説明

白髪を処理するためのエラグ酸の使用

【課題】本発明は、白髪を処理するための、エラグ酸又はその誘導体の1つの使用に関する。
【解決手段】本発明はまた、エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル又はポリエーテル、モノアシル化又はポリアシル化誘導体、及びそのカーボネート又はカルバマート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものから選択される少なくとも1つの化合物と、頭皮の落屑状態に対抗するための薬剤、色素沈着促進活性を有する植物抽出物、及び脱毛を減速させるか又はその再生を促進する薬剤から選択されるもう1つの活性剤とを組み合わせて含む組成物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白髪を処理するための、エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル又はポリエーテル、モノアシル化又はポリアシル化誘導体、及びそのカーボネート又はカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものの美容的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
毛包は、真皮の深層にまで及ぶ表皮の管状陥入である。それ自体の下部又は毛球は陥入を含み、ここでは真皮乳頭が見られる。毛球の下部は、細胞増殖領域であり、ここでは、毛髪を構成する角化細胞の前駆体が見られる。これらの前駆体に由来する上行性の細胞は、毛球上部で徐々に角化されていき、角化細胞のこの集合が毛幹を形成する。
【0003】
頭髪及び体毛の色は、特に、メラニンの2種のグループの、様々な量及び比率での存在によって決まる:ユーメラニン(褐色及び黒色の色素)及びフェオメラニン(赤色及び黄色の色素)。頭髪及び体毛の色素沈着は、毛包の毛球でのメラノサイトの存在を必要とする。これらのメラノサイトは活性状態であり、すなわち、これらがメラニンを合成する。これらの色素は、毛幹を形成することを目的とするケラチノサイトへと送られ、結果として、色素性の頭髪又は体毛の成長をもたらす。以下、この構造を「毛包色素沈着ユニット」と称する。
【0004】
哺乳動物において、メラニン形成には、少なくとも3種の酵素が関与する:チロシナーゼ、ドーパクロムトートメラーゼ(DOPAchrome tautomerase)(TRP−2、チロシン関連タンパク質2)、及びDHICAオキシダーゼ(TRP−1、チロシン関連タンパク質1)。
【0005】
チロシナーゼは、メラニンの生合成を開始する酵素である。これはまた、メラニン形成の律速酵素としても記載されている。
【0006】
TRP−2は、ドーパクロムの5,6−ジヒドロキシインドール−2−カルボン酸(DHICA)への互変異性化を触媒する。TRP−2の不在下、ドーパクロムは、自発的脱カルボキシル化を受け、5,6−ジヒドロキシインドール(DHI)を形成する。
【0007】
DHICA及びDHIは、ともに色素前駆体であり、TRP−1はDHICA分子を酸化して、キノン誘導体を形成する(Pawelek, J.M. and Chakraborty, A.K.,「The Enzymology of Melanogenesis」, In:「The Pigmentary System: Physiology and Pathophysiology」, by Nordlund, J.J., Boissy, R.E., Hearing, V.J., King, R.A., and Ortonne, J−P., New York, Oxford University Press, 1998, p. 391−400)。
【0008】
3種の酵素、チロシナーゼ、TRP−2、及びTRP−1は、メラニン形成に明確に関与しているようである。加えて、これら3種の酵素の活性は、ユーメラニン生合成の最大活性に必要なものとして記載されている。
【0009】
頭髪及び体毛は周期を受ける。この周期には、成長期(アナゲン期)、退行期(カタゲン期)、及び休止期(テロゲン期)が含まれ、それに続いて新たなアナゲン期が発現する。この毛周期に起因して、表皮色素沈着ユニットとは異なり、毛包色素沈着ユニットはまた、周期的に再生されなければならない。
【0010】
白髪(自然な毛髪の白色化)は、毛球メラノサイト及びメラノサイト前駆体細胞の両方に影響を及ぼす、毛髪メラノサイトの特異的かつ段階的な欠乏と関連する(Commo, et al., Br. J. Dermatol., 2004, 150, 435−443)。毛包に存在する他の細胞タイプは影響を受けない。加えて、メラノサイトのこの欠乏は、表皮では観察されない。毛包における、メラノサイト及びメラノサイト前駆体のこの段階的かつ特異的欠乏の原因は、今日まで同定されていない。
