説明

発熱素子の冷却装置

【課題】シール部材の劣化を抑制し、冷媒の漏出を有効に防止できる発熱素子の冷却装置を提供する。
【解決手段】発熱素子2が配置される主面と、放熱部41および該放熱部41の周囲を囲む第1嵌合部43が形成された他の主面と、を有する第1放熱体4と、前記第1嵌合部43に嵌合される第2嵌合部53を有し、第1嵌合部43に第2嵌合部53を嵌合して第1放熱体4と組み合わせることで、放熱部41を受容して冷媒流路を形成する受容部51を有する第2放熱体5と、第1嵌合部43と第2嵌合部53との間に介装される金属製の環状弾性体7と、を備える発熱素子の冷却装置であって、環状弾性体7は、受容部51側と逆側に配置され、かつ、発熱素子2の形成領域よりも外側の領域において、第2嵌合部53と接触するように配置されることを特徴とする発熱素子の冷却装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱素子の冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、発熱素子を冷却する冷却装置として、一対の放熱体を各放熱体に備えられた嵌合部で組み合わせてなるものが知られている。このような発熱素子の冷却装置として、発熱素子と冷却装置との間の熱抵抗を低減するために、冷却装置を構成する一対の放熱体のうち一方の放熱体を摺動可能に形成するとともに、該放熱体を発熱素子側に押圧するためのコイル状のばねを設けた発熱素子の冷却装置が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−19477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、コイル状のばねを用いているため、コイル状のばねが押圧する放熱体の一部のみに応力が集中してしまい、このような応力集中の影響により、一対の放熱体の嵌合部分をシールするシール部材が劣化してしまい、これにより、冷媒流路から冷媒が漏出してしまう場合があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、シール部材の劣化を抑制し、冷媒の漏出を有効に防止できる発熱素子の冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、放熱部および該放熱部の周囲を囲む第1嵌合部を有する第1放熱体と、第1嵌合部に嵌合される第2嵌合部、および放熱部を受容して冷媒流路を形成する受容部を有する第2放熱体と、を備える発熱素子の冷却装置において、環状弾性体を、受容部側と逆側の位置であって、発熱素子の形成領域よりも外側の領域において第2嵌合部と接触するような位置に配置することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、環状弾性体を、受容部側と逆側の位置であって、発熱素子の形成領域よりも外側の領域において第2嵌合部と接触するような位置に配置することで、第1嵌合部および第2嵌合部に加えられる応力を分散させることができ、これにより、シール部材の劣化を抑制することができ、その結果、冷媒の漏出を有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図2】本実施形態に係る第1放熱体を示す底面図である。
【図3】図2に示す第1放熱体の正面図である。
【図4】図2に示す第1放熱体の側面図である。
【図5】図1のV部分における要部拡大図である。
【図6】本実施形態に係る皿ばねの斜視図である。
【図7】第1嵌合部および第2嵌合部に加わる力を説明するための図である。
【図8】第2実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図9】第3実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
≪第1実施形態≫
本実施形態に係る半導体装置は、スイッチング素子やダイオードなどの半導体素子と、半導体素子を冷却するための冷却器とからなるものである。このような半導体装置は、スイッチング素子の導通/非導通を制御することにより、直流電源からの直流電流を三相交流電流に変換することが可能となっており、例えば、ハイブリッド車や燃料電池車等の電動車両用駆動モーターへ電力を供給するインバータ装置に用いることができる。
