説明

白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法

【課題】耐熱性のない基材上にPt/WO系水素感応膜を形成することが可能なPt/WO系水素感応膜の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のPt/WO系水素感応膜の製造方法は、白金触媒と、該白金触媒を担持する酸化タングステンからなる担体とを備えた白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法であって、タングステン酸の前駆体と白金化合物とを混合し、タングステン酸のゾル−ゲル溶液を調製する工程Aと、基材の表面に前記ゾル−ゲル溶液を塗布する工程Bと、前記ゾル−ゲル溶液を塗布した基材を乾燥して、前記基材の表面に塗膜を形成する工程Cと、該塗膜が形成された基材を、ホルムアルデヒド等の還元性ガスを含む雰囲気下で前記塗膜に紫外線を照射して、前記基材の表面に白金/酸化タングステン系水素感応膜を形成する工程Dと、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素漏洩の検知とその位置を特定することのできる分布型光ファイバ水素センサおよび多点観測用の分布型光ファイバ水素センサなどに適用される白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法に関し、特に、燃料電池などの水素供給ライン、水素貯蔵タンクや液体水素燃料を使用するロケットおよび宇宙輸送機などの燃料供給系統、あるいはこれらを評価するための試験設備などにおける水素漏洩を検知するとともに、漏洩箇所を特定することに適した分布型光ファイバ水素センサおよび多点観測用の分布型光ファイバ水素センサに適用される白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、水素センサとして実用化されているものの多くは、酸化錫をベースとした金属酸化物半導体方式のものか、あるいは、固体電解質を利用した電気化学的手法を用いたものである。これらの水素センサは、高感度であるものの、素子を数百℃に加熱する必要があるため、点計測しか行えない上に、引火性ガスである水素ガスの着火源となる危険性があるなどの問題がある。
【0003】
また、低温下で作動する酸化タングステン(WO)を主成分とする新しいセンサが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
本発明者等は、この常温で水素と速やかに反応する水素感応膜の光学特性変化を捉える光学方式の検出センサを用いた水素検出技術を研究し、先に「ガスセンサ用の膜の製造方法」を特許出願(例えば、特許文献2参照)している。この発明は、0℃以下の低温で充分な感度を有し、安全かつ高い信頼性と素子寿命を備えたガスセンサ用の膜の製造方法を提供することを目的とている。このガスセンサ用の膜の製造方法は、触媒金属および固体化合物半導体の混合層からなる膜を有する素子と、光学手段とを備えたガスセンサ用の膜の製造方法であって、固体化合物半導体のゾルゲル溶液中に、塩化白金酸または塩化パラジウムなどの触媒金属化合物を分子レベルで均一に分散させたゾルゲル溶液を、基板に塗布し、焼成して膜を形成した後、乾燥空気中で30〜100℃で所定時間加熱処理するという製造方法である。なお、触媒金属は、水素または含水素化合物ガスを解離吸着する機能を有する。また、固体化合物半導体は、触媒金属中において解離吸着により生成した水素原子により還元されるとともに、この水素原子が存在しなくなった場合に還元される前の状態に戻る機能を有する。また、光学手段は、還元による固体化合物半導体の光吸収(エバネッセント波)の変化を検出する機能を有する。この製造方法によって得られたガスセンサ用の膜は、0℃以下の低温においても、実用上充分な感度を有し、かつ検知素子に加熱通電を行わず安全で、かつ高い信頼性と素子寿命を備えている。
【0004】
図15は、特許文献3に開示したエバネッセント吸収型ガスセンサの原理図を示す模式図である。
通常、光はファイバ中においてコア内を全反射しながら伝搬するが、このときコアとクラッド界面にわずかにしみ出す光成分をエバネッセント波と呼んでいる。
白金を触媒とした酸化タングステン(Pt/WO)膜を、光ファイバのコアの外周面にクラッドとして設けた分布型光ファイバ水素センサは、図15(a)に示すように、水素が存在しない雰囲気下では、エバネッセント吸収係数は0に近いので、エバネッセント波の吸収がなく、通常の光ファイバと同様に、光がコア内を全反射しながら伝搬する。したがって進行する光は、効率よく伝送され、後方の受光素子に充分な光量が到達する。
一方、水素が存在する環境では、図15(b)に示すように、Pt/WO膜は、水素と反応してタングステンブロンズ(HWO)を形成するため、エバネッセント吸収係数が増加して伝搬光量が大きく減衰する。この反応は、触媒金属である白金(Pt)で生じた水素原子が、固体化合物半導体である酸化タングステン(WO)を還元し、光吸収が増大し、ガス濃度に対応して、光ファイバ内を伝送される光量が減少するというものである。この光ファイバ内を伝送される光量の減少を受光素子で検出することにより、ガス検出が行なわれる。
【0005】
