスキン層102の一部を開口させて、スキン層102に開口部102aを形成して発泡層103を露出させることが考えられる。
【0013】
図16は、発泡樹脂成形体の本体部とリブ部とを一体的に形成する方法を説明するための説明図であり、図16(a)は、固定型と可動型とでなる成形型のキャビティに発泡性樹脂を充填した状態を示し、図16(b)は、成形型のキャビティに発泡性樹脂を充填した後に可動型を型開き方向に移動した状態を示している。
【0014】
図15(a)に示す発泡樹脂成形体100は、図16(a)に示すように、固定型111と可動型121とによってキャビティ110aが形成されるとともに固定型111のキャビティ面111aにリブ部105を形成するための凹部111bが設けられた成形型110を用い、成形型110のキャビティ110aに注入経路116を通じて発泡性樹脂131を充填した後に、図16(b)に示すように、可動型121を型開き方向(矢印X1で示す方向)に移動させて発泡性樹脂131の発泡を促進させることにより成形することができる。
【0015】
図17は、発泡樹脂成形体のリブ部を折除した状態を説明するための説明図である。図14に示すようにして成形された発泡樹脂成形体100においてリブ部105を折除するために、図17(a)に示すように、発泡樹脂成形体100のリブ部105に該リブ部105の延びる方向と略直交する方向に外部から所定の倒し込み力F1を作用させると、図17(b)に示すように、リブ部105に連続するスキン層102がリブ部105とともに大きく剥離して発泡樹脂成形体100の強度が低下する畏れがある。
【0016】
そこで、本発明は、比較的簡単な方法によって発泡樹脂成形体の強度低下を抑制しつつスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させることができる発泡樹脂成形体の製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このため、本願の請求項1に係る発明は、固定型と可動型とでなる一対の成形型を用い、溶融状態の発泡性樹脂を前記成形型のキャビティに充填することにより表面層であるスキン層と該スキン層の内側に設けられる発泡層とを有する発泡樹脂成形体を成形した後に、前記スキン層の一部を開口させて前記発泡層を露出させる発泡樹脂成形体の製造方法であって、前記成形型のキャビティに前記発泡性樹脂を充填してスキン層と発泡層とを有する発泡樹脂成形体を成形した後に、前記発泡樹脂成形体の冷却過程において、前記成形型に回転可能に挿通されるとともに前記キャビティ側の先端部に前記スキン層の一部を開口させるための刃部を有するピン状部材を回転させ、前記スキン層の一部を開口させて前記発泡層を露出させるようにした、ことを特徴とする。
【0018】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記ピン状部材は、略円柱状又は略円筒状に形成されるとともに前記刃部が該ピン状部材の外周側において該ピン状部材の中心軸と略平行に突出して延びるように形成されている、ことを特徴とする。
【0019】
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記ピン状部材は、前記キャビティ側の先端部に略円筒状に形成された円筒部を有し、前記刃部は、前記円筒部のキャビティ側から該ピン状部材の中心軸方向に延びるように設けられている、ことを特徴とする。
【0020】
また更に、本願の請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明において、前記刃部は、前記成形型のキャビティ面から少なくとも前記発泡樹脂成形体のスキン層の厚さ以上前記キャビティ内に突出するように設けられている、ことを特徴とする。
【0021】
また更に、本願の請求項5に係る発明は、請求項3又は請求項4に係る発明において、前記ピン状部材は、該ピン状部材の内部に前記キャビティ側の先端部からエアを噴出するためのエア供給孔を有し、前記成形型から前記発泡樹脂成形体を離型させる際に、前記刃部に前記エア供給孔を通じてエアを噴出するようにした、ことを特徴とする。
【0022】
また更に、本願の請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5の何れか1項に係る発明において、前記ピン状部材は、前記成形型から前記発泡樹脂成形体を離型させるためのエジェクタピンを兼ねている、ことを特徴とする。
【0023】
また更に、本願の請求項7に係る発明は、請求項1から請求項6の何れか1項に係る発明において、前記成形型は、前記発泡樹脂成形体を成形するときに、前記ピン状部材近傍に位置する前記発泡樹脂成形体のスキン層を前記発泡樹脂成形体のスキン層の他の部分よりも薄くさせるように構成されている、ことを特徴とする。
【0024】
また更に、本願の請求項8に係る発明は、固定型と可動型とでなる一対の成形型と、前記成形型のキャビティに溶融状態の発泡性樹脂を注入する注入手段と、を備え、前記キャビティに溶融状態の発泡性樹脂を注入することにより表面層であるスキン層と該スキン層の内側に設けられる発泡層とを有する発泡樹脂成形体を成形した後に、前記スキン層の一部を開口させて前記発泡層を露出させる発泡樹脂成形体の製造装置であって、前記成形型に回転可能に挿通されるとともに前記キャビティ側の先端部に前記スキン層の一部を開口させるための刃部を有するピン状部材と、前記ピン状部材を回転駆動させる回転駆動手段と、前記回転駆動手段の作動を制御する回転制御手段と、を有し、前記回転制御手段は、前記キャビティに前記発泡性樹脂を注入することによりスキン層と発泡層とを有する発泡樹脂成形体を成形した後に、前記発泡樹脂成形体の冷却過程において、前記ピン状部材を回転させ、前記刃部により前記スキン層の一部を開口させて前記発泡層を露出させるように前記回転駆動手段の作動を制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本願の請求項1に係る発明によれば、成形型のキャビティに発泡性樹脂を充填してスキン層と発泡層とを有する発泡樹脂成形体を成形した後に、発泡樹脂成形体の冷却過程において、成形型に回転可能に挿通されるとともにキャビティ側の先端部にスキン層の一部を開口させるための刃部を有するピン状部材を回転させ、スキン層の一部を開口させて発泡層を露出させる。
【0026】
