説明

監視システムの監視装置

【課題】低コストでドアによる挟み込みの原因を監視員に認識させる監視システムを提供する。
【解決手段】監視装置3は、列車の車両1のドア20の開閉状態を監視する監視システムである。まず、監視カメラ60が、ドア20の開閉状態を知らせる車側灯30の点灯状態を撮像する。この上で、画像処理部80は、車両1の出発時に車側灯30が点灯していることを認識する。画像処理部80が認識した車側灯がある場合、制御部100は、ズームレンズ40と電動雲台50とにより、車側灯30が点灯したドア20をズームアップして撮像するよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車用ドアの安全確認のための監視システムの監視装置に係り、特に列車用ドアの戸閉り異常を低コストで確認する列車用ドアの安全確認のための監視システムの監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駅のホームに列車が停車し、発車時に列車の車両のドアが閉じる際に、完全に閉まらない状態だと、ドアの上方にある車側灯(車側表示灯)が点灯する。
このドアが完全に閉まらない状態は、ラッシュ時等、列車内が混雑している際、ドアにより乗客の衣類、荷物、乗客自身の身体等が挟み込まれた際に発生することがある。
【0003】
ここで、ドアによる挟み込みの原因としては、乗客の持ち物、例えばバッグの端のように、再開閉により簡単に解決して乗客の安全に大きな影響を与えない緊急性の低い原因が存在する。一方、乗客の手が挟まっているといった、大きな怪我につながる緊急性の高い原因も存在する。
ドアが閉じないことにより車側灯が消灯しない映像は、監視カメラの映像を駅務員室や指令所でのモニタで確認できる。しかしながら、従来のカメラ映像では、1台のカメラで2両から4両程度の車側全体を写しており、挟まれたものが小さい場合は、確認が困難であった。
このため、監視カメラ映像だけでは、その挟み込んだ物が小さい場合、その映像からは挟み込みの要因がバッグなど緊急性の低いものなのか、それとも人の手のように安全性の面で緊急を要するものなのかを判断するのは難しいという問題があった。
このため、ドア閉めの状況を正確に把握するには、例えば駅務員がその場所に駆けつけて近距離で目視にて確認する必要があり、状況を把握するまでに時間を要していた。このため、特にラッシュ時に、列車の定刻運行を阻害していた。
このような状況から、乗客の安全を確保しつつ運行をスムーズに行なうために、ドア閉めを監視カメラにより把握することができるシステムが望まれていた。
【0004】
ここで、従来の列車用ドアの安全確認のための監視システムとして、特許文献1を参照すると、列車の各車両のドア開閉を個別に検知するドア開閉センサと、前記列車又はホームに設置され、前記ホームに停車している列車の各車両のドアの近所を撮影する1台又は複数台の監視カメラと、前記列車又はホームに設置され、前記ホームに停車する列車の各ドアの位置を記憶するドア位置記憶手段と、前記列車又はホームに設置され、前記ドア開閉センサが完全に閉まっていない状態のドアを検出した時に当該ドアを選択指定するドア自動選択手段と、前記列車又はホームに設置され、前記ドア位置記憶手段の記憶情報に基づき、前記ドア自動選択手段によって選択指定されたドアの近くを撮影するように前記監視カメラのうち該当する監視カメラの位置と向き又はレンズ倍率を操作するカメラ操作手段と、前記列車又はホームに設置され、前記監視カメラが撮影する映像を表示するモニタテレビとを備える列車用ドア安全確認システムが記載されている(以下、従来技術1とする。)。
【0005】
従来技術1の列車用ドア安全確認システムは、ドア開閉センサから開状態信号を受けたドアを端末に表示し(従来技術1の明細書段落〔0039〕、及び図2参照)、乗務員がこれを認識したらキー操作して(従来技術1の段落〔0041〕参照)、該当ドアに向けてレールに沿って移動させて(従来技術1の段落〔0037〕、及び図3参照)カメラを向け、またレンズ倍率の自動調節をするように制御する(従来技術1の段落〔0051〕参照)。
これにより、従来の列車用ドアの安全確認を行い、ドア状態表示手段の表示とモニタテレビの映像を監視する一人の乗務員又は駅員がいれば、見通しの悪いホームに停車している列車や長大編成の列車についても効率良く、信頼性の高いドア安全確認を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−71240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、従来技術1の明細書の段落〔0056〕を参照すると、完全に閉まっていないドアが検出されたときに自動的にそのドアを監視対象ドアに指定してカメラ制御部に監視対象ドア指定信号を与えて監視する構成も開示されている。
