説明

皮膚効果剤の増強された送達

局所使用化粧品製品中の、水の存在下に小胞相の形成を通しての皮膚効果剤の増強された送達のためのプロベシクル(pro−vesicle)であり、
(i)送達されるべき効果剤(benefit agents)、
(ii)リン脂質、
(iii)グリセロールのモノ‐、ジ‐またはトリ‐エステル、
(iv)C14からC18の脂肪酸の直鎖または分岐鎖のプロピルエステルまたはブチルエステル、および
(v)化粧品として許容される基剤、
を含む、プロベシクル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚効果剤(skin benefit agents)の増強された送達系に関し、より詳細には、皮膚への皮膚美白剤またはUV遮断剤の増強された送達のためのプロベシクルに関する。さらに本発明は、本発明の送達系を含む化粧品組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術および先行技術)
リポソームは、1960年代から公知であり、多様な用途における使用が報告されている。リポソームは、特定の表面活性分子から形成される小型マイクロカプセルであり、最も一般的なものはリン脂質であり、水性媒体中で微細閉鎖型小胞を画定する二分子膜の構造を自らとる。リポソームは、皮膚に良好に浸透する能力を有することで周知であり、したがって有効物質を経皮的に送達するために用いられる。リポソームは、経皮的薬剤送達および標的化薬剤送達の分野において、ならびに医療の分野では治療薬の送達において広範囲に生かされている。リポソームは、最近ではスキンクリームなどの化粧品処方にも使用されている。
【0003】
WO95/35095号(Yissum Research Development Company of the Hebrew University of Jerusalem)は、リン脂質、炭素原子が2個から4個の低級脂肪族アルコール、および場合によりグリコールおよび少なくとも20%の水を含む、皮膚に対して局所使用するための、化粧品または医薬品の組成物について記載している。この公報は、特に老化防止、日焼け防止などの、薬理作用または化粧品効果を有することのできる有効成分の送達について教示している。
【0004】
US2002/0012647号(Cannellら)は、少なくとも1種の、水溶液中で二分子膜を形成できる有機リン脂質、該リン脂質より多量の少なくとも1種の両性界面活性剤、および該リン脂質より多量の少なくとも1種の非イオン界面活性剤を含む組成物について記載しており、ここで、必須成分を組み合わせた量は、ワックス、中和されていない、または部分中和された非水溶性のポリマー、樹脂、およびラテックスから選択される、少なくとも1種の非水溶性成分を水溶液中に組み込むことができる量である。
【0005】
US6497888号(Morancais、他)は、皮膚および/または他のケラチン繊維中への、少なくとも1種の化粧品および/または医薬的有効成分の浸透を限定する方法、組成物およびキットについて記載している。該組成物は、主成分の組成物に加えて、媒体中に分散した小胞の有効量を含み、該小胞は、少なくとも1種の、式:
【0006】
【化1】

(式中、Rは、飽和および不飽和の、直鎖および分岐鎖のC〜C32のアルキル基から選択され、Rは、飽和および不飽和の、直鎖および分岐鎖のC〜C50のアルキル基から選択される。)のセラミドを含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リポソームを介した皮膚効果有効物質およびスキンケア有効物質の浸透に関する多くの方法および組成物が記載されてきたが、これらの目的を達成するためには、より良く、より効果的な方法および組成物を開発することが必要である。したがって、本発明の目的は、皮膚への皮膚効果剤の増強された送達をもたらす組成物を、提供することである。本発明のもう1つの目的は、皮膚への皮膚効果剤の増強された送達をもたらす組成物が化粧品組成物の送達系においてカプセル化されていることにより安定となる組成物を、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の概要)
したがって、本発明の一態様に従って、局所適用化粧品製品において水の存在下における小胞相の形成を通して、皮膚効果剤の増強された送達のためのプロベシクルが提供され、前記プロベシクルは、
(i)送達されるべき効果剤、
(ii)リン脂質、
(iii)グリセロールのモノ‐、ジ‐またはトリ‐エステル、
