説明

皮膚消毒用外用剤

【課題】皮膚の消毒を確実に実行する皮膚消毒用外用剤の提供。
【解決手段】エタノール等の低級アルコール及び下記一般式(I)で表される化合物等の部分疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース誘導体を有効成分として含有する皮膚消毒用外用剤:


式中、Rは、水素原子、メチル基、−[CH2CH(CH3)O]mH、3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル基または2−エチルヘキサノイル基から選択される置換基、mは1以上、nは2以上の整数を表す。3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル基及び2−エチルヘキサノイル基部分は一般式(I)の0.05〜3.0質量%。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚消毒用外用剤に関する。より詳しくは、本発明は抗菌性を向上させた皮膚消毒用外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
エタノールなどの低級アルコールは、抗菌および殺菌などの目的で用いられる消毒剤等として広く使用されており、医療器異類や患部の消毒剤、洗浄等の医療用洗浄剤、家庭での食器等の家庭用洗浄剤、食品工業用洗浄剤、繊維や合成樹脂、木材、日用品等の抗菌加工、シャンプー、リンス、化粧品などに広く応用利用されている。しかし、アルコール単独での消毒効果は十分ではなかった。
【0003】
アルコールを含む消毒剤には、セルロース誘導体が、増粘剤として含まれている例が知られている(特許文献1)。しかし、部分疎水化セルロース誘導体がアルコールを含む消毒剤に配合され、該アルコールの消毒活性を増強させている例は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2533723号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、皮膚の消毒を確実に実行する皮膚消毒用外用剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的の達成のため鋭意研究した結果、エタノールを含む消毒剤に部分疎水化セルロース誘導体を混合した際にその消毒効果が顕著に増加することを発見し、この知見をもとに本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(10)を提供するものである。
(1)低級アルコール及び部分疎水化セルロース誘導体を有効成分として含有する皮膚消毒用外用剤。
(2)低級アルコールがエタノールである(1)に記載の皮膚消毒用外用剤。
【0007】
(3)低級アルコールの含有量が外用剤全質量に対して25〜75質量%である、(1)または(2)に記載の皮膚消毒用外用剤。
(4)部分疎水化セルロース誘導体が下記一般式(I)で表される部分疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース誘導体である(1)〜(3)のいずれか一項に記載の皮膚消毒用外用剤:
【0008】
【化1】

【0009】
式中、Rは、水素原子、メチル基、−[CH2CH(CH3)O]mH、3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル基または2−エチルヘキサノイル基から選択される置換基を表し、mは1以上の整数を表し、nは2以上の整数を表し、前記の3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル基及び2−エチルヘキサノイル基部分の合成質量は一般式(I)で表される部分疎水化セルロース誘導体の全質量に対して0.05〜3.0質量%である。
(5)部分疎水化セルロース誘導体がヒドロキシプロピルメチルセルロースの部分(3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル)エーテルである(1)〜(4)のいずれか一項に記載の皮膚消毒用外用剤。
(6)部分疎水化セルロース誘導体を有効成分として含有する低級アルコールの皮膚消毒作用の増強剤。
【0010】
(7)部分疎水化セルロース誘導体からなる低級アルコールの皮膚消毒作用の増強剤。
(8)低級アルコールがエタノールである(6)又は(7)に記載の増強剤。
(9)部分疎水化セルロース誘導体が下記一般式(I)で表される部分疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース誘導体である(6)〜(8)のいずれか一項に記載の増強剤。
【0011】
【化2】

