説明

発音装置、及びこれを用いた車両存在報知装置

【課題】 音圧特性を良好にすることで好適に報知音を発生させることができる発音装置、及びこれを用いた車両存在報知装置を提供する。
【解決手段】 本実施形態の発音装置10は、振動が与えられることによって報知音を発生する振動板11、及び、一面が開放した箱状の筐体12を有し、振動板11が筐体12の開放した一面を覆うように設けられることで内部に空間Kを形成する本体部13と、空間Kに収納され、振動板11に振動を与えるアクチュエータ20と、を備えている。本体部13には、空間Kと、外部とを連通することでバスレフ効果を生じさせる開口15が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車、又はハイブリッド自動車等の車両の接近を歩行者等に報知するために用いられる発音装置、及びこれを用いた車両存在報知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車又はハイブリッド自動車等の静粛車両の接近報知音を出力するためのものではないが、磁歪素子を有する磁歪アクチュエータを用いた車両用発音体システムが、例えば下記特許文献1に開示されている。当該システムにおいては、車両の外殻金属板(乗降用ドア、ボンネットドア、又はトランクドア等)に磁歪アクチュエータが取り付けられている。そして、磁歪アクチュエータの駆動によって外殻金属板を振動させることにより、車両の後進や右左折等を報知するための所定の報知音が外殻金属板から出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4418415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された車両用発音体システムでは、車両の外殻金属板を振動体としているため、車種ごとに音質や、音程、音量等が変動し、適切な音質等とするために車種ごとに個別の調整(カスタマイズ)が必要となる。
そこで、報知音を出力するための振動板と、振動板を振動させるためのアクチュエータとを備えた発音装置を、車両に配置することが考えられる。発音装置が専用の振動板を備えていれば、異なる車種ごとに音質調整する必要はなく、自装置の振動板に合わせて適切な音質、音程、音量に設定することができる。
【0005】
ここで、前記発音装置は、一面に設けられた開口部に前記振動板が固定されるとともに内部にアクチュエータを収納する箱状の筐体を備えている場合がある。
このような発音装置を車両に搭載する場合、車両前方のフロントグリルや、バンパの内側空間等といった比較的狭小な空間に配置される。このため、発音装置は、前記狭小な空間に配置できる程度の大きさに制限される。
【0006】
一方、この発音装置が発生する報知音の音圧は、一般に振動板の面積に依存するため、音圧を高めようとすると、発音装置そのものを大きくする必要がある。
しかし、上記のように、車両に配置するために発音装置全体としての大きさが制限されるため、発音装置として必要な音圧が得られない場合があった。
【0007】
特に、振動板には、通常、金属板が用いられるが、金属板では、ヤング率、密度といった材料特性に起因する最低共振周波数が比較的高く、低い周波数帯域において高い音圧が得られないという特性を有することから、好適に報知音を発生させることができないおそれがあった。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、音圧特性を良好にすることで好適に報知音を発生させることができる発音装置、及びこれを用いた車両存在報知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、車両に搭載されて当該車両の存在を報知するための報知音を発生する発音装置であって、振動が与えられることによって前記報知音を発生する振動板、及び、一面が開放した箱状の筐体を有し、前記振動板が前記筐体の開放した一面を覆うように設けられることで内部に空間を形成する本体部と、前記空間に収納され、前記振動板に振動を与えるアクチュエータと、を備え、前記本体部には、前記空間と、外部とを連通することでバスレフ効果を生じさせる開口が形成されていることを特徴としている。
【0010】