しかしながら、従来技術1の明細書の段落〔0036〕を参照すると、完全に閉まっていないドアを検出する手段として、列車に備えられたドア開閉センサのドア開閉信号を通信装置にて受信する必要があった。
このため、専用の通信装置を備える必要があり、コストがかかるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の課題を解消することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の監視システムの監視装置は、列車の車両に備えられたドアの開閉状態を監視する監視システムの監視装置において、前記ドアの開閉状態を知らせる車側灯の点灯状態を撮像する監視カメラと、前記車両の出発時に前記車側灯が点灯していることを認識する画像処理部と、ズームレンズと雲台により、前記画像処理部が認識した前記車側灯のある前記ドアを、前記監視カメラがズームアップして撮像するよう制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車側灯が点灯していることを認識して当該ドアをズームアップして撮像することで、専用の通信装置がいらず、コストを低減した監視システムの監視装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両ドア部2の制御構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る監視装置3の制御構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るドア閉め監視処理のフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態に係る監視装置3の監視モニタ110のズームアウト時の画面例である。
【図5】本発明の実施の形態に係る監視装置3の監視モニタ110のズームアップ時の画面例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態>
〔監視システムXの制御構成〕
以下で、本発明の実施の形態に係る監視システムXについて、図面を参照して説明する。
図1と図2とを参照すると、監視システムXは、列車用ドアの安全確認のための監視システムであり、列車の車両に備えられた車両ドア部2と、主に列車の駅のホームに配置され、ドア開閉を監視するように設置された監視装置3とを備える。
【0013】
(車両ドア部2の制御構成)
まず、図1を参照して、本発明の実施の形態に係る車両側の装置である車両ドア部2について説明する。車両ドア部2は、車両1に備えられ、ドア20と、車側灯30と、センサ制御部200と、点滅制御部230と、センサ240と、ドア開閉スイッチ270とを含んで構成される。
【0014】
ドア20は、列車の車両1の左右に通常は複数備えられており、乗客が昇降するために、例えば運転手の指示により電動で開け閉めすることができるドアである。
このドア20は、閉じた際に挟み込み等で多少の隙間があっても、ロックして列車の運航中は開かないようにすることができる。
【0015】
車側灯30は、鉄道車両(列車)の側面に、列車の外部から目視可能なように備えられるLED(Light Emitting Diode)等の車側表示灯である。
車側灯30は、戸閉め表示灯である。車側灯30は、ドア20が開くと点灯し、閉まると消灯するように構成されている。すなわち、挟み込み等により閉じた際にドアが完全に閉じた状態にならないと点灯する。さらに、本実施形態に係る車両ドア部2においては、ドアの隙間距離、すなわち挟み込みの距離に応じたパターンで点滅して、車側灯信号として送出できる。なお、本実施形態においては、点滅している車側灯30も点灯している状態と検出することができる。
また、車側灯30は、通常のLEDの他に赤外線LED等を備えていて、点滅のパターンを目視では点滅と感じさせずに、監視カメラ60(図2)にて検出させることもできる。この赤外線の点滅のパターンも車側灯信号として送出できる。
なお、車側灯30は、例えば、赤、青、緑といった複数の波長のLEDを備えていて、この色合いによりドアの隙間距離を報知するように構成してもよい。この色合いの差も、車側灯信号として送出できる。
【0016】
センサ制御部200は、下記で説明する監視処理において車両ドア部2の制御を行うCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等の演算制御部である。
センサ制御部200は、車両ドア部2の各部を制御する部位である。また、センサ制御部200は、ROMやフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶部を内蔵し、その記憶部のプログラムに従って各部を制御するように構成してもよい。
