説明

監視システム

【課題】正確な対象領域内の監視を行えるだけでなく、高速処理が可能で、かつ安価である監視システムを提供する。
【解決手段】
監視したい複数の監視対象エリア6に対応して設置された複数の距離センサ11であって、複数の距離センサ11はそれぞれ対応する監視対象エリア6までの距離を測定する、複数の距離センサ11と;複数の距離センサ11で測定する測定距離と比較すべき基準距離を保存する基準距離保存部25と;複数の距離センサ11の各々による測定距離と各距離センサ11に対応する前記基準距離とを比較する距離比較手段22とを備え;複数の監視対象エリア6は、隣合う監視対象エリア6が重複するように構成され;距離比較手段22は、比較結果に基づいて監視対象物2の高さ、位置を算出し、監視対象エリア6と距離センサ11との間に存在する監視対象物2を監視するように構成された監視システムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視システムに関し、特に対象領域内の物体や人物の高さや姿勢の変化を監視するための監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
病院の病室内あるいはトイレ内の患者のプライバシーを損なわずに、異常を知るための監視装置として、従来から、監視対象領域に輝点を投影してその画像を撮影し、撮影された画像中の輝点の基準位置からの位置変化によって対象領域の高さ変化を検出し、対象領域内の物体や人物の有無や高さ変化、姿勢変化を監視する装置が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら以上のような従来の装置によれば、対象領域の監視は撮像された画像を処理しなければならないため、計算量が多く処理に時間がかかるだけでなく、高価な装置を必要としていた。
【0004】
そこで本発明は、正確な対象領域内の監視を行えるだけでなく、高速処理が可能で、かつ安価である監視システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、第1の態様に係る発明による監視システム1は、例えば図1、図3に示すように、監視したい複数の監視対象エリア6に対応して設置された複数の距離センサ11であって、複数の距離センサ11はそれぞれ対応する監視対象エリア6までの距離を測定する、複数の距離センサ11と;複数の距離センサ11で測定する測定距離と比較すべき基準距離を保存する基準距離保存部25と;複数の距離センサ11の各々による測定距離と各距離センサ11に対応する前記基準距離とを比較する距離比較手段22とを備え;距離比較手段22による比較結果に基づいて、監視対象エリア6と距離センサ11との間に存在する監視対象物2を監視するように構成される。
【0006】
このように構成すると、複数の距離センサ11と、基準距離保存部25と、距離比較手段22とを備えるので、複数の距離センサ11はそれぞれ対応する監視対象エリア6までの距離を測定し、複数の距離センサ11の各々による測定距離と各距離センサ11に対応する基準距離とを比較して、この比較結果に基づいて、監視対象エリア6と距離センサ11との間に存在する監視対象物2を監視することで、高速処理が可能で、かつ安価である監視システム1とすることができる。
【0007】
また、監視システム1は、複数の距離センサ11で測定された測定距離から、監視対象エリア6と距離センサ11との間に存在する監視対象物2の位置情報を算出する位置情報算出手段22を備え、距離比較手段22による比較結果と、位置情報算出手段22により算出された位置情報とに基づいて、監視対象エリア6と距離センサ11との間に存在する監視対象物2を監視するように構成してもよい。
【0008】
また第2の態様として、第1の態様に記載の監視システム1では、距離センサ11の距離測定方向は、鉛直方向に対して傾斜しているとよい。
【0009】
また第3の態様として、第1の態様または第2の態様に記載の監視システム1では、例えば図5に示すように、距離センサ11は;監視対象エリア6にビーム光を照射するビーム光照射装置31と;前記照射されたビーム光の反射光を結像する結像素子32とを備えるとよい。このように構成すると、距離センサ11は、ビーム光照射装置31と、結像素子32とを備えるので、照射されたビーム光の反射光を結像する結像素子32により、監視対象エリア6の距離を測定することができる。
【0010】
また第4の態様として、第1の態様または第2の態様に記載の監視システム1では、例えば図6に示すように、距離センサ11は;監視対象物2に向けて超音波を発振する超音波発振器41と;監視対象物2で反射された前記超音波を受信する超音波受信器42と;超音波発振器41による発振と超音波受信器42による受信の時間差に基づいて距離を算出する距離算出部44とを備えるとよい。このように構成すると、距離センサ11は、超音波発振器41と、超音波受信器42と、距離算出部44とを備えるので、超音波発振器41による発振と超音波受信器42による受信の時間差に基づいて、監視対象エリア6の距離を測定することができる。
