説明

皮膚科学における局所適用用水中油型エマルション

本発明は、エマルションの内相に高割合の油性相を有し、脂っぽい感覚の欠点を有さずに軟膏の閉塞特性と皮膚軟化特性を共にもたらし、同時に組成物中に存在する生物学的活性剤の治療特性を促進する、水中油型エマルションの形態の新規な局所用組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルションの内相に高割合の油性相を有し、脂っぽい感覚の欠点を有さずに軟膏の閉塞特性と皮膚軟化特性を共にもたらし、同時に組成物中に存在する生物学的活性剤の治療特性を促進する、水中油型エマルションの形態の新規な局所用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚が乾燥して剥離する病理を標的化するために、軟膏の使用が広く好ましいものである。実際に軟膏は、皮膚軟化を提供して剥離を制限する脂肪物質から主になる。しかしながらこの生薬形態は、その性質のため、脂っぽくべとつく感覚を有し、それ故患者の毎日の生活で不快感(好ましくない感覚、服に付着する油っぽいシミ等)を有するという欠点を有する。これらの軟膏の大多数は、高いパーセンテージのワセリンに基づいている。
【0003】
特許出願EP-A1-0 069 423は、例えば60から70重量%を脂肪相が占める、皮膚に対する局所適用用の組成物を記載している。
【0004】
更に、脂っぽい感覚を有さない、広げるのが非常に用意である等の利点を与える連続水性相を含むエマルションが既知である。しかしながら、そのようなエマルションの皮膚軟化特性はしばしば非常に不十分であり、不満足でさえある。
【特許文献1】特許出願EP-A1-0 069 423
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それ故、軟膏の利点(閉塞性、皮膚軟化性)と、連続水性相のエマルションの利点(脂っぽくない感覚、化粧品的な許容可能性、広げることの容易性、残余物がないこと)の両者を有し、同時にこれら二つのタイプの製剤に関連する欠点を避ける組成物に対する必要性が存在する。
【0006】
更に、有効性に関しては、これらの組成物は、この新規な生薬形態における有効性を保証するため、生物学的活性剤の治療特性を促進すべきである。
【0007】
有利には、それらがコルチコステロイドクラスの少なくとも一つの治療剤を含む場合、これらの組成物は、特にコルチコステロイドに基づく局所用組成物について、市場における主要な製品の有する血管収縮に関する生体同等性を有するべきである。
【0008】
ここで本発明者らは、油中水型エマルションで一般的に遭遇する割合に対応する、非常に高い割合の脂肪相を含む水中油型エマルションを発見した。
【0009】
一つ以上の浸透促進剤と組み合わせた、水中油型の非イオン性乳化システムを使用することによって、リポクリームとも称されるこの新規なエマルションを得ることが可能であった。
【0010】
水中油型の非イオン性乳化システムを使用する前記エマルションは、その非常に実質的な内部脂肪相にも関わらず、エマルションの配向を変化させないことが可能である。
【0011】
従って、本発明に係る連続水性相を含むエマルションは、脂っぽくない感覚を有すると同時に、高いパーセンテージの脂肪相によって与えられる満足な皮膚軟化能力を与えるという利点を有する。
【0012】
全く驚くべきことに、この新規な製剤は、高濃度のワセリンを有する軟膏の場合に期待されるものと同等の治療活性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かくして本発明は、先ず第一に、少なくとも一つの治療剤を含み、更に
a)25から60重量%の脂肪相;
b)1から15重量%の非イオン性乳化システム;
c)1から30重量%の少なくとも一つの浸透促進剤;及び
d)5から50重量%の水
を含む、局所適用用の水中油型エマルションに関する。
【0014】
有利には本発明に係るエマルションは、35から50重量%の脂肪相の量を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の目的のため、用語「脂肪相」は、単独のまたは二つ以上の混合物の、皮膚軟化剤、ワックス、及び脂肪アルコールから選択される一つ以上の化合物を意味するように企図される。
【0016】
皮膚軟化剤は有利には、本発明において標的とされる製剤のための一般的に使用され、当業者に周知である皮膚軟化剤であろう。非制限的な例として、植物オイル、例えば綿実オイルまたはスィートアーモンドオイル;エステル、例えばイソプロピルパルミテート及びイソプロピルミリステート;鉱物オイル、例えば軽鉱物オイル、揮発性または不揮発性シリコーンオイル、例えばジメチコーン及びシクロメチコーン;並びにワセリンが挙げられる。
【0017】