(iv)直鎖または分岐鎖のC14からC18脂肪酸のプロピルまたはブチルエステル、および
(v)化粧品として許容される基剤、
を含む。
【0009】
本発明のもう1つの態様に従って、本発明のプロベシクルと水とを、水対プロベシクルの重量比が少なくとも1:1になるように含む皮膚効果剤の増強された送達のための化粧品組成物が、提供される。
【0010】
本発明のさらなるもう1つの態様に従って、
(i)前記効果剤、前記リン脂質、前記グリセロールのモノ‐、ジ‐またはトリ‐エステルおよび前記直鎖または分岐鎖のC14からC18の脂肪酸プロピルエステルまたはブチルエステルのスラリーを、非水溶媒中で調製する段階、
(ii)前記スラリーと、化粧品として許容される基剤とを混合し、混合物を形成する段階、ならびに
(iii)前記混合物から非水溶媒を分離し、粒状のプロベシクルを形成する段階、
を含む、本発明のプロベシクルの調製方法が、提供される。
【0011】
(発明の詳細な記載)
本発明の第一の態様は、局所適用の化粧品製品においての、水の存在下における小胞相の形成を通しての皮膚効果剤の増強された送達のためのプロベシクルを提供する。「プロベシクル」は、担体系の脂質集合体を意味し、水の存在下で自然発生的に小胞相を備える。プロベシクルは、送達されるべき効果剤、リン脂質、グリセロールのモノ‐、ジ‐またはトリ‐エステルおよび直鎖または分岐鎖のC14からC18脂肪酸のプロピルまたはブチルエステルおよび化粧品として許容される基剤を含む。送達されるべき効果剤は、疎水性または親水性の効果剤であってよく、好ましくは皮膚美白剤、日焼け防止剤、またはUV遮断剤であってよい。本発明のプロベシクルにより送達される皮膚美白剤の適した例としては、ナイアシンアミドが挙げられ、適した日焼け防止剤またはUV遮断剤は、p‐メトキシ桂皮酸‐2‐エチルヘキシル(Parsol(商標)MCX)またはブチルメトキシジベンゾイルメタン(Parsol(商標)1789)である。これらの皮膚効果剤は、プロベシクルの0.1から40重量%の範囲の量で存在する。
【0012】
リン脂質
本発明のリン脂質は、レシチン由来であり、該レシチンはいかなる原料からでよく、好ましくは大豆レシチンからがよい。該レシチンが少なくとも32%のリン脂質を含んでいることが、好ましい。該リン脂質がプロベシクルの0.5から50重量%の範囲の量で存在することが、好ましい。
【0013】
グリセロールのモノ‐、ジ‐、トリ‐エステル
本発明のプロベシクルのもう1つの必須成分は、グリセロールのモノ‐、ジ‐またはトリ‐エステルであり、好ましくはグリセロールのモノエステルである。該グリセロールは、好ましくは14個から20個の炭素原子、より好ましくは16個から18個の炭素原子を有する脂肪酸によりエステル化されており、該脂肪酸は飽和であっても不飽和であってもよい。したがって、好ましいグリセロールエステルは、モノステアリン酸グリセロール、モノオレイン酸グリセロールまたはモノパルミチン酸グリセロールであり、その中でもモノステアリン酸グリセロールが最も好ましい。グリセロールのモノ‐、ジ‐またはトリ‐エステルは、プロベシクルの2から25重量%までの範囲の量で存在する。
【0014】
14からC18の脂肪酸のプロピルまたはブチルエステル
本発明のプロベシクルは、直鎖または分岐鎖のC14からC18脂肪酸のプロピルまたはブチルエステルを含み、C14からC18の脂肪酸のイソプロピルエステルが好ましい。より好ましい化合物は、ミリスチン酸イソプロピル、水素化された12‐ヒドロキシステアリン酸のイソプロピルエステル、またはパルミチン酸イソプロピルを含み、その中でも水素化された12‐ヒドロキシステアリン酸のイソプロピルエステルが、最高に好ましい化合物である。C14からC18の脂肪酸のプロピルまたはブチルエステルがプロベシクルの0.5から15重量%の範囲の量で存在することが、好ましい。
【0015】
化粧品として許容される基剤
本発明のプロベシクルは、化粧品として許容される基剤を含む。化粧品として許容される基剤は固形物(周囲温度において)であり、その他の成分がその上に堆積される。好ましい適した例としては、グルコース、ソルビトール、タルクまたはステアリン酸が挙げられる。化粧品として許容される基剤は、プロベシクルの30から96重量%の範囲の量で存在する。
【0016】
ステロール
本発明のプロベシクルは、ステロールを場合によって含む。本発明のプロベシクル中にステロールを含むことにより、プロベシクルの安定性が増すことが認められている。該ステロールは、フィトステロールであってもコレステロールであってもよく、好ましくはコレステロールである。存在する場合は、ステロールがプロベシクルの0.1から8重量%までの範囲の量で存在することが、好ましい。