【特許文献1】欧州特許第1021161号明細書
【特許文献2】欧州特許第1282395号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、白髪に対抗するために、毛球の活性メラノサイト、及び毛包上部領域の休止メラノサイトの両方に影響を及ぼすプロセスであるヒト毛包からのメラノサイトの消失に対抗することが必要であるようだ。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願人は、TRP−2酵素に作用することにより(WO 03/103568)、特にGSHレベルを増加させることにより、毛髪の白色化に対抗する手段を同定した。実際に、TRP−2酵素の発現がメラノサイト中の高レベルのGSHと相関し、TRP−2の発現が、メラノサイト中のGSHレベルの増加を誘導することが実証された。従って、TRP−2を発現していないメラノサイト(例えば、毛髪のメラノサイト前駆体)においては、TRP−2酵素を発現しているメラノサイト(例えば、全ての皮膚メラノサイト)と比較して、低レベルのGSHしか存在しない。
【0013】
従って、本出願人は、白髪を処理するための新規標的を同定し、より詳細には、TRP−2を欠損しているメラノサイトにおいて、GSHレベルを増加させることのできる化合物が、これらのメラノサイトの生存率を増加させ、毛髪の白色化を減少させ、かつ文献に記載されているそれらの脱色素(depigmenting)効果とは異なって、毛髪色素沈着の回復を導くことを実証した(FR 04/13756)。
【0014】
本出願人は、エラグ酸が、GSHレベルを増加させるその能力を介して(Khanduja, K.L., Food and Chemical Tox., 1999, 37, 313)、メラノサイトにおいて、毛髪の白色化を妨害し、文献に記載されているその皮膚脱色素効果とは異なって、毛髪色素沈着の回復を導くことを現在実証した。
【0015】
多数の従来の特許には、その脱色素、紫外線スクリーニング、抗癌、及び抗炎症特性についてのエラグ酸の使用が記載されている(JP 2003/267818、EP 1 021 161、EP 1 282 395)。
【0016】
本発明の対象は、白髪の進行を予防すること、制限すること、又は停止させることを可能にし、かつ頭髪及び/又は体毛の自然な色素再沈着を維持並びに/あるいは促進することを可能にする薬剤としての、エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル又はポリエーテル、モノアシル化又はポリアシル化誘導体、及びそのカーボネート又はカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものの使用に関する。
【0017】
特に、本発明の対象は、白髪の発生(development)を予防するため及び/又は制限するため及び/又は停止させるための、エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル又はポリエーテル、モノアシル化又はポリアシル化誘導体、及びそのカーボネート又はカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものの使用に関する。
【0018】
本発明の対象はまた、グレーの頭髪及び/又は体毛の自然な色素沈着を維持するための、エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル又はポリエーテル、モノアシル化又はポリアシル化誘導体、及びそのカーボネート又はカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものの使用にも関する。
【0019】
2,3,7,8−テトラヒドロキシ(1)ベンゾピラノ(5,4,3−CDE)(1)ベンゾピラン−5,10−ジオンとしても知られるエラグ酸は、ポリフェノールグループに属する周知分子であり、植物界に存在する。参照として、Merck Index, 20th Edition,(1996), No.3588の出版物を挙げてよい。エラグ酸の精製方法及びこのような方法により得られた精製エラグ酸は、FR−A−1 478 523から公知である。
【0020】
エラグ酸は、4つの縮合環を含む以下の化学式:
【0021】
【化1】

を有する。
【0022】
エラグ酸は、特にSigma Franceから市販されている。
【0023】