そして、特許文献3では、光ファイバ上に、複数箇所、所定の間隔をおいて、上記のPt/WO膜(水素感応膜)を形成してなる多点式水素ガスセンサを被測定領域に設置し、OTDR(Optical Time Domain Reflectometry)技術を用い、反射光の時間差により測定点A、B、Cの位置を特定し、膜の光吸収による受光量の変化を測定することにより、水素漏洩点の位置検出が可能となることを示唆している。しかし、現実的にはセンサの接続損失やPt/WO膜による導波構造の乱れによって光の伝搬損失が大きくなるため、センサ素子の数や長さが限定されてしまい、実用化には至らなかった。
【0006】
また、光ファイバ上に複数箇所のセンサ部を設けてファイバ端から光を入射し、各センサ部からの反射信号を検出して、反射信号の値と反射位置を決定する技術としては、光ファイバブラッググレーティング(FBG)センサが知られている。このFBGは、紫外線を用いて光ファイバのコア中に回折格子を形成したものであり、通信分野では光フィルタとしての機能を持たせた光ファイバ型デバイスとして用いられている。また、FBGは、回折格子を光ファイバ中に非破壊的に直接形成できるため、低損失・小型・高信頼性・伝送用光ファイバとの整合性など、多くの利点を有している。
【0007】
また、FBGでは、グレーティングの周期をΛ、光ファイバの有効屈折率をneffとすると、下記の式(1)を満たす波長(ブラッグ波長)λで強い反射が生じ、その他の波長の光は透過する(図16参照)。
λ=2neffΛ (1)
式(1)のブラッグ波長λは、屈折率neffあるいはグレーティングの周期Λの変化によってシフトする。つまり、グレーティングが設けられた部分に歪みあるいは温度変化が与えられると、neffとΛが変化して、ブラッグ波長がシフトする。
これがFBGを歪み・温度センサとして動作させる原理である。すなわち、図16の上段に示したFBGを用いた歪み・温度計測システムの基本構成による作動は、図16下段左に示すような広帯域の光が入射されたとき、このFBG部において図16下段中央に示すような反射光、図16下段右に示すような透過光に分離され、これらの両方を検出してFBG部における変化を検出することができる。このように、FBGを歪み・温度センサとして用いる場合、光源としては、LED、SLD、ASE(順に光のパワーおよびコストが高い)のような広帯域光源が用いられる。
【0008】
このFBGセンサは、発熱・変形について、その値とその位置を特定することができるものとして、船や建造物あるいは大型装置のモニタリングに使用されている。構造モニタリングにFBGセンサを使用する場合、反射光を観測するシングル・エンド方式をとることが多い。
【0009】
また、本発明者等は、防爆構造であり、センサの検知部を長尺の線状あるいは面状とすることで水素漏洩を検知するばかりでなく、水素漏洩箇所に関する位置情報も得ることのできる水素センサとして、長尺の光ファイバに所定の間隔をおいてFBG部が配置されて、このFBG部のクラッドの外周面に膜厚1μm以上の水素感応膜が設けられた分布型光ファイバ水素センサを開示している(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
また、白金を触媒とした酸化タングステン(Pt/WO)膜からなる水素感応膜の製造方法に関しては、従来から数多くの研究がなされている。水素感応膜の製造方法は、乾式法と湿式法に大別されるが、湿式法は簡便かつ安価であるため、多くの技術が開発され、開示されている(例えば、特許文献2、4〜7参照)。
【特許文献1】特開2003−240746号公報
【特許文献2】特開2003−329592号公報
【特許文献3】特開2005−351651号公報
【特許文献4】特開2003−166938号公報
【特許文献5】特開2005−345338号公報
【特許文献6】特開2005−331364号公報
【特許文献7】特開2007−170946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2、4〜7に開示されている水素感応膜の製造方法では、貴金属錯体溶液とタングステン酸溶液の混合物からなる前駆体溶液を調製し、この前駆体溶液を光ファイバなどの基材に塗布した後、500℃以上の高温で焼成して、水素感応膜を形成していた。そのため、この製造方法では、耐熱性のない基材に対して、水素感応膜を形成することができないという問題があった。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、耐熱性のない基材上に白金/酸化タングステン系水素感応膜を形成することが可能な白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法は、白金触媒と、該白金触媒を担持する酸化タングステンからなる担体とを備えた白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法であって、タングステン酸の前駆体と白金化合物とを混合し、タングステン酸のゾル−ゲル溶液を調製する工程Aと、基材の表面に前記ゾル−ゲル溶液を塗布する工程Bと、前記ゾル−ゲル溶液を塗布した基材を乾燥して、前記基材の表面に塗膜を形成する工程Cと、該塗膜が形成された基材を、ホルムアルデヒド等の還元性ガスを含む雰囲気下で前記塗膜に紫外線を照射して、前記基材の表面に白金/酸化タングステン系水素感応膜を形成する工程Dと、を有することを特徴とする。