【0011】
図1は第1実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る半導体装置1は、半導体素子2と、冷却器3,8(第1冷却器3および第2冷却器8)とから構成されており、半導体素子2を2つの冷却器3,8で挟み込むことにより、半導体素子2を両面から冷却する両面冷却構造が採られている。
【0012】
冷却器3,8による冷却対象物である半導体素子2は、三相インバータブリッジ回路を個別に構成するIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのトランジスタやダイオードからなり、半導体素子2の両主面には、はんだ付けにより形成されたはんだ層を介して、一対の電極が接続されている。また、半導体装置1を構成する半導体素子2は、端子電極に電気的に接続されており、端子電極を介して、電力の入力/出力が可能となっている。なお、半導体素子2は、通電により発熱することから、以下に説明する冷却器3,8により、除熱が行われることとなる。また、半導体素子2は、IGBTなどのトランジスタやダイオードに限定されるものではなく、他の発熱素子であってもよい。
【0013】
第1冷却器3および第2冷却器8は、半導体素子2を冷却するための冷却器であり、図1に示すように、第1冷却器3は、半導体素子2の下側に配置されており、第2冷却器8は、半導体素子2の上側に配置されている。
【0014】
第1冷却器3は、図1に示すように、第1放熱体4と第2放熱体5とを、シール部材6および皿ばね7を介して、組み合わせることにより構成されており、第1放熱体4と第2放熱体5とが組み合わさることにより、内部に冷媒が流れるための流路(以下、冷媒流路。)が形成されている。そして、導入パイプ(不図示)から、第1冷却器3内に形成された冷媒流路内に冷媒が連続的に導入され、導入された冷媒が、X方向に沿って、この冷媒流路を流れることにより、半導体素子2により発生した熱を放熱できるようになっている。なお、第1冷却器3内に導入された冷媒は、排出パイプ(不図示)から連続的に排出されることとなる。また、第1冷却器3を構成する第1放熱体4および第2放熱体5は、例えば、熱伝導性の優れたアルミニウムやアルミニウム合金などを原材料として、ダイカストや押出し成型などにより、それぞれ個別に成型されてなるものである。
【0015】
第1放熱体4は、図1に示すように、一方の主面に、半導体素子2が配置され、半導体素子2から伝達された熱を受熱するような構成となっている。また、第1放熱体4は、他方の主面に、受熱した熱を放熱するための放熱部41と、放熱部41を周囲する第1嵌合部43とを有している。なお、第1嵌合部43は、後述する第2放熱体5の第2嵌合部53に嵌合するための部分である。
【0016】
図2は第1放熱体4の底面図であり、第1放熱体4を第2放熱体5側(冷媒流路側)からZ方向に沿って見た図である。また、図3は図2に示す第1放熱体4の正面図であり、第1放熱体4をX方向に沿って見た図である。さらに、図4は図2に示す第1放熱体4の側面図であり、第1放熱体4をY方向に沿って見た図である。図2に示すように、放熱部41は、円形状に形成されており、この円形状に形成された放熱部41上には、第2放熱体5側に向かって突出する複数の放熱フィン42a〜42gが形成されている。これら複数の放熱フィン42a〜42gは、図1〜図3に示すように、Y方向に所定の間隔で配列されている。また、複数の放熱フィン42a〜42gは、図2に示すように、X方向(すなわち、冷媒の流れ方向)に沿って連続的に延伸して形成されている。なお、各放熱フィン42a〜42gのX方向の長さは、図2に示すように、放熱部41の円形状の形状に応じて決定されている。すなわち、Y方向に配列する放熱フィン42a〜42gのうち、配列方向の中央に位置する放熱フィンほど長さが長く形成されており、配列方向の両端に位置する放熱フィンほど、長さが短く形成されている。
【0017】