なお、センサ制御部200は、車両の運転台等に、センサ240の信号を送信して、ドアが完全に閉まっていないことを報知することもできる。
【0017】
点滅制御部230は、CPU、MPU等であり、LEDを点灯させるためのLEDドライバ等の車側灯30の駆動回路を含んでいてもよい。
点滅制御部230は、センサ240のから検出されたドア隙間距離に応じて、例えば、グレイコード等を用いて隙間の大きさ等を点滅パターン等としてエンコードし、車側灯30を点滅させる。
この際に、列車の各便や車両1毎に備えることができる車両ID(Identification)を基に、便名や車両1の位置や、車両1内のどの位置の扉なのか等について点滅パターン等としてエンコードすることができる。
また、ホームドアの状態についてもエンコード可能である。さらに、下記のセンサ240の圧力センサ等の情報もエンコード可能である。
なお、この点滅の間隔については、運転手や車掌や駅務員や指令所員等である監視システムXの監視員のユーザに目視が難しい高速な明滅を用いて、可視波長通信を行うように構成することができる。これにより、多くの情報を高速に通信できる。また、乗客等に見た目が良いという効果も得られる。
逆に、点滅の間隔や回数を簡単に察知可能に構成してもよい。これにより、監視員のユーザが、点滅の状態により、ドア隙間距離情報を理解できる。
【0018】
センサ240は、ドア隙間距離を測定するセンサであり、エンコーダ等を用いて、ミリメートル単位でドア20の隙間を検知可能である。
また、センサ240は、圧力センサ等を備えて、挟まれていたものが硬いか柔らかいかといった情報も検知できる。
【0019】
ドア開閉スイッチ270は、車両の運転台等にあるドアの開閉を行うためのスイッチである。
ドア開閉スイッチ270は、車掌又は運転手(運転士)が操作(通電)することで、ドア20を開閉することができる。
【0020】
(監視装置3の制御構成)
次に、図2を参照して、本発明の実施の形態に係る監視装置3の制御構成について説明する。図2は、列車がホームに停車している際の車両側面の車両ドア部2の車両外から目視できる部位と、ホーム等に備えられた監視カメラ60を含むホーム機器部である監視装置3の部位とを示している。なお、図2において、図1と同一の符号は同一の構成部位を示す。
このうち、監視装置3は、ズームレンズ40と、電動雲台50と、監視カメラ60と、映像分配部70と、画像処理部80と、スーパーインポーズ部90と、制御部100と、監視モニタ110とを備えて構成される。
【0021】
ズームレンズ40は、監視カメラ60の焦点距離を所定の範囲で自由に変化させるための電動のズームレンズである。ズームレンズ40は、下記の電動雲台50と連動して、ドアが閉まらない箇所をズームアップすることができる。
ここで、ズームレンズ40は、レンズ倍率を単純に上げ下げする訳ではなく、制御部100の信号を基に、ズームアップ/ズームダウンを行うことができる。
これにより、監視カメラ60の台数が少なくても、所定の大きさまでドア20をズームアップして拡大し、ズームアップされた画像を基に、ドアの隙間の画像を確認することができる。
【0022】
電動雲台50は、方向制御用の電動の雲台、すなわち、監視カメラ60は架台(図示せず)に備えられ、監視カメラ60を自由な方向に向けて固定するための装置である。
電動雲台50は、制御部100からの信号により、例えば、X軸、Y軸、Z軸を移動して、車側灯30の点滅している車両ドア部2のドア20を追尾して監視カメラ60に撮像させることができる。
【0023】
監視カメラ60は、監視カメラ本体となる撮像装置である。監視カメラ60は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等を用いて、画像を取得する撮像装置である。
監視カメラ60は、例えば、車側灯30の点灯やドア20の撮像をすることができる。また、監視カメラ60は、可視光での撮像をする以外にも、赤外線等の画像を撮像することもできる。また、監視カメラ60は、例えば人感センサや動きセンサやマイク等も備えていてもよい。さらに、監視カメラ60は、複数備えられている際に、各監視カメラ60を区別するためのカメラIDを備えていてもよい。
なお、監視カメラ60は、デジタル方式のカメラではなく、通常のテレビジョンカメラを用いて、画像・音声エンコーダ(図示せず)を用いて画像のデジタルデータに変換するように構成してもよい。
また、監視カメラ60は複数備えられていてもよく、鏡等の光学機器を用いて一度に複数箇所の画像を取得するように構成されていてもよい。
また、監視カメラ60には、通常のイメージセンサの他に、車側灯信号を検出する専用の光学センサ等を備えていても良い。
なお、監視カメラ60として、既存の駅ホーム用のカメラを用いることも可能である。このため、導入コストを削減することができる。