【0012】
式中、Rは、水素原子、メチル基、−[CH2CH(CH3)O]mH、3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル基または2−エチルヘキサノイル基から選択される置換基を表し、mは1以上の整数を表し、nは2以上の整数を表し、前記の3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル基及び2−エチルヘキサノイル基部分の合成質量は一般式(I)で表される部分疎水化セルロース誘導体の全質量に対して0.05〜3.0質量%である。
(10)部分疎水化セルロース誘導体がヒドロキシプロピルメチルセルロースの部分(3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル)エーテルである(6)〜(8)のいずれか一項に記載の増強剤。
【0013】
本発明はさらに、上記いずれかの皮膚消毒用外用剤であって、N−アセチルヒドロキシプロリンを含まない皮膚消毒用外用剤、及び上記いずれかの増強剤であって、N−アセチルヒドロキシプロリンを含まない増強剤を提供する。
本発明の別の観点からは、皮膚消毒用外用剤の製造のための低級アルコール及び疎水化セルロース誘導体の使用;皮膚消毒方法であって、低級アルコール及び疎水化セルロース誘導体を含む組成物を皮膚表面に接触させる工程を含む方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明により皮膚の消毒を確実に実行する皮膚消毒用外用剤が提供される。また、本発明により、アルコールの消毒効果を増強することができる増強剤が提供される。発明の皮膚消毒用外用剤は、高い消毒性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の構成について詳述する。
本明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、本明細書において、「消毒」とは、抗菌、除菌、制菌、殺菌、抗ウイルスなどの意味を含む広い概念で用いられる。すなわち、本発明の皮膚消毒用外用剤は、皮膚表面での微生物又はウイルスの繁殖を抑える目的、又は皮膚表面での微生物又はウイルスを死滅させる目的等で用いることができる。
微生物及びウイルスなどの種類は特に限定されないが、本発明の皮膚消毒用外用剤は、例えば、黄色ブドウ球菌、大腸菌、又は緑膿菌などの細菌、カンジダなどの酵母、白癬菌、アスペルギルスなどのカビ類、インフルエンザウイルスなどのウイルス等に効果を有する。
【0016】
本発明の皮膚消毒用外用剤は低級アルコール及び疎水化セルロースを有効成分として含む。
低級アルコールとしては、炭素数1〜6の低級アルコール、好ましくは炭素数1〜3の低級アルコールであればよい。低級アルコールの例としてはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。これらのうち、エタノールが最も好ましい。
低級アルコールの含有量は皮膚消毒用外用剤全質量に対して25〜75質量%であればよく、35〜65質量%であることが好ましい。また、本発明の皮膚消毒用外用剤が水を含む場合、低級アルコールと水との総容量に対する低級アルコールの容量は50〜80%であることが好ましい。
【0017】
本発明の皮膚消毒用外用剤に用いられる部分疎水化セルロース誘導体は、セルロース誘導体の水酸基の水素原子を一部疎水性基で置換したものをいい、疎水性基としてはアルキル基またはアシル基が好ましい。疎水性基のアルキル基またはアシル基の炭素原子数は8以上のものが好ましい。セルロース誘導体としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)などが挙げられ、特に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース誘導体が好ましい。また疎水性基としては、炭素原子数10以上のアルコキシ基を置換基として有しているアルキル基(例えば、3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル基)および2―エチルヘキサノイル基が好ましい。
【0018】
また、部分疎水化セルロース誘導体における、疎水性基の含有量は、疎水化セルロース誘導体の全質量に対して疎水性基部分の質量が好ましくは0.05〜3.0質量%、より好ましくは0.08〜1.0質量%となる程度であればよい。
部分疎水化セルロース誘導体として好ましい例としては、下記一般式(I)で表される部分疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース誘導体があげられる。
【0019】
【化3】