さらに、第1放熱体4には、図2に示すように、放熱部41を周囲する第1嵌合部43が形成されている。この第1嵌合部43は、図1に示すように、シール部材6および皿ばね7を介して、第2放熱体5の第2嵌合部53と嵌合している。そして、第1嵌合部43および第2嵌合部53が互いに嵌合されることにより、第1放熱体4と第2放熱体5とが組み合わされている。
【0018】
一方、第2放熱体5は、図1に示すように、第1放熱体4の放熱部41を受容する受容部51と、第2嵌合部53とを有している。第2嵌合部53は、図1に示すように、第1放熱体4の第1嵌合部43と、シール部材6および皿ばね7を介して嵌合しており、これにより、受容部51は、第1放熱体4の放熱部41(放熱フィン42a〜42gを含む)を受容しつつ、第1放熱体4の放熱部41とともに、冷媒流路を形成している。
【0019】
さらに、本実施形態では、第1嵌合部43と第2嵌合部53との間に、冷媒流路をシールするためのシール部材6が介装されている。ここで、図5は、図1のV部分における要部拡大図である。シール部材6は、図5に示すように、その内周側において、放熱部41の外周側面に形成された周溝44に保持されているとともに、その外周側において、第2放熱体5と摺接するようになっている。その結果、シール部材6は、第1嵌合部43と第2嵌合部53とにより両側から押圧されることとなり、これにより、第1嵌合部43および第2嵌合部53と密着し、冷媒流路をシールすることができるようになっている。なお、このようなシール部材6としては、O−リングなどのゴム材料からなるシールリングを用いることができる。
【0020】
また、図1に示すように、第1嵌合部43と第2嵌合部53との間には、さらに、第1放熱体4を半導体素子2側に付勢するための皿ばね7が介装されている。本実施形態においては、皿ばね7は、第1嵌合部43と第2嵌合部53とで形成される嵌合部のうち、第2放熱体5の受容部51(冷媒流路)側と逆側に配置されている。すなわち、皿ばね7は、第1嵌合部43と第2嵌合部53とで形成される嵌合部のうち、シール部材6の内側の部分ではなく、シール部材6よりも外側の部分に配置されている。ここで、図6は、本実施形態に係る皿ばね7の斜視図であり、第1冷却器3から皿ばね7のみを抜き出して示した図である。
【0021】
皿ばね7は、金属製の弾性体であり、図6に示すように、環状に形成されている。また、皿ばね7は、図6に示すように、内周端71から外周端72に向かって、勾配した構成となっており、これにより、厚み方向において、変形可能となっている。
【0022】
そして、本実施形態では、このような構成を有する皿ばね7は、図5に示すように、その内周端71が、第1放熱体4の第1嵌合部43と接触し、外周端72が、第2放熱体5の第2嵌合部53と接触した状態で、第1嵌合部43と第2嵌合部53との間に介装されている。
【0023】
具体的には、皿ばね7の内周端71は、図5に示すように、Z方向から見た場合に、半導体素子2の形成領域の内側に位置する接触点45において、第1嵌合部43と接触している。すなわち、皿ばね7は、半導体素子2の直下に位置する点において、第1嵌合部43と接触している。また、皿ばね7の外周端72は、図5に示すように、Z方向から見た場合に、半導体素子2の形成領域の外側に位置する接触点55において、第2嵌合部53と接触している。
【0024】
また、本実施形態においては、この皿ばね7は、Z方向(厚み方向)に変形可能であるため、これにより、皿ばね7上に位置する第1放熱体4は、シール部材6に摺接した状態を保ちながら、Z方向に移動可能となっている。そのため、第1放熱体4は、皿ばね7により、半導体素子2側に押圧された状態で、半導体素子2と密着している。また、第1放熱体4は、皿ばね7により押圧される他、放熱部41において、冷媒流路を流れる冷媒からも、半導体モジュール2側へ押圧する圧力を受けており、これにより、第1放熱体4と半導体素子2との間の密着性が、より強固なものとなっている。
【0025】
なお、皿ばね7の荷重特性は、第1放熱体4を半導体素子2側に付勢することで、半導体素子2の厚さばらつきを吸収することができる荷重であり、かつ、半導体素子2の耐荷重を超えないものとなるように、設定されることが好適である。なお、本実施形態では、図5、図6に示すように、単一の皿ばね7を用いた構成としているが、例えば、皿ばね7の荷重特性を適切なものとするために、複数の皿ばね7を重ねて用いる構成としてもよい。
