説明

発熱体冷却ユニット

【課題】発熱体冷却ユニットの送風機に用いられる駆動モータにおいて、高い密閉性を備えることなく結露水の発生を防止するとともに、可燃性ガスの存在下においても引火を防止することで、品質の安定化を図った発熱体冷却ユニットを提供する。
【解決手段】発熱体冷却ユニットは、空気が流動可能な空気流路3が内部に画成されたケース4内に、少なくともその一部が露出する発熱体2と、インペラと、駆動モータと、を有して構成される送風機6と、空気流路3内の空気を冷却する冷却器7と、が設けられている。また、駆動モータを構成する全ての部材が空気流路3に収容されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体を冷却する発熱体冷却ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の駆動モータの制御を行うインバータやバッテリーなどは、使用により発熱し性能の低下を招くため冷却が必要とされる。
【0003】
これらの発熱体の冷却としては、発熱体の周辺部と車外との間を連通させて外気を導入するものや、あるいは発熱体と、冷却装置と、送風機とを収納したケース内に空気の循環通路を形成して、冷却された循環空気により発熱体を冷却するものがある。また、これらの方法を組み合わせて冷却するものもがあり、一例としては、循環可能な冷却通路を画成するケースと、前記冷却通路内に、その一部又は全部が露出するバッテリーと、前記冷却通路内に配されるエバポレータと、空調装置の冷凍サイクルのコンプレッサ及びコンデンサと連結され、膨張手段及び前記エバポレータから少なくとも構成される冷媒バイパス通路と、前記冷却通路内に配される送風機とを具備するバッテリー冷却装置が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
ところで、送風機の駆動モータ内部の構成部品、とりわけ制御基盤は、水滴が付着することによって錆の発生や回路のショートが懸念されるため、ハウジングによって覆われて飛来する水滴の付着から防止される。しかし、ハウジング内の気密性まで確保することは後述するような不都合があるため、ハウジング外からの水蒸気の侵入までを阻止できず、ハウジングを含む駆動モータが冷やされた場合はハウジング内部に結露水が発生し、制御基板に付着することがある。そこで、発生した結露水がいつまでも滞留することを防止するため、ハウジングの内部と外部とを、飛来する水滴の侵入は防止しつつ連通するようにし、ハウジング外部からの空気を導いて結露水の蒸発を促進する呼吸孔をハウジングに設ける構成が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−313441号公報
【特許文献2】特開平9−074718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2のような呼吸孔(冷却風導入口)を、駆動モータのハウジングに穿設したとして、ハウジング内部に浸入した水蒸気が冷却されて結露水が発生すること自体を解決しておらず、制御基板への水滴の付着防止に対する抜本的な対策となっていない。
【0007】
そこで、駆動モータのハウジング内部に外部から水蒸気が浸入することを防止するために、呼吸孔を無くし、ハウジングの密閉性を高めることが考えられる。しかし、ハウジング内部と外部とを連通する回転軸は回転運動できるように軸受け部を有して構成されており、この軸受け部に水蒸気の浸入を完全に阻止する機能を付加することは、コストアップにつながる。さらに、完全に水蒸気の浸入を阻止するよう軸受け部を構成したとしても、ハウジング内外の気体の移動が遮断されるため、当該駆動モータの使用圧力環境が変化する場合においてはハウジング内外の圧力差が大きくなり、この圧力差に耐えられるようハウジングを構成する必要性が生じて、部品の大型化、重量化、コストアップにつながる不都合もある。
【0008】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、発熱体冷却ユニットの送風機に用いられ、冷却された空気を送風する駆動モータにおいて、高い密閉性を備えることなく結露水の発生を防止し、もって発熱体冷却ユニットの品質の安定化を図ることを目的とする。
【0009】
ところで、鉛、ニッケル−カドミウム(Ni-Cd)、ニッケル水素(Ni-MH)リチウムイオン(Li-ion)をはじめとするバッテリーの蓄放電においては、化学反応により水素等の可燃性ガスが発生するため、密閉されたケースの中で駆動モータが稼動すると、搭載する駆動モータの種類によっては稼動時に発生する火花により引火するおそれがある。
