説明

白髪を治療するための、3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、及びアリルイソチオシアネートの使用

【課題】毛髪の白化に対抗し、毛髪の色素沈着の回復をもたらす。
【解決手段】本発明は、3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体の、白髪の治療のための使用に関するものであり、また、化粧品として許容可能な媒体中に、3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体、並びにその混合物、から選択される少なくとも1つの化合物を、頭皮の落屑性状態に対抗するための薬剤、色素沈着強化活性をもつ植物抽出物、及び毛髪喪失を低減し又はその再成長を促進する薬剤、から選択される1つの他の活性剤と組み合わせて含む組成物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3H−1,2−ジチオール−3−チオン(D3T)、アネトールジチオールチオン(anethole dithiolethione; ADT)、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、及びアリルイソチオシアネート、及びそれらに誘導体、並びにそれらの混合物の、白髪の治療のための美容目的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪の毛包は、表皮の管状陥入であって、これは真皮の深い層まで伸びている。低い部分、すなわち毛球は、それ自体が陥入部を含み、陥入部中には皮膚乳頭が存在する。毛球の底部は細胞増殖の領域であり、そこには毛髪を形成する角質化細胞の前駆体が存在する。これらの前駆体から誘導された上行細胞は、毛球の上部で次第に角質化され、角質化された細胞のこの集合体が、毛髪の毛幹を形成する。
【0003】
頭髪と体毛の色は、2つの群のメラニンの様々な量と割合での存在に特に左右される。すなわち、ユーメラニン(褐色及び黒色色素)とフェオメラニン(赤色及び黄色色素)である。頭髪と体毛の着色には、毛包の毛球中のメラノサイトの存在を必要とする。これらのメラノサイトは活性状態にあって、すなわちそれらはメラニンを合成している。これらの色素は毛幹を形成するためのケラチノサイトに移動し、これが着色した頭髪又は体毛の成長をもたらす。この構造を以下では「毛包色素沈着ユニット」とよぶ。哺乳動物では、メラニン形成には少なくとも3つの酵素が関与している。すなわち、チロシナーゼ、DOPAクロムトートメラーゼ(TRP−2、チロシナーゼ関連タンパク2)及びDHICAオキシダーゼ(TRP−1、チロシナーゼ関連タンパク1)である。チロシナーゼはメラニンの生合成を開始する酵素である。チロシナーゼはメラニン形成を制限する酵素であるとも説明されている。TRP−2は、DOPAクロムの5,6−ジヒドロキシインドール−2−カルボン酸(DHICA)への互変異性化を触媒する。TRP−2不存在化では、DOPAクロムは自発的に脱カルボキシル化を起こして、5,6−ジヒドロキシインドール(DHI)を形成する。
【0004】
DHICA及びDHIは両方ともに色素の前駆体であり、TRP−1はDHICA分子を酸化してキニン誘導体を形成する(Nordlund, J. J., Boissy, R. E., Hearing, V. J., King, R. A., Ortonne, J-P., “The Pigmentary System: Physiology and Pathophysiology”, New York, Oxford University Press, 1998, p.391-400の、Pawelek, J.M. 及びChakraborty A.K., “The enzymology of melanogenesis”(メラニン形成の酵素学))。
【0005】
上記3つの酵素、チロシナーゼ、TRP−2、及びTRP−1は、メラニン形成に特に関与しているように思われる。さらに、これら3つの酵素の活性は、ユーメラニンの生合成の最大活性に必要であると説明されている。
【0006】
頭髪及び体毛は周期変動を受ける。この周期変動には、成長期(アナーゲン期)、退行期(カターゲン期)、及び休止期(テローゲン期)を含み、休止期に続いて新しいアナーゲン期が現れる。この毛髪周期のため、表皮の色素沈着とは異なり、毛包色素沈着ユニットも周期的に更新されなければならない。
【0007】
