説明

皮下組織部位へ減圧を適用する膜、システム、及び方法

ここに述べた実施例は、皮下組織部位に減圧を適用する装置、システム及び方法に関する。一の実施例では、この装置が、ほぼ均一な膜壁厚と、組織に対向する第1の面とを有する。膜は、組織に対向する面上に複数の突起を形成する形をしている。複数の突起は、組織に対向する面に沿って減圧を送るよう動作可能な少なくとも一のチャネルを少なくとも部分的に規定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本出願は、2008年12月24日に出願された米国暫定特許出願第61/140,657号の利益を主張する。この出願は、ここに参照により組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
技術分野
本出願は、一般的に医療システムに関し、特に、皮下組織部位へ減圧を適用する膜、システム、及び方法に関する。
【0003】
関連技術の説明
臨床研究と診療は、組織部位近傍に減圧を提供することが、その組織部位において新しい組織の成長を増進及び促進することを示している。この現象の適用は数多くあるが、減圧の一つの特別な適用には創傷治療が含まれる。この治療(医学界では、頻繁に、「負圧創傷治療」、「減圧治療」、又は「真空治療」と呼ばれる)は、上皮及び皮下組織の移動、血流の改善、創傷部位における組織の微細な変形を含む、多くの利点を提供する。併せて、これらの利点は、肉芽組織の良好な発達とより速い回復時間をもたらす。典型的には、減圧は、減圧源によって多孔性パッドやその他のマニフォールドデバイスを介して組織に適用される。多くの場合、創傷の滲出液や組織部位からのその他の液体をキャニスタに回収して、減圧源に液体が届かないようにしている。
【発明の概要】
【0004】
現存の減圧システムにより提示されている問題は、ここに記載した実施例のシステム及び方法によって解決される。一の実施例では、組織部位に減圧を適用するシステムが提供されている。このシステムは、減圧を供給するように動作可能な減圧源と、組織に対向する第1の面上に複数の突起と、第2の面上にほぼ整合する複数の凹みを有する膜を具える。複数の突起は、この組織に対向する面に沿って減圧を送るように動作可能な少なくとも一のチャンネルを少なくとも部分的に規定している。このシステムは更に、膜に連結された送達チューブを具える。この送達チューブは、膜の組織に面した面に減圧を送達するように動作可能である。
【0005】
別の実施例では、組織部位に減圧を適用するシステムが提供されている。このシステムは、減圧を供給するように動作可能な減圧源と、膜の対向する側部に、複数の非平面の整合する偏差を有する膜を具える。この膜は、膜の組織に対向する第1の側部に沿って減圧を送るように動作可能な少なくとも一のチャネルを具える。送達チューブは膜に連結されており、膜の組織に対向する面へ減圧を送達するように動作可能である。
【0006】
別の実施例では、減圧を皮下組織部位に適用するシステムが減圧を供給するように動作可能な減圧源と、ほぼ均一な膜壁厚を有する膜を具える。この膜は、組織に対向する第1の面を具え、当該組織に対向する面上に複数の突起を形成するような形をしている。複数の突起は、組織に対向する面に沿って減圧を送るように動作可能な少なくとも一のチャネルを少なくとも部分的に規定している。送達チューブが膜に連結されており、膜の組織に対向する面に減圧を送達するように動作可能である。
【0007】
更なる実施例では、減圧を皮下組織部位に適用する装置がほぼ均一な膜壁厚と、組織に対向する第1の面を有する膜を具える。この膜は、組織に対向する面上に複数の突起を形成する形をしており、この複数の突起は少なくとも部分的に、組織に対向する面に沿って減圧を送るように動作可能な少なくとも一のチャネルを具える。
【0008】
更なる実施例では、減圧を皮下組織部位に適用する方法が、皮下組織部位に膜を適用するステップを具える。この膜は、ほぼ均一な膜壁厚と、組織に対向する第1の面を有する膜を具える。この膜は、組織に対向する面上に複数の突起を形成する形をしており、複数の突起は、組織に対向する面に沿って減圧を送るように動作可能な少なくとも一のチャネルを少なくとも部分的に規定している。この方法は更に、膜に連結された送達チューブを介して、膜の組織に対向する面に減圧を供給するステップを具える。
【0009】
更なる実施例では、減圧を皮下組織部位に適用する装置を製造する方法が、ほぼ均一な膜壁厚と、組織に対向する第1の面を有する膜を形成するステップを具える。この膜は、組織に対向する面に複数の突起を形成する形をしている。複数の突起は、組織に対向する面に沿って減圧を送るように動作可能な少なくとも一のチャネルを少なくとも部分的に規定している。
【0010】
図に示す実施例のその他の目的、特徴及び利点は、図面と以下の詳細な説明を参照して明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】図1Aは、一実施例による組織部位に減圧を適用する減圧治療システムの概略図である。
【図1B】図1Bは、図1Aの減圧システムの一部の1B−1B線に沿った断面図である。
【図2】図2は、一実施例による組織部位へ減圧を提供する膜又はマニフォールドの平面図である。
【図3】図3は、図2に示す膜の斜視図である。
【図4】図4は、図2の膜の4−4線に沿った断面図である。
【図5】図5は、一実施例による組織部位に減圧を適用する膜又はマニフォールドの平面図である。
【図6】図6は、図5に示す膜の6−6線に沿った断面図である。
【図7】図7は、一実施例による組織部位に減圧を適用する膜又はマニフォールドの平面図である。
【図8】図8は、一実施例による組織部位に減圧を適用する膜又はマニフォールドの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
いくつかの実施例についての以下の詳細な説明では、説明の一部を成している添付図面に符号が付されている。図面には、発明を実施するのに特に好ましい実施例によって発明が示されている。これらの実施例は、当業者が本発明を実施できるように十分詳細に示されており、その他の実施例を用いることができ、論理構造的、機械的、電気的、及び化学的変更を、発明の精神又は範囲から外れることなく行うことができると解するべきである。当業者がここに示す実施例を実施するのに不要な詳細を省くために、当業者に知られている情報は記載を省略している。従って、以下の詳細な説明は、限定の意味にとることなく、実施例の範囲は特許請求の範囲のみで規定される。
【0013】
ここで用いられている用語「減圧」は、一般的に、治療を受けている組織部位における周囲圧力より低い圧力をいう。ほとんどの場合、この減圧は、患者が位置している所の大気圧より低いであろう。代替的に、減圧は、組織部位における組織に関連する静水圧より低い圧力を言うことがある。用語「真空」及び「負圧」は、組織部位に当てる圧力を記載するのに使用できるが、組織部位に適用する実際の圧力は、通常完全な真空に使われる減圧より有意に低い。減圧が初期に組織部位のこの領域で流体を作ることがある。組織部位周辺の静水圧が所望の減圧に近くなると、流量が低下し、減圧が維持される。特に表示がない限り、ここで述べる圧力の値はゲージ圧である。同様に、減圧の上昇に対する引用は通常絶対圧力の低下を意味し、一方、減圧の低下は通常絶対圧力の上昇を意味する。