【0024】
映像分配部70は、画像分配機器やスイッチャや画像ミキサ等の部位である。
映像分配部70は、監視カメラ60からの画像の信号を、画像処理部80やスーパーインポーズ部90に分配する。
また、映像分配部70は監視カメラ60や画像処理部80やスーパーインポーズ部90が複数備えられている場合、制御部100からの指示でこれを切り換えることもできる。
【0025】
画像処理部80は、監視カメラ60が撮像した画像データについて画像処理を用いて、車側灯30を含む複数の車側灯の点滅や色や赤外線のパターン等を検出するGPU、DSP、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、専用回路等である。
加えて、画像処理部80は、画像認識を行うプログラムや回路である点滅パターン等認識部を備えることができる。この点滅パターン等認識部は、車側灯30の点滅パターン等を認識し、車側灯信号をデコードし、車側灯信号データを得ることができる。
さらに、画像処理部80は、画像の特徴量を認識する画像特徴量認識部を備え、例えば、ヒトの肌や手や足の形といった色や形状に反応する人工知能、統計的な処理を行うことができる。たとえば、画像特徴量認識部は、3層ニューラルネットを用いて、ヒトの手の形状や色を検知することができる。
【0026】
スーパーインポーズ部90は、映像分配部70からの監視カメラ60からの画像を取得するビデオキャプチャカードと、制御部100が出力したドア隙間距離情報等を文字や画像等に変換して描画するGPU等とが備わる部位である。このため、スーパーインポーズ部90は、文字フォントのデータ、キャラクタジェネレータやキャラクタROM等を備えている。
スーパーインポーズ部90は、映像分配部70から分配された監視画像をキャプチャカードにより取得した画像データに、描画された文字や画像を重畳(スーパーインポーズ)等して、監視モニタ110に表示することができる。
【0027】
制御部100は、監視装置3の各部を制御するCPU、MPU、DSP、GPU等の演算制御産である。
制御部100は、ROMやフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶部を備え、その記憶部のプログラムに従って各部を制御するように構成してもよい。
【0028】
監視モニタ110は、LCD(Liquid Crystal Display)、PDP(Plasma Display Panel)、LED(Light Emitting Diode)、CRT(Cathode Ray Tube)、プロジェクタ等を用いた、監視カメラ60用のディスプレイモニタである。
監視モニタ110は、複数の監視カメラ60の画像を表示することができ、ドア閉め後に車側灯30が点滅等している場合、当該ドア20をズームして表示することができる。また、監視モニタ110は、ドア隙間距離や後述する付加情報を表示可能である。
【0029】
〔監視システムXのドア閉め監視処理〕
次に、本発明の実施の形態に係る監視システムXを用いたドア閉め監視処理について、図3〜図5を参照して詳しく説明する。
以下で、図3のフローチャートを参照して、車両ドア部2と、監視装置3とが実行する各ステップを詳細に説明する。
【0030】
まず、ステップS101において、車両ドア部2のセンサ制御部200は、ドア開け閉め判断処理を行う。
具体的には、通常の駅ホーム部に停車した列車の車両1は、運転手の操作にてドア開閉スイッチ270が押下される。これにより、図示しない開閉装置により、ドア20が開閉する。
また、ドア開閉スイッチ270のドア開閉信号は、センサ制御部200にも入力される。これにより、ドア20が開閉のどちらの動きをしようとしているのかを判断する。
【0031】
次に、ステップS102において、車両ドア部2のセンサ制御部200は、センサ動作処理を行う。
この処理においては、センサ制御部200は、ドア開閉信号がドア20を閉める信号であった場合に、センサ240を動作させる。これにより、センサ240はドア隙間距離を取得する。
なお、センサ240が圧力センサ等を備えている場合には、隙間を締める際の圧力により、挟まっている物(オブジェクト)の硬さを計測することもでき、挟まっている物が人体のように柔らかい物なのか、荷物等の硬い物なのかについての圧力情報を得ることもできる。
【0032】
次に、ステップS103において、センサ制御部200は、センサ240が戸閉り異常を検出を検知したか判定する。ここでは、センサ制御部200は、ドア20が戸閉まりが異常で完全に閉まらない、すなわち、ドアの隙間距離が所定距離以上であるか否かを判定する。なお、複数のドア20がある場合には、1つでもドア20が開いている場合に、Yesと判定する。
Yesの場合、センサ制御部200は、異常ありとして処理をステップS104に進める。