白髪(自然な髪の白化)は、毛髪メラノサイトの特異的かつ漸進的な減少に関連しており、この減少が毛球メラノサイト及びメラノサイト前駆細胞の両方に影響を及ぼす(Commo, et al., Br. J. Dermatol., 2004, 150, 435-443)。毛包に存在するその他のタイプの細胞は影響を受けない。さらに、メラノサイトのこの減少は、表皮中ではみられない。毛包中のメラノサイト及びメラノサイト前駆細胞のこの漸進的かつ特異的減少の原因は、今日まで知られていない。
【0008】
したがって、ヒトの毛包からのメラノサイトの消失に対抗すること、毛球の活性メラノサイトと毛包の上部領域の休止メラノサイトの両方に作用する方法、が、白髪に対抗するために必要に思われる。
【0009】
本出願人は、TRP−2酵素に働きかけることによって(WO 03/103568)、特にGSHのレベルを増大させることによって、髪の白化に対抗する手段を確認した。実際に、TRP−2酵素の発現が、メラノサイト中の高レベルのGSHと関連しており、TRP−2の発現がメラノサイト中のGSHレベルの増大を引き起こすことが実証されている。したがって、TRP−2を発現していないメラノサイト(例えば、髪のメラノサイト前駆体)中では、TRP−2酵素を発現しているメラノサイト(例えば、皮膚のメラノサイトの全て)と比較してGSHは低レベルである。
【0010】
したがって、本出願人は、白髪の治療のための新規な標的を特定し、さらに詳細には、TRP−2が不足しているメラノサイト中のGSHレベルを増大させることができる化合物が、これらのメラノサイトの生存率を高め、髪の白化を低減し、かつ、文献(FR04/13756)に記載されたそれらの脱色効果とは異なって、毛髪の色素沈着の回復をもたらすことを実証した。
【特許文献1】国際公開WO03/103568号パンフレット
【特許文献2】FR04/13756
【非特許文献1】Nordlund, J. J., Boissy, R. E., Hearing, V. J., King, R. A., Ortonne, J-P., “The Pigmentary System: Physiology and Pathophysiology”, New York, Oxford University Press, 1998, p.391-400の、Pawelek, J.M. 及びChakraborty A.K., “The enzymology of melanogenesis”(メラニン形成の酵素学))
【非特許文献2】Commo, et al., Br. J. Dermatol., 2004, 150, 435-443
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
毛髪の白化に対抗し、毛髪の色素沈着の回復をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願人は、3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体が、メラノサイト中のGSHのレベルを増大させるその能力によって、毛髪の白化に対抗し、毛髪の色素沈着の回復をもたらすことを実証した。
【0013】
特に、本発明の主題は、白髪の進行を防止又は制限又は停止させることを可能にし、頭髪及び/又は体毛の自然な色素沈着を維持及び/又は促進する薬剤としての、3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体、から選択される少なくとも1つの化合物の使用に関する。
【0014】
3H−1,2−ジチオール−3−チオン(D3T)及びアネトールジチオールチオン(anethole dithiolethione; ADT)は、GSHのレベルを増大させることが記載されたジチオールチオン類の群からの化合物である(それぞれ、Cuao, Z., et al., BBRC, 317, (2004), 1080-1088、及びWarnet, et al., J.M. Pharmacol Toxicol., 1989, 65(1), 63-4)。
【0015】
イソチオシアネート(ITC)から誘導される化合物:
− スルホラファン:
【化1】

及びブロッコリー中に天然に存在するそのグルコシノレート誘導体(グルコラファニンとしても公知である);
【化2】

− フェネチルイソチオシアネート:
【化3】

及びそのグルコシノレート誘導体(グルコナスツリイン(gluconasturiin)):
【化4】

− 6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネートは、わさび根中に存在するスルフォラファンの誘導体である;