【0026】
以上のように、第1冷却器3は構成される。
【0027】
また、半導体装置1は、図1に示すように、上述した第1冷却器3以外に、第2冷却器8を備えており、この第2冷却器8は、複数の放熱フィン81a〜81eを有している。第2冷却器8においても、第1冷却器3と同様に、冷媒が、連続的に、導入パイプ(不図示)から第2冷却器8の冷媒流路内へと導入され、これにより、半導体素子2を冷却するようになっている。
【0028】
以上のように、本実施形態の半導体装置1においては、図1、図5に示すように、第1嵌合部43と第2嵌合部53との間に、皿ばね7が介装されており、この皿ばね7が、第1放熱体4を、半導体素子2側に付勢することにより、第1放熱体4と半導体素子2との密着性を高め、第1冷却器3と半導体素子2との間の熱抵抗を低減することができる。さらに、本実施形態の半導体装置1においては、環状に形成された皿ばね7を用い、皿ばね7が放熱部41を周囲するように配置することにより、第1嵌合部43および第2嵌合部53に加わる応力を分散させることができる。このように、第1放熱体4および第2放熱体5に加わる応力を分散させることにより、シール部材6の一部に応力が集中することを有効に防止することができ、これにより、シール部材6の劣化を有効に抑制することができる。そして、その結果、本実施形態では、冷媒流路からの冷媒の漏出を有効に防止することができる。
【0029】
また、本実施形態では、図5に示すように、皿ばね7が、半導体素子2の形成領域よりも内側に位置する接触点45において、第1嵌合部43と接触するように配置されている。そのため、図7に示すように、皿ばね7は、半導体素子2の直下から、第1放熱体4を押圧力Fで押圧することができ、これにより、皿ばね7の押圧力Fにより、第1放熱体4がたわむことを有効に防止することができる。そして、その結果として、半導体素子2と第1冷却器3との間の熱抵抗が増大することを有効に抑制することができる。ここで、図7は、第1嵌合部43および第2嵌合部53に加わる力を説明するための図である。なお、図7においては、図1と同様に、半導体装置1の断面図を表しているが、説明を容易にするため、ハッチング処理および図面中の符号を一部省略している。
【0030】
一方で、皿ばね7を、半導体素子2の形成領域よりも外側に位置する点において、第1嵌合部43と接触させた場合には、皿ばね7の押圧力Fにより、皿ばね7と接触する第1嵌合部43が、半導体素子2側(上方向)に反り曲がり、これにより、第1放熱体4がたわんでしまう場合がある。これに対して、本実施形態では、皿ばね7を、半導体素子2の形成領域よりも内側に位置する接触点45において、第1嵌合部43と接触するように配置することにより、このような問題を有効に解決するものである。
【0031】
さらに、本実施形態では、図5に示すように、皿ばね7が、半導体素子2の形成領域よりも外側に位置する接触点55において、第2嵌合部53と接触するように配置されている。そのため、図7に示すように、皿ばね7は、第2嵌合部53のうちY方向に突出した部分の根元側において、第2嵌合部53を押圧力Fで押圧することができ、これにより、皿ばね7の押圧力Fにより、第2嵌合部53が冷媒流路側(下方向)に折れ曲がることを有効に抑制することができる。そして、その結果として、冷媒流路から冷媒が漏出することをより有効に防止することができる。
【0032】
一方で、皿ばね7を、半導体素子2の形成領域よりも内側に位置する点において、第2嵌合部53と接触させた場合には、皿ばね7は、第2嵌合部53のうちY方向に突出した部分の先端側において、第2嵌合部53を押圧力Fで押圧してしまい、これにより、皿ばね7と接触する第2嵌合部53が、冷媒流路側(下方向)に折れ曲がり、冷媒流路から冷媒が漏出してしまう場合がある。これに対して、本実施形態では、皿ばね7を、半導体素子2の形成領域よりも外側に位置する接触点55において、第2嵌合部53と接触するように配置することにより、このような問題を有効に解決するものである。
【0033】
