説明

皮膚保湿用ゲルおよび方法

本皮膚保湿組成物は、水と、皮膚保湿剤と、水溶性のヒドロキシアルキルセルロースポリマーと、添加剤とを含み、脂肪および油は含まない。本組成物は、水溶性のヒドロキシアルキルセルロースポリマーによって実質的な水分の損失をさえぎる特性を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経表皮の水分損失を防ぐためのスキンケア組成物および方法の分野に関する。好ましい実施形態は、実質的な水分の損失をさえぎる特性をもたらす、吸蔵性の脂肪または吸蔵性の油を含まないゲル状の水性のスキンケア組成物を利用する。本出願は、2002年4月23日出願の米国出願第10/127,588号の優先権の恩典を請求する。
【背景技術】
【0002】
黄色ワセリン、鉱油、パラフィン蝋、オゾケライトなどの不揮発性炭化水素は、長い間スキンクリームやローションに使用されている。これらの物質は、皮膚表面から周囲への水分損失を防ぐ疎水性の吸蔵性の膜(hydrophobic occlusive film)で皮膚を覆うことによって皮膚軟化剤の役目を果たす。同様に、ラノリンおよびその誘導体であるアセチル化ラノリン等の動物脂肪および油も、疎水性でろう状で保護性の膜を皮膚上に被覆させる皮膚軟化剤としてスキンクリームやローションに使用されている。
【特許文献1】米国特許第4,837,019号
【特許文献2】米国特許第4,963,591号
【非特許文献1】J.L.Levequeら、「Impedance Methods for Studying Skin Moisturization」、J.Soc.Cosmet.Chem.、34:419〜428頁(1983)
【非特許文献2】G.L.Groveら、「Comparative Metrology of the Evaporimeter and the DermaLab(登録商標)TEWL Probe」、Skin Res.& Tech.、5:1〜8頁(1999)
【非特許文献3】G.L.Groveら、「Computerized Evaporimetry Using the DermaLab(登録商標)TEWL Probe」、Skin Res.& Tech.、5:9〜13頁(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
脂肪および/または油を含む汎用の吸蔵タイプの水分の損失をさえぎる膜(occlusive moisture barrier)の欠点は、一般に、べとつく、油っこい、べたべたした、または蝋状の感触(sticky, oily, greasy or waxy feel)に加えて、不快な暖かさの感触を肌に与えることである。
【0004】
米国特許第4,837,019号公報では、べたべたした感触(greasy feel)の問題を回避し、水分損失を和らげ、火傷または日焼けした肌の治癒を促進すると言われているスキントリートメント組成物が開示されている。この組成物には、ポリグリセリルメタクリレート、グリセリン、アラントイン、パンテノール、アミノ酸複合体、およびフィブロネクチンで形成される保湿成分が含まれている。この特許に開示されているスキントリートメント組成物には、非機能性成分も含まれており、一実施形態では、保湿成分が水性ゲル中に含まれている。
【0005】
米国特許第4,963,591号公報では、非水性のスキンケア製剤に水に不溶性のセルロースポリマー/溶媒系を加えることが開示されている。このポリマー溶媒系の例は、Dow Chemical Companyによって販売されている物質のEthocel Standard(商標)であり、これは、エトキシル基含有量が48.0〜49.5%(全組成物の約0.75%〜約1.60重量%の量)であり、エタノール、プロパノールまたはイソプロパノールなどのセルロースポリマーに対する溶媒(全組成物の約20%〜最大約95重量%以上の量で存在)を含む。前述の米国特許第4,963,591号公報によく知られている化粧用成分と併せて開示されているポリマー/溶媒系によって、べとつく、油っこい、べたべたした、または蝋状の感触(sticky, oily, greasy or waxy feel)が全くない、微細な、薄い、実質的な膜が皮膚表面上に分散すると考えられている。しかし、開示されている組成物はすべて非水性である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による皮膚を保湿する組成物は、水性であり、実質的な水分の損失をさえぎる特性(water-barrier property)を有し、(水の他に)水溶性のヒドロキシアルキルセルロースポリマーおよびグリセリンなどの皮膚保湿剤を含む。この組成物は、膜を形成するポリグリセリルメタクリレートポリマー(film-forming polyglyceryl methacrylate polymer)、吸蔵性の脂肪および/または油(occusive fats or ois)を必要としない。