【0014】
前記工程Aにおいて、前記タングステン酸の前駆体はタングステン酸ナトリウム二水和物を溶媒に溶解したタングステン酸ナトリウム溶液を、イオン交換樹脂と接触させたものであり、前記白金化合物はヘキサクロロ白金酸六水和物であることが好ましい。
【0015】
前記工程Dにおいて、前記塗膜に紫外線を照射する時間を15分以上、8時間以下とすることが好ましい。
【0016】
前記工程Dにおいて、前記塗膜に紫外線を照射する時間を30分以上、60分以下とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法では、まず、白金触媒の前駆体と、この白金触媒を担持する酸化タングステンの前駆体を含むタングステン酸のゾル−ゲル溶液を調製し、この溶液を対象となる基材の表面に塗布し、溶液を塗布した基材を乾燥して、タングステン酸の脱水縮合反応を進行させることで基材の表面に固体状の塗膜を形成させる。この塗膜が形成された基材を、ホルムアルデヒド溶液のヘッドスペースに配置した状態で、塗膜に紫外線を照射すると、白金触媒の前駆体である白金イオンが白金に還元され、基材の表面に白金/酸化タングステン系水素感応膜が形成されるので、従来のように、塗膜を500℃以上の高温で焼成することなく、白金/酸化タングステン系水素感応膜を常温で形成することができる。しがたって、酸化ビスマス系ファイバや熱可塑性樹脂などの耐熱性に劣る基材の表面にも、これらの基材を損傷することなく、白金/酸化タングステン系水素感応膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法、並びに、この白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法によって作製された白金/酸化タングステン系水素感応膜を備えた分布型光ファイバ水素センサおよび多点観測用の分布型光ファイバ水素センサの最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0019】
(白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法)
本発明の白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法は、白金触媒と、該白金触媒を担持する酸化タングステンからなる担体とを備えた白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法であって、タングステン酸の前駆体と白金化合物とを混合し、タングステン酸のゾル−ゲル溶液を調製する工程Aと、基材の表面に前記ゾル−ゲル溶液を塗布する工程Bと、前記ゾル−ゲル溶液を塗布した基材を乾燥して、前記基材の表面に塗膜を形成する工程Cと、該塗膜が形成された基材を、ホルムアルデヒド等の還元性ガスを含む雰囲気下で前記塗膜に紫外線を照射して、前記基材の表面に白金/酸化タングステン系水素感応膜を形成する工程Dと、を有する方法である。
【0020】
工程Aでは、溶媒に、タングステン酸の前駆体を得るために所定量のタングステン酸ナトリウム二水和物(NaWO・HO)を溶解し、所定の濃度のタングステン酸ナトリウム(NaWO)溶液を調製する。
【0021】
溶媒としては、水などが用いられる。
【0022】
また、タングステン酸ナトリウム溶液の濃度は、0.1mol/リットル以上、1.0mol/リットル以下であることが好ましく、より好ましくは0.4mol/リットル以上、0.5mol/リットル以下であり、特に好ましくは0.5mol/リットルである。
【0023】
次いで、タングステン酸ナトリウム溶液を、ポンプを用いて、H型イオン交換樹脂と接触させて、タングステン酸(HWO)溶液を調製する。
【0024】
得られたタングステン酸溶液の濃度は、上記のタングステン酸ナトリウム溶液の濃度と等しくなっている。
【0025】
タングステン酸ナトリウム溶液を、H型イオン交換樹脂と接触させる際、タングステン酸ナトリウム溶液の流量は、0.5ml/min以上、5ml/min以下であることが好ましく、より好ましくは3ml/min以上、5ml/min以下であり、特に好ましくは4ml/minである。
【0026】
次いで、タングステン酸ナトリウム溶液が、イオン交換により、タングステン酸溶液となったところで、所定量のタングステン酸溶液に、白金化合物として所定量のヘキサクロロ白金(VI)酸六水和物(HPtCl・HO)と、所定量の99.5%エタノールを加えて、混合し、タングステン酸のゾル−ゲル溶液を調製する。
ここで、エタノールは、ゾル−ゲル法において縮合反応を遅延させる効果があると考えられ、これを加えることにより形成される膜の膜質、膜厚の均一性を高めることができる。エタノール以外に、メタノール、2−プロパノールなどのアルコール類も用いることができる。
【0027】
タングステン酸溶液とヘキサクロロ白金(VI)酸六水和物とエタノールの混合比(体積比)は、13/3/8〜13/5/8の範囲内であることが好ましく、特に好ましくは13/4/8である。
【0028】