【0011】
また第5の態様として、第1の態様または第2の態様に記載の監視システム1では、例えば図8に示すように、距離センサ11は;監視対象物2からの光を受光する1対の撮像素子55、56と;1対の撮像素子55、56の各々から取得された画像同士の相関出力値を算出する相関出力算出装置58とを備えるとよい。このように構成すると、距離センサ11は、1対の撮像素子55、56と、相関出力算出装置58とを備えるので、1対の撮像素子55、56の各々から取得された画像同士の相関出力値に基づいて、監視対象エリア6の距離を測定することができる。
【0012】
また第6の態様として、第5の態様に記載の監視システム1では、距離センサ11は;1対の撮像素子55、56の各々について異なる時間に取得された画像の差画像を形成する差画像形成装置57を備え;前記1対の差画像を、前記相関出力値を算出するための画像とするように構成するとよい。
【0013】
また第7の態様として、第1の態様または第2の態様に記載の監視システム1では、例えば図12に示すように、距離センサ11は;監視対象物2に向けてパルス変調された電磁波を発振する電磁波パルス送信部81と;監視対象物2で反射された前記電磁波を受信するアンテナを含む電磁波受信部81と;電磁波パルス送信部81による発振と電磁波受信部81による受信の時間差に基づいて距離を算出する距離算出部83とを備えるとよい。このように構成すると、距離センサ11は、電磁波パルス送信部81と、電磁波受信部81と、距離算出部83とを備えるので、電磁波パルス送信部81による発振と電磁波受信部81による受信の時間差に基づいて、監視対象エリア6の距離を測定することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、監視したい複数の監視対象エリアに対応して設置された複数の距離センサであって、前記複数の距離センサはそれぞれ対応する監視対象エリアまでの距離を測定する、複数の距離センサと、前記複数の距離センサで測定する測定距離と比較すべき基準距離を保存する基準距離保存部と、前記複数の距離センサの各々による測定距離と前記各距離センサに対応する前記基準距離とを比較する距離比較手段とを備え、前記距離比較手段による比較結果に基づいて、前記監視対象エリアと前記距離センサとの間に存在する監視対象物を監視するように構成されているので、正確な対象領域内の監視を行えるだけでなく、高速処理が可能で、かつ安価である監視システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態である監視システムの概要を示す模式的斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態である監視エリアが重複しない配置例(a)と監視エリアが重複する配置例(b)を説明する模式的平面図である。
【図3】本発明の実施の形態で用いる監視システムの構成例を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態である距離センサを、カーブをつけて設置する場合を説明する模式的側面図である。
【図5】本発明の実施の形態で用いる赤外線距離センサの構成例を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態で用いる超音波センサの構成例を示すブロック図である。
【図7】図6の場合における超音波センサを複数配置した場合の制御例を説明する模式図である。
【図8】本発明の実施の形態で用いるパッシブ型光学距離センサの構成例を示すブロック図である。
【図9】図8の場合におけるパッシブ型光学距離センサをトイレに設置する場合を説明する模式的側面図(a)と模式的正面図(b)である。
【図10】本発明の実施の形態で、1対のラインCCDの視差から、監視対象物の距離を算出する方法を説明する模式図である。
【図11】本発明の実施の形態で、監視対象物の距離から監視対象物の位置情報を算出する方法を説明する模式的側面図である。
【図12】本発明の実施の形態で用いる電磁波パルス距離センサの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において互いに同一あるいは相当する部材には同一符号または類似符号を付し、重複した説明は省略する。
【0017】
図1は、本発明による実施の形態である監視システム1の模式的斜視図である。図中監視対象物2が床面3上に存在している。XY軸を床面3内に置くように、直交座標系XYZがとられている。また床面3と垂直即ちYZ平面上に壁4が形成されている。監視対象物2は、本実施の形態では人物である。
【0018】
