説明

監視用センサ

【課題】監視窓の表面に一時的に付着した付着物と監視領域の設定後に監視領域内に出現した遮蔽物とを識別可能な監視用センサを提供する。
【解決手段】監視用センサ2は、監視窓27を介して監視領域を探査信号で走査して複数の走査方位と物体までの距離とを対応付けた測距データを生成する検知部21と、第1の時刻における測距データから抽出された監視窓近傍の距離に相当する走査方位数である第1近接測定点数に基づき監視窓27に近接する物体があるか否か判定する近接物体判定部253と、近接物体があるときに監視窓27に付着した付着物を除去する除去手段24を一定期間動作させる除去手段制御部254と、除去手段24が一定期間動作した後の第2の時刻における測距データから抽出された第2近接測定点数が第1近接測定点数より所定閾値以上少ない場合、監視窓27に遮蔽物以外の一時的な付着物が付着していると判定する外乱判定部255とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、探査信号を監視領域内に照射して、その反射信号を受信することで、監視領域内へ侵入した物体を検出する監視用センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、屋外などの広域な監視領域に侵入した物体を検出するために、赤外光線、可視光線、超音波などの探査信号を監視領域内に照射して、監視領域内の物体からの反射信号を受信することにより、監視領域内の物体を検出する監視用センサが開発されている。
そのような監視用センサの一例は、光距離計の光を2次元スキャンさせるスキャン角度によって監視領域を設定し、監視領域内の侵入者を検知したとき、侵入者までの距離データ及び角度データを求め、その距離データ及び角度データにより侵入者の位置を算出する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−241062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
監視用センサは、セキュリティ性を担保するために、監視機能が無効化されることを防止しなければならない。特にこのような監視用センサが、監視領域内に侵入した不審人物、不審車両といった不審物体を検出して異常通報する警備システムに利用される場合には、監視機能が無効化されてしまうと、警備システムが不審物体の検知に失敗してしまうので、そのような事態を防止することは非常に重要である。
例えば、不正行為者が監視領域の一部または全てを遮る障害物を設置すると、監視用センサから照射される探査信号の到達可能範囲が狭くなる。また、監視領域内または監視領域の境界近傍に存在する植栽の成長または芽吹きなどにより、探査信号の到達可能範囲が狭くなることもある。このように、監視領域内に、探査信号を遮る遮蔽物が監視領域の設定後に出現すると、本来監視できるはずであった遮蔽物の向こう側(監視用センサから見て、遮蔽物よりも遠い側)に存在する物体を検出できなくなり、その検出不能となった範囲は警備上の死角となってしまう。
特許文献1に開示されたような従来の監視用センサは、上記のように、監視領域内に後から遮蔽物が出現し、探査信号の到達可能範囲が限定された場合にこれを検出することができず、セキュリティ性の維持確保を図ることができないという問題があった。
【0005】
そこで、かかる問題への対策として、探査信号の到達可能範囲が限定されたことを視野妨害行為として検知すると、視野妨害行為の発生を知らせる警報を監視センタなどへ通知して、保守作業者または警備員に監視領域を確認させることが考えられる。
しかし、このような監視用センサが利用される警備システムでは、不審者が建物へ侵入する前に、迅速に不審者を検出して通報するべく、建物の周囲、例えば、戸建家屋の庭が監視領域として設定されることもある。このような場合、監視用センサは、屋外に設置される。そして監視用センサが屋外に設置されていると、探査信号が投射され、または反射信号を受光する投受光面である監視窓の表面に、虫、トカゲなどの小動物が付着したり、降雨により水滴が付着することがある。監視窓に小動物、水滴といった付着物が付着していると、探査信号がその付着物によって遮られてしまい、探査信号が監視領域全体に届かなくなることがある。しかし、このような小動物は、同じ場所に長時間留まらずに移動する。また水滴は、時間が経つと流れ落ちたり、あるいは蒸発して消失するので、これら付着物による探査信号の到達可能範囲の限定は一時的なものに過ぎない。
監視用センサが、このような一時的な到達可能範囲の限定も視野妨害行為として検出すると、実際には監視領域内には変化が無いにもかかわらず、妨害行為の発生を誤検出してしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、監視窓の表面に一時的に付着した付着物と、監視領域の設定後に監視領域内に出現した遮蔽物とを識別可能な監視用センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの形態として、監視領域の少なくとも一部が遮蔽物により監視不能となっているか否かを判定する妨害判定処理を実行する妨害判定部と、監視領域の少なくとも一部が監視不能と判定された場合に妨害検知信号を出力する出力部とを有する監視用センサが提供される。この監視用センサは、監視窓を有する筺体と、筺体内に配置され、監視窓を介して監視領域の一端から他端まで探査信号を走査して、監視領域内に存在する物体により反射された探査信号を受信することにより、複数の走査方位とその複数の走査方位のそれぞれに対応する物体までの距離とを対応付けた測距データを生成する検知部と、測距データにおいて、監視窓近傍となる距離に相当する走査方位を近接測定点として抽出する近接点計測部と、第1の時刻において取得された測距データから抽出された近接測定点の数である第1近接測定点数に基づき監視窓に近接する近接物体が存在するか否か判定する近接物体判定部と、近接物体が存在すると判定されると監視窓に付着した付着物を物理的に除去する除去手段を一定期間動作させる除去手段制御部と、除去手段が一定期間動作した後の第2の時刻において取得された測距データから抽出された近接測定点の数である第2近接測定点数が、第1近接測定点数よりも所定閾値以上少ない場合、監視窓に遮蔽物以外の一時的な付着物が付着していると判定する外乱判定部とを有する。
なお除去手段は、監視窓の内面に接して固定された振動子を有し、除去手段制御部は、その振動子を駆動して監視窓に一定期間振動を与えることが好ましい。あるいは、除去手段は、監視窓の外側表面に送風するように配置された空気送出部を有し、除去手段制御部は、その空気送出部を駆動して監視窓の外面に一定期間送風することが好ましい。
【0008】
また、妨害判定部は、監視窓に一時的な付着物が付着していないと判定されている場合に妨害判定処理を実行することが好ましい。
【0009】
また検知部は、探査信号による監視領域の走査を周期的に行って、その走査を行う度に測距データを生成し、外乱判定部は、測距データが生成される度に、測距データに基づいて監視窓に一時的な付着物が付着しているか否かの判定を行い、監視窓に一時的な付着物が付着していると判定された状態が所定時間継続すると監視領域の少なくとも一部を監視できない環境異常が発生したと判定し、出力部は、環境異常が発生した場合に環境異常が発生したことを示す環境異常信号を出力することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る監視用センサは、監視窓の表面に一時的に付着した付着物と、監視領域の設定後に監視領域内に出現した遮蔽物とを識別できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一つの実施形態に係る監視用センサを備えた警備システムの全体構成図である。
【図2】本発明の一つの実施形態に係る監視用センサの概略構成図である。
【図3】侵入判定処理の動作を示すフローチャートである。
【図4】近接物体判定処理の動作を示すフローチャートである。
【図5】除去手段制御処理の動作を示すフローチャートである。