− アリルイソチオシアネート(3−イソチオシアネート−1−プロペン);
【化5】

は、GSHのレベルを高めることについて文献中に記載されている(Ye, et al., Carcinogenesis, 2001, Vol. 22, No. 12, pp. 1987-1992)。
【0016】
本発明の1つの変形では、植物(Brasica)中に天然に存在するITC誘導体(これらは通常、グルコシノレート誘導体である)を用いることが好ましい。
【0017】
特に、本発明の主題は、白髪の進行を予防及び/又は制限及び/又は停止するための、3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体、から選択される少なくとも1つの化合物の使用に関する。
これらの化合物は混合物としても使用することができる。
【0018】
本発明の主題は、グレーの頭髪及び/又は体毛の自然な色素沈着を維持するための、3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体、から選択される少なくとも1つの化合物の使用にも関する。
【0019】
本発明の1つの主題は、化粧品として許容可能な媒体中に、3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体、から選択される少なくとも1つの化合物を、頭皮の落屑性状態に対抗するための薬剤から選択される他の1種の活性剤及び/又は色素沈着強化活性を有する植物抽出物と組み合わせて含む、白髪に対抗するための組成物にも関する。
【0020】
本発明は、化粧品として許容可能な媒体中に、3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体、から選択される少なくとも1つの化合物を、毛髪の喪失を遅延させ又は毛髪の再成長を促進する薬剤と組み合わせて含む、白髪に対抗するための組成物にも関する。
【0021】
本発明の組成物は、3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体、から選択される少なくとも1つの化合物を、組成物の総重量に対して0.001〜10重量%、好ましくは組成物の総重量の0.01〜5%、さらに好ましくは組成物の総重量に対して0.1〜1%の量で含む。
【0022】
本発明の組成物は、経口的手段によって投与され、又は皮膚(毛髪で覆われている身体の全ての皮膚領域におよぶ)及び/又は頭皮に局所的に適用してもよい。
【0023】
経口的手段によって、本発明の組成物は、3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体、から選択される1又は複数の化合物を、食用液体溶液、例えば、任意選択により香味付けしてもよい水性又は水−アルコール性溶液の中に含んでもよい。これらの化合物は、体内摂取可能な固体賦形剤中に組み込まれてもよく、例えば、顆粒剤、丸薬、錠剤、又は糖衣錠の形態であってよい。それらの化合物はまた、体内摂取可能なカプセル中にそれ自体が任意選択でパッケージされた食用液体中に溶解してもよい。
【0024】
投与の方法に応じて、本発明の組成物は、通常用いられる、特に美容術において用いられる任意の製剤形態であることができる。本発明の好ましい組成物は、頭皮及び/又は皮膚への局所適用のために適した化粧品組成物である。
【0025】
局所適用のためには、本発明にしたがって用いることのできる本組成物は、特に、水性、水−アルコール性、又は油性の溶液、又はローションもしくは美容液タイプの分散液;水性相中への脂肪相の分散(O/W)、又はその逆(W/O)の分散によって得られる乳液タイプの液体もしくは半液状の稠度を有するエマルション;水性もしくは非水性クリームもしくはゲルタイプの柔らかな稠度を有する懸濁液もしくはエマルション;または、マイクロカプセルもしくは微粒子;又はイオン性及び/又は非イオン性タイプのベシクル分散液、の形態であってよい。したがって、本組成物は、軟膏、染色剤、クリーム、ポマード、粉剤、貼付剤、含浸パッド、溶液、エマルションもしくはベシクル分散液、ローション、ゲル、スプレー剤、懸濁液、シャンプー、エアロゾル、又は泡剤(フォーム)の形態であってよい。これらは無水又は水性であってよい。本組成物は、石鹸もしくはクレンジングスティックを形成する固体製剤からなっていてもよい。
これらの組成物は通常の方法にしたがって調製される。
【0026】
本発明にしたがって用いることができる組成物は、特に、ヘアケア用組成物、特にシャンプー、セットローション、トリートメントローション、ヘアスタイリングクリームもしくはゲル、任意に着色用シャンプーの形態であってよい染色用組成物(特に酸化染料組成物)、毛髪用の再構築ローション、又はマスクであってよい。