また、ヘキサクロロ白金(VI)酸六水和物の濃度は、0.001mol/リットル以上、0.25mol/リットル以下であることが好ましく、より好ましくは0.08mol/リットル以上、0.10mol/リットル以下であり、特に好ましくは0.09mol/リットルである。
【0029】
工程Bでは、工程Aにて調製したゾル−ゲル溶液を処理対象の基材の表面に塗布する。
【0030】
基材の表面にゾル−ゲル溶液を塗布する方法としては、スピンコート法、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ディップコート法、メニスカスコート法、吸上げ塗工法、フローコート法など、通常のウエットコート法が用いられる。
これらの塗布方法の中でも、ディップコート法を用いる場合、工程Aにて調製したゾル−ゲル溶液に、処理対象の基材を浸漬した後、この溶液から基材をゆっくりと引き上げて、基材の表面にこの溶液を塗布する。
【0031】
基材としては、上記のゾル−ゲル溶液が塗布可能なものであれば特に限定されず、例えば、光ファイバ、各種金属基材、樹脂基材、ガラス基材などが挙げられる。
【0032】
工程Cでは、ゾル−ゲル溶液を塗布した基材を、室温にて、1時間以上乾燥して、基材の表面に、ゾル−ゲル溶液を乾燥してなる塗膜を形成する。
【0033】
工程Dでは、上記の塗膜が形成された基材を、ホルムアルデヒド溶液のヘッドスペース、すなわち、還元性ガスのホルムアルデを含む雰囲気下に配置した後、塗膜に紫外線を照射して、基材の表面に白金/酸化タングステン系水素感応膜を形成する。
【0034】
この工程Dでは、ホルムアルデヒド以外の還元性ガスを用いることもできるが、ホルムアルデヒド溶液のヘッドスペースに塗膜が形成された基材を配置する場合、そのホルムアルデヒド溶液の濃度は、10%以上、36%以下であることが好ましく、特に好ましくは36%である。
【0035】
塗膜に照射する紫外線の波長は、250nm〜400nmであることが好ましく、特に好ましくは254nmである。
また、この紫外線の強度は、100μW/cm以上が好ましく、特に好ましくは600μW/cm以上である。
【0036】
塗膜に紫外線を照射する時間は、15分以上、8時間以下であることが好ましく、より好ましくは30分以上、60分以下である。
紫外線の照射時間が15分以上、8時間以下の範囲内であれば、得られた白金/酸化タングステン系水素感応膜は、水素による還元反応が進行すると、濃青色に着色(発色)し、この発色性を用いた水素センサとして使用することができる。
また、紫外線の照射時間が30分以上、60分以下の範囲内であれば、得られた白金/酸化タングステン系水素感応膜は、水素に対する応答速度が大きく、かつ、水素と反応した後、再び水素センサとして使用できるまでに要する時間が短い(復帰速度が大きい)。
【0037】
このゾル−ゲル溶液を用いた白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法では、基材の表面に形成した塗膜に紫外線を照射することにより、下記の化学反応式(α)で示すタングステン酸(HWO)の脱水縮合反応が進行して、基材の表面に白金/酸化タングステン系水素感応膜が形成される。
(WO2−+2H→HWO→WO・HO (α)
【0038】
このようにして得られる白金/酸化タングステン系水素感応膜(Pt/WO膜)は、白金(Pt)触媒と、この白金触媒を担持する酸化タングステン(WO)からなる担体とからなる薄膜である。
このPt/WO膜12の屈折率は、約1.95である。
【0039】
また、この白金/酸化タングステン系水素感応膜における白金と酸化タングステンのモル比は1/5〜1/100の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは1/10〜1/25であり、特に好ましくは1/13である。
【0040】
また、上記の工程A〜Dを経て得られる白金/酸化タングステン系水素感応膜は、10nm〜1μm程度の薄膜である。したがって、白金/酸化タングステン系水素感応膜の厚みをさらに大きくする必要がある場合には、上記の工程A〜Dを繰り返し行えばよい。
【0041】
本発明の白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法は、白金触媒の前駆体と、この白金触媒を担持する酸化タングステンの前駆体を含むタングステン酸のゾル−ゲル溶液を調製し、この溶液を対象となる基材の表面に塗布し、溶液を塗布した基材を乾燥して、基材の表面に塗膜を形成した後、この塗膜が形成された基材を、還元性ガスを含む雰囲気下で、塗膜に紫外線を照射して、タングステン酸(HWO)の脱水縮合反応を生じさせて、基材の表面に白金/酸化タングステン系水素感応膜を形成するので、従来のように、塗膜を500℃以上の高温で焼成することなく、白金/酸化タングステン系水素感応膜を形成することができる。しがたって、酸化ビスマス系ファイバ(使用温度の上限約300℃)や熱可塑性樹脂などの耐熱性に劣る基材の表面にも、これらの基材を損傷することなく、白金/酸化タングステン系水素感応膜を形成することができる。
【0042】
(分布型光ファイバ水素センサ)
図1は、本発明の白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法によって作製された白金/酸化タングステン系水素感応膜を備えた分布型光ファイバ水素センサの一実施形態を示す概略断面図である。
