説明

皮膚角質層水分量の増加用組成物およびその経口摂取用製剤

【課題】肌の弾力性やハリの喪失や、脂質代謝異常や、内臓脂肪や皮下脂肪に起因する肥満、またはこれらの症状を伴うメタボリックシンドロームの予防、改善、または治療を目的とする飲食品、医薬部外品、医薬品などに有用な組成物およびその経口摂取用製剤の提供。
【解決手段】香酢またはそのエキスを有効成分として含有してなる組成物。好ましくは、香酢またはそのエキスは1年以上熟成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の弾力性やハリを改善できる美容志向の組成物およびその経口摂取用製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中国には古くから香酢と呼ばれるものがあり、調味料として使用されてきた。而して、最近の研究では、この香酢には日本で一般的な食用酢よりもアミノ酸や有機酸が豊富に含まれていることが分かってきた。そのため、日本でも、特許文献1に記載のように、一般的な食用酢に代わって調味料や健康補助食品として積極的に摂取されるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−168387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、香酢は未だ本格的な科学的解明がなされてはおらず、その全容の解明にはこれからの研究が待たれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者は、種々の方面から香酢を分析してみたところ、安全性が十分に高く、しかも
(1)皮膚角質層水分量を増加させるように作用する、
(2)内臓脂肪を減少するように作用する、
(3)脂質代謝の改善するように作用する
ことを見出し、本発明を完成させた。
本発明の請求項1の発明は、香酢またはそのエキスを有効成分として含有してなる、皮膚角質層水分量の増加用組成物である。
請求項2の発明は、請求項1に記載した組成物であって、香酢またはそのエキスが1年以上熟成したものであることを特徴とする組成物である。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した組成物であって、内臓脂肪の減少、および脂質代謝の改善用の組成物である。
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかに記載した組成物を用いてなることを特徴とする経口摂取用製剤である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の組成物を経口摂取することにより、肌機能の改善や健康増進を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例の体重の測定結果を示す折れ線グラフである。
【図2】本発明の実施例の皮下脂肪面積の測定結果を示す折れ線グラフである。
【図3】本発明の実施例の内臓脂肪面積の測定結果を示す折れ線グラフである。
【図4】本発明の実施例の総コレステロールの測定結果を示す棒グラフである。
【図5】本発明の実施例の善玉コレステロールの測定結果を示す棒グラフである。
【図6】本発明の実施例の悪玉コレステロールの測定結果を示す棒グラフである。
【図7】本発明の実施例の中性脂肪の測定結果を示す折れ線グラフである。
【図8】本発明の実施例のアディポネクチンの測定結果を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
香酢は、もち米を主な原料とし、壺や樽を用いて静置醗酵させた醸造酢の一種であり、香酢の代表的産地として中国の江蘇省・山西省・雲南省などが有名である。種々の製法があるがそのうち代表的なものは、蒸したもち米を籾殻と共に発酵・熟成させた後、その籾殻を濾過して得たものである。香酢の熟成には最短でも半年ほどかかると言われている。
なお、日本にも静置発酵させた醸造酢として黒酢があるが、これは玄米を主な原料として製造したものであり、香酢とは原料が異なる。
【0009】
本発明で使用するものは、香酢を自ら製造したものでも市販品でもよい。市販品では、日本恒順株式会社(KOJUN JAPAN CO. LTD)販売の香醋(香酢)、特に1年以上熟成のものが好ましいことが確認されている。
なお、製造したままの原液をそのまま使用してもよいが、効率良く摂取するために定法により濃縮してエキスとしてもよい。
【0010】
本発明の組成物は、内臓脂肪の減少や脂質代謝の改善効果の他に、皮膚角質層水分量の増加を期待することができる。
特に、皮膚角質層水分量の増加は全く期待していなかった効果である。皮膚角質層に正常状態では10〜30%の水分量が含まれているが、年齢や風、温度、湿度などの外部条件の影響により10%より低くなると、皮膚は弾力性やハリを失って、種々のトラブルの原因になる。それに対して、皮膚角質層の保湿機構を内側から高めることで水分量を増加する方が根本的に改善できて望ましいとは言われつつも、その作用を有するものは未だ知られていなかった。そのため、皮膚角質層に外側から水分を適宜補給することで対処してきたのが現状である。従って、皮膚角質層水分量を増加させる作用は非常に有用なものである。
【0011】
本発明の組成物は、経口摂取し易いように製剤化されるが、その剤形は特に限定されず、通常使用され得るものであれば任意の剤形をとることができる。通常は、固形剤、半固形剤または液剤であり、好ましくは固形剤である。固形剤としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤などが挙げられる。これらは一般的な製造方法に準じて製造される。