本発明に係るエマルションの脂肪相の成分として使用されて良いワックスは、当該技術分野で当業者により一般的に使用されるワックスであり、純粋に説明のために、ビーズワックス、カルナウバワックス、オゾケライト、パラフィン、及びジメチコノールベヘネートが挙げられる。同様に脂肪相は、当業者に既知の一つ以上の脂肪アルコールを含んでも良く、この点で特に非制限的な態様で、セチルアルコール及びステアリルアルコールが挙げられる。
【0018】
脂肪相は好ましくは、以下の成分:イソプロピルパルミテート、鉱物オイル、ワセリン、ジメチコーンの一つ以上を含むであろう。
【0019】
本発明によれば、脂肪相は、非イオン性乳化システムによって乳化される。
【0020】
界面活性剤は、その親水性と親油性の二重極性のため、両親媒性分子として記載されている。これらの分子の構造は、それらを特徴付けすることが可能である:親水性-親油性バランス(HLB)は、親油性部分に対する親水性部分の比である。高いHLBは、親水性分画が優勢であることを示し、逆に低いHLBは、親油性部分が優勢であることを示す。たとえば約10より大きいHLB値は、親水性界面活性剤に対応する。
【0021】
界面活性剤は、その構造によって、一般用語「イオン性」(アニオン性、カチオン性、両性)または「非イオン性」に分類できる。非イオン性界面活性剤は、水中でイオンに解離せず、それ故pHの変化に感受性ではない界面活性剤である。
【0022】
非イオン性界面活性剤は、本発明の主題である水中油型エマルションの調製のために特に適している。かくして、本発明のエマルションの成分である乳化システムは、優勢な親水性分画を有する、即ち約10より大きい高いHLBを有する少なくとも一つの非イオン性界面活性剤を含む。高いHLBを有する非イオン性界面活性剤の例としては、ソルビタンエステル、例えばPOE(20)、"Tween 80"(HLB=15)の名称で市販されているソルビタンモノオレエート;"Tween 60"(HLB=14.9)の名称で市販されているPOE(20)ソルビタンモノステアレート;脂肪アルコールエーテル、例えばPOE(21)ステアリルエーテル(HLB=15.5)、またはCognis社により"Eumulgin B2"の名称で市販されているセテアレス20(15.5のHLB)が挙げられる。
【0023】
好ましくは、前記高いHLBの非イオン性界面活性剤は、10から18の間のHLBを有する。
【0024】
低いHLBを有する非イオン性界面活性剤の例として、ソルビタンエステル、例えばソルビタンモノステアレート(Unichema社によりSpan 60の名称で市販されている)、グリセロールエステル(Cognis社によりCutina GMSVPHの名称で市販されている)、例えばグリセリルモノステアレート(Cognis社製のCutina GMS)、及び低いHLBのスクロースエステル、例えばスクロースジステアレートが挙げられる。
【0025】
好ましくは、低いHLBを有する前記非イオン性界面活性剤は、10未満のHLBを有する。
【0026】
非イオン性界面活性剤は、本発明のエマルションを作製する乳化システムを形成するために、単独でまたはそれらの二つ以上の混合物として使用できる。
【0027】
一つ以上の「高いHLBを有する非イオン性界面活性剤」/「低いHLBを有する非イオン性界面活性剤」の組み合わせは、乳化システムとして好ましくは使用されるであろう;それは特に、約10より大きいHLBを有する少なくとも一つの非イオン性界面活性剤と、約10未満のHLBを有する少なくとも一つの非イオン性界面活性剤とを含む非イオン性乳化システムであって良い。
【0028】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、乳化システムは、グリセリルモノステアレート/セテアレス20の界面活性剤の組み合わせからなる。
【0029】
前述の界面活性剤の組み合わせの使用は、界面皮膜を剛性にし、従ってエマルションの安定性を実質的に増大するという利点を与える。
【0030】
前述の組み合わせを形成する二つの界面活性剤のそれぞれの割合は、使用される脂肪相に必要とされるHLBを形成することによって最も一般的に決定される。
【0031】
脂肪物質、または脂肪物質の混合物の最適な乳化のための探索は、必要とされるHLBの事前の決定を含む。実際に、各脂肪物質は、定義された必要とされるHLBを有する。それ故、全ての場合で同じ乳化剤と共に作用することはできない。脂肪物質によって必要とされるHLBは、考慮される脂肪物質でもっとも安定なエマルションを提供するであろう乳化剤または乳化剤の組み合わせのHLBの値に対応する。
【0032】
たった今記載された乳化システムに加えて、本発明のエマルションは、組成物の全重量に対して1から30重量%、好ましくは5から25重量%、より好ましくは15から20重量%の範囲の好ましい濃度で、一つ以上の浸透促進剤を含む。