Noの場合、センサ制御部200は、異常なしなので車両ドア部2の処理を終了する。
【0033】
次に、ステップS104において、センサ制御部200は、車側灯制御処理を行う。
具体的に、まず、センサ制御部200は、センサ240が読み取ったドアの閉まり具合となる隙間の間隔を、ドア隙間距離情報として取得する。
この上で、センサ制御部200は、ドア隙間距離情報や圧力情報を、例えば、グレイコード等を用いて、符号化、すなわちエンコードして車側灯信号データを作成する。この際に、センサ制御部200は、車側灯データに、車両ID、便名、ドア20が何両目のどの位置にあるか、といった情報を加えることもできる。
この上で、センサ制御部200は、車側灯信号データを、点滅制御部230に送信する。
点滅制御部230は、車側灯30を、車側灯信号データに従って、点滅動作、可視光通信、赤外線通信等を行って、点滅パターン等を制御する。
以上により、車両ドア部2において、ドア閉め時にドア20が完全に閉まらないことにより、ドアの隙間間隔を車側灯30の点滅パターン等の車側灯信号として送出できる。
【0034】
この車側灯信号は、車両1の外部から認識できるように送出される(タイミングT101)。
送出された車側灯信号は、監視装置3が、監視カメラ60やその他のセンサ等にて検知して、各種処理を行う。以下で、この監視装置3の処理について記載する。
【0035】
まず、ホームに停車した列車は、ズームレンズ40と電動雲台50とを具備した監視カメラ60により、ドア20と車側灯30を含む、例えば、1〜4両分の車両1の車側映像が撮像される。すなわち、この時点では、監視カメラ60は、ズームダウン(ズームアウト)されており、広角(ワイド側)での画像を撮像する。
撮像された車側映像は監視カメラ60用の監視モニタ110に表示され、監視員のユーザにより監視される。
なお、この際に、監視装置3に備えられた図示しない光学センサにより車側灯30の点灯を検知し、この検知信号を画像処理部80に送信することもできる。
【0036】
ここで、ステップS201において、画像処理部80は、監視カメラ60からの画像データを用いて、車側灯信号取得処理を行う。この処理において、画像処理部80は、車側灯30を含む複数の車側灯の点滅を検知する。
具体的に、画像処理部80は、撮像された車側映像の画像データや光学センサのデータから、車側灯信号が送出されていた場合には検知する。
図4の画面例500を参照して説明すると、画像処理部80は、監視カメラ60からの広角撮像された画像データについて画像認識を行う。たとえば、画像処理部80は、車側灯の所定の点滅パターン等を検出する。図4では、一番右側のドア20の上の車側灯30が点滅していることを検出できる。
なお、監視カメラ60は、赤外線画像等の不可視周波数帯の画像も撮像可能なので、赤外線の点滅パターン等を検出することができる。さらに、カラーカメラを用いて、車側灯信号の色合い等も点滅パターン等として検出可能である。
この上で、画像処理部80は、点滅パターン等を検出した場合、復号化、すなわちデコードして車側灯信号データを取得する。
【0037】
次に、ステップS202において、制御部100は、ズームアップ処理を行う。
この処理で制御部100は、ズームレンズ40と電動雲台50を制御して、点滅パターン等を検出した車側灯30のある車両1の車両ドア部2をズームアップする。これにより、監視モニタ110には、自動的に戸閉りの異常のあったドア20のズームアップ画像が映し出される。
具体的に、制御部100は、画像処理部80の検出した車側灯30に向けて、電動雲台50のX軸、Y軸、Z軸を調整する信号を送出し、ドア20が撮像した画面内で所定のサイズになるようにズームレンズ40をズームインする。そして、制御部100は、監視モニタ110に、監視カメラ60の撮像した画像を表示させる。
この際、車両1の停止位置に合わせて、画像処理部80やスーパーインポーズ部90にて台形補正等を行い、撮像された画像を見やすくすることもできる。
【0038】
なお、このズームアップ処理の際、車側灯30は点灯のみしていて、点滅パターン等を検出できないという状況も考えられる。この状況として、監視システムXに対応していない列車の停車、車両1の故障、濃霧等の天候の影響での検出エラー等が起きる等が考えられる。
この場合、制御部100は、複数の点灯している車側灯30を検出した後、タイマ(図示せず)により所定の停車時間が経過した後、すなわち車両出発の際に、点灯している車側灯30のある車両1の車両ドア部2をズームアップする。なお、このような所定の停車時間を用いる他にも、発車のメロディやブザー等の検知、閉まるドア20の画像検知等の手段を用いて車両出発を検出してもよい。
また、制御部100は、ズームアップされた画像を別の監視モニタに表示するように構成してもよい。