【0020】
式中、Rは、水素原子、メチル基、−[CH2CH(CH3)O]mH、3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル基または2−エチルヘキサノイル基から選択される置換基を表し、mは1以上の整数を表し、nは2以上の整数を表し、前記の3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル基及び2−エチルヘキサノイル基部分の合成質量は一般式(I)で表される部分疎水化セルロース誘導体の全質量に対して0.05〜3.0質量%である。
複数のRは互いに同一である置換基と互いに異なる置換基を含む。
【0021】
Rは、水素原子、メチル基、−[CH2CH(CH3)O]mH、3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル基から選択される置換基であることが好ましく、水素原子、メチル基、−CH2CH(CH3)OH、3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル基から選択される置換基であることがより好ましい。
本明細書においては、一般式(I)においてRが水素原子、メチル基、−CH2CH(CH3)OH、3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル基から選択される置換基である化合物をヒドロキシプロピルメチルセルロースの部分(3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル)エーテルという。
【0022】
mは1以上の整数を表し、1〜10の整数であることが好ましく、1〜5の整数であることがより好ましく、1であることが最も好ましい。
nは2以上の整数を表し、100〜2500の整数であることが好ましく、140〜2000の整数であることがより好ましい。
【0023】
一般式(I)における複数のRにおける、水素原子、メチル基、−[CH2CH(CH3)O]mH、3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル基または2−エチルヘキサノイル基の構成比率は、特に限定されないが、疎水性基部分である3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル基及び2−エチルヘキサノイル基部分の合成質量が、部分疎水化セルロース誘導体の全質量に対して0.05〜3.0質量%、好ましくは0.08〜1.0質量%となるような構成比率であればよい。
【0024】
なお、一般式(I)における複数のRにおける、水素原子、メチル基、−[CH2CH(CH3)O]mHの構成比率は、特に限定されないが、市販のヒドロキシプロピルメチルセルロースの構成比率と同様であればよい。
【0025】
疎水化セルロース誘導体の含有量は、皮膚消毒用外用剤全質量に対して0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%であればよい。
【0026】
部分疎水化セルロース誘導体は、低級アルコールの消毒効果を増強させる効果に加えて、増粘剤としての効果も有する。しかし本発明の皮膚消毒用外用剤には疎水化セルロース誘導体以外の他の増粘剤が含まれていてもよい。増粘剤としては、例えば、アラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、キャロブガム、クインスシード(マルメロ)、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アラギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース、PVA、PVM、PVP、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリントガム、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース、キサンタンガム、ステアリン酸イヌリン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト、ヘクトライト等が挙げられ、これらの一種または複数種が、目的に合わせ適宜配合される。本発明の皮膚消毒用外用剤は、カルボキシビニルポリマーを含まなくてもよい。
【0027】
本発明の皮膚外用剤は、N−アセチルヒドロキシプロリンを含んでいてもよい。N−アセチルヒドロキシプロリンは、ヒドロキシプロリンをアセチル化して得ることができる。N−アセチルヒドロキシプロリンとして市販品を用いることもでき、市販のN−アセチルヒドロキシプロリンとしては、例えば、協和発酵バイオ製アセチルヒドロキシプロリン〈AHYP〉があげられる。
【0028】
本発明の皮膚消毒用外用剤中のN−アセチルヒドロキシプロリンの含有量は、純度によっても異なるが、通常、皮膚消毒用外用剤全質量に対して0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜3質量%である。0.01質量%未満では本発明の効果は発揮されず、10質量%を越えると製品の製造工程上好ましくない場合がある。
【0029】
N−アセチルヒドロキシプロリンは、皮膚に対して安全でかつ優れた老化抑制・肌質改善作用を示すことが知られている。老化抑制・肌質改善作用を示すことが知られているN−アセチルヒドロキシプロリンがエタノールの消毒作用を増強させており、組み合わせ使用による相乗効果を有する。
なお、上記の記載にかかわらず、本発明の皮膚外用剤は、N−アセチルヒドロキシプロリンを含んでいなくてもよい。
【0030】
本発明の外用剤には上記した成分の他に、通常、化粧品、医薬部外品、医薬品等の皮膚外用剤に用いられる他の成分、例えばアボガド油、パーム油、ピーナッツ油、牛脂、コメヌカ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、カルナバロウ、ラノリン、スクワラン、流動パラフィン、オキシステアリン酸、パルミチン酸イソステアリル、イソステアリルアルコール等の油分;グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ピロリドンカルボン酸およびその塩、コラーゲン、ヒアルロン酸およびその塩、コンドロイチン硫酸およびその塩等の保湿剤;パラジメチルアミノ安息香酸アミル、ウロカニン酸、ジイソプロピルケイヒ酸エチル等の紫外線吸収剤;エリソルビン酸ナトリウム、セージエキス、パラヒドロキシアニソール、ビタミンEおよびその誘導体等の酸化防止剤;ステアリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ジエタノールアミン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、イソステアリン酸ポリエチレングリコール、アラキン酸グリセリル等の界面活性剤;エチルパラベン、ブチルパラベン等の防腐剤;オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、ビワ、カミツレ等の抽出物、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン等の消炎剤;胎盤抽出物、グルタチオン、ユキノシタ抽出物、アスコルビン酸誘導体等の美白剤;ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ等の抽出物、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体、各種アミノ酸類等の賦活剤;サフラン、センキュウ、ショウキョウ、オトギリソウ、オノニス、ローズマリー、ニンニク等の抽出物、γ−オリザノール、デキストラン硫酸ナトリウム、等の血行促進剤;硫黄、チアントール等の抗脂漏剤;香料;水;アルコール;チタンイエロー、カーサミン、ベニバナ赤等の色剤;水溶性高分子等を必要に応じて適宜配合して常法により製造することができる。以下に特に併用が好ましい成分の具体例を例示するが、本発明の外用剤は、これらの成分を任意に上記必須成分と配合して、常法により製造される。
