説明

皮膚外用貼付剤

【課題】補助テープなどを用いなくても数時間患部に付着し得る十分な付着力を有し、かつ患部に貼付前に膏体同士が接着した場合においても容易に剥離できるなどの使用性に優れた含水性皮膚外用貼付剤を提供する。
【解決手段】貼付剤の膏体中に、薬物0.1〜10重量%、粘着性基剤0.1〜20重量%、架橋剤0.001〜3.0重量%、水15〜60重量%、粘着付与性樹脂2〜20重量%、粘着付与性樹脂溶解剤0.4〜10重量%、吸油性無機性粉末0.1〜30重量%、並びにデキストリン脂肪酸エステル0.1〜20重量%を含有し、膏体の厚さが100〜1000μmであることを特徴とする含水性皮膚外用貼付剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚外用貼付剤に関し、特に付着力、使用性に優れた含水性皮膚外用貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚外用剤として一般にゲル状軟膏剤、クリーム剤、液剤、貼付剤などが実用されているが、中でも貼付剤は1回の使用で薬物の効果が数時間持続することから、肩や背中など普段は衣服の下に隠れてしまう患部の治療に有効な製剤である。
【0003】
貼付剤に関しては、ゴム系粘着剤、アクリル(エマルジョン)系粘着剤、シリコン系粘着剤等を用い、実質的に水を含有しない硬膏剤、プラスター剤、テープ剤(非水型粘着剤)と、水溶性のアクリル系粘着剤を用いた、水を比較的多く含むパップ剤(含水型粘着剤)に大別出来る。
【0004】
非水型粘着剤は、付着力が強い、膏体が薄い(支持体と粘着剤層合わせても1mm以下)ため柔軟性が良い等の利点を有しているが、製剤の閉塞性が高く皮膚に対して刺激性が認められたり、疎水性の粘着剤を使用するため、特に発汗時に皮膚から剥離してしまったり、という欠点がある。
【0005】
一方、含水型粘着剤は、水を多く含有するため、皮膚に対する刺激性が弱いという利点を有しているが、付着力が比較的弱いことや水分の揮散により著しく付着力が低下すること、及び膏体が厚い(支持体と粘着剤層を合わせて1.5mm以上)ため、柔軟性が低く、更に大量の発汗時は汗を吸いすぎて、その重みで脱落することがある等の欠点がある。
【0006】
更に、非水型粘着剤と含水型粘着剤を混在した新規な含水性貼付剤(特許文献1及び2)も知られている。しかし、この新規な含水性貼付剤においても十分な付着力を有しているとはいえず、また膏体の吸水作用が弱いため、特に発汗時に剥がれやすい傾向にあった。さらに、患部に貼付する前に膏体同士が接着して使用出来なくなる場合があるなどの欠点があった。
貼付剤の付着力の増強についてはこれまでいろいろ検討されてきているが(特許文献3〜8)、これらの方法でも付着力が不十分であったり、複雑な製造方法であったりして、どれも満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平06−145047号公報
【特許文献2】特開平06−145053号公報
【特許文献3】特開平05−139961号公報
【特許文献4】特開平06−219941号公報
【特許文献5】特開平08−295624号公報
【特許文献6】特開平11−302160号公報
【特許文献7】特開平08−175979号公報
【特許文献8】特開2000−128780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、補助テープなどを用いなくても数時間患部に付着し得る十分
な付着力を有し、かつ患部に貼付前に膏体同士が接着した場合においても容易に剥離できるなどの使用性に優れた含水性皮膚外用貼付剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者らは従来の薬物、粘着性基剤、架橋剤、水、粘着付与性樹脂及びその溶解剤、吸油性無機性粉末を必須として含有する含水性皮膚外用貼付剤に見られる欠点を解消すべく種々検討した結果、貼付剤の膏体中にデキストリン脂肪酸エステルを含有させると、付着力が向上し、かつ患部に貼付前に膏体同士が接着した場合においても容易に剥離できる含水性皮膚外用貼付剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、貼付剤の膏体中に、薬物0.1〜10重量%、粘着性基剤0.1〜20重量%、架橋剤0.001〜3.0重量%、水15〜60重量%、粘着付与性樹脂2〜20重量%、粘着付与性樹脂溶解剤0.4〜10重量%、吸油性無機性粉末0.1〜30重量%、並びにデキストリン脂肪酸エステル0.1〜20重量%を含有し、膏体の厚さが100〜1000μmであることを特徴とする含水性皮膚外用貼付剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の含水性皮膚外用貼付剤は、皮膚への付着力が向上しているため、捲れる、脱落するといった従来の含水性皮膚外用貼付剤が有していた欠点が解消している。また、患部に貼る前に貼付剤の膏体同士が接着した場合も、簡単に剥がして再使用できるので経済的である。更に、多量に発汗する夏場や屋外での活動の際の使用でも十分な付着力が持続するため、テープ等で固定する必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】粘着力試験(i)で使用した装置を表す模式図である。