本発明の範囲内において、エラグ酸の塩には、特に、金属塩、特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム及びカルシウム塩;アミン塩、例えば、メチルグルタミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、コリン又はビス(トリエチルアミン)の塩;アミノ酸の塩、特に塩基性アミノ酸、例えば、アルギニン、リシン及びオルニチンの塩;特に亜鉛及び銅との金属錯体を含む、金属錯体;並びに、特に2〜22個の炭素原子を有する飽和又は不飽和アシル基を含む、モノアシル化又はポリアシル化誘導体が含まれる。
【0024】
好ましくは、これらのアシル基は、酢酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ステアリン酸、ブラシジン酸、エルカ酸、ベヘン酸、及び(全てz)−5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸に相当する。上述のモノエーテル又はポリエーテル誘導体は、特に、1〜4個の炭素原子を含むアルコキシ誘導体、又は他にはエラグ酸の1つ以上のヒドロキシル基と糖若しくは糖鎖との縮合誘導体である。特に、これは、3−メトキシエラグ酸、又はグルコース、アラビノース、ラムノース、及びガラクトースなどの糖とのモノエーテル若しくはポリエーテル誘導体である。
【0025】
上述のエーテル又はアシル化誘導体は、当業者に周知のポリフェノールエーテル化又はアシル化方法により得てもよい。あるものは、植物からの抽出により得てもよい。
【0026】
本発明の対象の一つはまた、化粧品として許容可能な媒体中、エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル又はポリエーテル、モノアシル化又はポリアシル化誘導体、及びそのカーボネート又はカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものから選択される少なくとも1つの化合物と、頭皮の落屑状態に対抗するための薬剤及び/又は色素沈着促進(propigmenting)活性を有する植物抽出物から選択されるもう一つの毛髪活性剤とを組み合わせて含む、白髪に対抗するための組成物でもある。
【0027】
本発明はまた、化粧品として許容可能な媒体中、エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル又はポリエーテル、モノアシル化又はポリアシル化誘導体、及びそのカーボネート又はカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものから選択される少なくとも1つの化合物と、脱毛を減速させるか又はその再生を促進する1つの薬剤とを組み合わせて含む、白髪に対抗するための組成物にも関する。
【0028】
本発明の組成物には、エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル又はポリエーテル、モノアシル化又はポリアシル化誘導体、及びそのカーボネート又はカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものから選択される化合物が、組成物の総重量に対して0.001〜10重量%、優先的には組成物の総重量に対して0.01〜5重量%、さらにより優先的には組成物の総重量に対して0.1〜1重量%の量で含まれる。
【0029】
本発明の組成物は、経口手段により投与されるか、又は皮膚(毛髪で覆われる体の任意の皮膚領域にわたる)及び/若しくは頭皮に局所適用されてよい。
【0030】
経口手段により、本発明の組成物には、エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル又はポリエーテル、モノアシル化又はポリアシル化誘導体、及びそのカーボネート又はカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものから選択される1つ以上の化合物が、任意選択で香味づけられた水溶液又は水性−アルコール性溶液などの食事性液体の溶液中に含まれてもよい。これらはまた、摂取可能な固体賦形剤に組み込まれてもよく、例えば、顆粒、ピル、錠剤、又は糖衣錠の形態であってよい。これらはまた、摂取可能なカプセル中にそれ自体が任意選択でパッケージングされる食事性液体中に溶解されてもよい。
【0031】
投与方法に応じて、本発明の組成物は、特に化粧品学において、通常用いられる任意のガレヌス(galenic)形態であってよい。
【0032】
本発明の好ましい組成物は、頭皮及び/又は皮膚への局所適用に適した化粧品組成物である。
【0033】