【0039】
なお、制御部100は、画像処理部80を用いて、具体的なドア20の隙間の距離を画像認識により検出することもできる。この際には、画像処理部80がドア20のエッジを認識し、ズーム倍率と台形補正された画像のピクセル数等から具体的な距離を推定可能である。
さらに、制御部100は、画像処理部80の画像特徴量認識部を用いて、具体的に挟まれている物(オブジェクト)を検出することもできる。たとえば、図5を参照すると、画面例510では、オブジェクト530を検知している。この際、人体等が挟まれていて、車両の運行において危険な場合は、その旨を表示することもできる。さらに、この運行において危険か否か判断する際に、監視カメラ60の人感センサや動きセンサやマイク等の情報を用いて認識させてもよい。
【0040】
図5の画面例510では、ズームアップした画像を示している。ここでは、この車両ドア部2の車側灯30とドア20が確認できる。
なお、複数の車側灯30から点滅パターン等を検出した場合には、例えば、監視モニタ部110より遠くの車側灯30のある車両ドア部2を優先的に表示するように構成できる。この上で、車掌や駅務員や指令所員等のユーザは、この複数の車両ドア部2を切り換えるよう指示することができ、この指示に従い制御部100はズームして当該車両ドア部2を表示可能である。
【0041】
次に、ステップS203において、制御部100は、ドア隙間距離情報表示処理を行う。
この処理において、制御部100は、点滅パターン等から復号化して割り出されたドア隙間距離情報を、具体的な隙間距離の数値情報に変換して、スーパーインポーズ部90のGPU等を用いて描画する。
また、制御部100は、この具体的な距離の情報に加えて、付加情報をスーパーインポーズ部90により描画することもできる。
制御部100は、この付加情報として、カメラIDに対応して予め設定された監視カメラ60の名称を表示可能である。また、制御部100は、点滅パターン等に含まれる車両IDから、停車している列車の時刻表での便名や車両名等を取得して表示し、停車時間や運行に係る情報等を表示することもできる。
この描画された文字や画像は、スーパーインポーズ部90により、監視カメラ60の画像に重畳して描画される。
【0042】
図5の画面例510を参照すると、表示された具体的な距離の情報と付加情報がメッセージ550として表示されている。
なお、監視員のユーザの指示等により、制御部100は、挟まれた物をさらにズームアップして閲覧することもできる。たとえば、図5の画面例510では、制御部100は、画像処理部80の情報を用いてオブジェクト530をズームアップするよう、電動雲台50とズームレンズ40とを制御する。
以上により、ドア閉め監視処理の監視装置3の処理を終了する。
【0043】
以上のように構成することで、以下のような効果を得ることができる。
まず、従来の監視システムにおいては、ドアによる挟み込みが発生した際に、ドアが閉じないことにより車側灯が消灯しない映像は、駅務員室や指令所でのモニタで確認できていた。しかしながら、従来のカメラ映像では、1台のカメラで2両から4両程度の車側全体を写していた。このため、その挟み込んだ物が小さい場合、その映像からは挟み込みの要因がバッグ等の物であり緊急性が低いか、それとも人の手の様に安全性の面で緊急性が高いかを判断するのは難しかった。
このため、正確に把握するには、例えば駅務員がその場所に駆けつけて、近距離にて目視確認する必要があり、状況を把握するまでに時間を要するという問題があった。
【0044】
また、従来技術1においては、ドア開閉センサのドア開閉信号を通信装置にて受信する必要があった。
このため、列車や監視装置に専用の通信装置を備える必要があり、コストが掛かるという問題があった。
【0045】
これに対して、本発明の実施の形態に係る監視システムXにおいては、車側灯30の消灯しない車両ドア部2を自動的にズームアップすることができる。
また、ホームに設置されて車両ドア部2の開閉の安全を監視する監視カメラ60を有効に活用して挟み込みを検知するため、専用の通信装置を備える必要がない。
このため、監視システムXの導入コストを削減することができる。
【0046】
さらに、本発明の実施の形態の監視システムXは、電車の車両ドア部2のドア20の開閉状態を監視し、ドアの開閉状態を知らせる車側灯30に、ドア隙間距離情報を点滅パターン等として入れ込んで送信することができる。
これにより、専用の通信装置を介さないため、乗客の携帯電話等による誤動作を抑えることができ、安全性を高められるという効果が得られる。
また、本実施形態の監視システムXは、通信装置による制御の遅れがなく、画像処理により、素早くドアの戸閉まり(ドア締まり)異常を検出することもできる。
【0047】
また、列車の停止位置は、運転手の停車の位置により多少の誤差があるものの、従来技術1においては、ドア開閉信号を通信装置にて受信していた。