【図2】粘着力試験(ii)で使用した装置を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明におけるデキストリン脂肪酸エステルとは、デキストリンと脂肪酸とから形成されるエステル化合物をいう。該デキストリン部は、デンプンを分解しマルトース又はデキストロースに至る中間段階生成物の総称で、アミロデキストリン(ヨウ素反応:青藍色、比旋光度:+190〜+195°、分子量:>10000)、エリスロデキストリン(ヨウ素反応:赤色〜褐色、比旋光度:+194〜+196°、分子量:6200〜7000)、アクロデキストリン(ヨウ素反応:淡褐色、比旋光度:+192°、分子量:3700)及びマルトデキストリン(ヨウ素反応:無色、比旋光度:+181〜+183°)等が挙げられ(第15改正日本薬局方解説書)、このうち医薬品添加物規格(以下、薬添規ともいう。)「パルミチン酸デキストリン」確認試験2に準じ、デキストリン脂肪酸エステルの水溶液が紫色〜赤褐色を呈するものが好ましい。また、デキストリン脂肪酸エステルの該脂肪酸部は、炭素数が12〜22の脂肪酸が好ましく、このうち飽和脂肪酸がより好ましい。また、デキストリン脂肪酸エステルの酸価は、薬添規酸価試験法に準じ、95%エタノール/キシレン混液(1:1)溶解時において、38以下(mgKOH/g)が好ましい。
【0014】
デキストリン脂肪酸エステルは、例えば、パルミチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、ベヘン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、ヤシ油脂肪酸デキストリン、及びラウリン酸デキストリンなどが挙げられるが、これらのうちパルミチン酸デキストリン及びミリスチン酸デキストリンが好ましく、パルミチン酸デキストリンが特に好ましい。パルミチン酸デキストリンは、レオパールKL2、レオパールKS2、レオパールTL2(千葉製粉製)、パルミチン酸デキストリン(日光ケミカルズ製)などの市販品
として、ミリスチン酸デキストリンは、レオパールMKL2(千葉製粉製)などの市販品として入手可能である。これらのデキストリン脂肪酸エステルは、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0015】
上記デキストリン脂肪酸エステルの含有量は、長時間患部に付着するのに十分な粘着力を与えつつ、膏体同士が接着した際に容易に剥離できるための適度な粘着力を付与する観点から膏体重量に対して0.1〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%、特に好ましくは0.5〜7.0重量%であり、最も好ましくは0.5〜5.0重量%である。
【0016】
本発明で用いることができる薬物としては、例えば、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、カンフル、メントール、トウガラシエキス、ノニル酸ワニリルアミド等の局所刺激剤、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール等の末梢血流改善剤、ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸イソチペンジル等の抗ヒスタミン剤、トウキ、オウバク、サンシシ、アルニカ、西洋トチノミ等の消炎性生薬のエキスや粉末、グリチルレチン酸、インドメタシン、ピロキシカム、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、フェルビナク、ロキソプロフェン、ジクロフェナック等の非ステロイド性消炎鎮痛剤、プレドニゾロン、ハイドロコルチゾン、デキサメタゾン、フルオシノロンアセトニド等の外用ステロイド剤、クロタミトン等の鎮痒剤、リドカイン、ジブカイン等の局所麻酔剤、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム等の殺菌消毒剤等が挙げられる。これらのうち非ステロイド性消炎鎮痛剤が好ましく、インドメタシンが特に好ましい。薬物の含有量は、一般的に貼付剤において薬理効果を奏する範囲の含有量であれば良く、膏体重量に対して0.1〜10重量%であることが好ましく、特に0.5〜5重量%が好ましい。
【0017】
