監視システム
【課題】複数の監視用カメラを用いることによる監視対象物の同定性能を向上させる。
【解決手段】各監視範囲における撮像装置3のうち基準となる何れか一つの撮像装置3により撮像した画像の黒潰れや白飛びを抑制するために、当該撮像装置3に対応して設けられる照明装置7や付帯設備9の駆動を制御することで、監視範囲に照らされる光の照度調整を行なう。そして、前述した撮像画像に表れる監視対象物の色を実際の色に近づけるために、当該撮像装置3に対応して設けられる照明装置7による照明の分光分布特性を制御する。対象物同定処理部53は、基準となる撮像装置3により撮像された画像による色みと、その他の撮像装置3により撮像された画像による色みとが均一化されていれば、それぞれの撮像装置3により撮像した画像をもとに、これらの撮像装置3による監視範囲をそれぞれ通過した監視対象物の同定処理を行なう。
【解決手段】各監視範囲における撮像装置3のうち基準となる何れか一つの撮像装置3により撮像した画像の黒潰れや白飛びを抑制するために、当該撮像装置3に対応して設けられる照明装置7や付帯設備9の駆動を制御することで、監視範囲に照らされる光の照度調整を行なう。そして、前述した撮像画像に表れる監視対象物の色を実際の色に近づけるために、当該撮像装置3に対応して設けられる照明装置7による照明の分光分布特性を制御する。対象物同定処理部53は、基準となる撮像装置3により撮像された画像による色みと、その他の撮像装置3により撮像された画像による色みとが均一化されていれば、それぞれの撮像装置3により撮像した画像をもとに、これらの撮像装置3による監視範囲をそれぞれ通過した監視対象物の同定処理を行なう。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の箇所で撮像した画像をもとに監視対象物を同定する監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば大規模な建物内には防犯を目的として複数の監視用カメラが設置される。
【0003】
前述した建物が百貨店などの大規模店舗である場合では、入り口、売り場、通路などにそれぞれ監視用カメラが設置されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
店舗内では、監視対象物、ここでは不審人物などが店舗内のどこにいるのかを常に把握する仕組みが設けられることが望ましい。しかし、店舗内において監視用カメラを密に配置することは困難であるため、未監視区域が存在してしまう。
【0005】
よって、複数の箇所に点在して設けられる監視用カメラ毎の画像の中から監視および追跡対象の人物を特定する必要があり、この監視および追跡対象の人物の特定を監視者によらずに自動的に行なう技術として顔認識用画像処理技術が考えられる。
しかし、画像に写っている者が監視用カメラの正面を向いているとは限らない為、顔認識用画像処理技術を適用しても不審者を実際に特定することは困難である。
【0006】
そこで、顔認識用画像処理技術を用いずに不審者を特定する技術として、複数の監視用カメラを用意し、それぞれのカメラにより撮像された画像に含まれる人間の服の色情報を基に、それぞれの画像にカメラ間で共通して含まれる人物を特定する技術がある。
【特許文献1】特開平7−45370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
色に基づいて監視対象物の同定を行なうには、複数の監視用カメラ間で色特性を合わせる必要がある。しかし、従来の照明環境では監視用カメラ毎に画像の色みが異なってしまうため、同定の精度が低下してしまう問題があった。
【0008】
カメラ毎に画像の色みが異なる具体例としては、外光の影響が強い場合に、画像内に明るい領域と暗い領域が発生して、画像の黒潰れや白飛びが発生し、演色性が低下してしまうことが挙げられる。
【0009】
また、他の具体例として、ある監視対象物が設置場所の異なる複数の監視用カメラに映る場合に、当該監視用カメラ周辺の照明環境の影響を受け、同一の監視対象物の色が異なって見える、即ち監視用カメラ間で色みが異なる画像になる事や、設置場所の異なる複数の監視用カメラ周辺の照明の種類が設置箇所ごとに異なるために画像の色みがばらついてしまう事が挙げられる。特に、照明が例えば蛍光灯の場合には、その種類は多く、基本分類として白色、昼白色、昼光色の3種類となる。
【0010】
設置場所の異なる複数のカメラの色みを均一にするには、監視用カメラのホワイトバランス他の設定または外光や照明の影響を除去する分光画像処理を実施することが考えられる。
しかし、監視用カメラの設定による色調整を行なう場合、ばらつきが発生し易い。また、分光画像処理を行なう場合、光源の影響を適切に推定することは容易ではない。
【0011】
以上のことから、従来の方法では、監視用カメラ間の色みを均一にして監視対象物の同定の精度を高める事は困難であった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、複数の監視用カメラを用いる事による監視対象物の同定の精度を向上させることが可能になる監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明に係わる監視システムは、監視対象物を撮像するための複数の撮像装置と、前記それぞれの撮像装置による撮像範囲を照らす照明装置と、前記それぞれの撮像装置により撮像された画像の色特性が当該画像に含まれる前記監視対象物の同定が可能な条件を満たす色特性となるように、前記それぞれの撮像装置に対応する照明装置により前記撮像範囲へ照らされる照明光の状態を制御する照明制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の監視用カメラを用いる事による監視対象物の同定の精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下図面により本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態における監視システムの構成例を示すブロック図である。
本発明の実施形態における監視システムは、図1に示すように、全体の処理動作を司る制御部1、画像入力部2、撮像装置3、記憶装置4、画像処理部5、照度制御部6、照明装置7、付帯設備制御部8、付帯設備9および表示装置10を備え、それぞれがバス11により相互に接続される。
【0016】
図2は、本発明の実施形態における監視システムの設置形態の一例を示す図である。
この監視システムの撮像装置3は、いわゆる監視用カメラであり、図2に示すように、監視対象物である人物の複数の監視範囲、ここでは、店舗フロア内の複数のエリアのそれぞれに設置される。店舗フロア内の複数のエリアとしては、窓付近、室内、廊下などが挙げられる。撮像装置3は、各監視範囲のそれぞれを撮像することで、監視対象物である人物の監視を行なう。
【0017】