一方、図中壁4には、人物2の距離を測定するための複数の距離センサ11を含んで構成される筐体10が設置されており、筐体10には、複数の距離センサ11が、複数の監視対象エリア6(以下監視エリア6という)に対応して設置されている。また本実施の形態では、筐体10(距離センサ11)は、壁に設置しているが、天井が存在する場合は天井でもよく、設置場所は監視システムの目的や仕様等により適宜決めてよい。複数の距離センサ11による複数の監視エリア6の各測定距離は、測定距離パターンを形成し、対応する基準距離は、基準距離パターンを形成する。基準距離とは、監視時点の過去の時点の距離であればよく、典型的には監視エリア6に人物2が存在しない状態のいわば背景の距離であるが、それに限らず、例えば周期的に距離を検知している場合の1コマ分だけ前の距離であってもよい。また距離とは実際に距離を算出する前の、距離センサ11からの出力値であってもよい。
【0019】
図2の模式的平面図の監視エリア6の配置例を参照して、監視エリア6について説明する。図2(a)は、複数の監視エリアが隣合う監視エリアと重ならないように配置した例である。この場合、例えば図示のように、複数の監視エリアは、監視する場所である監視ゾーン60に、監視エリア61、62、63、71、72、73、81、82、83(以下監視エリアを区別しない場合は単に監視エリア6という)が、お互いに重ならないように碁盤目状に配置されている。配置する数は、本実施の形態では3×3であるが、監視する場所、人物2などの条件により適宜決めてよい。このように複数の監視エリア6を配置すると、距離センサ11に、光や超音波を照射することにより距離を測定する照射型センサを使用した場合でも、隣接する監視エリア6に対応する距離センサ11は、後述のように同時に照射しないように制御する必要がなく、監視システム1をより簡単な構成とすることができる。
【0020】
また図2(b)の模式的平面図の監視エリア6の配置例に示すように、隣合う監視エリア6が重なっていてもよい。このようにすると、監視ゾーン60の死角を少なくすることができるので、より精度の高い監視に有効である。このとき距離センサ11に、光や超音波を照射することにより距離を測定する照射型センサを使用する場合には、重なり合う監視エリア6に対応する距離センサ11は、お互いに影響がないように、同時に照射しないように制御する必要がある。これは、複数の距離センサ11から同時に例えば照射光を照射した場合、本来受光しなければならない照射光に他の距離センサ11から照射された照射光が混入し、監視エリア6の距離の測定が困難になるためである。本図に示す場合の制御については後で詳しく説明する。
【0021】
図3を参照して、監視システム1の構成の一例を説明する。監視システム1は、複数の距離センサ11が設置された筐体10と、演算装置20とを含んで構成される。そして複数の距離センサ11は、演算装置20に接続されており、それぞれの距離センサ11よってそれぞれ測定された距離を取得できるように構成されている。また測定された距離は、それぞれの距離センサ11から時系列的に取得するように構成するとよい。演算装置20は、典型的にはパソコンやマイコンである。
【0022】
また典型的には、距離センサ11は筐体10に並列的に設置されるが、図4の模式図に示すように、筐体10にカーブをつけて設置してもよい。このように設置することで、小さな筐体10でも広い監視ゾーン60を容易に確保することができる。また、前述のように距離センサ11に、照射型センサを使用する場合には、隣合う監視エリア6に対応する距離センサ11は、小さな筐体10でもそれぞれの監視エリア6が重複しにくいので、容易に距離センサ11の相互の影響を無くすことができる。さらに、監視エリア6を重複させない場合には、後述のタイミングコントローラ23を備える必要がなく、監視システム1をより簡単な構成とすることができる。
【0023】
演算装置20は、制御部21を備えており、監視システム1全体を制御している。また複数の距離センサ11は制御部21に接続され、制御されている。また制御部21内には、複数の距離センサ11のそれぞれによる測定距離と、それぞれの距離センサ11に対応する基準距離とを比較する距離比較手段である比較演算部22が備えられている。比較演算部22による比較結果は、典型的には時系列的に取得され、それに基づき人物2の移動、位置、姿勢等を、制御部21により判断できるように構成されている。即ち、基準距離と、ある時点の距離とを比較することにより、人物2の存在、その移動、その位置、姿勢等を判断することができるように構成されている。さらに、最終的な人物2の存在、その移動、その位置、姿勢等の判断は、複数の距離センサ11それぞれに対応する判断結果から総合的になされる。また人物2の移動は、人物2の位置の変化だけでなく、例えば人物2が立ったり座ったりするような変化も含むものとする。さらに、距離センサ11に照射型センサを使用し、かつ監視エリア6が重複する場合には、隣合う監視エリア6に対応する複数の距離センサ11が同時に作動することがないように制御する制御装置としてのタイミングコントローラ23を備えるようにする。またタイミングコントローラ23による制御については後で詳しく説明する。
【0024】
制御部21には、記憶部24が接続されており、複数の距離センサ11で測定する測定距離と比較すべき基準距離25が記録されている。また記憶部24には算出された情報等のデータが記憶できる。