この実施形態の分布型光ファイバ水素センサ10は、光ファイバ11と、光ファイバ11の外周面11aに設けられた白金/酸化タングステン系水素感応膜(以下、単に「水素感応膜」と言うこともある。)12とから概略構成されている。
この分布型光ファイバ水素センサ10では、光ファイバ11の屈折率をn、水素感応膜12の屈折率をnとした場合、n>nの関係を満たしている。
【0043】
光ファイバ11としては、酸化ビスマス(Bi)と、その他の成分を所定量含むガラスからなり、コアのみからなる酸化ビスマス系ファイバが用いられる。
この酸化ビスマス系ファイバの外径は、125μmであり、屈折率は約2.02である。
【0044】
水素感応膜(Pt/WO膜)12は、本発明の白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法によって作製された薄膜であり、光ファイバ11の外周面11aにおいて厚みが均一となっている。
【0045】
また、Pt/WO膜12の厚みは、10nm以上、1μm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以上、200nm以下である。
Pt/WO膜12の厚みが10nm未満では、分布型光ファイバ水素センサ10を水素に曝露しても、十分な水素応答挙動が得られない。一方、Pt/WO膜12の厚みが1μmを超えると、それよりも厚みが薄い場合と比較して水素応答挙動に差異がなくなる上に、材料コストが高くなり、実用的ではない。
【0046】
この分布型光ファイバ水素センサ10は、エバネッセント波吸収を利用したものであり、光ファイバ11の外周面11aを被覆するPt/WO膜12が、水素と反応する水素感応膜として機能することを利用したセンサである。すなわち、Pt/WO膜12は水素と反応すると、その光学的吸収係数が変化するので、この吸収係数の変化に伴って変化する光ファイバ11中を伝搬する光の量(光量)を測定することによって、水素検知を行うことができる。
【0047】
この分布型光ファイバ水素センサ10を、下記の化学反応式(1)、(2)を用いて説明する。
【0048】
【化1】

【0049】
【化2】

【0050】
上記の反応式(1)に示すように、白金(Pt)に水素分子が接触すると、水素分子が解離吸着して水素原子が生じ、この水素原子が酸化タングステン(WO)を還元して(酸化タングステンの還元反応)、タングステンブロンズ(HWO)を形成する。このとき、Pt/WO膜12におけるエバネッセント吸収係数が増加して、伝搬光量が大きく減衰する。
一方、上記の反応式(2)に示すように、白金が空気中の酸素分子と接触すると、酸素分子が解離吸着して酸素原子が生じ、この酸素原子がタングステンブロンズを酸化して(タングステンブロンズの酸化反応)、酸化タングステンと水を生じる。このとき、Pt/WO膜12におけるエバネッセント吸収係数が減少して、伝搬光量が減衰前とほぼ同じ大きさに戻る。
【0051】
また、Pt/WO膜12は、酸化タングステンが水素と反応していない状態では、薄黄緑色をなしているが、酸化タングステンが水素と反応して、還元反応が進行するに伴って(タングステンブロンズを形成するに伴って)、徐々に濃青色に着色(発色)する。逆に、Pt/WO膜12は、タングステンブロンズが酸素と反応して、酸化反応が進行するに伴って(酸化タングステンを生じるに伴って)、徐々に元の薄黄緑色に着色(発色)する。
【0052】
この分布型光ファイバ水素センサ10は、高屈折率材料の酸化ビスマス系ファイバからなる光ファイバ11の外周面11aに、それよりも屈折率が低いPt/WO膜12を設けたので、光伝搬損失が非常に低くなるので、長尺の水素センサを実現することができる。したがって、従来、Pt/WO膜におけるエバネッセント波吸収を利用した水素センサでは、センサ長がセンチメートルオーダーであったのに対して、センサ長が数メートルから数百メートルオーダーの分布型光ファイバ水素センサを実現することができる。また、Pt/WO膜12におけるエバネッセント波吸収を利用しているので、水素の漏洩箇所を正確に特定することができる。さらに、Pt/WO膜12と水素との反応によって、Pt/WO膜12が光学的吸収係数の変化だけでなく、変色という現象も生じるので、光量の変化を測定する装置に故障などの不具合が生じても、目視により水素検知を行うことができ、より信頼性の高い水素センサとなる。
【0053】
(多点観測用の分布型光ファイバ水素センサ)
図2は、本発明の白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法によって作製された白金/酸化タングステン系水素感応膜を備えた多点観測用の分布型光ファイバ水素センサの一実施形態を示す概略構成図である。
この実施形態の多点観測用の分布型光ファイバ水素センサ20は、長尺の光ファイバ21と、光ファイバ21の外周面21aに設けられ、かつ、光ファイバ21の長手方向に沿って所定の間隔をおいて設けられた10個の水素感応膜からなるセンサ部22(22A、22B、・・・、22J)とから概略構成されている。
この多点観測用の分布型光ファイバ水素センサ20では、光ファイバ21の屈折率をn、センサ部22をなす水素感応膜の屈折率をnとした場合、n>nの関係を満たしている。