【0033】
浸透促進剤は一般的に、使用されるパーセンテージで治療剤を可溶化せず、各種の成分に有害である発熱反応を引き起こさず、前記治療剤の良好な分散を補助し、消泡特性を有さなければならない。浸透促進剤としては、当業者に既知のものから選択される化合物、例えばプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、Transcutol(登録商標)(エトキシジグリコール)、プロピレングリコールジペラルゴネート、ラウログリコール、ウレア、アセトン、またはオレイン酸の使用が好ましくは挙げられるが、このリストは制限的なものではない。
【0034】
もちろん浸透促進剤は、それら二つ以上の混合物として製剤化できる。
【0035】
浸透促進剤は好ましくは、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及びプロピレングリコールジペラルゴネートから選択される。より好ましくは、浸透促進剤はプロピレングリコールである。
【0036】
浸透促進剤の性質は、本発明のエマルションに含まれる治療剤の性質に依存するであろうと解されるべきである。
【0037】
本発明に係るエマルションの水性相は、純粋であってもなくとも良く、脱鉱されていてもなくとも良い水、特に花の水、例えばヤグルマソウ水、または天然鉱水若しくは湧水、例えばVittel水、Vichy basin由来の水、d'Uriage水、Roche-Posay水、Bourboule水、d'Enghien-les-Bains水、Saint Gervais-les-Bains水、Neris-les-Bains水、d'Allevard-les-Bains水、Digne水、Maizieres水、Neyrac-les-Bains水、Lons-le-Saunier水、Eaux Bonnes水、Rochefort水、Saint Christau水、Fumades水、Tercis-les-Bains水、d'Avene水、,またはd'Aix les Bains水を含む。
【0038】
かくして、脂肪相、乳化システム、浸透促進剤、及び治療剤に加えて、本発明に係るエマルションは、5から50重量%、有利にはエマルションの約30重量%の実質的な量の水を含む。
【0039】
好ましい特徴点によれば、本発明の水中油型エマルションは、皮膚疾患の治療及び/または予防にとりわけ適している。従って前記エマルションに含まれる治療剤は、好ましくはこのタイプの疾患の治療及び/または予防において治療上活性である化合物であろう。
【0040】
本発明のエマルションは、すでに既知である市販されているコルチコステロイドクラスの治療剤の皮膚への局所適用に特に有効であることが見出されている。
【0041】
非制限的な例として、コルチコステロイドクラスの治療剤は、クロベタゾール、17−プロピオネート、デソニド、ベタメタゾン、酢酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン一水和物、吉草酸ジフルコルトロン、吉草酸フルチカゾン、17−酪酸ヒドロコルチゾン、メタゾンフロエート、プロピオン酸ハロベタゾール、デソキシメタゾン、酪酸クロベタゾン、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニソロン、ミコナゾール、プレドニゾン、トリアムシノロンアセトニド、メチルプレドニソロン、フルオメトロン、フルオシノロンアセトニド、デキサメタゾン、ジプロピオン酸デキサメタゾン、アクラゾン、17,21−ジプロピオン酸デキサメタゾン、二酢酸ジフロラゾン、またはこれらの混合物から選択されるであろう。
【0042】
コルチコステロイドクラスの治療剤は好ましくは、17−プロピオン酸クロベタゾール、デソニド、及び吉草酸ベタメタゾンから選択され、17−ジプロピオン酸クロベタゾールが好ましい治療剤である。
【0043】
もちろん本発明の目的は、これらのコルチコステロイドのみに制限されるべきではなく、多くの他の治療剤及び他の治療応用が、水中油型エマルションによる局所適用の文脈で考慮できる。
【0044】
かくして本発明のエマルションはまた、ビタミンD及びその類似体の皮膚に対する局所適用用製剤のために使用できる。
【0045】
ビタミンD類似体の非制限的な例として、エルゴカルシフェロール、アルファカルシドール、カルシフェジオール、カルシポトリオール、カルシトリオール、コレカルシフェロール、タカルシトール、6−(3−ヒドロキシ−5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イルセラニル)ニコチン酸、4−[6−エチル−4’−(1−エチル−1−ヒドロキシプロピル)−2'−プロピルビフェニル−3−イルオキシメチル]−2−ヒドロキシメチルフェニル}メタノール、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0046】