【0031】
本発明の外用剤には、高分子化合物が含まれていてもよい。天然の水溶性高分子としては、例えば、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸等の植物系高分子、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子が挙げられる。
【0032】
半合成の水溶性高分子としては、例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子が挙げられる。
【0033】
合成の水溶性高分子としては例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー(カーボポール)等のビニル系高分子、ポリエチレングリコール20,000、4,000 、6,000等のポリオキシエチレン系高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体等の共重合系高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー等が挙げられる。
【0034】
また、本発明の外用剤には、保湿剤が含まれていてもよい。保湿剤としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル−12−ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl−ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物等が挙げられる。本発明の外用剤が保湿剤を含む場合その含有量は、通常皮膚消毒用外用剤全質量に対して0.01〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%である。
【0035】
また、本発明の外用剤には、抗菌剤が併せて含まれていてもよい。抗菌剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の逆性石鹸系化合物;グルコン酸クロルヘキシジンに代表されるクロルヘキシジン塩等のビグアナイド化合物;クレゾール、ルテオリン、カテキン等のフェノール系化合物;ヨウ素イオン、ヨウドホルム、ヨードホア等のヨウ素化合物;アクリノール、グアイアズレン等の色素系化合物、ステビア、モウソウチク等天然材料の抽出物、銀化合物、銀コロイド等が挙げられる。これらの使用に際して1種又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0036】
抗菌剤は、本発明の外用剤全量に対し、通常0.00005〜5質量%の範囲で含まれていることが好ましい。
本発明の外用剤は、外皮に適用できる剤型であればよく、その剤型は特に限定されない。例えば、乳液、ローション、ジェルの剤型を挙げることができる。また、溶液系、分散系、ゲル系、軟膏系等の幅広い形態を取り得る。このうち取り扱い性の点からジェル状外用剤が、特に好ましい。
本発明の皮膚消毒用外用剤は、皮膚刺激性が少なく、肌荒れを生じさせにくいため、化粧料としての使用も可能である。
【実施例】
【0037】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれにより限定されるものではない。配合量は質量部で示される。
【0038】
(試験菌の培養)
保存株(手指より分離した黄色ブドウ球菌)を、DIFCO LABORATORIES社製NUTRIENT寒天培地(pH6.6〜7.0)(以下NA培地と略す)の斜面培地において35℃で1日培養し、試験菌とした。試験菌液は、滅菌生理食塩水を用い調製した。
【0039】
(穿孔平板の作製)
培地中の菌濃度が約106CFU/mlになるように菌液をNA培地に添加し、9cmプラスチックシャーレに撒いた。プラスチックシャーレには予め、直径8mmの抗生物質検定用シリンダーカップを必要数置いて、直径8mmの穿孔を作成した。
【0040】
<抗菌力測定>
サンプルの評価に際しては、本発明サンプル及び比較用のサンプルのそれぞれ0.1mlを上記穿孔に注入し、35℃で1日間、好気培養した。培養終了後、穿孔の周囲に生じる発育阻止帯の直径を測定し、抗菌力を測定した。
各測定値から穿孔の直径(8mm)を差し引いた値を抗菌力の指標とした。
【0041】
実施例1
0.1質量%の疎水性基(3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル基)を導入したヒドロキシプロピルメチルセルロースの部分(3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル)エーテル0.6部 をエタノール80部に添加攪拌し、可溶化した後、精製水20部を加え攪拌しサンプル2を得た。抗菌力測定を上記の方法で行なった。その結果、発育阻止帯は8.1mmであった。
【0042】
比較例1
エタノール59部を精製水41部に加え比較例サンプル1を得た。
比較例2
エタノール80部を精製水20部に加えさらに塩化ベンザルコニウム0.2部を加え比較例サンプル2を得た。
比較例3
エタノール59部を精製水41部に加え、さらにヒドロキシプロピルメチルセルロース0.6部を加え比較例サンプル3を得た。
【0043】
比較例サンプル1、比較例サンプル2及び比較例サンプル3の。抗菌力測定を上記の方法で行なった。その結果、発育阻止帯はそれぞれ0mm、1mm、1mmであった。
【0044】
結果
ほぼ同量のエタノールを含み、部分疎水化セルロース誘導体を含む実施例1と疎水化セルロース誘導体を含まない比較例1,2とで、発育阻止帯を比較すると分かるように、部分疎水化セルロース誘導体を含む例において、黄色ブドウ球菌の発育が阻害されている一方で、部分疎水化セルロース誘導体を含まない例では黄色ブドウ球菌の発育は影響をほとんど受けていなかった。
以上の実施例の結果より、部分疎水化セルロース誘導体は、エタノールの消毒作用を増強することが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低級アルコール及び部分疎水化セルロース誘導体を有効成分として含有する皮膚消毒用外用剤。
【請求項2】
低級アルコールがエタノールである請求項1に記載の皮膚消毒用外用剤。
【請求項3】
低級アルコールの含有量が外用剤全質量に対して25〜75質量%である、請求項1または2に記載の皮膚消毒用外用剤。
【請求項4】
部分疎水化セルロース誘導体が下記一般式(I)で表される部分疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース誘導体である請求項1〜3のいずれか一項に記載の皮膚消毒用外用:
【化4】

