説明

皮膚洗浄剤組成物

【課題】 洗浄に際して、皮膚刺激が少なく、良好な泡立ちで、泡がクリーミーですべりが良く、使用感に優れた皮膚洗浄剤組成物を提供すること。
【解決手段】 次の成分(A)、(B):
(A)ミリスチルリン酸エステル塩を含むリン酸エステル塩型界面活性剤
10〜25質量%、
(B)ミリスチン酸又はミリスチルアルコール 0.5〜2.5質量%、
及び(C)水を含有し、弱酸性である皮膚洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸エステル塩型界面活性剤を洗浄基剤とした皮膚洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪用シャンプー、全身洗浄料、食器用洗剤等の皮膚に直接接する時間の長い洗浄剤組成物は、洗浄力、起泡性や泡質等の泡性能、使用感に加えて、皮膚への刺激が少ないことが求められている。一般に、洗浄剤組成物の洗浄基剤成分として用いられる脂肪酸塩型界面活性剤は、泡性能は高いものの、長期に使用すると敏感肌の人は手や肌が荒れやすくなる場合がある。
【0003】
これに対し、酢酸塩型界面活性剤、両性界面活性剤、糖骨格を有する界面活性剤等を洗浄基剤成分とする低刺激性洗浄剤組成物が開発されているが、洗浄力や起泡性が十分ではなく、優れた洗浄性との両立が更に求められている。
【0004】
一方、リン酸エステル塩型のアニオン界面活性剤は、皮膚への刺激の低さ、洗浄性は満足できるものの、泡量と泡質が十分ではなく、起泡性の点で問題があった。
このため、リン酸エステル塩型界面活性剤と高級脂肪酸塩を含有する洗浄剤組成物(特許文献1、特許文献2)や、リン酸エステル塩型界面活性剤とグリセリルエーテルを含有する洗浄剤組成物(特許文献3)等が検討されている。しかしながら、これらの洗浄剤組成物はいずれも、起泡性はある程度改善されるものの、クリーミーな泡など、泡質の点で十分満足できるものではなかった。
【特許文献1】特開昭57−49698号公報
【特許文献2】特開平1−316309号公報
【特許文献3】特開2001−107079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、洗浄に際して、皮膚刺激が少なく、良好な泡立ちで、泡がクリーミーですべりが良く、使用感に優れた皮膚洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、リン酸エステル塩型界面活性剤において、ミリスチルリン酸エステル塩を必須成分とし、これと同じ炭素数を有するミリスチン酸又はミリスチルアルコールとを組み合わせて用いれば、皮膚刺激が少なく、良好な泡立ちで、泡がクリーミーですべりが良く、使用感に優れた皮膚洗浄剤組成物が得られることを見出した。
【0007】
本発明は、次の成分(A)、(B):
(A)ミリスチル基を有するリン酸エステル塩(以下、ミリスチルリン酸エステル塩という)を含むリン酸エステル塩型界面活性剤 10〜25質量%、
(B)ミリスチン酸又はミリスチルアルコール 0.5〜2.5質量%、
及び(C)水を含有し、弱酸性である皮膚洗浄剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、皮膚刺激が少なく、良好な泡立ちで、泡がクリーミーですべりが良く、使用感に優れたものである。また、保存安定性も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いる成分(A)のリン酸エステル塩型界面活性剤は、一般式(1)で表されるリン酸モノエステル又はその塩を主体とするものが好ましく、十分な洗浄力を有し、皮膚への刺激が低いものである。
【0010】
【化1】

【0011】
式中、Aは炭素数8〜18の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を示し、mは0〜8の数を示し、X1及びX2は、同一又は異なって、水素原子、アルカリ金属、炭素数2〜3のアルキル置換アンモニウム、炭素数2〜3のヒドロキシアルキル置換アンモニウム又は塩基性アミノ酸による対イオンを示す。
【0012】
一般式(1)において、Aで示される炭素数8〜18の直鎖の炭化水素基としては、炭素数8〜18の直鎖のアルキル基又はアルケニル基が挙げられ、特に、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、パルミチル基、ステアリル基等の直鎖アルキル基が好ましい。その中で、Aがミリスチル基であるミリスチルリン酸エステル塩は、本発明における成分(A)として必須の成分である。
【0013】
一方、炭素数8〜18の分岐鎖の炭化水素基としては、R−CH(CH3)CH2−(Rは炭素数5〜15の直鎖の炭化水素基を示す)で表わされるメチル分岐アルキル基が好ましい。ここに、Rとしては、炭素数5〜15の直鎖のアルキル基又はアルケニル基が挙げられ、特にペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ラウリル基等の直鎖アルキル基が好ましい。これらのメチル分岐アルキル基以外に、エチル分岐、プロピル分岐、ブチル分岐、ペンチル分岐等の分岐鎖を有するアルキル基でも良い。
Aとしては、特に炭素数10〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましい。
【0014】