【0027】
本発明の化粧品組成物は、好ましくは、クリーム、ヘアローション、シャンプー、又はコンディショナーである。
【0028】
本発明にしたがって用いることができる本組成物の様々な成分の量は、考慮している分野で従来用いられている量である。
【0029】
本発明にしたがって用いることができる組成物がエマルションである場合は、脂肪相の割合は、組成物の総重量に対して5〜80重量%、好ましくは5〜50重量%である。エマルションの形態の本組成物中で用いられるオイル類、ワックス類、乳化剤、及び共乳化剤は、化粧品分野で従来用いられているものから選択される。乳化剤及び共乳化剤は、本組成物中に、本組成物の総重量に対して0.3〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%の範囲の量で存在する。このエマルションは、さらに、脂質小胞(脂質ベシクル)を含むことができる。
【0030】
本発明にしたがって使用できる組成物が油性ゲル又は油性溶液である場合は、脂肪相は組成物の総重量の90%超で存在してよい。
【0031】
本発明の1つの変形においては、本組成物は、3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体、から選択される化合物が、ミクロスフェア、ナノスフェア、オレオソーム、又はナノカプセルなどのように、コーティング中に封入されている。このタイプの製剤は有利であることが分かっており、なぜなら、このタイプは毛包を特に標的とし、したがって活性剤をその作用部位に放出することを可能にするからである。
【0032】
例えば、ミクロスフェアは特許出願EP0375520に記載された方法にしたがって調製できる。
【0033】
ナノスフェアは水性懸濁液の形態であることができ、特許出願FR0015686及びFR0101438に記載された方法にしたがって調製できる。
【0034】
オレオソームは、水性相中に分散され、ラメラ液晶コーティングを備えた油性小球によって形成された水中油型エマルションからなる(特許出願EP0641557及びEP0705593を参照されたい)。
【0035】
3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体、から選択される化合物は、シリコーン界面活性剤から得られるラメラコーティングからなるナノカプセル中に封入されていることもでき(特許出願EP0780115を参照されたい)、このナノカプセルは、水に分散性のスルホン酸ポリエステルに基づいて調製することもできる(特許出願FR0113337を参照されたい)。
【0036】
3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体、から選択される化合物は、その粒径にかかわらず、カチオン性油性小球の表面に複合化されることもできる(特許出願EP1010413、EP1010414、EP1010415、EP1010416、EP1013338、EP1016453、EP1018363、EP1020219、EP1025898、EP1120101、EP1120102、EP1129684、EP1160005、及びEP1172077を参照されたい)。
【0037】
3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体、から選択される化合物は、最終的には、ラメラコーティングを備え、その表面にカチオン性界面活性剤(カチオン性界面活性剤について上述した参考文献を参照されたい)を含むナノカプセルもしくはナノ粒子と複合化されて(EP0447318及びEP0557489を参照されたい)、。
【0038】
特に、組成物は、3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体、から選択される化合物を含むコーティングが10μm以下の直径を有するような組成物が好ましい。コーティングが球形ベシクルを形成しない場合は、直径はベシクルの最大径を意味するものと理解される。
【0039】
既知の方法で、本発明の組成物は、化粧品分野で通常のアジュバント、例えば、親水性又は親油性ゲル化剤、親水性又は親油性添加剤、保存料、抗酸化剤、溶媒、香料、フィラー、スクリーン剤、匂い吸収剤、及び着色物質などを含むこともできる。これら様々なアジュバントの量は、化粧品分野で通常用いられる量であり、例えば、組成物の総重量に対して0.01%〜10%である。これらのアジュバントは、それらの種類に応じて、脂肪相中、水相中、及び/又は脂質小球中に導入されうる。
