説明

発電装置

【課題】 周囲の環境条件が変化して運転状態が変化しても高い発電効率を得ることができる発電装置を提供すること。
【解決手段】 加熱媒体Hとの熱交換により作動媒体Mを蒸発させる蒸気発生器10と、蒸気発生器10で蒸発した作動媒体Mを膨張させ、動翼を介して機械的動力を得る膨張機20と、冷却媒体Cとの熱交換により膨張機20で膨張した作動媒体Mを凝縮させる凝縮器40と、膨張機20で得られた機械的動力により駆動されて発電する発電機30と、前記動翼の周速度の、作動媒体Mの膨張機20における熱落差から求まる理論速度に対する比が所定の値になるように前記動翼の回転速度を制御する制御装置60とを備える発電装置1とすると、周囲の環境条件が変動してもこれに追従して膨張機を高効率運転点で運転することが可能となり、高い発電効率を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発電装置に関し、特に周囲の環境条件が変化して運転状態が変化しても高い発電効率を得ることができる発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エネルギの有効利用が喫緊の課題となっている今日において、未利用エネルギを有効活用できる装置として、ランキンサイクルを利用したクローズドシステムで、排熱を利用して作動媒体を蒸発させ、作動媒体の蒸気を蒸気タービンに供給し発電機を駆動して電力を得る廃熱発電装置が知られている(例えば特許文献1参照)。発電装置は、便宜上、商用電源と系統連系して利用されることが多い。このとき、発電装置の発電機は、発電電力の周波数を系統電力の周波数と同調させるため、蒸気タービン動翼の回転速度を一定にするように運転する。
【0003】
他方、このような発電装置における発電量は、周囲の環境温度によって変動し得る。すなわち、周囲の環境温度が低下(上昇)すると蒸気タービンに供給され機械仕事に変換される熱量が増加(減少)し、発電機の駆動力が増加(減少)するために発電量が変動する場合がある。このように周囲の環境条件が変動しても、発電電力の周波数を系統電力の周波数と同調させるためには、蒸気タービン動翼の回転速度を一定にするように運転する必要があった。
【特許文献1】特開2000−110514号公報(第2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発電装置の発電効率は蒸気タービンの運転効率に依存するため、蒸気タービン動翼の回転速度を一定にするように運転しようとすると、いきおい蒸気タービンの効率の悪い点で運転せざるを得ず、これに伴って発電装置の発電効率の悪化を甘受せざるを得ないこととなっていた。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、周囲の環境条件が変化して運転状態が変化しても高い発電効率を得ることができる発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明に係る発電装置は、例えば図1に示すように、加熱媒体Hとの熱交換により作動媒体Mを蒸発させる蒸気発生器10と;蒸気発生器10で蒸発した作動媒体Mを膨張させ、動翼を介して機械的動力を得る膨張機20と;冷却媒体Cとの熱交換により膨張機20で膨張した作動媒体Mを凝縮させる凝縮器40と;膨張機20で得られた機械的動力により駆動されて発電する発電機30と;前記動翼の周速度の、作動媒体Mの膨張機20における熱落差から求まる理論速度に対する比が所定の値になるように前記動翼の回転速度を制御する制御装置60とを備える。ここで、所定の値は、典型的には、膨張機20の運転効率が最高となる値であり、幅を有していてもよい。
【0007】
このように構成すると、動翼の周速度の、作動媒体の膨張機における熱落差から求まる理論速度に対する比が所定の値になるように動翼の回転速度を制御するので、周囲の環境条件が変動してもこれに追従して膨張機を高効率運転点で運転することが可能となり、高い発電効率を得ることができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係る発電装置は、例えば図1に示すように、請求項1に記載の発電装置において、発電した電力が交流電力Eaであって、交流電力Eaを直流電力Edに変換する整流器61と;直流電力Edを交流電力Pgに変換するインバータ62と;膨張機20に導入される蒸発した作動媒体Mのエンタルピと凝縮器40で凝縮した作動媒体Mのエンタルピとのエンタルピ差を検知するエンタルピ差検知手段85、91、92と;前記動翼の回転速度を検知する速度検知手段84と;直流電力Edの電圧を検知する直流電圧検知器88とを備え;制御装置60が、エンタルピ差検知手段85、91、92で検知したエンタルピ差より前記理論速度を算出し、直流電圧検知器88で検知する電圧Edを所定の電圧に調節することにより、速度検知手段84で検知する前記動翼の回転速度を制御するように構成されている。