このために、誤差に合わせてドア監視用カメラを、ドアの隙間に合わせてより適切にズームアップさせることは難しかった。
よって、従来技術1においては、単にレンズ倍率を変更することしかできなかった。
【0048】
これに対して、本発明の実施の形態に係る監視システムXにおいては、監視カメラ60に車側灯30への追従機能を持たせることによって、戸挟みの原因を確実、迅速に特定することができる。
すなわち、本実施形態に係る監視システムXは、駅ホームの車両ドア部2を監視カメラ60の撮像した画像を、画像処理部80にて画像認識し、制御部100がズームレンズ40と電動雲台50とを連動して制御する。そして、監視カメラ60の撮像画像を、点灯している車側灯30のある車両ドア部2を、確実にズームアップして監視モニタ110に表示することができる。
これにより、本実施形態の監視システムXでは、列車の停止位置が変わっても、自動的に対応できる。
このため、本実施形態の監視システムXは、監視カメラ部60を監視員のユーザが手動にて調整する必要がなく、ドアに挟まれた物や人を迅速に且つ正確に認知することが可能となる。
すなわち、挟み込みの原因が物なのか人なのかを、従来より短い時間で監視員のユーザに正確に把握させることが可能である。
【0049】
また、本実施形態の監視システムXでは、画像処理部80により、車側灯30の点灯状態を認識するため、ホームに停車する列車の各ドアの位置を記憶するドア位置記憶手段が必要なく、コストを低減することができる。
また、本実施形態の監視システムXでは、車側灯30の点滅パターン等を車側灯信号として認識すればよいため、画像認識のための回路を小規模にして、コストを削減することができる。
また、本実施形態の監視システムXでは、監視システムXに対応していない列車であっても、点灯のみしていて点滅パターン等が検出できない場合でも、画像認識により車側灯30の位置を追尾してズームアップして対応することができる。
【0050】
また、本発明の実施の形態に係る監視システムXにおいては、ドアが閉まらない場合に自動的に車側灯を点滅させることができる。この際、ドア20の開閉度合いを測定するセンサ240を備え、閉まらなかったドア20に対し隙間の距離を測定することができる。そして、この隙間の距離に対応して、点滅制御部230が車側灯30の点滅パターン等を変化させて車側灯信号を送出する。
監視装置3においては、ドア20の隙間の開き具合を画像認識により把握しズームアップするのと同時に、車側灯信号から取得したドア20の隙間の距離を監視モニタ110に表示することができる。また、カメラIDや車両IDに対応した付加情報も監視モニタ110に表示可能である。
これらの処理により、監視員のユーザは、挟み込みの要因が、バッグなどの障害物による緊急性の低い原因なのか、若しくは人のように危険で緊急性の高い原因なのかを総合的に短時間で正確に把握することができる。
よって、監視員のユーザが視覚的な把握を行い、他の情報と合わせて、総合的に判断することで、よりスムーズな運行と安全確保が可能となる。
すなわち、画像監視を行っている運転手、車掌、駅務員、指令所員等のユーザが、問題の発生したドア部を迅速に特定でき、適切な対処が行える。
【0051】
また、本発明の実施の形態に係る監視システムXの監視装置3は、列車の車両1のドア20の開閉状態を監視する監視システムであって、ドア20の開閉状態を知らせる車側灯30の点灯状態を撮像する監視カメラ60と、車両1の出発時に車側灯30が点灯していることを認識する画像処理部80と、画像処理部80が認識した車側灯30がある場合、ズームレンズ40と電動雲台50とにより車側灯30が点灯しているドア20を撮像するよう制御する制御部100とを備えることを特徴とする。
【0052】
また、本発明の実施の形態に係る監視システムXは、駅ホームに設置され車両ドア開閉部を監視することを目的とする複数台の監視カメラが、車両出発時ドアが閉まらない場合に、その当該ドア部を自動的にズームアップし視覚的に詳細な情報を得ることで戸挟み原因の特定を正確かつ迅速に判断する監視システムであることを特徴とする。
このように、駅ホームに設置された車両ドア部を監視することを目的とする複数台の監視カメラについて、ズームレンズと方向制御用電動雲台を具備させ、監視カメラ映像のズーム機能と方向制御機能を画像認識にて制御することで、車両出発時ドアが閉まらない車両の当該ドア部を自動的にズームアップし、戸挟み原因の特定を正確かつ迅速に行なうことができる。
【0053】
また、本発明の実施の形態に係る監視システムXは、通常のドア開閉時の車側灯の点灯/消灯とは違って、閉まらなかったドアに対しその車両の車側灯を点滅等させることで、ドア開閉信号情報を持っている車両と通信を行うことなく、地上ホーム側単独のシステムで戸挟み異常の発生とその場所を把握できるシステムであることを特徴とする。