上記のように構成された発音装置によれば、本体部には、前記空間と、外部とを連通することでバスレフ効果を生じさせる開口が形成されているので、振動板の振動による発音の他、バスレフ効果による開口からの発音によって、比較的低い周波数帯域における音圧を高めることができる。この結果、発音装置としての音圧特性を良好にすることができ、好適に報知音を発生することができる。
【0011】
(2)(3)上記発音装置において、前記開口は、前記振動板の縁部と、前記筐体の前記開放した一面の縁部とによって形成されていることが好ましく、さらにこの場合、前記振動板を前記筐体の前記開放した一面に対して所定間隔をおいて配置することで、前記振動板の縁部全周に亘って、前記開口を形成することが好ましい。この場合、振動板と筐体との間の配置によって開口を形成することができるので、例えば、筐体の一部に機械加工等を加えることによって開口を形成する場合と比較して、容易に形成することができる。
【0012】
(4)また、前記筐体の前記開放した一面において前記開口を形成している縁部には、前記振動板に対向しほぼ平行に延びるフランジ部が形成されていることが好ましい。この場合、開口に存在する空気の量(質量)を好適に調整でき、より効果的にバスレフ効果を生じさせることができる。
【0013】
(5)また、本発明は、車両に搭載されて当該車両の存在を報知するための報知音を発生する車両存在報知装置であって、前記報知音を発生させるための信号を出力する信号処理部と、前記信号処理部から出力された信号に基づいて報知音を発生する発音部と、前記車両の走行状態に基づいて前記信号処理部を制御する制御部と、を備え、前記発音部は、振動が与えられることによって前記報知音を発生する振動板、及び、一面が開放した箱状の筐体を有し、前記振動板が前記筐体の開放した一面を覆うように設けられることで内部に空間を形成する本体部と、前記空間に収納され、前記振動板に振動を与えるアクチュエータと、を備え、前記本体部には、前記空間と、外部とを連通することでバスレフ効果を生じさせる開口が形成されていることを特徴としている。
【0014】
上記のように構成された車両存在報知装置によれば、発音部の音圧特性を良好にすることができ、好適に報知音を発生することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上の通り、本発明の発音装置、及びこれを用いた車両存在報知装置によれば、音圧特性を良好にすることで好適に報知音を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る車両存在報知装置が搭載された車両を示した模式図である。
【図2】本実施の形態に係る車両存在報知装置の全体構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】発音装置を示す斜視図である。
【図4】図3中、IV−IV線矢視断面図である。
【図5】アクチュエータの内部構造を模式的に示す断面図である。
【図6】変形例に係る発音装置の構造を示す断面図である。
【図7】本発明の第二の実施形態に係る発音装置を示す斜視図である。
【図8】検証試験の結果から得られた、各実施例品及び比較例品における周波数に対する音圧特性を示すグラフであり、(a)は、周波数帯域が0〜5kHzでの音圧特性を示したグラフ、(b)は、(a)中、周波数帯域が0〜1.5kHzの範囲を拡大して示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
〔第一の実施形態〕
〔装置の全体構成〕
図1は、本発明の第一の実施形態に係る車両存在報知装置が搭載された車両を示した模式図である。図中、車両Cは、電気自動車又はハイブリッド自動車等の低速走行時に無音又は微量音となる自動車である。
車両存在報知装置1は、例えば、フロントグリルや、バンパの内側空間に取り付けられている発音装置10と、この発音装置10に接続された制御部2とを備えている。
発音装置10は、制御部2の制御に基づいて、車両Cが一定速度(例えば、時速20km)以下の低速走行の時に所定の報知音を発生する。
発音装置10が発生する報知音としては、例えば、擬似的なエンジン音、擬似的なタイヤノイズ音、又は所定の電子音等、車両Cの存在を歩行者等の報知対象に報知し得る任意の警告音である。
【0018】
なお、発音装置10は、車両Cの前方に加えて後方に取り付けられていてもよい。この場合、車両Cの前進時には前方の発音装置から報知音が出力され、車両Cの後進時には後方の発音装置から報知音が出力される。