【0010】
そこで本発明は、発熱体冷却ユニットの送風機に用いられる駆動モータにおいて、可燃性ガスの存在下においても引火を防止し、もって発熱体冷却ユニットの品質の安定化を図ることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発熱体冷却ユニットは、空気が流動可能な空気流路が内部に画成されたケース内に、少なくともその一部が前記空気流路に露出する発熱体と、インペラと駆動モータとを有して構成される送風機と、前記空気流路内の空気を冷却する冷却器と、を設け、前記駆動モータを構成する全ての部材が前記空気流路に収容されることを特徴としている。
ここで、駆動モータを構成する部材には、例えば、インペラ等の被回転部材を長手方向に沿った方向のうち一方の端部に取り付けて回転させる回転軸、回転軸に取り付けられてこの回転軸と共に回転することが可能であるロータアセンブリ、ロータアセンブリに対し回転軸の径方向に沿った方向にて対向し、且つ回転軸と共に回転しないように配置されたステータアセンブリ、ステータアセンブリよりも回転軸の軸方向に沿った方向のうち一方の端部側に近接する位置に設けられた制御基板、回転軸の長手方向に沿った方向のうち制御基板よりも一方の端部側の位置にて回転軸の径方向に沿って外方に延出して、制御基板、ロータアセンブリ、及びステータアセンブリを内包するように形成されたハウジング、これらの部材によって構成されるモータ本体部などが挙げられる。
【0012】
駆動モータを構成する全ての部材をケース内の空気流路に収容することによって、発熱体冷却ユニットが稼動し駆動モータが冷却され該駆動モータのハウジング内部の水蒸気が結露水として発生しようとしても、そもそも空気流路の水蒸気の量は限られたものでありハウジング内部に浸入できる水蒸気量もごく限られた量となるので、結露水の成長を阻止することができる。また、ケース内に冷却器を設けたので、設けられた機器の中で冷却器が最も低温となり、結露水が発露するとしても冷却器およびその近傍に限定される一方、駆動モータは冷却器よりも温度が高く、ハウジング内部の結露水の発露が防止される。さらに駆動モータの運転が続けられると、ステータアセンブリの発熱などにより該駆動モータ内部の温度が上昇し、該駆動モータのハウジング外部の空気よりもハウジング内部の空気の相対湿度が下がり、より確実に結露水の発生を防ぐことが可能となる。
【0013】
また、前記発熱体冷却ユニットのケースは、前記ケースの外部の空気を導入可能な第1の開口部と、この第1の開口部を開閉可能なケース外気導入用ドアと、前記空気流路の空気を排出可能な第2の開口部と、この第2の開口部を開閉可能なケース内気排出用ドアと、を有するとともに、前記第1の開口部が前記ケース外気導入用ドアにより閉塞され、前記第2の開口部が前記ケース内気排出用ドアにより閉塞されている場合、前記空気は前記空気流路を循環可能であり、前記第1の開口部が前記ケース外気導入用ドアにより開放され、前記第2の開口部が前記ケース内気排出用ドアにより開放されている場合、前記第1の開口部から前記空気流路導入された空気が、前記発熱体と熱交換して前記第2の開口部から排出されるようになっていることを特徴としていることが望ましい。
【0014】
前記第1の開口部及び前記第2の開口部がそれぞれ前記ドアにより閉塞されている場合、空気流路を循環可能とすることによって、ケース外部からの水の飛来を防止することができる。このため、空気流路に搭載される駆動モータのハウジングに呼吸孔が穿設されている場合など、駆動モータに完全な防水性(高い密閉性)が無い場合であっても、ハウジング内部への水の浸入を防ぐことが可能となる。また、空気流路を閉空間にして水蒸気の量を限られたものとし、ハウジング内部に侵入できる水蒸気の量もごく限られた量とできるので、ハウジング内部での結露水の成長を阻止することができる。
また、前記第1の開口部及び前記第2の開口部に対しそれぞれの前記ドアが開放されている場合、前記第1の開口部から導入された空気が前記発熱体と熱交換して前記第2の開口部から排出されるようになっていることで、冷凍サイクルを始動させずに発熱体を冷却することができエネルギーの消費を低減させることが可能となる。
ここで、ケース外気導入用ドア及びケース内気排出用ドアとしては、例えば、片持ち式のドア、バタフライ式のドア、スライド式のドア、等が用いられる。
【0015】
さらに、駆動モータは、ブラシレスモータであることが好ましく、発熱体は、バッテリーであることが好ましい。