【0025】
また制御部21には、監視システム1を操作するための情報を入力する入力装置26、監視システム1で処理された結果を出力する出力装置27が接続されている。入力装置26は例えばタッチパネル、キーボードあるいはマウスであり、出力装置27は例えばディスプレイやプリンタあるいは警報装置である。本図では、入力装置26、出力装置27は演算装置20に外付けするものとして図示されているが、内蔵されていてもよい。
【0026】
ここで距離センサ11の実施例としての赤外線距離センサ、超音波センサ、パッシブ型光学距離センサについて図を参照して説明する。
【0027】
図5のブロック図を参照して、本発明の実施の形態における赤外線距離センサ30について説明する。赤外線距離センサ30は、いわゆるアクティブ型光学センサであり、ビーム光照射装置としての赤外光照射部31、結像素子としての赤外光受光部32、センサ制御部33を含んで構成されている。またセンサ制御部33は、演算装置20の制御部21内(図3参照)に備えるようにしてもよい。
【0028】
赤外光照射部31には、赤外LED34と照射レンズ35とが備えられており、赤外LED34から照射された赤外光は照射レンズ35を介して細い平行光束のビーム光として人物2に照射される。赤外光受光部32には、1次元の位置検出素子36(以下PSDという)と受光レンズ37とが備えられており、赤外光照射部31から照射され、人物2に反射したビーム光は、受光レンズ37を介してPSD36に結像される。受光レンズ37は、照射された波長帯域の光のみを透過させるコーティングが施されている。従って、外乱光の影響が少なく位置検出をすることができる。また以上ではビーム光は細い平行光束としたが拡散光束であってもよい。
【0029】
PSD36は、結像ビームの重心位置を出力するので、三角法により物体までの距離を測定することができる。また、照射されるビーム光は、赤外線であるので人間には見えず、不快感を与えることがない。
【0030】
図6のブロック図を参照して、本発明の実施の形態における超音波センサ40について説明する。超音波センサ40は、超音波発振器としての超音波送信部41、超音波受信器としての超音波受信部42、センサ制御部43を含んで構成されている。さらにセンサ制御部43内には、超音波送信部41の送信と超音波受信部42の受信の時間差で人物2までの距離を算出する距離算出部44が備えられている。またセンサ制御部43は、演算装置20の制御部21内に備えるようにしてもよい。また、超音波送信部41と超音波受信部42とは、本実施の形態では別体としたが、一体であってもよい。さらに、距離算出部44で算出される人物2までの距離は、時間差そのものとしてもよい。これは、人物2までの距離が時間差から線形的に求められるため、時間差の変化をそのまま距離の変化と見ることができるからである。
【0031】
超音波送信部41で超音波を発生する手段は、圧電セラミックス等の圧電効果を有する材料を金属板等で保持(振動子)し、信号電圧を印加することにより振動子が屈曲振動することにより超音波を発生させる。超音波受信部42で受信する手段は、反射してきた超音波が振動子を振動させることにより電気出力を得るものである。従って、超音波距離センサの場合には、断続的に超音波を発生させて、反射して戻ってきた信号波を検出し、発振側と受信側とで時間差を検出することができれば、音速が分かっているので人物2までの距離を測定することができる。この場合、検出後の信号処理にもよるが、最も近い反射を検出したり、照射領域の平均的な距離を測定することができる。
【0032】
また、図7の模式図に示すように、超音波センサ40を構成してもよい。前述の超音波センサ40を複数、例えば図示のように超音波センサ40a、超音波センサ40b、超音波センサ40cを並列に並べて配置する。そして、超音波送信部41aで超音波を送信し、超音波受信部42aのみならず超音波受信部42b、超音波受信部42cで受信し、超音波センサ40a、40b、40cそれぞれ距離を測定する。次に、超音波送信部41bで超音波を送信し、超音波受信部42bのみならず超音波受信部42a、超音波受信部42cで受信し、超音波センサ40a、40b、40cそれぞれ距離を測定する。以下、同様ににして距離の測定を行う。この場合、簡単な演算により、複数の超音波受信センサから同時に人物2の距離の平均値を得ることができるので、精度を高めることができる。
【0033】
なお超音波の場合には、人物2からの反射波である散乱波は、広範囲に広がるので、前述で並べた方向以外の方向の超音波受信センサで受信することもできる。以上では超音波センサ40で説明したが、赤外線距離センサ30等の照射型センサでも同様に実施可能である。
【0034】