【0009】
このように構成すると、エンタルピ差検知手段で検知したエンタルピ差より理論速度を算出し、直流電圧検知器で検知する電圧を所定の電圧に調節することにより、速度検知手段で検知する動翼の回転速度を制御するので、周囲の環境条件の変動に対して理論速度を算出し、これに追従して膨張機を高効率運転点で運転することが可能となり、高い発電効率を得ることができる。また、発電した交流電力を直流電力に変換する整流器と、直流電力を交流電力に変換するインバータとを備えるので、発電機で発電した電力の周波数を系統電力の周波数とインバータによって同調させることができ、膨張機の動翼の回転速度を一定に維持することなく系統電力と系統連系することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明に係る発電装置は、例えば図1に示すように、加熱媒体Hとの熱交換により作動媒体Mを蒸発させる蒸気発生器10と;蒸気発生器10で蒸発した作動媒体Mを膨張させ、動翼を介して機械的動力を得る膨張機20と;冷却媒体Cとの熱交換により膨張機20で膨張した作動媒体Mを凝縮させる凝縮器40と;膨張機20で得られた機械的動力により駆動され、交流電力Eaを発電する発電機30と;発電した交流電力Eaを直流電力Edに変換する整流器61と;直流電力Edを交流電力Pgに変換するインバータ62と;膨張機20に導入される蒸発した作動媒体Mの飽和温度と凝縮器40で凝縮した作動媒体Mの凝縮温度との温度差を検知する温度差検知手段85、91と;前記動翼の回転速度を検知する速度検知手段84と;直流電力Edの電圧を検知する直流電圧検知器88と;温度差検知手段85、91で検知した温度差から、あらかじめ関連づけられた前記温度差に対応する前記動翼の所定の回転速度を決定し、直流電圧検知器88で検知する電圧を所定の電圧に調節することにより、速度検知手段84で検知する前記動翼の回転速度が前記所定の回転速度となるように制御する制御装置60とを備える。
【0011】
このように構成すると、温度差検知手段で検知した温度差から、あらかじめ関連づけられた温度差に対応する動翼の所定の回転速度を決定し、直流電圧検知器で検知する電圧を所定の電圧に調節することにより、速度検知手段で検知する動翼の回転速度が所定の回転速度となるように制御するので、周囲の環境条件の変動に対してあらかじめ関連づけられた温度差に対応する動翼の所定の回転速度にして膨張機を高効率運転点で運転することが可能となり、高い発電効率を得ることができる。また、発電した交流電力を直流電力に変換する整流器と、直流電力を交流電力に変換するインバータとを備えるので、発電機で発電した電力の周波数を系統電力の周波数とインバータによって同調させることができ、膨張機の動翼の回転速度を一定に維持することなく系統電力と系統連系することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、動翼の周速度の、作動媒体の膨張機における熱落差から求まる理論速度に対する比が所定の値になるように動翼の回転速度を制御するので、周囲の環境条件が変動してもこれに追従して膨張機を高効率運転点で運転することが可能となり、高い発電効率を得ることができる。また、発電した交流電力を直流電力に変換する整流器と、直流電力を交流電力に変換するインバータとを備える場合は、発電機で発電した電力の周波数を系統電力の周波数とインバータによって同調させることができ、膨張機の動翼の回転速度を一定に維持することなく系統電力と系統連系することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、互いに同一又は相当する装置には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0014】
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る発電装置の構成を説明する。図1は、発電装置1の構成を説明するブロック図である。