【0016】
駆動モータがブラシレスモータであることによって、ブラシから火花が飛ぶことがなく、バッテリーから可燃性気体が揮散したとしても、引火による事故等を防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上の本発明によれば、空気流路は、駆動モータを構成する全ての部材を収容することによって、駆動モータのハウジング内部に浸入できる水蒸気量をごく限られた量とすることができ、結露水の発生を防ぐことができ、発熱体冷却ユニットの品質の安定化を図ることが可能となる。また、ケース内に冷却器を設けたので、設けられた機器の中で冷却器が最も低温となり、結露水が発露するとしても冷却器およびその近傍に限定される一方、駆動モータは冷却器よりも温度が高く、ハウジングの結露水の発露が防止されて、発熱体冷却ユニットの品質の安定化を図ることが可能となる。さらに駆動モータの駆動が続けられると、駆動モータ内部の温度が上昇し、ハウジング外部の空気よりもハウジング内部の空気の相対湿度が下がり、より確実に結露水の発生を防ぐことができ、発熱体冷却ユニットの品質の安定化を図ることが可能となる。
特に請求項2に記載の発明によれば、前記第1の開口部及び前記第2の開口部がそれぞれ前記ドアにより閉塞されている場合には、空気流路を循環可能とすることによって、ケース外部からの水の飛来を防止することができる。このため、空気流路に搭載される駆動モータのハウジングに呼吸孔が穿設されている場合など、駆動モータに完全な防水性が無い場合であっても、ハウジング内部への水の浸入を防ぎ、駆動モータの錆び等の不具合を防ぐことが可能となる。また、空気流路を閉空間にして水蒸気の量を限られたものとし、ハウジング内部に侵入できる水蒸気の量もごく限られた量とできるので、ハウジング内部での結露水の成長を阻止することができる。一方で、前記第1の開口部及び前記第2の開口部に対しそれぞれの前記ドアが開放されている場合には、前記第1の開口部から導入された空気が前記発熱体と熱交換して前記第2の開口部から排出されるようになっていることで、冷凍サイクルを始動させずに発熱体を冷却することが可能になるためエネルギー効率の向上を図ることが可能となる。
さらに請求項3に記載の発明によれば、駆動モータがブラシレスモータであることによって、バッテリーから可燃性気体が揮散したとしても、引火による事故を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1(a)は、実施例1にかかる発熱体冷却ユニットの要部断面説明図であり、(b)はその制御ブロック図である。
【図2】図2は、駆動モータの全体構造を示した構成図である。
【図3】図3は、実施例1にかかる発熱体冷却ユニットの制御を示す制御フローである。
【図4】図4(a)は、実施例2にかかる発熱体冷却ユニットの要部断面説明図であり、(b)はその制御ブロック図である。
【図5】図5(a)は、発熱体冷却ユニットの内気モードの状態を示す構成図であり、(b)は、その外気モードの状態を示す構成図である。
【図6】図6は、実施例2にかかる発熱体冷却ユニットの制御を示す制御フローである。
【図7】図7(a)は、発熱体冷却ユニットの内気モードの状態を示す構成図であり、(b)は、その外気モードの状態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の発熱体冷却ユニットについて図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0020】
本願発明の実施形態にかかる発熱体冷却ユニット1は、図1に示すように、樹脂製のケース4の内部に空気が流動可能に空気流路3が画成されている。この空気流路3は、仕切り部材(仕切り壁)8によってケース4を分割されて形成されるもので、後述する冷凍サイクル10に接続される第1流路3aと、第1流路3aから仕切り壁の反対側に形成される第2流路3bとから構成され、第1流路3aと第2流路とは連通するように形成されている。また、第1流路3aには、バッテリー(発熱体)2の少なくとも一部が露出して設置されると共に、空気流路3を通過する空気を冷却するエバポレータ(冷却器)7が設置され、第2流路3bには、送風機6が設置されている。
【0021】
この空気流路3においては、エバポレータ7の下流側に送風機6が配置され、空気流路3内の冷却風がバッテリー2を通過した後にエバポレータ7を通過し、その後に送風機6を通過するように配置されている。なお、空気流路3の温度を検知する内気温度センサ85が、例えば、バッテリー2と、エバポレータ7との間に設けられている。内気温度センサ85は、バッテリー2に接触させるよう配置して、発熱体温度検出手段として利用してもよい。