図12のブロック図を参照して、本発明の実施の形態における電磁波を用いた距離センサについて説明する。電磁波パルス距離センサ80は、電磁波送受信部81とセンサ制御部82とを含んで構成されている。電磁波送受信部81は、アンテナを含んで構成され、人物2に向けてパルス変調された電磁波の発振と、人物2で反射された電磁波の受信とを行う。パルス変調は、例えば周期的に電磁波の発振停止を繰り返し行なうことにより、パルス信号を発生するような動作である。電磁波パルス距離センサ80は、電磁波をパルス変調することにより、電磁波送受信部81より受信した電磁波と、この電磁波に混入するノイズとを区別することができるので、ノイズによる距離の誤測定を減少させることができる。さらに変調は、上述に加え、混入するノイズの強さにより、発振する電磁波の出力も変化させるようにしてもよい。
【0035】
さらにセンサ制御部82内には、電磁波の発振と受信との時間差で人物2までの距離を算出する距離算出部83が備えられている。またセンサ制御部83は、制御装置20の制御部21内に備えるようにしてもよい。また、電磁波送受信部81は、本実施の形態では一体としたが、電磁波パルス送信部と電磁波受信部とを別体に構成してもよい。また、前述の超音波センサ70と同様に人物2までの距離は、時間差そのものとしてもよい。電磁波は、典型的には10GHz程度のマイクロ波である。
【0036】
電磁波パルス距離センサ80は、電磁波にマイクロ波を用いることで、超音波よりも指向性が強くなるので、監視エリア6を小さくすることができ、例えば狭い監視ゾーン60でも人物2の位置をより明確にすることができる。また、電磁波パルス距離センサ80は、対象物に照射された部位からの反射があれば、反射した電磁波のうち最短の時間で戻ってきたものから距離を測定するので、例えば赤外線距離センサのように、PSD上の結像ビーム光が欠けることによる誤測距を起こすことがない。また電磁波パルス距離センサ80は、照射領域内に強いコントラスト(例えば縞模様)があっても、赤外線距離センサのように影響されることがない。さらに、電磁波パルス距離センサ80は、容易に小型化することが可能である。
【0037】
以上の赤外線距離センサ30、超音波センサ40、電磁波パルス距離センサ80は照射型センサである。
【0038】
図8のブロック図を参照して、本発明の実施の形態におけるパッシブ型光学距離センサ50について説明する。パッシブ型光学距離センサ50は、人物2からの光を受光する第1の受光部51、第2の受光部52、センサ制御部53を含んで構成されている。第1の受光部51、第2の受光部52には、それぞれ受光レンズ54a、54bと、1対の撮像素子としての第1のラインCCD55、第2のラインCCD56とが備えられており、人物2からの光は、受光レンズ54a、54bを介してそれぞれ第1のラインCCD55、第2のラインCCD56に結像される。また、人物2からの光は、典型的には人物2に照射されている照射光の人物2からの反射光である。この場合、照射光は自然光であっても人工光であってもよい。
【0039】
また、センサ制御部53内には、第1のラインCCD55、第2のラインCCD56のそれぞれの出力値の相関出力値を算出する相関出力算出装置としての相関出力算出部58が備えられている。またセンサ制御部53は、演算装置20の制御部21内に備えるようにしてもよい。さらにセンサ制御部53内には、第1のラインCCD55、第2のラインCCD56のそれぞれについて時間をずらして取得された画像の差画像を形成する差画像形成装置としての差画像形成部57を備えるとよい。これによりセンサ制御部53は、第1のラインCCD55、第2のラインCCD56から取得した画像から、動きのある人物2の像を抽出することができる。差画像を形成するための2つの画像は時間をずらして取得するが、ずらす時間は、人物2の移動量が大きくなり過ぎず、実質的にはほぼ同位置とみなせる程度の時間、例えば0.1秒程度とすればよい。あるいはテレビ周期の1〜10周期(1/30〜1/3)とする。このような差画像をとると背景が除去され動きのある人物2の像を抽出することができる。差画像を利用する場合については後でさらに詳しく説明する。
【0040】
ここで相関出力値とは、第1のラインCCD55と第2のラインCCD56との視差のことであり、相関処理により、典型的には画素数で出力される値である。センサ制御部53は、この相関出力値により即ち第1のラインCCD55と第2のラインCCD56との視差から三角法により距離を算出する。また、相関処理とは、第1のラインCCD55と第2のラインCCD56からそれぞれ得られた画像のどちらか一方を、2つの画像がほぼ一致するまでずらして、そのずらした量例えば画素数を算出する処理である。一致の判断は、全体の信号の強さで行う。信号がピークなったところが一致点である。差画像形成による相関処理は、第1のラインCCD55と第2のラインCCD56からそれぞれ得られた差画像を適正な値で2値化し、そのエッジ部を抽出する事により、動きのある領域部分を抽出する。その後、抽出領域のみで相関処理を施す。即ち、相関出力値から人物2の距離を求めることができる。又、第1のラインCCD55と第2のラインCCD56を複数個の領域に分け、対応する領域毎で相関処理を施す事により、背景の多くある部分と対象物とをおよそ区分する事もできる。
【0041】
