説明

監視映像記録装置

【課題】監視映像を超解像処理した画像の証拠性を高める。
【解決手段】記録装置内で、低精度映像(原本映像)のハッシュ値と高精度映像のハッシュ値を足し、これのハッシュ値を求め、これを記録装置に内蔵している秘密鍵で暗号化して署名を作り、低精度映像と高精度映像、署名をひもづけして記録する。
署名検証する際は、記録装置の秘密鍵のペアである公開鍵を用いて、上記署名を復号してハッシュ値を求め、これと、低精度映像と高精度映像から求めたハッシュ値を比較し、両者が一致すれば、高精度映像は確かにこの記録装置で作られたことを表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視映像記録装置に関し、特に映像データに電子署名を施して記録する監視映像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視カメラ等からIPネットワークを介して伝送された符号化映像データを記録する映像蓄積配信システムが知られる(例えば、特許文献1乃至3参照。)。
その様なシステムでは、特許文献2のように、NDR(ネットワークデータレコーダ)の多段接続時には、上流から間引きして取得した映像を記録する方法がある。即ち、撮影から時間がより経過した下流の装置の記録映像ほど、フレームが多く間引かれている。
また特許文献3のように、映像のデータを暗号化して記録するものもある。
【0003】
一方で、デジタル画像処理技術の発達により、画像を高解像度化する技術が多数提案されている(例えば、特許文献4乃至6参照。)。
例えば、特許文献3には、映像データの圧縮処理時に、当該処理により生成する動きベクトルやマクロブロックを利用して超解像画像データを生成し、映像蓄積装置へ出力する監視映像記録システムが記載されている。
【0004】
この他、本発明に関連する技術として、正解画像と超解像処理結果の画像データを使って両者の違いを適切に比較し超解像処理結果の検証を行う超解像画像検証装置が知られる(例えば、特許文献7参照。)。
また、スケーラブル符号化ストリームについてレイヤごとに完全性チェックを適用するようにしたデータの完全性を保証するための方法及び装置が知られる(例えば、特許文献8参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003‐319378号公報
【特許文献2】特開2008‐219275号公報
【特許文献2】特開2008‐172647号公報
【特許文献4】特開2005‐150808号公報
【特許文献5】特開2008−181520号公報
【特許文献6】特開2009−5119号公報
【特許文献7】特開2004‐294408号公報
【特許文献8】特表2007‐516660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、超解像処理を用いて精度の低い映像(例えば標準画質(SD)映像)を精度の高い映像(例えばHD映像)に変換し、不審者や車のナンバーを明確にしても、精度の高い映像は必ずしも原本とはならないため、証拠性が低い、という問題があった。即ち、超解像処理にはチューニング可能なパラメータが介在し、それにより得られる高精度映像が異なりうるものであり、そのような映像の信頼性の指標も確立されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の監視映像記録装置は、低精度映像のハッシュ値と高精度映像のハッシュ値を足し、これのハッシュ値を求め、これを記録装置に内蔵している秘密鍵で暗号化して署名を作り、低精度映像と高精度映像、署名をひもづけして保存する。
署名検証する際は、記録装置に内蔵している秘密鍵のペアである公開鍵を用いて、上記署名を復号してハッシュ値を求め、これと、低精度映像と高精度映像から求めたハッシュ値を比較し、両者が一致すれば、高精度映像は確かにこの記録装置で作られたことを表す。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高精度映像に対する証拠性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る監視システムの模式図
【図2】図1の記録装置4の内部ブロック図
【図3】記録装置4の署名生成部17の処理の模式図
【図4】閲覧装置5における署名検証処理の模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る監視システムの模式図である。
監視システムは、ネットワークカメラ1、2及び3と、監視映像記録装置4(以下単に記録装置と称す)と、閲覧装置5と、ネットワーク6とから構成される。
ネットワークカメラ1、2、3は、撮影した映像(低精度映像)を、MPEG等の映像符号化方式で符号化し、伝送用にパケット化して、ネットワーク6に送出する。
【0011】
記録装置4は、ネットワーク6を介しネットワークカメラ1〜3から送られてきた低精度映像(12)を受信し、記録する。この時、低精度映像を超解像処理して高精度映像を作る。
閲覧装置5は、ネットワークカメラ1〜3から受信した低精度映像を表示したり、記録装置4から受信した映像(低精度映像または高精度映像)を表示する。閲覧装置5は例えば、汎用のパーソナルコンピュータにビューワーソフト(Webブラウザ)や署名検証ソフトを導入したものである。
