説明

目地用伸縮手摺

【課題】伸縮作動が円滑であり、かつ外的美観に優れた目地用伸縮手摺を提供する。
【解決手段】第一固定パネル10Aと、第一固定パネル10A内に進退可能に嵌挿される中間パネル10Bと、中間パネル10B内に進退可能に嵌挿される第二固定パネル10Cとを備えた目地用伸縮手摺1にあって、第一固定パネル10A内に中間パネル10Bの進退方向に沿う第一案内レール22a,22bを配設し、中間パネル10Bの後端部に、第一案内レール22a,22bに当接して中間パネル10Bの後部を支持する第一回転ローラ44a,44bを配設するとともに、中間パネル10B内に第二固定パネル10Cの進退方向に沿う第二案内レール46a,46bを配設し、第二固定パネル10Cの後端部に、第二案内レール46a,46bに当接して中間パネル10Bの前部を支持する第二回転ローラ62a,62bを配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する建物躯体間に位置する目地を横断して両建物躯体を結ぶ通路の、その側部の目地位置に配設される目地用伸縮手摺に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地震による被害を最小限に留めるために、緩衝機能を備えた免震装置によって下部を支持した建物が多く建設されている。
【0003】
かかる免震構造の建物にあって、隣接する建物躯体間に位置する目地を横断して両建物躯体を結ぶ渡り廊下等の通路の、前記目地部分に、地震時における両建物躯体の相対変位に追従する目地カバー装置を配設する場合、その床面には公知の床用目地カバー装置が適用される。また、通路の側部の目地位置に適用し得るものとしては、両建物躯体の相対変位に追従して伸縮する目地用伸縮手摺が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この目地用伸縮手摺aは、図16に示すように、矩形筐体状の第一固定パネルbと、該第一固定パネルb内に進退可能に嵌挿されて、該第一固定パネルbの前端部側から引き出される矩形筐体状の中間パネルcと、該中間パネルc内に進退可能に嵌挿されて、該中間パネルcの前端部側から引き出される矩形筐体状の第二固定パネルdとを備えており、その嵌挿側と被嵌挿側とが夫々上下二箇所に設けられた長手方向(目地に直交する方向)に延在する連結手段eによって目地に沿う方向に相対移動可能で、かつ目地に直交する方向及び上下方向の相対移動が不能となるように連結されている。この各連結手段eは、被嵌挿側となる第一固定パネルb及び中間パネルcの内側面に夫々設けられた長手方向に延在するレール部f1 ,f2 と、該レール部f1 ,f2 がその長手方向に移動可能に嵌合されるように嵌挿側となる中間パネルc及び第二固定パネルdの内側面に夫々設けられた長手方向に延在する案内溝部g1 ,g2 とによって構成されており、嵌挿側となる中間パネルc及び第二固定パネルdの各側板h1 ,h2 には案内溝部g1 ,g2 に対応する位置に、レール部f1 ,f2 を挿通させるための長孔j1 ,j2 が開口されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−144373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の目地用伸縮手摺aにあっては、第一固定パネルbと中間パネルcと第二固定パネルdとを長手方向に移動可能に連結する連結手段eが、被嵌挿側の内側面に夫々設けられた長手方向に延在するレール部f1 ,f2 と、嵌挿側の内側面に夫々設けられて、前記レール部f1 ,f2 が長手方向に移動可能に嵌合される案内溝部g1 ,g2 とによって構成されており、その移動態様が摺接状態でのスライド移動であるため、移動時における摩擦抵抗が大きく、伸縮作動の円滑性に欠けるという問題点があった。また、中間パネルc及び第二固定パネルdの側板h1 ,h2 には、レール部f1 ,f2 を夫々挿通させるための長孔j1 ,j2 が開口されているが、通常時には中間パネルcの長孔j1 が外面に常時露出しており、地震時において目地用伸縮手摺aが伸長すると第二固定パネルdの長孔j2 も外面に露出するため、外的美観に劣るという問題点があった。
【0007】