【0007】
特に好ましい実施形態では、この組成物は、約80〜約90重量%の脱イオン水と、約1〜約3重量%のヒドロキシエチルセルロースまたは等価物と、約8〜約12重量%のグリセリと、約0.1〜約2重量%の乳化剤とを含むゲルである。それだけには限らないが、抗ヒスタミン剤、外傷治療薬、止痒剤、麻酔薬、安定剤、防腐剤、抗微生物剤、抗菌剤、消毒剤、酸化防止剤およびUVフィルターを含む、保湿以外の他の目的に対して機能する他の成分を比較的少量加えてもよく、約1.0重量%〜約8.0重量%、好ましくは約3.0重量%未満の合計量で加えてもよい。
【0008】
本発明はまた、膜を形成するメタクリレートポリマー、吸蔵性の脂肪または吸蔵性の油を加えずに経表皮の水分損失を減少させる方法を含む。この方法は、水溶性のヒドロキシアルキルセルロースポリマーおよびグリセリンを含む治療に有効な量の水性の組成物を、それを必要とする皮膚に局所投与して、肌に油っこい感触(oily feel)を与えずに経表皮の水分損失を減少させる工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明によるスキンケア組成物は、吸蔵性の脂肪または油を含まないものであり、したがって多くの従来技術の保湿剤の油を塗った、油っこい感触(greasy,oily feel)がない。大まかに言えば、本発明の組成物中に存在しない脂肪または油は、皮膚に油っこい、べとつく、または蝋状の感触(oily, sticky or waxy feel)を与えるものである。
【0010】
本発明の目的に対して、本発明の組成物が、鉱油、黄色ワセリン、パラフィン、セレシン、オゾケライトなどの炭化水素油および蝋;ヒマシ油、ココアバター、ベニバナ油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油などの植物および動物脂肪および油;C10〜C20脂肪酸;C10〜C20脂肪酸のアルキルまたはアルケニルエステル;C10〜C20脂肪アルコール;ラノリン油、ラノリン蝋、ラノリンアルコール、ラノリン脂肪酸などのラノリンおよびその誘導体;蜜蝋などの蝋エステル;ならびにカルナバ蝋およびカンデリラ蝋などの植物蝋、ステロール、リン脂質、脂肪族アミドなどを約0.10重量%未満で含む場合には、本発明の組成物は、このような脂肪または油を含まないと考えられる。
【0011】
より好ましくは、本組成物は、このような脂肪および/または油を検出不可能な量で含む。
【0012】
これらの汎用の吸蔵性物質を含まないにもかかわらず、本発明の組成物は意外なことに実質的な水分の損失をさえぎる特性をもたらす。
【0013】
本明細書では、「実質的な水分の損失をさえぎる特性(substantial moisture barrier properties)」という表現は、2mg/cm程度の局所投与によって、経表皮の水分損失に関して、ベースライン測定に対して約30%を超える改善がもたらされることを表すことを理解されたい。
【0014】
本明細書では、「経表皮の水分損失(transepdermal water loss)」(TEWL)という表現は、表皮からの水分損失を意味し、これは一般に、皮膚の保護脂質を除去または傷つけ、その結果としてかかる水分損失をもたらす傾向がある洗浄剤、石鹸、溶剤または紫外線などの乾燥肌を伴う環境要因によって引き起こされる皮膚障壁の損傷によって悪化する。
【0015】
本明細書では、「実質的な蒸発水分の損失(substantioal evaporative loss)」という表現は、本明細書に記載の蒸気圧勾配推定システムを用いて測定した2.5gHO/m/hrを超える損失を表す。
【0016】
本明細書では、「皮膚保湿剤(skin moisturizer)」という表現は、皮膚を保湿する、すなわち、皮膚の水分含有量を高める傾向がある化合物を意味する。
【0017】
以下に記載のように、多くの成分を様々な実施形態で使用しているが、本発明によるスキンケア組成物の重要な成分は、水、水溶性のヒドロキシアルキルセルロースポリマーおよびグリセリンなどの保湿剤である。この組成物は、水性の担体(aqueous carrier)中に溶解させられる。このような水性担体は、主に水、好ましくは脱イオン水から構成されており、水と相容性がある他の溶媒を含んでいてよい。好ましくは、この組成物は、50重量%を超える水からなる。好ましくは、この組成物の約80重量%を超える量は脱イオン水である。最も好ましくは、この組成物の80〜90重量%が脱イオン水である。
【0018】