このように、本実施形態の監視システムXでは、運転手がドア閉め動作を行なっているにも関わらず閉まらなかったドア車両の車側灯を点滅させることで、ホーム側では監視カメラからの点滅画像をソフトウェア的な画像処理により認知させ、電波等の通信装置を用いずに、地上ホーム側機器が単独で車両ドア開閉に異常が発生していることの判断とその場所を特定することが可能でとなる。
この点滅動作は、車側灯を点滅させる駆動回路となる点滅制御部230を備えることで、既存の列車の車両1に容易に組み込むことができる。
【0054】
また、本発明の実施の形態に係る監視システムXは、車両側では車側灯の点滅パターンをドアの隙間の違いにより変えることで、その隙間具合を認識することで戸挟み事故を迅速に判断し、監視員のユーザの適切な処理に資することが可能な監視システムであることを特徴とする。
このように、本実施形態の監視システムXでは、車両ドア部2に開閉距離を測定できるセンサ240を備え、センサ240からのドア隙間距離情報を基に、ドアの隙間の距離に応じた複数の点滅パターンを車側灯駆動回路に持たせることで点滅パターン等を変えることが可能となる。
さらに、その点滅パターン等を検知した監視カメラ60の画像からはプログラム等のソフトウェア処理により点滅パターン等を識別することができ、その点滅パターン等により隙間距離を監視モニタに情報として表示することで、監視員のユーザが迅速に隙間距離を認識することが可能となる。
【0055】
なお、本実施の形態においては、監視装置3の画像処理部80、スーパーインポーズ部90、制御部100、通常のOS(Operating System)がインストールされたPC(Personal Computer)の記憶部に記憶したプログラムにより実現してもよい。この際、スーパーインポーズ部90として、例えば、ビデオキャプチャカードやビデオカード等を用いることができる。
また、本実施の形態における各手段は、それぞれ独立したハードウェアで実現されなくてもよく、さらに一つのハードウェアで複数の手段を実現してもよい。
【0056】
また本発明の実施の形態に係る監視システムXにおいては、車両ドア部2の車側灯30を画像認識の対象として示したが、更に、車両1に所定のマーク等を塗装等しておき、これを基に画像処理部80が画像認識の補助として使用することができる。
例えば、図5の画面例510においては、マーク560を、この塗装による画像認識の補助用に用いる例を示している。
この制御部100は、マークがある場合、監視システムXの対象の車両であると認識するように構成できる。さらに、このマークを二次元バーコード等として車両IDを付記するように構成可能である。また、このマークを用いて、台形補正、車側灯30の位置の補正、ズーム倍率の補正等を行うことができ、正確にドア20のドア隙間距離を求めることもできる。
なお、マーク等の塗装に関しても、赤外線等の不可視光でのみ検知可能な塗料等を用いて塗装することもできる。これにより、通常の車両のデザイン上の差異を目立たなくすることができる。
【0057】
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実行することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0058】
1 車両
2 車両ドア部
3 監視装置
20 ドア
30 車側灯
40 ズームレンズ
50 電動雲台
60 監視カメラ
70 映像分配部
80 画像処理部
90 スーパーインポーズ部
100 制御部
110 監視モニタ
200 センサ制御部
230 点滅制御部
240 センサ
270 ドア開閉スイッチ
500、510 画面例
530 オブジェクト
550 メッセージ
560 マーク
X 監視システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の車両に備えられたドアの開閉状態を監視する監視システムの監視装置において、
前記ドアの開閉状態を知らせる車側灯の点灯状態を撮像する監視カメラと、
前記車両の出発時に前記車側灯が点灯していることを認識する画像処理部と、
ズームレンズと雲台により、前記画像処理部が認識した前記車側灯のある前記ドアを、前記監視カメラがズームアップして撮像するよう制御する制御部とを備える
ことを特徴とする監視システムの監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−240846(P2011−240846A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115519(P2010−115519)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】