本発明は、かかる従来構成の問題点を解消するためになされたものであって、伸縮作動が円滑であり、かつ外的美観に優れた目地用伸縮手摺を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、隣接する建物躯体間に位置する目地を横断して両建物躯体を結ぶ通路の、その側部の目地位置に配設されるものであって、矩形筐体状の第一固定パネルと、該第一固定パネル内に進退可能に嵌挿されて、該第一固定パネルの前端部側から引き出される矩形筐体状の中間パネルと、該中間パネル内に進退可能に嵌挿されて、該中間パネルの前端部側から引き出される矩形筐体状の第二固定パネルとを備え、該第二固定パネルと中間パネル及び第一固定パネルが目地と直交する方向に伸縮可能に連結されるとともに、第一固定パネル及び第二固定パネルの建物躯体側に位置する夫々の端部が、該建物躯体に水平回動可能に連結された目地用伸縮手摺において、第一固定パネル内に中間パネルの進退方向に沿う第一案内レールが配設され、中間パネルの後端部に、前記第一案内レールに当接して中間パネルの後部を支持する第一回転ローラが配設されるとともに、中間パネル内に第二固定パネルの進退方向に沿う第二案内レールが配設され、第二固定パネルの後端部に、前記第二案内レールに当接して中間パネルの前部を支持する第二回転ローラが配設されていることを特徴とする目地用伸縮手摺である。
【0009】
ここで、目地用伸縮手摺は、目地と直交する方向に伸縮可能に連結された矩形筐体状の第一固定パネルと中間パネル及び第二固定パネルの夫々の上端面が手摺として機能する。
【0010】
前記目地用伸縮手摺にあって、第一案内レールが、第一固定パネルの少なくとも内部下縁の、進退移動する中間パネルの左右両側に対応する位置に左右一対で配設され、各第一案内レールに当接する左右一対の第一回転ローラが中間パネルの左右両側に突出した状態で配設されるとともに、第二案内レールが、中間パネルの少なくとも内部上縁の、進退移動する第二固定パネルの左右両側に対応する位置に左右一対で配設され、各第二案内レールに当接する左右一対の第二回転ローラが第二固定パネルの左右両側に突出した状態で配設されている構成が提案され得る。
【0011】
また、左右一対の第一案内レールの前端近傍に、中間パネルの左右側面に当接する第一案内ローラが左右一対で配設され、左右一対の第二案内レールの前端近傍に、第二固定パネルの左右側面に当接する第二案内ローラが左右一対で配設されている構成が提案され得る。
【0012】
さらに、中間パネルの後端部と第二固定パネルの前端部間に、常時は中間パネルを第二固定パネル側に付勢して中間パネルを第二固定パネルに外嵌させる引張バネが張設されている構成が提案され得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上述したように、第一固定パネル内に中間パネルの進退方向に沿う第一案内レールが配設され、中間パネルの後端部に、前記第一案内レールに当接して中間パネルの後部を支持する第一回転ローラが配設されるとともに、中間パネル内に第二固定パネルの進退方向に沿う第二案内レールが配設され、第二固定パネルの後端部に、前記第二案内レールに当接して中間パネルの前部を支持する第二回転ローラが配設されている目地用伸縮手摺であるから、第一固定パネル内を進退方向に移動する中間パネルの移動時に、第一固定パネルの第一案内レールに当接した中間パネルの第一回転ローラが転動し、また、中間パネル内を進退方向に移動する第二固定パネルの移動時に、中間パネルの第二案内レールに当接した第二固定パネルの第二回転ローラが転動するので、中間パネル及び第二固定パネルの移動時における摩擦抵抗が大幅に低減され、極めて円滑な伸縮作動が得られる。また、中間パネルと第二固定パネルの側板に露出する従来構成の長孔j1 ,j2 (図16参照)がないため、外的美観に優れたものとなる。
【0014】
前記目地用伸縮手摺にあって、第一案内レールが、第一固定パネルの少なくとも内部下縁の、進退移動する中間パネルの左右両側に対応する位置に左右一対で配設され、各第一案内レールに当接する左右一対の第一回転ローラが中間パネルの左右両側に突出した状態で配設されるとともに、第二案内レールが、中間パネルの少なくとも内部上縁の、進退移動する第二固定パネルの左右両側に対応する位置に左右一対で配設され、各第二案内レールに当接する左右一対の第二回転ローラが第二固定パネルの左右両側に突出した状態で配設されている構成にあっては、中間パネルの第一回転ローラ及び第二固定パネルの第二回転ローラが、当該パネルの左右両側に夫々左右一対で配設されていることにより、支持される中間パネルの重量が左右のローラに分散されて、中間パネル及び第二固定パネルの移動時における安定性を向上させることができる。また、第一案内レールが、第一固定パネルの少なくとも内部下縁に配設され、第二案内レールが、中間パネルの少なくとも内部上縁に配設されていることにより、目地用伸縮手摺の伸長状態において、第一固定パネルの内部下縁の第一案内レールに当接する中間パネルの第一回転ローラを介して中間パネルの後部が支持され、中間パネルの内部上縁の第二案内レールに当接する第二固定パネルの第二回転ローラを介して中間パネルの前部が支持されるので、何れの建物躯体にも連結されていない中間パネルを、第一固定パネルと第二固定パネル間に安定的に保持することができる。