局所適用のために、本発明で用いられ得る組成物は、特に、水性、水性−アルコール性、若しくは油性溶液、又はローション若しくはセラムタイプのディスパーション、ミルクタイプの液体若しくは半液体コンシステンシーを有するエマルションであって、水相中に脂肪相を分散させるか(O/W)若しくはその逆(W/O)により得られるもの、又は水性ゲル若しくは無水のゲル若しくはクリームタイプの柔らかいコンシステンシーを有する懸濁液若しくはエマルション、又は他にマイクロカプセル若しくは微粒子、又はイオン性及び/若しくは非イオン性タイプのベシクル状のディスパーションの形態であってよい。従って、オイントメント、染料、クリーム、ポマード、粉末、パッチ、含浸パッド、溶液、エマルション若しくはベシクル状のディルパーション、ローション、ゲル、スプレー、懸濁液、シャンプー、エアロゾル、又はフォームの形態であってよい。これらは、無水又は水性であってよい。また、ソープ又はクレンジングバーを形成する固体調製物からなってもよい。
【0034】
これらの組成物は、常法に従って調製される。
【0035】
本発明で用いられ得る組成物は、特に、毛髪ケア用組成物、特に、シャンプー、セット用ローション、処理用ローション、スタイリングクリーム若しくはゲル、任意選択でカラーリングシャンプーの形態であってよい染色用組成物(特に酸化染色用組成物)、毛髪用修復(restructuring)ローション、又はマスクであってよい。
【0036】
本発明の化粧品組成物は、優先的には、クリーム、ヘアローション、シャンプー、又はコンディショナーである。
【0037】
本発明で用いられ得る組成物の様々な構成成分の量は、当該分野で通常用いられる量である。
【0038】
本発明で用いられ得る組成物がエマルションである場合には、脂肪相の量は、組成物の総重量に対して5〜80重量%、好ましくは5〜50重量%の範囲であってよい。エマルション形態の組成物に用いられるオイル、ワックス、乳化剤、及び共乳化剤は、化粧品分野で通常用いられるものから選択される。乳化剤及び共乳化剤は、組成物の総重量に対して0.3〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%の範囲の量で組成物中に存在する。加えて、エマルションには、脂質ベシクルが含まれもよい。
【0039】
本発明で用いられ得る組成物が、油性溶液又はゲルである場合には、脂肪相は、組成物の総重量の90%超を示してよい。
【0040】
本発明の一つの変形において、組成物は、エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル又はポリエーテル、モノアシル化又はポリアシル化誘導体、及びそのカーボネート又はカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものが、マイクロスフェア、ナノスフェア、オレオソーム、又はナノカプセルなどのコーティング中にカプセル化されるようなものであってよい。
【0041】
このタイプの配合物は、特異的に毛包を標的化することを可能にし、それにより、その作用部位上で活性剤を放出することを可能にするので有利である。
【0042】
一例として、マイクロスフェアは、特許出願EP 0 375 520に記載の方法に従って調製されてよい。
【0043】
ナノスフェアは、水性懸濁液の形態であってよく、特許出願FR 0015686及びFR 0101438に記載の方法に従って調製されてよい。
【0044】
オレオソームは、水相に分散されて、ラメラ液晶コーティングを提供する油性小球により形成される水中油型エマルションからなる(特許出願EP 0 641 557及びEP 0 705 593を参照されたい)。
【0045】
エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル若しくはポリエーテル、モノアシル化若しくはポリアシル化誘導体、又はそのカーボネート若しくはカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものはまた、シリコン界面活性剤から得られるラメラコーティングからなるナノカプセル中にカプセル化されてよく(特許出願EP 0 780 115を参照されたい)、このナノカプセルはまた、水分散性スルホン酸ポリエステルに基づいて調製されてもよい(特許出願FR 0113337を参照されたい)。
【0046】
エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル若しくはポリエーテル、モノアシル化若しくはポリアシル化誘導体、又はそのカーボネート若しくはカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものはまた、それらのサイズに関わらず、カチオン性の油性小球の表面に複合(complexed)されてよい(特許出願EP 1 010 413、EP 1 010 414、EP 1 010 415、EP 1 010 416、EP 1 013 338、EP 1 016 453、EP 1 018 363、EP 1 020 219、EP 1 025 898、EP 1 120 101、EP 1 120 102、EP 1 129 684、EP 1 160 005及びEP 1 172 077を参照されたい)。