これにより、スキン層が大きく剥離することを抑制して、比較的簡単な方法によって発泡樹脂成形体の強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形体のスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させることができる。したがって、強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形体の防音効果及び断熱効果を向上させることができる発泡樹脂成形体を比較的容易に製造することができる。また、スキン層を開口させて発泡層を露出させるためのリブ部を発泡樹脂成形体の本体部と一体的に成形した後に作業者や機械によってリブ部を切除する後工程を別途設ける必要がなく、発泡樹脂成形体の製造工程及び製造コストの低減を図ることができる。
【0027】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、ピン状部材は、略円柱状又は略円筒状に形成されるとともに刃部が該ピン状部材の外周側において該ピン状部材の中心軸と略平行に突出して延びるように形成されていることにより、前記効果をより具体的に実現し得るピン状部材を提供することができる。
【0028】
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、ピン状部材は、キャビティ側の先端部に略円筒状に形成された円筒部を有し、刃部は、円筒部のキャビティ側から該ピン状部材の中心軸方向に延びるように設けられていることにより、前記効果をより具体的に実現し得るピン状部材を提供することができる。
【0029】
また更に、本願の請求項4に係る発明によれば、刃部は、成形型のキャビティ面から少なくとも発泡樹脂成形体のスキン層の厚さ以上キャビティ内に突出するように設けられていることにより、発泡樹脂成形体のスキン層の一部を確実に開口させることができ、前記効果を有効に奏することができる。
【0030】
また更に、本願の請求項5に係る発明によれば、ピン状部材は、該ピン状部材の内部にキャビティ側の先端部からエアを噴出するためのエア供給孔を有し、成形型から発泡樹脂成形体を離型させる際に、刃部にエア供給孔を通じてエアを噴出することにより、刃部にスキン層や発泡層が付着した場合においても取り除く工程を別途設けることなく、刃部にスキン層や発泡層が残存することを防止することができる。
【0031】
また更に、本願の請求項6に係る発明によれば、ピン状部材は、成形型から発泡樹脂成形体を離型させるためのエジェクタピンを兼ねていることにより、エジェクタピンをピン状部材の近傍に別途配置する必要がなく、エジェクタピンをピン状部材の近傍に別途設ける場合に比べて製造コストの低減を図ることができる。
【0032】
また更に、本願の請求項7に係る発明によれば、成形型は、発泡樹脂成形体を成形するときに、ピン状部材近傍に位置する発泡樹脂成形体のスキン層を発泡樹脂成形体のスキン層の他の部分よりも薄くさせるように構成されていることにより、発泡樹脂成形体のスキン層の一部をより確実に開口させることができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0033】
また更に、本願の請求項8に係る発明によれば、成形型に回転可能に挿通されるとともにキャビティ側の先端部にスキン層の一部を開口させるための刃部を有するピン状部材と、ピン状部材を回転駆動させる回転駆動手段と、回転駆動手段の作動を制御する回転制御手段と、を有し、回転制御手段は、キャビティに前記発泡性樹脂を注入することによりスキン層と発泡層とを有する発泡樹脂成形体を成形した後に、発泡樹脂成形体の冷却過程において、ピン状部材を回転させ、刃部によりスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させるように回転駆動手段の作動を制御する。
【0034】
これにより、比較的簡単な構成によって、スキン層が大きく剥離することを抑制して、発泡樹脂成形体の強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形体のスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させることができる。したがって、強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形体の防音効果及び断熱効果を向上させることができる発泡樹脂成形体を比較的容易に製造することができる。また、スキン層を開口させて発泡層を露出させるためのリブ部を発泡樹脂成形体の本体部と一体的に成形した後に作業者や機械によってリブ部を切除する後工程を別途設ける必要がなく、発泡樹脂成形体の製造工程及び製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発泡樹脂成形体の製造装置を示す概略説明図である。
【図2】第1実施形態に係る前記製造装置の成形型に用いるピン状部材を示す図である。
【図3】発泡樹脂成形体の製造工程を説明するための説明図である。
【図4】第1実施形態に係る前記製造装置において製造された発泡樹脂成形体の要部を示す図である。
【図5】第1実施形態に係る前記製造装置において製造された別の発泡樹脂成形体の要部を示す図である。
【図6】前記ピン状部材の変形例を説明するための説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る発泡樹脂成形体の製造装置の成形型の要部を示す図である。
【図8】第2実施形態に係る前記成形型に用いるピン状部材を示す図である。
【図9】第2実施形態に係る前記製造装置において製造された発泡樹脂成形体の要部を示す図である。
【図10】第2実施形態に係る前記成形型に用いるピン状部材の刃部の変形例を示す断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る発泡樹脂成形体の製造装置の成形型の要部を示す図である。
【図12】第3実施形態に係る前記成形型に用いるピン状部材を示す図である。
【図13】第3実施形態に係る前記製造装置において製造された発泡樹脂成形体の要部を示す図である。
【図14】第3実施形態に係る前記成形型に用いるピン状部材の刃部の変形例を示す断面図である。
【図15】発泡樹脂成形体においてスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させる方法を説明するための説明図である。
【図16】発泡樹脂成形体の本体部とリブ部とを一体的に成形する方法を説明するための説明図である。
【図17】発泡樹脂成形体のリブ部を折除した状態を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る発泡樹脂成形体の製造装置を示す概略説明図である。図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る発泡樹脂成形体を製造するための製造装置Mは、固定型11と可動型16とでなる一対の成形型10と、成形型10のキャビティ10aに溶融状態の発泡性樹脂を注入する注入手段として射出装置30とを備えている。