照明装置7は、前述した監視範囲のそれぞれに設けられ、当該監視範囲における撮像装置3の撮像範囲を照らし出す。画像入力部2は、それぞれの撮像装置3が撮像した画像である監視画像を入力する。
【0018】
画像処理部5は、各々の撮像装置3による監視範囲をそれぞれ通過した監視対象物の同定を行なう。図2に示した例では監視範囲は3箇所であるが、この箇所の数は特に限定されない。また、それぞれの監視範囲同士や各撮像装置3による撮像範囲は一部分が重複していてもよい。
【0019】
また、付帯設備9は、例えばカーテンやブラインドであって、前述した監視範囲のそれぞれに設けられ、当該監視範囲における撮像装置3の撮像範囲に照らされる光を調整するための開閉駆動可能な遮光設備である。
記憶装置4は、不揮発性メモリなどの記憶媒体であり、画像入力部2、画像処理部5、照度制御部6、付帯設備制御部8の処理動作のためのプログラムが記憶される他、理想的な演色性を有する基準撮像画像が記憶される。
【0020】
画像処理部5は、第1判定部51、第2判定部52、対象物同定処理部53を有し、画像入力部2が入力した画像をもとに監視対象物の同定を行なうための各種処理を行なう。
第1判定部51は、画像入力部2が撮像装置3から入力した画像の輝度分布や色分布に所定の偏りがあるか否かを判定する。
第2判定部52は、画像入力部2が撮像装置3から入力した画像をもとに、照明装置7の分光分布特性に不足、偏りがあるか否かを判定する。この不足、偏りがある場合とは、分光分布特性に所定の基準値を下回る強度の波長および基準値以上の波長がともに存在する場合を指す。
【0021】
対象物同定処理部53は、第1判定部51や第2判定部52による判定結果が、色みが撮像装置3の間で均一であると認められる判定結果となった場合に、画像入力部2が入力した、各撮像装置3からの画像に含まれる色をもとに監視対象物の同定を行なう。
【0022】
照度制御部6は、対象物同定処理部53の第1判定部51や第2判定部52による判定結果が、色みが撮像装置3の間で均一であると認められる判定結果となっていない場合に、前述した判定結果が、色みが撮像装置3の間で均一であると認められる判定結果となるように、照明装置7による点灯形態の制御、例えばON/OFF制御や照射方向の制御を行なったり、付帯設備制御部8に対し、付帯設備9であるカーテンやブラインドの開閉駆動の制御を行わせたりする。
【0023】
照明装置7は、例えば、白熱灯の様に駆動電力を制御することにより分光分布特性を制御する照明か、又は、異なる分光分布特性の照明を組み合わせたものを用いる。
照明装置7は、例えば、光三原色であるRGB各色のLED(発光ダイオード)の組み合わせであって、照度制御部6は、この照明装置7のRGB各色のLEDの点灯形態を個別に制御することで、当該照明装置7による照明の分光分布特性を所望の特性に制御することができる。
【0024】
また、照明装置7は、分光分布特性の異なる蛍光灯の組み合わせであってもよい。この場合、照度制御部6は、これらの蛍光灯のそれぞれの点灯形態を個別に制御することで、当該照明装置7による照明の分光分布特性を制御することができる。
【0025】
表示装置10は、例えば液晶ディスプレイであり、監視対象物の同定処理結果が示される撮像画像が表示される。撮像画像において同定処理により特定された監視対象物は、図2に示すように枠で囲むなどして区別される。
【0026】
次に、図1や図2に示した構成の監視システムの動作について説明する。図3は、本発明の実施形態における監視システムの処理動作の一例を示すフローチャートである。
この監視システムでは、まず、各監視範囲における撮像装置3のうち基準となる何れか一つの撮像装置3により撮像した画像の黒潰れや白飛びを抑制するために、当該撮像装置3に対応して設けられる照明装置7や付帯設備9の駆動を制御することで、当該撮像装置3による監視範囲に照らされる光の照度調整を行なう(ステップS1)。
【0027】
次に、前述したステップS1の詳細を説明する。図4は、本発明の実施形態における監視システムによる監視範囲の照度調整手順の一例を示す図である。
図4に示すように、前述した基準の撮像装置3による監視範囲への外光の影響により、当該監視範囲に明るい領域と暗い領域がそれぞれ存在する。このため、当該監視範囲の撮像装置3により撮像された監視画像では、黒潰れ領域と白飛び領域がそれぞれ存在し、当該画像の色分布には偏りが存在する。ここでは、色分布の偏りとは、画像中における無彩色の出現頻度が明らかに高い一方で有彩色の出現頻度が明らかに低い状態を指す。
【0028】
また、外光の影響により、監視画像の輝度分布にも偏りが存在する。ここでは、輝度分布の偏りとは、低輝度の出現頻度が明らかに高い一方で高輝度の出現頻度が極端に低い場合及び逆の場合、つまり高輝度と低輝度の出現頻度が一定程度以上異なる状態を指す。
【0029】
このような場合、監視範囲における照明装置7や付帯設備9を駆動させることで、監視範囲における明るい領域と暗い領域の区分を解消して、撮像画像の色分布や輝度分布の偏りを無くし、当該画像における黒潰れや白飛びを抑制する。
【0030】
図5は、本発明の実施形態における監視システムの画像処理部の第1判定部の構成例を示すブロック図である。
監視システムの画像処理部5の第1判定部51は、画像生成部61、輝度ヒストグラム生成部62、輝度分布偏り判定部63、カラー空間変換部64、色情報抽出判定部65、色ヒストグラム生成部66および色分布偏り判定部67を有する。
【0031】
図6は、本発明の実施形態における監視システムの画像処理部の第1判定部による処理動作の一例を示すフローチャートである。
ステップS1の処理の詳細として、画像生成部61は、画像入力部2が前述した基準の撮像装置3から撮像画像を入力したら(ステップS11)、この入力した撮像画像の濃淡画像およびカラー画像をそれぞれ生成する(ステップS12)。ここで説明するカラー画像とは入力済みの撮像画像そのものであり、濃淡画像とは入力済みの撮像画像から明るさの成分のみを抽出した画像である。
【0032】
次に、輝度ヒストグラム生成部62は、ステップS12の処理で生成された濃淡画像の輝度ヒストグラムを生成する(ステップS13)。
輝度分布偏り判定部63は、生成された輝度ヒストグラムの偏り解析処理を行なうことで(ステップS14)、撮像画像の輝度分布に偏りがあるか否かを判別する(ステップS15)。
【0033】
ステップS15の処理により、撮像画像の輝度分布に偏りがないと判別された場合には(ステップS15のNO)、カラー空間変換部64は、ステップS13の処理で生成されたカラー画像のカラー空間を変換する。ここでは、元のカラー空間はRGB色空間であり、この色空間がL*a*b*/L*u*v*空間に変換される(ステップS16)。
【0034】
色情報抽出判定部65は、カラー空間変換がなされたカラー画像の複数色分類、ここでは例えば20色への分類のための色判別処理を行なう(ステップS17)。分類する色の数が20色の場合には、色の区分の例として、有彩色が赤、青、緑などをあわせて10色から15色程度とし、無彩色が白、グレー、黒などをあわせて5色程度とする区分が考えられる。