さらに、本実施形態では、図2に示すように、放熱部41が円形状に形成されており、この円形状に形成された放熱部41の外周側面を周囲するように、シール部材6が配置されている。すなわち、本実施形態では、シール部材6が円形状に配置されているため、シール部材6に加わる応力が不均一なものとなることを有効に防止することができ、その結果として、シール部材6の信頼性を高めることができる。
【0034】
≪第2実施形態≫
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。図8は、第2実施形態に係る半導体装置1aの断面図である。第2実施形態に係る半導体装置1aは、以下に説明する点において、第1実施形態の半導体装置1と異なる以外は、上述の第1実施形態と同様の構成と作用を有し、その重複する説明は省略する。
【0035】
第2実施形態に係る半導体装置1aは、図8に示すように、単一の半導体素子2と、2つの第1冷却器3とを有しており、この半導体素子2を、2つの第1冷却器3で挟み込むことにより、半導体素子2を両面から冷却する両面冷却構造が採られている。すなわち、第2実施形態に係る半導体装置1aでは、第1冷却器3が、半導体素子2の上下両面に配置されており、この点において、第1実施形態に係る半導体装置1と異なる。
【0036】
以上のように、本実施形態に係る半導体装置1aにおいては、第1放熱体4と第2放熱体5とを、シール部材6および皿ばね7を介して、組み合わせてなる第1冷却器3を、半導体素子2の上下両面に配置した構成となっている。ここで、上述したように、第1冷却器3は、第1嵌合部43と第2嵌合部53との間に、皿ばね7を介装しており、この皿ばね7は、図5に示すように、半導体素子2の形成領域の内側に位置する接触点45において、第1嵌合部43と接触し、かつ、半導体素子2の形成領域の外側に位置する接触点55において、第2嵌合部53と接触するように、配置されている。本実施形態では、このように構成された第1冷却器3により、半導体素子2を上下両面から冷却することにより、上述した第1実施形態の効果に加えて、半導体素子2の上面においても、半導体素子2と第1冷却器3との密着性を高めることができ、これにより、半導体装置1a全体としての冷却性能をより高めることができるという効果を奏することができる。
【0037】
≪第3実施形態≫
続いて、本発明の第3実施形態について説明する。図9は、第3実施形態に係る半導体装置1bの断面図である。第3実施形態に係る半導体装置1bは、以下に説明する点において、第1実施形態の半導体装置1と異なる以外は、上述の第1実施形態と同様の構成と作用を有し、その重複する説明は省略する。
【0038】
第3実施形態に係る半導体装置1bは、図9に示すように、半導体素子を搭載する半導体モジュール20と、この半導体モジュール20を冷却するための第1冷却器3とを有しており、半導体モジュール20を、ボルトやねじなどの締結部材9により、第1冷却器3に固定することにより、半導体モジュール20を、片面から、第1冷却器3で冷却する構成となっている。すなわち、第3実施形態に係る半導体装置1bにおいては、半導体素子2の代わりに半導体素子を搭載する半導体モジュール20を備えるとともに、この半導体モジュール20を冷却するための冷却器として、第2冷却器8が配置されておらず、この点において、第1実施形態に係る半導体装置1と異なる。
【0039】
本実施形態において、半導体装置1bを構成する第1冷却器3には、図9に示すように、第1嵌合部43と第2嵌合部53との間に、皿ばね7が介装されている。そして、この皿ばね7は、半導体モジュール20に搭載された半導体素子(不図示)の形成領域の内側に位置する接触点において、第1嵌合部43と接触し、かつ、半導体モジュール20に搭載された半導体素子(不図示)の形成領域の外側に位置する接触点おいて、第2嵌合部53と接触するように配置されている。
【0040】
以上のように、本実施形態に係る半導体装置1bは、半導体モジュール20が、締結部材9により、第1冷却器3に固定されており、半導体モジュール20を、片面から、第1冷却器3で冷却する構成となっている。この第1冷却器3は、第1嵌合部43と第2嵌合部53との間に、皿ばね7を介装しており、この皿ばね7は、図9に示すように、半導体モジュール20に搭載された半導体素子(不図示)の形成領域の内側に位置する接触点において、第1嵌合部43と接触し、かつ、半導体モジュール20に搭載された半導体素子(不図示)の形成領域の外側に位置する接触点おいて、第2嵌合部53と接触するように配置されている。本実施形態では、このように構成された第1冷却器3により、半導体素子2を片面から冷却することにより、上述した第1実施形態の効果に加えて、半導体装置1bの小型化、および製造コストの低減化などの効果を奏することができる。