【0014】
図1A及び1Bを参照すると、組織部位105へ減圧を適用する減圧治療システム100が実施例に従って示されている。図1Aに示す実施例では、組織部位105が骨組織部位であり、特に、組織部位105は大腿骨として示されている骨112の骨折部位である。骨組織の成長を促進するために使用する場合は、減圧治療は、骨折、癒着不能、ボイド、あるいはその他の骨疾患に関連する治癒速度を上げることができる。減圧治療を用いて、骨髄炎からの回復を改善することもできる。この治療は、更に、骨粗鬆症を患っている患者の局所的骨密度を上げることもできる。更に、減圧治療を用いて、腰のインプラント、膝のインプラント、及び固定器具などの整形外科インプラントのオッセオインテグレーションのスピードを上げて改善することができる。
【0015】
組織部位105は骨組織であるが、ここで使用されている「組織部位」の用語は、限定するものではなく、骨組織、脂肪組織、筋肉組織、神経組織、皮膚組織、脈管組織、結合組織、軟骨、腱、あるいは靭帯を含むなんらかの組織上又は組織内にある創傷あるいは欠陥を意味する。「組織部位」の用語は、必ずしも創傷を受けたあるいは欠陥のある部位でなくとも、更なる組織の成長を追加あるいは促進することが望まれる領域である、何らかの組織の領域を意味する。例えば、減圧組織治療は、採取して別の組織位置へ移植される追加の組織を成長させるために所定の組織領域で使用することができる。
【0016】
図1を参照すると、減圧治療システム100は、減圧源110と、組織部位105に位置する減圧ドレッシング115を具える。一の実施例では、減圧ドレッシング115は、組織部位105などの皮下組織部位に配置した膜又はマニフォールド170を具えていても良い。表面創傷又は外科的技術あるいは直接的視覚化技術を介してアクセスした創傷に減圧を適用する別の実施例では、減圧ドレッシング115が、膜170の上に配置するカバーを具えていても良い。以下により詳細に説明するこのカバーを用いて、組織部位において膜170をシールして、組織部位105で減圧を維持することができる。減圧ドレッシング115は導管118を介して減圧源110に流体連結されており、キャニスタ140はこの導管118に流体連結して、組織部位105からの滲出液あるいは吸い取ったその他の液体を減圧源110によって受けるようにしても良い。導管118はどのようなチューブでもよく、これを通ってガス、液体、ゲル、あるいはその他の流体が、以下に詳細に述べるように流れる。
【0017】
膜170は、組織部位105に接触するあるいは組織部位105を覆うように構成されている。ここで用いられているように、用語「覆う」は、部分的にあるいは全体を覆うことを含む。また、第2の物体を覆う第1の物体は、第2の物体に直接的に又は間接的に接触していても良く、あるいは第2の物体に全く触れていなくとも良い。
【0018】
一の実施例では、膜170は、膜170を曲げて組織部位105に合わせるように、柔軟材料でできていても良い。図1A及び1Bの例では、膜170が組織部位105の輪郭に対して湾曲しており、膜170の組織に対向する面172が組織部位105に接触している。別の実施例では、膜170が、曲げに抵抗する硬質材料でできていても良い。柔軟な膜の場合、膜170は、減圧に露出したときにつぶれないように十分に硬質であるが、経皮的挿入及び皮下組織部位105に配置するなど、所定のアプリケーション用に相対的な柔軟性を維持している。以下に述べる更なる実施例は、膜170の組織に対向する面172上に突起及びチャネルを具えている。
【0019】
上述した通り、減圧源110で発生した減圧は、導管118を介して膜170へ提供される。特に、導管118は、減圧源110からの減圧を、治療中に膜170の組織に対向する面172に送達する。導管118は、膜170に連結されていても良い。全体を通じて使用されているように、用語「連結」は、別の物体を介して連結することを含む。例えば、導管118は、導管118と膜170が一又はそれ以上の第3の物体に連結されていれば、膜170に連結されている。用語「連結」は、また、二つの物体が何らかの方法で互いに接触している「直接的な連結」も含む。用語「連結」は、また、同じ材料片からできている各部材によって互いに連続している二又はそれ以上の部材にも及ぶ。用語「連結」は、化学的結合のような、化学的連結を含む。用語「連結」は、また、第2の物体に連結されている第1の物体が、第2の物体に流体連結されている流体連結も含む。用語「連結」には、機械的、熱的、あるいは電気的連結も含まれる。「連結」されている物体は、固定であっても良く、移動可能に連結されていても良い。
【0020】
導管118は、どのような材料でできていても良く、柔軟であってもなくても良い。導管118は、流体が流れる一又はそれ以上の通路又はルーメンを具えていても良い。例えば、導管118は、二又はそれ以上のルーメンを具えており、そのうちの一つは組織部位に減圧を送達するのに用いられ、一つは組織部位105における減圧レベルを測定するのに用いられる。代替的に、ルーメンの一つを、空気、抗菌材、抗ウイルス剤、細胞成長促進剤、かん流用液体、あるいはその他の化学活性物質などの流体を組織部位105に送達するのに使用することができる。
【0021】
図1Aに示す実施例では、減圧源110が、電動真空ポンプである。別の実装では、減圧源110が、電源を必要としない手動で作動する又は手動充電式ポンプであっても良い。減圧源110は、その他のタイプの減圧源であっても良く、代替的に、病院や医療施設で使用されているような壁面吸い込みポートであっても良い。減圧源110は、減圧治療ユニット119内に収納しても良く、あるいはこのユニットと共働させて使用しても良い。このユニットは、センサ、処理ユニット、アラーム表示、メモリ、データベース、ソフトウエア、表示ユニット、及び組織部位105への減圧治療の適用を更に容易にするユーザインターフェース121を具えていても良い。一の実施例では、センサ又はスイッチ(図示せず)を減圧源110にあるいはその近くに配置して、減圧源110で発生した減圧を測定するようにしても良い。センサは、減圧源110によって送達される減圧をモニタし制御する処理ユニットと通信することができる。
【0022】
減圧治療システム100は、減圧治療システム100のその他の構成要素に動作可能に接続された減圧フィードバックシステム155を具えており、減圧治療システム100のユーザに、組織部位105へ送達されている、あるいは減圧源110によって生成されている減圧の相対量あるいは絶対量を示す情報を提供することができる。フィードバックシステムの例には、限定するものではないが、減圧が選択された値より上昇した時に稼働するポップバルブおよび、偏向ポップバルブが含まれる。
【0023】