【0035】
色ヒストグラム生成部66は、色判別処理の結果をもとに、分類されたそれぞれの色に色番号を付し、これらの番号に対応するそれぞれの色の出現頻度を示す色ヒストグラムを生成する(ステップS18)。
【0036】
次に、色分布偏り判定部67は、生成された色ヒストグラムの偏り解析処理を行なうことで(ステップS19)、撮像画像の色分布に偏りがあるか否かを判別する(ステップS20)。
【0037】
ステップS15の処理により、撮像画像の輝度分布に偏りがあると判別された場合には(ステップS15のYES)、照度制御部6は、記憶装置4に記憶される基準撮像画像をもとに、撮像画像の輝度分布の偏りが無くなるための照明装置7による照明強度などの照明形態や付帯設備9による遮光範囲の制御量を演算し(ステップS21)、この制御量にしたがって照明装置7の照明形態を制御し、さらに付帯設備制御部8に対し、付帯設備9であるカーテンやブラインドの開閉駆動の制御を行なわせる(ステップS22)。ステップS22の処理の具体例としては、監視範囲のうち外光の影響が強い領域へ照らされる光を弱く、外光の影響が弱い領域に照らされる光を強くする事が挙げられる。
【0038】
また、ステップS20の処理により、撮像画像の色分布に偏りがあると判別された場合には(ステップS20のYES)、照度制御部6は、記憶装置4に記憶される基準撮像画像をもとに、撮像画像の色分布の偏りが無くなるための照明装置7による照明形態や付帯設備9による遮光範囲の制御量を演算し、この制御量にしたがって照明装置7の照明形態を制御し、付帯設備制御部8に対し、付帯設備9の開閉駆動の制御を行なわせる。
【0039】
また、ステップS20の処理により、撮像画像の色分布に偏りがないと判別された場合には(ステップS20のNO)、ステップS1の処理が終了する。このようにステップS1の処理を行なうことで、室内への光の照度や波長の偏りが小さい照明環境を実現できるので、撮像装置3による画像を色情報を有する画像とすることができる。
【0040】
ステップS1の処理後、この監視システムは、前述した、基準となる撮像装置3による撮像画像の色みを改善する、つまり撮像画像に表れる監視対象物の色を実際の色に近付けるために、当該撮像装置3に対応して設けられる照明装置7による照明の分光分布特性を制御する(ステップS2)。
【0041】
次に、前述したステップS2の処理の詳細を説明する。図7は、本発明の実施形態における監視システムの照明装置による照明の分光分布特性制御の手順の一例を示す図である。
図7に示すように、基準となる撮像装置3による監視範囲への照明装置7における照明の分光分布特性に不足、偏りが存在する場合、撮像装置3により撮像された画像における監視対象物の色、ここでは人物の服の色は実際の色と大幅に異なってしまう。
【0042】
このような場合、監視範囲における照明装置7における照明の分光分布特性を制御することで、当該分光分布特性の不足、偏りを解消して、撮像装置3により撮像された画像における監視対象物の色を実際の色に近づける。
【0043】
図8は、本発明の実施形態における監視システムの画像処理部の第2判定部の構成例を示すブロック図である。
監視システムの画像処理部5の第2判定部52は、分光画像処理部71、カメラ・光源情報取得部72、分光データ取得部73、分光分布偏り解析部74、不足波長抽出部75および偏り有無判定部76を有する。
【0044】
図9は、本発明の実施形態における監視システムの画像処理部の第2判定部による処理動作の一例を示すフローチャートである。
ステップS2の処理の詳細として、分光画像処理部71は、画像入力部2が前述した基準となる撮像装置3から撮像画像を入力したら(ステップS31)、この入力した撮像画像に対する分光画像処理を行なう(ステップS32)。
【0045】
カメラ・光源情報取得部72は、分光画像処理結果をもとに、カメラの情報、光源の情報を取得する(ステップS33)。ここではカメラの情報とは、基準となる撮像装置3の分光特性の情報である。撮像装置3の分光特性とは、当該撮像装置3が、どの波長の光を強く感じるかを示す特性である。また、光源の情報とは、基準となる撮像装置3の撮像範囲における照明装置7からの照明に、どの波長の光が含まれているかを示す情報である。
また、分光データ取得部73は、分光画像処理結果をもとに、物体表面の分光反射率の情報を取得する(ステップS34)。
【0046】
分光分布偏り解析部74は、ステップS33,S34の処理で取得済みの情報をもとに、物体表面の分光反射率の波長偏り解析処理を行なうことで、基準となる撮像装置3の撮像範囲における照明装置7の分光分布特性に所定の基準値を下回る強度の波長および基準値以上の波長がともに存在するか否かの解析を行なう(ステップS35)。
【0047】
不足波長抽出部75は、分光反射率の波長偏り解析処理の結果において、当該分光反射率における所定の基準値を下回る波長が存在する場合の、当該基準値を下回る波長の情報を抽出する(ステップS36)。
【0048】
そして、ステップS35,S36の処理の結果、分光分布特性に不足、偏りがある、つまり所定の基準値を下回る強度の波長および基準値以上の波長がともに存在することが認められると偏り有無判定部76が判定した場合には(ステップS37のYES)、照度制御部6は、記憶装置4に記憶される基準撮像画像をもとに、分光分布特性における不足、偏りが無くなるための照明装置7によるON/OFFの形態やRGB色のLED照明強度などの照明形態の制御量を演算し(ステップS38)、この制御量にしたがって照明装置7の照明形態を制御する(ステップS39)。
【0049】
一方、分光分布特性に不足、偏りがないと偏り有無判定部76が判定した場合には(ステップS37のNO)、ステップS2の処理が終了する。このようにステップS2の処理を行なうことで、偏りのない分光分布特性を有する演色性の高い照明環境を実現できるので、撮像装置3により得られる画像の色特性を撮像装置3により撮像された画像における監視対象物の色が実際の色に近づくように制御することができる。
【0050】
図10は、本発明の実施形態における監視システムによる対象物同定手順の概要を示す図である。
ステップS1,S2の処理により、基準となる撮像装置3により撮像した画像の演色性が向上することになる。ステップS1,S2の処理後、対象物同定処理部53は、基準となる撮像装置3により撮像された画像による色みと、その他の撮像装置3により撮像された画像による色みとが図10に示すように均一化されたか否かを判別する(ステップS3)。
【0051】
ステップS3の処理の結果、「NO」と判別された場合、画像処理部5は、基準の撮像装置3と異なる撮像装置3のうち、未選択の一つの装置を選択し(ステップS4)、画像処理部5の第1判定部51や第2判定部52は、当該選択された撮像装置3による撮像画像の色みが基準となる撮像装置3により撮像された画像による色みに等しくなるもしくは所定の基準を満たして近似するように、監視範囲の照度調整処理や照明の分光分布特性の制御処理を行なう(ステップS5)。ステップS4,S5の処理を行なうことで、複数の撮像装置3間の色特性を合わせこむことができる。