本発明における粘着性基剤とは、含水状態で粘着性を示す基剤であり、その例としては、アクリル酸を重合したもの(ポリアクリル酸)、アクリル酸を部分的に中和し重合したもの(ポリアクリル酸部分中和物)及びアクリル酸を完全に中和し重合したもの(ポリアクリル酸完全中和物)が挙げられ、膏体の粘着性を高めるために含有する。特にアクリル酸を部分的に中和し重合したものについては、中和度としては70モル%以下が好ましく、更に60モル%以下、特に50モル%以下が好ましい。また、中和度が10モル%以上であるのが生産性の点で好ましい。ポリアクリル酸の市販品としては、例えば、ジュリマーAC−10L(日本純薬製)、アクアリックHL(日本触媒製)等が挙げられる。ポリアクリル酸部分中和物の市販品としては、例えば、ビスコメートNP−600、ビスコメートNP−700、ビスコメートNP−800(昭和電工製)、アロンビス105X、アロンビス106X(日本純薬製)等が挙げられる。ポリアクリル酸完全中和物(ポリアクリル酸ナトリウム)の市販品としては、例えば、アロンビスS(日本純薬製)、ポリスターA−1060(日本油脂製)、ビスコメートF−480SS(昭和電工製)、アクアリックFH(日本触媒製)等が挙げられる。これらポリアクリル酸、ポリアクリル酸部分中和物及びポリアクリル酸完全中和物は、一種又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
粘着性基剤の含有量は、一般的に貼付剤において必要な粘着力を有する範囲の含有量であれば良く、膏体重量に対して0.1〜20重量%であることが好ましく、特に0.5〜10重量%が好ましい。粘着性基剤の含有量が20重量%を超えると膏体が凝集し、粘着力が低下する場合がある。また、含有量が0.1重量%未満の場合には、膏体の保型性が低下したり、皮膚への接着性が悪くなるという問題を生じる。
また本発明の付着力の観点から、粘着性基剤とデキストリン脂肪酸エステルの比率は、重量比で1:0.005〜200の範囲であることが好ましく、特に1:0.05 〜20の範囲が好ましい。
【0019】
本発明の架橋剤としては、合成ヒドロタルサイト、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム及び合成ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらのうち、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート及び/又は乾燥水酸化アルミニウムゲルが好ましい。架橋剤の市販品には、合成ヒドロタルサイトとしては、例えばアルカマック(協和化学工業製)が、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテートとしては、例えばグリシナールSG、グリシナールPG(協和化学工業製)が、乾燥水酸化アルミニウムゲルとしては、例えば乾燥水酸化アルミニウムゲルS−100(協和化学工業製)が、ケイ酸アルミン酸マグネシウムとしては、例えばノイシリンUFL2(富士化学工業製)が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムとしては、例えばノイシリンA、ノイシリン(富士化学工業製)、ネオアルミンS(富田製薬製)が、水酸化アルミナマグネシウムとしては、例えばサナルミン(協和化学工業製)が、合成ケイ酸アルミニウムとしては、例えば合成ケイ酸アルミニウム(協和化学工業製、富田製薬製)等が挙げられる。これらの架橋剤は、一種又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
架橋剤の含有量は、一般的に貼付剤において膏体を形成できる範囲の含有量であれば良く、膏体重量に対して0.001〜3.0重量%であることが好ましく、特に0.001〜1.5重量%が好ましい。架橋剤の含有量が3.0重量%を超えると架橋が過剰になって膏体が凝集するという問題が生じる場合があり、0.001重量%未満の場合は架橋が不十分となり、膏体残りを生じる。
【0021】
本発明における水の含有量は、一般的に含水性の貼付剤において必要とされる範囲の含有量であれば良く、膏体重量に対して15〜60重量%であることが好ましく、特に20〜50重量%が好ましい。水が60重量%を超えた場合、膏体の保型性及び粘着性が著しく低下する場合があり好ましくなく、また、15重量%未満の場合は架橋反応が起きにくく、貼付してから剥離する際の膏体残りが発生するので好ましくない。
【0022】
本発明で用いる粘着付与性樹脂は非水溶性の樹脂であり、その例としては、エステルガム、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、水素添加ロジングリセリンエステル、ロジン、テルペン樹脂等が挙げられ、そのうちエステルガムが好ましい。粘着付与性樹脂の含有量は、一般的に貼付剤において含有する範囲の含有量であれば良く、膏体重量に対して2〜20重量%であることが好ましく、特に5〜20重量%が好ましい。2重量%未満では、本発明の付着力向上及び膏体同士が接着した場合の剥離性向上の効果がなく、20重量%を超える場合は、製造上困難であったり、水分含有量が低下し、皮膚に対する刺激性が高くなる。