減圧治療システム100は、キャニスタ140に存在する流体の量を検出する容量検出システム157、組織部位105から吸い取った滲出液(キャニスタ140に存在する滲出液を含む)中の血液の存在を検出する血液検出システム159、組織部位105の温度をモニタする温度モニタリングシステム162、組織部位105における感染の存在を検出する感染検出システム165、及び/又は、組織部位105から吸い出した流体の流量をモニタする流量モニタリングシステム167を具えていても良い。感染検出システム165は、バクテリアの存在で色が変化する発泡体又はその他の物質を具えていても良い。この発泡体又はその他の物質は、ドレッシング115又は導管118と動作可能に接続して、色が変化する物質を組織部位105からの滲出液に露出させるようにしても良い。上述の構成部材とシステムに加えて、減圧治療システム100は、バルブ、レギュレータ、スイッチ、及びその他の組織部位105に減圧治療を施すことを容易にする電気的、機械的、及び流体構成部材を具えていても良い。
【0024】
図2乃至4を参照すると、図に示す実施例による膜270は、組織に対向する第1の側部あるいは面272を具え、この組織に対向する第1の面272の上に複数の突起275を有する。突起275は、図2に示すようにほぼ三角形状をしているが、その他の実施例では、突起275はどのような形状でも良い。突起275は、図1Aに示す組織部位105などの皮下組織部位に接触するように動作可能である。
【0025】
膜270は、又、組織に対向する第1の面272に対向する第2の側部又は面273を具えている。一の実施例では、各突起275が第2の面273上でそれぞれ凹み276を形成している。
【0026】
突起275は、少なくとも一のチャンネルを少なくとも部分的に規定している。図2乃至4に示す実施例では、突起275がチャネル280を規定している。チャネル280は、相互に連結されており、突起275の間に形成されている。チャネル280は、角度の付いた方向あるいは対角線方向に斜めに延びるチャネル280a及び280bを具えており、図に示す実施例では、同様に横方向のチャネル280cが膜270の少なくとも一のエッジにほぼ垂直である。チャネル280は、交差部分282で交差している。突起275は、様々なパターンによるチャネルを規定する不連続壁部材を形成していても良い。図2乃至4に示す実施例では、交差部分282から6方向においてチャネルが半径方向に延びている。しかし、チャネルは、半径方向又は別の方向に、交差部分282から任意数の方向に延びていても良い。
【0027】
チャネル280は、減圧及び減圧を提供することによる流体の流れを組織に対向する第1の面272に沿って送るように動作可能である。減圧は、図1Aに示す減圧源110などの減圧源によって提供することができる。減圧は、図1Aに示す導管118などの送達チューブを介して、膜270に送達することができる。チャネル280も、膜270の組織に対向する第1の面272に沿って滲出液などの液体を送ることができる。この液体は、減圧を用いて送達チューブに引き込まれ、図1Aに示すキャニスタ140などの流体回収装置に保存される。
【0028】
送達チューブ又は導管は、膜270の組織に対向する面272に設けられた溝284に少なくとも部分的に配置することができる。例えば、溝284は、送達チューブが溝284に合致するように部分的に円形断面を有する湾曲した溝であっても良い。溝284と円筒状送達チューブ、すなわち導管118は、共働して溝284内に送達チューブを保持する締り嵌めを形成している。代替的に、この導管は接着剤あるいは別の方法で膜270に固定しても良い。溝284は、代替的に、多角形あるいは楕円形断面をそれぞれ有する送達チューブを溝284に配置することができるように、部分的に多角形あるいは楕円形の断面を有していても良い。溝284の存在は、溝284に隣接するあるいはこの溝近傍の組織に対向するこれらの面の部分も含めて、組織に対向する第1の面272をより大きな割合で組織部位に接触させることによって、組織部位の上に膜270を容易に配置することができる。一の実施例では、送達チューブが溝284を介して膜270に連結することができる。溝284は、送達チューブの少なくとも一部を受けるような形状であっても良い。溝284は、開放あるいは閉鎖経路であっても良い。
【0029】
一の実施例では、送達チューブは、溝284内に配置されている場合は、溝284の第1の端部277あるいはその近傍へ延在している。別の実施例では、送達チューブの端部は、溝284の第1の端部277と第2の端部279の間であればどこに配置しても良い。
【0030】
溝284は、膜270のエッジ286に直交するように示されているが、溝284は、エッジ286に対して角度を成す方向など、どの方向にあっても良い。溝284は、エッジ286に沿ってほぼ中央に位置するように示されているが、エッジ286に沿ったどの位置にあっても良い。溝284は、また、膜270の他のエッジに沿って配置されていても良い。別の実施例では、膜270が一以上の溝284を有していても良い。また、溝284は、膜270の長さ288と等しい長さを含めて、どのような長さであっても良い。
【0031】
膜270は、ポリマを含めて、どのような材料でできていても良い。膜270は、好ましくは生体適合性であり、生体非分解性であっても、生体分解性(あるいは生体吸収性)であっても良く、あるいはこれらの組み合わせでも良い。膜270を作ることができる非生体分解性材料の非限定的な例には、テフロン(登録商標)材料、及びその他のフルオロポリマ(熱可塑性であっても、熱硬化性であっても良い)、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、アクリル、ポリエチレン(PE)、ポリウレタン(PU)、ポリプロピレン(PP)、熱可塑性物質(前記のすべてを含む)、シリコーン、熱硬化性物質、ラテックス、浸漬材あるいは鋳込み材(ラテックス、およびPUがなり得る)、あるいはこれらの組み合わせ、が含まれる。膜270を作ることができる生体吸収性材料の非限定的な例には、PGA−ポルグリコライド、PLA−ポリアクチド、PLG−ポリ(ラクチド−共−グリコライド)又はDLPLG、PDS−ポリ(ジオキサノン)を含むPLA−PGA共ポリマ、あるいはその他の生体吸収性ポリマ、あるいはこれらの組み合わせでも良い。
【0032】
膜270は、多孔性であっても非多孔性であっても良い。多孔性膜の非限定的な例には、発泡体、及び織布あるいは不織布(マット及びフェルトを含む)が含まれる。布には、例えば、編んだフィラメントや押出フィラメントを含む様々なフィラメントを使用することができる。非多孔性膜は、例えば、鋳造、吹き付け、モールド、真空成型、浸漬、あるいは押出で作ることができる。
【0033】
膜270は、新しい細胞成長の骨格としても作用し、あるいは、骨格材料を膜270と共働して細胞成長を促進することができる。細胞成長のテンプレートを提供する三次元多孔構造などの骨格は、細胞の成長又は組織の形成を強化あるいは促進に使用される物質あるいは構造である。骨格材料の例には、リン酸カルシウム、コラーゲン、PLA/PGA、サンゴから得たヒドロキシアパタイト、炭酸塩、あるいは加工同種移植片材料が含まれる。
【0034】
膜270が生体吸収性ポリマでできている実施例では、膜270を皮下組織部位に適用することができ、そこに膜270が残ってそのうち分解する。一の実施例では、膜270は、図1Aに示す導管118などの送達チューブからインビボで剥離するように構成することができる。例えば、溝284は、膜270を組織部位に適用している間に溝284へ送達チューブを接着させる高速放出接着剤で被覆するようにしても良い。高速放出接着剤は、また、減圧治療を行う間に送達チューブを溝284に接着できる。所定の時間経過後、高速放出接着剤が送達チューブを放出して、送達チューブが組織部位領域から外れる一方で、膜270は残って組織部位で分解するようにする。