【0047】
エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル若しくはポリエーテル、モノアシル化若しくはポリアシル化誘導体、又はそのカーボネート若しくはカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものは、最終的に、ラメラコーティングを提供し(EP 0 447 318及びEP 0 557 489を参照されたい)、かつ表面にカチオン性界面活性剤を含有する(カチオン性界面活性剤については先に引用した参考文献を参照されたい)ナノカプセル又はナノ粒子の表面に複合されてよい。
【0048】
特に、組成物は、エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル若しくはポリエーテル、モノアシル化若しくはポリアシル化誘導体、又はそのカーボネート若しくはカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものを含有するコーティングが、10μm以下の直径を有するものであることが好ましい。コーティングが、球形ベシクルを形成しない場合には、直径はベシクルの最大寸法であることが理解される。
【0049】
公知の方法で、本発明の組成物にはまた、化粧品分野で慣習的であるアジュバントが含まれてよく、例えば、親水性又は親油性ゲル化剤、親水性又は親油性添加物、保存料、抗酸化剤、溶媒、フレグランス、フィラー、スクリーニング剤、臭気吸着剤、及び着色剤(coloring material)などが含まれてよい。これらの様々なアジュバントの量は、化粧品分野で通常用いられる量であり、例えば、組成物の総重量の0.01〜10%である。これらのアジュバントは、それらのタイプに応じて、脂肪相、水相、及び/又は脂質小球へと導入されてよい。
【0050】
本発明で用いられ得る組成物は、エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル又はポリエーテル、モノアシル化又はポリアシル化誘導体、及びそのカーボネート又はカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものから選択される少なくとも1つの化合物と、他の活性剤とを組み合わせてよい。
【0051】
これらの活性剤のうち、一例として、以下を挙げてよい:
− 皮膚細胞の分化及び/又は増殖及び/又は色素沈着を調節する薬剤、例えば、レチノール及びそのエステル、ビタミンD及びその誘導体、エストラジオールなどのエストロゲン、cAMPモジュレーター、例えば、POMC誘導体、アデノシン、又はフォルスコリン及びその誘導体、プロスタグランジン及びその誘導体、トリヨードトリオニン(triiodotrionine)及びその誘導体など;
− 植物抽出物、例えば、Iridaceae又は大豆由来のものなどであって、この抽出物には、その場合に、イソフラボンが含まれていても、又は含まれていなくてもよい;
− 微生物の抽出物:
− フリーラジカルスカベンジャー、例えば、α−トコフェロール若しくはそのエステル、スーパーオキシドジスムターゼ若しくは同種のもの、特定の金属キレート剤、又はアスコルビン酸及びそのエステル;
− 抗脂漏剤、例えば、特定の硫黄含有アミノ酸、13−cis−レチノイン酸、酢酸シプロテロン;
− 頭皮の落屑状態に対抗する他の薬剤、例えば、二硫化セレン、クリンバゾール、ウンデシレン酸、ケトコナゾール、ピロクトンオラミン(オクトピロックス)、又はシクロピロクトン(ciclopiroctone)(シクロピロックス);
特に、これらは、再生を刺激及び/又は脱毛の減速を促進する活性剤であってよく、非限定的な方法で、特に以下を挙げてよい:
− ニコチン酸エステル、特に、ニコチン酸トコフェリル、ニコチン酸ベンジル、及びC1〜C6のニコチン酸アルキル、例えば、ニコチン酸メチル又はニコチン酸ヘキシルなどを含む;
− ピリミジン誘導体、例えば、米国特許第4139619号及び同第4596812号に記載の2,4−ジアミノ−6−ピペリジノピリミジン3−オキシド又は「Minoxidil」;WO 96/09048に記載のAminexil又は2,4−ジアミノピリミジン3−オキシド;
− 毛髪再生を促進するリポキシゲナーゼ阻害剤又はシクロオキシダーゼ誘導剤、例えば、本出願人による欧州特許出願第0648488号に記載のもの;
− 抗菌剤、例えば、マクロライド、ピラノシド、及びテトラサイクリン、特にエリスロマイシン;
− カルシウムアンタゴニスト、例えば、シンナリジン、ニモジピン、及びニフェジピン;
− ホルモン、例えば、エストリオール若しくは同種のもの、又はチロキシン及びその塩;