【0040】
本発明にしたがって用いることができる組成物は、3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体、から選択される少なくとも1つの化合物を、その他の活性剤と組み合わせることができる。それらの活性剤の中では、例として、以下のものが挙げられる:
− 皮膚細胞の分化及び/又は増殖及び/又は色素沈着を調節する薬剤、例えば、レチノール及びそのエステル、ビタミンD及びその誘導体、エストラジオールなどのエストロゲン、POMC誘導体などのcAMPモジュレーター、アデノシン、フォルスコリン及びその誘導体、プロスタグランジン及びその誘導体、トリヨードトリオニン及びその誘導体;
− 植物抽出物、例えば、Iridaceae(アヤメ科)又は大豆からのもの、イソフラボン類を含むか又は含まない抽出物;
− 微生物からの抽出物;
− フリーラジカル捕捉剤、例えば、α−トコフェロール又はそのエステル類、スーパーオキシドジスムターゼ又はそれ同様のもの、金属キレート剤又はアスコルビン酸及びそのエステル;
− 抗脂漏性剤、例えば、ある種のイオウ含有アミノ酸類、13-シス-レチノイン酸、酢酸シプロテロン;
− 頭皮の落屑性状態に対抗するためのその他の薬剤、例えば、ジンクピリチオン、セレニウムジスルフィド、クリンバゾール、ウンデシレン酸、ケトコナゾール、ピロクトンオラミン(オクトピロックス)又はシクロピロクトン(シクロピロックス);
特に、再成長を刺激し及び/又は毛髪の喪失の減速を促進する活性剤であってよく、限定されるものではないが特に以下のものが挙げられる:
− ニコチン酸エステル類、特に、トコフェリルニコチネート、ベンジルニコチネート、及びC〜Cアルキルニコチネート類、例えば、メチル又はヘキシルニコチネート;
− ピリミジン誘導体、例えば、2,4-ジアミノ-6-ピペリジノピリミジン3−オキシドもしくは米国特許第4139619号明細書及び同4596812号明細書に記載された「ミノキシジル」;WO96/09048中に記載されているアミネキシル又は2,4-ジアミノピリミジン3−オキシド;
− 毛髪の再成長を促進する、リポオキシゲナーゼ阻害剤又はシクロオキシダーゼ誘導剤、例えば、欧州特許出願EP0648488に本出願人が記載したもの;
− 抗菌剤、例えば、マクロライド類、ピラノシド類、及びテトラサイクリン類、特に、エリスロマイシン;
− カルシウムアンタゴニスト、例えば、シンナリジン、ニモジピン、及びニフェジピン;
− ホルモン類、例えば、エストラジオール又は同様のもの、あるいはチロキシン及びその塩類;
− 抗男性ホルモン剤、例えば、オキセンドロン、スピロノラクトン、ジエチルスチルベストロール、及びフルタミド;
− 5-α-リダクターゼのステロイド又は非ステロイド阻害剤、例えば、本出願人が欧州特許出願EP0964852及びEP1068858に記載したもの、又はフィナステリド;
− ATP依存性カリウムチャネルアンタゴニスト、例えば、クロマカリム及びニコランジル;並びに
− 色素沈着強化活性をもつ植物抽出物、例えば、FR2768343に記載されたキク抽出物、及びFR2782920に記載されたSanguisorba(ワレモコウ)抽出物。
【0041】
3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体、から選択される化合物は、頭皮の落屑性状態に対抗するための薬剤、毛髪の喪失を鈍化させ又は毛髪の再成長を促進する薬剤、色素沈着強化活性を有する植物抽出物、から選択される少なくとも1種の他の毛髪活性剤と組み合わされることが好ましい。
【0042】
本発明の別の主題は、3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体、から選択される少なくとも1つの化合物を含む上で定義した組成物を、処置する領域に投与又は適用することを特徴とする、白髪の美容処置方法に関する。
【0043】
本発明はまた、白髪の治療において使用するための、3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体、から選択される化合物に関する。
【0044】
本発明はまた、3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体、から選択される少なくとも1つの化合物を含む上で定義した組成物を、処置する領域に投与又は適用することを特徴とする、グレー又は白い頭髪及び/又は体毛の自然な色素沈着を維持するための美容処置方法にも関する。