発電装置1は、加熱媒体Hと熱交換することにより作動媒体Mを蒸発させる蒸気発生器10と、蒸発した作動媒体Mを膨張させて機械的動力を得る膨張機20と、膨張機20とシャフトを介して接続され膨張機20からの機械的動力により駆動されて交流電力Eaを発電する発電機30と、膨張した作動媒体Mを、冷却媒体Cと熱交換して凝縮させる凝縮器40と、冷却媒体Cを凝縮器40に導入する冷却媒体導入手段41と、制御装置60と、発電機30で発電した交流電力Eaを直流電力Edに変換する整流器61と、整流器61で変換した直流電力Edを交流電力Pgに変換するインバータ62とを備えている。
【0015】
ここで、作動媒体として、沸点が40℃前後のジクロロトリフルオロエタンHCFC123あるいはトリフルオロエタノールCFCHOH等を用いると、200〜400℃程度の排ガスあるいは100〜150℃の排温水など比較的低温度の熱源を利用して、これらの熱エネルギをまず作動媒体Mの高圧蒸気に変換し、これにより膨張機20で発電機30に直結したタービン(不図示)を回転駆動し、発電を行うことができる。また、圧力が高くなるので、膨張機20などのコンパクト化が図れる。ただし、作動媒体Mは、これらに限られることはなく、ペンタフルオロプロパンR245fa等のその他のフロン類、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、アルコール等でもよく、水でもよい。また、加熱媒体Hは、焼却炉の排ガス、排温水、エンジンのジャケット温水等、作動媒体Mを蒸発させる熱を有していればよい。発電装置1は、加熱媒体Hを蒸気発生器10に圧送する加熱媒体搬送機16を備えており、加熱媒体搬送機16は、発電機30で発電した電力あるいは商用電力により作動するように構成されている。なお、冷却媒体Cについては、後述する。
【0016】
蒸気発生器10と膨張機20とは、蒸発した作動媒体Mの流路である配管53で接続されている。配管53には、蒸発した作動媒体Mの流れを遮断し、開度を調節することにより流量を調節することができる仕切弁51が配設されている。膨張機20と凝縮器40とは、膨張した作動媒体Mの流路である配管54で接続されている。凝縮器40と蒸気発生器10とは、凝縮した作動媒体Mの流路である配管55で接続されている。配管55には、凝縮した作動媒体Mを蒸気発生器10に向かって圧送する作動媒体ポンプ50が配設されている。また、蒸気発生器10と仕切弁51との間の配管53と凝縮器40とは、膨張機20をバイパスして凝縮器40に蒸発した作動媒体Mを導入するバイパス配管56で接続されている。バイパス配管56には、蒸発した作動媒体Mの流れを遮断し、開度を調節することにより流量を調節することができるバイパス仕切弁52が配設されている。
【0017】
発電機30は、電気ケーブルを介して、整流器61と接続されている。整流器61は、電気ケーブルを介して、インバータ62と接続されている。また、インバータ62は、電気ケーブルを介して、系統電力を供給する商用電源と系統連系している。また、発電機30には、軸受けに送る潤滑油を循環する油配管34が接続され、油配管34には油を循環させる油ポンプ32が配設されている。また、油配管34には油を冷却するオイルクーラー33が配設されている。オイルクーラー33には油を冷却するための油冷却用媒体M1を流す油冷却用配管35が接続されている。本実施の形態では、油冷却用媒体M1として、凝縮器40で凝縮した作動媒体Mの一部を分流して用いている。油冷却用配管35は、作動媒体ポンプ50の二次側の配管55及び凝縮器40に接続されている。
【0018】
発電装置1は、凝縮器40への冷却媒体Cの導入を行う冷却媒体導入手段41を備えている。本実施の形態では、冷却媒体導入手段41は、冷却媒体としての冷却水Cを凝縮器40に圧送する冷却水ポンプ43と、冷却水Cを冷却する冷却塔42とを含んで構成されている。冷却塔42のファン42f及び冷却水ポンプ43は、それぞれ不図示の電気ケーブルを介してインバータ62と接続されており、発電機30で発電した電力あるいは商用電力を受電して作動するように構成されている。このように、冷却媒体導入手段41は、冷却媒体Cを、凝縮機40内の作動媒体Mを凝縮させるのに必要な冷熱量を保有するように調整して、凝縮器40に導入するものである。
【0019】
発電装置1は、作動媒体Mの蒸気の温度を検知する蒸気温度検知器91と、作動媒体Mの蒸気の圧力を検知する蒸気圧力検知器92と、凝縮器40で凝縮した作動媒体Mの圧力を作動媒体Mの飽和液の温度から検知するための凝縮温度検知器85とを備えている。蒸気温度検知器91と蒸気圧力検知器92とは一体に構成されていてもよい。簡易的には作動媒体Mの温度あるいは圧力の一方を検知するように構成しても差し支えない。また、凝縮温度検知器85に代えて凝縮圧力検知器95を設け、直接作動媒体Mの凝縮圧力を求めてもよい。また、蒸気温度検知器91に代えて熱源温度検知器94で加熱媒体Hの温度を検知して、これから作動媒体Mの蒸気の温度を算出してもよい。なお、蒸気温度検知器91と凝縮温度検知器85とで膨張機20前後の作動媒体Mの温度差を検知することができ、これらが温度差検知手段を構成している。