【0015】
また、左右一対の第一案内レールの前端近傍に、中間パネルの左右側面に当接する第一案内ローラが左右一対で配設され、左右一対の第二案内レールの前端近傍に、第二固定パネルの左右側面に当接する第二案内ローラが左右一対で配設されている構成にあっては、第一固定パネル内を進退方向に移動する中間パネルの移動時に、該中間パネルの左右側面に左右一対の第一案内ローラが当接して回転し、また、中間パネル内を進退方向に移動する第二固定パネルの移動時に、該第二固定パネルの左右側面に左右一対の第二案内ローラが当接して回転するので、中間パネル及び第二固定パネルの移動時における左右方向のガタ付きが防止され、円滑な移動が可能となる。また、第一案内ローラが第一案内レールの前端近傍に配設されており、第二案内ローラが第二案内レールの前端近傍に配設されていることにより、第一固定パネルの前端部側から中間パネルが引き出されると、第一案内レールを転動する中間パネルの第一回転ローラが第一案内ローラに当接し、中間パネルの前端部側から第二固定パネルが引き出されると、第二案内レールを転動する第二固定パネルの第二回転ローラが第二案内ローラに当接するため、第一案内ローラを中間パネルの引き出し時における抜け止め用のストッパーとしても機能させることができ、第二案内ローラを第二固定パネルの引き出し時における抜け止め用のストッパーとしても機能させることができる。
【0016】
さらに、中間パネルの後端部と第二固定パネルの前端部間に、常時は中間パネルを第二固定パネル側に付勢して中間パネルを第二固定パネルに外嵌させる引張バネが張設されている構成にあっては、常時は引張バネの付勢力を介して中間パネルが第二固定パネルに外嵌される状態を保持することができる。これにより、中間パネルの自由移動が規制され、中間パネルの自由移動に起因する各パネル相互間の隙間への指の巻き込みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかる目地用伸縮手摺1の施工状態の正面図である。
【図2】同上の施工状態の平面図である。
【図3】本発明にかかる目地用伸縮手摺1の一部切欠拡大正面図である。
【図4】第一固定パネル10Aの正面図である。
【図5】(A)は第一固定パネル10Aの後端部側の側面図、(B)は前端部側の側面図である。
【図6】(A)は第一固定パネル10Aの平面図、(B)は要部の拡大図である。
【図7】中間パネル10Bの正面図である。
【図8】(A)は中間パネル10Bの後端部側の側面図、(B)は前端部側の側面図である。
【図9】(A)は中間パネル10Bの平面図、(B)は要部の拡大図である。
【図10】第二固定パネル10Cの正面図である。
【図11】(A)は第二固定パネル10Cの後端部側の側面図、(B)は前端部側の側面図である。
【図12】(A)は第二固定パネル10Cの平面図、(B)は要部の拡大図である。
【図13】第一固定パネル10Aと中間パネル10Bと第二固定パネル10Cの連結関係を示す目地用伸縮手摺1の一部切欠正面図である。
【図14】(A)は目地用伸縮手摺1の通常時の状態を示す一部切欠平面図、(B)は目地用伸縮手摺1の収縮状態を示す一部切欠平面図である。
【図15】(A)は目地用伸縮手摺1の伸長状態を示す一部切欠平面図、(B)は隣接する建物躯体が前後方向に相対変位した時の目地用伸縮手摺1の追従状態を示す一部切欠平面図である。
【図16】従来の連結手段eの構成を示す目地用伸縮手摺aの部分拡大側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の一実施例を、図1〜図15に基づいて説明する。
【0019】