【0037】
成形型10は、常時静止状態に維持される固定型11と、固定型11に対して成形型10の開閉方向(図1の矢印X2方向)に移動可能に設けられた可動型16とで構成され、固定型11と可動型16を互いに組み合わせることで、発泡樹脂成形体の所定形状に対応したキャビティ10aが形成されている。
【0038】
固定型11は、発泡樹脂成形体の所定形状に対応して形成されたキャビティ面11aを有するとともに、射出装置30からキャビティ10aに溶融状態の発泡性樹脂を注入するための注入経路12を有している。
【0039】
一方、可動型16は、発泡樹脂成形体の所定形状に対応して形成されたキャビティ面17aを有するとともに固定型11と組み合わせられる本体部17を備えている。本体部17には、成形型10の開閉方向において断面円形状に形成される孔部17bが形成され、この孔部17bには、断面円形状に形成されたピン状部材20が回転可能に挿通されている。
【0040】
図2は、第1実施形態に係る前記製造装置の成形型に用いるピン状部材を示す図であり、図2(a)は、前記ピン状部材の側面図、図2(b)は、図2(a)における矢印V1方向から見た前記ピン状部材の正面図である。図2(a)及び図2(b)に示すように、ピン状部材20は、略円柱状に形成され、円柱状に形成された円柱部21と、該円柱部21のキャビティ面21aに備えられた刃部25とを有している。
【0041】
ピン状部材20の刃部25は、ピン状部材20の円柱部21のキャビティ面21aにおいてピン状部材20の外周側に備えられ、ピン状部材20の中心軸C1と略平行に突出して延びるように設けられている。ピン状部材20は、キャビティ面21aが、ピン状部材20の外周に位置する本体部17のキャビティ面17aと略面一になるように配置されている。
【0042】
成形型10には、ピン状部材20を回転駆動させるサーボモータなどの回転駆動手段(不図示)が配設され、ピン状部材20は、前記回転駆動手段に連結されて中心軸C1に対して矢印R1に示す方向に回転できるように構成されている。なお、ピン状部材20の刃部25は、後述するように、発泡樹脂成形体のスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させるために設けられている。
【0043】
本実施形態では、成形型10は金属製の材料を用いて形成されるが、可動型16の本体部17において、孔部17bの周囲のキャビティ面17aが成形型10の他の部分よりも熱伝導率の低い材料、例えば耐熱性を有するポリイミド材料からなるシート部材18によって形成されている。シート部材18は、これに限定されるものではないが、円盤状に形成されている。なお、シート部材18に代えて、孔部17bの周囲のキャビティ面17aをアルミナやシリカなどの熱伝導率の低い無機酸化物によってコーティングするようにすることも可能である。
【0044】
また、製造装置Mには、可動型16を成形型10の開閉方向に移動させるサーボモータなどの型移動手段(不図示)が配設され、可動型16は、前記型移動手段に連結されている。これにより、成形型10は、固定型11に対して可動型16が成形型10の開閉方向に移動可能に構成され、固定型11と可動型16とを型閉めした後に可動型16を成形型10の型開き方向に移動させることによりキャビティの容積が拡大可能に構成されている。
【0045】
射出装置30は、溶融状態の発泡性樹脂31を成形型10のキャビティ10aに注入するものであり、樹脂32を混練溶融させるシリンダ33を備え、シリンダ33の内部にはスクリュー34が備えられている。また、スクリュー34の後端には、スクリュー駆動機構及び射出機構(共に不図示)が連結されている。
【0046】
射出装置30では、シリンダ33の周囲に設けられた加熱ヒータ(不図示)とスクリュー34とによって、シリンダ33に投入された樹脂32を順次加熱するとともに混練溶融させる。そして、混練溶融された樹脂32に対し、二酸化炭素又は窒素等の不活性ガスを含むボンベ35から超臨界流体発生装置36を介して超臨界状態にされた前記不活性ガスが、超臨界流体注入装置37によって注入され、樹脂32に発泡剤を含有させた発泡性樹脂31が形成される。
【0047】
シリンダ33内の発泡性樹脂31は、スクリュー34が前記スクリュー駆動機構によって回転されるとともに前記射出機構によって射出されることによって成形型10のキャビティ10aに固定型11の注入経路12を通じて注入される。
【0048】
本実施形態では、樹脂32としては、例えばポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂が用いられる。また、本実施形態では、発泡性樹脂31に含有される発泡剤に、物理発泡剤として超臨界状態にある流体を用いているが、その他の物理発泡剤を用いてもよい。あるいは、化学発泡剤を使用することも可能である。
【0049】
また、製造装置Mは、該製造装置Mを総合的に制御する制御ユニット(不図示)を備えている。該制御ユニットは、成形型10の開閉駆動、成形型10のピン状部材20の回転駆動、射出装置30の発泡性樹脂31の注入機構等の各種制御を行うように構成されている。なお、前記制御ユニットは、例えばマイクロコンピュータを主要部として構成されている。
【0050】
次に、前記製造装置Mを用いた発泡樹脂成形体の製造について説明する。
図1に示すように、先ず、可動型16の本体部17のキャビティ面17aとピン状部材20の円柱部21のキャビティ面21aとが略面一に配置された状態で、成形型10が型閉じされる。そして、成形型10のキャビティ10aに、樹脂32に発泡剤として超臨界状態の流体を含有させた発泡性樹脂31が射出装置30から注入され、溶融状態の発泡性樹脂31が成形型10のキャビティ10aに充填された後に、成形型10のキャビティ10aの容積を拡大させるように可動型16が型開き方向に移動される。
【0051】
図3は、発泡樹脂成形体の製造工程を説明するための説明図であり、図3(a)は、成形型10のキャビティ10aに発泡性樹脂31が充填された状態を示し、図3(b)は、キャビティ10aに発泡性樹脂31が充填された後に可動型16が型開き方向に移動された状態を示している。
【0052】
図3(a)に示すように、成形型10のキャビティ10aに注入経路12を通じて発泡性樹脂31が充填された後に、図3(b)に示すように、キャビティ10aの容積を拡大するようにピン状部材20とともに可動型16を型開き方向(矢印X3で示す方向)に移動させて発泡性樹脂31の発泡を促進させる。
【0053】
可動型16が型開き方向に所定位置まで移動されると、所定形状の発泡樹脂成形体40が成形される。発泡性樹脂31は、成形型10によってその表面から冷却され、発泡樹脂成形体40は、表面層である非発泡のスキン層42と該スキン層42の内側に発泡性樹脂31の発泡が促進された発泡層43とを有するように成形される。