ネットワーク6は、ネットワークカメラ1〜3から送信された符号化映像を、記録装置4や閲覧装置5に伝達する。
【0012】
図2は、本形態の記録装置4の内部ブロック図である。
記録装置4は、通信部7、制御部8、記録部9、署名生成部10、復号処理部15、超解像処理部16、及び符号化処理部17から構成される。
通信部7は、前述したネットワークカメラ1〜3から送られてきた低精度映像(パケット化、符号化されている)を受け取り、デパケット化して、制御部8へ送る。
制御部8は、低精度映像を記録部9に送る他、必要に応じて、低精度映像を記録部9から取り出し、復号処理部15に送る。
記録部9は、キャッシュ(バッファ)機能やセクタ管理機能を有し、ランダムアクセス可能な不揮発性記憶手段であり、符号変された低精度映像及び高精度映像を署名と共にストリーム或いはファイルとして記憶する。その際、フレーム番号、時刻等の管理情報或いはデータ構造により、対応する低精度映像と高精度映像とが紐付けられた(特定可能な)様態で記録する。
【0013】
署名生成部10は、制御部8から与えられた若しくは記録部9から読み出した低精度映像や高精度映像に対して、署名を生成し、記録部9に送る。
復号処理部15は、低精度映像を復号し、これを超解像処理部16に送る。
超解像処理部16は、復号された低精度映像を超解像処理して高精度映像を作り、これを符号化処理部17へ送る。超解像処理には、特許文献4乃至7のような公知の手法を用いることができ、通常は、複数枚の時系列映像に基づいて1枚の超解像画像を得るような処理である。
符号化処理部17は、高精度映像を符号化し、記録部9に送る。その際、高精度映像のフレーム番号やタイムスタンプ等として、元になった低精度映像と同じものを用いる。
【0014】
記録装置4は、CPUやメモリ等を有する汎用のサーバ装置に、上述した機能部を実現するプログラムを実行させて構成することができる。
【0015】
図3は、本形態の記録装置4の署名生成部17の処理の模式図である。
符号化された低精度映像12をハッシュ関数18に入力して、ハッシュ値23を求める。符号化された高精度映像13をハッシュ関数19に入力して、ハッシュ値24を求める。低精度映像12や高精度映像13からハッシュ値を求める処理単位(周期)は任意でよいが、両者を同じ単位とすることが望ましく、例えばフレーム単位である。
ハッシュ値23とハッシュ値24を、加算器(半加算器)21に入力し、その結果をハッシュ関数20に入力して、ハッシュ値25を求める。ハッシュ値25と秘密鍵11を暗号関数22に入力して、署名14を求める。
秘密鍵11は、PKI(Public Key
Infrastructure)などに言う秘密鍵であり、記録装置4において秘密に保持される。ハッシュ関数18、19は、要約関数或いは一方向性関数とも呼ばれ、例えばSHA1である。ハッシュ値23とハッシュ値24の結合(合成)の仕方としては、加算のほか、連結(両ハッシュ値のデータ列を単に繋ぎ合わせる)等の各種の演算方法を用いることができる。また署名14は、時刻情報をハッシュ値25と一緒に秘密鍵で暗号化して得ても良い。
【0016】
図4は、本形態の閲覧装置5における署名検証処理の模式図である。
記録装置2から、符号化された低精度映像12と高精度映像13、署名14を受け取る。
署名14と、記録装置2の保持する秘密鍵11のペアである公開鍵27を復号関数26に入力して、署名14を復号してハッシュ値28を求める。
また、低精度映像12と高精度映像13とから、図3と同様にハッシュ値25を求める(改ざん等がなければ図3の署名生成処理と同一になるので、便宜上、図3と同じ符号を付した)。
ハッシュ値25とハッシュ値28を比較処理29に入力する。
比較処理29は、両者が一致すれば、高精度映像(符号化されている)13は記録装置2で作られたと判断し、一致しなければそうでないと判断する。
【0017】
本形態の監視システムの記録装置4の基本的な構成や作用は上述した通りであるが、配信機能を有する従来の映像蓄積配信システム等に適用できることは明らかである。また本形態は、受信する符号化された低精度映像自体が署名済みであることを妨げるものではなく、一例としてその署名を図3及び図4のハッシュ値の代わりに用いることもできる。
なお、本例の符号化処理部17が出力する符号化された高精度映像は、それ単体で原画像に相当する映像に再生できるものでも、原画像と低精度映像との差分に相当する映像を符号化したものでも、どちらでも良い。
前者の場合は、低精度映像12は署名14及びハッシュ値24と共に1つのストリームとし、高精度映像13は署名14及びハッシュ値23と共に1つのストリームとし、2つの別個のストリームとして記録することもできる。低精度映像12と高精度映像13とは、それぞれストリーム中に記録されたフレーム番号等により紐付けられる。
後者の場合は、MPEG4(ISO/IEC14496-2)のFGS(fine granular scalability)のような空間階層(スケーラブル)符号化を用い、低精度映像12と高精度映像13と署名14とを1つのストリームとして記録することもできる。
【0018】
以上述べたように、本形態の記録装置によれば、超解像処理により生成された精度の高い映像についても、精度の低い映像と一緒に署名が施されて記録されるようにしたので、精度の高い映像を原本とすることができ、或いは、原本である精度の低い映像と同時期に存在し、署名元の記録装置で記録されたことを証明することができる。