【0022】
また送風機6は、図2に示すように、軸方向から吸引した空気を径外方向へ送風するインペラ62と、インペラ62を回転させる駆動モータ61とを有して構成されている。
【0023】
インペラ62は、駆動モータ61の回転軸64に固装されるボス部65と、このボス部65から連接されるコーン部66と、回転軸64の軸方向に立設されると共にコーン部66の外周縁の円周方向に沿って設けられた複数の羽根67とを有して構成されている。
【0024】
駆動モータ61は、回転軸64と、ボス部68と、ボス部68の外周面に装着されたステータアセンブリ69と、制御基板70と、ロータアセンブリ71と、ハウジング72とによりモータ本体部74を形成したブラシレスモータが採用され、これらの駆動モータ61を構成する全ての部材が空気流路3の内部に収容されている。
【0025】
このうち、回転軸64は、略円棒形状を成すもので、インペラ62等の被回転部材を長手方向の上端部側となる一方側端に取り付けることにより、インペラ62等の被回転部材を回転可能としている。そして、回転軸64は、ハウジング72から回転軸64の軸方向に沿って下方に延びる円筒状のボス部68に軸受75,76を介して回転可能に支承されている。
【0026】
また、ボス部68の回転軸64の軸方向に沿って延びる外周面のうち下方側には、ステータアセンブリ69が配置されている。このステータアセンブリ69は、鉄製のコア26と、このコア26の側方外周面に複数回にわたって巻回された電機子巻線25とにより構成されている。そして、ステータアセンブリ69は、ボス部68を介して、ハウジング72の内側面に固定されている。
【0027】
更に、回転軸64は、ステータアセンブリ69よりも回転軸64の軸方向の下方においてロータアセンブリ71が取り付けられている。このロータアセンブリ71は、ステータアセンブリ69に対して回転軸64の径方向に沿った方向にて対向した位置にあり、ヨーク29と、このヨーク29に対し電機子巻線25と対峙するようにその内側面に設けられたマグネット79とにより構成されている。
【0028】
エバポレータ7は、コルゲートフィン等の放熱フィンを有し冷媒の蒸発により空気を冷却するもので、冷媒バイパス通路11を介して車両用空調装置の冷凍サイクル10に接続され、またこの冷媒バイパス通路11のエバポレータ7の上流側には、膨張装置(例えば、機械式膨張弁、外部信号によって弁開度が可変する電気式膨張弁又はオリフィスチューブ)12が設けられる。前記冷凍サイクル10は、この実施例では、電磁クラッチ13を介して図示しない走行用エンジン等と連結されて駆動するコンプレッサ14と、このコンプレッサ14によって圧縮された冷媒を凝縮するコンデンサ15と、このコンデンサ15によって凝縮され気体と液体が混合した状態の冷媒から気体状冷媒と液体状冷媒とを分離するリキッドタンク19と、液体状冷媒を膨張させて圧力を低下させる空調用膨張装置(例えば、機械式膨張弁、外部信号によって弁開度が可変する電気式膨張弁又はオリフィスチューブ等)16と、この空調用膨張装置16で低圧になった冷媒を蒸発させ、空調ダクト18を通過する空気を冷却する空調用エバポレータ17と、によって少なくとも構成され、前記冷媒バイパス通路11は、前記空調用膨張装置16及び空調用エバポレータ17に並列に接続される。なお、コンプレッサ14は、電動コンプレッサであってもよい。
【0029】
さらに、前記冷媒バイパス通路11上には、この冷媒バイパス通路11を開閉する第1の開閉弁20が設けられる。また、前記空調用膨張装置16と前記冷媒バイパス通路11の分岐点の間には、前記空調用膨張装置16側への冷媒の流れをオンオフする第2の開閉弁21が設けられる。これによって、車両用空調装置のみを稼動させ冷房したい場合には、第1の開閉弁20を閉とし且つ第2の開閉弁21を開としてコンプレッサ14を稼動する。また、車両用空調装置を稼動し冷房している時にエバポレータ7も並行して稼動させたい場合には、第1の開閉弁20を開とし且つ第2の開閉弁21も開としてコンプレッサ14を稼動する。さらに、車両用空調装置による車室内の冷房は不要であるが前記エバポレータ7だけを稼動させたい場合には、第1の開閉弁20を開とし且つ第2の開閉弁21を閉としてコンプレッサ14を稼動する。
【0030】
以上の発熱体冷却ユニット1の稼動制御は、車両に搭載される空調制御を行う制御部40によって空調制御の一環として制御されることが望ましい。