【図6】外乱判定処理の動作を示すフローチャートである。
【図7】視野妨害判定処理の動作を示すフローチャートである。
【図8】物体検出処理の動作を示すフローチャートである。
【図9】警備装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一つの実施形態である監視用センサを、図を参照しつつ説明する。この監視用センサは、所定周期で監視領域の一端から他端まで探査信号を走査して、物体により反射された探査信号である反射信号を受信することにより、監視用センサから見た方位を表す走査方位ごとに物体までの距離を測定する。そしてこの監視用センサは、走査方位ごとに、予め記憶した監視領域の境界までの距離と最新の測定距離とを比較することにより、監視領域の一部が遮蔽物により遮蔽されたこと、すなわち、視野妨害を検知する。またこの監視用センサは、物体までの距離が監視窓近傍となる走査方位の数が監視領域全体の走査方位数に対して所定の割合で存在すると、監視窓に一時的な付着物(以下、単に付着物と言うこともある)が付着している可能性があると判定する。そしてこの監視用センサは、監視窓の一時的な付着物を除去するよう物理的な措置を行った後、監視窓近傍となる走査方位の数が、その物理的な措置の前と比べて減少すると、監視窓に一時的な付着物がついていると判定し、視野妨害検知を停止する。
【0013】
図1は、一つの実施形態に係る監視用センサを備えた警備システムの全体システム構成を示す図である。図1に示すように、警備システム1は、建物101の敷地の一部に設定された監視領域102a〜102cをそれぞれ監視するように、建物101の周囲の3面にそれぞれ設置された3台の監視用センサ2と、各監視用センサ2と通信回線4を通じて接続され、建物101内に設置される警備装置3とを有する。
【0014】
各監視用センサ2は、監視領域102a〜102c内に侵入した不審人物、不審車両といった不審物体を検知すると、その旨を表す侵入異常信号を警備装置3へ送信する。また各監視用センサ2は、監視領域102a〜102cの少なくとも一部の監視が妨害されていることを検知すると、その旨を表す妨害検知信号を警備装置3へ送信する。さらに各監視用センサ2は、監視窓に付着した付着物により、監視領域の一部が監視不能となっている状態が一定期間継続していることを検知すると、その旨を表す環境異常信号を警備装置3へ送信する。さらに各監視用センサ2は、侵入異常信号、妨害検知信号または環境異常信号とともに、監視用センサ2の識別番号を警備装置3へ送信してもよい。
警備装置3は、公衆通信回線5を介して監視センタ内に配置された監視センタ装置6と通信可能となっている。そして警備装置3は、何れかの監視用センサ2から侵入異常信号、妨害検知信号または環境異常信号を受信すると、その侵入異常信号、妨害検知信号または環境異常信号を、警備装置3の識別番号または警備装置3が設置された建物の識別番号とともに、監視センタ装置6へ送信する。
【0015】
なお、警備システム1が有する監視用センサ2の数は3台に限られない。監視用センサ2の数は、監視しようとする領域の形状、大きさ及びその領域内に予め存在する遮蔽物などに応じて適宜決定される。また監視用センサ2の設置位置も、監視しようとする領域の形状または建物の位置及び形状などに応じて適宜設定される。
【0016】
監視用センサ2は、監視領域内に侵入した不審物体を検出する。また監視用センサ2は、例えば、監視領域の一部が後から設置された遮蔽物により遮られることにより、監視領域の少なくとも一部の監視が妨害されているか否か判定する。さらに監視用センサ2は、監視領域の一部が、監視用センサ2が有する監視窓に付着した付着物によって監視不能となっている状態が一定期間継続している環境異常状態か否かを判定する。
【0017】
図2は、監視用センサ2の概略構成図である。監視用センサ2は、検知部21と、通信部22と、記憶部23と、除去手段24と、制御部25とを有する。これらの各部は、金属または樹脂などによって形成された筺体26に収容される。筺体26の前面、すなわち、監視領域に向けられる側の面には、ガラスまたは透明プラスチックといった透光性を有する部材よりなる監視窓27が設けられている。本実施形態では、監視窓27は、検知部21を略中心とする円弧状に形成されており、検知部21を通る水平面における監視窓27の表面上の各点と検知部21間の距離は略同一となっている。しかし、他の実施形態では、監視窓27は、平面状に形成されてもよい。
【0018】
検知部21は、探査信号を監視領域内へ照射し、反射信号を受光する。そして検知部21は、反射信号を解析することにより、走査方位ごとに、監視用センサ2から探査信号を反射した物体までの距離の測定値を含む測距データを作成する。そのために、検知部21は、例えば、レーザ発振部211と、走査鏡212と、駆動部213と、受光部214と、測距データ生成部215とを有する。
【0019】
レーザ発振部211は、探査信号として、例えば、約890nmの波長を持つ近赤外線のパルスレーザを発振する。そしてこのパルスレーザは走査鏡212へ向けて出力される。またレーザ発振部211は、測距データ生成部215へ、パルスレーザの位相情報を出力する。
走査鏡212は、例えば、ガルバノミラーまたはポリゴンミラーであり、駆動部213により駆動されてその反射面の向きを変えることにより、一定周期(例えば、30msec)ごとにパルスレーザで監視領域全体を走査する。
【0020】
本実施形態では、レーザ発振部211及び走査鏡212は、監視用センサ2を中心とする所定の中心角度を持つ扇状の監視領域を、パルスレーザで水平に走査するように配置される。なお、所定の中心角度は、例えば、180°に設定される。走査鏡212で反射されたパルスレーザは、監視用センサ2の筺体26の前面に設けられた監視窓27を通って、監視用センサ2の外部へ向けて照射される。
なお、レーザ発振部211及び走査鏡212は、探査信号であるパルスレーザが、水平面に対して所定の俯角を持ち、監視用センサ2から離れるほどパルスレーザが地面に近づくように配置されてもよい。
また、監視領域の走査は、監視領域の一方の端部から他方の端部まで同一方向に繰り返しパルスレーザを走査することによって行ってもよく、あるいは、1回の走査ごとにパルスレーザを走査する向きを反転させて行ってもよい。また、監視領域は、監視を行う環境に応じて、検知部21が走査を行う走査範囲に内包される領域として、走査範囲よりも狭い範囲で設定されてもよい。
【0021】
駆動部213は、例えば、モータと、そのモータにより生じた回転駆動力を走査鏡212の回転軸に伝達する機構と、モータを制御するための回路とを有し、走査鏡212を走査周期に応じた等回転速度で回転駆動する。
また駆動部213は、現時点でパルスレーザが照射されている方向を表す角度情報を測距データ生成部215へ通知する。
【0022】
受光部214は、例えば、CCD、CMOSまたはフォトダイオードといった受光素子を有し、レーザ発振部211の近傍に配置される。そして受光部214は、監視窓27及び走査鏡212を介して、探査信号が照射された走査方位に沿って到来する反射信号を受光する。そして受光部214は、反射信号の強度に応じた値を持つ受光信号を測距データ生成部215へ出力する。
【0023】
測距データ生成部215は、走査方位ごとに、監視用センサ2から反射信号を反射した物体までの距離を測定し、走査方位とその距離との関係を表す測距データを生成する。そのために、測距データ生成部215は、プロセッサ及びその周辺回路を有する。そして測距データ生成部215は、例えば、Time Of Flight法に従って、受光信号から求めた反射信号の位相とレーザ発振部211から出力されたパルスレーザの位相との差を求め、その差に基づいて距離を測定する。なお、ある走査方位において受光部214が所定時間以内に反射回帰光を受光しない場合には、測距データ生成部215は、その走査方位にはパルスレーザの到達可能範囲内に物体が存在しないと判断し、その走査方位についての距離を、その旨を表す予め設定された擬似値とする。この擬似値は、例えば、監視用センサ2から監視領域の外縁までの距離、またはパルスレーザ光による有効測定距離以上の適当な値に設定される。