さらに、発音装置10は、車両Cの四隅(右前方、左前方、右後方、左後方)それぞれに取り付けられていてもよい。この場合、車両Cの進行方向に応じて、対応する発音装置10から報知音が出力される。例えば、車両Cが直進する場合には、右前方及び左前方の発音装置10から報知音が出力され、車両Cが右後方に進行する場合には、右後方の発音装置10から報知音が出力される。
【0019】
図2は、本実施形態に係る車両存在報知装置1の全体構成を概略的に示すブロック図である。上述のように、車両存在報知装置1は、制御部2と、発音装置10とを備えている。制御部2は、ECU(Electronic Control Unit)等からなる制御装置4(制御部)と、音源5a及びアンプ5bを有する信号処理装置5(信号処理部)とを備えている。
【0020】
制御装置4は、車両Cの走行状態に基づいて報知音に関する制御を行う。制御装置4は、車両Cに搭載された当該車両Cの走行速度を検出する車速センサ3と接続されており、車速センサ3の出力より走行速度を認識することができる。制御装置4は、車速センサ3の出力から認識される車両Cの走行速度に基づいて、報知音を発生させるか否かを決定し、さらに発生させる場合には、走行速度に応じて発生させるべき報知音を決定する。報知音を決定すると、制御装置4は、決定した報知音を発音装置10に発生させるための信号を信号処理装置5に生成させる。
【0021】
信号処理装置5は、音源5aによって、制御装置4が特定した報知音を発生させるための信号を生成する。また、信号処理装置5は、生成した信号をアンプ5bによって増幅し、発音装置10に出力する。
発音装置10は、増幅された信号が与えられると、この信号に基づいて報知音を発生する。
【0022】
〔発音装置の構成〕
図3は、発音装置10を示す斜視図である。図に示すように、発音装置10は、外観形状が箱形の装置であり、振動板11と、箱状の筐体12とを有する本体部13を備えている。
【0023】
振動板11は、筐体12に固定されている板状の部材であり、例えば、アルミニウム合金で形成されている。この振動板11は、後述するアクチュエータ20によって振動が与えられることによって報知音を発生する。振動板11は、四隅に設けられた4本の支柱14を介して筐体12に固定されている。
【0024】
筐体12は、一面が開放した箱体であり、例えば、アルミニウム合金で形成されている。
図4は、図3中、IV−IV線矢視断面図である。図3及び図4を参照して、筐体12は、矩形状の底板12aと、底板12aの周端から立設された四枚の壁板12bとで構成された箱状の部材であり、底板12aに対向する位置の面が開放している。
【0025】
筐体12において、各壁板12bの内、互いに対向する一対の壁板12bそれぞれには、その端部12b1から筐体12の内側に折り曲げられて形成されたフランジ部12cが形成されている。このフランジ部12cは、筐体12において開放している面である開放面12dに沿って筐体12の内側に延びている。本実施形態において、フランジ部12cは、4つの壁板12bの内の対向する2つの壁板12bのみに形成されている。
【0026】
フランジ部12cの両端部には、上記支柱14が固定されている。振動板11は、支柱14を介して筐体12に固定することで、開放面12dを覆うように設けられている。これによって、本体部13は、内部に空間Kを形成している。

また、振動板11は、支柱14を介して筐体12の開放面12dに対して所定の間隔tをおいて配置されており、これによって、本体部13には、上記空間Kと外部とを連通する開口15が形成されている。
開口15は、振動板11の縁部11aと、開放面12dの縁部を構成する壁板12bの端部12b1とによって、当該振動板11の縁部11aの全周に亘って形成されている。
【0027】
また、振動板11には、アクチュエータ20が固定されている。アクチュエータ20は、固定部材21によって振動板11の内側面に固定されており、筐体12の内側である空間Kに収納されている。また、アクチュエータ20は、後述する可動子45が、振動板11に当接した状態で固定されている。
【0028】
図5は、アクチュエータ20の内部構造を模式的に示す断面図である。本実施形態では、アクチュエータ20として超磁歪アクチュエータを採用している。