【0054】
成形型10に挿通されたピン状部材20の刃部25は、発泡樹脂成形体40が成形されるときに、ピン状部材20近傍に位置する発泡樹脂成形体40のスキン層42の厚さ以上キャビティ10a内に突出するように設けられており、図3(b)に示すように、発泡樹脂成形体40には、ピン状部材20の刃部25によってスキン層42に三角錐状に切り欠かれた切欠部40aが形成されている。
【0055】
本実施形態では、ピン状部材20の周囲のキャビティ面17aが成形型10の他の部分よりも熱伝導率の低い材料からなるシート部材18によって形成されているので、発泡樹脂成形体40が成形されるときに、ピン状部材20近傍に位置する発泡樹脂成形体40のスキン層42が発泡樹脂成形体40のスキン層42の他の部分よりも薄く形成されている。
【0056】
このようにしてスキン層42と発泡層43とを有する発泡樹脂成形体40を成形した後に、可動型16を所定位置に保持した状態で成形型10内において発泡樹脂成形体40を冷却する発泡樹脂成形体40の冷却過程において、可動型16に対してピン状部材20を回転させ、発泡樹脂成形体40を製造する。
【0057】
図4は、第1実施形態に係る前記製造装置において製造された発泡樹脂成形体の要部を示す図であり、図4(a)は、スキン層42の一部が開口された発泡樹脂成形体40の要部を示す断面図、図4(b)は、図4(a)における矢印V2方向から見た発泡樹脂成形体40の要部を示す正面図である。
【0058】
発泡樹脂成形体40が成形された後に、ピン状部材20を中心軸C1に対して矢印R1で示す方向に360度以上回転させることにより、図4(a)及び図4(b)に示すように、発泡樹脂成形体40には、ピン状部材20の刃部25によって正面視で円形状に形成されるとともに断面三角状に形成された開口部40bが形成されることとなる。
【0059】
ピン状部材20の刃部25は、ピン状部材20近傍に位置する発泡樹脂成形体40のスキン層42の厚さ以上キャビティ10a内に突出するように設けられているので、開口部40bは、発泡樹脂成形体40のスキン層42を貫通するように形成され、発泡樹脂成形体40では、スキン層42の一部が開口されて発泡層43が露出させられる。
【0060】
そして、発泡樹脂成形体40が製造された後には、可動型16が型開き方向にさらに移動されて成形型10の型開きが行われ、次いで、成形型10から発泡樹脂成形体40が離型され、発泡樹脂成形体40が取り出される。
【0061】
成形型10には、発泡樹脂成形体40を離型させるためのエジェクタピン(不図示)が備えられており、成形型10から発泡樹脂成形体40が離型されるようになっている。なお、ピン状部材20が、成形型10から発泡樹脂成形体40を離型させるためのエジェクタピンを兼ねるようにすることも可能である。かかる場合には、エジェクタピンをピン状部材20の近傍に別途配置する必要がなく、エジェクタピンをピン状部材20の近傍に別途設ける場合に比べて製造コストの低減を図ることができる。
【0062】
このように、本実施形態では、成形型10のキャビティ10aに発泡性樹脂31を充填してスキン層42と発泡層43とを有する発泡樹脂成形体40を成形した後に、発泡樹脂成形体40の冷却過程において、成形型10に回転可能に挿通されるとともにキャビティ10a側の先端部にスキン層42の一部を開口させるための刃部25を有するピン状部材20を回転させ、スキン層42の一部を開口させて発泡層43を露出させる。
【0063】
これにより、スキン層42が大きく剥離することを抑制して、比較的簡単な方法によって発泡樹脂成形体40の強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形体40のスキン層42の一部を開口させて発泡層43を露出させることができる。したがって、強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形体40の防音効果及び断熱効果を向上させることができる発泡樹脂成形体40を比較的容易に製造することができる。また、スキン層を開口させて発泡層を露出させるためのリブ部を発泡樹脂成形体の本体部と一体的に成形した後に作業者や機械によってリブ部を切除する後工程を別途設ける必要がなく、発泡樹脂成形体の製造工程及び製造コストの低減を図ることができる。
【0064】
また、成形型10は、発泡樹脂成形体40を成形するときに、ピン状部材20近傍に位置する発泡樹脂成形体40のスキン層42を発泡樹脂成形体40のスキン層42の他の部分よりも薄くさせるように構成されていることにより、発泡樹脂成形体40のスキン層42の一部をより確実に開口させることができる。
【0065】
前述した実施形態では、発泡樹脂成形体40が成形された後に、発泡樹脂成形体40の冷却過程において、ピン状部材20が中心軸C1に対して矢印R1で示す方向に360度以上回転されているが、ピン状部材20を所定角度回転させるようにすることも可能である。
【0066】
図5は、第1実施形態に係る前記製造装置において製造された別の発泡樹脂成形体の要部を示す図であり、図5では、ピン状部材20を180度回転させて製造した発泡樹脂成形体の要部を示している。図5に示すように、ピン状部材20を中心軸C1に対して矢印R1で示す方向に180度回転させることにより、発泡樹脂成形体40に、ピン状部材20の刃部25によって正面視で略半円状に形成されるとともに断面三角状に形成された開口部40cを形成するようにすることも可能である。
【0067】
このように、ピン状部材20の回転角度を調整することで、発泡樹脂成形体40のスキン層42を開口させて発泡層43を露出させる大きさを調整することができ、発泡樹脂成形体40の強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形体40の防音効果及び断熱効果を効果的に得ることができる。
【0068】
また、前述した実施形態では、成形型10は、ピン状部材20の周囲のキャビティ面17aが成形型10の他の部分よりも熱伝導率の低い材料からなるシート部材18によって形成されているが、ピン状部材20の内部のキャビティ10a側に成形型10の他の部分よりも熱伝導率の低い材料からなるシート部材を挿入させ、ピン状部材20近傍に位置する発泡樹脂成形体40のスキン層42を発泡樹脂成形体40のスキン層42の他の部分よりも薄くさせるようにすることも可能である。
【0069】
図6は、前記ピン状部材の変形例を説明するための説明図である。図6に示すように、円柱部21のキャビティ側の内部に成形型10の他の部分よりも熱伝導率の低い材料からなるシート部材28を挿入したピン状部材50を用い、発泡樹脂成形体40を成形したときに、ピン状部材50近傍に位置する発泡樹脂成形体40のスキン層42を発泡樹脂成形体40のスキン層42の他の部分よりも薄くさせるようにすることも可能である。