図1(b)は、燃料電池システムに設けられた制御部40の入出力を示すブロック図である。燃料電池システムには各種制御を行う制御手段としての制御部40が設けられている。制御部40は、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとその周辺回路にて構成されている。制御部40には、各種センサからのセンサ信号等が入力され、少なくとも、空気流路3内部の温度を検知する内気温度センサ85から信号が入力される。また、制御部40は、演算結果に基づいて、冷凍サイクル10、送風機6等に制御信号を出力する。なお、本実施形態では、燃料電池システムの制御および空調制御を同一の制御部40で制御しているが、それぞれ個別に制御部を設けて異なる制御部間で通信を行うようにしてもよい。
【0031】
以上の構成により、発熱体冷却ユニット1は、制御部40により図3に示すフローのように制御される。
すなわち、車両のイグニッションONを検知すると(S101:YES)、内気温度センサ85の信号入力に基づいて空気流路3の内部の温度が所定値(例えば40℃)を超えたか否かを判断する(S102)。制御部40は、空気流路3内の温度が所定値を超えた判断したとき(S102:YES)、冷凍サイクル10を始動させると共に送風機6を始動させる(S103)。冷凍サイクル10の始動後においても、空気流路3内の温度が所定値を超えると(S104:YES)、冷凍サイクル10の能力を上げて稼動する(S105)。その後、イグニッションOFFの信号を検知すると(S106:YES)、冷凍サイクル10及び送風機6の稼動を終了する(S107)。
【0032】
以上説明したように、空気流路3は、駆動モータ61を構成する全ての部材を収容することによって、そもそも空気流路3の水蒸気の量は限られたものであり駆動モータ61のハウジング72内部に侵入できる水蒸気量もごく限られた量とすることができるので、結露水の成長を阻止することが出来る。また、空気流路3内にエバポレータ7を設けたので、その他に設けられた機器の中でエバポレータ7が最も低温となり、空気流路3内で結露水が発生するとしてもエバポレータ7およびその近傍に限定される一方、駆動モータ61はエバポレータ7よりも温度が高く、ハウジング72内部の結露水の発露が防止され、発熱体冷却ユニット1の品質の安定化を図ることが可能となる。さらに駆動モータ61の駆動が続けられると、ステータアセンブリの電機子巻線25の発熱や制御基板70からの発熱等でモータ内部の温度が上昇し、ハウジング72外部の空気よりもハウジング内部の空気の相対湿度が低くなり、より確実に結露水の発生を防いで、発熱体冷却ユニット1の品質の安定化を図ることが可能となる。
さらに、駆動モータ61がブラシレスモータであることによってブラシモータのように火花が飛ぶおそれがないために、バッテリー2から可燃性気体が揮散したとしても、引火による事故を防止することが可能となる。
【0033】
なお、駆動モータ61は、発熱体2の下流に配置されることが望ましい。空気流路3において、温度が高く相対湿度が低い部位となるため、ここに駆動モータ61を配置することでモータ内部での結露水の発露をより確実に阻止できる。
【0034】
ところで発熱体冷却ユニット1を稼動すると、エバポレータ7およびその近傍にて結露水が発生する可能性があるが、空気流路3を上述のように略閉じた空間として利用する場合、水蒸気が発熱体冷却ユニット1の外部から供給されることはなく、よって大量の結露水が発生するものではないので、結露水の排水口(ドレン孔)の設置は必須ではない。
【実施例2】
【0035】
上述の実施例においては、ケース4内部の空気のみを循環させて、バッテリー2の冷却を行ったが、ケース4の外部の空気(外気)の温度が十分に低い場合には、外気を空気流路3内に導入して冷却を行ってもよい。以下、本実施例の具体的内容を示すが、実施例1と同様の構成においては、同一箇所に同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
具体的には、図4(a)に示すように、本実施例にかかる発熱体冷却ユニット1は、第1流路3aの最上流側にケース4外部と連通する外気導入開口部(第1の開口部)22aが設けられ、バッテリー2の上流かつエバポレータ7に対向する位置に配されている。また、外気導入開口部22aの近接には、外気導入開口部22aを開閉可能なケース外気導入用ドア91が設けられている。