− 抗アンドロゲン、例えば、オキセンドロン、スピロノラクトン、ジエチルスチルベストロール、及びフルタミド;
− 5−α−レダクターゼのステロイド又は非ステロイド阻害剤、例えば、本出願人による欧州特許出願第0964852号及び同第1068858号に記載のもの、又は他にフィナステリド;
− ATP依存性カリウムチャネルアゴニスト、例えば、クロマカリム及びニコランジル;並びに
− 色素沈着促進活性を有する植物抽出物、例えば、FR 2768343に記載のクリサンテマム(chrysanthemum)抽出物、及びFR 2782920に記載のSanguisorba抽出物。
【0052】
好ましくは、エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル又はポリエーテル、モノアシル化又はポリアシル化誘導体、及びそのカーボネート又はカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものから選択される化合物は、頭皮の落屑状態に対抗するための薬剤、脱毛を減速又はその再生を促進する薬剤、及び色素沈着促進活性を有する植物抽出物から選択される少なくとも1つの他の毛髪活性剤と組み合わされる。
【0053】
本発明はまた、白髪の処理に使用するための、エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル又はポリエーテル、モノアシル化又はポリアシル化誘導体、及びそのカーボネート又はカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものにも関する。
【0054】
本発明の別の対象は、エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル又はポリエーテル、モノアシル化又はポリアシル化誘導体、及びそのカーボネート又はカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものから選択される少なくとも1つの化合物を含む先に定義したとおりの組成物が、投与されるか、又は処理されるべき領域に適用されることを特徴とする、白髪の美容処理方法に関する。
【0055】
本発明はまた、エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル又はポリエーテル、モノアシル化又はポリアシル化誘導体、及びそのカーボネート又はカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものから選択される少なくとも1つの化合物を含む先に定義したとおりの組成物が、投与されるか、又は処理されるべき領域に適用されることを特徴とする、グレー若しくは白色の頭髪及び/又は体毛の自然な色素沈着を維持することを目的とする美容処理方法にも関する。
【0056】
白髪の処理方法、並びにグレー若しくは白色の頭髪及び/又は体毛の色素沈着方法はまた、エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル又はポリエーテル、モノアシル化又はポリアシル化誘導体、及びそのカーボネート又はカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものから選択される少なくとも1つの化合物を含む組成物を摂取する工程からなってもよい。
【0057】
処理されるべき領域は、例えば、非限定的に、頭皮、眉毛、口髭、及び/又は顎鬚、並びに毛髪で覆われる皮膚の任意の領域であってよい。
【0058】
とりわけ、白髪の美容処理方法、並びにグレー若しくは白色の頭髪及び/又は体毛の自然な色素沈着方法は、エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル又はポリエーテル、モノアシル化又はポリアシル化誘導体、及びそのカーボネート又はカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものから選択される少なくとも1つの化合物を含む組成物を適用する工程からなる。
【0059】
白髪に対抗するための美容処理方法、並びに/あるいはグレー若しくは白色の頭髪及び/又は体毛の自然な色素沈着を維持するための美容処理方法は、例えば、毛髪及び頭皮に組成物を夜に適用する工程、組成物を一晩放置する工程、及び任意選択で朝にシャンプーする工程、又はこの組成物を用いて毛髪を洗浄し、再度数分間接触した状態にして、その後すすぐ工程からなってよい。
【0060】
本発明の組成物は、任意選択ですすぎ落とされるヘアローションの形態、又はさらにシャンプーの形態で適用される場合に特に有利である。
【0061】
[実施例]
[実施例1:エラグ酸によるメラノサイトの保護の実証]
(1−A−1.培養正常ヒトメラノサイト(NHM)における、H2O2ストレスにより産生される活性酸素種(ROS)を測定するためのプロトコル)