【0024】
測距データ生成部215は、1回の走査ごとに1個の測距データを生成する。そして1個の測距データには、例えば、監視領域全体に相当する角度範囲を所定の角度間隔で割った数に1を加えた数の走査角度と、その走査角度における距離が含まれる。例えば、監視領域全体に相当する角度範囲が180°であり、隣接する走査角度間の間隔が0.25°であれば、一つの測距データには、721個の走査角度と距離の組が含まれる。走査角度は、監視用センサ2の設置位置を原点とし、所定の基準方位と走査方位とがなす角を表す。例えば、監視用センサ2から監視領域を向いたときの正面方向が基準方位に設定され、基準方位に対して左右均等に90°ずつの角度範囲となるように監視領域が設定されると、走査角度は-90°〜90°の範囲内の値となる。
【0025】
なお、検知部21は、探査信号を水平及び垂直方向に2次元に走査し、走査方向と測定距離からなる3次元データを得るように構成してもよい。また、測距方法に関しては、公知の様々な方法を採用すればよく、例えば、位相差方式、三角測量方式などが利用できる。
検知部21は、1回の走査が終了する度に、その走査について生成した測距データを制御部25へ出力する。
【0026】
通信部22は、監視用センサ2を通信回線4を介して警備装置3と通信可能に接続する。そのために、通信部22は、監視用センサ2と警備装置3とを接続する通信回線4に応じたインターフェース回路を有する。そして通信部22は、制御部25により生成された侵入異常信号、妨害検知信号または環境異常信号を警備装置3へ送信する。その際、通信部22は、それらの信号とともに、監視用センサ2の識別番号を警備装置3へ送信してもよい。
【0027】
記憶部23は、例えば、不揮発性の半導体メモリなどを有し、監視用センサ2で利用される各種の情報及びプログラムを記憶する。記憶部23に記憶される情報には、例えば、監視領域情報と、基準データと、現状態情報と、近接物フラグと、外乱フラグがある。また記憶部23は、各走査角度における、検知部21から監視窓27までの距離を記憶する。さらに記憶部23は、過去一定期間内に生成された測距データを記憶してもよい。
【0028】
監視領域情報は、各監視用センサ2が監視対象とする監視領域の範囲を示す情報であり、例えば、監視用センサ2を中心として探査信号を走査する角度範囲と、所定の角度間隔(例えば、0.25°)で隔てられた走査角度ごとの監視用センサ2から監視領域の外縁までの距離が含まれる。あるいは、監視領域情報は、監視用センサ2の設置位置を原点とする2次元座標における、監視領域外縁上の所定距離で隔てられたサンプリング点ごとの位置、または監視領域外縁の座標を表す式の係数を含んでもよい。
監視領域情報は、例えば、監視用センサ2の設置時、監視領域の画定時あるいは変更時などに、例えば通信部22を介して接続される設定用端末(図示せず)または操作部(図示せず)を介して入力される。あるいは、監視領域情報は、監視用センサ2の起動時など、監視領域内に予め存在する物体以外の他の物体が存在しないときに生成された測距データとしてもよい。
【0029】
基準データは、監視領域内に侵入した不審物体を検出するために用いられる、監視領域内に予め存在する物体以外の他の物体が存在しないときに生成された測距データである。基準データは、例えば、監視用センサ2の起動時、あるいは操作部または設定用端末を介して指示されたタイミングにおいて生成された測距データとすることができる。また制御部25が、検知部21により随時生成される測距データに基づいて、走査角度ごとに、過去一定期間内の出現頻度の最も高い距離値を選択し、その選択された距離値に書き換えることにより、基準データを更新してもよい。なお、基準データは、上記の監視領域情報として用いられてもよい。
【0030】
現状態情報は、現時点において、監視領域の一部が監視窓27に付着した付着物によって監視不能となっている状態が一定期間継続している環境異常状態になっているか否かを表す情報である。現時点において環境異常状態になっていれば、現状態情報は、その旨を表す値、例えば、'1'を持つ。一方、現時点において環境異常状態になっていなければ、現状態情報は、その旨を表す値、例えば、'0'を持つ。なお、現状態情報は、制御部25が環境異常状態になったと判定したとき、あるいは、警備員などが設定端末あるいは操作部を介して環境異常状態が解消したことを示す操作を行ったときに、制御部25により書き換えられる。
外乱フラグは、監視窓27に小動物または水滴といった付着物が付着しているか否かを表すフラグである。制御部25が監視窓27に付着物が付着していると判断している間、外乱フラグは、その旨を示す値、例えば、'1'を持つ。一方、制御部25が監視窓27に付着物が付着していないと判断している間、外乱フラグは、その旨を示す値、例えば、'0'を持つ。
近接物フラグは、監視窓27に近接する物体である近接物体が存在するか否かを表すフラグである。なお、近接物体には、監視窓27に付着した付着物も含まれる。制御部25が監視窓27への近接物体が存在すると判断している間、近接物フラグは、その旨を示す値、例えば、'1'を持つ。一方、制御部25が監視窓27に近接した物体が存在していないと判断している間、近接物フラグは、その旨を示す値、例えば、'0'を持つ。
【0031】
除去手段24は、監視窓27に付着した小動物または水滴などの付着物を物理的に除去する手段である。例えば、除去手段24は、圧電素子と、その圧電素子を駆動する駆動回路とを有する。圧電素子は、監視窓27の内面のうち、探査信号の走査範囲と重ならない位置、例えば、上下左右の何れかの端部に固着される。そして圧電素子は、駆動回路から印加される交流駆動信号に応じて励振され、監視窓27の厚さ方向に振動することで、監視窓27に振動を与える。駆動回路は、制御部25の除去手段制御部254から起動信号を受けると、交流駆動信号の出力を開始し、除去手段制御部254から停止信号を受けるまで交流駆動信号の出力を継続する。そして除去手段24は、起動信号を受信してから停止信号を受信するまでの間、動作を継続する。
【0032】
なお、除去手段24は、上記の例に限定されず、例えば、エアーポンプと、エアーポンプから送出される空気を監視窓27の外側表面全体に向けて送風する送風ノズルと、エアーポンプを駆動する駆動回路とを有してもよい。この場合も、駆動回路は、制御部25の除去手段制御部254から起動信号を受けると、エアーポンプを動作させる駆動信号の出力を開始し、除去手段制御部254から停止信号を受けるまで駆動信号の出力を継続する。また、設置環境に応じて、想定される付着物が油膜または水蒸気など、熱または光で除去可能なものであれば、除去手段24は、監視窓27の外側表面に熱または光を伝導または照射する手段であってもよく、環境に応じて適切な除去手段が任意に選択されてよい。
【0033】
制御部25は、少なくとも一つのプロセッサ、タイマ及びその周辺回路を有する。そして制御部25は、監視用センサ2の各部を制御する。また制御部25は、測距データに基づいて、監視領域内に侵入した不審物体を検出し、監視領域の視野妨害の有無及び環境異常状態か否かを判定する。そのために、制御部25は、侵入判定部251と、近接点計測部252と、近接物体判定部253と、除去手段制御部254と、外乱判定部255と、妨害判定部256とを有する。これらの各部は、例えば、制御部25が有するプロセッサ上で実行されるソフトウェアにより実現される機能モジュールとして、監視用センサ2に実装される。
【0034】
侵入判定部251は、最新の測距データを受け取る度に、その最新の測距データと基準データを比較して、物体までの距離が相違しているところを抽出することで、監視領域内に侵入した不審物体を検知する。
図3は、侵入判定部251により実行される侵入判定処理の動作フローチャートである。侵入判定部251は、最新の測距データを受け取る度に、すなわち、検知部21による監視領域の1回の走査が終わる度に以下の侵入判定処理を実行する。