ここで、外気導入開口部22aは、外気導入時に導入された外気がケース4の内壁等の障害物にあたることなく直接的にバッテリー2にあたる位置に設けられることが好ましい。ケース4が、車両のレイアウトによっては意図しない熱を帯びる可能性もあるが、このように外気導入開口部22aを外気が直接的にあたる位置に設けることによって、確実にバッテリー2を冷却することができる。
【0037】
また、第2流路3bの最下流側の位置にケース4外部と連通する内気排出開口部(第2の開口部)22bが設けられ、この内気排出開口部22bの近接に内気排出開口部22bの開閉可能なケース内気排出用ドア92を有している。
さらに、ケース4外部の温度を検知する外気温度センサ86が、例えば、ケース4の外部の送風機6の近接する位置に設けられている。
【0038】
また、第1流路3aと第2流路3bの両端部には、両流路3a,3bを連通する2つの連通路8c、8dが仕切り壁8を切り欠いて形成されている。
連通路8cは、両開口部22a,22bの近接に設けられるもので、ケース内気排出用ドア92の全長よりもその幅が短く形成されている。
連通路8dは、送風機6のインペラ62の幅方向と同等の幅を有して形成されている。あるいは、図示しないが、インペラ62が効率的に空気を送風できるよう、インペラの吸込み部近傍に従来周知のベルマウス形状を設けてもよい。
【0039】
ケース外気導入用ドア91及びケース内気排出用ドア92は、外気導入開口部22a及び内気排出開口部22b周縁に揺動可能に配置され、回転軸91a,92aとこの回転軸91a,92aとの径方向に延びる板状のドア本体91b,92bとからなる片持ち式のもので、アクチュエータ30、31によって、それぞれの開口部22a,22bの開閉をするものである。
【0040】
さらに、図5(a)に示すように、ケース外気導入用ドア91及びケース内気排出用ドア92が両開口部22a,22bを閉じた場合、空気流路3が循環可能に連通するので内気モードが得られ、また、図5(b)に示すように、ケース外気導入用ドア91及びケース内気排出用ドア92が開口部22を開放した場合には、連通路8cがケース内気排出用ドア92によって遮断され、外気導入開口部22aから導入された外気がバッテリー2を冷却した後に、エバポレータ7と連通路8dを通過して内気排出開口部22bから排出される外気モードが得られるものである。
【0041】
ここで、外気モードと内気モードの切替は、制御部40によって空調制御の一環として制御され、外気温度センサ86からの信号を利用して行われる。
【0042】
具体的には、図4(b)に示すように、この制御部40には、実施例1の構成に加えて、ケース4外部の温度を検知する外気温度センサ86が入力されると共に、アクチュエータ30,31に出力されるように構成されている。
【0043】
以上の構成により、発熱体冷却ユニット1は、制御部40により図6に示すフローのように制御される。
すなわち、空気流路3内の温度が第1所定値(例えば40℃)を超え(S202:YES)、ケース4外部の温度が第2所定値(例えば20℃)以下であることを検知すると(S203:YES)、アクチュエータ30,31に信号を出力してケース外気導入用ドア91,ケース内気排出用ドア92を開放する。次いで、ケース4外部の温度が第3所定値(例えば30℃)を超えて上昇すると(S205)、ケース外気導入用ドア91、ケース内気排出用ドア92を閉めて、冷凍サイクル10を始動する。その後、イグニッションOFFの信号を検知すると(S207:YES)、冷凍サイクル10及び送風機6の稼動を終了する(S208)。
一方で、ステップS203の判断において、ケース4外部の温度が第2所定値以下でない場合には(S203:NO)、ケース外気導入用ドア91,ケース内気排出用ドア92を閉めて冷凍サイクル10を始動する(S206)。
また、ステップS205の判断において、ケース4外部の温度が第3所定値を超えずに(S205:NO)、イグニッションOFFを検知した場合には(S209:YES)、ケース外気導入用ドア91,ケース内気排出用ドア92を閉めて稼動を終了する(S210)。
【0044】
以上により、空気流路3には、ケース4外部と連通するそれぞれの開口部22a,22bと、これらを開閉可能なケース外気導入用ドア91,ケース内気排出用ドア92とを備えることによって、内気モードの場合には、ケース4外部からの水の飛来を防止することができる。
一方で、外気の温度が十分に低い場合には、外気モードを選択することで冷凍サイクル10を始動させずにバッテリー2を冷却することが可能になるためエネルギー効率の向上を図ることが可能となる。
【実施例3】
【0045】