正常ヒトメラノサイト(NHM)を、4×104細胞/cm2の密度で、D0で播種した。D1時に、PBS中、6−カルボキシ−2',7'−ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート、ジ[アセトキシメチルエステル](H2DCFDA、C2938、Molecular Probe)の10μM溶液に培養媒体を取り換えた。20分後、H2DCFDA溶液を培養媒体と取り換えた。NHMを30分間放置し、その後H2O2溶液(250μM)を添加した。15分後、フルオロスキャン(励起:485 nm、発光:538 nm)でフルオレセインを測定した。
【0062】
研究する化合物は、それらの特性(濃度、プレインキュベーション時間)に応じて用いた。参照分子として、N−アセチルシステイン(A9165、Sigma)を用いた。培養媒体中、研究する化合物とともに、37℃、12 h/18 h、メラノサイトを前処理し、その後、H2DCFDA(PBS中10μM)と20分間接触させた。ついで、H2DCFDA溶液を、研究する活性剤を含む培養媒体に取り換えた。30分間インキュベートした後、培養媒体に250μMのH2O2を添加することにより、酸化的ストレスを誘導した。15分後、フルオロスキャン(励起:485 nm、発光:538 nm)でフルオレセインを測定した。
【0063】
(1−A−2.結果)
結果は、生のフルオレセインデータを表し、ここから、蛍光単位(fu)で表され、代表的実験の間に得られる「ブランク」細胞の自己蛍光値を差し引いた。
【0064】
結果を図1に示す。エラグ酸の存在下、実際に、活性酸素種の減少を観察する。
【0065】
(1−B−1.生存率(毒性コントロール)を測定するためのプロトコル)
正常ヒトメラノサイト(NHM)を、4×104細胞/cm2の密度で、D0で播種した。細胞付着後(3時間)、研究する化合物を培養媒体に添加した。24〜48時間後、Alamar Blue(UP669413 UPTIMA, Interchim)を用いて、供給者の指示に従って細胞生存率を測定した。
【0066】
(1−B−2.結果)
結果は、代表的実験で得られ(3連測定)(2の独立実験を実施した)、研究する活性剤の濃度(μM)の関数としての%蛍光曲線の形態で示される、蛍光シグナルパーセンテージを表す。結果を図2に示す。
【0067】
(1−C−1.慢性H2O2ストレスによりin vitroで誘導される促進老化(accelerated senescence)のためのプロトコル)
O. Toussaint, E.E. Medrano and T. von Zglinicki, Experimental Gerontology 2000, 35, 927−945による。
【0068】
正常ヒトメラノサイト(NHM)を、0.8×104細胞/cm2の密度で、D0で播種した。細胞付着後(3時間)、研究する活性剤を培養媒体に添加した。D1、D2、及びD3において、H2O2(250μM)を1時間にわたって培養媒体に添加した。加えて、ストレスを添加することなく、2日ごとに培養媒体を置き換えた。D7において、Alamar Blue(UP669413 UPTIMA, Interchim)を用いて、供給者の指示に従って生存細胞数を測定した。
【0069】
(1−C−2.結果)
結果は、慢性H2O2ストレスによりin vitroで誘導される促進老化に対するエラグ酸(EA)の効果を明らかにし、エラグ酸の存在下での生存率の顕著な増加を示す。
【0070】
さらに、参照化合物であるN−アセチルシステインとともに試験を実施した。
【0071】
結果を以下の表及び図3に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
[実施例2:組成物]
【0074】
【表2】

【0075】
このローションを、毎日、処理されるべき領域、好ましくは頭皮全体に、少なくとも10日間、優先的には1〜2ヶ月間適用した。
【0076】
ついで、白色又はグレーの毛髪の出現の低減、及びグレーの毛髪の色素再沈着が観察された。
【0077】
【表3】

【0078】
このシャンプーを、約1分間の曝露時間とともに、各洗浄に用いた。
【0079】
約2ヶ月間の長期使用により、白髪の減速及びグレーの毛髪の段階的な色素再沈着が導かれた。
【0080】
このシャンプーはまた、毛髪の白色化を遅延させるために、予防的に用いてもよい。
【0081】
【表4】

【0082】
このゲルを、最終的なマッサージとともに、処理されるべき領域に、1日に2回(朝及び晩)適用した。3ヶ月間適用後、処理する領域の体毛又は頭髪の色素再沈着を観察した。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1には、H2O2により導入されるROSの測定による、NHMに対するエラグ酸の効果を示す。