mは、オキシエチレン基の繰り返し単位数を示し、0〜8の数であるが、質量平均で0〜5の数が好ましく、特に0〜3の数が好ましい。
【0015】
一般式(1)において、X1及びX2で表されるアルカリ金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウム等が挙げられる。
また、炭素数2〜3のアルキル置換アンモニウム又は炭素数2〜3のヒドロキシアルキル置換アンモニウムは、一般式(1)で表わされるリン酸エステル又はその塩の製造工程で、相当するリン酸を中和するときに用いられるアミンに由来するものである。相当するアミンは、炭素数2〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を有する一級、二級又は三級アミンであり、例えば、ジエチルモノエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、トリエチルアミン、ジプロピルアミン、ジプロピルモノエタノールアミン、プロピルジエタノールアミン、プロピルジエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロピルジエチルアミン、イソプロピルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
【0016】
また、塩基性アミノ酸としては、例えばアルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン等が挙げられる。
【0017】
これらのうち、一般式(1)の塩として、カリウム塩、ナトリウム塩、トリエタノールアミン塩、アルギニン塩を与えるものが好ましく、特に、カリウム塩、ナトリウム塩が好ましい。
【0018】
リン酸モノエステル又はその塩の好ましい例としては、Aが炭素数10〜16の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基であるリン酸エステルのナトリウム塩、カリウム塩又はトリエタノールアミン塩、アルギニン塩が挙げられる。
【0019】
本発明においては、成分(A)として、一般式(1)のAがミリスチル基であるミリスチルリン酸エステル塩、特にモノミリスチルリン酸エステル塩を必須成分として含有する。
成分(A)のリン酸エステル塩型界面活性剤は、ミリスチルリン酸エステル塩以外に、他のリン酸エステル又はその塩を1種以上用いることができ、本質的に炭素数の異なるリン酸エステル塩の混合物である。成分(A)中のミリスチルリン酸エステル塩の含有割合は、10〜40質量%、特に15〜35質量%であるのが好ましい。この範囲において、起泡性と泡質により優れた皮膚洗浄剤組成物が得られる。
【0020】
成分(A)のリン酸エステル塩型界面活性剤は、更に、式(1)において、X1又はX2がA-(OCH2CH2m−基であるリン酸ジエステル又はその塩を含むこともできる。この場合、リン酸モノエステル(塩):リン酸ジエステル(塩)の含有量の比は、洗浄力の点から、100:0〜50:50、特に100:0〜70:30であることが好ましい。
【0021】
成分(A)の含有量は、全組成中10〜25質量%が好ましい。十分な洗浄効果を得る点から10質量%以上、特に15質量%以上とすることが好ましく、洗浄効果以外の点から他成分との量的バランスを考慮し、25質量%以下、特に20質量%以下とすることが好ましい。
【0022】
本発明で用いる成分(B)は、ミリスチン酸又はミリスチルアルコールであり、これらを組み合わせて用いることもできる。成分(B)の含有量は、全組成中に0.5〜2.5質量%が好ましく、クリーミーな泡を得つつ洗浄料の長期保存を可能とするため、1.5〜2.3質量%であるのが特に好ましい。
【0023】
また、成分(C)の水の含有量は、全組成中に50〜85質量%が好ましく、十分な泡量を得つつ洗浄料の長期保存を可能とするため、65〜80質量%であるのが特に好ましい。
【0024】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、更に、(D)炭素数4〜12のアルキル基又はアルケニル基を有するグリセリルエーテルを含有することができ、泡立ちをより向上させることができる。
かかるグリセリルエーテルのうち、例えばn−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、ラウリル基等の炭素数4〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するものが好ましく、特に炭素数4〜11、更に炭素数6〜10、就中炭素数8のアルキル基を1又は2個、特に1個有するものが好ましい。
【0025】
成分(D)のグリセリルエーテルは、1種以上を用いることができ、その含有量は、全組成中に0.5〜5質量%であるのが好ましく、十分な泡量を得つつ洗浄料の長期保存を可能とするため、1〜3質量%であるのが特に好ましい。
【0026】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、前記成分以外に、成分(A)以外の界面活性剤、香料、保湿剤、抗ニキビ剤、酸化防止剤、抗フリーラジカル剤、乳白剤、安定剤、エモリエント剤、ヒドロキシ酸、ビタミン類、セラミド類、防腐剤、金属イオン封鎖剤、増粘剤、紫外線吸収剤、紫外線防御剤、無機塩、顔料、その他化粧料に一般的に用いられる薬剤、あるいはエタノール等の有機溶媒物質や揮発性成分などを含有することができる。