好ましくは、この水性の皮膚を保湿する組成物は、ゲル状で使用する。本明細書では、ゲルとは、ローション剤よりも固いが、容易に皮膚に伸ばせる半固体形態の組成物を意味する。
【0019】
本発明の保湿組成物に使用している水溶性のヒドロキシアルキルセルロースポリマーは通常、組成物をゲル化させ、TEWLを軽減させるための水分障壁を形成する2重機能を果たす。この水溶性のヒドロキシアルキルセルロースポリマーは、好ましくは、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、またはヒドロキシプロピルセルロースなどの低級アルキル(C〜C)ヒドロキシアルキルセルロースである。濃度が2重量%の好ましい水溶性のヒドロキシアルキルセルロースポリマーの水溶液は、室温で約10,000センチポアズ〜約250,000センチポアズの粘度を示す。好ましくは、ヒドロキシエチルセルロースである。特に好ましいヒドロキシエチルセルロースは、Hercules Chemical Company、米国ニューヨーク州New Yorkから商標名NATROSOL 250 HNFまたはNATROSOL HXで市販されている。
【0020】
一般に、水溶性のヒドロキシアルキルセルロースポリマーは、組成物の約1.0重量%〜約5.0重量%の量で組成物中に含まれる。好ましい実施形態では、組成物は、約2.0重量%のヒドロキシエチルセルロースを含む。
【0021】
グリセリン(glycerin)(またはグリセリン(glycerine)またはグリセロール(glycerol)、しばしばこのようにも呼ばれる)などの皮膚保湿剤(または湿潤剤)は、一般に組成物の約1.0重量%〜最大約20.0重量%まで、好ましくは約8.0〜約12.0重量%の量で存在する。好ましい実施形態では、グリセリン(96〜100%)は、組成物中に約10.0重量%の量で存在する。
【0022】
プロピレングリコール、ソルビトール、エトキシル化グリセロールおよびそれらの混合物を含むアルキレンポリオールおよびそれらの誘導体など、グリセリンと同様の湿潤作用があることが知られている多価アルコールを含む他の皮膚保湿剤を使用してもよい。
【0023】
それだけには限らないが、抗ヒスタミン剤、抗微生物剤、消毒剤、止痒剤、麻酔薬、乳化剤、外傷治療薬、酸化防止剤およびUVフィルターおよび安定剤を含む汎用の添加剤が、有利に組成物中に含められ得る。これらの添加剤の合計量は、一般に、最大約8.0重量%、好ましくは、最大約3.0重量%までの範囲である。
【0024】
組成物の約1.0〜約4.0重量%の量で本発明の組成物に使用され得る抗ヒスタミン剤は、それだけには限らないが、クロルフェニルアミン、トリプロリジン、ジフェンヒドラミン、ドキシルアミン、ピリラミン、フェニンダミン、プロメタジン、シプロヘプタジン、アザタジン、クレマスチン、カルビノキサミン、トリペレナミン、テルフェナジン、デキスクロルフェニルアミン、ブロムフェニルアミン、クロルシクリジン、ジフェニルピラリン、フェニラミンおよびフェニルトロキサミン、それらの薬剤として許容される塩、ならびにそれらの混合物を含む。好ましい実施形態では、組成物の約2.0重量%の量でジフェンヒドラミンの塩酸塩が含まれている。
【0025】
局所麻酔薬および/または止痒剤は、約0.1重量%〜最大約3.0重量%までの量で本発明の組成物中に含めることができる。例示的な麻酔薬および止痒剤は、それだけには限らないが、塩酸ジブカイン、塩酸プロカイン、塩酸ヘキソチオカイン、ベンジルアルコール、アミノ安息香酸エチル、ベンゾカイン、塩酸テトラカイン、リドカイン、塩酸リドカイン、塩酸メピバカイン、塩酸コカイン、塩酸グアタカイン(guatacaine hydrochloride)、塩酸ブタニカイン(butanicaine hydrochloride)、塩酸オキシブタニカイン、塩酸メプリルブタニカイン、塩酸プラモキシン、塩酸ピペロカイン、クロロブタノール、塩酸メプリルカイン、およびそれらの混合物を含む。好ましい実施形態では、組成物は、約0.5重量%の塩酸ジブカインを含む。
【0026】
抗微生物剤、抗菌剤および/または消毒剤は、好ましくは約1.0重量%までの量で組成物に含めることができる。例示的な抗微生物剤、抗菌剤および消毒剤は、それだけには限らないが、塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化パルミチルトリメチルアンモニウム、チモール(イソプロピルメチルフェノールなどのその異性体を含む)、塩化デカニウム、チメロサール、マーキュロクロム、プロテイン銀、クロラミン、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、ヨウ素、ヨウ化ナトリウム、ヨードチンキ、ポビドンヨード、ヨードホルム、オキシドール、過マンガン酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、エタノール、イソプロパノール、フェノール、クレゾール、ビチオノール、アクリノール、塩化メチルローザニリン、ニトロフラゾン、レソルシノール、臭化ドミフェン(domifen bromide)、TEGO−51、クロロブタノール、サリチル酸、ヘキサクロロフェン、ベンジルアルコール、安息香酸、クレオソート、アクリフラビン、サリチル酸フェニル、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリンおよびそれらの混合物を含む。