【0017】
プロベシクルの調製方法
本発明のプロベシクルの調製方法は、
(i)前記効果剤、前記リン脂質、前記グリセロールのモノ‐、ジ‐またはトリ‐エステルおよび前記直鎖または分岐鎖のC14からC18脂肪酸のプロピルまたはブチルエステルのスラリーを、非水溶媒中で調製する段階、
(ii)前記スラリーと、化粧品として許容される基剤とを混合し、混合物を形成する段階、ならびに
(iii)前記混合物から非水溶媒を分離し、粒状のプロベシクルを形成する段階、
を含む。
【0018】
スラリーは、好ましくは40℃より高い温度で調製される。非水溶媒は、炭素鎖の長さが1から4の直鎖または分岐鎖のアルコールが好ましく、その中でもエタノールが最も好ましい溶媒である。非水溶媒は、スラリーの5から40重量%までの範囲の量で存在することが好ましく、スラリーの10から30重量%までの量がより好ましい。非水溶媒は、乾燥により混合物から分離され、真空下で分離されることが好ましい。
【0019】
化粧品組成物
本発明による化粧品組成物は、本発明のプロベシクルと水とを、水対プロベシクルの重量比が少なくとも1:1、好ましくは少なくとも4:1になるように含む。該化粧品組成物は、他の化粧品効果剤、例えば1つ以上の皮膚軟化剤、保湿剤または増粘剤を場合により含んでよい。本発明の化粧品組成物は、本発明のプロベシクルと水と、存在する場合その他の任意選択の原料とを混合することにより調製される。プロベシクルは、混合の最後に組成物に加えることが好ましく、低せん断力で配合することが好ましい。この方法を実施する温度は、好ましくは50から70℃の範囲である。
【0020】
化粧品組成物はまた、組成物を皮膚に用いたときに時に塗り広がりやすいように、組成物に存在する他の材料に対して希釈剤、分散剤または担体として作用する他の成分を含んでいてよい。
【0021】
水を除くこれらの追加材料は、液体または固体の皮膚軟化剤、溶媒、保湿剤、増粘剤および粉末を含むことができる。単独または混合物として使用できる、これらの種類の追加材料の個々の例は、以下に示される。
【0022】
皮膚軟化剤を、限定するものではないが例示すると、ステアリルアルコール、グリセリルモノリシノーリエイト、ミンクオイル、セチルアルコール、イソステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸、パルミチン酸イソブチル、ステアリン酸イソセチル、オレイルアルコール、ラウリル酸イソプロピル、ラウリル酸ヘキシル、オレイン酸デシル、オクタデカン‐2‐オール、イソセチルアルコール、エイコサニルアルコール、ベヘニルアルコール、パルミチン酸セチル、ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン油、セバシン酸ジ‐n‐ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロプル、ステアリン酸ブチル、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ラノリン、ココアバター、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、パーム核油、菜種油、サフラワー油、月見草油、大豆油、ヒマワリ油、アボカドオイル、ゴマ油、ココナッツ油、ラッカセイ油、ヒマシ油、酢酸ラノリンアルコール、ワセリン、鉱物油、ミリスチン酸ブチル、イソステアリン酸、パルミチン酸、リノール酸イソプロピル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、オレイン酸デシルおよびミリスチン酸ミリスチルが挙げられる。
【0023】
推進剤を、限定するものではないが例示すると、プロパン、ブタン、イソブタン、ジメチルエーテル、二酸化炭素および亜酸化窒素が挙げられる。
【0024】
溶媒を、限定するものではないが例示すると、エチルアルコール、イソプロパノール、アセトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルおよびジエチレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
【0025】
