説明

皮膚外用剤

【課題】塗布時にのびが良く、べたつかず、皮膚にしっとりとした感触を与え、保存安定性に優れた皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】(A)(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマーと、(B)高重合シリコーンと、(C)下記一般式(1)
【化1】


(式中、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり、mは50〜1000、nは1〜40、aとbはそれぞれ5〜50の整数)で示されるポリエーテル変性シリコーンとを含有することを特徴とする皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布時にのびが良く、べたつかず、皮膚にしっとりとした感触を与え、且つ保存安定性に優れた皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クリーム、乳液等の皮膚外用剤には、皮膚に潤いを与えたり、感触を変化させる目的で各種油剤の配合がなされてきた。中でもシリコーン油はすべりの良い感触から汎用されている。そしてシリコーン油を安定に配合するため、界面活性剤を多量に用いて乳化したり、カルビキシビニルポリマー等の高分子増粘剤を用いて分散する技術が用いられてきた。しかしながら界面活性剤を多量に用いた場合には界面活性剤に由来するべたつき感を生じやすいという欠点があり、高分子増粘剤を用いた場合には高分子増粘剤に由来する引っ掛かり感を生じやすいという欠点があった。
【0003】
このため種々の検討が行われている。例えば特定のアルキル変性カルボキシビニルポリマーとシリコーン誘導体を組み合わせた毛髪用乳化組成物や皮膚化粧料、多価アルコールと低粘度シリコーン油とアルキル変性カルボキシビニルポリマーを組み合わせる化粧料、シリコーンポリマーとAMPSポリマーを含む組成物等が挙げられる。(特許文献1〜4参照)
【0004】
また、べたつきの少ない界面活性剤としてポリエーテル変性シリコーンを用いる検討も種々行われている。例えば、シリコーン油と特定の高分子量ポリエーテル変性シリコーンとを組み合わせる乳化化粧料、シリコーン油と特定のポリエーテル変性シリコーンを組み合わせるシリコーン乳化組成物等が挙げられる。(特許文献5、6参照)
【0005】
更に、高分子増粘剤とポリエーテル変性シリコーンを組み合わせて、べたつきの低減と保存安定性の向上を図る検討も行われている。例えば、アルキル変性カルボキシビニルポリマーと特定HLBのポリエーテル変性シリコーンを組み合わせた皮膚外用剤や特定のポリエーテル変性シリコーンと油分と特定分子量の水溶性高分子を組み合わせる乳化組成物等が挙げられる。(特許文献7、8参照)
【0006】
【特許文献1】特開平9−77641号公報
【特許文献2】特開平9−30924号公報
【特許文献3】特開平8−245357号公報
【特許文献4】特開2003−277222号公報
【特許文献5】特開平8−268831号公報
【特許文献6】特開平8−268831号公報
【特許文献7】特開2000−34215号公報
【特許文献8】特開平10−306020号公報
【0007】
これらの検討のごとく、皮膚に良好な感触を与え、べたつかず、且つ保存安定性に優れた皮膚外用剤が開発されているが、近年消費者の要求の高まりにより、更なる改良が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、塗布時にのびが良く、べたつかず、皮膚にしっとりとした感触を与え、保存安定性に優れた皮膚外用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、このような事情に鑑み鋭意検討した結果、アクリル酸ナトリウムとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムとの共重合体である(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマーと、高重合シリコーンと、特定のポリエーテル変性シリコーンとを組み合わせて配合することにより、塗布時にのびが良く、べたつかず、皮膚にしっとりとした感触を与え、保存安定性に優れた皮膚外用剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち本発明の請求項1は、(A)(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマーと、(B)高重合シリコーンと、(C)下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり、mは50〜1000、nは1〜40、aとbはそれぞれ5〜50の整数)で示されるポリエーテル変性シリコーンとを含有することを特徴とする皮膚外用剤である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、塗布時にのびが良く、べたつかず、皮膚にしっとりとした感触を与え、保存安定性に優れた皮膚外用剤を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の構成を詳述する。
【0013】
本発明の皮膚外用剤に用いられる成分(A)の(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマーは、International Cosmetic Ingredient Dictionary[Tenth Edition 2004、The Cosmetic,Toiletry,and Fragrance Association発行]に「SODIUM ACRYLATE/ACRYLOYLDIMETHYL TAURATE COPOLYMER」と記載される、アクリル酸ナトリウムとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムとの共重合体である。該ポリマーを含む市販品としては、(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマー37.5質量%含み、他の成分としてイソヘキサデカン、オレイン酸ソルビタン、ポリソルベート80、及び水を含有する、SIMULGEL EG(SEPPIC社製)があり、これを好適に使用することができる。
【0014】
本発明の皮膚外用剤における、成分(A)(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマーの好ましい配合量は、0.03〜3.0質量%(以下、単に%と略す)であり、更に好ましくは0.1〜2.0%である。配合量が0.03%未満であると保存安定性を損ねる傾向にあり、配合量が3.0%を超えるとべたつきを生じる傾向にある。
【0015】
本発明の皮膚外用剤に用いられる成分(B)の高重合シリコーンは、下記一般式(2)
【化2】