【0027】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、弱酸性に調整される。上記成分を組み合わせ、更にpHを弱酸性に調整することにより、皮膚への刺激が少なく、優れた洗浄力が損なわれることなく洗浄時の泡立ちが良好となり、泡がクリーミーですべりが良く、優れた使用感を得ることができる。
皮膚洗浄剤組成物のpHは、必要に応じて、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;クエン酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、ピロリドンカルボン酸、酒石酸、グリコール酸、アスコルビン酸等の有機酸;グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物;アンモニア又はアンモニア水;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸などのpH調整剤を用いて弱酸性に調整することができる。
【0028】
弱酸性とは、pH(水素イオン濃度)が7より小さく、4.5より大きい場合を言う。本発明の皮膚洗浄剤組成物は、さらに泡がクリーミーですべりが良く、優れた使用感となる点から、pH4.5〜6.5が好ましく、特に、pH5.0〜6.5が好ましい。
ここで、pHは、試料を精製水にて20倍に希釈し、撹拌して5質量%水溶液を得た後、pHメーター(例えば、堀場製作所製、型番F−22)を用いて、20℃で測定した値である。
【0029】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、含有成分を秤量し、水又は水を主体としアルコール等の他の水溶性溶剤を含む水性媒体に、任意の順序で混合及び攪拌することにより製造することができる。混合、溶解の順序は、特に制限されない。
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、液状又はペースト状の組成物として得られ、30℃における粘度は500〜3000mPa・s、特に1000〜2500mPa・sの範囲であることが、ポンプ等の容器から排出し易く、泡立てが容易である点で好ましい。
【0030】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、洗顔料、全身洗浄料、ハンドソープ、クレンジング剤等とすることができ、特に洗顔料、全身洗浄料、ハンドソープとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0031】
実施例1〜5、比較例1〜6
表1に示す成分を秤量して水中に添加し、50℃で十分撹拌して、皮膚洗浄剤組成物(ボディーソープ)を得た。水酸化カリウム及びリンゴ酸を適量添加して、20倍希釈液のpHが6.2となるよう調整した。ここでpHは、組成物を精製水にて20倍に希釈し、撹拌して5質量%水溶液を得た後、pHメーター(堀場製作所製、型番F−22)を用いて20℃で測定した。
得られた皮膚洗浄剤組成物について、外観、粘度、起泡性、泡質及び保存安定性を評価した。結果を表1に併せて示す。
【0032】
(評価方法)
(1)外観:
洗浄剤組成物をガラス瓶に入れたときの外観を目視にて評価した。
【0033】
(2)粘度:
振動式粘度計(A&D社製、CVJ5000型)を用い、30℃において粘度を測定した。
【0034】
(3)起泡性:
専門評価者5名が、速泡性と泡量に着目して1点〜5点の5段階で評価した。表中に合計点で示す。数値が大きい方が優れている。
【0035】
(4)泡質:
専門評価者5名が、泡のきめこまかさに着目して1点〜5点の5段階で評価した。表中に合計点で示す。数値が大きい方が優れている。
【0036】
(5)保存安定性:
洗浄剤組成物をガラス瓶に入れ、5℃で30日間保存した後の流動性の有無から判断した。
○:流動性あり
×:流動性なし
【0037】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B):
(A)ミリスチルリン酸エステル塩を含むリン酸エステル塩型界面活性剤
10〜25質量%、
(B)ミリスチン酸又はミリスチルアルコール 0.5〜2.5質量%、
及び(C)水を含有し、弱酸性である皮膚洗浄剤組成物。
【請求項2】
ミリスチルリン酸エステル塩の含有量が、成分(A)の全量に対して10〜40質量%である請求項1記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項3】
更に、(D)炭素数4〜12のアルキル基又はアルケニル基を有するグリセリルエーテルを0.5〜5質量%含有する請求項1又は2記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項4】
水で20倍に希釈した水溶液のpHが4.5〜6.5である請求項1〜3のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2006−206443(P2006−206443A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16371(P2005−16371)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】