本発明に係る目地用伸縮手摺1は、隣接する建物躯体間に位置する目地を横断して両建物躯体を結ぶ通路の、その側部の目地位置に配設されている。ここで、図示省略されているが、隣接する建物躯体は、その一方あるいは両方とも、緩衝機能を備えた免震装置によって下部が支持されており、免震構造となっている。そして、図1に示すように、一方の建物躯体xから支持受縁2が水平状に突成されており、該支持受縁2上に、他方の建物躯体(図示省略)から差し渡された渡り廊下yの先端部が支持部材3を介して支持されている。ここで、該支持部材3としては、積層ゴムや上面にベアリングボール等からなる滑性面を備えたものが適用され得る。そして、該支持部材3の下部を支持受縁2に固定して、該支持部材3上に前記渡り廊下yの先端部を乗載することにより、該渡り廊下yを水平方向に相対的に揺動可能としている。また、該渡り廊下yの先端部と、建物躯体xとの間には目地sとしての所定幅の間隙が設けられている。
【0020】
建物躯体xには、図2に示すように、渡り廊下yに連続する廊下4が形成されており、この廊下4と渡り廊下yとによって、隣接する建物躯体間に位置する目地sを横断して両建物躯体を結ぶ通路5が構成されている。そして、この通路5の床面6には、目地sに位置して、少なくとも目地sに直交する方向、及び目地sに沿う方向の相対変位に追従し得る公知構造の床用目地カバー装置7が配設されており、該床用目地カバー装置7によって床面6の目地sが遮蔽されている。
【0021】
前記通路5の側部には、その長手方向に沿って側壁8,8が立設され、該側壁8,8の、前記目地sに対応する位置に形成された所定幅の間隙部に、本発明に係る目地用伸縮手摺1,1が夫々配設されている。
【0022】
この目地用伸縮手摺1は、図13に示すように、矩形筐体状の第一固定パネル10Aと、該第一固定パネル10A内に進退可能に嵌挿されて、該第一固定パネル10Aの前端部側から引き出される矩形筐体状の中間パネル10Bと、該中間パネル10B内に進退可能に嵌挿されて、該中間パネル10Bの前端部側から引き出される矩形筐体状の第二固定パネル10Cとを備えている。
【0023】
第一固定パネル10Aは、図4に示すように、上下位置に配設された横枠杆11a,11bと、該横枠杆11a,11bの長手方向両端部に配設された縦枠杆12a,12bとを矩形状に組み付けた枠体13を左右両側に対設し、該枠体13,13を、図5,図6に示すように、幅方向の複数の横杆14で連結することにより偏平な立体形状に形成されている。また縦枠杆12a,12bには複数の補強桟杆15が横架されている。第一固定パネル10Aは、左右側面が左右側板17,17で遮蔽されており、上面は天板18、下面は底板19、後面は後側板20で夫々遮蔽されている。第一固定パネル10Aの前端面は内部と連通する挿通口21(図5(B)参照)として開口されており、該挿通口21から中間パネル10B(図13参照)が嵌挿される。
【0024】
第一固定パネル10Aの内部下縁及び内部上縁で左右両側に配設された四本の横枠杆11a,11a,11b,11bは角パイプからなり、内部下縁の横枠杆11a,11aの上面と、内部上縁の横枠杆11b,11bの下面が夫々左右一対の第一案内レール22a,22bとなっている。また、該第一案内レール22a,22bの前端近傍には、水平回転可能な第一案内ローラ23a,23bが夫々左右一対で配設されており、該第一案内ローラ23a,23bは、挿通口21から嵌挿された中間パネル10B(図13参照)の左右側面に当接されて、該中間パネル10Bの進退移動時に回転し、該中間パネル10Bの左右方向のガタ付きを防止するするようになっている。また、第一案内レール22a,22bの前端近傍には、前記第一案内ローラ23a,23bの後部側に位置させて角パイプからなるストッパー杆24a,24bが夫々左右一対で固着されている。尚、該ストッパー杆24a,24bは必ずしも必要なものではなく、これを除去してその位置に第一案内ローラ23a,23bを配設することにより、該第一案内ローラ23a,23bによって中間パネル10Bの引き出し時における抜け止め用のストッパーとしての機能も得られるようにしてもよい。
【0025】
また、角パイプからなる前記四本の横枠杆11a,11a,11b,11bの内側面は、夫々左右一対の第一側面案内レール25a,25bとなっており、該第一側面案内レール25a,25bには後述する中間パネル10Bの第一側面ローラ45a,45bが当接される。
【0026】