アクチュエータ20は、図5に示すように、一端面の中央部に貫通孔が形成された中空円柱状のケース40と、印加される磁界の強さに応じて軸方向に伸縮する超磁歪素子41と、超磁歪素子41の周囲に配置されて磁界を印加する駆動コイル42と、超磁歪素子41の上下端に配置されてバイアス磁界を印加する磁石43,44と、磁石43を介して超磁歪素子41に固定され、ケース40の貫通穴から頂部が突出し振動板11に当接している可動子45と、可動子45に予加重を付与するコイルばね46とを備えて構成されている。
【0029】
アクチュエータ20は、図示しないハーネスによって制御部2に接続されており、信号処理装置5が出力する信号が与えられると、駆動コイル42によって超磁歪素子41に磁界を印加し、当該超磁歪素子41を伸縮させる。この超磁歪素子41の伸縮によって可動子45を軸方向に振動させ、振動板11に振動を与える。
与えられた振動によって、振動板11は振動し、所定の報知音を発生する。
なお、アクチュエータ20は、信号処理装置5から与えられる信号に応じて振動の態様が調整可能である。これにより、前記信号によって振動の態様が調整され、振動板11が発生する報知音の調整がなされる。
【0030】
また、本実施形態の発音装置10は、振動板11が振動することで所定の報知音を発生させる際に、開口15によってバスレフ効果を生じさせることができる。
すなわち、振動板11が振動することで、報知音を発生させると、本体部13の空間K内の空気が振動により圧縮と膨張を繰り返す。このときに、開口15に存在する空気が共振することで、比較的低い周波数帯域の音を補完的に開口15から発生させることができるというバスレフ効果を生じさせる。
【0031】
なお、このバスレフ効果により得られる効果は、開口15に存在する空気の質量に応じて変化する。つまり、本実施形態において、開口15に存在する空気とは、開口15を形成している壁板12bの端部12b1と、振動板11の縁部11aとの間に存在する空気に相当し、この空気の質量に応じて、バスレフ効果における共振周波数が変化する。
この点、本実施形態では、開口15を形成している壁板12bの端部12b1に、フランジ部12cが形成されているので、このフランジ部12cの長さ寸法fを適宜調整することで、開口15に存在する空気の量(質量)を好適に調整し、共振周波数を調整できる。この結果、より効果的にバスレフ効果を生じさせることができる。
なお、振動板11と筐体12との所定の間隔tを調整することによっても、開口15に存在する空気の量を調整することができる。
【0032】
〔効果について〕
本実施形態の発音装置10は、振動が与えられることによって報知音を発生する振動板11、及び、一面が開放した箱状の筐体12を有し、振動板11が筐体12の開放した一面を覆うように設けられることで内部に空間Kを形成する本体部13と、空間Kに収納され、振動板11に振動を与えるアクチュエータ20と、を備えており、本体部13には、空間Kと、外部とを連通することでバスレフ効果を生じさせる開口15が形成されている。
上記のように構成された発音装置10によれば、本体部13には、空間Kと、外部とを連通することでバスレフ効果を生じさせる開口15が形成されているので、振動板11の振動による発音の他、バスレフ効果による開口15からの発音によって、比較的低い周波数帯域における音圧を高めることができる。この結果、発音装置10としての音圧特性を良好にすることができ、好適に報知音を発生することができる。
【0033】
また、本実施形態の発音装置10では、開口15を、振動板11の縁部11aと、筐体12の開放面12dの縁部を構成する壁板12bの端部12b1とによって形成し、さらに、振動板11を筐体12の開放面12dに対して所定の間隔tをおいて配置することで、振動板11の縁部11a全周に亘って、開口15を形成したので、当該開口15を容易に形成することができる。
すなわち、本実施形態の発音装置10によれば、振動板11と筐体12との間の配置によって開口15を形成することができるので、例えば、筐体12の一部に機械加工等を加えることによって開口を形成する場合と比較して、容易に形成することができる。
【0034】
また、上記第一の実施形態では、フランジ部12cを筐体12の内側に折り曲げることで形成した場合を示したが、例えば、図6のように、フランジ部12cを、筐体12の外側に向けて突出して形成してもよい。この場合、振動板11の縁部11aが、フランジ部12cの先端とほぼ一致するように設定される。
図6の構成においても、発音装置10としての音圧特性を良好にすることができ、好適に報知音を発生することができる。