本発明のエマルションはまた、レチノイドの皮膚に対する局所適用用製剤のために使用されて良い。
【0047】
用語「レチノイド」は、RAR及び/またはRXRレセプターに結合するいずれかの化合物を意味するように企図される。
【0048】
好ましくはレチノイドは、特許出願EP 0 199 636に記載されたようなベンゾナフタレンレチノイドのファミリーから選択される化合物である。特に、アダパレン(6−[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−2−ナフトエ酸)、並びにその前駆体及び/または誘導体が好ましいであろう。トレチノイン及びイソトレチノインもまた使用されて良い。
【0049】
用語「レチノイド前駆体」は、レチノイドの迅速なまたは基質たる生物学的前駆体、及びレチノイドの化学的前駆体を意味するように企図される。
【0050】
用語「レチノイド誘導体」は、レチノイドの代謝誘導体と、レチノイドの化学的誘導体の両者を意味するように企図される。
【0051】
他のレチノイドは、以下の特許または特許出願:US 4,666,941、US 4,581,380、EP 0 210 929、EP 0 232 199、EP 0 260 162、EP 0 292 348、EP 0 325 540、EP 0 359 621、EP 0 409 728、EP 0 409 740、EP 0 552 282、EP 0 584 191、EP 0 514 264、EP 0 514 269、EP 0 661 260、EP 0 661 258、EP 0 658 553、EP 0 679 628、EP 0 679 631、EP 0 679 630、EP 0 708 100、EP 0 709 382、EP 0 722 928、EP 0 728 739、EP 0 732 328、EP 0 740 937、EP 0 776 885、EP 0 776 881、EP 0 823 903、EP 0 832 057、EP 0 832 081、EP 0 816 352、EP 0 826 657、EP 0 874 626、EP 0 934 295、EP 0 915 823、EP 0 882 033、EP 0 850 909、EP 0 879 814、EP 0 952 974、EP 0 905 118、EP 0 947 496、WO 98/56783、WO 99/10322、WO 99/50239、及びWO 99/65872に記載されたものから選択できる。
【0052】
別の特徴点によれば、本発明の水中油型エマルションは、上述の各種のカテゴリーから選択される各種の治療剤の組み合わせで調製されても良い。
【0053】
本発明の主たる目的の一つは、表皮を介した浸透の特性に関する脂肪クリームの利点と、使用する際の快適性と容易性に観点から、及び製剤の安定性の観点から得られる水性エマルションの利点とを有する、局所適用用のシステムを提供することである。
【0054】
ここに記載され、本発明の主題であるエマルションは、化粧品または製薬の分野で一般的に使用されるいずれかの添加剤、例えば金属イオン封鎖剤、抗酸化剤、サンスクリーン剤、防腐剤、フィラー、電解質、湿潤剤、pH緩衝剤、染料、一般的な無機または有機の酸または塩基、香料、香油、化粧品活性剤、保湿剤、ビタミン、スフィンゴリピド、自己日焼け化合物、例えばDHA、ゲル化剤、及びアラントインのような皮膚を滑らかにして保護する試薬を含んでも良い。
【0055】
もちろん当業者はこのまたはこれらの考えうる更なる化合物及び/またはその量を選択するのに注意を払い、本発明に係るエマルションの有利な特性が損なわれない、または実質的に損なわれないようにするであろう。
【0056】
純粋に説明のために、金属イオン封鎖剤の例として、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその誘導体または塩、ジヒドロキシエチルグリシン、クエン酸、及び酒石酸、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0057】
防腐剤の例として、塩化ベンザルコニウム、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、ジアゾリジニルウレア、及びパラベン、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0058】
抗酸化剤としては非制限的な例として、アスコルビン酸及びその塩、トコフェロール、及び亜流酸塩、例えばメタ亜硫酸水素ナトリウムまたは亜硫酸水素ナトリウム、ブチルヒドロキシアニゾール、ブチルヒドロキシトルエン、及びプロピルガレートが挙げられる。
【0059】
好ましくは抗酸化剤は、DL−α−トコフェロール、ブチルヒドロキシアニゾール、ブチルヒドロキシトルエン、及びプロピルガレートから選択される。