【0052】
一方、ステップS3の処理の結果、「YES」と判別された場合には、対象物同定処理部53は、それぞれの撮像装置3により撮像した画像をもとに、これらの撮像装置3による監視範囲をそれぞれ通過した監視対象物の同定処理を行なう(ステップS6)。
【0053】
以上のように、本発明の実施形態における監視システムでは、複数の撮像装置3のそれぞれの設置箇所に照らされる光の制御および当該設置箇所の照明装置7による照明の分光分布特性を制御することにより、基準となる撮像装置3により撮像された画像の色特性を改善し、更に、この基準の撮像装置3の撮像画像の演色性を基準として、設置場所の異なる他の撮像装置の色特性をあわせこむ制御を行なうことで、各撮像装置間で画像の色特性を均一にすることを可能とする。これにより色による監視対象物の同定処理の精度を高めることができる。
【0054】
前述した実施形態では、付帯設備9は、例えばカーテンやブラインドであると説明したが、これに限らず、エレクトロクロミック調光ガラス、つまり光透過率を制御可能な窓ガラスであってもよい。この場合、付帯設備制御部8は、調光ガラスへの電流を制御することで室外から調光ガラスを介して室内に照らされる光を制御する。
【0055】
なお、この発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を省略してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態における監視システムの構成例を示すブロック図。
【図2】本発明の実施形態における監視システムの設置形態の一例を示す図。
【図3】本発明の実施形態における監視システムの処理動作の一例を示すフローチャート。
【図4】本発明の実施形態における監視システムによる監視範囲の照度調整手順の一例を示す図。
【図5】本発明の実施形態における監視システムの画像処理部の第1判定部の構成例を示すブロック図。
【図6】本発明の実施形態における監視システムの画像処理部の第1判定部による処理動作の一例を示すフローチャート。
【図7】本発明の実施形態における監視システムの照明装置による照明の分光分布特性制御の手順の一例を示す図。
【図8】本発明の実施形態における監視システムの画像処理部の第2判定部の構成例を示すブロック図。
【図9】本発明の実施形態における監視システムの画像処理部の第2判定部による処理動作の一例を示すフローチャート。
【図10】本発明の実施形態における監視システムによる対象物同定手順の概要を示す図。
【符号の説明】
【0057】
1…制御部、2…画像入力部、3…撮像装置、4…記憶装置、5…画像処理部、6…照度制御部、7…照明装置、8…付帯設備制御部、9…付帯設備、10…表示装置、11…バス、51…第1判定部、52…第2判定部、53…対象物同定処理部、61…画像生成部、62…輝度ヒストグラム生成部、63…輝度分布偏り判定部、64…カラー空間変換部、65…色情報抽出判定部、66…色ヒストグラム生成部、67…色分布偏り判定部、71…分光画像処理部、72…カメラ・光源情報取得部、73…分光データ取得部、74…分光分布偏り解析部、75…不足波長抽出部、66…偏り有無判定部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の箇所で撮像した画像をもとに監視対象物を同定する監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば大規模な建物内には防犯を目的として複数の監視用カメラが設置される。
【0003】
前述した建物が百貨店などの大規模店舗である場合では、入り口、売り場、通路などにそれぞれ監視用カメラが設置されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
店舗内では、監視対象物、ここでは不審人物などが店舗内のどこにいるのかを常に把握する仕組みが設けられることが望ましい。しかし、店舗内において監視用カメラを密に配置することは困難であるため、未監視区域が存在してしまう。
【0005】
よって、複数の箇所に点在して設けられる監視用カメラ毎の画像の中から監視および追跡対象の人物を特定する必要があり、この監視および追跡対象の人物の特定を監視者によらずに自動的に行なう技術として顔認識用画像処理技術が考えられる。
しかし、画像に写っている者が監視用カメラの正面を向いているとは限らない為、顔認識用画像処理技術を適用しても不審者を実際に特定することは困難である。
【0006】
そこで、顔認識用画像処理技術を用いずに不審者を特定する技術として、複数の監視用カメラを用意し、それぞれのカメラにより撮像された画像に含まれる人間の服の色情報を基に、それぞれの画像にカメラ間で共通して含まれる人物を特定する技術がある。
【特許文献1】特開平7−45370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
色に基づいて監視対象物の同定を行なうには、複数の監視用カメラ間で色特性を合わせる必要がある。しかし、従来の照明環境では監視用カメラ毎に画像の色みが異なってしまうため、同定の精度が低下してしまう問題があった。
【0008】
カメラ毎に画像の色みが異なる具体例としては、外光の影響が強い場合に、画像内に明るい領域と暗い領域が発生して、画像の黒潰れや白飛びが発生し、演色性が低下してしまうことが挙げられる。
【0009】
また、他の具体例として、ある監視対象物が設置場所の異なる複数の監視用カメラに映る場合に、当該監視用カメラ周辺の照明環境の影響を受け、同一の監視対象物の色が異なって見える、即ち監視用カメラ間で色みが異なる画像になる事や、設置場所の異なる複数の監視用カメラ周辺の照明の種類が設置箇所ごとに異なるために画像の色みがばらついてしまう事が挙げられる。特に、照明が例えば蛍光灯の場合には、その種類は多く、基本分類として白色、昼白色、昼光色の3種類となる。
【0010】
設置場所の異なる複数のカメラの色みを均一にするには、監視用カメラのホワイトバランス他の設定または外光や照明の影響を除去する分光画像処理を実施することが考えられる。
しかし、監視用カメラの設定による色調整を行なう場合、ばらつきが発生し易い。また、分光画像処理を行なう場合、光源の影響を適切に推定することは容易ではない。
【0011】