また本発明の付着力の観点から、粘着付与性樹脂とデキストリン脂肪酸エステルの比率は、重量比で1:0.005〜10の範囲であることが好ましく、特に1:0.025〜2の範囲が好ましい。
【0023】
本発明で用いる粘着付与性樹脂溶解剤としては、牛脂、豚脂等の動物油、オリーブ油、ゴマ油、大豆油等の植物油、ワセリン、流動パラフィン等の鉱物油、中鎖脂肪酸トリグリセライド等が挙げられ、このうち鉱物油及び/又は中鎖脂肪酸トリグリセライドが好ましい。溶解剤の含有量は、製造時の取り扱いの容易さ等を考慮して必要な最小量を用いることが好ましく、膏体重量に対して0.4〜10重量%が好ましい。10重量%を超える場合では、膏体の保型性を弱めたりするため、好ましくない。
【0024】
本発明で用いる吸油性無機粉末としては、カオリン、タルク、ベントナイト、モンモリロナイト、酸化亜鉛、酸化チタン、無水ケイ酸等が挙げられ、そのうちカオリンが好ましい。これらの成分は20〜400v/w%の吸油能力を有するものであるが、これらの一
種または二種以上を組み合わせて使用することもできる。吸油性無機粉末の含有量は、一般的に貼付剤において含有する範囲の含有量であれば良く、膏体重量に対して0.1〜30重量%であることが好ましく、特に1〜15重量%が好ましい。0.1重量%未満では実質的に配合する意味がなく、30重量%を超える場合には得られる膏体が硬くなって柔軟性を失い、好ましくない。
【0025】
本発明の含水性皮膚外用貼付剤に於いて膏体の厚さは100〜1000μmである。一般に膏体の厚さを厚くすると付着力は増大するが、逆に柔軟性は低下し、貼付時の違和感が増大し、脱落し易くなる。従来、公知の含水性成型パップ剤に於いてはそれ自身の付着力は比較的弱く、ある程度の付着力を期待するにはある程度の厚みが必要であるため、貼付時の脱落といった問題は避け難かった。本発明の含水性皮膚外用貼付剤によれば、膏体を薄くしても十分な付着力を有するので、使用性を改善するためには、可能な限り膏体を薄くすることが好ましい。しかし、膏体を薄くすると含有させることのできる薬物量が少なくなるという観点から、本発明の含水性皮膚外用貼付剤に於いては、膏体の厚さは100〜1000μmとなり、100〜800μmであることが好ましい。
【0026】
本発明の皮膚外用貼付剤の膏体中には、上記の成分に加えて、通常の膏体に使用される添加物を、目的に応じて適宜配合することができる。添加物としては、硬化調整剤、溶媒、吸収促進剤、安定化剤、界面活性剤等が挙げられる。これらの添加物は、単独又は2種以上の組み合わせで使用することが可能である。
【0027】
硬化調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、エデト酸二ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸、乳酸等が挙げられる。硬化調整剤の含有量は、膏体重量に対して0.001〜3重量%であることが好ましく、特に0.01〜2重量%が好ましい。
【0028】
溶媒としては、(濃)グリセリン、D−ソルビトール液、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、マクロゴール、ジエチレングリコール、1、3-ブチレングリコール、2-エチル−1、3-ヘキサンジオール、ポリプロピレングリコール2000等の多価アルコール;エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の一価のアルコール;トリアセチン、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、トリイソオクタン酸等の炭素数が6〜12の中鎖脂肪酸トリグリセリド等のエステル類;クロタミトン等のケトン類等が挙げられる。これら溶媒は、単独又は2種以上の組み合わせで使用することが可能である。溶媒の含有量としては、膏体重量に対して1〜60重量%であることが好ましく、特に2〜50重量%が好ましい。
【0029】
吸収促進剤としては、L−メントール、オレイン酸、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル等が挙げられる。吸収促進剤としてL−メントールを使用する場合、L−メントールの含有量は、膏体重量に対して0.01〜10重量%であることが好ましく、特に0.1〜5.0重量%が好ましい。
【0030】
安定化剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル等のフェノール性物質;クロロブタノール、フェニルエチルアルコール等の中性物質;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の逆性石鹸;ビタミンE、ブチルヒドロキシアニソール、酢酸トコフェロール、没食子酸プロピル、2-メルカプトベンズイミダゾール等の抗酸化剤;アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤、エデト酸ナトリウム等のキレート剤が挙げられる。安定化剤の含有量は、膏体重量に対して0〜1.0重量%であることが好ましく、特に0.001〜0.5重量%が好ましい。