【0060】
湿潤剤の例として、グリセロール及びソルビトールが挙げられ、pH緩衝剤として、クエン酸及びクエン酸ナトリウムが挙げられる。
【0061】
本発明に係るエマルションは、添加剤として、ゲル化剤のカテゴリーに入る、即ち前記エマルションの各種の成分を懸濁状態に維持するのに十分な粘度を前記エマルションに与えることが可能な一つ以上の化合物を含んでも良い。
【0062】
これらのゲル化剤は、一般的に使用されているゲル化剤から有利には選択されて良く、特に非制限的な例として、カーボマー、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、グアゴム、キサンタンゴム、ヘクトライト、ペクチン、マグネシウムアルミニウムシリケート、ポリアクリルアミドファミリーのゲル化剤、例えばSeppic社によりSimulgel(登録商標)600の名称で市販されているナトリウムアクリロイルジメチルタウレート/イソヘキサデカン/ポリソルベート80コポリマーブレンド、例えばSeppic社によりSepigel(登録商標)305の名称で市販されているもののようなポリアクリルアミド/C13−14イソパラフィン/ラウレス−7混合物、疎水性鎖に結合したアクリルポリマーのファミリー、例えばAculyn(登録商標)44の名称で市販されているPEG−150/デシル/SMDIコポリマー(プロピレングリコール(39%)と水(26%)との混合物中に35重量%で、150または180モルのエチレンオキシドを含む少なくとも一つのポリエチレングリコール、デシルアルコール、及びメチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)(SMDI)をエレメントとして含む重縮合物)、変性デンプンのファミリー、例えばStructure Solanace(登録商標)の名称で市販されている変性ジャガイモデンプン、またはこれらの二つ以上の混合物から選択される。
【0063】
好ましいゲル化剤は、キサンタンゴム、マグネシウムアルミニウムシリケート(Vanderbilt社製のVeegum K)、マグネシウムアルミニウムシリケート/アルミニウム/二酸化チタン(Vanderbilt社製のVeegum ULTRA)、またはそれらの混合物である。
【0064】
好ましい実施態様によれば、本発明の水中油型エマルションは、
a.35から45重量%の脂肪相;
b.5から15重量%の非イオン性乳化システム;
c.15から20重量%の少なくとも一つの浸透促進剤;
d.0.01から0.5重量%の少なくとも一つの治療剤;
e.5から50重量%の水;及び
f.好ましくは0.2から25重量%の間の添加剤
を含む。
【0065】
別の特徴点によれば、本発明は、
a.水中に攪拌しながら、60℃から95℃の間の温度で、少なくとも一つの浸透促進剤と任意の添加剤とを、均一な水性相が得られるまで溶解及び/または分散する工程;
b.乳化剤の組み合わせが溶解しており、60℃から95℃の間の温度に予備加熱されている脂肪相へ、前記水性相を攪拌しながら取り込ませる工程;及び
c.40℃未満の温度で攪拌しながら、適当な溶媒に任意に事前溶解した治療剤を取り込ませる工程
を含むことを特徴とする、前述の水中油型エマルションの調製方法に関する。
【0066】
用語「適当な溶媒」は、治療剤を可溶化できる、及び/または治療剤を溶解できるいずれかの溶媒を意味するように企図され、治療剤が固体形態の場合に、脂肪相/水性相エマルション内に完全に取り込ますことができるようにするものである。
【0067】
また別の特徴点によれば、本発明は、ここでの開示で定義した少なくとも一つの水中油型エマルションを含む、皮膚、外皮、または粘膜への局所適用と適合的な、生理学的に許容可能な生薬製剤に関する。一つの実施態様によれば、生薬形態は水中油型エマルションそのままである。
【0068】
本発明はまた、特に皮膚科学的疾患の予防及び/または治療のための使用に関する、コルチコステロイドクラスに属する少なくとも一つの治療剤の、皮膚、外被、または粘膜への適用のための、前記記載のエマルションまたは前述の製剤の使用に関する。
【0069】
前記治療剤は、特に以下の治療分野に適している:
1)分化及び増殖に関連する角質化疾患に結び付く皮膚科学的疾患の治療、特に一般ざ瘡、面皰壊死タイプのざ瘡、多型的ざ瘡、ざ瘡酒さ、小節性ざ瘡、凝塊形成ざ瘡、壮年性ざ瘡、二次的ざ瘡、例えば日光ざ瘡、医薬性ざ瘡、または職業性ざ瘡の治療;
2)他のタイプの角質化疾患、特に魚鱗癬、魚鱗形態状態、ダリエ病、掌蹠角皮症、白斑症、白斑形態状態、皮膚性または粘膜性(頬内)苔癬の治療;
3)細胞増殖疾患を伴うまたは伴わない、炎症性免疫アレルギー性成分を有する他の皮膚科学的疾患の治療、特に皮膚、粘膜、または爪に関わらずあらゆる形態の乾癬、乾癬性リューマチ、または皮膚アトピー、例えば湿疹、または呼吸器アトピー、または歯肉肥大の治療;