【図2】図2には、生存率の測定による、NHMに対するエラグ酸の効果を示す。
【図3】図3には、慢性in vitro H2O2ストレスによる促進老化の導入後の生存率による、エラグ酸の効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白髪の発生を予防するため及び/又は制限するため及び/又は停止させるための、エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル又はポリエーテル、モノアシル化又はポリアシル化誘導体、及びそのカーボネート又はカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものの美容的使用。
【請求項2】
グレーの頭髪及び/又は体毛の自然な色素沈着を維持するため並びに/あるいは回復させるための、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル又はポリエーテル、モノアシル化又はポリアシル化誘導体、及びそのカーボネート又はカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものが、局所的又は経口的手段により投与されることを特徴とする、請求項1又は2記載の使用。
【請求項4】
前記エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル又はポリエーテル、モノアシル化又はポリアシル化誘導体、及びそのカーボネート又はカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものが、頭皮の落屑状態に対抗するための薬剤及び/又は色素沈着促進活性を有する植物抽出物、あるいは脱毛を減速させるか又はその再生を促進する薬剤から選択されるもう1つの活性剤と組み合わされることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項記載の使用。
【請求項5】
化粧品として許容可能な媒体中に、エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル又はポリエーテル、モノアシル化又はポリアシル化誘導体、及びそのカーボネート又はカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものから選択される少なくとも1つの化合物と、二硫化セレン、クリンバゾール、ウンデシレン酸、ケトコナゾール、ピロクトンオラミン、若しくはシクロピロクトンから選択される頭皮の落屑状態に対抗するための薬剤、及び/又は色素沈着促進活性を有する植物抽出物から選択されるもう1つの活性剤とを組み合わせて含む、化粧品組成物。
【請求項6】
化粧品として許容可能な媒体中に、エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル又はポリエーテル、モノアシル化又はポリアシル化誘導体、及びそのカーボネート又はカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものから選択される少なくとも1つの化合物と、ニコチン酸ベンジル及びC1〜C6のニコチン酸アルキルから選択されるニコチン酸エステル、国際公開第96/09048号パンフレットに記載のピリミジン誘導体、並びに毛髪再生を促進するリポキシゲナーゼ阻害剤又はシクロオキシダーゼ誘導剤から選択される、脱毛を減速させるか又はその再生を促進する1つの薬剤とを組み合わせて含む、化粧品組成物。
【請求項7】
前記化合物が、マイクロスフェア、ナノスフェア、オレオソーム、又はナノカプセルなどのコーティングでカプセル化されることを特徴とする、請求項5又は6記載の組成物。
【請求項8】
頭皮及び/又は毛髪で覆われた皮膚の領域への局所適用に適することを特徴とする、請求項5乃至7のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
エラグ酸、その塩、その金属錯体、そのモノエーテル又はポリエーテル、モノアシル化又はポリアシル化誘導体、及びそのカーボネート又はカルバメート誘導体であってヒドロキシル基に由来するものから選択される化合物を含む組成物が、経口投与されるか、又は処理されるべき領域に局所適用されることを特徴とする、白髪の美容処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−1693(P2008−1693A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−161727(P2007−161727)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】