【0035】
また、上記第一の実施形態では、フランジ部12cを、4つの壁板12bの内の対向する2つの壁板12bのみに形成したが、当該フランジ部12cは、4つの壁板12bの内、得られる音圧特性に応じて、全てに設けてもよいし、必要な箇所にのみ設けてもよい。
【0036】
〔第二の実施形態について〕
図7は本発明の第二の実施形態に係る発音装置10を示す斜視図である。
本実施形態と、第一の実施形態との相違点は、開口15が、各壁板12bの内、1つの壁板12bにのみ形成されている点、及び、振動板11が、各壁板12bに固定されている点である。
【0037】
図7に示すように、本実施形態の開口15は、4つの壁板12bの内、1つの壁板12bの上端部の一部を内側に折り曲げて形成されたフランジ部12cと、振動板11の縁部11aとによって形成されている。
【0038】
本実施形態では、第一の実施形態のように、振動板11の全周に亘って開口15を設けず、1つの壁板12bにのみ開口15を設けており、第一の実施形態と比較して開口15が小さく設定されているが、この場合でもバスレフ効果を得ることはできる。
また、本実施形態では、開口15が設けられていない他の辺の壁板12bは、その上端部に振動板11が固定されているので、上記第一の実施形態のように、支柱14を用いずとも、振動板11を固定することができ、構造を簡略なものにできる。
【0039】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されることはない。例えば、上記各実施形態では、開口15が、振動板11の縁部11aと、壁板12bの端部12b1(筐体12の開放面12dの縁部)とによって形成された場合を示したが、当該開口15は、バスレフ効果が得られるサイズ、形状に形成され、空間Kと、外部とを連通していれば、筐体12のどの部分に設けてもよい。
【0040】
また、上記発音装置は、車両のフロントグリルや、バンパの内側空間といった、比較的狭小な空間に取り付けられるため、その外形寸法が、例えば、一辺150mmの正方形状で、その厚み寸法が50mm以下の大きさである必要がある。さらに、一辺70mm以下の正方形状で、厚み寸法が50mm以下であれば、車両に通常取り付けられているクラクション等と同等の大きさ以下であるため、上記車両における狭小空間であっても取り付けることができる。
【0041】
また、アクチュエータ20の構成は図5に示した例に限定されるものではなく、任意の構成のアクチュエータを使用することができる。
【0042】
〔効果の確認について〕
次に本願の発明者が行った、本発明の発音装置による音圧特性に対する効果を検証した試験結果について説明する。
試験方法としては、上記第一の実施形態における図3及び図4で示した発音装置を実施例品として用い、当該発音装置が発生する発生音における、周波数に対する音圧レベルの変化を測定した。
【0043】
試験に用いた発音装置は、アルミニウム合金板を用いて形成して作成した。振動板は、一辺150mm、板厚2mmの正方形状のアルミニウム合金板を用いた。筐体は、板厚0.8mmのアルミニウム合金板を150mm×150mm×23mmの箱体に形成したものを用いた。筐体におけるフランジ部の寸法fは、10mmに設定した。
【0044】
振動板と筐体との間の所定の間隔tは、実施例品については、2mm(実施例品1)、4mm(実施例品2)、6mm(実施例品3)、12mm(実施例品4)の4通りに設定した。
また、比較例品としては、間隔tが0mm、つまり、振動板と筐体との間に間隔を設けないことで、開口を有しない発音装置を用いた。
【0045】
図8は、上記検証試験の結果から得られた、各実施例品及び比較例品における周波数に対する音圧特性を示すグラフであり、(a)は、周波数帯域が0〜5kHzでの音圧特性を示したグラフ、(b)は、(a)中、周波数帯域が0〜1.5kHzの範囲を拡大して示したグラフである。
【0046】
図8(a)を見ると、約1.5kHzよりも低い周波数の範囲において、比較例品と、各実施例品とを比較すると、1kHzの辺りで、各実施例品の音圧が比較例品の音圧よりも大きくなっていることが判る。
【0047】
さらに、図8(b)を見ると、比較的低い周波数帯域である0〜1.5kHzの範囲において、比較例品では、800Hz辺りに鋭く立ち上がるピーク部分Pが存在するが、各実施例品では、このピーク部分Pの前後部分の音圧が上昇しており、特定の狭帯域で鋭く立ち上がるピーク部分Pがなだらかになっていることが判る。