【0041】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0042】
例えば、本実施形態においては、第1放熱体4を半導体素子2側に付勢するための部材として、皿ばね7を例示して説明しているが、このような部材としては、皿ばね7に限定されるものではなく、金属製の環状弾性体であれば、特に限定されるものではない。
【0043】
また、上述した実施形態においては、単一の半導体素子2を、2つの冷却器3,8で冷却する半導体装置1を例示したが、半導体装置1が備える半導体素子の数は特に限定されず、複数の半導体素子を備える構成としてもよい。
【0044】
なお、上述した実施形態の半導体素子2は本発明の発熱素子に、第1放熱体4は本発明の第1放熱体に、第1嵌合部43は本発明の第1嵌合部に、第2放熱体5は本発明の第2放熱体に、第2嵌合部53は本発明の第2嵌合部に、皿ばね7は本発明の環状弾性体および皿ばねに、それぞれ相当する。
【符号の説明】
【0045】
1,1a,1b…半導体装置
2…半導体素子
20…半導体モジュール
3…第1冷却器
4…第1放熱体
41…放熱部
42a〜42g…放熱フィン
43…第1嵌合部
44…周溝
45…接触点
5…第2放熱体
51…受容部
53…第2嵌合部
55…接触点
6…シール部材
7…皿ばね
8…第2冷却器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱素子が配置される主面と、放熱部および該放熱部の周囲を囲む第1嵌合部が形成された他の主面と、を有する第1放熱体と、
前記第1嵌合部に嵌合される第2嵌合部を有し、前記第1嵌合部に前記第2嵌合部を嵌合して前記第1放熱体と組み合わせることで、前記放熱部を受容して冷媒流路を形成する受容部を有する第2放熱体と、
前記第1嵌合部と前記第2嵌合部との間に介装される金属製の環状弾性体と、を備える発熱素子の冷却装置であって、
前記環状弾性体は、前記受容部側と逆側に配置され、かつ、前記発熱素子の形成領域よりも外側の領域において、前記第2嵌合部と接触するように配置されることを特徴とする発熱素子の冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発熱素子の冷却装置であって、
前記環状弾性体は、内周側から外周側に向かって、勾配して形成されており、
前記環状弾性体は、内周側の一端において、前記第1嵌合部と接触しており、外周側の他端において、前記第2嵌合部と接触していることを特徴とする発熱素子の冷却装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発熱素子の冷却装置であって、
前記環状弾性体は、前記発熱素子の形成領域よりも内側の領域において、前記第1嵌合部と接触するように配置されることを特徴とする発熱素子の冷却装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の発熱素子の冷却装置であって、
前記第1放熱体は、前記放熱部には、複数の放熱フィンが形成されており、
前記複数の放熱フィンは、前記環状弾性体よりも内側の、円形状の領域に形成されていることを特徴とする発熱素子の冷却装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の発熱素子の冷却装置であって、
前記環状弾性体は、皿ばねであることを特徴とする発熱素子の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−198998(P2011−198998A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64036(P2010−64036)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】