【0054】
光ファイバ21としては、上記の光ファイバ11と同様のものが用いられる。
センサ部22をなす水素感応膜としては、上記の水素感応膜12と同様のものが用いられる。
【0055】
この多点観測用の分布型光ファイバ水素センサ20を使用するには、その光ファイバ21の一端に通信用マルチモードファイバ33を介して光源31を接続し、他端に通信用マルチモードファイバ33を介して光量計32を接続する。そして、光源31から光ファイバ21に光を入射し、光量計32によって、各センサ部22(22A、22B、・・・、22J)における光の量(光量)の変化を測定することにより、水素の漏洩検出を行うことができる。
【0056】
次に、本発明の白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法によって作製された白金/酸化タングステン系水素感応膜を備えた分布型光ファイバ水素センサおよび多点観測用の分布型光ファイバ水素センサについて行った実験について説明する。
【0057】
(1)実験方法
酸化ビスマス系ファイバは、外径が125μmのシングルモードファイバである。したがって、単にコアに光を入射しただけでは、クラッドの外側にエバネッセント波領域は現れない。そこで、クラッドに光を入射し、その効果を得るという方法がある。
このような方法としては、例えば、図3(a)に示すように、シングルモードファイバの両端に、マルチモードファイバを接続する方法が挙げられる。このようにコア径の異なるファイバを接続した構造をヘテロコア構造という。ヘテロコア構造は、エバネッセント波領域をクラッドの外側に染み出させることができるので、エバネッセント波を利用した各種センサのベースとして有効な構造である。
【0058】
このヘテロコア構造を酸化ビスマス系ファイバに応用し、図3(b)に示すような実験用の分布型光ファイバ水素センサを作製した。
移送用ファイバとして、コア材が石英、クラッド材がプラスチック、コア径が125μm、クラッド径が140μmのSI型マルチモードファイバを用いた。
SI型マルチモードファイバのクラッドをガスバーナーで除去した後、V溝を用いて、SI型マルチモードファイバと酸化ビスマス系ファイバの軸合わせを行い、固定した。なお、酸化ビスマス系ファイバは融点が低く、石英ファイバと融着接続することができないため、V溝を用いた。
酸化ビスマス系ファイバの外周面には、上記のゾル−ゲル法により、Pt/WO膜を設けた。
【0059】
また、比較のために、石英シングルモードファイバについても、図3(b)に示すヘテロコア構造と同様にして、石英シングルモードファイバの両端に、マルチモードファイバを融着接続したヘテロコア構造のセンサを作製した。
石英シングルモードファイバの外周面には、上記のゾル−ゲル法により、Pt/WO膜を設けた。
以下の評価において、これらのセンサを用い、その伝搬損失と水素応答挙動を評価した。
【0060】
(2)分布型光ファイバ水素センサの水素応答性の確認
酸化ビスマス系ファイバを用いた分布型光ファイバ水素センサが、水素に対して応答するか否かを確認した。
長さ10cmの酸化ビスマス系ファイバを2本用意し、ゾル−ゲル法または電子ビーム法(EB法)により、それぞれ酸化ビスマス系ファイバの外周面に、ファイバの長手方向の長さが5cmのPt/WO膜を設けた後、図3(b)に示したような分布型光ファイバ水素センサを作製した。
得られた分布型光ファイバ水素センサに、水素を曝露し、水素応答挙動を評価した。結果を図4に示す。
図4において、縦軸は規格化光量を示し、横軸は時間を示している。
なお、規格化光量は、各時間における伝搬光量の値を水素曝露前の空気中における伝搬光量の値で除したものと定義する。
【0061】
図4の結果から、ヘテロコア構造を利用し、酸化ビスマス系ファイバと、その外周面に設けられたPt/WO膜とからなる分布型光ファイバ水素センサは、水素に応答することが確認された。
【0062】
(3)石英シングルモードファイバの長さと光伝搬損失との関係
石英シングルモードファイバの長さを変化させて、石英シングルモードファイバの長さと光伝搬損失との関係を評価した。結果を図5に示す。
図5の結果から、ファイバの長さを変えても、石英シングルモードファイバ単体による損失は確認されなかった。これは、光が導波しているクラッドの外側が空気(屈折率はクラッド>空気)だからであると考えられる。
【0063】
(4)ファイバの被覆の長さと伝搬損失との関係
石英シングルモードファイバと酸化ビスマス系ファイバについて、被覆の長さを変化させて、ファイバの被覆の長さと伝搬損失との関係を評価した。このとき、ファイバの長さを15cmとした。結果を図6に示す。
図6の結果から、石英シングルモードファイバでは、被覆が僅か数mm程度存在しても、光量が減衰することが確認された。これは、ヘテロコア構造はクラッドに光を導波させているので、その外側にクラッドよりも屈折率の高い被覆(紫外線硬化型樹脂)が存在すると、そこで損失が生じるからであると考えられる。
一方、酸化ビスマス系ファイバでは、被覆の有無で光量に変化が見られなかった。これは、酸化ビスマス系ファイバのコアの屈折率は、被覆の屈折率よりも高く、被覆の影響がほとんどないからであると考えられる。すなわち、酸化ビスマス系ファイバを用いた多点センサを作製する場合、被覆を残存させたままでもほとんど影響がないと言える。