以上のことから、従来の方法では、監視用カメラ間の色みを均一にして監視対象物の同定の精度を高める事は困難であった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、複数の監視用カメラを用いる事による監視対象物の同定の精度を向上させることが可能になる監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明に係わる監視システムは、監視対象物を撮像するための複数の撮像装置と、前記それぞれの撮像装置による撮像範囲を照らす照明装置と、前記それぞれの撮像装置により撮像された画像の色特性が当該画像に含まれる前記監視対象物の同定が可能な条件を満たす色特性となるように、前記それぞれの撮像装置に対応する照明装置により前記撮像範囲へ照らされる照明光の状態を制御する照明制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の監視用カメラを用いる事による監視対象物の同定の精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下図面により本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態における監視システムの構成例を示すブロック図である。
本発明の実施形態における監視システムは、図1に示すように、全体の処理動作を司る制御部1、画像入力部2、撮像装置3、記憶装置4、画像処理部5、照度制御部6、照明装置7、付帯設備制御部8、付帯設備9および表示装置10を備え、それぞれがバス11により相互に接続される。
【0016】
図2は、本発明の実施形態における監視システムの設置形態の一例を示す図である。
この監視システムの撮像装置3は、いわゆる監視用カメラであり、図2に示すように、監視対象物である人物の複数の監視範囲、ここでは、店舗フロア内の複数のエリアのそれぞれに設置される。店舗フロア内の複数のエリアとしては、窓付近、室内、廊下などが挙げられる。撮像装置3は、各監視範囲のそれぞれを撮像することで、監視対象物である人物の監視を行なう。
【0017】
照明装置7は、前述した監視範囲のそれぞれに設けられ、当該監視範囲における撮像装置3の撮像範囲を照らし出す。画像入力部2は、それぞれの撮像装置3が撮像した画像である監視画像を入力する。
【0018】
画像処理部5は、各々の撮像装置3による監視範囲をそれぞれ通過した監視対象物の同定を行なう。図2に示した例では監視範囲は3箇所であるが、この箇所の数は特に限定されない。また、それぞれの監視範囲同士や各撮像装置3による撮像範囲は一部分が重複していてもよい。
【0019】
また、付帯設備9は、例えばカーテンやブラインドであって、前述した監視範囲のそれぞれに設けられ、当該監視範囲における撮像装置3の撮像範囲に照らされる光を調整するための開閉駆動可能な遮光設備である。
記憶装置4は、不揮発性メモリなどの記憶媒体であり、画像入力部2、画像処理部5、照度制御部6、付帯設備制御部8の処理動作のためのプログラムが記憶される他、理想的な演色性を有する基準撮像画像が記憶される。
【0020】
画像処理部5は、第1判定部51、第2判定部52、対象物同定処理部53を有し、画像入力部2が入力した画像をもとに監視対象物の同定を行なうための各種処理を行なう。
第1判定部51は、画像入力部2が撮像装置3から入力した画像の輝度分布や色分布に所定の偏りがあるか否かを判定する。
第2判定部52は、画像入力部2が撮像装置3から入力した画像をもとに、照明装置7の分光分布特性に不足、偏りがあるか否かを判定する。この不足、偏りがある場合とは、分光分布特性に所定の基準値を下回る強度の波長および基準値以上の波長がともに存在する場合を指す。
【0021】
対象物同定処理部53は、第1判定部51や第2判定部52による判定結果が、色みが撮像装置3の間で均一であると認められる判定結果となった場合に、画像入力部2が入力した、各撮像装置3からの画像に含まれる色をもとに監視対象物の同定を行なう。
【0022】
照度制御部6は、対象物同定処理部53の第1判定部51や第2判定部52による判定結果が、色みが撮像装置3の間で均一であると認められる判定結果となっていない場合に、前述した判定結果が、色みが撮像装置3の間で均一であると認められる判定結果となるように、照明装置7による点灯形態の制御、例えばON/OFF制御や照射方向の制御を行なったり、付帯設備制御部8に対し、付帯設備9であるカーテンやブラインドの開閉駆動の制御を行わせたりする。
【0023】
照明装置7は、例えば、白熱灯の様に駆動電力を制御することにより分光分布特性を制御する照明か、又は、異なる分光分布特性の照明を組み合わせたものを用いる。
照明装置7は、例えば、光三原色であるRGB各色のLED(発光ダイオード)の組み合わせであって、照度制御部6は、この照明装置7のRGB各色のLEDの点灯形態を個別に制御することで、当該照明装置7による照明の分光分布特性を所望の特性に制御することができる。
【0024】
また、照明装置7は、分光分布特性の異なる蛍光灯の組み合わせであってもよい。この場合、照度制御部6は、これらの蛍光灯のそれぞれの点灯形態を個別に制御することで、当該照明装置7による照明の分光分布特性を制御することができる。
【0025】
表示装置10は、例えば液晶ディスプレイであり、監視対象物の同定処理結果が示される撮像画像が表示される。撮像画像において同定処理により特定された監視対象物は、図2に示すように枠で囲むなどして区別される。
【0026】
次に、図1や図2に示した構成の監視システムの動作について説明する。図3は、本発明の実施形態における監視システムの処理動作の一例を示すフローチャートである。
この監視システムでは、まず、各監視範囲における撮像装置3のうち基準となる何れか一つの撮像装置3により撮像した画像の黒潰れや白飛びを抑制するために、当該撮像装置3に対応して設けられる照明装置7や付帯設備9の駆動を制御することで、当該撮像装置3による監視範囲に照らされる光の照度調整を行なう(ステップS1)。
【0027】
次に、前述したステップS1の詳細を説明する。図4は、本発明の実施形態における監視システムによる監視範囲の照度調整手順の一例を示す図である。
図4に示すように、前述した基準の撮像装置3による監視範囲への外光の影響により、当該監視範囲に明るい領域と暗い領域がそれぞれ存在する。このため、当該監視範囲の撮像装置3により撮像された監視画像では、黒潰れ領域と白飛び領域がそれぞれ存在し、当該画像の色分布には偏りが存在する。ここでは、色分布の偏りとは、画像中における無彩色の出現頻度が明らかに高い一方で有彩色の出現頻度が明らかに低い状態を指す。
【0028】
また、外光の影響により、監視画像の輝度分布にも偏りが存在する。ここでは、輝度分布の偏りとは、低輝度の出現頻度が明らかに高い一方で高輝度の出現頻度が極端に低い場合及び逆の場合、つまり高輝度と低輝度の出現頻度が一定程度以上異なる状態を指す。
【0029】
このような場合、監視範囲における照明装置7や付帯設備9を駆動させることで、監視範囲における明るい領域と暗い領域の区分を解消して、撮像画像の色分布や輝度分布の偏りを無くし、当該画像における黒潰れや白飛びを抑制する。
【0030】
図5は、本発明の実施形態における監視システムの画像処理部の第1判定部の構成例を示すブロック図である。