上記の実施例においては、ケース外気導入用ドア91とケース内気排出用ドア92とを別体として説明してきたが一つのドアで行うようにしてもよい。尚、他の構成において前述した実施例と同一の部分は同一の番号を付して説明を省略する。
【0046】
具体的には、図7(a)及び(b)に示すように、回転軸93aを中心にして板ドア93bが揺動可能なバタフライ式のドア93が開口部22に設けられるとともに、アクチュエータ33が回転軸93aに接続されている。
【0047】
したがって、空気流路3内の空気を循環させる上述の内気モードの場合には、図7(a)のように、ドア93が開口部22を塞ぐように配置され、ケース4の外部の空気を導入する上述の外気モードの場合には、図7(b)のように、ドア93が連通路8cを塞ぐように配置される。
このように一つのドアで制御することで、部品点数を削減することができる。
【0048】
なお、上述の構成においては、ケース外気導入用ドア91,ケース内気排出用ドア92は片持ち式のドアを採用したが、空気流路3内の内気の循環と外気の導入とを選択可能なものであればよく、たとえば、バタフライ式やスライド式のドアであってもよい。
また、ケース内気排出用ドア92によって連通路8cを閉塞するようにしたが、ケース外気導入用ドア91によって閉塞してもよいし、両ドア91,92によって閉塞してもよい。さらに、連通路8cの閉塞は、仕切り部材8から連通路8cの端部までスライド可能な板によって漸次閉塞するようにしてもよい。
さらに、仕切り部材8は仕切り壁として説明してきたが、空気の流れを整えるガイドであってもよく、さらにはケース4の形状や、バッテリー2、送風機6、エバポレータ7の配置を工夫することによって仕切り部材8を備えなくともよい。
さらにまた、外気導入開口部22aとバッテリー2との間には、外気に含まれる塵などの異物の浸入を防ぐフィルタを設けてもよい。
また、発熱体は、バッテリーに限定されず、インバータ等であってもよい。ここで、インバータ等を使用した場合には、可燃性気体がケース4内に発生することがないため、ブラシレスモータ以外の駆動モータ61を使用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 発熱体冷却ユニット
2 バッテリー
3 空気流路
3a 第1流路
3b 第2流路
4 ケース
6 送風機
7 エバポレータ
8 仕切り部材(仕切り壁)
8c,8d 連通路
22 開口部
22a 第1の開口部
22b 第2の開口部
61 駆動モータ
62 インペラ
91 ケース外気導入用ドア
92 ケース内気排出用ドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気が流動可能な空気流路が内部に画成されたケース内に、
少なくともその一部が前記空気流路に露出する発熱体と、
インペラと駆動モータとを有して構成される送風機と、
前記空気流路内の空気を冷却する冷却器と、を設け、
前記駆動モータを構成する全ての部材が前記空気流路に収容されることを特徴とする発熱体冷却ユニット。
【請求項2】
前記ケースは、
前記ケースの外部の空気を導入可能な第1の開口部と、
この第1の開口部を開閉可能なケース外気導入用ドアと、
前記空気流路の空気を排出可能な第2の開口部と、
この第2の開口部を開閉可能なケース内気排出用ドアと、
を有するとともに、
前記第1の開口部が前記ケース外気導入用ドアにより閉塞され、前記第2の開口部が前記ケース内気排出用ドアにより閉塞されている場合、前記空気は前記空気流路を循環可能であり、
前記第1の開口部が前記ケース外気導入用ドアにより開放され、前記第2の開口部が前記ケース内気排出用ドアにより開放されている場合、前記第1の開口部から前記空気流路導入された空気が、前記発熱体と熱交換して前記第2の開口部から排出されるようになっていること
を特徴とする請求項1記載の発熱体冷却ユニット。
【請求項3】
前記駆動モータは、ブラシレスモータであり、
前記発熱体は、バッテリーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の発熱体冷却ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−23141(P2012−23141A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158836(P2010−158836)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(500309126)株式会社ヴァレオジャパン (282)
【Fターム(参考)】