4)良性であれ悪性であれ、ウイルス起源であれ非ウイルス起源であれ、いずれかの皮膚または表皮増殖、例えば尋常性ゆうぜい、扁平ゆうぜい、及びゆうぜい状表皮発育異常症、葉状口腔乳頭腫症、Tリンパ腫、紫外線照射によって誘導されても良い増殖、及び特に基底または棘状細胞性上皮腫、及び角化棘細胞腫のようないずれかの前皮膚性皮膚疾患の治療;
5)免疫皮膚病、例えばエリテマトーデス、水疱性免疫疾患、及びコラーゲン疾患、例えば強皮症といった他の皮膚科学的疾患の治療;
6)免疫学的成分を有する皮膚科学的または一般的疾患の治療;
7)紫外線照射に対する曝露による皮膚疾患の治療、光誘導性であれ年齢性であれ皮膚老化の修復または解消、または光線性角化症および脱色の減少、あるいは年齢性または化学線性老化に関連するいずれかの疾患、乾皮症の治療;
8)ざ瘡性脂漏過剰、単純脂漏症、または脂漏性皮膚病のような皮脂機能の疾患の解消;
9)瘢痕形成疾患の予防または治療、あるいは妊娠線の予防または修復;
10)脱色性疾患、色素過剰症、黒皮症、色素低下症、または白斑の治療;
11)各種の起源の脱毛症、特に化学療法または放射線による脱毛症の予防または治療。
【0070】
標的とされる皮膚科学的疾患としては、本発明の水中油型エマルションは、皮膚、粘膜、または爪であれ、全ての形態の乾癬の予防及び治療に完全に適していることが見出される。
【0071】
本発明は、いずれかの制限を導くものではない以下の実施例によって説明されるが、その目的は、本発明の特に好ましい実施態様の実施を提供して説明することである。
【実施例】
【0072】
実施例1:プロトコール
以下の実施例2、3、4、及び5に提示された製剤1、2、3、及び4を、以下に記載のプロトコールによって得た。
【0073】
水中油型エマルションの調製
脂肪相を受容ビーカーに計量し、それを78℃でウォーターバスに配置する。
【0074】
水性相をビーカーに計量し、クエン酸を添加する。次いでクエン酸ナトリウムを激しく攪拌しながら分散する。
【0075】
次いでゲル化剤を添加し、均一化の後、プロピレングリコールを添加し、混合物をRayneri混合で78℃に加熱する。
【0076】
次いで温かい脂肪相をRayneriミキサーで攪拌する。水性相を攪拌しながら(1000rpm)脂肪相に注ぎ、78℃で10分間加熱する。混合物を加熱することなく攪拌し続ける(1000rpm)。
【0077】
この時間の間、治療剤を機械的に攪拌しながらビーカーでプロピレングリコールに完全な溶解が得られる添加することによって調製する。この活性相を40℃未満でエマルションに取り込ませる。
【0078】
実施例2−製剤1
【表1】

【0079】
実施例3−製剤2
【表2】

【0080】
実施例4−製剤3
【表3】

【0081】
製剤3の物理的安定性
環境温度(Ta)で、巨視的観察は、製品の物理的完全性を保証することが可能であり、微視的観察は、可溶化した活性剤の再結晶化が存在しないこと、及びエマルションの小滴のサイズが有意に変化しないことを確認することが可能である。4℃で、微視的観察は、可溶化した活性剤の再結晶化が存在しないことを確認する。45℃で、巨視的観察は、最終製品の完全性を確認する。結果は以下の表に示されている:
【0082】
【表4】

【0083】
流動学的データ
SVDIN測定センサーを備えたHaake(登録商標)VT500流動計を使用する。経時的に剪断速度を変更し、ストレスを測定することによって、25℃でレオグラムを生産した。用語「流動閾値」(tau0)は、ファンデルワールスタイプの凝集力を解消し、流動をもたらすのに必要な力(最小剪断ストレス)を意味するように企図される。流動閾値は、4s−1の剪断速度で見出された値に関する。
【0084】
化学的安定性
化学的安定性は、環境温度(Ta)及び45℃での活性剤と防腐剤のHPLCによるアッセイである。データは以下の表に示されている:
【0085】
プロピオン酸クロベタゾール
【表5】

【0086】
メチルパラベン
【表6】

【0087】
プロピルパラベン
【表7】

【0088】
実施例5−製剤4
【表8】

【0089】
確立された特性指摘による実施例5に関する製剤の物理的及び化学的安定性:
【0090】
【表9】

【0091】
実施例6:治療剤としてビタミンD類似体で調製された製剤
【0092】
【表10】

【0093】
この製剤は、本発明の主題に従っている:治療剤の再結晶化は4℃で3ヵ月後に観察されなかった。
【0094】
実施例7:エマルションの血管収縮効果の評価
実施例3、4、及び5の製剤2、3、及び4と、比較として市販品のTemovate(登録商標)Cream及びTemovate(登録商標)Emollient Creamを使用して、評価試験を実施する。この研究は、それぞれ18から70歳の7人の正常な男性または女性被験者で実施した。