監視システムの画像処理部5の第1判定部51は、画像生成部61、輝度ヒストグラム生成部62、輝度分布偏り判定部63、カラー空間変換部64、色情報抽出判定部65、色ヒストグラム生成部66および色分布偏り判定部67を有する。
【0031】
図6は、本発明の実施形態における監視システムの画像処理部の第1判定部による処理動作の一例を示すフローチャートである。
ステップS1の処理の詳細として、画像生成部61は、画像入力部2が前述した基準の撮像装置3から撮像画像を入力したら(ステップS11)、この入力した撮像画像の濃淡画像およびカラー画像をそれぞれ生成する(ステップS12)。ここで説明するカラー画像とは入力済みの撮像画像そのものであり、濃淡画像とは入力済みの撮像画像から明るさの成分のみを抽出した画像である。
【0032】
次に、輝度ヒストグラム生成部62は、ステップS12の処理で生成された濃淡画像の輝度ヒストグラムを生成する(ステップS13)。
輝度分布偏り判定部63は、生成された輝度ヒストグラムの偏り解析処理を行なうことで(ステップS14)、撮像画像の輝度分布に偏りがあるか否かを判別する(ステップS15)。
【0033】
ステップS15の処理により、撮像画像の輝度分布に偏りがないと判別された場合には(ステップS15のNO)、カラー空間変換部64は、ステップS13の処理で生成されたカラー画像のカラー空間を変換する。ここでは、元のカラー空間はRGB色空間であり、この色空間がL*a*b*/L*u*v*空間に変換される(ステップS16)。
【0034】
色情報抽出判定部65は、カラー空間変換がなされたカラー画像の複数色分類、ここでは例えば20色への分類のための色判別処理を行なう(ステップS17)。分類する色の数が20色の場合には、色の区分の例として、有彩色が赤、青、緑などをあわせて10色から15色程度とし、無彩色が白、グレー、黒などをあわせて5色程度とする区分が考えられる。
【0035】
色ヒストグラム生成部66は、色判別処理の結果をもとに、分類されたそれぞれの色に色番号を付し、これらの番号に対応するそれぞれの色の出現頻度を示す色ヒストグラムを生成する(ステップS18)。
【0036】
次に、色分布偏り判定部67は、生成された色ヒストグラムの偏り解析処理を行なうことで(ステップS19)、撮像画像の色分布に偏りがあるか否かを判別する(ステップS20)。
【0037】
ステップS15の処理により、撮像画像の輝度分布に偏りがあると判別された場合には(ステップS15のYES)、照度制御部6は、記憶装置4に記憶される基準撮像画像をもとに、撮像画像の輝度分布の偏りが無くなるための照明装置7による照明強度などの照明形態や付帯設備9による遮光範囲の制御量を演算し(ステップS21)、この制御量にしたがって照明装置7の照明形態を制御し、さらに付帯設備制御部8に対し、付帯設備9であるカーテンやブラインドの開閉駆動の制御を行なわせる(ステップS22)。ステップS22の処理の具体例としては、監視範囲のうち外光の影響が強い領域へ照らされる光を弱く、外光の影響が弱い領域に照らされる光を強くする事が挙げられる。
【0038】
また、ステップS20の処理により、撮像画像の色分布に偏りがあると判別された場合には(ステップS20のYES)、照度制御部6は、記憶装置4に記憶される基準撮像画像をもとに、撮像画像の色分布の偏りが無くなるための照明装置7による照明形態や付帯設備9による遮光範囲の制御量を演算し、この制御量にしたがって照明装置7の照明形態を制御し、付帯設備制御部8に対し、付帯設備9の開閉駆動の制御を行なわせる。
【0039】
また、ステップS20の処理により、撮像画像の色分布に偏りがないと判別された場合には(ステップS20のNO)、ステップS1の処理が終了する。このようにステップS1の処理を行なうことで、室内への光の照度や波長の偏りが小さい照明環境を実現できるので、撮像装置3による画像を色情報を有する画像とすることができる。
【0040】
ステップS1の処理後、この監視システムは、前述した、基準となる撮像装置3による撮像画像の色みを改善する、つまり撮像画像に表れる監視対象物の色を実際の色に近付けるために、当該撮像装置3に対応して設けられる照明装置7による照明の分光分布特性を制御する(ステップS2)。
【0041】
次に、前述したステップS2の処理の詳細を説明する。図7は、本発明の実施形態における監視システムの照明装置による照明の分光分布特性制御の手順の一例を示す図である。
図7に示すように、基準となる撮像装置3による監視範囲への照明装置7における照明の分光分布特性に不足、偏りが存在する場合、撮像装置3により撮像された画像における監視対象物の色、ここでは人物の服の色は実際の色と大幅に異なってしまう。
【0042】
このような場合、監視範囲における照明装置7における照明の分光分布特性を制御することで、当該分光分布特性の不足、偏りを解消して、撮像装置3により撮像された画像における監視対象物の色を実際の色に近づける。
【0043】
図8は、本発明の実施形態における監視システムの画像処理部の第2判定部の構成例を示すブロック図である。
監視システムの画像処理部5の第2判定部52は、分光画像処理部71、カメラ・光源情報取得部72、分光データ取得部73、分光分布偏り解析部74、不足波長抽出部75および偏り有無判定部76を有する。
【0044】
図9は、本発明の実施形態における監視システムの画像処理部の第2判定部による処理動作の一例を示すフローチャートである。
ステップS2の処理の詳細として、分光画像処理部71は、画像入力部2が前述した基準となる撮像装置3から撮像画像を入力したら(ステップS31)、この入力した撮像画像に対する分光画像処理を行なう(ステップS32)。
【0045】
カメラ・光源情報取得部72は、分光画像処理結果をもとに、カメラの情報、光源の情報を取得する(ステップS33)。ここではカメラの情報とは、基準となる撮像装置3の分光特性の情報である。撮像装置3の分光特性とは、当該撮像装置3が、どの波長の光を強く感じるかを示す特性である。また、光源の情報とは、基準となる撮像装置3の撮像範囲における照明装置7からの照明に、どの波長の光が含まれているかを示す情報である。
また、分光データ取得部73は、分光画像処理結果をもとに、物体表面の分光反射率の情報を取得する(ステップS34)。
【0046】
分光分布偏り解析部74は、ステップS33,S34の処理で取得済みの情報をもとに、物体表面の分光反射率の波長偏り解析処理を行なうことで、基準となる撮像装置3の撮像範囲における照明装置7の分光分布特性に所定の基準値を下回る強度の波長および基準値以上の波長がともに存在するか否かの解析を行なう(ステップS35)。
【0047】
不足波長抽出部75は、分光反射率の波長偏り解析処理の結果において、当該分光反射率における所定の基準値を下回る波長が存在する場合の、当該基準値を下回る波長の情報を抽出する(ステップS36)。
【0048】