第一固定パネル10Aの後端部は、他方の建物躯体を構成する側壁8に取付けブラケット26aを介して水平回動可能に連結される。該取付けブラケット26aは、複数のアンカーボルト28とナット29により側壁8の端面に固定される取付杆27と、該取付杆27の上下両端から延設された水平状の支持板30,30に対向状に突設された上下一対の支軸31,31とを備えており、該支軸31,31を第一固定パネル10Aの後端部の上下位置に形成された透孔32,32に挿通させることにより、第一固定パネル10Aの後端部を隣接する側壁8に水平回動可能に連結するようにしている。
【0027】
中間パネル10Bは、図7に示すように、上下位置に配設された横枠杆33a,33bと、該横枠杆33a,33bの長手方向両端部に配設された縦枠杆34a,34bとを矩形状に組み付けた枠体35を左右両側に対設し、該枠体35,35を、図8,図9に示すように、幅方向の複数の横杆36で連結することにより偏平な立体形状に形成されている。また縦枠杆34a,34bには複数の補強桟杆37が横架されている。該中間パネル10Bは、左右側面が左右側板38,38で遮蔽されており、上面は天板39、下面は底板40、後面は後側板41で夫々遮蔽されている。中間パネル10Bの前端面は内部と連通する挿通口42(図8(B)参照)として開口されており、該挿通口42から第二固定パネル10C(図13参照)が嵌挿される。
【0028】
中間パネル10Bの後端部には、その上下位置に支持ブラケット43a,43bが後方突設されており、該支持ブラケット43a,43bには、上述した第一固定パネル10Aの第一案内レール22a,22bに当接して中間パネル10Bの後部を支持する第一回転ローラ44a,44bが配設されている。該第一回転ローラ44a,44bは夫々左右一対に設けられ、図8(A),図9に示すように、中間パネル10Bの左右両側に突出した状態で配設されている。これにより、第一固定パネル10A内を進退移動する中間パネル10Bの左右両側に対応する位置に配設された第一案内レール22a,22b(図4参照)に第一回転ローラ44a,44bが当接し得るようになっている。また、支持ブラケット43a,43bには、上述した第一固定パネル10Aの第一側面案内レール25a,25bの内側面に当接する水平回転可能な第一側面ローラ45a,45bが夫々左右一対で配設されており、該第一側面ローラ45a,45bによって、中間パネル10Bの進退移動時における中間パネル10Bの後部側の左右方向のガタ付きを防止するようにしている。
【0029】
中間パネル10Bの内部下縁及び内部上縁で左右両側に配設された四本の横枠杆33a,33a,33b,33bは角パイプからなり、内部下縁の横枠杆33a,33aの上面と、内部上縁の横枠杆33b,33bの下面が夫々左右一対の第二案内レール46a,46bとなっている。また、該第二案内レール46a,46bの前端近傍には、水平回転可能な第二案内ローラ47a,47bが夫々左右一対で配設されており、該第二案内ローラ47a,47bは、挿通口42から嵌挿された第二固定パネル10C(図13参照)の左右側面に当接されて、該第二固定パネル10Cの進退移動時に回転し、該第二固定パネル10Cの左右方向のガタ付きを防止するようになっている。
【0030】
また、角パイプからなる前記四本の横枠杆33a,33a,33b,33bの内側面は、夫々左右一対の第二側面案内レール48a,48bとなっており、該第二側面案内レール48a,48bには後述する第二固定パネル10Cの第二側面ローラ63a,63bが当接される。
【0031】
第二固定パネル10Cは、図10に示すように、上下位置に配設された横枠杆49a,49bと、該横枠杆49a,49bの長手方向両端部に配設された縦枠杆50a,50bとを矩形状に組み付けた枠体51を左右両側に対設し、該枠体51,51を、図11,図12に示すように、幅方向の複数の横杆52で連結することにより偏平な立体形状に形成されている。また縦枠杆50a,50bには複数の補強桟杆54が横架されている。該第二固定パネル10Cは、左右側面が左右側板55,55で遮蔽されており、上面は天板56、下面は底板57、前面は前側板58で夫々遮蔽されている。ここで、前側板58は、その左右の幅寸法及び上下の長さ寸法が中間パネル10Bの幅寸法及び長さ寸法と略同一となるように設定されている。これにより、図3に示すように、中間パネル10Bが第二固定パネル10Cに外嵌されると、前側板58と中間パネル10Bが整一に連続する外観を得られるようになっている。また、第二固定パネル10Cの後端面は内部と連通する挿通口59(図11(A)参照)として開口されており、該挿通口59には後述する複数の引張バネ60が挿通される。
【0032】