【0020】
また、発電装置1は、発電機30が有するロータの回転速度Nを検知する速度検知器84と、発電機30で発電した電流の強さを検知する電流検知器81と、整流器61で変換された直流の電圧の大きさを検知する直流電圧検知器88とを備えている。発電機30のロータ(不図示)と膨張機20の動翼(不図示)とはシャフトを介して連結されているので、ロータの回転速度Nから動翼の回転速度nを検知することができる。発電機30と膨張機20とが増速機又は減速機を介して連結されているときは発電機30のロータの回転速度Nと膨張機20の動翼の回転速度nとは等しくはないが相関関係があり、両者が直結されているときはロータの回転速度Nと動翼の回転速度nとが等しくなる。したがって、速度検知器84は速度検知手段の一つである。また、発電機30による発電電力の周波数とロータの回転速度Nには相関関係があることから、膨張機20の動翼の回転速度nを把握するため、ロータの回転速度Nを検知する代わりに周波数検知器(不図示)で発電電力の周波数を検知してもよい。周波数検知器も速度検知手段の一つである。なお、速度検知手段により、発電機30の過回転速度防止を監視することもできる。発電装置1は、発電機30で発電した電力の大きさを検知する電力検知器82を備えてもよい。
【0021】
さらに、電流検知器81や電力検知器82に代えて、又はこれらの検知器と共に、発電機30が有するステータコイルの温度を検知するコイル温度検知器83、及び凝縮器40に導入される冷却媒体Cの温度を検知する冷却媒体温度検知器86を備えていてもよい。これらの検知器により、膨張機20及び発電機30の回転速度、あるいは発電機30の発電電力が所定の値を超えないように、機器の状態を把握することが可能になる。
【0022】
膨張機20及び発電機30の回転速度、あるいは発電機30の発電電力が所定の値を超えないように機器の状態を把握することは、発電機30を、電流過大による昇温や過回転速度による軸受けの焼損といった損傷から防ぐ措置を講ずるための指標となる。電流検知器81は、過電流か否かを直接検知することができる。電力検知器82は、発電機30で発電された電気エネルギの量を検知することができる。なお、電力の値は、電流値と電圧値とから算出するようにしてもよい。また、コイル温度検知器83は、発電機30の温度を直接検知することができるので、過昇温防止の対応がしやすくなる。また、冷却媒体温度検知器86は、簡便な手段で作動媒体Mのおおよその凝縮温度を検知することができる。なお、冷却媒体Cを外気と熱交換する場合は、外気温検知器93で検知した外気温によって冷却媒体Cの温度を求めてもよい。
【0023】
制御装置60は、典型的には、整流器61、インバータ62、電流検知器81、直流電圧検知器88を含んで構成されている。また、蒸気温度検知器91、蒸気圧力検知器92、凝縮温度検知器85とそれぞれ不図示の信号ケーブルで接続されており、検知器85、91、92で検知した値を取り入れることができるように構成されている。また、各検知器82〜86、93〜95とも不図示の信号ケーブルで接続されており、各検知器82〜86、93〜95で検知した値を取り入れることができるように構成されている。制御装置60は、各検知器器82〜86、91〜95から取り入れた値に基づいて種種の演算ができ、演算した値や各検知器82〜86、91〜95から取り入れた値に基づいて、発電機30の発電電力の調節や発電装置1からの出力電力の調整、ファン42fや冷却水ポンプ43の回転速度の増減等をすることができるように構成されている。また、仕切弁51及びバイパス仕切弁52のそれぞれと不図示の信号ケーブルで接続されており、これらに開閉信号を送信して開閉させることができるように構成されている。
【0024】
また、制御装置60は、各種の情報を記録することができるように構成されている。本実施の形態では、制御装置60には作動媒体Mに関する情報があらかじめ記録されている。したがって、蒸気温度検知器91で検知した温度及び蒸気圧力検知器92で検知した圧力から、作動媒体Mの蒸気のエンタルピh3及びエントロピs3を求めることができる。また、膨張機20における作動媒体Mの膨張は断熱膨張であるから膨張した作動媒体Mのエントロピs4は保存され(s4=s3)、これと凝縮温度検知器85で検知した温度を基に算出した凝縮圧力とから凝縮した作動媒体Mのエンタルピh4を求めることができる。なお、凝縮圧力を凝縮圧力検知器95から直接検知することができるのは前述の通りである。これらより、蒸気温度検知器91、蒸気圧力検知器92、凝縮温度検知器85(凝縮圧力検知器95)から膨張機20前後のエンタルピ差(h3−h4)を求めることができ、これがエンタルピ差検知手段を構成している。