実施例品1〜3では、比較例品と比べて、600〜1000Hz程度の範囲で音圧の上昇が見られる。また、実施例品4では、比較例品と比べて、700〜1200Hzの範囲で音圧の上昇が見られ、実施例品の中でも、最も広い帯域幅で音圧の上昇が見られる。
【0048】
各実施例品に係る発音装置と、比較例品に係る発音装置との相違点は、本体部に形成された開口の有無のみであるので、比較的低い周波数帯域における音圧の上昇は、各実施例品に係る発音装置が有する開口によって得られるバスレフ効果によるものであるといえる。
【0049】
上記のように、各実施例品である本発明に係る発音装置では、比較的低い周波数帯域である600〜1200Hzの範囲において、バスレフ効果によって音圧が高められており、この結果、上記ピーク部分Pが比較的なだらかになるように緩和され、発音装置としての音圧特性が改善されている。
【0050】
特に、上記実施例品により音圧が高められる周波数帯域である600〜1200Hzの範囲は、車両の報知音として適していると考えられる音の周波数成分の範囲の一部を含んでいる。従って、上記実施例品は、車両の報知音を発生させるための発音装置として、好適に用いることができる。
【0051】
以上のように、上記試験の結果、本発明に係る発音装置では、振動板の振動による発音の他、バスレフ効果による開口からの発音によって、比較的低い周波数帯域における音圧を高めることができることができ、発音装置としての音圧特性を良好にできることを確認することができた。
【0052】
本発明に関して、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
1 車両存在報知装置
2 制御部
4 制御装置
5 信号処理装置
10 発音装置
11 振動板
11a 縁部
12 筐体
12b1 端部(縁部)
12c フランジ部
12d 開放面
13 本体部
15 開口
20 アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて当該車両の存在を報知するための報知音を発生する発音装置であって、
振動が与えられることによって前記報知音を発生する振動板、及び、一面が開放した箱状の筐体を有し、前記振動板が前記筐体の開放した一面を覆うように設けられることで内部に空間を形成する本体部と、
前記空間に収納され、前記振動板に振動を与えるアクチュエータと、を備え、
前記本体部には、前記空間と、外部とを連通することでバスレフ効果を生じさせる開口が形成されていることを特徴とする発音装置。
【請求項2】
前記開口は、前記振動板の縁部と、前記筐体の前記開放した一面の縁部とによって形成されている請求項1に記載の発音装置。
【請求項3】
前記開口は、前記振動板を前記筐体の前記開放した一面に対して所定間隔をおいて配置することで、前記振動板の縁部全周に亘って形成されている請求項2に記載の発音装置。
【請求項4】
前記筐体の前記開放した一面において前記開口を形成している縁部には、前記振動板に対向しほぼ平行に延びるフランジ部が形成されている請求項2又は3に記載の発音装置。
【請求項5】
車両に搭載されて当該車両の存在を報知するための報知音を発生する車両存在報知装置であって、
前記報知音を発生させるための信号を出力する信号処理部と、
前記信号処理部から出力された信号に基づいて報知音を発生する発音部と、
前記車両の走行状態に基づいて前記信号処理部を制御する制御部と、を備え、
前記発音部は、
振動が与えられることによって前記報知音を発生する振動板、及び、一面が開放した箱状の筐体を有し、前記振動板が前記筐体の開放した一面を覆うように設けられることで内部に空間を形成する本体部と、
前記空間に収納され、前記振動板に振動を与えるアクチュエータと、を備え、
前記本体部には、前記空間と、外部とを連通することでバスレフ効果を生じさせる開口が形成されていることを特徴とする車両存在報知装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−5340(P2013−5340A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136606(P2011−136606)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【Fターム(参考)】