粉末を、限定するものではないが例示すると、チョーク、タルク、酸性白土、カオリン、スターチ、ゴム、コロイド状シリカ、ポリアクリル酸ナトリウム、テトラアルキルおよび/またはトリアルキルアリールアンモニウムスメクタイト、化学修飾ケイ酸マグネシウムアルミニウム、有機修飾モンモリロナイト粘土、含水ケイ酸アルミニウム、フュームドシリカ、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびモノステアリン酸エチレングリコールが挙げられる。
【0026】
これらの追加材料は、好ましくは化粧品組成物の10から99.9重量%、好ましくは50から99重量%を占めることが好ましく、他の化粧品添加物がない場合は、組成物の残りを形成し得る。
【0027】
任意選択の皮膚効果剤
皮膚美白原料は、本発明のプロベシクルを介して提供される以外にも組成物中に有利に含有され得、皮膚美白効果を提供する。これらは、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンAまたはこれらの前駆体および混合物を含んでよい。特に好ましい添加ビタミンは、ビタミンB6である。当分野で公知の、他の皮膚美白有効物質もまた本発明に使用され得る。本明細書中有用な皮膚美白有効物質の限定されない例は、アロエ抽出物、乳酸アンモニウム、アゼライン酸、コジック酸、乳酸、リノール酸、リン酸アスコルビルマグネシウム、5‐オクタノイルサリチル酸、2,4‐レゾルシン誘導体、3,5‐レゾルシン誘導体、サリチル酸、3,4,5‐トリヒドロキシベンジル誘導体およびこれらの混合物である。該組成物は好ましくは、皮膚美白原料を約0.1から約10重量%、より好ましくは約0.1から約5重量%含む。
【0028】
本発明の組成物は、日焼け防止剤または日焼け止め剤の有効量を、本発明のプロベシクルを介して提供される量以外にも含有できる。有機および無機の日焼け防止/日焼け止めは、組成物中に適切に用いられ得る。適切な有機の日焼け防止剤は、2‐エチルヘキシル‐p‐メトキシシンナメート、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、2‐ヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、オクチルジメチル‐p‐アミノ安息香酸およびこれらの混合物を含む。日焼け防止剤の安全量および有効量が、本発明において有用な組成物中に使用され得る。該組成物は好ましくは、日焼け防止剤を約0.1から約10重量%、より好ましくは約0.1から約5重量%含む。
【0029】
無機の日焼け止めも、本発明において好ましくは使用される。これらは、例えば、酸化亜鉛、酸化鉄、フュームドシリカなどのシリカ、および二酸化チタンを含む。水分散性二酸化チタンおよび油分散性二酸化チタンと呼ばれる2種の形態のいずれであっても、超微細二酸化チタンは本発明に特に適している。水分散性二酸化チタンは、超微細二酸化チタンであり、その粒子は被覆されていないか、または粒子に親水性表面特性を与えるような材料で被覆されている。このような材料の例として、酸化アルミニウムおよびケイ酸アルミニウムが挙げられる。油分散性二酸化チタンは超微細二酸化チタンであり、この粒子は、疎水性表面特性を示し、この目的のために、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウムもしくはステアリン酸亜鉛などの金属石鹸またはオルガノシリコーン化合物を用いて被覆され得る。
【0030】
「超微細二酸化チタン」は、100nmより小さい、好ましくは70nm以下、より好ましくは10から40nm、および最も好ましくは15から25nmの平均粒子径を有する二酸化チタンの粒子を意味する。
【0031】
超微細二酸化チタンは、好ましい無機の日焼け止め剤である。本発明に従った組成物中に好ましく組み込まれる日焼け止めの全量は、組成物の0.1から5重量%である。
【0032】
任意選択の化粧品原料
本発明の組成物は、幅広い他の任意選択の成分を含むことができる。そのすべてが参照として本明細書中に組み込まれている、CTFA化粧品原料ハンドブック第二版、1992には、スキンケア産業において一般に使用される、限定されない多様な化粧品および医薬品の原料が記載されており、これらは、本発明の組成物への使用に適している。例として、酸化防止剤、結合剤、生物学的添加剤、緩衝剤、顔料、増粘剤、ポリマー、収斂剤、香料、保湿剤、乳白剤、調整剤、剥離剤、pH調整剤、保存料、天然抽出物、エッセンシャルオイル、皮膚感覚刺激剤、皮膚緩和剤および皮膚治療剤が挙げられる。
【0033】
本発明は、以下の限定されない実施例および図面により例示される。
【実施例】
【0034】