侵入判定部251は、走査角度ごとに、測距データに含まれる距離値と、基準データに含まれる距離値との差を算出する(ステップS101)。そして侵入判定部251は、基準データに示された距離値よりも最新の測距データに示された距離値が所定距離以上監視用センサ2に近い走査角度を侵入物体候補点として抽出する(ステップS102)。なお、所定距離は、例えば、検知対象となる物体の厚さの最小値、例えば、15cmに設定される。
【0035】
侵入判定部251は、侵入物体候補点が存在するか否か判定する(ステップS103)。侵入物体候補点が存在しなければ、侵入判定部251は、監視領域内に侵入物体は存在しないと判定する。そして侵入判定部251は、侵入異常が無いことを制御部25へ通知し、侵入物体判定処理を終了する。
一方、侵入物体候補点が存在する場合、侵入判定部251は、隣接する侵入物体候補点についての距離値の差が所定値以内であれば、その隣接する侵入物体候補点を一つのグループにまとめるよう、ラベリング処理を行う(ステップS104)。なお、この所定値は、例えば10cmに設定される。
そして侵入判定部251は、グループごとの幅を求める(ステップS105)。例えば、グループの幅Wgは、余弦定理に従って、次式で算出される。
【数1】

ただし、d1は、グループの一方の端の侵入物体候補点における距離値であり、d2は、他方の端の侵入物体候補点における距離値である。またθは、測距データに含まれる、隣接する走査角度間の間隔である。そしてnは、そのグループに含まれる侵入物体候補点の数である。
【0036】
侵入判定部251は、ラベリング処理によって作成されたグループのうち、グループの幅Wgが所定幅以上となるグループを、不審物体の可能性がある侵入物体候補グループとして選択する(ステップS106)。この所定幅も、例えば、検知対象となる物体の厚さの最小値、例えば、15cmに設定される。
侵入判定部251は、侵入物体候補グループの中心の侵入物体候補点に相当する走査角度及びその侵入物体候補点における距離値を、監視用センサ2を原点とするその侵入物体候補グループの位置とし、その侵入物体候補グループの位置及び対応する測距データの取得時間を記憶部23に記憶する。
【0037】
侵入判定部251は、最新の測距データから求めた侵入物体候補グループのうち、未だ着目する侵入物体候補グループに設定されていないグループの中から着目する侵入物体候補グループを決定する(ステップS107)。そして侵入判定部251は、着目する侵入物体候補グループと、1回〜数回前の測距データについて求められた侵入物体候補グループである過去候補グループとの間でトラッキング処理を行って、着目する侵入物体候補グループに相当する物体と同一の物体に相当する過去候補グループが存在するか否か判定する(ステップS108)。なお、トラッキング処理として、公知の様々なトラッキング処理の何れかを採用できる。例えば、侵入判定部251は、着目する侵入物体候補グループの位置に最も近い過去候補グループの位置を求め、それらの位置の差が、検出しようとする不審物体の想定される移動速度とそれら二つの候補グループの取得時刻の差との積として定められる移動可能距離以下であれば、着目する侵入物体候補グループとその過去候補グループは同一の物体に対応すると判定する。
【0038】
着目する侵入物体候補グループに相当する物体と同一の物体に相当する過去候補グループが存在する場合、侵入判定部251は、着目する侵入物体候補グループに対して、その過去候補グループに割り当てられた物体識別番号と同一の物体識別番号を割り当て、その物体識別番号を着目する侵入物体候補グループの位置と関連付けて記憶部23に記憶する(ステップS109)。そして侵入判定部251は、同一の物体識別番号が割り当てられた、着目する侵入物体候補グループの位置と最も古い侵入物体候補グループの位置間の距離を、着目する侵入物体候補グループに相当する物体の移動距離として算出する(ステップS110)。
侵入判定部251は、その移動距離が所定値以上か否か判定する(ステップS111)。移動距離が所定値以上であれば、侵入判定部251は、着目する侵入物体候補グループは、監視領域に侵入した不審物体によるものであり、侵入異常が生じたと判定する(ステップS112)。そして侵入判定部251は、侵入異常信号を生成し、その侵入異常信号を制御部25へ通知する。そして侵入判定部251は、侵入判定処理を終了する。
【0039】
一方、ステップS108において、着目する侵入物体候補グループに対応する物体と同一の物体に対応する過去候補グループが存在しない場合、侵入判定部251は、着目する侵入物体候補グループに対して、何れの過去候補グループに割り当てられた物体識別番号とも異なる新規な物体識別番号を関連付け、記憶部23に記憶する(ステップS113)。
ステップS113の後、あるいはステップS111において移動距離が所定値未満である場合、侵入判定部251は、未着目の侵入物体候補グループが存在するか否か判定する(ステップS114)。未着目の侵入物体候補グループが存在する場合(ステップS114−Yes)、侵入判定部251は、ステップS107以降の処理を繰り返す。
一方、全ての侵入物体候補グループが既に着目する侵入物体候補グループに設定されている場合(ステップS114−No)、侵入判定部251は、侵入異常は発生していないと判定する。そして侵入判定部251は、侵入異常が無いことを制御部25へ通知し、侵入判定処理を終了する。
【0040】
近接点計測部252及び近接物体判定部253は、測距データに基づいて監視窓27に近接する近接物体が存在するか否か判定する。
そこで、近接点計測部252は、測距データのうちで、監視窓27近傍となる走査角度の数を計数する。そして近接点計測部252は、その数を記憶部23に書き込む。
近接物体判定部253は、走査方位の総数に対する物体までの距離値が検知部21から監視窓27までの距離と略等しい走査角度の数の割合が所定割合以上である場合に、監視窓27に近接した物体が存在すると判定する。
【0041】
図4は、近接点計測部252及び近接物体判定部253により実行される近接物体判定処理の動作を示すフローチャートである。なお、近接点計測部252及び近接物体判定部253は、最新の測距データを受け取る度に、すなわち、検知部21による監視領域の1回の走査が終わる度に近接物体判定処理を実行する。
近接点計測部252は、最新の測距データにおいて、物体までの距離値が検知部21から監視窓27までの距離と略等しい走査角度を、監視窓27に近接する近接物体が存在している可能性がある走査角度である近接測定点として抽出する(ステップS201)。
具体的には、近接点計測部252は、距離値が所定距離Thd以下となる走査角度を近接測定点として抽出する。所定距離Thdは、検知部21から監視窓27までの距離に小動物の厚さ程度のオフセット値を加えた値、例えば、5cmに設定される。あるいは、近接点計測部252は、各走査角度について、最新の測距データに含まれる距離値と、記憶部23に記憶されている、検知部21から監視窓27までの距離値との差の絶対値を求め、その差の絶対値が所定の閾値以下となった走査角度を近接測定点として抽出してもよい。なお、所定の閾値は、例えば、1cmに設定される。
なお、近接点計測部252は、例えば、モルフォロジーのオープニング演算を行うことにより、隣接した近接測定点が存在しない、独立した近接測定点をノイズとして除去してもよい。また近接点計測部252は、モルフォロジーのクロージング演算を行うことにより、近接測定点で囲まれた、近接測定点でない走査角度も近接測定点としてもよい。
次に、近接点計測部252は、測距データに含まれる近接測定点の数を算出する(ステップS202)。そして近接点計測部252は、近接測定点の数を現時刻とともに記憶部23へ書き込む。
【0042】
近接物体判定部253は、記憶部23から最新の近接測定点数を読み込み、測距データに含まれる距離値が算出された走査角度の総数、すなわち走査方位の総数に対する近接測定点の数の割合が所定の割合Th1以上か否か判定する(ステップS203)。なお、Th1は、例えば、監視窓27に付着する可能性のある小動物の胴体幅に相当する値、例えば、10%に設定される。走査方位の総数に対する近接測定点の数の割合がTh1以上であれば、近接物体判定部253は、監視窓27に付着した付着物など、監視窓27に近接した物体が存在すると判定する。そして近接物体判定部253は、記憶部23に記憶されている近接物フラグの値を、近接物体が存在することを表す値(以下では、便宜上'ON'と表記する)に設定する(ステップS204)。