【0025】
次に図1及び図2を参照して、発電装置1の作用について説明する。
図2は、作動媒体Mの状態の変化を説明するP−h線図(圧力Pを縦軸に、エンタルピhを横軸にとったもの)である。また、図2中の曲線は、作動媒体Mのかわき度0及びかわき度1の状態点を結んだものである。なお、以下では、膨張機20がタービン(不図示)を備えるものとして、また、加熱媒体Hがエンジンのジャケット温水であるとして説明を行う。
蒸気発生器10、膨張機20、凝縮器40及びそれらを連接する配管53、54、55は、作動媒体Mのクローズドシステムを構成し、発電装置1はランキンサイクルを行って、膨張機20で得られた機械的駆動力で駆動される発電機30にて発電を行う。
【0026】
液体の作動媒体Mは、作動媒体ポンプ50にて蒸気発生器10に圧送される(状態1→状態2)。蒸気発生器10に流入した作動媒体Mは、ジャケット温水Hとの間で熱交換が行われて飽和蒸気あるいは過熱蒸気となる(状態2→状態3)。蒸気となった作動媒体Mは、膨張機20に流入する。ここで、定常運転時は、仕切弁51が開、バイパス仕切弁52が閉となっている。したがって、作動媒体蒸気Mのすべてが膨張機20に流入する。膨張機20に流入した作動媒体蒸気Mは、タービンを通して断熱膨張する(状態3→状態4)。このとき、タービンの動翼が作動媒体Mにより回転させられて機械的動力が得らる(熱エネルギから機械エネルギへの変換)。得られた機械的動力により膨張機20に接続された発電機30が駆動されて、発電機30が発電を行う(機械エネルギから電気エネルギへの変換)。膨張機20で得られる機械的動力は、膨張機20前後の作動媒体Mのエンタルピの差(h3−h4:熱落差)により変動する。エンタルピ差が大きければ大きな機械的動力が得られ、エンタルピ差が小さければ得られる機械的動力も小さくなる。膨張機20で膨張した作動媒体Mは、凝縮器40に流入して冷却水Cとの間で熱交換が行われて凝縮し、液体の作動媒体Mとなる(状態4→状態1)。液体に戻った作動媒体Mは、作動媒体ポンプ50にて再び蒸気発生器10に圧送され、以下同様のサイクルを行う。
【0027】
発電機30で発電した交流電力Eaは、整流器61に送られて直流電力Edに変換された後、インバータ62に送られて交流電力Pgに変換され、系統電力に連系される。系統連系した交流電力Pgは、ファン42f及び冷却水ポンプ43や、電力負荷(不図示)に送電される。ファン42f及び冷却水ポンプ43は、発電機30での発電がない場合は商用電源から電力の供給を受けて作動する。厳密にいえば、系統連系した後の交流電力は、発電機30で発電したものか商用電源から供給されたものか区別することはできないが、概念として、発電機30で発電した電力から発電装置1内で消費する電力を差し引いた残りの電力が、発電装置1から取り出せる、発電装置1外の電力負荷で利用できる有効な電力ということになる。なお、発電装置1内で消費する電力は、直流電力を直接あるいは冷却媒体導入手段用インバータ(不図示)経由で供給しても差し支えない。
【0028】
蒸気発生器10で作動媒体Mと熱交換して温度が下がったジャケット温水Hは、不図示のエンジンに導かれてエンジンの冷却に利用され、温度が上昇したのち発電装置1の熱源として再び蒸気発生器10に導入される。また、凝縮器40で作動媒体Mと熱交換して温度が上昇した冷却水Cは、冷却塔42で熱を大気に排出して温度が低下し、冷却水ポンプ43にて再び凝縮器40に圧送される。ここで、ジャケット温水Hの温度はほとんど変動がなくほぼ一定であるので、蒸気発生器10における作動媒体Mの蒸発温度はほぼ一定となる。他方、冷却水Cの温度は、外気温等の周囲の環境条件の変動により変化する。
【0029】