表1に記載した小胞を、以下に詳述した手順により調製した。比較実施例1から10は、本発明の範囲外である。実施例11から15は、本発明による。
【0035】
各実施例に記載された材料(レシチン、効果剤ナイアシンアミド(1グラム)、エステルおよびステロール)を、ビーカーに入れ、エタノールと混合し、均一な混合物にした。該混合物をその後、ステアリン酸にスプレーした後、5時間真空乾燥し、プロベシクルを調製した。ナイアシンアミドのカプセル化効率を、以下のように判定した。
【0036】
ナイアシンアミドのカプセル化効率
各プロベシクル試料を、室温で15分間撹拌することにより、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4のPBS)中に分散させた。分散液(A)のナイアシンアミド含有量を、HPLCにより測定した。分散液の一部を、固体材料がすべて分離されるまで遠心分離機に数回かけた。上清をHPLCカラムに注入し、カプセル化されなかったナイアシンアミドの含有量(B)を測定した。カプセル化効率(EE)は、EE%=(A−B)/A100により判定された。
【0037】
【表1】

【0038】
表1のデータは、本発明の範囲外の実施例(比較実施例1から10)が、カプセル化効率が5から20%の範囲で乏しいことを示している。しかし、本発明(実施例11)により調製されたプロベシクルは、40%の非常に高いカプセル化効率を提供し、各原料を個別に用いてプロベシクルが調製される場合に(比較実施例9および10)得られたカプセル化効率と比較すると、相乗的挙動を示している。カプセル化効率は、任意選択の原料であるステロールを含むことによりさらに向上する(実施例12)。実施例13から15は、非常に高いカプセル化効率を示す、本発明の範囲内の他の実施例である。
【0039】
化粧品組成物
化粧品組成物を、本発明のプロベシクルを用いずに(比較実施例16)、および用いて(実施例17)調製し、この組成を、表2に要約した。実施例17において使用したプロベシクルの組成を、表3に示した。
【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
フランツ型拡散セル実験を、ブタの背中の皮膚モデルを使用して実施し、比較実施例16および実施例17の化粧品組成物を用いた後の、皮膚に存在するナイアシンアミドの量を比較した。フランツ型拡散セル実験を、以下に記載する。
【0043】
フランツ型拡散セル実験
研究のための皮膚モデルとして、ブタの背中の皮膚を使用した。新たに利用可能なブタの背中の皮膚を採取し、角質層が損なわれないように表皮を真皮から分離した。表皮を、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4のPBS)を用いて完全に洗浄した。これをドナー室およびレセプター室の間に配置した。レセプター室はPBSで満たされており、レセプターの温度は約32℃に維持されていた。標本(約200mg)を皮膚のドナー側に塗布した。3時間後レセプター溶液を回収した(W)。皮膚のドナー側を5mlのPBSで5回洗浄した(X)。皮膚を細かく刻み、5mlのPBSで4回洗浄し(Y)、PBSおよびメタノール中に一晩浸した(Z)。試料WからZをHPLCによりナイアシンアミド含有量に関して分析した。
【0044】
この分析は、比較実施例16に関する透過ナイアシンアミド含有量、すなわち試料WおよびZのナイアシンアミド含有量の合計が、ナイアシンアミド総量(W+X+Y+Z)に対する割合で表すと5%であることを示し、一方実施例17では約20%のナイアシンアミド含有量を示した。したがって本発明は、皮膚への皮膚効果剤の増強された送達をもたらす組成物を提供する。
【0045】
実施例17において存在するプロベシクルの80Kにおける拡大透過電子顕微鏡(TEM)画像を図1に示しており、約300nmの平均直径を有する小胞相が明確に示されている。この小胞相はプロベシクルを水に加えることによっても調製され得ることの証拠を、図2に示した(これも、80Kにおける拡大TEMである。)。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施例17のように調製されたクリーム中に存在するプロベシクルの、80Kにおける拡大透過電子顕微鏡図である。
【図2】本発明のプロベシクルを水に加えることにより得られる小胞相の、80Kにおける拡大透過電子顕微鏡図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所適用化粧品製品中の、水の存在下に小胞相の形成を通しての皮膚効果剤(skin benefit agents)の増強された送達のためのプロベシクル(pro−vesicle)であり、