好ましい実施形態では、塩化ベンゼトニウムとイソプロピルメチルフェノールの両方が組成物の約0.1重量%の量で含まれている。
【0027】
組成物に含まれ得る乳化剤には、化粧品用途に認可されているポリエチレングリコール20ソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20)、ポリエチレングリコール20ステアリルエーテル(ブリジ78、ステアレス20)、ラウリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル(ラウレス23)、ポリソルベート80(ツイーン80)、レシチンなどを含む任意の乳化剤がある。乳化剤は、一般に組成物の約0.1〜2.0重量%で存在する。特に好ましい実施形態では、乳化剤は、組成物の約1.0重量%の量で存在するポリソルベート20である。2種以上の乳化剤の混合物も使用することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、非粘着剤として加水分解に安定なジメチコーンコポリオールを0.1重量%〜約4.0重量%の量で使用して、組成物の軽い、非油脂状の感触を高める。Dow Corning Companyから製品番号DC190で市販されているジメチコーンコポリオールは、水、アルコールおよび水アルコール系に可溶なシリコーングリコールコポリマーである。実質的に同等の非粘着剤も使用することができる。
【0029】
組成物中の防腐剤は、当技術分野で周知のものから選択でき、スキンケア製品用に市販されている。こうした防腐剤には、Sutton Laboratories、米国ニュージャージー州Chathamから市販されているGermaben IIがある。
【0030】
好ましい実施形態では、本発明は、本質的に、約70.0〜約98.0重量%の水;約0.1〜約4.0重量%の水溶性のヒドロキシアルキルセルロースポリマー;約1.0〜約20.0重量%のグリセリン;約0.1〜約2.0重量%の1種または複数の外傷治療薬;約0.1〜約4.0重量%のもう1種の抗ヒスタミン剤;約0.1〜約1.0重量%の1種または複数の乳化剤;約0.01〜約1.0重量%の1種もしくは複数の抗微生物剤、抗菌剤または消毒剤;および約0.01〜約6.0重量%の1種もしくは複数の止痒剤または麻酔薬からなる水性のスキンケア組成物と特徴付けられる。
【0031】
別の好ましい実施形態では、本発明は、約80.0〜約90.0重量%の水;約1.0〜約3.0重量%の水溶性のヒドロキシアルキルセルロースポリマー;約0.1〜約3.0重量%の塩酸プラモキシン、約0.01〜約0.5重量%の塩化ベンゼトニウム、約8.0〜約15.0重量%のグリセリン;約0.01〜約0.5重量%のアロエ粉末、約0.1〜約4.0重量%のジメチコーンコポリオール非粘着剤、および約0.01〜約2.0重量%の防腐剤を含む水性のスキンケア組成物と特徴付けられる。
【0032】
皮膚を保湿する組成物の有効性を評価するために、特に2つのパラメーター:皮膚の水分含有量および経皮水分損失(TEWL)をしばしば利用する。組成物によって、これらのパラメーターのうちの一方の改善を、もう一方を改善せずに行うことが可能である。本発明による組成物に関して観察された驚くべき利点は、皮膚の水分含有量を維持または改善しながら、水分損失に対する実質的な障壁が汎用の吸蔵性の水分障壁成分を使用せずに得られることである。
【0033】
例えば、参照により本明細書に組み込まれる、J.L.Levequeら、「Impedance Methods for Studying Skin Moisturization」、J.Soc.Cosmet.Chem.、34:419〜428頁(1983)に記載されているように、水分含有量は、皮膚の水分含有量の測定を間接的にもたらす皮膚の導電率を測定することによって、好都合に測定することができる。本明細書に記載の導電率測定値は、日本の静岡県にあるI.B.S.Co.,Ltd.から市販されているSKICON(登録商標)−2000導電率計を用いて得た。この装置の操作は、当業者によく知られている。導電率は、ミリモー(millimhos)の単位で測定する。
【0034】