【0070】
図6では、ピン状部材50の円柱部21の内部に成形型10の他の部分よりも熱伝導率の低い材料からなるシート部材28が挿入されているが、円柱部21のキャビティ面21aをシート部材28によって形成するようにすることも可能である。また、円柱部21のキャビティ面21aをアルミナやシリカなどの熱伝導率の低い無機酸化物によってコーティングするようにすることも可能である。さらに、ピン状部材50の刃部25を成形型10の他の部分よりも熱伝導率の低い材料から形成したり、刃部25の表面25aをアルミナやシリカなどの熱伝導率の低い無機酸化物によってコーティングしたりするようにしてもよい。
【0071】
また、本実施形態では、ピン状部材20,50は、略円柱状に形成され、円柱部21と刃部25とを有しているが、キャビティ面を備えて略円筒状に形成された円筒部と該円筒部のキャビティ面に備えられた刃部とを有し、略円筒状に形成されたピン状部材を用いることも可能である。
【0072】
図7は、本発明の第2実施形態に係る発泡樹脂成形体の製造装置の成形型の要部を示す図である。また、図8は、第2実施形態に係る前記成形型に用いるピン状部材を示す図であり、図8(a)は、前記ピン状部材の断面図、図8(b)は、図8(a)における矢印V3方向から見た前記ピン状部材の正面図、図8(c)は、図8(b)におけるY8c−Y8c線に沿った前記ピン状部材の刃部の断面図である。
【0073】
本発明の第2実施形態に係る発泡樹脂成形体の製造装置は、本発明の第1実施形態に係る製造装置Mと、成形型10のピン状部材が異なっているとともに該ピン状部材にエアを供給するためのエア供給手段が備えられていること以外は同様であるので、本発明の第1実施形態に係る成形装置Mと同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0074】
図7に示すように、本発明の第2実施形態に係る発泡樹脂成形体の製造装置の成形型においても、可動型16の本体部17に形成された孔部17bに、断面円形状に形成されたピン状部材60が回転可能に挿通されており、図8(a)、図8(b)及び図8(c)に示すように、ピン状部材60は、略円柱状に形成され、円柱状に形成された円柱部61と、該円柱部61のキャビティ側において円筒状に形成された円筒部62と、該円筒部62のキャビティ側に備えられた刃部65とを有している。
【0075】
ピン状部材60の刃部65は、円筒部62のキャビティ10a側からピン状部材60の中心軸C1方向に該中心軸C1まで延びるように設けられている。刃部65は、中心軸C1と直交する方向に延び、円筒部62内に形成された空間部62aのキャビティ10a側の一部を覆うように扇形状に形成されている。
【0076】
ピン状部材60においても、該ピン状部材60は、中心軸C1に対して矢印R1で示す方向に回転可能に構成されている。ピン状部材60の刃部65において、回転方向前方側の端面65aと回転方向後方側の端面65bとのなす角度は、これに限定されるものではないが、60度に設定されている。
【0077】
刃部65は、刃部65のキャビティ側の端面65cが中心軸C1と略直交する方向に延びるように形成され、刃部65のキャビティ側と反対側の端面65dが、回転方向前方側の端面65aから回転方向後方側に向かうにつれてキャビティ側の端面65cから離間するように形成され、回転方向前方側が先細り状に形成されている。具体的には、図8(c)に示すように、刃部65は、回転方向前方側の端面65aがシャープエッジとされていると共に断面台形状に形成されている。
【0078】
刃部65はまた、可動型16の本体部17のキャビティ面17aから少なくとも発泡樹脂成形体のスキン層の厚さ以上キャビティ10a内に突出するように設けられている。図7では、二点鎖線を用いて成形型10のキャビティ10aに発泡性樹脂を充填することにより成形される発泡樹脂成形体のスキン層を示しているが、図7に示すように、刃部65は、本体部17のキャビティ面17aから発泡樹脂成形体のスキン層72の厚さ分だけキャビティ10a内に突出するように設けられている。
【0079】
第2実施形態に係るピン状部材60には、ピン状部材60の内部に、具体的には円柱部60の内部にキャビティ10a側の先端部からエアを噴出するためのエア供給孔61aが設けられている。
【0080】
本発明の第2実施形態に係る製造装置では、ピン状部材60にエアを供給するための圧縮機などのエア供給手段(不図示)が備えられ、該エア供給手段からピン状部材60にエアを供給することができるように構成されている。また、前記製造装置では、前記制御ユニットによって、成形型10から発泡樹脂成形体を離型させる際に、前記エア供給手段の作動が制御され、刃部65にエア供給孔61aを通じてエアが噴出される。
【0081】
このようにして構成される本発明の第2実施形態に係る発泡樹脂成形体の製造装置においても、本体部17のキャビティ面17aから刃部65が発泡樹脂成形体のスキン層の厚さ分だけキャビティ10a側に突出するようにピン状部材60が配置された状態で、成形型10が型閉じされて成形型10のキャビティ10aに発泡性樹脂が充填される。
【0082】
その後に、成形型10のキャビティ10aの容積を拡大させるように可動型16が型開き方向に移動され、所定形状の発泡樹脂成形体が成形される。前記発泡樹脂成形体は、表面層である非発泡のスキン層と該スキン層の内側に発泡性樹脂の発泡が促進された発泡層とを有するように成形される。
【0083】
前記発泡樹脂成形体ではまた、ピン状部材60の円筒部62内の空間部62aのキャビティ10a側において表面層であるスキン層が形成されることとなるが、ピン状部材60の刃部62が設けられた部分において、前記発泡樹脂成形体のスキン層が扇形状に切り欠かれることとなる。
【0084】
そして、前記発泡樹脂成形体を成形した後に、可動型16を所定位置に保持した状態で成形型10内において前記発泡樹脂成形体を冷却する前記発泡樹脂成形体の冷却過程において、可動型16に対してピン状部材60を回転させ、前記発泡樹脂成形体を製造する。
【0085】
図9は、第2実施形態に係る前記製造装置において製造された発泡樹脂成形体の要部を示す図であり、図9(a)は、スキン層の一部が開口された前記発泡樹脂成形体の要部を示す断面図、図9(b)は、図9(a)における矢印V4方向から見た発泡樹脂成形体の要部を示す正面図である。
【0086】
前記発泡樹脂成形体が成形された後に、図7に示すように、ピン状部材60を中心軸C1に対して矢印R1で示す方向に360度以上回転させることにより、図9(a)及び図9(b)に示すように、発泡樹脂成形体70には、ピン状部材60の刃部65によって正面視で円形状に形成される開口部70aが形成されることとなる。
【0087】