一方、ステップS203において、走査方位の総数に対する近接測定点の数の割合がTh1未満であれば、近接物体判定部253は記憶部23に記憶されている近接物フラグの値を、近接物体が存在していないことを表す値(以下では、便宜上'OFF'と表記する)に設定する(ステップS205)。
ステップS204またはS205の後、近接点計測部252及び近接物体判定部253は、近接物体判定処理を終了する。
【0043】
近接物体が監視窓27の付着物であれば、監視窓27に振動を与えたり、監視窓27の外側表面に向けて送風することにより、その付着物は監視窓27から除去される可能性が高い。
そこで除去手段制御部254は、監視窓27の近傍に物体が存在していると判定された場合、一定期間にわたって除去手段24を駆動して、監視窓27に付着した付着物を物理的に除去することを図る。
【0044】
図5は、除去手段制御部254により実行される除去手段制御処理の動作を示すフローチャートである。なお、除去手段制御部254は、最新の測距データを受け取る度に、すなわち、検知部21による監視領域の1回の走査が終わる度に除去手段制御処理を実行する。
除去手段制御部254は、除去手段24が既に駆動中か否か判定する(ステップS301)。除去手段254が駆動中でなければ、近接物フラグが前回の除去手段制御処理実行時にOFFであり、今回の除去手段制御処理実行時にONとなったか否か判定する(ステップS302)。近接物フラグがOFFからONに変化したのであれば、除去手段制御部254は、除去手段24へ起動信号を出力し、除去手段24に動作を開始させる(ステップS303)。そして除去手段制御部254は、タイマを起動して、計時を開始する。また除去手段制御部254は、記憶部23に記憶されている最新の近接測定点数を、除去手段24が動作する直前の近接測定点数であることを表す除去前測定点数とする。そして除去手段制御部254は、その近接測定点数と関連付けて、除去前測定点数であることを表すフラグを記憶部23に記憶する。
【0045】
一方、ステップS301にて除去手段24が既に駆動中である場合、起動信号出力からの経過時間が所定期間に達したか否か判定する(ステップS304)。なお、所定期間は、例えば、10秒、30秒または1分間に設定される。
起動信号出力からの経過時間が所定期間に達している場合、除去手段制御部254は、除去手段24へ停止信号を出力し、除去手段24を停止させる(ステップS305)。また除去手段制御部254は、除去手段24を一定期間動作させたこと、及び停止時刻を示す動作ログ情報を記憶部23に書き込む。
【0046】
ステップS303またはステップS305の後、あるいはステップS302にて近接物フラグがOFFからONへ変化したのでない場合、若しくはステップS304にて起動信号出力からの経過時間が所定期間に達していなければ、除去手段制御部254は除去手段制御処理を終了する。そして除去手段制御部254は、ステップS302の処理を実行するために、今回の除去手段制御処理実行時における近接物フラグの値を、近接物フラグそのものとは別個に記憶部23に記憶する。
【0047】
上述したように、近接物体が小動物または水滴など、監視窓27に一時的に付着した付着物であれば、除去手段24が動作することによってその近接物体は監視窓27の表面から除去されたり、その表面に沿って移動する可能性が高い。一方、近接物体が、不審人物により監視窓27を覆うように配置された布、あるいは監視窓27の直前に置かれた板などの遮蔽物であれば、監視窓27に振動を与えたり、監視窓27の表面に向けて送風しても、近接物体は監視窓から除去されず、移動もしない可能性が高い。
そこで外乱判定部255は、近接物体が検出され、かつ除去手段24が一定期間動作した後、あるいは除去手段24の動作中に近接測定点の数が除去手段24の動作開始前よりも減少したか否かに基づいて、除去手段24が停止した後においても検出される近接物体が遮蔽物ではなく監視窓27に一時的に付着した付着物か否か判定する。また外乱判定部255は、環境異常が発生したか否かを判定する。
【0048】
図6は、外乱判定部255により実行される外乱判定処理の動作を示すフローチャートである。なお、外乱判定部255は、最新の測距データを受け取る度に、すなわち、検知部21による監視領域の1回の走査が終わる度に外乱判定処理を実行する。
外乱判定部255は、記憶部23に記憶されている近接物フラグの値が'ON'か否か判定する(ステップS401)。近接物フラグの値が'ON'であれば、外乱判定部255は、記憶部23に記憶されている外乱フラグの値が、監視窓27に付着物が付着していることを表す値(以下では、便宜上'ON'と表記する)か否か判定する(ステップS402)。
外乱フラグの値が、監視窓27に付着物が付着していないことを表す値(以下では、便宜上'OFF'と表記する)であれば、外乱判定部255は、除去手段24が停止した直後か否か判定する(ステップS403)。例えば、外乱判定部255は、動作ログ情報を参照することにより、除去手段24が停止した後の最初の外乱判定処理であると判定した場合、除去手段24が停止した直後であると判定する。
【0049】
除去手段24が動作中であれば(ステップS403−No)、付着物が除去される可能性があるため、外乱判定部255は外乱判定処理を終了する。
一方、除去手段24が停止した直後であれば(ステップS403−Yes)、外乱判定部255は、記憶部23から除去前測定点数を読み込む。さらに外乱判定部255は、最新の近接測定点数を除去後測定点数として読み込む(ステップS404)。そして外乱判定部255は、除去前測定点数から除去後測定点数を引いた測定点減少数を求める(ステップS405)。外乱判定部255は、その測定点減少数が所定の閾値Ths以上か否か判定する(ステップS406)。なお、所定の閾値Thsは、近接物体が存在すると判定するための閾値Th1を全走査方位数に乗じた値以下の値、例えば、全走査方位数の5%に相当する値とすることができる。
【0050】
測定点減少数が閾値Ths未満であれば、外乱判定部255は、近接物体は監視窓27に一時的に付着した付着物ではないと判定する。すなわち、この場合、近接物体は何らかの遮蔽物である可能性がある。そして外乱判定部255は外乱判定処理を終了する。
【0051】
一方、測定点減少数が閾値Ths以上であれば、外乱判定部255は、近接物体は遮蔽物でなく監視窓27に一時的に付着した付着物であると判定する。そして外乱判定部255は、記憶部23に記憶されている外乱フラグの値を'OFF'から'ON'に書き換える(ステップS407)。そして外乱判定部255は、タイマを起動して、付着物が付着している継続時間の計時を開始する(ステップS408)。その後、外乱判定部255は、外乱判定処理を終了する。
【0052】
一方、ステップS402において、外乱フラグの値が'ON'であれば(ステップS402−Yes)、すなわち、既に付着物が監視窓27に付着していることが検知されている場合、外乱判定部255は、付着物が付着している継続時間が所定の環境異常監視期間を越えたか否か判定する(ステップS409)。なお、環境異常監視期間は、例えば、1時間に設定される。
付着物が付着している継続時間が所定の環境異常監視期間を越えた場合、外乱判定部255は、環境異常が発生したと判定する。そして外乱判定部255は、環境異常信号を生成し、その環境異常信号を制御部25へ通知する(ステップS410)。また外乱判定部255は、記憶部23に記憶されている現状態情報の値を、環境異常が発生していることを表す値に書き換える。
ステップS410の後、あるいは、ステップS409にて付着物が付着している継続時間が環境異常監視期間内である場合、外乱判定部255は、外乱判定処理を終了する。
【0053】