【0045】
白髪の治療、及びグレー又は白い頭髪及び/又は体毛の色素沈着のための方法は、3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体、から選択される少なくとも1つの化合物を含む組成物を摂取することからなってもよい。
【0046】
処置する領域は、例えば、制限されるものではないが、頭皮、眉毛、口ひげ及び/又は顎髭、並びに毛髪で覆われた皮膚の全ての領域であってよい。
【0047】
より詳細には、白髪の美容処置方法、並びにグレー又は白い頭髪及び/又は体毛の自然な色素沈着の方法は、3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体、から選択される少なくとも1つの化合物を含む組成物を適用することである。
【0048】
白髪に対抗するための美容処置方法及び/又はグレーもしくは白い頭髪及び/又は体毛の自然な色素沈着を維持するための美容処置方法は、例えば、本組成物を毛髪及び頭皮に晩に適用するステップ、夜通し本組成物をそのまま保ち且つ朝に任意にシャンプーをしてもよいステップ、あるいは、毛髪を本組成物で洗浄し、ここでもすすぐ前に数分間、本組成物を接触させておくステップ、からなることができる。本発明の組成物は、それを任意に洗い流してもよいヘアローションの形態、又はシャンプーの形態で適用することが特に有利であることが判明している。
【0049】
〔実施例〕
(実施例1:本発明に係る有用な化合物の活性の実証)
1−A−1.培養された正常ヒトメラノサイト(NHM)において、Hストレスによって発生する活性酸素種(reactive oxygen species: ROS)の測定プロトコル
正常ヒトメラノサイト(NHM)を4×10細胞/cmの密度でD0において播種した。D1において、培地をPBS (H2DCFDA, C2938, Molecular Probes)中の6-カルボキシ-2’,7’-ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート、ジ[アセトキシメチルエステル]、の10μM溶液と交換した。20分後、このH2DCFDA溶液を培地と交換した。H溶液(250μM)を添加する前の30分間、NHMをそのままにしておいた。蛍光を、フルオロスキャン(励起:485nm、発光:538nm)で15分後に測定した。
【0050】
試験した化合物はそれらの特性に応じて用いた(濃度、予備インキュベーション時間)。N−アセチルシステイン(A9165-Sigma)を参照分子として用いた。メラノサイトは、H2DCFDA(PBS中10μM)と20分間接触させる前に、培地中の試験化合物と、37℃で12時間/18時間、前処理した。次にH2DCFDA溶液を、試験する活性剤を含有する培地と交換した。30分間インキュベーションした後、培地中の250μMのHの添加によって、酸化的ストレスを引き起こさせた。蛍光を、フルオロスキャン(励起:485nm、発光:538nm)で15分後に測定した。
【0051】
1−A−2.結果
結果は、蛍光単位(fu)で示され、代表試験時に得られた未補正の蛍光データを示し、このデータから「ブランク」細胞の自己蛍光値が差し引かれる(図1を参照されたい)。活性酸素種の減少が、D3T及びADTの存在下で実際に観察される。
【0052】
1−B−1.生存率測定のためのプロトコル(毒性制御)
正常ヒトメラノサイト(NHM)をD0において4×10細胞/cmの密度で播種した。細胞の接着後(3h)、試験化合物を培地に添加した。24h〜48h後、Alamar Blue (UP669413 UPTIMA, Interchim)を用いて、その供給者の指示書に従い、細胞生存率を測定した。
【0053】
1−B−2.結果
結果は、代表試験(3重測定)(2つの独立した試験を実施)に対して得られ、かつ、試験した活性剤の濃度(μM)の関数として、a%蛍光曲線の形で表される蛍光シグナルパーセント割合を示す。結果を図2に示す。
【0054】
1−C−1.ドーパミンストレス後の、培養正常ヒトメラノサイト(NHM)の生存率に対する3H−1,2−ジチオール−3−チオン(D3T)の効果
正常ヒトメラノサイト(NHM)をD0において4×10細胞/cmの密度で播種した。細胞の接着後(3h)、試験する活性剤を培地に添加した。2時間後、ドーパミンを培地に添加し、ストレスを開始した。D3にて、Alamar Blue (UP669413 UPTIMA, Interchim)を用いて、その供給者の指示書に従い、細胞生存率を測定した。
【0055】
1−C−2.結果
【表1】

【0056】