そのため、精度の低い映像が間引かれて精度の高い映像の再作成ができなくなっても、精度の高い映像に基づく署名が検証できれば、証拠性を保つことができる。
また、精度の低い映像と精度の高い映像との同一性がより信頼できるようになるので、精度の低い映像との紐付けが保たれていれば、精度の高い映像は(時間的及び空間的に)任意に抜粋保存されても証拠性を保つことができる。
【0019】
[変形例1]
本変形例1は、上記の記録装置4の超解像処理部16に、学習型超解像処理を適用したものである。即ちネットワークカメラとしてメガピクセルカメラを用い、記録装置4において高解像映像を受信し、低精度映像を超解像処理して得た高精度映像が、受信した高解像映像に近づくように学習(適応制御、トレーニングとも言う)をするものである。
本例のネットワークカメラ1’は、ネットワークカメラ1と同等の動作に加え、定期的に高画素数で撮影し符号化した高解像映像と、その高解像映像に対応する(時刻等の撮影条件が実質的に同一な)符号化された低精度映像と、を生成して送信する。低精度映像は、符号化前の高解像映像をサブサンプルして生成するのが望ましいが、別個に撮像しても良い。高解像映像の送信は、ネットワークカメラ1’の自立した制御によるものでも、記録装置からの要求によるものでも、どちらでも良い。低精度映像の送信にはUDPを利用したリアルタイム伝送用のプロトコルを、高解像映像の送信にはTCP等のプロトコルを利用できる。
【0020】
本例の制御部8’は、ネットワークカメラ1’〜 3’における撮像条件(パンチルト位置やズーム、照度等)の情報を取得し、超解像処理部16’に通知する。この情報は、制御部8から指定してネットワークカメラ1’等に与えたものでも、ネットワークカメラ1’
等から低精度映像等と共に受信されるものでもよい。
本例の復号処理部15’は、受信した高解像映像についても復号を行い、復号した高解像映像とそれに対応する低精度映像の直近の1フレームを夫々バッファに保持する。
本例の超解像処理部16’は、対応関係にある低精度映像と高解像映像とを用いて学習を行い、撮像条件(どのカメラの、パンチルトズーム位置であるか等)毎に拘束条件や評価式などを最適化する。つまり撮像条件が頻繁に変化するような場合でも、同条件での学習を途中から再開できる。またこのような最適化を行っても超解像処理が収束しない場合は、その条件での超解像処理を無効にする。
【0021】
本例によれば、超解像処理のパラメータを手動で設定することなく自動的に最適なものにできる。なお、署名により高精度映像自体の証拠性が高いので、高精度映像を後日再現するためにパラメータを別途記録する手間を省くこともできる。
【符号の説明】
【0022】
1〜3:ネットワークカメラ、 4:記録装置
5:閲覧装置、 6:ネットワーク
7:通信部、 8:制御部
9:記録部、 10:署名生成部
11:秘密鍵、 12:低精度映像
13:高精度映像、 14:署名
15:復号処理部、 16:超解像処理部
17:符号化処理部、 18〜20:ハッシュ関数
21:加算器、 22:暗号関数
23〜25:ハッシュ値、 26:復号関数
27:公開鍵、 28:ハッシュ値
29:比較処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
符号化映像のデータを記録する監視映像記録装置において、
外部から符号化映像を受信する通信部と、
前記受信した符号化映像を復号化する復号化部と、
前記復号化された映像を超解像処理し、超解像画像を得る超解像処理部と、
前記超解像画像を符号化する符号化部と、
前記受信した符号化映像と前記符号化された超解像画像とを一緒に署名する署名生成部と、
前記受信した符号化映像と前記符号化された超解像画像とを対応付けて、前記署名と共に記録する記録部と、を備える監視映像記録装置。
【請求項2】
前記署名生成部は、低精度映像のハッシュ値と高精度映像のハッシュ値とを結合或いは合成してそのハッシュ値を求め、該求めたハッシュ値を該監視映像記録装置が内蔵している秘密鍵で暗号化して署名をするものであることを特徴とする請求項1記載の監視映像記録装置。
【請求項3】
CPUとメモリと不揮発性記憶手段と通信手段とを備えた情報処理装置に実行させる監視映像記録プログラムにおいて、
通信手段により外部から符号化映像を受信する受信処理と、
前記受信した符号化映像を復号化する復号化処理と、
前記復号化された映像から超解像画像を得る超解像処理と、
前記超解像画像を符号化する符号化処理と、
前記受信した符号化映像と前記符号化された超解像画像とを一緒に署名する署名生成処理と、
前記受信した符号化映像と前記符号化された超解像画像とを対応付けて、前記署名と共に不揮発性記憶手段に記録する記録処理と、を実行させる監視映像記録プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−219889(P2010−219889A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64380(P2009−64380)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】