また、ステップS401において、近接物フラグの値が'OFF'となっている場合、すなわち、近接物体判定部253によって近接物体は存在しないと判定されている場合(ステップS401−No)、監視窓27に付着物が付着していたとしても、その付着物は既に除去されている。そこで外乱判定部255は、記憶部23に記憶されている外乱フラグの値が'ON'か否か判定する(ステップS411)。外乱フラグの値が'ON'であれば、外乱判定部255は、記憶部23に記憶されている外乱フラグの値を'OFF'に書き換える(ステップS412)。そして外乱判定部255は、タイマをリセットし、付着物が付着している継続時間の計時を停止する(ステップS413)。
ステップS413の後、あるいは、ステップS411にて外乱フラグの値が'OFF'である場合、外乱判定部255は、環境異常が生じていないことを制御部25へ通知した後、外乱判定処理を終了する。
【0054】
なお、現状態情報の値が、環境異常が発生していることを表す値である場合において、付着物有無判定の結果が所定回数連続して付着物が付着していないことを示している場合に、外乱判定部255は、環境異常は解消されたと判定し、記憶部23に記憶されている現状態情報の値を、環境異常が発生していないことを表す値に書き換えてもよい。なお、所定回数は、例えば数回程度に設定される。
また、外乱判定部255は、除去前測定点数から除去後測定点数を引いた測定点減少数が所定の閾値Ths以上か否かを判定し(ステップS405及びステップS406)、閾値Ths以上と判定すると、外乱フラグを'ON'にした(ステップS407)が、これに代えて、除去後測定点数が除去前測定点数よりも所定割合以上少ないか否かを判定するようにしてもよい。この場合、例えば、外乱判定部255は、ステップS405において、前述の測定点減少数を除去前測定点数で除算した測定点減少割合を求め、ステップS406にてこの測定点減少割合が所定閾値Ths'(例えば、0.5など)以上か否かを判定するようにすればよい。
【0055】
妨害判定部256は、最新の測距データを受け取る度に、その最新の測距データと監視領域情報との比較結果に基づいて、監視領域の少なくとも一部の監視が不能になっているか否かを判定する視野妨害判定処理を実行する。
屋外環境では、監視用センサ2が設置され、警備システム1の運用が開始された後に、監視領域内または監視領域の境界近傍の植栽が成長したり、風による飛来物が監視領域内に落下したり、あるいは、監視領域の利用者が柵などを設置することがある。また、不審者が、監視用センサ2による監視を妨害するために、監視領域内に遮蔽物を設置するおそれがある。
このような場合、監視領域の少なくとも一部に探査信号が届かなくなる。すると、監視用センサ2は、探査信号が届かない領域内に存在する物体を検知することはできないので、そのような探査信号が届かない領域は監視用センサ2の死角となる。
死角が生じると、監視用センサ2は、本来検知すべき不審物体を検知できなくなるので、早期に死角が解消されることが好ましい。そこで妨害判定部256は、監視領域内に生じた一定の大きさ以上の死角を検出すると視野妨害異常が発生したと判定する。
【0056】
ただし、上記のように、監視窓27に一時的な付着物が付着していると、その付着物によって一時的に監視領域の一部に探査信号が届かなくなり、死角を生じることがある。また除去手段24が動作中であれば、付着物は除去される可能性がある。そこで、妨害判定部256は、付着物が監視窓27に付着しておらず、かつ、除去手段24が動作中でない場合に限り、視野妨害異常が発生したか否かを判定する。
【0057】
図7は、妨害判定部256により実行される視野妨害判定処理の動作フローチャートである。なお、妨害判定部256は、最新の測距データを受け取る度に、すなわち、検知部21による監視領域の1回の走査が終わる度に視野妨害判定処理を実行する。
妨害判定部256は、除去手段24が動作中か否か判定する(ステップS501)。例えば、妨害判定部256は、タイマが除去手段の動作時間を計時中であれば、除去手段24は動作中であると判定できる。除去手段24が動作中であれば、付着物が監視窓27から除去される可能性があるため、妨害判定部256は、視野妨害判定処理を終了する。
一方、除去手段24が停止中であれば、妨害判定部256は、記憶部23に記憶されている外乱フラグの値が'OFF'になっているか否か判定する(ステップS502)。外乱フラグの値が'ON'である場合(ステップS502−No)、すなわち、付着物が監視窓27に付着している場合、妨害判定部256は、視野妨害判定処理を終了する。
【0058】
一方、外乱フラグの値が'OFF'である場合(ステップS502−Yes)、妨害判定部256は、監視用センサ2が監視領域内で監視可能な面積を算出する(ステップS502)。この監視可能面積Spは、例えば、次式によって算出される。
【数2】

ここでpは、隣接する走査角度間の間隔(角度単位、例えば、0.25°)である。Mは、測距データに含まれる距離値の総数である。diは、測距データに含まれるi番目の走査角度についての距離値である。
【0059】
妨害判定部256は、監視可能面積Spが、監視領域全体の面積Sの所定割合以下か否か判定する(ステップS504)。所定割合は、例えば、1/2に設定される。また、監視領域全体の面積Sは、(2)式における各走査角度の距離値diの代わりに、監視領域情報に含まれる各走査角度の距離値を代入することで求められる。
監視可能面積Spが監視領域の全面積Sの所定割合以下である場合、妨害判定部256は、視野妨害異常が発生したと判定する。そして妨害判定部256は、妨害検知信号を生成し、その妨害検知信号を制御部25へ通知する(ステップS505)。
ステップS504にて監視可能面積Spが監視領域の全面積Sの所定割合よりも多い場合、妨害判定部256は、視野妨害異常は発生していないと判定し、その旨を制御部25へ通知する(ステップS506)。
ステップS505またはステップS506の後、妨害判定部256は視野妨害判定処理を終了する。
なお、妨害判定部256は、ステップS501にて除去手段24が動作中か否かを判定することで、除去手段24が動作中でないことを条件として視野妨害異常が発生したか否かを判定しているが、ステップS501の判定を省略してもよい。この場合、妨害判定部256は、除去手段24が動作中であっても外乱フラグが'OFF'であれば(付着物が監視窓27に付着していなければ)、視野妨害異常が発生したか否かを判定することとなる。
【0060】
図8は、制御部25により実行される物体検出処理の動作を示すフローチャートである。制御部25は、検知部21による監視領域の1回の走査が終わる度に物体検出処理を実行する。
制御部25は、検知部21から測距データを受け取る(ステップS601)。そして制御部25は、測距データを記憶部23に記憶する。また制御部25は、測距データを侵入判定部251、近接点計測部252及び妨害判定部256へ渡す。
侵入判定部251は、侵入判定処理を実行する(ステップS602)。そして侵入判定部251は、監視領域内に侵入した不審物体を検出すると、侵入異常信号を生成し、制御部25へ渡す。制御部25は、侵入異常信号を受け取ったことを示すフラグを記憶部23に記憶する。また侵入判定部251は、侵入異常が生じていないと判定すると、侵入異常が無いことを制御部25へ通知する。そして制御部25は、その通知を受けた時刻を、侵入異常に関する正常復帰時刻として記憶部23に記憶する。なお、侵入判定処理の詳細は、図3とともに上述したとおりである。
【0061】
近接点計測部252及び近接物体判定部253は、近接物体判定処理を実行する(ステップS603)。そして近接点計測部252及び近接物体判定部253は、近接測定点数を求め、その近接測定点数を現時刻とともに記憶部23に書き込む。また近接点計測部252及び近接物体判定部253は、近接物体が存在するか否か判定する。そして近接点計測部252及び近接物体判定部253は、近接物体が存在すると判定すると、記憶部23に記憶されている近接物フラグの値を'ON'とし、逆に、近接物体が存在していないと判定すると、記憶部23に記憶されている近接物フラグの値を'OFF'とする。なお、近接物体判定処理の詳細は、図4とともに上述したとおりである。