式中、Rは、水素原子、メチル基、−[CH2CH(CH3)O]mH、3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル基または2−エチルヘキサノイル基から選択される置換基を表し、mは1以上の整数を表し、nは2以上の整数を表し、前記の3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル基及び2−エチルヘキサノイル基部分の合成質量は一般式(I)で表される部分疎水化セルロース誘導体の全質量に対して0.05〜3.0質量%である。
【請求項5】
部分疎水化セルロース誘導体がヒドロキシプロピルメチルセルロース(3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル)エーテルである請求項1〜4のいずれか一項に記載の皮膚消毒用外用剤。
【請求項6】
部分疎水化セルロース誘導体を有効成分として含有する低級アルコールの皮膚消毒作用の増強剤。
【請求項7】
部分疎水化セルロース誘導体からなる低級アルコールの皮膚消毒作用の増強剤。
【請求項8】
低級アルコールがエタノールである請求項6又は7に記載の増強剤。
【請求項9】
部分疎水化セルロース誘導体が下記一般式(I)で表される部分疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース誘導体である請求項6〜8のいずれか一項に記載の増強剤:
【化5】

式中、Rは、水素原子、メチル基、−[CH2CH(CH3)O]mH、3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル基または2−エチルヘキサノイル基から選択される置換基を表し、mは1以上の整数を表し、nは2以上の整数を表し、前記の3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル基及び2−エチルヘキサノイル基部分の合成質量は一般式(I)で表される部分疎水化セルロース誘導体の全質量に対して0.05〜3.0質量%である。
【請求項10】
部分疎水化セルロース誘導体がヒドロキシプロピルメチルセルロースの部分(3−ステアリルオキシー2−ヒドロキシプロピル)エーテルである請求項6〜9のいずれか一項に記載の増強剤。

【公開番号】特開2011−105636(P2011−105636A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261517(P2009−261517)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】