パッシブ型光学距離センサ50は、オートフォーカスカメラに採用されているようなタイプのもので、典型的には1対のラインCCDを用いて、人物2の表面の明暗状態(コントラストの違い)を検出する。1対のラインCCDの対応する画素がどれかを相関処理により同定し、三角法により距離を測定するものである。パッシブ型光学距離センサ50に一般的に用いられるラインCCDは、画角が全角で10°程度と狭く、監視エリア6をカバーするためには、比較的多くのセンサを必要とするが、照射型センサではないので、複数個のセンサからの出力を同時に作動させても全く問題ない。従って、高速に処理することができる。また、赤外線距離センサに比較すると、1次元方向に画素が並んでいるので、中途半端にビームが欠けることもなく、監視エリア6の距離情報を安定して取得することができる利点がある。
【0042】
第1のラインCCD55、第2のラインCCD56に、比較的大きな画角のものを用いれば、横方向の監視エリア6を十分に大きく取ることができる。この場合、次に説明するような利点がある。
【0043】
図9の模式図を参照して、第1のラインCCD55、第2のラインCCD56に、前記のような画角のものを使用した例を説明する。図9(a)はトイレの側面図であり、図9(b)はトイレの正面図である。ここで第1のラインCCD55、第2のラインCCD56に、画角の大きいラインCCDを用いたものをパッシブ型光学距離センサ50’とする。
【0044】
図示のように閉空間例えばトイレの監視に画角の大きいラインCCDを使用する場合、その画角をトイレの幅になるようにパッシブ型光学距離センサ50’を設定する。このように設定したパッシブ型光学距離センサ50’を、監視エリア6が立っている人物2のおよそ頭部から床面3’まで適当な間隔で配分されるように複数設置する。また、人物2が不在の場合の床面3’や壁4’までの距離を基準距離として設定しておくとよい。
【0045】
このように、パッシブ型光学距離センサ50’を設置することで、人物2までの距離を測定すると同時に、どの距離センサ50’が人物2を検出したかで、人物2の存在、床面からの高さ即ちその姿勢を判断することができる。また差画像を取得し、撮像された画像上の人物2の像を抽出することにより、抽出された人物2の像の画像上の位置から、トイレ幅方向(Y軸方向)の位置も得ることができる。
【0046】
ここで、パッシブ型光学距離センサ50で、監視エリア6での人物2と背景との区別を明確にするための、差画像を利用する場合を詳しく説明する。
【0047】
監視エリア6を撮像した画像は、電気的な撮像信号として第1のラインCCD55、第2のラインCCD56から時系列的に取得される。第1のラインCCD55、第2のラインCCD56から異なる時間に取得された画像は、それぞれのラインCCDごとに差画像形成部57により差画像が形成される。ここで、異なる時間で取得された画像で差画像を形成するのは、取得された画像から背景部分を除去し、人物2の画像を抽出するためである。これにより、移動する人物2のみが抽出されることになる。また差画像は、短時間例えば0.1秒だけずれた時点の画像から形成するようにする。画像のずれは僅かであるので、人物2の位置はほとんど変わらなく、距離の測定には差支えない。しかし背景は消去され人物2の像を抽出できる。この場合、人物2が静止すると人物2の像も消去されてしまうが、そのときは差画像に人物2が残った最終時点の距離を人物2の距離とする。そして人物2が再び動き始めるまで、その最終距離を人物2の距離としておく。このようにすることで、人物2の像を安定して取得することができる。
【0048】
人物2が抽出された差画像は、人物2の移動により明から暗、または、暗から明になった程度が比較的大きな画素を、人物2の境界とみなすことができる。そしてこの境界の内側の画素領域で、相関処理を施し、三角法により人物2の距離を測定することにより、人物2の距離を正確かつ安定して測定することができる。
以上のように、監視システム1の距離センサ11として、いずれの距離センサを用いても、人物2の距離を測定できる。
【0049】
ここで、図10の模式図を参照して、三角法を用いた人物2の距離の算出方法について、パッシブ型光学距離センサ50を使用して、鉛直上方から人物2の距離を測定する場合を例として説明する。ここで、wはラインCCD間距離(基線長)、fはラインCCDの受光レンズを単一レンズとしたときそのレンズの焦点距離、dはラインCCDの結像面上の視差である。ここでの焦点距離は、一般に用いられている組み合わせレンズを使用する場合は、その組み合わせレンズの焦点距離とする。これにより対象とする人物2の距離aは次式で算出できる。

a = w × f/d ………(1)
【0050】
図3を参照して、本実施の形態の監視システム1の作用を説明する。
監視システム1により複数の監視エリア6を含む監視ゾーン60が監視されている。監視システム1は、各距離センサ11により、対応する各監視エリア6の距離を測定し、その距離を各距離センサ11からの出力値として、時系列的に演算装置20の制御部21に入力している。制御部21は、比較演算部22により、この入力値を基準距離保存部25に保存された基準距離と比較し、その比較結果により各監視エリアに存在する人物2を監視している。