【0064】
(5)水素感応膜(Pt/WO膜)の長さと伝搬損失との関係
石英シングルモードファイバと酸化ビスマス系ファイバについて、水素感応膜の長さを変化させて、水素感応膜の長さと伝搬損失との関係を評価した。このとき、ファイバの長さを20cmとした。結果を図7に示す。
図7の結果から、石英シングルモードファイバでは、水素感応膜の長さが10cmのとき約−9dB(約−90dB/m)であるのに対して、酸化ビスマス系ファイバでは、ほとんど損失がないことが分かった。
また、石英シングルモードファイバは、水素感応膜の長さが10cm以上では、減衰が見られなかった。これは、石英シングルモードファイバのクラッドを伝搬する光の中で、エバネッセント領域に関連する光が全て吸収され、コアを伝搬している光のみを検出しているからであると考えられる。
【0065】
(6)水素感応膜(Pt/WO膜)の成膜条件の最適化
上述のゾル−ゲル法を用いて、石英基板に上記のHWOゾル−ゲル溶液を塗布し、紫外線を照射して、Pt/WO膜を設けた。このとき、紫外線の照射時間を変化させて、照射時間が水素センサの水素応答挙動に与える影響を評価した。紫外線の照射時間を、15分、30分、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間とした。結果を図8に示す。
図8の結果から、紫外線の照射時間が長いほど応答速度が大きく、復帰速度が小さいことが分かった。一方、紫外線の照射時間が短いほど応答速度が小さく、復帰速度が大きいことが分かった。
また、紫外線の照射時間が1時間のセンサの応答曲線を見ると、感度が良好であり、かつ、復帰時間が短いことが分かる。これは、多点分布型センサを評価する場合、それぞれのセンサ部を比較するために適した曲線である。そこで、長さが10mの酸化ビスマスファイバセンサを作製する際の紫外線の照射時間を1時間とした。
【0066】
(7)酸化ビスマス系ファイバへのセンサ部の作製
図9に示すように、長さ10mの酸化ビスマス系ファイバの外周面に、ファイバの長手方向に沿って所定の間隔をおいて、10箇所のセンサ部を作製した。
図9に示すように、10mの酸化ビスマス系ファイバを約5mの位置で折り返して、ホットプレートにより、熱収縮型補強スリーブを所定の温度に加熱した。
図10に示す被覆除去装置を用いて、酸化ビスマス系ファイバをジクロロメタンに浸漬し、酸化ビスマス系ファイバの被覆を所定の間隔をおいて10箇所、10cm程度除去した。その後、上述のゾル−ゲル法により、その酸化ビスマス系ファイバの被覆を除去した部分それぞれに、センサ部を作製した。なお、紫外線の照射時間を1時間とした。
作製したセンサ部を、光源から近い順にセンサ(1)、センサ(2)、・・・、センサ(10)とした。
また、光源とホットプレートには温度計を設置して、温度を記録した。
【0067】
まず、10箇所(合計約90cm)の被覆を除去した段階で、光量に全く変化は見られなかった。
そして、この被覆を除去した箇所全てにPt/WO膜を設けたところ、伝搬損失量は−0.23dBであった。なお、Pt/WO膜の長さは約90cmであるので、酸化ビスマス系ファイバを用いた分布型光ファイバ水素センサの単位長さ(1m)当たりの伝搬損失量は−0.25dB/mとなり、従来のセンサ(−14dB/m)やEB法により作製されたセンサ(−6dB/m)よりもはるかに低損失のセンサであることが実証された(図11参照)。つまり、酸化ビスマス系ファイバの外周面に設けられたセンサ部の位置と光伝搬特性に関する情報を測定する汎用光パルス試験器のダイナミックレンジを20dBとすると、得られた伝搬損失量は理論上80mのセンサを実現できることを示唆している。
【0068】
また、センサ部を作製した後、それぞれのセンサ部に水素を曝露し、水素応答挙動を評価した。結果を図12、13に示す。
図12、13の結果から、センサ部の応答速度にばらつきがあるものの、10箇所全てのセンサ部において、それぞれ独立して水素応答挙動を確認することができた。
【0069】
また、三箇所のセンサ部(6)、(9)、(10)に、水素を段階的に曝露した結果を、表1および図14に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
これらの結果から、それぞれのセンサ部は、前段のセンサ部に従属した挙動を示したので、酸化ビスマス系ファイバに設けた複数箇所のセンサ部に水素を曝露しても、水素の検知が可能であることが分かり、多点観測用の分布型光ファイバ水素センサとしての機能も果たすことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法は、耐熱性に劣る基材の表面にも、これらの基材を損傷することなく、白金/酸化タングステン系水素感応膜を形成することができるので、従来の方法に比べて処理対象となる基材の種類が限定されない。したがって、本発明の白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法によって作製された白金/酸化タングステン系水素感応膜を備えた分布型光ファイバ水素センサは、液体水素燃料を使用するロケットおよび宇宙輸送機などの燃料供給系統、あるいはこれらを評価するための試験設備などにおける水素漏洩を検知するとともに、漏洩箇所を特定することに適した測定方法として利用されるだけでなく、将来的に水素が石油代替エネルギー源として普及した場合、水素エネルギーに関連したインフラ(水素貯蔵施設、水素発電施設)設備や燃料電池自動車などの水素利用機器における水素漏洩監視と健全性評価への応用が大いに期待される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の分布型光ファイバ水素センサの一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の多点観測用の分布型光ファイバ水素センサの一実施形態を示す概略構成図である。