外気温が低下すると凝縮器40に圧送される冷却水Cの温度が低くなり、これに伴って凝縮器40における作動媒体Mの凝縮温度が低下する。これを図2でみると、状態4が、状態4より圧力が低くエンタルピが小さい状態4’に移動している。図2から明らかなように、外気温の低下に伴い凝縮器40における凝縮温度が低下して、作動媒体Mのサイクルが状態4から状態4’に移ると、エンタルピ差、すなわち、機械的動力に変換される熱エネルギが増大する。熱エネルギが増大するとタービン動翼の回転速度nが増大し、発電機30のロータの回転速度Nが増大して発電電力の周波数が高くなるが、発電装置1は整流器61及びインバータ62を備えているので、系統電力の周波数に合わせるためのタービン動翼の回転速度nの制限をする必要はない。そこで、制御装置60は、発電装置1における発電効率(出力電力/投入エネルギ)が最もよくなるような、すなわちタービンの効率が最もよくなるような、以下の制御を行う。なお、タービンの効率は、「タービン動翼の周速度」の「作動媒体Mの蒸気の理論速度」に対する比(U/Co)と所定の関係があることが知られている。
【0030】
図3は、本実施の形態のタービン(単段のラジアルタービン)における「タービン動翼の周速度」の「作動媒体Mの蒸気の理論速度」に対する比(U/Co)とタービン効率ηとの関係を示すグラフである。ここで、タービン動翼の周速度U(以下単に「周速度U」という。)は、円周率πと動翼の回転速度nと動翼の直径Dとの積(U=πnD)で表される。他方、作動媒体Mの蒸気の理論速度Co(以下単に「理論速度Co」という。)はエンタルピ差(h3−h4)の2倍の平方根(Co=(2(h3−h4))1/2)で表されることが知られている。図3に示す本実施の形態における単段のラジアルタービンの例では、比(U/Co)が約0.7となるように運転するのが最も効率がよい。この、比(U/Co)が最もよい値が「所定の値」であり、所定の値は許容しうる幅があってもよい。上述のように、環境条件の変化によってエンタルピ差(h3−h4)は変動するから、理論速度Coも環境条件の変化によって変動する。他方、タービン動翼の直径Dは運転中に変わるものではないから、理論速度Coの変動に追従して回転速度nを変動させ、比(U/Co)が約0.7となるようにタービンを運転する。
【0031】
制御装置60は、蒸気温度検知器91で検知した温度及び蒸気圧力検知器92で検知した圧力から、作動媒体Mの蒸気のエンタルピh3を求める一方、凝縮温度検知器85で検知した温度に基づいて算出した圧力からエンタルピh4を求め、理論速度Coを算出する。次に、制御装置60は、比(U/Co)が0.7となるような回転速度nを算出する(n=0.7×Co/(πD))。また、制御装置60は、速度検知器84により実際の動翼の回転速度nを検知して、意図する回転速度nとの偏差を算出する。そして、偏差が小さくなるように動翼の回転速度nを制御するのであるが、これをインバータ62による電圧の制御で行う。以下、インバータ62による電圧の制御について説明する。
【0032】
図4は、直流電圧Vdをパラメータとした発電装置1の出力電力Pgと発電機30のロータ回転速度Nとの関係を示す図である。図4によれば、直流電圧Vdと出力電力Pgを与えるとロータ回転速度Nが決まることとなる。本実施の形態では、発電機30のロータはシャフトを介してタービン動翼と直結しているので、ロータ回転速度Nが決まるとタービン動翼の回転速度nが決まる。仮に直流電圧Vdを一定とする制御の場合、発電装置1のタービン仕事が増大すると、系統への出力電力Pgの増大とロータの回転速度Nの増大でバランスし、逆にタービン仕事が減少すると、出力電力Pgの減少とロータの回転速度Nの減少でバランスする。
【0033】
制御装置60は、インバータ62を制御して、直流電圧検知器88で検知される直流電圧Vdを監視しつつ系統電力へ出力される交流電流を調節し、直流電圧Vdを所定の電圧に調節することにより、ロータの回転速度N、ひいては動翼の回転速度nを制御することができる。より具体的には、制御装置60は、実際の動翼の回転速度nと目標とする回転速度n(n=0.7×Co/(πD))との偏差を小さくするために、直流電圧検知器88により直流電圧Vdを検知して、図4の太線で示す目標電圧になるように直流電圧を調節する。このように直流電圧を所定の電圧に調節することで動翼の回転速度nを効率のよいポイントに制御することができる。
【0034】
ここで、発電装置1は系統連系しているため、出力する電圧は系統側の電圧以上にしなければならない。直流電力Edの最低必要電圧Vdは系統側の電圧から決まるが、例えば220Vに連系するためには、直流電圧Vdは最低365〜370Vが必要になる。したがって、この電圧値が、直流電圧Vdを所定の電圧に調節する際の下限となる。本実施の形態では、所定の電圧の下限を370Vとしている。
【0035】