【0062】
また除去手段制御部254は、除去手段制御処理を実行する(ステップS604)。そして除去手段制御部254は、近接物体が検知されてから一定期間の間、除去手段24を動作させる。なお、除去手段制御処理の詳細は、図5とともに上述したとおりである。
【0063】
外乱判定部255は、外乱判定処理を実行する(ステップS605)。そして外乱判定部255は、監視窓27に付着物が付着したと判定すると、記憶部23に記憶されている外乱フラグの値を'ON'とし、逆に、監視窓27に付着物が付着していないと判定すると、記憶部23に記憶されている外乱フラグの値を'OFF'とする。また外乱判定部255は、監視窓27に付着物が付着している継続期間が環境異常監視期間を越えた場合、環境異常が発生したと判定し、環境異常信号を制御部25へ渡す。制御部25は、環境異常信号を受け取ったことを示すフラグを記憶部23に記憶する。また外乱判定部255は、環境異常が生じていないと判定すると、環境異常が無いことを制御部25へ通知する。そして制御部25は、その通知を受けた時刻を、環境異常に関する正常復帰時刻として記憶部23に記憶する。なお、外乱判定処理の詳細は、図6とともに上述したとおりである。
【0064】
妨害判定部256は、視野妨害判定処理を実行する(ステップS606)。そして妨害判定部256は、視野妨害が生じていると判定すると、妨害検知信号を生成し、制御部25へ渡す。制御部25は、妨害検知信号を受け取ったことを示すフラグを記憶部23に記憶する。また妨害判定部256は、視野妨害が生じていないと判定すると、妨害異常が無いことを制御部25へ通知する。そして制御部25は、その通知を受けた時刻を、視野妨害異常に関する正常復帰時刻として記憶部23に記憶する。なお、視野妨害判定処理の詳細は、図5とともに上述したとおりである。
【0065】
制御部25は、各部から受け取った侵入異常信号、環境異常信号及び妨害検知信号などの異常信号のうち、未出力の異常信号があるか否か判定する(ステップS607)。例えば、制御部25は、受け取った異常信号ごとに、記憶部23に記憶されている、異常信号の前回送信時刻及び正常復帰時刻を参照する。そして制御部25は、前回送信時刻後に正常復帰時刻が記録されていない異常信号を、未出力の異常信号とする。
未出力の異常信号がある場合、制御部25は、その未出力の異常信号を通信部22を介して警備装置3へ出力する(ステップS608)。そして制御部25は、その出力時刻を、出力した異常信号に対応する前回送信時刻として記憶部23に記憶する。
ステップS608の後、あるいはステップS607にて未出力の異常信号がない場合、制御部25は、物体検知処理を終了する。
なお、ステップS602〜S606の処理の実行順序は上記に限定されず、ステップS602〜S606の何れが先に実行されてもよい。
【0066】
さらに、制御部25は、監視用センサ2が正常動作中か故障中かを表すセンサ状態情報を含むセンサ状態信号を、定期的あるいは不定期的に、通信部22を介して警備装置3へ送信してもよい。
【0067】
図9は、警備装置3の概略構成図である。警備装置3は、操作部31と、センサインターフェース部32と、記憶部33と、制御部34と、センタ通信部35とを有する。
【0068】
操作部31は、例えば、複数の操作ボタンを有する。そしてその操作ボタンの何れかを利用者が押下することにより、操作部31はその操作ボタンに割り当てられた所定の操作信号、または利用者の識別番号及び暗証番号といった各種の入力情報を制御部34へ出力する。そして利用者は、操作部31を操作することで、監視対象建物の警備状態を表す警備モードを変更できる。なお、警備モードの詳細については後述する。
【0069】
センサインターフェース部32は、警備装置3と監視用センサ2とを通信可能に接続する。そのために、センサインターフェース部32は、例えば、警備装置3と監視用センサ2とを接続する通信回線4に応じたインターフェース回路を有する。そしてセンサインターフェース部32は、各種の異常信号及び監視用センサ2の識別コードなどを監視用センサ2から通信回線4を介して受信し、制御部34へ渡す。
また警備装置3は、センサインターフェース部32を介して、監視対象建物またはその周囲に設置された他のセンサ、例えば、建物の出入口に設置される開閉センサ、建物内に設置される人感センサと接続されていてもよい。この場合、センサインターフェース部32は、他のセンサからの異常信号を受信して、制御部34へ渡してもよい。
さらにセンサインターフェース部32は、監視用センサ2または他のセンサから、そのセンサが正常動作中か故障中かを表すセンサ状態情報を含むセンサ状態信号を、定期的あるいは不定期的に受信し、そのセンサ状態情報を記憶部33に記憶させてもよい。
【0070】
記憶部33は、例えば、不揮発性の半導体メモリなどを有し、警備装置3で利用される各種の情報及びプログラムを記憶する。
例えば、記憶部33は、現在設定されている警備モードを表す警備モード情報、警備装置3の識別番号または警備装置3が設置された監視対象建物の識別番号、利用者の識別番号及び暗証番号を記憶する。また記憶部33は、何れかの監視用センサ2から受信した各種異常信号及びその異常信号の受信時刻と、異常信号を発した監視用センサ2の識別番号とを関連付けた異常検知ログを記憶してもよい。さらに記憶部33は、警備装置3に接続された各監視用センサ2の現状態を表す現状態情報を記憶してもよい。この現状体情報は、例えば、監視用センサ2が視野妨害異常、環境異常または侵入異常が検出された状態となっているか、または何の異常も検知されていない正常状態となっているかを表す。さらに記憶部33は、センサ状態情報を記憶してもよい。
【0071】
制御部34は、少なくとも一つのプロセッサ及びその周辺回路を有する。そして制御部34は、警備装置3の各部を制御する。また制御部34は、異常処理部341と、操作部31からの操作信号に従って警備モードを設定するモード設定部342とを有する。
【0072】
異常処理部341は、現在設定されている警備モードにしたがって異常処理を行う。
本実施形態では、警備モードには、警備セットモードと警備解除モードが含まれる。
警備セットモードは、例えば、夜間、休日など、警備システム1が設置された建物及びその周囲に設定された監視領域を含む監視区域が無人となるときに設定される。
異常処理部341は、記憶部33に記憶されている警備モード情報が警備セットモードであることを示している場合、何れかの監視用センサ2または他のセンサから何らかの異常信号を受信したとき、受信した異常信号と、警備装置3または警備装置3が設置された建物の識別コードとを含む異常通報信号を生成する。そして異常処理部341は、センタ通信部35を介して監視センタ装置6へ異常通報信号を送信する。また異常処理部341は、記憶部33に記憶されている異常検知ログに、受信した異常信号に関する情報を書き込む。また異常処理部341は、記憶部33に記憶されている現状態情報を、受信した異常信号に応じて修正する。あるいは、異常処理部341は、操作部31を介して何れかの監視用センサ2の異常が解消されたことを示す操作信号を受信した場合、その監視用センサ2に対応する現状態情報を、正常状態であることを示すように修正してもよい。
【0073】
一方、警備解除モードは、例えば、平日の昼間など、監視区域内に正当な権限を有する利用者が居る場合に設定される。異常処理部341は、記憶部33に記憶されている警備モード情報が警備解除モードであることを示している場合、何れかの監視用センサ2または他のセンサから何らかの異常信号を受信すると、記憶部33に記憶されている異常検知ログに、受信した異常信号に関する情報を書き込む。しかし異常処理部341は、監視センタ装置6への異常通報信号を送信しない。また異常処理部341は、記憶部33に記憶されている現状態情報を修正しない。ただし、異常処理部341は、現在の警備モードが警備解除モードである場合でも、何れかの監視用センサ2から環境異常信号を受け取った場合は、その環境異常信号を含む異常通報信号を生成し、その異常通報信号を監視センタ装置6へ送信してもよい。これにより、警備装置3は、警備解除モード設定中に環境異常により監視用センサ2が監視不能となった場合でも、その旨を監視センタ装置6へ通報できるので、警戒解除モード設定中に監視用センサ2に生じた環境異常を解消させることが可能となる。