本明細書に記載のTEWL測定値は、デンマーク、HandsundにあるCortex Technologyから市販されているDERMALAB(登録商標)TEWLシステムを用いて得た。この装置は、皮膚表面に対して垂直な軸に沿った2つの固定点で温度および相対湿度を測定する。蒸気圧勾配を評価し、それから蒸発水分損の失を決定する。この装置の操作は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、G.L.Groveら、「Comparative Metrology of the Evaporimeter and the DermaLab(登録商標)TEWL Probe」、Skin Res.& Tech.、5:1〜8頁(1999)およびG.L.Groveら、「Computerized Evaporimetry Using the DermaLab(登録商標)TEWL Probe」、Skin Res.& Tech.、5:9〜13頁(1999)に記載のように、同様に当業者に周知である。蒸発水分損の失の単位は、g/m/hrで表す。
【0035】
以下の実施例は、いくつかの好ましい実施形態を例示するものであって、特許請求の範囲によって定義されている本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0036】
本発明による例示的な製剤を以下の成分から調製した。
【0037】
【表1】

【0038】
ヒドロキシエチルセルロースを脱イオン水に加え、60℃に加熱した。均質な溶液が得られるまでこの混合物を撹拌した。透明な溶液が得られるまで十分混合してから次の成分を加えることによって、ジブカイン、ジフェンヒドラミン、塩化ベンゼトニウム、グリセリン、ポリソルベート20およびイソプロピルメチルフェノールを個々に加えた。最後にアラントインを加え、組成物を撹拌しながら室温まで冷却した。
【0039】
ほぼ同様に調製した別の特に好ましい実施形態は、表1aに記載の配合組成を有する。
【0040】
【表2】

【0041】
表1の製剤の保湿および水分の損失をさえぎる特性の客観的証拠を得るために、ヒト被験者を、彼らの前腕を毎日3回石鹸で洗うことによって準備した。1週間で経表皮の水分損失(TEWL)が3単位増加した被験者を選んで試験した。被験者のベースライン測定を行った。次いで、上記組成物2mg/cmを各被験者の前腕の掌側に塗布した。上記の装置を用いて、水分含有量およびTEWL測定をスタート時および8時間後に行った。
【0042】
図1A,1Bは、本発明の組成物の保湿特性および経表皮の水分損失特性のベースラインに対する改善を、吸蔵性の疎水性成分を含む汎用の製剤であるワセリン(登録商標)集中治療用ローション(Vaseline Intensive Care Lotion)のそれと比較して示す。ワセリン(登録商標)集中治療用ローションの主な吸蔵活性成分は黄色ワセリンである。意外なことに、本発明の保湿組成物は、吸蔵性成分を含まないにもかかわらず、経表皮の水分損失を減少させる実質的な能力を示す。
【0043】
比較例
グリセリンは皮膚を保湿する組成物(例えば、ワセリン(登録商標)集中治療用ローションを含む)に使用されているが、これは皮膚の水分含有量を増加させるために湿潤剤として使用されている。本明細書の発明者らは、グリセリンが本発明の組成物中でも水分の損失をさえぎる作用(water barrier effect)を示すかどうか判定するために試験を行った。
【0044】
グリセリンを使用しない点以外は、表1の組成物とほぼ同じ組成物を調製した(脱イオン水で不足を補う)。前述の比較のように、2mg/cmのグリセリンを含まない製剤および同様の用量の表1に示した製剤を、被験者8人の前腕に塗布した。
【0045】
図2A,2Bに示すように、皮膚の水分含有量は、グリセリンを含まない組成物を投与した被験者で急激に低下した。対照的に、それぞれの組成物の水分の損失をさえぎる特性は、実質的に影響を受けなかった。したがって、本発明者らは、グリセリンには実質的な水分の損失をさえぎる特性がないと結論付けた。
【0046】
同様に、外傷治療薬のアラントインは、水結合特性を増大させると当技術分野で表現されている。このことに基づいて、それが同様に水分の損失をさえぎる特性を示すと予想する人がいるかもしれない。それと反対に、本明細書の発明者らは、アラントインを除いた(脱イオン水を補う)上記の表1によって調製した組成物が、驚くべきことに図2A,2Bに示すように保湿および水分の損失をさえぎる特性の増大を示すことを発見した。
【0047】
任意の特定の理論に拘泥するものではないが、本明細書の発明者らは、これまでスキンケア組成物にゲル化剤としてしか使用されていないヒドロキシエチルセルロースなどの本発明の水溶性のヒドロキシアルキルセルロースポリマーが、かなりの水分の損失をさえぎる特性(water barrier properties)を示すと考えている。これまでに主な水分の損失をさえぎる薬剤としてヒドロキシエチルセルロースまたはその等価物を含む皮膚保湿剤が調製されたとは考えていない。