(式中、Rはメチル基又は一部がフェニル基を表し、Rはメチル基又は水酸基を表す。nは650以上である)で表されるものであれば限定されるものではなく、1種又は2種以上選択して用いることができる。
その中でも、重合度として、nが2000〜5000であると仕上がりの滑らかさの面で特に好ましい。
【0016】
本発明の皮膚外用剤における成分(B)高重合シリコーンの好ましい配合量は、0.5〜10.0%であり、更に好ましくは1.0〜5.0%である。配合量が0.5%未満であるとべたつきを生じる傾向にあり、配合量が10.0%を超えると塗布時ののびが損なわれる傾向にある。
【0017】
本発明の皮膚外用剤に用いられる成分(C)ポリエーテル変性シリコーンは下記一般式(1)
【化3】

(式中、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり、mは50〜1000、nは1〜40、aとbはそれぞれ5〜50の整数)で示されるものであり、その好ましい配合量は、0.1〜5.0%であり、更に好ましくは0.5〜3.0%である。配合量が0.1%未満であると、保存安定性を損なう傾向にあり、配合量が5.0%を超えるとべたつきを生じやすくなる傾向にある。
【0018】
本発明において、発明の効果を損なわない範囲であれば、上記必須成分の他に、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ガム質、油分、低級アルコール、多価アルコール、高級アルコール、粉体、噴射剤、防腐剤、キレート剤、酸化防止剤、pH調整剤、色素、香料等を配合することも可能である。
【0019】
本発明の皮膚外用剤はクリーム、乳液等の皮膚化粧料、洗顔料、ハンドソープ、ボディシャンプー、メイク落とし等の皮膚洗浄料に応用することができる。
【実施例】
【0020】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明を説明する。本発明は、これらにより限定されるものではない。
【0021】
実施例、比較例に示した物性試験、官能試験の試験方法は下記の通りである。尚、以下の表に示す組成物の配合量は、それぞれ%で示す。
【0022】
(1)のびの良さ、べたつきの無さ、しっとり感
20名の被験者によって皮膚外用剤(クリーム)の試料を顔に塗布した。その後被験者本人が、のびの良さ、べたつきの無さ、しっとり感の項目について官能評価し、平均評価点を求めた。評価基準は、以下の通りである。
【0023】
4:非常に良好
3:良好
2:やや悪い
1:悪い
【0024】
(2)保存安定性
皮膚外用剤(クリーム)の試料を試験管に入れ、40℃、3000rpmの条件で30分間及び1時間遠心分離機にかけた。その後の状態を観察し評価した。評価基準は以下の通りである。
【0025】
○:1時間で変化なし
△:30分で変化なし
×:分離、沈殿等変化あり
【0026】
実施例1〜3、比較例1〜5
表1に示した処方の皮膚外用剤(クリーム)を常法により作製し、前記各試験を実施した。その結果を表1に併せて示す。
【0027】
【表1】

【0028】
表1より明らかなように本発明の成分を用いた実施例の皮膚外用剤(クリーム)はいずれも優れた性能を有していた。一方、必須成分のいずれかを欠いた比較例では、のびの良さ、べたつきの無さ、しっとり感、保存安定性のいずれかの面で劣っていた。
【0029】
実施例4(ハンドクリーム)
(A)SIMULGEL EG(商品名) SEPPIC社製 2.5%
(B)高重合ジメチコノール(重合度3000) 5.0
(C)ポリエーテル変性シリコーン 7.0
(BY11−030(商品名) 東レ・ダウコーニング社製、50%液)
グリセリン 5.0
メチルフェニルポリシロキサン 7.0
スクワラン 3.0
ジプロピレングリコール 5.0
キサンタンガム 0.05
2−エチルヘキサン酸トリグリセリド 3.0
ビタミンE 0.05
グリチルリチン酸ステアリル 0.1
クエン酸 適 量
クエン酸ナトリウム 適 量
混合植物抽出液 0.5
(ファルコレックスBX32(商品名) 一丸ファルコス社製)
混合植物抽出液 0.5
(ファルコレックスBX52(商品名) 一丸ファルコス社製)
香料 0.3
精製水 残 量
【0030】
上記組成の皮膚外用剤を作成し評価したところ、のびの良さ、べたつきの無さ、滑らかさ、保存安定性について、優れた性能を有していた。
【0031】
尚、上記の実施例4において使用した香料の組成を表2に示す。
【0032】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマーと、(B)高重合シリコーンと、(C)下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり、mは50〜1000、nは1〜40、aとbはそれぞれ5〜50の整数)で示されるポリエーテル変性シリコーンとを含有することを特徴とする皮膚外用剤。

【公開番号】特開2007−277142(P2007−277142A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104725(P2006−104725)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】