【0074】
モード設定部342は、操作部31からの操作信号に従って警備モードを設定する。具体的には、モード設定部342は、操作部31から受け取った利用者の識別番号及び暗証番号が、記憶部33に記憶されている何れかの利用者の識別番号及び暗証番号と一致すると、警備モードの変更を許可する。そしてモード設定部342は、警備モードの変更が許可された状態で、操作部31から警備モードを警備セットモードにする操作信号を受け取ると、記憶部33に記憶されている警備モード情報を警備セットモードを表す値に書き換える。一方、モード設定部342は、警備モードの変更が許可された状態で、操作部31から警備モードを警備解除モードにする操作信号を受け取ると、記憶部33に記憶されている警備モード情報を警備解除モードを表す値に書き換える。
【0075】
なお、記憶部33が、センサ状態情報を記憶している場合、モード設定部342は、そのセンサ状態情報を参照して、各センサが正常動作している場合に限り警備モードを警備セットモードに設定してもよい。さらに、モード設定部342は、何れかの監視用センサ2について環境異常が発生している場合、警備解除モードから警備セットモードに変更することを禁止してもよい。そしてセンサ状態情報が、何れかのセンサが故障中であることを表している場合、あるいは、環境異常が発生している場合、モード設定部342は、図示しないモニタまたはスピーカを通じて、警備セットモードに設定できないこと、及び故障中であるセンサまたは環境異常が発生している監視用センサ2を通知してもよい。
【0076】
センタ通信部35は、警備装置3を公衆通信回線5に接続するためのインターフェース回路を有する。そしてセンタ通信部35は、例えば、監視センタ装置6へ異常通報する場合、制御部34の制御に従って、警備装置3と監視センタ装置6間の接続処理を行う。そしてセンタ通信部35は、警備装置3と監視センタ装置6間で接続が確立された後、制御部34から受け取った異常通報信号を公衆通信回線5を介して監視センタ装置6へ送信する。センタ通信部35は、異常通報信号の送信が終わると、警備装置3と監視センタ装置6間の接続を開放する処理を行う。
【0077】
以上説明してきたように、本発明の一つの実施形態に係る監視用センサは、測距データから、監視窓近傍に位置する物体に相当する近接測定点の数が監視領域全体に相当する全走査方位数に占める割合が所定範囲内であれば、監視窓への付着物である可能性のある、監視窓に近接した物体が存在すると判定する。そしてこの監視用センサは、近接物体が検知されると、除去手段を動作させて監視窓に付着した付着物の除去を図る。そのため、この監視用センサは、監視窓に付着した物体により監視領域の一部を監視できない状態を早期に終了させることができる。またこの監視用センサは、除去手段の動作前後の近接測定点数の比較結果により監視窓に付着物が付着しているか否かを判定するので、近接物体が監視窓に付着した付着物か否かを正確に判定できる。さらにこの監視用センサは、監視窓に付着物が付着していると判定されている間、視野妨害判定処理を停止するので、監視窓の付着物を遮蔽物などの設置による視野妨害と誤判定してしまうことを防止できる。またこの監視用センサは、一定期間以上にわたって監視窓に付着物が付着している状態が継続しても環境異常通報を行うので、環境的な要因によって監視領域の少なくとも一部が遮られた状態が長時間にわたって継続することを防止できる。
【0078】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、視野妨害が生じた状態は、ある程度の期間にわたって継続すると想定される。特に、不審人物が故意に監視領域の一部を監視上の死角にして、その死角内で何らかの不正行為を行おうとする場合、不正行為をなすために一定の期間が必要となる。そこで妨害判定部は、検知部による連続した複数回の走査にわたって、監視領域全体の面積Sに対する監視可能面積Spの割合が所定割合以下となった場合に限り、視野妨害異常が発生したと判定してもよい。これにより、監視用センサは、例えば、飛来する落ち葉などによって探査信号が遮られることにより、瞬間的に死角が生じたような場合に、視野妨害異常の発生を誤検出することを防止できる。
また検知部は、近赤外光線以外の探査信号、例えば、可視光線、超音波、またはミリ波などを探査信号として照射するものでもよい。
このように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0079】
1 警備システム
2 監視用センサ
3 警備装置
4 通信回線
5 公衆通信回線
6 監視センタ装置
21 検知部
22 通信部
23 記憶部
24 除去手段
25 制御部
26 筺体
27 監視窓
211 レーザ発振部
212 走査鏡
213 駆動部
214 受光部
215 測距データ生成部
251 侵入判定部
252 近接点計測部
253 近接物体判定部
254 除去手段制御部
255 外乱判定部
256 妨害判定部
31 操作部
32 センサインターフェース部
33 記憶部
34 制御部
35 センタ通信部
341 異常処理部
342 モード設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域の少なくとも一部が遮蔽物により監視不能となっているか否かを判定する妨害判定処理を実行する妨害判定部と、前記監視領域の少なくとも一部が監視不能と判定された場合に妨害検知信号を出力する出力部とを有する監視用センサであって、
監視窓を有する筺体と、
前記筺体内に配置され、前記監視窓を介して前記監視領域の一端から他端まで探査信号を走査して、前記監視領域内に存在する物体により反射された探査信号を受信することにより、複数の走査方位と該複数の走査方位のそれぞれに対応する前記物体までの距離とを対応付けた測距データを生成する検知部と、
前記測距データにおいて、前記監視窓近傍となる距離に相当する走査方位を近接測定点として抽出する近接点計測部と、
第1の時刻において取得された前記測距データから抽出された前記近接測定点の数である第1近接測定点数に基づき前記監視窓に近接する近接物体が存在するか否か判定する近接物体判定部と、
前記近接物体が存在すると判定されると前記監視窓に付着した付着物を物理的に除去する除去手段を一定期間動作させる除去手段制御部と、
前記除去手段が一定期間動作した後の第2の時刻において取得された前記測距データから抽出された前記近接測定点の数である第2近接測定点数が、前記第1近接測定点数よりも所定閾値以上少ない場合、前記監視窓に前記遮蔽物以外の一時的な付着物が付着していると判定する外乱判定部と、
を有することを特徴とする監視用センサ。
【請求項2】
前記妨害判定部は、前記監視窓に前記一時的な付着物が付着していないと判定されている場合に前記妨害判定処理を実行する、請求項1に記載の監視用センサ。
【請求項3】
前記検知部は、前記探査信号による前記監視領域の走査を周期的に行って、該走査を行う度に前記測距データを生成し、
前記外乱判定部は、前記測距データが生成される度に、当該測距データに基づいて前記監視窓に前記一時的な付着物が付着しているか否かの判定を行い、前記監視窓に前記一時的な付着物が付着していると判定された状態が所定時間継続すると前記監視領域の少なくとも一部を監視できない環境異常が発生したと判定し、
前記出力部は、前記環境異常が発生した場合に前記環境異常が発生したことを示す環境異常信号を出力する、請求項1または2に記載の監視用センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−38078(P2012−38078A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177537(P2010−177537)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】