刃部65は、ピン状部材60近傍に位置する発泡樹脂成形体70のスキン層72の厚さ以上キャビティ10a内に突出するように設けられているので、開口部70aは、発泡樹脂成形体70のスキン層72を貫通するように形成され、発泡樹脂成形体70では、スキン層72の一部が開口されて発泡層73が露出させられる。なお、ピン状部材60を回転させながら当該ピン状部材60を徐々にキャビティ10a側に向かってスキン層72の厚さ以上押し出すことで、スキン層72及び発泡層73の一部の切欠きが行え、より確実に発泡層73を露出させることが可能となる。
【0088】
発泡樹脂成形体70が製造された後には、可動型16が型開き方向にさらに移動されて成形型10の型開きが行われ、次いで、成形型10から発泡樹脂成形体70が離型され、発泡樹脂成形体70が取り出されるが、第2実施形態に係る製造装置では、成形型10から発泡樹脂成形体70を離型させる際に、刃部65にエア供給孔61aを通じてエアが噴出される。
【0089】
このように、本実施形態においても、成形型10のキャビティ10aに発泡性樹脂31を充填してスキン層72と発泡層73とを有する発泡樹脂成形体70を成形した後に、発泡樹脂成形体70の冷却過程において、成形型10に回転可能に挿通されるとともに刃部65を有するピン状部材60を回転させ、スキン層72の一部を開口させて発泡層73を露出させることにより、スキン層72が大きく剥離することを抑制して、比較的簡単な方法によって発泡樹脂成形体70の強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形体70のスキン層72の一部を開口させて発泡層73を露出させることができる。
【0090】
また、刃部65は、成形型10のキャビティ面17aから少なくとも発泡樹脂成形体70のスキン層72の厚さ以上キャビティ10a内に突出するように設けられていることにより、発泡樹脂成形体70のスキン層72の一部を確実に開口させることができ、前記効果を有効に奏することができる。
【0091】
更に、ピン状部材60は、該ピン状部材60の内部にキャビティ10a側の先端部からエアを噴出するためのエア供給孔61aを有し、成形型10から発泡樹脂成形体70を離型させる際に、刃部65にエア供給孔61aを通じてエアを噴出することにより、刃部65にスキン層や発泡層が付着した場合においても取り除く工程を別途設けることなく、刃部65にスキン層や発泡層が残存することを防止することができる。
【0092】
図10は、第2実施形態に係る前記成形型に用いるピン状部材の刃部の変形例を示す断面図であり、図10では、前記刃部の変形例を図8(c)に示す断面に対応する断面で示している。第2実施形態に係る前記成形型に用いるピン状部材60の刃部65として、図10(a)に示すように、回転方向前方側の端面65aがシャープエッジとされていると共に断面三角形状に形成されているもの、図10(b)に示すように、回転方向前方側の端面65aがシャープエッジとされていると共に断面台形状に形成され、且つ前記端面65aがキャビティ10a側に突出するように形成されているもの、あるいは、図10(c)に示すように、回転方向前方側の端面65aがシャープエッジとされていると共に断面三角形状に形成され、且つ前記端面65aがキャビティ10a側に突出するように形成されているものを用いることが可能である。刃部65として、図10(b)及び図10(c)に示すように、前記端面65aがキャビティ10a側に突出するように形成されているものを用いる場合、刃部65のキャビティ側の端面65cの表面に形成されるスキン層の除去も容易に行うことができる。
【0093】
図11は、本発明の第3実施形態に係る発泡樹脂成形体の製造装置の成形型の要部を示す図である。また、図12は、第3実施形態に係る前記成形型に用いるピン状部材を示す図であり、図12(a)は、前記ピン状部材の断面図、図12(b)は、図12(a)における矢印V5方向から見た前記ピン状部材の正面図、図12(c)は、図12(b)におけるY12c−Y12c線に沿った前記ピン状部材の刃部の断面図である。
【0094】
本発明の第3実施形態に係る発泡樹脂成形体の製造装置は、本発明の第2実施形態に係る製造装置と、成形型10のピン状部材の刃部が、ピン状部材の中心軸に向かうにつれてキャビティ側に傾斜するように設けられていること以外は同様であるので、本発明の第2実施形態に係る製造装置と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0095】
図11に示すように、本発明の第3実施形態に係る発泡樹脂成形体の製造装置の成形型においても、可動型16の本体部17に形成された孔部17bに、断面円形状に形成されたピン状部材80が回転可能に挿通されており、図12(a)、図12(b)及び図12(c)に示すように、ピン状部材80は、略円柱状に形成され、円柱状に形成された円柱部61と、該円柱部61のキャビティ側において円筒状に形成された円筒部62と、該円筒部62のキャビティ側に備えられた刃部85を有している。
【0096】
ピン状部材80の刃部85は、円筒部62のキャビティ10a側からピン状部材80の中心軸C1方向に該中心軸C1まで延びるように設けられ、円筒部62内に形成された空間部62aのキャビティ10a側の一部を覆うように扇形状に形成されているが、ピン状部材80の中心軸C1に向かうにつれてキャビティ10a側に傾斜するように形成されている。
【0097】
ピン状部材80においても、該ピン状部材80は、中心軸C1に対して矢印R1で示す方向に回転可能に構成されている。ピン状部材80の刃部85において、回転方向前方側の端面85aと回転方向後方側の端面85bとのなす角度は、これに限定されるものではないが、60度に設定されている。
【0098】
刃部85は、刃部85のキャビティ側の端面85cが中心軸C1と所定角度を有するように形成され、刃部85のキャビティ側と反対側の端面85cが、回転方向前方側の端面85aから回転方向後方側に向かうにつれてキャビティ側の端面85cから離間するように形成され、回転方向前方側が先細り状に形成されている。具体的には、図12(c)に示すように、刃部85は、回転方向前方側の端面85aがシャープエッジとされていると共に断面台形状に形成されている。
【0099】
刃部85はまた、可動型16の本体部17のキャビティ面17aから少なくとも発泡樹脂成形体のスキン層の厚さ以上キャビティ10a内に突出するように設けられている。図11では、二点鎖線を用いて成形型10のキャビティ10aに発泡性樹脂を充填することにより成形される発泡樹脂成形体のスキン層を示しているが、図11に示すように、刃部85は、本体部17のキャビティ面17aから発泡樹脂成形体のスキン層92の厚さ以上キャビティ10a内に突出するように設けられている。
【0100】