そして、ステップS35,S36の処理の結果、分光分布特性に不足、偏りがある、つまり所定の基準値を下回る強度の波長および基準値以上の波長がともに存在することが認められると偏り有無判定部76が判定した場合には(ステップS37のYES)、照度制御部6は、記憶装置4に記憶される基準撮像画像をもとに、分光分布特性における不足、偏りが無くなるための照明装置7によるON/OFFの形態やRGB色のLED照明強度などの照明形態の制御量を演算し(ステップS38)、この制御量にしたがって照明装置7の照明形態を制御する(ステップS39)。
【0049】
一方、分光分布特性に不足、偏りがないと偏り有無判定部76が判定した場合には(ステップS37のNO)、ステップS2の処理が終了する。このようにステップS2の処理を行なうことで、偏りのない分光分布特性を有する演色性の高い照明環境を実現できるので、撮像装置3により得られる画像の色特性を撮像装置3により撮像された画像における監視対象物の色が実際の色に近づくように制御することができる。
【0050】
図10は、本発明の実施形態における監視システムによる対象物同定手順の概要を示す図である。
ステップS1,S2の処理により、基準となる撮像装置3により撮像した画像の演色性が向上することになる。ステップS1,S2の処理後、対象物同定処理部53は、基準となる撮像装置3により撮像された画像による色みと、その他の撮像装置3により撮像された画像による色みとが図10に示すように均一化されたか否かを判別する(ステップS3)。
【0051】
ステップS3の処理の結果、「NO」と判別された場合、画像処理部5は、基準の撮像装置3と異なる撮像装置3のうち、未選択の一つの装置を選択し(ステップS4)、画像処理部5の第1判定部51や第2判定部52は、当該選択された撮像装置3による撮像画像の色みが基準となる撮像装置3により撮像された画像による色みに等しくなるもしくは所定の基準を満たして近似するように、監視範囲の照度調整処理や照明の分光分布特性の制御処理を行なう(ステップS5)。ステップS4,S5の処理を行なうことで、複数の撮像装置3間の色特性を合わせこむことができる。
【0052】
一方、ステップS3の処理の結果、「YES」と判別された場合には、対象物同定処理部53は、それぞれの撮像装置3により撮像した画像をもとに、これらの撮像装置3による監視範囲をそれぞれ通過した監視対象物の同定処理を行なう(ステップS6)。
【0053】
以上のように、本発明の実施形態における監視システムでは、複数の撮像装置3のそれぞれの設置箇所に照らされる光の制御および当該設置箇所の照明装置7による照明の分光分布特性を制御することにより、基準となる撮像装置3により撮像された画像の色特性を改善し、更に、この基準の撮像装置3の撮像画像の演色性を基準として、設置場所の異なる他の撮像装置の色特性をあわせこむ制御を行なうことで、各撮像装置間で画像の色特性を均一にすることを可能とする。これにより色による監視対象物の同定処理の精度を高めることができる。
【0054】
前述した実施形態では、付帯設備9は、例えばカーテンやブラインドであると説明したが、これに限らず、エレクトロクロミック調光ガラス、つまり光透過率を制御可能な窓ガラスであってもよい。この場合、付帯設備制御部8は、調光ガラスへの電流を制御することで室外から調光ガラスを介して室内に照らされる光を制御する。
【0055】
なお、この発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を省略してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態における監視システムの構成例を示すブロック図。
【図2】本発明の実施形態における監視システムの設置形態の一例を示す図。
【図3】本発明の実施形態における監視システムの処理動作の一例を示すフローチャート。
【図4】本発明の実施形態における監視システムによる監視範囲の照度調整手順の一例を示す図。
【図5】本発明の実施形態における監視システムの画像処理部の第1判定部の構成例を示すブロック図。
【図6】本発明の実施形態における監視システムの画像処理部の第1判定部による処理動作の一例を示すフローチャート。
【図7】本発明の実施形態における監視システムの照明装置による照明の分光分布特性制御の手順の一例を示す図。
【図8】本発明の実施形態における監視システムの画像処理部の第2判定部の構成例を示すブロック図。
【図9】本発明の実施形態における監視システムの画像処理部の第2判定部による処理動作の一例を示すフローチャート。
【図10】本発明の実施形態における監視システムによる対象物同定手順の概要を示す図。
【符号の説明】
【0057】
1…制御部、2…画像入力部、3…撮像装置、4…記憶装置、5…画像処理部、6…照度制御部、7…照明装置、8…付帯設備制御部、9…付帯設備、10…表示装置、11…バス、51…第1判定部、52…第2判定部、53…対象物同定処理部、61…画像生成部、62…輝度ヒストグラム生成部、63…輝度分布偏り判定部、64…カラー空間変換部、65…色情報抽出判定部、66…色ヒストグラム生成部、67…色分布偏り判定部、71…分光画像処理部、72…カメラ・光源情報取得部、73…分光データ取得部、74…分光分布偏り解析部、75…不足波長抽出部、66…偏り有無判定部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象物を撮像するための複数の撮像装置と、
前記それぞれの撮像装置による撮像範囲を照らす照明装置と、
前記それぞれの撮像装置により撮像された画像の色特性が当該画像に含まれる前記監視対象物の同定が可能な条件を満たす色特性となるように、前記それぞれの撮像装置に対応する照明装置により前記撮像範囲へ照らされる照明光の状態を制御する照明制御手段と
を備えたことを特徴とする監視システム。
【請求項2】
前記撮像手段による撮像範囲に外部光が照らされており、
前記外部光を遮光する遮光装置をさらに備え、
前記照明制御手段は、
前記撮像された画像の色特性が当該画像に含まれる前記監視対象物の同定が可能な条件を満たす色特性となるように、前記それぞれの撮像手段に対応する遮光装置による外部光の遮光状態を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記撮像手段により撮像した画像の輝度分布および色分布を取得する取得手段をさらに備え、
前記照明制御手段は、
前記取得手段により取得した輝度分布や色分布が前記監視対象物の同定が可能な条件を満たさない偏りを有している場合には、前記条件を満たすように、前記撮像を行なった撮像手段に対応する前記照明装置により前記撮像範囲へ照らされる照明光の状態を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項4】
前記撮像装置により撮像した画像の分光画像処理を行なうことで当該画像の撮像を行なった撮像装置に対応する前記照明装置の分光分布特性を取得する取得手段をさらに備え、
前記照明制御手段は、