【図3】ヘテロコア構造を説明する概略断面図であり、(a)はシングルモードファイバの両端に、マルチモードファイバを接続した場合、(b)は酸化ビスマス系ファイバの両端に、マルチモードファイバを接続した場合を示す。
【図4】酸化ビスマス系ファイバを用いた分布型光ファイバ水素センサの水素応答挙動を評価した結果を示すグラフである。
【図5】石英シングルモードファイバの長さと光伝搬損失との関係を評価した結果を示すグラフである。
【図6】石英シングルモードファイバと酸化ビスマス系ファイバについて、ファイバの被覆の長さと伝搬損失との関係を評価した結果を示すグラフである。
【図7】石英シングルモードファイバと酸化ビスマス系ファイバについて、水素感応膜の長さと伝搬損失との関係を評価し結果を示すグラフである。
【図8】ゾル−ゲル法を用いたPt/WO膜の形成において、紫外線の照射時間を変化させた場合に、照射時間が水素センサの水素応答挙動に与える影響を評価した結果を示すグラフである。
【図9】本発明の多点観測用の分布型光ファイバ水素センサの実験例を示す概略構成図である。
【図10】本発明で用いられる被覆除去装置の一例を示す概略図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【図11】酸化ビスマス系ファイバを用いた分布型光ファイバ水素センサと従来の分布型光ファイバ水素センサの光伝搬損失を比較したグラフである。
【図12】多点観測用の分布型光ファイバ水素センサの各センサ部における水素応答挙動を示すグラフである。
【図13】多点観測用の分布型光ファイバ水素センサの各センサ部における水素応答挙動を示すグラフである。
【図14】多点観測用の分布型光ファイバ水素センサのセンサ部のうち、三箇所のセンサ部に水素を段階的に曝露した結果を示すグラフである。
【図15】エバネッセント波吸収型センサの動作原理を説明する図である。
【図16】FBGの構造とそこでの反射・透過特性を説明する図である。
【符号の説明】
【0074】
10・・・分布型光ファイバ水素センサ、11・・・光ファイバ、12・・・白金/酸化タングステン系水素感応膜(水素感応膜)、20・・・多点観測用の分布型光ファイバ水素センサ、21・・・光ファイバ、22・・・センサ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金触媒と、該白金触媒を担持する酸化タングステンからなる担体とを備えた白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法であって、
タングステン酸の前駆体と白金化合物とを混合し、タングステン酸のゾル−ゲル溶液を調製する工程Aと、
基材の表面に前記ゾル−ゲル溶液を塗布する工程Bと、
前記ゾル−ゲル溶液を塗布した基材を乾燥して、前記基材の表面に塗膜を形成する工程Cと、
該塗膜が形成された基材を、ホルムアルデヒド等の還元性ガスを含む雰囲気下で前記塗膜に紫外線を照射して、前記基材の表面に白金/酸化タングステン系水素感応膜を形成する工程Dと、を有することを特徴とする白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法。
【請求項2】
前記工程Aにおいて、前記タングステン酸の前駆体はタングステン酸ナトリウム二水和物を溶媒に溶解したタングステン酸ナトリウム溶液を、イオン交換樹脂と接触させたものであり、前記白金化合物はヘキサクロロ白金酸六水和物であることを特徴とする請求項1に記載の白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法。
【請求項3】
前記工程Dにおいて、前記塗膜に紫外線を照射する時間を15分以上、8時間以下とすることを特徴とする請求項1または2に記載の白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法。
【請求項4】
前記工程Dにおいて、前記塗膜に紫外線を照射する時間を30分以上、60分以下とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の白金/酸化タングステン系水素感応膜の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2010−2346(P2010−2346A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162365(P2008−162365)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【Fターム(参考)】