【0035】
生体吸収性材料を用いて膜270を形成する場合に、膜の質量を最小限にするかあるいは少なくとも膜全体に質量が分布するようにして、制御した生体吸収が確実に行われるようにすることが好ましい。図3及び4に示す実施例では、膜270は膜壁厚290がほぼ均一な膜壁289を有している。この膜壁厚290は、膜厚291と反対である。ほぼ均一な膜壁厚290を提供することは、膜270の各部分がほぼ同じ時間で分解するようにする(一定の生体吸収率を仮定して)一つの方法である。
【0036】
特定の膜の膜壁厚は、つねにほぼ一定ではないかもしれない。ここに述べた膜を製造する一の特定の方法は、真空形成を含む。真空形成は特に費用効率が良いが、製造技術によっては、突起部間の「低ポイント」が、突起部につながる「高ポイント」より厚くなるという結果が生じることがある。膜を浸漬プロセスで形成した場合、同様の状況が生じることがある。これらの状況では、膜壁厚はほぼ均一ではないが、膜材料の質量が良く配分されているという利点を得ることができる。上述したように、また、図4に示すように、膜270の一方の側部に形成した各突起部275について、対応する凹み276が膜270の反対側の側部に存在する。
【0037】
別の方法で述べると、膜270は、膜厚291をほぼ二分している中間平面295(図4に線で示す)に関連するものでも良い。一の実施例では、膜の一方の側部上の平面295からの偏差が、図4に示すように膜の他方の側部上の同様の偏差によって整合され、膜全体の質量分布を改善する。別の実施例では、この膜は、中間平面に関連していなくとも良いが、膜の対向する側部の偏差を整合させる非平面を具えていても良い。整合した偏差は、通常は、形状とサイズが同じ(まったく同じである必要はない)であり、互いに対して、側部においてポジティブに延在する構造が、対向する側部においてネガティブに延在する構造に対応するように、配置されている(例えば、突起と凹み)。
【0038】
膜の対向する側部上の整合したあるいは同様の偏差の存在は、一方の側部に突起が延在するほぼ平面のシートを具える膜と異なる。ほぼ整合した偏差、又は、ほぼ整合した突起と凹みによって、膜の各側部において組織に適用する力のパターンをカスタマイズすることができる。多孔性膜材料を用いる、膜内に開口を提供する、あるいは、膜の各側部に送達チューブ又は導管を設ける、のいずれかによって、膜270の両側に減圧を連通させることができる。
【0039】
一の実施例では、膜の一方の側部上の組織を、膜の他方の側部上の組織と異なる力パターンに露出させることが望ましい。通常、突出部が存在する中で減圧に組織を露出させると、組織が突出部に対して引っ張られるときにその組織が圧縮力にさらされる。凹み近傍で減圧に露出された組織は、通常、組織が延びて凹みの中に引っ張られるときに、引張力を経験する。しかしながら、これらの組織領域がチャンネル内にあるいは突起間の凹部に引っ張られると、膜の「突出部」側の所定の組織領域も引張力にさらされることになる。同様に、チャネル又は凹部は、膜の「凹み」上の突起に同様に作用し、これによって、凹み間の領域近傍の組織を圧縮力にさらすことになる。
【0040】
突起と凹みのジオメトリは、高くなったあるいは低くなった組織の圧縮、あるいは高くなったあるいは低くなった組織の張力に応じて選択される。突起がシャープであるほど、小さい領域の圧力が高くなるが、突起が広いほど、より大きい領域に圧力を配分できる。同様に、凹みが大きいほど、組織に見られる張力が大きくなる。これらの効果は、ジオメトリと同様に組織の機械的特徴に依存する。膜の一方の側部上の突起は、よりシャープに規定されたあるいは先がとがった形状であっても良く、これらの各突起に対応する凹みは、より丸いあるいは鈍くなるような形状であっても良い。同様に、突起は、より広くあるいは丸い形状であっても良く、凹みはよりシャープな形状として、膜の各側部上の組織に適用する力のプロファイルを更にカスタマイズするようにしても良い。
【0041】
膜の各側部に異なる力パターンを適用できる実施例について説明したが、膜は、膜の各側部上でほぼ対称的な力配分となるように設計することもできる。例えば、形状とサイズが同様であり、突起(膜の各側部上の)間に凹みを有する膜の各側部にオフセット突起を設けるようにしても良い。この構成の一例としては、突起と凹みがほぼ正弦曲線を描く断面プロファイルによって各側部上に規定されている膜を設けるようにしても良い。他の対称的な力配分の例もまた可能である。
【0042】
膜の一方の側部上の偏差を膜の他方の側部上の偏差(例えば、各突起に関連する凹み)に整合させることは、かならずしもほぼ均一な膜壁厚を必要としないことは自明である。むしろ、膜壁厚の変化が生じることがある。いずれの場合も、整合したあるいは同様の偏差が、膜材料の質量をより均等に配分する助けになっている。この質量のより均等な配分は、生体吸収性材料を用いる場合に、膜の吸収を制御する助けとなる。
【0043】
また、膜270を作っている生体吸収性材料は、抗生物質あるいは成長ファクタを含むものでも良い。抗生物質又は成長ファクタは、膜270が分解するときに組織部位で放出される。一の実施例では、抗生物質又は成長ファクタが埋め込まれている生体吸収性材料を選択して、抗生物質又は成長ファクタが所定の速度で放出されるようにしている。例えば分解速度が比較的遅い生体吸収材料は、埋め込んだ抗生物質又は成長ファクタが比較的遅い速度で組織部位において放出されるように選択される。
【0044】
別の実施例では、膜270が、例えば、金、プラチナ、あるいはPt/Irなどの合金といった、放射線不透過性材料でできた放射線不透過性マーカ299を具えていても良い。一例では、この放射線不透過性マーカ299は、個別の金属性放射線不透過性マーカであっても良い。放射線不透過性マーカ299は、どのような方法で膜270に適用しても良い。例えば、放射線不透過性マーカ299は、膜270に接着、プリント、あるいはペイントすることができる。放射線不透過性マーカ299は、膜270のいずれの場所に位置していても良い。放射線不透過性マーカ299は、X線を用いた膜270の検出を容易にすることができる。一例では、放射線不透過性マーカ299は、生体分解性材料でできた膜が分解したかどうかを調べるのに役立つ。膜270は、透明であっても、不透明であっても良く、あるいは透明性と不透明性の両方を有していても良い。
【0045】
別の例では、膜270は、膜を形成するのに用いた樹脂あるいは材料中に、硫酸バリウムあるいは炭酸ビスマスなどの放射線不透過性化合物を含むものであっても良い。このような放射線不透過性化合物を用いて、放射線不透過性マーカ299を作ることもできる。膜270あるいは放射線不透過性マーカ299ができている放射線不透過性材料は、選択的に、本体が容易に吸収、分解、あるいは排出できる化合物(例えば、ヨウ素あるいはヨウ素化合物)を含んでいても良い。放射線不透過性材料はまた、キレートガドリニウムなどの、磁気共鳴映像法(MRI)によって可視である化合物を含むものでも良い。
【0046】