(i)送達されるべき効果剤、
(ii)リン脂質、
(iii)グリセロールのモノ‐、ジ‐またはトリ‐エステル、
(iv)直鎖または分岐鎖のC14からC18脂肪酸のプロピルまたはブチルエステル、および
(v)化粧品として許容される基剤、
を含む、前記プロベシクル。
【請求項2】
リン脂質が、レシチン由来である、請求項1に記載のプロベシクル。
【請求項3】
レシチンが、大豆レシチンである、請求項2に記載のプロベシクル。
【請求項4】
グリセロールの、飽和または不飽和のC16からC18の脂肪酸エステルを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロベシクル。
【請求項5】
脂肪酸エステルが、モノステアリン酸グリセロールである、請求項4に記載のプロベシクル。
【請求項6】
ミリスチン酸イソプロピル、水素化12‐ヒドロキシステアリン酸のイソプロピルエステルまたはパルミチン酸イソプロピルを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロベシクル。
【請求項7】
前記皮膚効果剤が、皮膚美白剤、日焼け防止剤またはUV遮断剤である、請求項1から6のいずれか一項に記載のプロベシクル。
【請求項8】
ステロールを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のプロベシクル。
【請求項9】
前記ステロールがコレステロールである、請求項8に記載のプロベシクル。
【請求項10】
前記ステロールがプロベシクルの0.1から8重量%の範囲の量で存在する、請求項8または9に記載のプロベシクル。
【請求項11】
前記化粧品として許容される基剤が、グルコース、ソルビトール、タルクまたはステアリン酸から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載のプロベシクル。
【請求項12】
前記リン脂質が、プロベシクルの0.5から50重量%の範囲の量で存在する、請求項1から11のいずれか一項に記載のプロベシクル。
【請求項13】
前記グリセロールのモノ‐、ジ‐またはトリ‐エステルが、プロベシクルの2から25重量%の範囲の量で存在する、請求項1から12のいずれか一項に記載のプロベシクル。
【請求項14】
前記直鎖または分岐鎖のC14からC18脂肪酸のプロピルまたはブチルエステルが、プロベシクルの0.5から15重量%の範囲の量で存在する、請求項1から13のいずれか一項に記載のプロベシクル。
【請求項15】
前記化粧品として許容される基剤が、プロベシクルの30から96重量%の範囲の量で存在する、請求項1から14のいずれか一項に記載のプロベシクル。
【請求項16】
水と、請求項1から15のいずれか一項に記載のプロベシクルとを、水対プロベシクルの重量比が少なくとも4:1になるように含む皮膚効果剤の増強された送達のための、化粧品組成物。
【請求項17】
請求項1から15のいずれか一項に記載のプロベシクルの調製方法であり、
(i)前記効果剤、前記リン脂質、前記グリセロールのモノ−、ジ−またはトリ‐エステルおよび前記直鎖または分岐鎖のC14からC18脂肪酸のプロピルまたはブチルエステルのスラリーを、非水溶媒中で調製する段階、
(ii)前記スラリーと、化粧品として許容される基剤とを混合し、混合物を形成する段階、ならびに
(iii)前記混合物から非水溶媒を分離し、粒状のプロベシクルを形成する段階、
を含む、前記調製方法。
【請求項18】
非水溶媒がエタノールである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記スラリー中の非水溶媒が、10から30重量%の範囲の量で存在する、請求項17または請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−534544(P2008−534544A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503432(P2008−503432)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/002957
【国際公開番号】WO2006/103091
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】