このようにして構成される本発明の第3実施形態に係る発泡樹脂成形体の製造装置においても、本体部17のキャビティ面17aから刃部85が発泡樹脂成形体のスキン層の厚さ分以上キャビティ10a側に突出するようにピン状部材80が配置された状態で、成形型10が型閉じされて成形型10のキャビティ10aに発泡性樹脂が充填される。
【0101】
その後に、成形型10のキャビティ10aの容積を拡大させるように可動型16が型開き方向に移動され、所定形状の発泡樹脂成形体が成形される。前記発泡樹脂成形体は、表面層である非発泡のスキン層と該スキン層の内側に発泡性樹脂の発泡が促進された発泡層とを有するように成形される。そして、前記発泡樹脂成形体の冷却過程において、可動型16に対してピン状部材80を回転させ、前記発泡樹脂成形体を製造する。
【0102】
図13は、第3実施形態に係る前記製造装置において製造された発泡樹脂成形体の要部を示す図であり、図13(a)は、スキン層の一部が開口された前記発泡樹脂成形体の要部を示す断面図、図13(b)は、図13(a)における矢印V5方向から見た発泡樹脂成形体の要部を示す正面図である。
【0103】
前記発泡樹脂成形体が成形された後に、図11に示すように、ピン状部材80を中心軸C1に対して矢印R1で示す方向に360度以上回転させることにより、図13(a)及び図13(b)に示すように、発泡樹脂成形体90には、ピン状部材80の刃部85によって円錐状の開口部90aが形成されることとなる。
【0104】
刃部85は、ピン状部材80近傍に位置する発泡樹脂成形体90のスキン層92の厚さ以上キャビティ10a内に突出するように設けられているので、開口部90aは、発泡樹脂成形体90のスキン層92を貫通するように形成され、発泡樹脂成形体90では、スキン層92の一部が開口されて発泡層93が露出させられる。
【0105】
このように、本実施形態においても、成形型10のキャビティ10aに発泡性樹脂31を充填してスキン層92と発泡層93とを有する発泡樹脂成形体90を成形した後に、発泡樹脂成形体90の冷却過程において、成形型10に回転可能に挿通されるとともに刃部85を有するピン状部材80を回転させ、スキン層92の一部を開口させて発泡層93を露出させることにより、スキン層92が大きく剥離することを抑制して、比較的簡単な方法によって発泡樹脂成形体90の強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形体90のスキン層92の一部を開口させて発泡層93を露出させることができる。
【0106】
図14は、第3実施形態に係る前記成形型に用いるピン状部材の刃部の変形例を示す断面図であり、図14では、前記刃部の変形例を図12(c)に示す断面に対応する断面で示している。第3実施形態に係る前記成形型に用いるピン状部材80の刃部85として、図14(a)に示すように、回転方向前方側の端面85aがシャープエッジとされていると共に断面三角形状に形成されているもの、図14(b)に示すように、回転方向前方側の端面85aがシャープエッジとされていると共に断面台形状に形成され、且つ前記端面85aがキャビティ10a側に突出するように形成されているもの、あるいは、図14(c)に示すように、回転方向前方側の端面85aがシャープエッジとされていると共に断面三角形状に形成され、且つ前記端面85aがキャビティ10a側に突出するように形成されているものを用いることが可能である。刃部85として、図14(b)及び図14(c)に示すように、前記端面85aがキャビティ10a側に突出するように形成されているものを用いる場合、刃部85のキャビティ側の端面85cの表面に形成されるスキン層の除去も容易に行うことができる。
【0107】
第2実施形態及び第3実施形態に係るピン状部材60,80を使用する場合においても、ピン状部材60,80の内部に成形型10の他の部分よりも熱伝導率の低い材料からなるシート部材を挿入したり、円柱部61のキャビティ側を前記シート部材によって形成したりするようにしてもよい。また、ピン状部材60,80についても、成形型10から発泡樹脂成形体70,90を離型させるためのエジェクタピンを兼ねるようにすることも可能である。
【0108】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0109】
以上のように、本発明によれば、発泡樹脂成形体の強度低下を抑制しつつスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させることができることが可能となるから、樹脂成形の技術分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0110】
11,111 固定型
16,121 可動型
10,110 成形型
31,131 発泡性樹脂
10a,110a キャビティ
42,72,92,102 スキン層
43,73,93,103 発泡層
40,70,90,100 発泡樹脂成形体
25,65,85 刃部
20,60,80 ピン状部材
C1 中心軸
62 円筒部
61a エア供給孔
30 射出装置
M 製造装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型と可動型とでなる一対の成形型を用い、溶融状態の発泡性樹脂を前記成形型のキャビティに充填することにより表面層であるスキン層と該スキン層の内側に設けられる発泡層とを有する発泡樹脂成形体を成形した後に、前記スキン層の一部を開口させて前記発泡層を露出させる発泡樹脂成形体の製造方法であって、
前記成形型のキャビティに前記発泡性樹脂を充填してスキン層と発泡層とを有する発泡樹脂成形体を成形した後に、前記発泡樹脂成形体の冷却過程において、前記成形型に回転可能に挿通されるとともに前記キャビティ側の先端部に前記スキン層の一部を開口させるための刃部を有するピン状部材を回転させ、前記スキン層の一部を開口させて前記発泡層を露出させるようにした、
ことを特徴とする発泡樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
前記ピン状部材は、略円柱状又は略円筒状に形成されるとともに前記刃部が該ピン状部材の外周側において該ピン状部材の中心軸と略平行に突出して延びるように形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂成形体の製造方法。
【請求項3】
前記ピン状部材は、前記キャビティ側の先端部に略円筒状に形成された円筒部を有し、
前記刃部は、前記円筒部のキャビティ側から該ピン状部材の中心軸方向に延びるように設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂成形体の製造方法。
【請求項4】
前記刃部は、前記成形型のキャビティ面から少なくとも前記発泡樹脂成形体のスキン層の厚さ以上前記キャビティ内に突出するように設けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載の発泡樹脂成形体の製造方法。