【0048】
2つの市販のゲル化剤、Noveon,Inc.から入手可能なカルボマー(carbomer)と本発明の水溶性ヒドロキシエチルセルロースであるNATROSOL 250 HNF(登録商標)とが、それらの保湿および水分の損失をさえぎる特性に対する各成分として試験された。前述の実施例のように、1週間でTEWLが3単位増加したことに基づいて、8人の被験者を選んだ。
【0049】
8人の被験者を選んだ後、異なる時間に各ゲル化剤0.05ccを被験者の皮膚に塗布し、スタート時および8時間後に皮膚の水分含有量を測定した。表2に示すように、評価した被験者では、皮膚の水分含有量のベースラインからの変化率に関して顕著な変化は観察されなかった。
【0050】
【表3】

【0051】
しかし驚くべきことに、同じ被験者に対してTEWL測定を行った場合、以下の表3に示すように、ヒドロキシエチルセルロースによって、予期しない著しく優れた水分の損失の障壁(barrier to moisture)が得られることが判明した。
【0052】
【表4】

【0053】
これらの結果を図3に図示する。
【0054】
本発明の態様は、ヒドロキシエチルセルロースなどの水溶性のヒドロキシアルキルセルロースポリマーが主な水分の損失をさえぎる成分(primary water-barrier ingredient)である、実質的に水分の損失をさえぎる特性(substantioal water-barrier properties)をもつ水系の皮膚保湿剤組成物を提供することである。
【0055】
他の変更形態および実施形態は、当業者に明らかなはずである。以下の特許請求の範囲に記載する場合を除き、本発明を限定すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1A】吸蔵性の油を含む従来技術の組成物に対して本発明の組成物の経表皮の水分損失特性における改善率を示す図である。
【図1B】吸蔵性の油を含む従来技術の組成物に対して本発明の組成物の保湿特性における改善率を示す図である。
【図2A】本発明の組成物、外傷治療薬を含まない比較例、および保湿剤を含まない比較例の保湿特性の比較を示す図である。
【図2B】本発明の組成物、外傷治療薬を含まない比較例、および保湿剤を含まない比較例の水分の損失をさえぎる特性の比較を示す図である。
【図3A】カルボマーゲル化剤に対して水溶性のヒドロキシアルキルセルロースポリマーの保湿特性を比較した図である。
【図3B】カルボマーゲル化剤に対して水溶性のヒドロキシアルキルセルロースポリマーの水分の損失をさえぎる特性を比較した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に水分の損失をさえぎる特性を持つ水性の皮膚を保湿する組成物であって、
水溶性のヒドロキシアルキルセルロースポリマーと、
皮膚保湿剤と、
水と、
を含み、
膜を形成するポリグリセリルメタクリレートポリマー、吸蔵性の脂肪または吸蔵性の油を含まないことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記組成物が、ゲル状であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記水溶性のヒドロキシアルキルセルロースポリマーが、ヒドロキシエチルセルロースであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記皮膚保湿剤が、アルキレンポリオールであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記アルキレンポリオールが、グリセリンであることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
外傷治療薬、抗ヒスタミン剤、乳化剤、止痒剤、抗微生物剤、抗菌剤または消毒剤、安定剤、防腐剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される薬剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物の約1.0重量%未満の量で、アラントインを含むことを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物の約1.0重量%未満の量で、塩酸ジフェンヒドラミンを含むことを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の約1.0重量%未満の量で、ジブカインまたはその化粧品として許容される塩を含むことを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物の約1.0重量%未満の量で、イソプロピルメチルフェノールを含むことを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の水性の皮膚を保湿する組成物であって、