膜270は、どのような膜壁厚290を有していても良く、この厚さ290は、所望の効果を達成するように選択することができる。例えば、膜270が吸収される前に膜270に特定の期間(T)が必要な場合、及び、材料の生体吸収率が高い場合は、膜壁厚290を大きくして、この所望の期間(T)を達成することができる。あるいは、材料の生体吸収率が比較的低い場合、小さい膜壁厚290を使用して所望の期間(T)を達成することができる。別の例として、膜270に所定の所望の柔軟性が必要な場合、及び、膜壁厚290が形成されている材料が比較的硬い場合、比較的薄い膜壁厚290を用いて、所望の柔軟性を達成することができる。あるいは、膜壁厚290を作っている材料が比較的柔軟な場合は、より厚い膜壁厚290を用いて、所望の柔軟性を達成する。例えば、吸収率、厚さ、及び硬さといった、材料の変量と特性を制御することは、治療レベルの減圧にさらされたときにくずれる抵抗が必要であり、特定の期間が所望される臨床的状況に特に適用可能である。
【0047】
膜270が生体吸収性材料でできている実施例では、膜270の膜壁厚290を選択して、膜270が吸収されるのに必要な時間長を調整することができる。別の実施例では、膜270の膜壁厚290を選択して、膜270が含有する抗生物質あるいは成長ファクタの量を調整することができる。別の実施例では、膜270の膜壁厚290を選択して、膜270の表面積対体積比を調整し、膜270が吸収する速度を変更するようにしても良い。上述した通り、膜壁厚は、膜全体に亘ってほぼ均一(すなわち、ほぼ同じ厚さ)であっても良いし、そうでなくても良い。一実施例では、膜270はポリプロピレンで形成されており、0.005インチ乃至0.050インチの範囲、より好ましくは、0.010インチ乃至0.040インチの範囲、より好ましくは、0.015乃至0.025インチの範囲、及び特に、0.020インチの膜壁厚290である。別の実施例では、膜壁厚290は、壁厚290が例えば、チャネル280a、280b、及び280cに沿ってより厚く、突起275においてより薄くなるように、膜全体に亘って変化しても良い。
【0048】
一の実施例では、皮下組織部位に減圧を適用する方法が、膜270などの図に示す実施例に記載されているような膜を皮下組織部位に適用するステップを具えていても良い。膜270は、膜270の組織に対向する第1の面272が皮下組織部位に面するように皮下組織部位に適用されている。組織に対向する第1の面272は、皮下組織部位に直接あるいは間接的に接触している。一実施例では、膜270を皮下組織部位に適用するステップが、曲げる、巻く、巻きをほどく、あるいは膜270の形状を変化させるステップを具えており、膜270の経皮的挿入又は皮下への配置を容易にすることができる。
【0049】
この方法は、また、膜270の組織に対向する第1の面272に、膜270に連結されている図1Aに示す導管118などの送達チューブを介して減圧を提供するステップを具える。減圧は、図1Aに示す減圧源110などの減圧源からのものである。一実施例では、この方法がまた、治療中にこの減圧を膜270の組織に対向する第1の面272に沿って送り出すステップを具える。例えば、減圧はチャネル280を介して少なくとも部分的に送られ、この例では、チャネル280によって形成されるスペースと組織部位が、減圧を送る経路を形成している。多孔材料を用いて膜270を形成している実施例では、膜270自体を介して部分的に減圧を送るようにしても良い。
【0050】
一実施例では、皮下組織部位に減圧を適用する装置を製造する方法が、膜270を含めて、ここに開示したいずれかの実施例にあるような膜を形成するステップを具える。一実施例では、膜を形成するステップが、膜270を真空成型するステップを具える。膜270は、また、射出成型、圧縮成型、あるいは鋳造を用いて形成することもできる。膜270を形成するこれらの方法のいずれかを用いて、平膜にチャネル280などのチャネルを作ることができる。これらの方法はまた、膜270の経済的な製造を容易にするものでもある。
【0051】
この装置を製造する方法はまた、減圧を膜270の組織に対向する第1の面272に送達する、図1Aに示す導管118などの送達チューブを提供するステップを具える。この製造方法は、また、膜270の送達チューブを、送達チューブが膜270の組織に対向する第1の面272に流体連結するように連結するステップを具える。
【0052】
図5及び6を参照すると、図に示す実施例による膜570は、ドーム形状の突起575を有する組織に対向する面572を具える。図5を斜めに見ると、突起575は円形である。別の実施例では、突起575は、楕円形、ダイヤモンド型、多角形、あるいは細長形状を含め、図5に示すどの形状を有していても良い。図5に見られるように突起575が楕円形である例では、突起575は半楕円形状を有している。別の実施例では、突起575の一又はそれ以上が、残りの突起575と異なる形状をしている。
【0053】
膜570もチャネル580を具えており、このチャネルは少なくとも部分的に突起575によって規定されており、図2乃至4に示すチャネル280に類似している。チャネル580は、膜570の組織に対向する面572に沿って減圧あるいは流体を送りやすくしている。
【0054】
一実施例では、膜570、あるいはここに記載したその他の膜も、膜570の面573に連結された裏シート592を具えていても良い。柔軟な裏シート592は、生体分解性あるいは非生体分解性材料でできており、膜570に強度と耐性を加えるようにしている。膜570は、裏シート592に、溶接(例えば、超音波又はRF)、接合、接着(例えば、シリコーン接着剤)、セメント、その他など、どのような方法で連結しても良い。
【0055】
別の実施例では、膜570、あるいはここに記載した実施例のいずれかの膜は、膜570を少なくとも部分的に覆うコーティング594を具えていても良い。コーティング594は、図6に膜570の組織に対向する面572を覆うように示されているが、コーティング594は、面573を含めて、膜570のどの面を覆っていても良い。コーティング594はまた、裏シート592の面596を含めて、裏シート592のどの面を覆うものであっても良い。一実施例では、コーティング594は、少なくとも部分的にヒドロゲルでできている。この実施例では、ヒドロゲルでできたコーティング594が、コーティング594によって覆われている膜570の面における摩擦を減らすことができる。このように、ヒドロゲルでできたコーティング594は、膜570の経皮的挿入および、組織部位における膜570の皮下への適用及び配置を容易にする。
【0056】
別の実施例では、コーティング594は、少なくとも部分的にヘパリンでできていても良い。この実施例では、コーティング594は、組織部位あるいはその他の個所におけるクロットの形成を低減する、あるいは防止する。更に別の実施例では、コーティング594は、また、抗生物質あるいは成長ファクタを含んでいても良い。更に別の実施例では、コーティング594は、また、少なくとも部分的にポリ(エチレングリコール)(PEG)でできていても良い。
【0057】