第二固定パネル10Cの後端部には、その上下位置に支持ブラケット61a,61bが後方突設されており、該支持ブラケット61a,61bには、上述した中間パネル10Bの第二案内レール46a,46bに当接して中間パネル10Bの前部を支持する第二回転ローラ62a,62bが配設されている。該第二回転ローラ62a,62bは夫々左右一対に設けられ、図11(A),図12に示すように、第二固定パネル10Cの左右両側に突出した状態で配設されている。これにより、中間パネル10B内を進退移動する第二固定パネル10Cの左右両側に対応する位置に配設された第二案内レール46a,46b(図7参照)に第二回転ローラ62a,62bが当接し得るようになっている。また、支持ブラケット61a,61bには、上述した中間パネル10Bの第二側面案内レール48a,48bの内側面に当接する水平回転可能な第二側面ローラ63a,63bが夫々左右一対で配設されており、該第二側面ローラ63a,63bによって、第二固定パネル10Cの進退移動時における第二固定パネル10Cの後部側の左右方向のガタ付きを防止するようにしている。
【0033】
第二固定パネル10Cの前端部は、一方の建物躯体xを構成する側壁8に取付けブラケット26bを介して水平回動可能に連結される。該取付けブラケット26bは、上述した第一固定パネル10Aの取付けブラケット26aと同様にように、複数のアンカーボルト28とナット29により側壁8の端面に固定される取付杆27と、該取付杆27の上下両端から延設された水平状の支持板30,30に対向状に突設された上下一対の支軸31,31とを備えており、該支軸31,31を第二固定パネル10Cの後端部の上下位置に挿通させることにより、第二固定パネル10Cの前端部を隣接する側壁8に水平回動可能に連結するようにしている。
【0034】
また、中間パネル10Bの後端部に配設された左右一対の縦枠杆34b,34b間には、図7に示すように、複数のバネ掛け杆65が上下方向に所定間隔で横設されており、第二固定パネル10Cの前端部に配設された左右一対の縦枠杆50a,50a間には、図10に示すように、前記各バネ掛け杆65に夫々対応する高さ位置にバネ掛け杆66が横設されている。この同一高さ位置に横設された各一対のバネ掛け杆65とバネ掛け杆66には、図13に示すように、引張バネ60の一端と他端を夫々係合させることによって該引張バネ60が中間パネル10B及び第二固定パネル10C内に挿通された状態で張設されている。そして、このように、中間パネル10Bの後端部と第二固定パネル10Cの前端部間に張設された各引張バネ60によって、図3に示すように、常時は中間パネル10Bを第二固定パネル10C側に付勢して中間パネル10Bが第二固定パネル10Cに外嵌された状態を保持するようになっている。これにより、中間パネル10Bの自由移動が規制され、中間パネル10Bの自由移動に起因する各パネル10A,10B,10C相互の嵌合部の隙間への指の巻き込みを防止することができるようにしている。
【0035】
かかる構成にあって、図13に示すように、第一固定パネル10Aと中間パネル10Bと第二固定パネル10Cとが伸縮可能に連結され、かつ、図2に示すように、第一固定パネル10A及び第二固定パネル10Cの建物躯体側に位置する夫々の端部が、取付けブラケット26a,26bを介して該建物躯体を構成する側壁8,8に対して水平回動可能に連結された設置状態において、目地用伸縮手摺1は、常時は、図14(A)に示すように、引張バネ60(図3参照)の付勢力を介して中間パネル10Bが第二固定パネル10Cに外嵌された状態に保持されている。この状態にあって、第一固定パネル10Aの天板18と中間パネル10Bの天板39が通常時における手摺として機能する。
【0036】
一方、地震時に、隣接する建物躯体が近接方向に相対変位すると、図14(B)に示すように、第一固定パネル10A内に中間パネル10B及び第二固定パネル10Cがその変位量に応じて嵌挿されて目地用伸縮手摺1が収縮し、その近接方向の相対変位に追従する。また、隣接する建物躯体が離隔方向に相対変位すると、図15(A)に示すように、中間パネル10Bから第二固定パネル10Cがその変位量に応じて引き出されて目地用伸縮手摺1が伸長し、その離隔方向の相対変位に追従する。また、隣接する建物躯体が前後方向(目地sに沿う方向)に相対変位すると、図15(B)に示すように、第一固定パネル10Aの後端部と第二固定パネル10Cの前端部がその変位量に応じて取付けブラケット26a,26bの支軸31,31を中心に水平回動し、その前後方向の相対変位に追従する。尚、この目地用伸縮手摺1の水平回動による追従作用は、図15(A)に示した目地用伸縮手摺1の伸長状態時のみならず、通常状態及び収縮状態であっても得ることができる。