【0031】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム等の陰イオン性界面活性剤、塩化セチル
ピリジニウム等の陽イオン性界面活性剤;モノステアリン酸グリセリル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤の含有量は、膏体重量に対して0〜3重量%であることが好ましく、特に0.01〜1重量%が好ましい。
【0032】
また、本発明の膏体の粘着力は、例えば、医薬品製造販売指針に記載されている粘着力試験(後述する試験例1)で測定した場合、試験結果が表1に表されるスチールボールのNo.4以上であることが好ましく、特にNo.5以上が好ましい。No.4未満では貼付中に剥がれ落ちやすくなるため好ましくない。
【0033】
本発明の含水性皮膚外用貼付剤は、支持体、膏体及びライナーを積層した構造である。支持体としては、コットン、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ビニロン、アセテート、ポリプロピレン、ポリウレタン等の不織布若しくは織布が挙げられる。ライナーとしては、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチック系のライナー、セルロース系のライナー及びシリコーン系剥離剤を表面にコーティングした上記ライナー、紙シート等が挙げられ、特にポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチック系のライナーが好ましい。
【0034】
本発明の貼付剤の製造方法としては、通常の製剤化の方法が使用でき、例えば、支持体の不織布又は織布面とライナーの間に、膏体を展延し貼付剤を作製することができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例、試験例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
インドメタシン1重量部、クロタミトン2重量部、ポリアクリル酸部分中和物3.5重量部、カルメロースナトリウム3重量部、濃グリセリン22重量部、カオリン3重量部、ゼラチン1重量部、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート0.30重量部及び乳酸1.25重量部を精製水35重量部と混和し、これに軽質流動パラフィン2.50重量部に加温溶解したエステルガム10重量部、パルミチン酸デキストリン2重量部を添加し、更に、精製水を加えて全100重量部とし、撹拌機にて全質均等となるまで撹拌して得た組成物をポリエステル製の剥離ライナーフィルム上に展延塗布しポリエステル製の伸縮性織布で被覆した後、1枚あたり10cm×7cmに裁断して貼付剤1を得た。
【0037】
(実施例2)
実施例1のパルミチン酸デキストリンの配合量を、2重量部から5重量部に変えたほかは実施例1と同様にして貼付剤2を得た。
【0038】
(実施例3)
実施例1のパルミチン酸デキストリン2重量部を、ミリスチン酸デキストリン2重量部に変えたほかは実施例1と同様にして貼付剤3を得た。
【0039】
(実施例4)
実施例1のパルミチン酸デキストリンの配合量を、2重量部から0.5重量部に変えたほかは実施例1と同様にして貼付剤4を得た。
【0040】
(実施例5)
実施例1のパルミチン酸デキストリンの配合量を、2重量部から1重量部に変えたほか
は実施例1と同様にして貼付剤5を得た。
【0041】
(比較例1)
実施例1のパルミチン酸デキストリンを配合しないほかは実施例1と同様にして貼付剤6を得た。
【0042】
<試験例1(粘着力試験)>
(i)ボールタック試験
製造後2週間経過した貼付剤1〜貼付剤6を用いて、以下の試験を行った。
高さ18cm、傾斜角30°の傾斜台を用意し、各貼付剤を5cm×3cmに切りとり、斜面上の上から10cmの部分に粘着層面を上にして長さ5cmとなるように両面テープで固定し、残りの斜面を貼付剤との段差をなくすように紙で覆った(図1)。次に、表1に示す一連のスチールボールを号数の低い順から斜面の上端より転がして、貼付剤の粘着面で10秒間停止したスチールボールのうち最も大きい号数を確認した。この操作を3回繰返して、確認したスチールボールの号数の平均値を各貼付剤の粘着力とした。結果を表2に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
(ii)プローブタック試験