膜570の各突起575は、膜570の面573に沿ってそれぞれ中空凹み576を形成している。各凹み576は、膜570を作っている材料などの材料で満たすようにしても良く、この例では、各凹み576は中空状ではなく、膜570はほぼ均一な壁厚を有していない。各凹み576を材料で埋めた一実施例では、膜570が吸収して、膜570のより薄い(例えば、0.020インチ)部分が分解した後、分解性突起575(例えば0.60インチ×0.060インチ)の分散アレイができる。別の実施例では、各凹み576が、薬剤、成長ファクタ、あるいは抗生物質を含んでいても良く、この例では、膜570の突起575が吸収するときに、各凹み576中の薬剤を組織部位に送達することができる。更に別の実施例では、膜570はほぼ均一の膜壁厚を有するか、あるいは、膜270を参照して上述したように、膜570の対向する側部に整合したあるいは同様の偏差を有するようにしても良い。
【0058】
図7を参照すると、図に示す実施例による膜770は組織に対向する面772を具えており、細長の突起775a及び775bを示している。各突起775aは、端部710と712を有する。各突起775aの端部710は、溝784に隣接している。各突起775aの端部712は、膜770のエッジの少なくとも一つ、例えばエッジ785に隣接している。突起775aは、溝784の近傍あるいは端部777から半径方向に延在している。溝784から半径方向に何本の突起が延在していても良い。また、突起775aは、端部777以外の溝784の部分から半径方向に延在している。
【0059】
突起775aは、図2乃至4のチャネル280に類似している細長チャネル780aを少なくとも部分的に形成している。各チャネル780aは、チャネル端720とチャネル端722を有する。各チャネル780aのチャネル端720は、溝784に隣接している。各チャネル780aのチャネル端722は、膜770の少なくとも一のエッジに隣接している。チャネル780aは、チャネル端722がチャネル端720より広くなるようにテーパが付いていても良い。
【0060】
膜770は、また、細長突起775bを具えており、この突起は溝784にほぼ直交している。各突起775bは、互いにほぼ平行である。各突起775bは、端部716と端部718を具える。各突起775bの端部716は溝784に隣接している。各突起775bの端部718は、膜770の少なくとも一方のエッジに隣接している。
【0061】
突起775bは少なくとも部分的に、図2乃至4のチャネル280に類似する細長チャネル780bを形成している。チャネル780bは、溝784にほぼ直交している。各チャネル780bは、端部724と端部726を有する。各チャネル780bの端部724は溝784に隣接している。各チャネル780bの端部726は、膜770の少なくとも一方のエッジに隣接している。
【0062】
突起775aと775bは各々、幅714を有する。更に、突起775aと775bの各々の幅714は、均一であっても良く、不均一であっても良い。別の実施例では、突起775aと775bの少なくとも一部がテーパ状であり、端部710と716など、突起775aと775bの一方の端部が、それぞれ、端部712と718など、突起775aと775bの他方の端部より幅が狭くても良い。
【0063】
別の実施例では、突起775aと775bのすべてが、溝784の端部777などの溝784の一部から半径方向に延在している。更に別の実施例では、チャネル780aと780bが、代りに、チャネルを形成する突起を形成している。この例では、突起775aと775bが突起の代わりのチャネルである。
【0064】
更に別の実施例では、膜770がほぼ均一の膜壁厚を有する、あるいは、膜270について上述したように、膜770の対向する側部に整合したあるいは同様の偏差を有していても良い。
【0065】
図8を参照すると、図に示す実施例による膜870は、図2乃至4に示す突起275と同様の、突起875を有する組織に対向する面872を具えている。各突起875は、溝884にほぼ直交している。各突起875は、互いにほぼ並行でもある。各突起875は、端部816と端部818を具える。各突起875の端部816は、溝884に隣接している。各突起875の端部818は、膜870の少なくとも一方のエッジに隣接している。
【0066】
突起875は、図2乃至4に示すチャネル280と同様に、少なくとも部分的に細長チャネル880を形成している。チャネル880は、溝884にほぼ直交している。各チャネル880は、互いにほぼ平行である。各チャネル880は、端部824と端部826を有する。各チャネル880の端部824は、溝884に隣接している。各チャネル880の端部826は、膜870の少なくとも一方のエッジに隣接している。
【0067】
一の実施例では、膜870は、突起875と溝884の各々の端部816間にギャップ825を具える。ギャップ825は、どのような間隔であっても良く、すべて除去するようにしても良い。
【0068】
更に別の実施例では、膜870はほぼ均一の膜壁厚を有していても良く、膜270を参照して上述したように、膜870の対向する側部に整合したあるいは同様の偏差を有していても良い。
【0069】
上記の説明から、有意な利点を有する発明が提供されていることは明らかである。この発明はわずかな形状のみで示されているが、本発明は限定されるものではなく、発明の精神から外れることなく、様々な変更や変形を受け入れることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織部位に減圧を適用するシステムにおいて:
減圧を供給するように動作可能な減圧源と;
膜の組織に対向する第1の面に複数の突起を有し、膜の第2の面に複数のほぼ整合した凹みを具える膜であって、前記複数の突起が前記組織に対向する面に沿って減圧を送るように動作可能な少なくとも一のチャネルを少なくとも部分的に規定する膜と;
前記膜に連結された送達チューブであって、前記膜の組織に対向する面へ前記減圧を送達するように動作可能な送達チューブと;
を具えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記膜が生体分解性であることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記膜に関連する膜壁厚が前記膜全体でほぼ均一であることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記膜が多孔性材料を具えることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記複数の突起と、前記複数のほぼ整合した凹みによって、前記膜の対向する側部上の組織に適用する力のタイプを変更できることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムにおいて、前記複数の突起近傍の組織が、減圧の存在下において圧縮力にさらされることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項5に記載のシステムにおいて、前記ほぼ整合した複数の凹み近傍の組織が、減圧の存在下において引張力にさらされることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記複数の突起と前記複数のほぼ整合した凹みが、前記膜に関連した中心面からずれていることを特徴とするシステム。