前記取得手段により取得した分光分布特性が前記監視対象物の同定を行なうための条件を満たさない特性である場合には、前記条件を満たすように、前記撮像を行なった撮像装置に対応する前記照明装置により前記撮像範囲へ照らされる照明光の状態を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項5】
理想的な演色性を有する画像情報を記憶する記憶手段をさらに備え、
前記照明制御手段は、
前記記憶手段に記憶される画像情報をもとに、前記それぞれの撮像装置により撮像された画像の色特性が当該画像に含まれる前記監視対象物の同定が可能な条件を満たす色特性となるように、前記それぞれの撮像装置に対応する照明装置により前記撮像範囲へ照らされる照明光の状態を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項6】
前記照明装置は、分光分布特性の異なる蛍光灯の組み合わせであり、
前記照明制御手段は、前記蛍光灯のそれぞれにより前記撮像範囲へ照らされる照明光の状態を制御する
ことを特徴とする請求項5に記載の監視システム。
【請求項7】
前記照明装置は、光三原色の各色の発光ダイオードであり、
前記照明制御手段は、前記発光ダイオードのそれぞれにより前記撮像範囲へ照らされる照明光の状態制御する
ことを特徴とする請求項5に記載の監視システム。
【請求項8】
前記遮光装置はブラインドであり、
前記遮光制御手段は、
前記画像の色特性が当該画像に含まれる監視対象物の同定が可能な条件を満たす色特性となるように、前記ブラインドの開閉状態を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の監視システム。
【請求項9】
前記遮光装置はカーテンであり、
前記遮光制御手段は、
前記画像の色特性が当該画像に含まれる対象物の同定が可能な条件を満たす色特性となるように、前記カーテンの開閉状態を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の監視システム。
【請求項10】
前記遮光装置は光透過率が制御可能な調光用ガラスであり、
前記遮光制御手段は、
前記画像の色特性が当該画像に含まれる対象物の同定が可能な条件を満たす色特性となるように、前記調光用ガラスの光透過率を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の監視システム。
【請求項1】
監視対象物を撮像するための複数の撮像装置と、
前記それぞれの撮像装置による撮像範囲を照らす照明装置と、
前記それぞれの撮像装置により撮像された画像の色特性が当該画像に含まれる前記監視対象物の同定が可能な条件を満たす色特性となるように、前記それぞれの撮像装置に対応する照明装置により前記撮像範囲へ照らされる照明光の状態を制御する照明制御手段と
を備えたことを特徴とする監視システム。
【請求項2】
前記撮像手段による撮像範囲に外部光が照らされており、
前記外部光を遮光する遮光装置をさらに備え、
前記照明制御手段は、
前記撮像された画像の色特性が当該画像に含まれる前記監視対象物の同定が可能な条件を満たす色特性となるように、前記それぞれの撮像手段に対応する遮光装置による外部光の遮光状態を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記撮像手段により撮像した画像の輝度分布および色分布を取得する取得手段をさらに備え、
前記照明制御手段は、
前記取得手段により取得した輝度分布や色分布が前記監視対象物の同定が可能な条件を満たさない偏りを有している場合には、前記条件を満たすように、前記撮像を行なった撮像手段に対応する前記照明装置により前記撮像範囲へ照らされる照明光の状態を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項4】
前記撮像装置により撮像した画像の分光画像処理を行なうことで当該画像の撮像を行なった撮像装置に対応する前記照明装置の分光分布特性を取得する取得手段をさらに備え、
前記照明制御手段は、
前記取得手段により取得した分光分布特性が前記監視対象物の同定を行なうための条件を満たさない特性である場合には、前記条件を満たすように、前記撮像を行なった撮像装置に対応する前記照明装置により前記撮像範囲へ照らされる照明光の状態を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項5】
理想的な演色性を有する画像情報を記憶する記憶手段をさらに備え、
前記照明制御手段は、
前記記憶手段に記憶される画像情報をもとに、前記それぞれの撮像装置により撮像された画像の色特性が当該画像に含まれる前記監視対象物の同定が可能な条件を満たす色特性となるように、前記それぞれの撮像装置に対応する照明装置により前記撮像範囲へ照らされる照明光の状態を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項6】
前記照明装置は、分光分布特性の異なる蛍光灯の組み合わせであり、
前記照明制御手段は、前記蛍光灯のそれぞれにより前記撮像範囲へ照らされる照明光の状態を制御する
ことを特徴とする請求項5に記載の監視システム。
【請求項7】
前記照明装置は、光三原色の各色の発光ダイオードであり、
前記照明制御手段は、前記発光ダイオードのそれぞれにより前記撮像範囲へ照らされる照明光の状態制御する
ことを特徴とする請求項5に記載の監視システム。
【請求項8】
前記遮光装置はブラインドであり、
前記遮光制御手段は、
前記画像の色特性が当該画像に含まれる監視対象物の同定が可能な条件を満たす色特性となるように、前記ブラインドの開閉状態を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の監視システム。
【請求項9】
前記遮光装置はカーテンであり、
前記遮光制御手段は、
前記画像の色特性が当該画像に含まれる対象物の同定が可能な条件を満たす色特性となるように、前記カーテンの開閉状態を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の監視システム。
【請求項10】
前記遮光装置は光透過率が制御可能な調光用ガラスであり、
前記遮光制御手段は、
前記画像の色特性が当該画像に含まれる対象物の同定が可能な条件を満たす色特性となるように、前記調光用ガラスの光透過率を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の監視システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−68120(P2010−68120A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231176(P2008−231176)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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