【0051】
ここで、監視ゾーン60の監視エリア61(図2参照)に人物2が進入してきた場合、進入してきた人物2の距離は、監視エリア61に対応する距離センサ11により測定され、その出力値は制御部21に出力される。その出力値を入力した制御部21は、比較演算部22により、人物2の位置情報を算出する。
【0052】
ここで図11の模式的側面図を参照して、人物2の位置情報である高さ、位置を算出する方法の一例を説明する。床面3から高さHの壁4に設置された距離センサ11が、壁4から距離L(X軸方向)の監視エリア6を監視しているとする。この監視エリア6に存在する人物2の距離センサ11からの距離がAと測定されたとすると、人物2の高さH1と、壁4からの距離L1は、次式で求めることができる。

H1=AH/(H+L1/2 ………(2)
L1=AL/(H+L1/2 ………(3)

距離Lに直交する床面3と平行方向(Y軸方向(図1参照))の位置は、算出した高さH1、距離L1や距離センサ11の距離測定方向により算出できる。また位置は、設定された複数の監視エリア6の位置からも大まかに捉えることができる。さらに、どの監視エリア6の距離を測定した距離センサかにより大まかに捉えることができる。このように、監視エリア6に存在する人物2の位置情報を算出することができる。さらに、例えば床面3に垂直な方向に距離センサ11を配置すれば、センサの取り付けた位置そのものを、位置とし、距離を高さとすることで、位置情報を簡単に取得することもできる。
【0053】
このようにして、同時又は逐次的に他のそれぞれの監視エリア6も位置情報を取得する。また、距離センサ11に照射型センサを使用し、かつ複数の距離センサ11に対応する監視エリア6が重複する場合は、以下で説明するように位置情報を取得する。
【0054】
ここで、図2(b)に示すように、距離センサ11に照射型センサを使用し、かつ複数の距離センサ11に対応する監視エリア6が重複する場合の作動の制御について説明する。この制御は、演算装置20の制御部21内のタイミングコントローラ23で行う。照射型センサの場合には、1つの距離センサ11の距離の測定の後で、次の距離センサ11の距離の測定を行うように制御する。即ち複数の距離センサ11が同時に距離の測定をしないように制御する。このような動作が、備えられた全ての距離センサ11の距離の測定が行われるまで繰り返される。この一連の動作を1サイクルとする。1サイクルの時間Tが人物2の動きに対して十分に短ければ、人物2の平均移動速度や移動距離を算出することは容易である。
【0055】
また、上述のように1つずつ距離センサ11による距離の測定を行うのではなく、隣接する監視エリア6の距離の測定を同時に行わないように制御する(例えば同時に距離測定を行なう監視エリアを1つおきとする)ことで、複数の距離センサ11に同時に距離の測定を行わせることができる。このようにすれば、1サイクルの時間Tを大幅に短縮できる。
【0056】
また比較演算部22は、同一又は同一ではない他の監視エリア6で直前に算出されたこの人物2の位置情報、例えば1サイクル前の位置情報があれば、さらにその位置情報と比較し、この人物2の移動情報である移動距離と平均移動速度を算出する。例えば移動距離は、1サイクル前後のH1やL1のデータの差より、また、平均移動速度は、このデータの差を時間Tで除算した値となる。さらに、これにより得られた人物2の位置情報と移動情報は、記憶部24内の基準距離保存部25に基準距離として保存する。
【0057】
次に制御部21は、比較演算部22により算出された比較結果としての位置情報と移動情報から、人物2の存在、その姿勢、位置、移動状態を判断する。またこの判断は、他の監視エリア6(例えば隣接する監視エリア62、71、72(図2参照))で算出された位置情報と移動情報からも判断される。例えば、人物2の移動がなく、かつ高さが低くなった場合は、この人物2が座ったと判断でき、また、人物2が低い高さで隣接する複数の監視エリア6に存在し、かつ移動が無い場合には、この人物2は倒れている状態にあると判断できる。このようにして監視システム1は、複数の監視エリア6を含む監視ゾーン60内の人物2の進入、存在と存在状態等を監視することができる。
【0058】
以上のように監視システム1は、監視エリア6にどの程度の大きさの人物2が進入し、どのような人物2の状態(どの位置で、立っている、座っている、倒れている)にあるか、また、その人物2は動いているか、また退出したかといった一連の動きを簡単な装置で追従することができる。この場合、基準距離からの差異を取得していくので、距離が比較的正確でなくても状態の判断に使うことはできる。従って、赤外線距離センサ30の1つの欠点である人物2に照明したビーム光がある程度欠けて誤測定になっても、一連の動きからの判断と複数の監視エリア6からの総合判断で人物2の状態の判定をすることができる。