他方、発電機30は、一般に、発電装置1で想定しうる最大仕事量に耐えられる仕様にはなっていない。仮に発電装置1で想定しうる最大仕事量に耐えられる仕様とすると、まれにしか生じない事態のために多大なコストをかけて発電機を製作することとなり不経済である。発電機30に許容量以上の機械的仕事を与えた場合、電流過大による発熱や温度上昇が生じて運転不能に陥ったり、発電機のロータとステータとの間のトルクが不足してロータが高速回転となって過回転速度による軸受けの焼損に至ることがある。たとえ経済性を考慮しても、このような発電機30の損傷を回避する必要がある。したがって、過回転速度防止の観点から回転速度Nの上限が決定され、これに伴って直流電圧を所定の電圧に調節する際の上限が決まってくる。本実施の形態では、図4に示すように、回転速度Nの上限を108としたのに伴って、430Vが直流電圧値の上限となっている。図4においては、回転速度Nの上限で出力電力を増加させていくと次第に直流電圧が降下し下限値に到達してしまうことが考えられるが、このような場合はトリップさせる等して対応することとなる。
【0036】
以上の説明では、エンタルピ差から理論速度Coを求め、動翼の回転速度nを効率のよい点に導くこととしたが、簡易に算出する手段として、膨張機20前後の作動媒体Mの温度差から導いてもよい。作動媒体Mの種類によっては、動翼の回転速度nの高効率点を温度差から導いても実用上差し支えない。
図5は、作動媒体MをR245faとした場合の、作動媒体Mの過熱度Tsと理論速度Coとの関係を示したグラフであり、(a)は凝縮温度Tを一定として飽和蒸気の温度Tをパラメータとしたグラフ、(b)は飽和蒸気の温度Tを一定として凝縮温度Tをパラメータとしたグラフである。グラフより、いずれの場合も、過熱度Tsが変化しても理論速度Coにほとんど変化がないことが分かる。このことは、R245faは過熱度が増大しても、その状態から断熱変化で凝縮圧力まで膨張したときの膨張前後のエンタルピ差がほとんど変化しないことに起因している。したがって、簡易に算出する場合は、作動媒体Mの蒸気の過熱度Tsを無視しても実用上差し支えなく、作動媒体Mの蒸気の飽和温度Tと凝縮温度Tとから理論速度Coを求めることができる。
【0037】
図6は、作動媒体MをR245faとした場合の、作動媒体Mの蒸気の飽和温度Tと凝縮温度Tとの温度差(T−T)と、理論速度Coとの関係を示したグラフである。
また図7は、作動媒体MをR245faとした場合の、作動媒体Mの蒸気の飽和温度Tと凝縮温度Tとの温度差(T−T)と、タービン動翼の目標とする回転速度nとの関係を示したグラフである。
上述のように理論速度Coの過熱度の変化による影響が少ない作動媒体Mでは、作動媒体Mの蒸気の飽和温度Tと凝縮温度Tとの温度差(T−T)と、理論速度Co及び動翼の所定の回転速度nとを図6、図7に示すようにあらかじめ関連づけて制御装置60に記憶させておき、蒸気温度検知器91及び凝縮温度検知器85で検知した温度差に基づいて直流電圧Vdを所定の電圧に調節して、動翼の回転速度nを所定の回転速度nに制御してもよい。
【0038】
また、この他にもエンタルピと関連づけられる他の物理量(例えば飽和圧力、凝縮圧力、外気温度、冷却水温度、熱源温度等)で理論速度Coと動翼の所定の回転速度nとをあらかじめ関連づけて制御装置60に記憶させておき、その代用した物理量を検知して動翼の回転速度nを制御してもよい。
【0039】
次に図8を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る発電装置2について説明する。図8は、発電装置2の構成を説明するブロック図である。以下、発電装置1と発電装置2との相違点を主に説明し、共通部分の説明は省略する。
発電装置2は、凝縮器40が空冷で構成されている。したがって、冷却媒体Cは空気となる。また、冷却媒体導入手段41が空冷ファン45で構成されている。その他の構成は発電装置1と同様である。
【0040】
発電装置2は、凝縮器40における凝縮温度が外気温度により大きな影響を受けるので、制御装置60は、外気温度検知器93で検知した外気温に基づいて凝縮温度を算出し、あらかじめ関連づけられて記憶されている図6又は図7に示す条件に外気温度から算出した値をあてはめて、直流電圧Vdを所定の電圧に調節して、動翼の回転速度nを所定の回転速度nに制御してもよい。
【0041】
以上の説明では、発電機30の発電電力が交流であるとしたが、直流であってもよい。この場合は、整流器61を省略し、発電機30の発電電力をインバータ62で変換して系統電力と連系することができる。
【0042】
以上の説明では、比(U/Co)が約0.7となるように運転するとして説明したが、この数値はタービンの種類や段数によって異なるので、用いるタービンの効率が高くなり、発電装置1の発電効率が高くなるように適宜設定するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る発電装置の構成を示すブロック図である。