【0095】
方法体系
この研究は、二日間にわたり実施する。三種の製剤と二種の参照製品を各ボランティアに適用した。製品を受けていない領域はコントロール領域として機能した。各ボランティアと研究された各領域(前腕当たり3の領域)について、以下の評価を実施した:
−血管収縮についての基底の臨床兆候と基底の比色分析測定
−処理された各領域に対する製品の適用(1.5cmの領域、10μlの製品/領域)と、過剰な4時間後の除去;
−過剰量の除去の後4時間と20時間、即ちD0T8及びD1T24での血管収縮の臨床兆候と比色分析測定。
【0096】
評価指標
主たる指標:0から4のスケールによる血管収縮の臨床評価
二次的指標:比色分析:a及びLの生体物理的測定
【0097】
統計的分析
得られた変数を分散の分析に供し、各製剤を非処理部位と、各測定時間での参考製品と比較した。
【0098】
結果
試験した全ての製品は、過剰量の除去後4時間で最大の白色化を示す。二種類の参考製品と試験した三種の製剤は、異なる白色速度を有した。
【0099】
Temovate(登録商標)Creamは、最も実質的な白色化を誘導することが観察される。統計的に、Temovate(登録商標)CreamについてのAUCは、非処理領域及び実施例3の製剤2についてのAUCとは、パラメーターaについて有意に異なる。パラメーターLについては、Temovate(登録商標)CreamについてのAUCは、Temovate(登録商標)Emollient Creamで試験したものを除いて、全ての他の試験領域についてのAUCとは有意に異なる。
【0100】
以下の3製品:Temovate(登録商標)Emollient Cream、実施例4製剤3、及び実施例3の製剤2は、互いに非常に類似することも観察される。これらの3製品についてのAUCは、パラメーターaについて非処理領域についてのAUCとは全て有意に異なる。パラメーターLについては、実施例3の製剤についてのAUCのみが、非処理領域とは異ならなかった。
【0101】
実施例3の製剤2についてのAUCは、パラメーターa及びパラメーターLの両者について最も小さいものであるようである。統計的に、後者についてのAUCは、パラメーターaについては非処理領域とな有意に異なるようであるが、パラメーターLについては異ならないようである。統計に関しては、スチューデントt検定を実施し、0.1未満の有意な閾値を有する。
【0102】
結論
それ故実施例3、4、及び5の製剤は、市販品の軟膏タイプの製品(Temovate(登録商標)Cream)と同等の血管収縮効果を示す。
【0103】
実施例8:エマルションの刺激効果の評価
試験の原理
この試験は、正常なボランティアにおける各種の刺激試験における製剤2と製剤3の刺激能力を評価することが可能である。
【0104】
この研究は、18から50歳の12人の正常な被験者で実施した。
【0105】
以下のような各種の領域で処理を実施した:
・「肘のシワ」領域:14日間に亘り毎日一度の適用;
・「ストリッピング」領域:7日間に亘り毎日一度の適用;
・「パッチ」領域:20時間に亘り1階の単一の適用。
【0106】
方法体系
この研究は、各ボランティアについて15日間に亘り実施した。適用を家で実施するD4、D8、D16、D11、及びD12を除き、研究の全ての日数でボランティアは試験センターに来所した。各ボランティアについて、4×4cmの3の領域を、前腕の内側表面に規定し、それは肘のシワの領域一つを含んだ。研究前に実施したランダム法によって、左側と右側に二種類の製剤を適用した。
・Z1−Z4(「肘のシワ」領域):2mg/cmの速度で14日間に亘り製品の毎日の適用;
・Z2−Z5(「ストリッピング」領域):D0でD-squameを使用して20回のストリッピングを実施し、その後2mg/cmの速度で7日間に亘り製品の毎日の適用;
・Z3−Z6(「パッチ」領域):最小20時間に亘り12mmの直径のアルミニウム吸盤(Finn Chambers(登録商標))における製品の単一の適用。
【0107】
結果
上記記載のように実施された試験は、本発明に係る実施例3及び4の製剤がいずれの刺激現象をも示さないことを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの治療剤を含み、更に
a)脂肪相;
b)1から15重量%の非イオン性乳化システム;
c)1から30重量%の少なくとも一つの浸透促進剤;及び
d)5から50重量%の水
を含む局所適用用の水中油型エマルションであって、前記脂肪相の量が35から50重量%を占めることを特徴とする水中油型エマルション。
【請求項2】
前記脂肪相が、皮膚軟化剤、ワックス、及び脂肪アルコールから選択される化合物より必須になる、請求項1に記載のエマルション。
【請求項3】