本発明の製剤は、本発明の効果および製剤的な安定性などを損なわない限り上記成分の他に、用途あるいは剤形などに応じて、成分を適宜配合しても良い。配合できる成分としては、特に制限されないが食品として使用される油脂オリーブ油、大豆油、サフラワー油、菜種油等の植物油、リノール酸、オレイン酸等の脂肪酸、例えば、軟カプセル剤化する場合には、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステルなどの界面活性剤、クエン酸などのpH調整剤が挙げられる。
【0012】
本発明の製剤の経口摂取量は特に限定されないが、通常は、上記有効成分の原液換算で約1mL以上であり、好ましくは4mL〜12mLである。この範囲での経口摂取により、皮膚角質層水分量の増加、内臓脂肪の減少、脂質代謝の改善の各効果が期待できる。なお、香酢は従来から食用に用いられてきたものであり、安全性が高く、長期に亘る経口摂取が可能である。
【実施例】
【0013】
(軟カプセル剤の製造)
香酢として、1年熟成香酢(販売元:日本恒順株式会社)20kgを用い、ロータリーエバポレーター(減圧度:1.0Mpa、湯浴温度:50℃)で5倍濃縮して、Bx70の香酢濃縮物4kgを得た。
得られた香酢濃縮物170mg(39.5質量%)に、サフラワー油226mg(52.6質量%)とミツロウ34mg(7.9質量%)を加えて混合して後、それを内容液とし、ゼラチン系シートを皮膜として軟カプセル剤に製剤化した。
【0014】
(被験者)
人数:15名(以下の基準を満たす者)
選択基準:
1)年齢30〜50歳の女でBMI値が24以上30未満の者。(体脂肪率:25%以上を目安とする)
2)インフォームドコンセントを取得した者。
除外基準:
1)糖尿病を治療中またはHbA1cおよび空腹時血糖に異常を示す者。
2)重篤な疾患既往歴がある者。
3)肝機能および腎機能検査値が異常を示す者。
4)心肺機能に障害を示す者。
5)食物および薬剤アレルギーのある者。
6)消化管の手術を受けたことがある者。
7)医師の判断により慢性あるいは急性の感染症の者。
8)コレステロール・血糖値抑制・便通改善に関連する特定保健用食品や健康食品(植物ステロール、キトサン、サイリウム種皮、大豆たんぱく質などを含むもの)を常用している者。
9)本試験開始時に他の臨床試験に参加中の者。
10)激しいスポーツをする者およびダイエット中の者。
11)妊娠中の者。
12)その他、試験責任医師が不適当と判断した者。
【0015】
(摂取方法)
12週間にわたって、朝昼晩にそれぞれ3粒ずつ経口摂取した。
【0016】
(評価―皮膚角質層水分量の増加)
SKICON-200EX(販売元:アイ・ビイ・エス株式会社)を用いてコンダクタンス測定法にて水分量を測定した。具体的には、洗顔した後、恒温恒湿室(温度:約20℃、湿度:約50%)内で20分間順化した後、左目の目じりから下2cmの部位を7回測定し、最大値と最小値を棄却した5回の平均値を採用した。
事前と12週間後の試験終了直後で測定したところ、事前は、53.34±12.3μSで、12週間後は、63.5±11.2μSであり、水分量が有意的(p<0.05)に増加したことが確認された。
この結果から、香酢を摂取することにより、細胞に十分影響成分が行き渡り、肌機能が改善されると考えられる。
【0017】
(評価1―内臓脂肪の減少)
体重、皮下脂肪面積、内臓脂肪面積を測定した。
結果は、図1、図2、図3のとおりで、体重、皮下脂肪面積、内臓脂肪面積とも若干ではあるが減少したことが確認された。
【0018】
(評価2―脂質代謝の改善)
血液採取し、総コレステロール(T-Cho)、善玉コレステロール(HDL-Cho)、悪玉コレステロール(LDL-Cho)、中性脂肪(TG)、アディポネクチンを測定した。
脂質代謝改善に関しては、図4、図5、図6、図7、図8のとおりで、HDL-Choについては、摂取後4週目〜8週目にかけて有意に上昇したことが確認された。また、TGについては、個人差が多いが、元から高かった被験者は低下傾向を示したことが確認された。また、アディポネクチンについては、摂取期間中漸増し、12週目において有意に上昇したことが確認された。アディポネクチンは肥満細胞から分泌され、内臓脂肪の減少や脂質代謝の改善に関係していると言われている。
【0019】
評価1、2の結果から、香酢を摂取することにより、アディポネクチンの産生が促進され、内臓脂肪の減少や脂質代謝の改善が期待できると考えられる。
【0020】
また、摂取期間を通して有害事象は無く、被験者の体感は非常に良かった。
この結果から、香酢の安全性が示されたと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の組成物は、肌荒れや、脂質代謝異常や、内臓脂肪や皮下脂肪に起因する肥満、またはこれらの症状を伴うメタボリックシンドロームの予防、改善、または治療を目的とする飲食品、医薬部外品、医薬品などに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
香酢またはそのエキスを有効成分として含有してなる、皮膚角質層水分量の増加用組成物。
【請求項2】
請求項1に記載した組成物であって、香酢またはそのエキスが1年以上熟成したものであることを特徴とする組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載した組成物であって、内臓脂肪の減少、および脂質代謝の改善用の組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載した組成物を用いてなることを特徴とする経口摂取用製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−51952(P2011−51952A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204201(P2009−204201)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人日本農芸化学会により平成21年3月5日に発行された、「日本農芸化学会2009年度(平成21年度)大会講演要旨集」にて発表
【出願人】(507361790)日本恒順株式会社 (2)
【Fターム(参考)】