【請求項9】
組織部位に減圧を適用するシステムにおいて:
減圧を供給するように動作可能な減圧源と;
膜の対向する側部上に複数の非平面状の整合した偏差を有する膜であって、当該膜の組織に対向する第1の側部に沿って減圧を送るように動作可能な少なくとも一のチャネルを有する膜と;
前記膜に連結された送達チューブであって、前記膜の組織に対向する面に減圧を送達するように動作可能な送達チューブと;
を具えることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記整合した偏差が、前記膜の組織に対向する第1の面上に複数の突起を形成しており、前記複数の突起が前記少なくとも一のチャネルを規定していることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記膜が生体吸収性であることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記膜に関連する膜壁厚が、前記膜全体においてほぼ均一であることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記膜が多孔性材料を具えることを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記複数の整合した偏差によって、前記膜の対向する側部上の組織に適用する力のタイプを変更できることを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記複数の整合した偏差が、前記膜に関連する中心面からずれていることを特徴とするシステム。
【請求項16】
皮下組織部位に減圧を適用するシステムにおいて:
減圧を供給するように動作可能な減圧源と;
ほぼ均一な膜壁厚と組織に対向する第1の面を有する膜であって、当該膜が前記組織に対向する面上に複数の突起を形成するような形状であり、前記複数の突起が前記組織に対向する面に沿って減圧を送るように動作可能な少なくとも一のチャネルを少なくとも部分的に規定している、膜と;
前記膜に連結された送達チューブであって、前記膜の組織に対向する面に前記減圧を送達するように動作可能な送達チューブと;
を具えることを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項16に記載のシステムにおいて、前記膜が前記組織に対向する面に対向する第2の面を具え、前記複数の突起の各々が、前記第2の面上にそれぞれ凹みを形成していることを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項16に記載のシステムにおいて、前記膜が、当該膜の組織に対向する面上に溝を具え、当該溝が、前記送達チューブを少なくとも部分的に囲むような形をしていることを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項18に記載のシステムにおいて、前記送達チューブが前記膜に関連する溝の中に少なくとも部分的に配置されていることを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムにおいて、前記複数の突起が複数の細長い突起であることを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項20に記載のシステムにおいて、前記複数の細長い突起の各々が、前記溝にほぼ直交しており、前記複数の細長い突起が互いにほぼ平行であることを特徴とするシステム。
【請求項22】
請求項20に記載のシステムにおいて、前記複数の細長い突起の少なくとも一部が第1の端部と第2の端部を有し、当該第1の端部が前記溝に隣接しており、前記第2の端部が前記膜のエッジに隣接していることを特徴とするシステム。
【請求項23】
請求項22に記載のシステムにおいて、前記複数の細長い突起の部分が、前記溝の一部から半径方向に延在していることを特徴とするシステム。
【請求項24】
請求項20に記載のシステムにおいて、前記少なくとも一のチャネルが複数の細長いチャネルであって、前記複数の細長い突起が当該細長いチャネルを形成しており、前記複数の細長いチャネルの各々が、チャネル第1端部とチャネル第2端部を有し、前記チャネル第1端部が前記溝に隣接しており、前記チャネル第2端部が前記膜のエッジに隣接していることを特徴とするシステム。
【請求項25】
請求項16に記載のシステムにおいて、前記複数の突起が前記皮下組織部位に接触するように動作可能であることを特徴とするシステム。
【請求項26】
請求項16に記載のシステムにおいて、前記複数の突起が、三角形、円形、楕円形、及びダイヤモンド形のうちの少なくとも一つを有することを特徴とするシステム。
【請求項27】
請求項16に記載のシステムにおいて、前記少なくとも一のチャネルが複数のチャネルであることを特徴とするシステム。
【請求項28】
請求項27に記載のシステムにおいて、前記複数のチャネルが複数の相互接続されたチャネルであることを特徴とするシステム。
【請求項29】
請求項16に記載のシステムにおいて、前記膜が前記組織に対向する面に対向する第2の面を有しており、前記システムが更に、前記膜の第2の面に連結した柔軟な裏打ちを具えることを特徴とするシステム。
【請求項30】
請求項16に記載のシステムが更に、前記膜を少なくとも部分的に覆うコーティングを具えることを特徴とするシステム。
【請求項31】
請求項30に記載のシステムにおいて、前記コーティングが、前記コーティングによって覆われた膜の表面における摩擦を低減するように動作可能であることを特徴とするシステム。
【請求項32】
請求項16に記載のシステムにおいて、前記膜が生体分解性材料でできていることを特徴とするシステム。
【請求項33】
請求項16に記載のシステムにおいて、前記膜が生体分解性材料でできており、生体吸収速度を有し、当該生体吸収速度が前記膜についてほぼ均一であることを特徴とするシステム。
【請求項34】
請求項32に記載のシステムにおいて、前記生体分解性材料が、抗生物質と成長ファクタの少なくとも一方を具えることを特徴とするシステム。
【請求項35】
請求項16に記載のシステムにおいて、前記膜が柔軟な膜であることを特徴とするシステム。
【請求項36】
請求項16に記載のシステムにおいて、前記膜が前記皮下組織部位を少なくとも部分的に覆っていることを特徴とするシステム。
【請求項37】
請求項16に記載のシステムにおいて、前記皮下組織部位が骨組織部位であり、前記膜が、前記骨組織部位を少なくとも部分的に覆うように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項38】
請求項16に記載のシステムにおいて、前記少なくとも一のチャネルが更に、前記組織に対向する面に沿って液体を送るように動作可能であることを特徴とするシステム。
【請求項39】
皮下組織部位に減圧を提供する装置において:
ほぼ均一な膜壁厚と、組織に対向する第1の面とを有する膜であって、前記組織に対向する面上に複数の突起を形成する形をしており、前記複数の突起が前記組織に対向する面に沿って減圧を送るように動作可能な少なくとも一のチャネルを少なくとも部分的に規定している、膜を具えることを特徴とする装置。