約80.0〜約90.0重量%の脱イオン水と、
約1.0〜約3.0重量%のヒドロキシエチルセルロースと、
約0.1〜約3.0重量%の塩酸プラモキシンと、
約0.01〜約0.5重量%の塩化ベンゼトニウムと、
約8.0〜約15.0重量%のグリセリンと、
約0.01〜約0.5重量%のアロエ粉末と、
約0.1〜約4.0重量%のジメチコーンコポリオール非粘着剤と、
約0.01〜約2.0重量%の防腐剤と
を含むことを特徴とする組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の水性の皮膚を保湿する組成物であって、
約80.0〜約90.0重量%の脱イオン水と、
約1.0〜約3.0重量%のヒドロキシエチルセルロースと、
約8.0〜約15.0重量%のグリセリンと、
約0.1〜約1.0重量%の塩酸ジブカインと、
約1.0〜約3.0重量%の塩酸ジフェンヒドラミンと、
約0.01〜約0.5重量%の塩化ベンゼトニウムと、
約0.1〜約2.0重量%のポリソルベート20と、
約0.01〜約0.5重量%のイソプロピルメチルフェノールと、
約0.1〜約0.5重量%のアラントインと、
を含むことを特徴とする組成物。
【請求項13】
水性のスキンケア組成物であって、
約70.0〜約98.0重量%の水と、
約0.1〜約4.0重量%の水溶性のヒドロキシアルキルセルロースポリマーと、
約1.0〜約20.0重量%のグリセリンと、
約0.1〜約2.0重量%の1種または1種以上の外傷治療薬と、
約0.1〜約4.0重量%の1種または1種以上の抗ヒスタミン剤と、
約0.1〜約1.0重量%の1種または1種以上の乳化剤と、
約0.01〜約1.0重量%の1種または1種以上の抗微生物剤、抗菌剤または消毒剤と、
約0.01〜約6.0重量%の1種または1種以上の止痒剤または麻酔薬と、
を主成分とすることを特徴とする組成物。
【請求項14】
約84.1重量%の脱イオン水と、
約2.0重量%のヒドロキシエチルセルロースと、
約10.0重量%のグリセリンの96重量%溶液と、
約0.5重量%の塩酸ジブカインと、
約2.0重量%の塩酸ジフェンヒドラミンと、
約0.10重量%の塩化ベンゼトニウムと、
約1.0重量%のポリソルベート20と、
約0.10重量%のイソプロピルメチルフェノールと、
約0.20重量%のアラントインと、
を含むことを特徴とする請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
経表皮水分の損失を低減する方法であって、
水溶性のヒドロキシアルキルセルロースポリマーと、皮膚保湿剤と、水とを含み、膜を形成するポリグリセリルメタクリレートポリマー、吸蔵性の脂肪または吸蔵性の油を含まない、水性の皮膚を保湿する組成物の有効量を、必要とする対象の皮膚に塗布する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記組成物が、
約1〜約3重量%のヒドロキシエチルセルロースと、
約80〜約90重量%の脱イオン水と、
約8〜約12重量%のグリセリンと
を含むゲルであることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が、
外傷治療薬、止痒剤、麻酔薬、安定剤、防腐剤、抗微生物剤、抗菌剤、消毒剤、および乳化剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate


【公表番号】特表2006−509718(P2006−509718A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−587309(P2003−587309)
【出願日】平成14年5月23日(2002.5.23)
【国際出願番号】PCT/US2002/016163
【国際公開番号】WO2003/090670
【国際公開日】平成15年11月6日(2003.11.6)
【出願人】(504396911)コーム インターナショナル リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】COMBE INTERNATIONAL LTD.
【住所又は居所原語表記】1101 Westchester Avenue, White Plains, NY 10604−3597 U. S. A.
【Fターム(参考)】