【請求項5】
前記ピン状部材は、該ピン状部材の内部に前記キャビティ側の先端部からエアを噴出するためのエア供給孔を有し、
前記成形型から前記発泡樹脂成形体を離型させる際に、前記刃部に前記エア供給孔を通じてエアを噴出するようにした、
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の発泡樹脂成形体の製造方法。
【請求項6】
前記ピン状部材は、前記成形型から前記発泡樹脂成形体を離型させるためのエジェクタピンを兼ねている、
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の発泡樹脂成形体の製造方法。
【請求項7】
前記成形型は、前記発泡樹脂成形体を成形するときに、前記ピン状部材近傍に位置する前記発泡樹脂成形体のスキン層を前記発泡樹脂成形体のスキン層の他の部分よりも薄くさせるように構成されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の発泡樹脂成形体の製造方法。
【請求項8】
固定型と可動型とでなる一対の成形型と、前記成形型のキャビティに溶融状態の発泡性樹脂を注入する注入手段と、を備え、前記キャビティに溶融状態の発泡性樹脂を注入することにより表面層であるスキン層と該スキン層の内側に設けられる発泡層とを有する発泡樹脂成形体を成形した後に、前記スキン層の一部を開口させて前記発泡層を露出させる発泡樹脂成形体の製造装置であって、
前記成形型に回転可能に挿通されるとともに前記キャビティ側の先端部に前記スキン層の一部を開口させるための刃部を有するピン状部材と、
前記ピン状部材を回転駆動させる回転駆動手段と、
前記回転駆動手段の作動を制御する回転制御手段と、
を有し、
前記回転制御手段は、前記キャビティに前記発泡性樹脂を注入することによりスキン層と発泡層とを有する発泡樹脂成形体を成形した後に、前記発泡樹脂成形体の冷却過程において、前記ピン状部材を回転させ、前記刃部により前記スキン層の一部を開口させて前記発泡層を露出させるように前記回転駆動手段の作動を制御する、
ことを特徴とする発泡樹脂成形体の製造装置。
【請求項1】
固定型と可動型とでなる一対の成形型を用い、溶融状態の発泡性樹脂を前記成形型のキャビティに充填することにより表面層であるスキン層と該スキン層の内側に設けられる発泡層とを有する発泡樹脂成形体を成形した後に、前記スキン層の一部を開口させて前記発泡層を露出させる発泡樹脂成形体の製造方法であって、
前記成形型のキャビティに前記発泡性樹脂を充填してスキン層と発泡層とを有する発泡樹脂成形体を成形した後に、前記発泡樹脂成形体の冷却過程において、前記成形型に回転可能に挿通されるとともに前記キャビティ側の先端部に前記スキン層の一部を開口させるための刃部を有するピン状部材を回転させ、前記スキン層の一部を開口させて前記発泡層を露出させるようにした、
ことを特徴とする発泡樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
前記ピン状部材は、略円柱状又は略円筒状に形成されるとともに前記刃部が該ピン状部材の外周側において該ピン状部材の中心軸と略平行に突出して延びるように形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂成形体の製造方法。
【請求項3】
前記ピン状部材は、前記キャビティ側の先端部に略円筒状に形成された円筒部を有し、
前記刃部は、前記円筒部のキャビティ側から該ピン状部材の中心軸方向に延びるように設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂成形体の製造方法。
【請求項4】
前記刃部は、前記成形型のキャビティ面から少なくとも前記発泡樹脂成形体のスキン層の厚さ以上前記キャビティ内に突出するように設けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載の発泡樹脂成形体の製造方法。
【請求項5】
前記ピン状部材は、該ピン状部材の内部に前記キャビティ側の先端部からエアを噴出するためのエア供給孔を有し、
前記成形型から前記発泡樹脂成形体を離型させる際に、前記刃部に前記エア供給孔を通じてエアを噴出するようにした、
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の発泡樹脂成形体の製造方法。
【請求項6】
前記ピン状部材は、前記成形型から前記発泡樹脂成形体を離型させるためのエジェクタピンを兼ねている、
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の発泡樹脂成形体の製造方法。
【請求項7】
前記成形型は、前記発泡樹脂成形体を成形するときに、前記ピン状部材近傍に位置する前記発泡樹脂成形体のスキン層を前記発泡樹脂成形体のスキン層の他の部分よりも薄くさせるように構成されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の発泡樹脂成形体の製造方法。
【請求項8】
固定型と可動型とでなる一対の成形型と、前記成形型のキャビティに溶融状態の発泡性樹脂を注入する注入手段と、を備え、前記キャビティに溶融状態の発泡性樹脂を注入することにより表面層であるスキン層と該スキン層の内側に設けられる発泡層とを有する発泡樹脂成形体を成形した後に、前記スキン層の一部を開口させて前記発泡層を露出させる発泡樹脂成形体の製造装置であって、
前記成形型に回転可能に挿通されるとともに前記キャビティ側の先端部に前記スキン層の一部を開口させるための刃部を有するピン状部材と、
前記ピン状部材を回転駆動させる回転駆動手段と、
前記回転駆動手段の作動を制御する回転制御手段と、
を有し、
前記回転制御手段は、前記キャビティに前記発泡性樹脂を注入することによりスキン層と発泡層とを有する発泡樹脂成形体を成形した後に、前記発泡樹脂成形体の冷却過程において、前記ピン状部材を回転させ、前記刃部により前記スキン層の一部を開口させて前記発泡層を露出させるように前記回転駆動手段の作動を制御する、
ことを特徴とする発泡樹脂成形体の製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−52530(P2013−52530A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190453(P2011−190453)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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