【0059】
また監視ゾーン60が閉空間(トイレ、風呂、エレベーター内、オフィース内)においては、壁等で囲まれているので、人物2が不在の場合の床面3や壁4までの距離を基準距離として設定しておき、その状態からの変化を追うことで、人物2の状態を判断することができる。
【0060】
以上のような本実施の形態によれば、人物2の状態を判断して、人物2が倒れたとか、不法侵入者が存在しているといった監視を非常に容易に行うことができる。しかも、心理的に違和感のあるカメラを用いた画像処理を使用していないので、トイレや風呂等での状態監視において非常に有効であり、さらに簡易な装置で高速処理が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 監視システム
2 人物
3 床面
4 壁
6 監視対象エリア
10 筐体
11 距離センサ
20 演算装置
21 制御部
22 比較演算部
23 タイミングコントローラ
24 記憶部
25 基準距離保存部
26 入力装置
27 出力装置
30 赤外線距離センサ
31 赤外光照射部
32 赤外光受光部
40 超音波センサ
41 超音波送信部
42 超音波受信部
44 距離算出部
50 パッシブ型光学距離センサ
51 第1の受光部
52 第2の受光部
57 差画像形成部
58 相関出力算出部
60 監視ゾーン
80 電磁波パルス距離センサ
81 電磁波パルス送信部、電磁波受信部
83 距離算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視したい複数の監視対象エリアに対応して設置された複数の距離センサであって、前記複数の距離センサはそれぞれ対応する監視対象エリアまでの距離を測定する、複数の距離センサと;
前記複数の距離センサで測定する測定距離と比較すべき基準距離を保存する基準距離保存部と;
前記複数の距離センサの各々による測定距離と前記各距離センサに対応する前記基準距離とを比較する距離比較手段とを備え;
前記複数の監視対象エリアは、隣合う前記監視対象エリアが重複するように構成され;
前記距離比較手段は、比較結果に基づいて監視対象物の高さ、位置を算出し、前記監視対象エリアと前記距離センサとの間に存在する前記監視対象物を監視するように構成された;
監視システム。
【請求項2】
前記複数の距離センサの作動を制御するタイミングコントローラを備える;
請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記距離センサの距離測定方向は、鉛直方向に対して傾斜している、
請求項1または請求項2に記載の監視システム。
【請求項4】
前記距離センサは;
前記監視対象エリアにビーム光を照射するビーム光照射装置と;
前記照射されたビーム光の反射光を結像する結像素子とを備える;
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の監視システム。
【請求項5】
前記距離センサは;
前記監視対象物に向けて超音波を発振する超音波発振器と;
前記監視対象物で反射された前記超音波を受信する超音波受信器と;
前記超音波発振器による発振と前記超音波受信器による受信の時間差に基づいて距離を算出する距離算出部とを備える;
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の監視システム。
【請求項6】
前記距離センサは;
前記監視対象物からの光を受光する1対の撮像素子と;
前記1対の撮像素子の各々から取得された画像同士の相関出力値を算出する相関出力算出装置とを備える;
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の監視システム。
【請求項7】
前記距離センサは;
前記1対の撮像素子の各々について異なる時間に取得された画像の差画像を形成する差画像形成装置を備え;
前記1対の差画像を、前記相関出力値を算出するための画像とするように構成された;
請求項6に記載の監視システム。
【請求項8】
前記距離センサは;
前記監視対象物に向けてパルス変調された電磁波を発振する電磁波パルス送信部と;
前記監視対象物で反射された前記電磁波を受信するアンテナを含む電磁波受信部と;
前記電磁波パルス送信部による発振と前記電磁波受信部による受信の時間差に基づいて距離を算出する距離算出部とを備える;
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−134354(P2011−134354A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81815(P2011−81815)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【分割の表示】特願2001−148800(P2001−148800)の分割
【原出願日】平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】