【請求項40】
請求項39に記載の装置において、前記膜が前記組織に対向する面としての前記膜の対向する側部上に第2の面を具え、前記複数の突起の各々が当該第2の面上に各々凹みを形成していることを特徴とする装置。
【請求項41】
請求項39に記載の装置において、前記膜が当該膜の組織に対向する面の上に溝を具え、前記溝が少なくとも部分的にチューブを囲むような形状であることを特徴とする装置。
【請求項42】
請求項41に記載の装置において、前記チューブが送達チューブであり、当該送達チューブが治療中に前記膜の組織に対向する面に減圧を送達するように動作可能であり、前記送達チューブが前記溝の中に少なくとも部分的に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項43】
請求項42に記載の装置において、前記複数の突起が複数の細長い突起であることを特徴とする装置。
【請求項44】
請求項43に記載の装置において、前記複数の細長い突起の各々が、前記溝にほぼ直交しており、前記複数の細長い突起が互いにほぼ平行であることを特徴とする装置。
【請求項45】
請求項43に記載の装置において、前記複数の細長い突起の少なくとも一部が、第1及び第2の端部を具え、前記第1の端部が前記溝に隣接しており、前記第2の端部が前記膜のエッジに隣接していることを特徴とする装置。
【請求項46】
請求項45に記載の装置において、前記複数の細長い突起の前記部分が、前記溝の一部から半径方向に延在していることを特徴とする装置。
【請求項47】
請求項43に記載の装置において、前記少なくとも一のチャネルが、複数の細長いチャネルであり、前記複数の細長い突起が前記複数の細長いチャネルを形成しており、前記複数の細長い突起の各々が、チャネル第1端部とチャネル第2端部を具え、前記チャネル第1端部が前記溝に隣接しており、前記チャネル第2の端部が前記膜のエッジに隣接していることを特徴とする装置。
【請求項48】
請求項39に記載の装置において、前記複数の突起が、前記皮下組織部位に接触するように動作可能であることを特徴とする装置。
【請求項49】
請求項39に記載の装置において、前記複数の突起の各々が、三角形、円形、楕円形、及びダイヤモンド形のうちの少なくとも一の形状を有することを特徴とする装置。
【請求項50】
請求項39に記載の装置において、前記少なくとも一のチャネルが複数のチャネルであることを特徴とする装置。
【請求項51】
請求項50に記載の装置において、前記複数のチャネルが複数の相互接続されたチャネルであることを特徴とする装置。
【請求項52】
請求項39に記載の装置において、前記膜が、当該膜の対向する側部に前記組織に対向する面としての第2の面を有し、当該装置が更に、前記膜の第2の面に連結した柔軟な裏打ちを具えることを特徴とする装置。
【請求項53】
請求項39に記載の装置が更に、前記膜を少なくとも部分的に覆うコーティングを具えることを特徴とする装置。
【請求項54】
請求項53に記載の装置において、前記コーティングが、前記コーティングによって覆われた膜の表面における摩擦を低減するように動作可能であることを特徴とする装置。
【請求項55】
請求項39に記載の装置において、前記膜が生体分解性材料でできていることを特徴とする装置。
【請求項56】
請求項39に記載の装置において、前記膜が生体分解性材料でできており、生体吸収速度を有し、当該生体吸収速度が前記膜についてほぼ均一であることを特徴とする装置。
【請求項57】
請求項55に記載の装置において、前記生体分解性材料が、抗生物質と成長ファクタの少なくとも一方を具えることを特徴とする装置。
【請求項58】
請求項39に記載の装置において、前記膜が柔軟性のある膜であることを特徴とする装置。
【請求項59】
請求項39に記載の装置において、前記膜が前記皮下組織部位を少なくとも部分的に覆うことを特徴とする装置。
【請求項60】
請求項39に記載の装置において、前記皮下組織部位が骨組織部位であり、前記膜が、前記骨組織部位を少なくとも部分的に覆うように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項61】
請求項39に記載の装置において、前記少なくとも一のチャネルが更に、前記組織に対向する面に沿って液体を送達するように動作可能であることを特徴とする装置。
【請求項62】
皮下組織部位に減圧を適用する方法において:
皮下組織部位に膜を適用するステップであって、当該膜がほぼ均一な膜壁厚と、組織に対向する第1の面を有し、当該膜が、前記組織に対向する面上に複数の突起を形成するような形をしており、前記複数の突起が前記組織に対向する面に沿って減圧を送るように動作可能な少なくとも一のチャネルを少なくとも部分的に規定している、ステップと;
前記膜に連結された送達チューブを介して前記膜の組織に対向する面に減圧を適用するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項63】
請求項62に記載の方法において、前記膜が生体吸収率を有する生体分解性材料を具えており、当該生体吸収率が前記膜についてほぼ均一であることを特徴とする方法。
【請求項64】
皮下組織部位に減圧を適用する装置を製造する方法において:
ほぼ均一な膜壁厚と、組織に対向する第1の面を有する膜を形成するステップであって、前記膜が前記組織に対向する面上に複数の突起を形成する形をしており、前記複数の突起が前記組織に対向する面に沿って減圧を送るように動作可能な少なくとも一のチャネルを少なくとも部分的に規定する、ステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項65】
請求項64に記載の方法において、前記膜を形成するステップが、前記膜を真空成型するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項66】
請求項64に記載の方法において、前記膜を形成するステップが、射出成型、圧縮成型、鋳造の一つを用いて前記膜を形成するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項67】
請求項64に記載の方法が更に:
前記膜の組織に対向する面に減圧を送達する送達チューブを提供するステップと;
前記送達チューブを、当該送達チューブが前記膜の組織に対向する面と流体連結するように前記膜に連結するステップと;
を具えることを特徴とする方法。


【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−513831(P2012−513831A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543621(P2011−543621)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/069063
【国際公開番号】WO2010/075313
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(508268713)ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】