【図2】作動媒体Mの状態の変化を説明するP−h線図である。
【図3】本実施の形態の膨張機における周速度の理論速度に対する比と効率との関係を示すグラフである。
【図4】直流電圧をパラメータとした発電出力とロータ回転速度との関係を示す図である。
【図5】作動媒体をR245faとした場合の過熱度と理論速度との関係を示したグラフである。(a)は凝縮温度を一定として飽和温度をパラメータとしたグラフ、(b)は飽和温度を一定として凝縮温度をパラメータとしたグラフである。
【図6】作動媒体の蒸気の温度差と、理論速度との関係を示したグラフである。
【図7】作動媒体の蒸気の温度差と、動翼の回転速度との関係を示したグラフである。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る発電装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0044】
1 発電装置
10 蒸気発生器
20 膨張機
30 発電機
40 凝縮器
41 冷却媒体導入手段
56 バイパス流路
60 制御装置
61 整流器
62 インバータ
81 電流検知器
82 電力検知器
83 コイル温度検知器
84 速度検知器
85 凝縮温度検知器
86 冷却媒体温度検知器
88 直流電圧検知器
91 蒸気温度検知器
92 蒸気圧力検知器
C 冷却媒体
H 加熱媒体
M 作動媒体
Ea、Pg 交流電力
Ed 直流電力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱媒体との熱交換により作動媒体を蒸発させる蒸気発生器と;
前記蒸気発生器で蒸発した作動媒体を膨張させ、動翼を介して機械的動力を得る膨張機と;
冷却媒体との熱交換により前記膨張機で膨張した作動媒体を凝縮させる凝縮器と;
前記膨張機で得られた機械的動力により駆動されて発電する発電機と;
前記動翼の周速度の、前記作動媒体の前記膨張機における熱落差から求まる理論速度に対する比が所定の値になるように前記動翼の回転速度を制御する制御装置とを備える;
発電装置。
【請求項2】
前記発電した電力が交流電力であって、該交流電力を直流電力に変換する整流器と;
前記直流電力を交流電力に変換するインバータと;
前記膨張機に導入される前記蒸発した作動媒体のエンタルピと前記凝縮器で凝縮した作動媒体のエンタルピとのエンタルピ差を検知するエンタルピ差検知手段と;
前記動翼の回転速度を検知する速度検知手段と;
前記直流電力の電圧を検知する直流電圧検知器とを備え;
前記制御装置が、前記エンタルピ差検知手段で検知したエンタルピ差より前記理論速度を算出し、前記直流電圧検知器で検知する電圧を所定の電圧に調節することにより、前記速度検知手段で検知する前記動翼の回転速度を制御するように構成された;
請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
加熱媒体との熱交換により作動媒体を蒸発させる蒸気発生器と;
前記蒸気発生器で蒸発した作動媒体を膨張させ、動翼を介して機械的動力を得る膨張機と;
冷却媒体との熱交換により前記膨張機で膨張した作動媒体を凝縮させる凝縮器と;
前記膨張機で得られた機械的動力により駆動され、交流電力を発電する発電機と;
前記発電した交流電力を直流電力に変換する整流器と;
前記直流電力を交流電力に変換するインバータと;
前記膨張機に導入される前記蒸発した作動媒体の飽和温度と前記凝縮器で凝縮した作動媒体の凝縮温度との温度差を検知する温度差検知手段と;
前記動翼の回転速度を検知する速度検知手段と;
前記直流電力の電圧を検知する直流電圧検知器と;
前記温度差検知手段で検知した温度差から、あらかじめ関連づけられた前記温度差に対応する前記動翼の所定の回転速度を決定し、前記直流電圧検知器で検知する電圧を所定の電圧に調節することにより、前記速度検知手段で検知する前記動翼の回転速度が前記所定の回転速度となるように制御する制御装置とを備える;
発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−6684(P2007−6684A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−187434(P2005−187434)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】