【0037】
そして、本発明にかかる目地用伸縮手摺1によれば、第一固定パネル10A内を進退方向に移動する中間パネル10Bの移動時に、第一固定パネル10Aの第一案内レール22a,22bに当接した中間パネル10Bの第一回転ローラ44a,44bが転動し、また、中間パネル10B内を進退方向に移動する第二固定パネル10Cの移動時に、中間パネル10Bの第二案内レール46a,46bに当接した第二固定パネル10Cの第二回転ローラ62a,62bが転動するので、中間パネル10B及び第二固定パネル10Cの移動時における摩擦抵抗が大幅に低減され、極めて円滑な伸縮作動が得られる。また、中間パネル10Bと第二固定パネル10Cの側板に露出する従来構成の長孔j1 ,j2 (図16参照)がないため、優れた外的美観を呈するものとなる。
【0038】
前記目地用伸縮手摺1にあって、第一案内レール22a,22aが、第一固定パネル10Aの少なくとも内部下縁の、進退移動する中間パネル10Bの左右両側に対応する位置に左右一対で配設され、各第一案内レール22a,22aに当接する左右一対の第一回転ローラ44a,44aが中間パネル10Bの左右両側に突出した状態で配設されるとともに、第二案内レール46b,46bが、中間パネル10Bの少なくとも内部上縁の、進退移動する第二固定パネル10Cの左右両側に対応する位置に左右一対で配設され、各第二案内レール46b,46bに当接する左右一対の第二回転ローラ62b,62bが第二固定パネル10Cの左右両側に突出した状態で配設されていることにより、支持される中間パネル10Bの重量が左右の第一回転ローラ44a,44a及び第二回転ローラ62b,62bに分散されて、中間パネル10B及び第二固定パネル10Cの移動時における安定性を向上させることができる。また、第一案内レール22a,22aが、第一固定パネル10Aの少なくとも内部下縁に配設され、第二案内レール46b,46bが、中間パネル10Bの少なくとも内部上縁に配設されていることにより、目地用伸縮手摺1の伸長状態において、第一固定パネル10Aの内部下縁の第一案内レール22a,22aに当接する中間パネル10Bの第一回転ローラ44a,44aを介して中間パネル10Bの後部が支持され、中間パネル10Bの内部上縁の第二案内レール46b,46bに当接する第二固定パネル10Cの第二回転ローラ62b,62bを介して中間パネル10Bの前部が支持されるので、何れの建物躯体にも連結されていない中間パネル10Bを、第一固定パネル10Aと第二固定パネル10C間に安定的に保持することができる。
【0039】
また、図13に示すように、夫々左右一対の第一案内レール22a,22bの前端近傍に、中間パネル10Bの左右側面に当接する第一案内ローラ23a,23bが夫々左右一対で配設され、夫々左右一対の第二案内レール46a,46bの前端近傍に、第二固定パネル10Cの左右側面に当接する第二案内ローラ47a,47bが夫々左右一対で配設されているので、第一固定パネル10A内を進退方向に移動する中間パネル10Bの移動時に、該中間パネル10Bの左右側面に夫々左右一対の第一案内ローラ23a,23bが当接して回転し、また、中間パネル10B内を進退方向に移動する第二固定パネル10Cの移動時に、該第二固定パネル10Cの左右側面に夫々左右一対の第二案内ローラ47a,47bが当接して回転するので、中間パネル10B及び第二固定パネル10Cの進退移動時における左右方向のガタ付きが防止され、円滑に移動させることができる。また、第一案内ローラ23a,23bが第一案内レール22a,22bの前端近傍に配設されており、第二案内ローラ47a,47bが第二案内レール46a,46bの前端近傍に配設されていることにより、第一固定パネル10Aの前端部側から中間パネル10Bが引き出されると、第一案内レール22a,22bを転動する中間パネル10Bの第一回転ローラ44a,44bが第一案内ローラ23a,23bに当接し、中間パネル10Bの前端部側から第二固定パネル10Cが引き出されると、第二案内レール46a,46bを転動する第二固定パネル10Cの第二回転ローラ62a,62bが第二案内ローラ47a,47bに当接するため、第一案内ローラ23a,23bを中間パネル10Bの引き出し時における抜け止め用のストッパーとしても機能させることができ、第二案内ローラ47a,47bを第二固定パネル10Cの引き出し時における抜け止め用のストッパーとしても機能させることができる。