結果を図3に示す。ADTは、参照化合物であるN−アセチルシステインよりも優れた効果をもって、細胞の生存率を増大させることが認められる。
【0057】
〔実施例2−組成物〕
【表2】

【0058】
このローションを、処置すべき領域に、好ましくは頭皮の全体に、少なくとも10日、好ましくは1〜2ヶ月間、毎日適用した。白又はグレーの毛髪の外観の低減と、グレーの毛髪の再色素沈着が認められた。
【0059】
【表3】

【0060】
このシャンプーを、約1分間の暴露時間で各洗浄において用いた。約2ヶ月の長期使用は、白髪の鈍化をもたらし、グレーの毛髪の漸進的な再色素沈着をもたらした。
このシャンプーは、毛髪の白化を遅延させるために予防的措置として使用することもできる。
【0061】
【表4】

【0062】
このゲルは、処理する領域に1日2回(朝と夕)、最後にマッサージを行って適用した。3ヶ月の適用後、処置した領域の体毛又は頭髪の再色素沈着が認められた。
【0063】
【表5】

【0064】
3個のカプセルを1日当たり摂取してよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、正常ヒトメラノサイト(NHM)に対するD3Tの効果(Hによって引き起こされる活性酸素種(ROS)の測定)、及び正常ヒトメラノサイト(NHM)に対するADTの効果(Hによって引き起こされる活性酸素種(ROS)の測定)を示した図である。
【図2】図2は、正常ヒトメラノサイト(NHM)に対するD3Tの効果(生存率の測定)、及び正常ヒトメラノサイト(NHM)に対するADTの効果(生存率の測定)を示した図である。
【図3】図3は、ドーパミンによって引き起こされるストレスへのADTの効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白髪の進行を防止及び/又は制限及び/又は停止させるための、3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体、並びにそれらの混合物、から選択される少なくとも1つの化合物の美容のための使用。
【請求項2】
グレーの頭髪及び/又は体毛の自然な色素沈着を維持及び又は回復させるための、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記化合物が、局所的手段又は経口的手段によって投与されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
化粧品として許容可能な媒体中に、3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体、並びにそれらの混合物、から選択される少なくとも1つの化合物を、頭皮の落屑性状態に対抗するための薬剤から選択される1つの他の活性剤及び/又は色素沈着強化活性を有する植物抽出物と組み合わせて含む、化粧品組成物。
【請求項5】
化粧品として許容可能な媒体中に、3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体、並びにそれらの混合物、から選択される少なくとも1つの化合物を、毛髪の喪失を鈍化させ又は毛髪の再成長を促進する薬剤と組み合わせて含む、化粧品組成物。
【請求項6】
前記化合物が、ミクロスフェア、ナノスフェア、オレオソーム、又はナノカプセルなどのコーティング中に封入されていることを特徴とする、請求項4又は5に記載の化粧品組成物。
【請求項7】
頭皮及び/又は毛髪で覆われている皮膚領域への局所適用に適していることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項8】
3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン、スルホラファン、フェネチルイソチオシアネート、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びそれらの誘導体、並びにそれらの混合物、から選択される少なくとも1つの化合物を含む組成物を、経口投与するか又は処置すべき領域に局所適用することを特徴とする、白髪の美容処置方法。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−1694(P2008−1694A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−161728(P2007−161728)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】