貼付剤1及び貼付剤4〜6を5×7cmに切断し、粘着層面を上にして台座に両面テープで固定し、更に粘着層面上に、直径22mmの穴が開いた厚さ1mmのシリコン板を置いた。この粘着層面(シリコン板の穴の部分)に、直径20mmのアルミニウム製プローブで100g/cm2の荷重を1秒間負荷し(図2)、10mm/secの速度でプローブを引き剥がす時の最大荷重(g)をテクスチャーアナライザーTA−TAi(英弘精機株式会社製)を用いて測定した。その結果を表2に示す。
【0045】
<試験例2(吸水性試験)>
貼付剤1〜貼付剤6(10cm×7cm)及び同面積の不織布の重量を測定し、続いて0.5%塩化ナトリウム水溶液100mLに35℃で2時間浸漬させた後、表面の水分を拭き取り再度重量を測定して、下記式から貼付剤1枚当たりの吸水量(g)を算出した。その結果を表2に示す。
吸水量(g)=(W3−W4)−(W1−W2)
W1:各貼付剤の浸漬前の重量(g)
W2:不織布の浸漬前の重量(g)
W3:各貼付剤の浸漬後の重量(g)
W4:不織布の浸漬後の重量(g)
【0046】
<試験例3(官能試験)>
男性20人に対して発汗する条件下(例えば、サウナ入浴、ゴルフプレー等)で、貼付剤1〜貼付剤3及び貼付剤6(10cm×7cm)を1枚ずつ同時に腰及び肘に3時間以上貼付し、剥離直前の評価をVAS(Visual Analogue Scale)法[左端を0cm(貼付していない)、右端を10cm(完全に貼付している)としたスケール上に、本人の感覚的な位置を記入し、左端からの長さを測定]を用いて行った。その平均値を表2に示す。
【0047】
<試験例4(膏体間接着性試験)>
貼付剤1〜貼付剤6(10cm×7cm)について、長辺側を2つ折りにし膏体間を貼り合わせ、2kgの荷重を1分間負荷した。1分経過後、貼り合わせた膏体間を手で剥離し、下記判断基準で評価した。結果を表2に示す。
<判断基準>
○:剥離性が良い(支持体の変形なしに容易に剥離できる)
×:剥離性が悪い(支持体が変形するほど剥離が困難である)
【0048】
【表2】

【0049】
表2より、本発明の貼付剤は、比較例の貼付剤と比べて粘着力が向上している(試験例1−(i)、(ii))。また、膏体間が接着した時でも容易に剥離でき、再使用可能である(試験例4)。更に、吸水力も向上しており(試験例2)、発汗時の付着力にも優れていることが明らかである(試験例3)。
【0050】
また、本願発明の貼付剤について、ラットによるインドメタシン吸収試験及び薬効試験を行ったところ、いずれの貼付剤も有効成分であるインドメタシンが皮膚及び筋肉へ速やかに吸収され、強い鎮痛作用や抗炎症作用を発揮したことから、デキストリン脂肪酸エステルは有効成分の薬効発現には何ら影響しないことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貼付剤の膏体中に、薬物0.1〜10重量%、粘着性基剤0.1〜20重量%、架橋剤0.001〜3.0重量%、水15〜60重量%、粘着付与性樹脂2〜20重量%、粘着付与性樹脂溶解剤0.4〜10重量%、吸油性無機性粉末0.1〜30重量%、並びにデキストリン脂肪酸エステル0.1〜20重量%を含有し、膏体の厚さが100〜1000μmであることを特徴とする含水性皮膚外用貼付剤。
【請求項2】
前記デキストリン脂肪酸エステルがパルミチン酸デキストリン及び/又はミリスチン酸デキストリンである請求項1に記載の含水性皮膚外用貼付剤。
【請求項3】
前記薬物が非ステロイド性消炎鎮痛剤である請求項1又は2に記載の含水性皮膚外用貼付剤。
【請求項4】
前記粘着性基剤がポリアクリル酸、ポリアクリル酸部分中和物及びポリアクリル酸完全中和物から選択される一種又は二種以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の含水性皮膚外用貼付剤。
【請求項5】
前記架橋剤がジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート及び/又は乾燥水酸化アルミニウムゲルである請求項1〜4のいずれか1項に記載の含水性皮膚外用貼付剤。
【請求項6】
前記粘着付与性樹脂がエステルガムである請求項1〜5のいずれか1項に記載の含水性皮膚外用貼付剤。
【請求項7】
前記溶解剤が鉱物油及び/又は中鎖脂肪酸トリグリセライドである請求項1〜6のいずれか1項に記載の含水性皮膚外用貼付剤。
【請求項8】
前記吸油性無機性粉末がカオリンである請求項1〜7のいずれか1項に記載の含水性皮膚外用貼付剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−195763(P2010−195763A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104612(P2009−104612)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【出願人】(591166330)前田薬品工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】