【0040】
さらに、図3に示すように、中間パネル10Bの後端部と第二固定パネル10Cの前端部間に、常時は中間パネル10Bを第二固定パネル10C側に付勢して中間パネル10Bを第二固定パネル10Cに外嵌させる引張バネ60が張設されているので、常時は引張バネ60の付勢力を介して中間パネル10Bが第二固定パネル10Cに外嵌される状態を保持することができる。これにより、中間パネル10Bの自由移動が規制され、中間パネル10Bの自由移動に起因する各パネル10A,10B,10C相互間の隙間への指の巻き込みを防止することができる。
【0041】
尚、実施例においては、第二固定パネル10Cの端部を、取付けブラケット26bを介して一方の建物躯体x側の側壁8に連結するようにしているが、建物躯体x側に側壁8がない構造の建物躯体にあっては、建物躯体の壁面や、壁面に近接して立設された支柱に対して、取付けブラケット26bを介して第二固定パネル10Cの端部を水平回動可能に連結することも可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 目地用伸縮手摺
5 通路
10A 第一固定パネル
10B 中間パネル
10C 第二固定パネル
22a,22b 第一案内レール
23a,23b 第一案内ローラ
44a,44b 第一回転ローラ
46a,46b 第二案内レール
47a,47b 第二案内ローラ
60 引張バネ
62a,62b 第二回転ローラ
s 目地
x 建物躯体
y 渡り廊下(建物躯体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する建物躯体間に位置する目地を横断して両建物躯体を結ぶ通路の、その側部の目地位置に配設されるものであって、矩形筐体状の第一固定パネルと、該第一固定パネル内に進退可能に嵌挿されて、該第一固定パネルの前端部側から引き出される矩形筐体状の中間パネルと、該中間パネル内に進退可能に嵌挿されて、該中間パネルの前端部側から引き出される矩形筐体状の第二固定パネルとを備え、該第二固定パネルと中間パネル及び第一固定パネルが目地と直交する方向に伸縮可能に連結されるとともに、第一固定パネル及び第二固定パネルの建物躯体側に位置する夫々の端部が、該建物躯体に水平回動可能に連結された目地用伸縮手摺において、
第一固定パネル内に中間パネルの進退方向に沿う第一案内レールが配設され、中間パネルの後端部に、前記第一案内レールに当接して中間パネルの後部を支持する第一回転ローラが配設されるとともに、中間パネル内に第二固定パネルの進退方向に沿う第二案内レールが配設され、第二固定パネルの後端部に、前記第二案内レールに当接して中間パネルの前部を支持する第二回転ローラが配設されていることを特徴とする目地用伸縮手摺。
【請求項2】
第一案内レールが、第一固定パネルの少なくとも内部下縁の、進退移動する中間パネルの左右両側に対応する位置に左右一対で配設され、各第一案内レールに当接する左右一対の第一回転ローラが中間パネルの左右両側に突出した状態で配設されるとともに、第二案内レールが、中間パネルの少なくとも内部上縁の、進退移動する第二固定パネルの左右両側に対応する位置に左右一対で配設され、各第二案内レールに当接する左右一対の第二回転ローラが第二固定パネルの左右両側に突出した状態で配設されていることを特徴とする請求項1記載の目地用伸縮手摺。
【請求項3】
左右一対の第一案内レールの前端近傍に、中間パネルの左右側面に当接する第一案内ローラが左右一対で配設され、左右一対の第二案内レールの前端近傍に、第二固定パネルの左右側面に当接する第二案内ローラが左右一対で配設されていることを特徴とする請求項2記載の目地用伸縮手摺。
【請求項4】
中間パネルの後端部と第二固定パネルの前端部間に、常時は中間パネルを第二固定パネル側に付勢して中間パネルを第二固定パネルに外嵌させる引張バネが張設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の目地用伸縮手摺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−157686(P2011−157686A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17635(P2010−17635)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(592094243)カネソウ株式会社 (73)
【Fターム(参考)】