前記非イオン性乳化システムが、約10より大きいHLBを有する少なくとも一つの非イオン性界面活性剤と、約10未満のHLBを有する少なくとも一つの非イオン性界面活性剤とを含む、請求項1または2に記載のエマルション。
【請求項4】
前記乳化システムが、グリセリルモノステアレート/セテアレス20の界面活性剤の組み合わせからなる、請求項1から3のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項5】
前記浸透促進剤が、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールジペラルゴネート、ラウログリコール、エトキシジグリコール、ウレア、アセトン、オレイン酸、及びこれらの一つ以上の組み合わせから選択され、好ましくはプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及びプロピレングリコールジペラルゴネートから選択され、より好ましくは前記浸透促進剤はプロピレングリコールである、請求項1から4のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項6】
前記治療剤が、皮膚疾患の治療及び/または予防における使用のための化合物である、請求項1から5のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項7】
前記治療剤がコルチコステロイドクラスに属する、請求項1から6のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項8】
前記治療剤が、17−プロピオン酸クロベタゾール、デソニド、及び吉草酸ベタメタゾンから選択される、請求項7に記載のエマルション。
【請求項9】
前記治療剤がレチノイドクラスに属する、請求項1から6のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項10】
前記治療剤がビタミンD類似体クラスに属する、請求項1から6のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項11】
水の量がエマルションの5から30重量%、有利には約30重量%を占める、請求項1から10のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項12】
更に一つ以上の添加剤を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項13】
前記添加剤が、金属イオン封鎖剤、抗酸化剤、サンスクリーン剤、防腐剤、フィラー、電解質、湿潤剤、pH緩衝剤、染料、一般的な無機または有機の酸または塩基、香料、香油、化粧品活性剤、保湿剤、ビタミン、スフィンゴリピド、自己日焼け化合物、ゲル化剤、及び皮膚を滑らかにして保護する試薬から選択される、請求項12に記載のエマルション。
【請求項14】
a.35から45重量%の脂肪相;
b.5から15重量%の非イオン性乳化システム;
c.15から20重量%の少なくとも一つの浸透促進剤;
d.添加剤;
e.0.01から0.5重量%の少なくとも一つの治療剤;及び
f.5から50重量%の水
を含むことを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項15】
a.水中に攪拌しながら、60℃から95℃の間の温度で、少なくとも一つの浸透促進剤と任意の添加剤とを、均一な水性相が得られるまで溶解及び/または分散する工程;
b.乳化剤の組み合わせが溶解しており、60℃から95℃の間の温度に予備加熱されている脂肪相へ、前記水性相を攪拌しながら取り込ませる工程;及び
c.40℃未満の温度で攪拌しながら、適当な溶媒に任意に事前溶解した治療剤を取り込ませる工程
を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の水中油型エマルションの調製方法。
【請求項16】
皮膚科学的疾患の予防及び/または治療における使用のための医薬の調製のための、請求項1から14のいずれか一項に記載のエマルションの使用。
【請求項17】
乾癬の予防および/または治療における、請求項16に記載の使用。

【公表番号】特表2009−504619(P2009−504619A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525600(P2008−525600)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【国際出願番号】PCT/FR2006/001930
【国際公開番号】WO2007/020349
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(500247183)ガルデルマ・ソシエテ・アノニム (29)
【Fターム(参考)】