説明

目標検出装置

【課題】レーダセンサを用いて受信信号から目標を検出する目標検出装置において、SN比が低い条件で目標を検出するため、動的計画法を用いて目標信号の積分路を探索する際の積分路の重複と、それによる誤警報発生の防止または抑制、及び動的計画法を用いて目標信号の積分路を探索する際の積分路探索処理の効率化を目的とする。
【解決手段】レーダセンサを用いて受信した信号に対する信号処理結果であるビデオ信号の各検出セルの状態推定を行うセル状態推定部を設け、セル状態推定部による状態推定結果および動的計画法における積分路探索時の評価値であるtrack scoreの分布状況に基づいて次スキャンにおける探索条件を設定する探索条件設定部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーダセンサを用いて受信した信号から目標を検出する目標検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
目標検出装置において、SN比の低い条件の下で目標を早期に検出するため、動的計画法を用いてスキャン間で目標信号の積分路の探索を繰り返し、各検出セルに対する評価値track scoreを更新することで目標信号を積分するものがある。このような処理の概要を、図7に示す。
【0003】
また、図8は従来技術の一例による目標検出装置を示す構成図であり、レーダセンサによる1スキャン分のスキャン結果を処理する信号処理部1から入力された現スキャンに対する信号処理後のビデオ信号をスキャンメモリ101が読み込み記憶する。受信電力評価部102は、このスキャンメモリ101に記録されたビデオ信号を入力し、ビデオ信号内の検出セル毎に受信電力に対する尤度比を算出する。積分路探索部103は、検出セル毎の受信電力に対する尤度比と、積分処理メモリ105より1スキャン分前までのtrack score更新結果である信号積分処理結果を入力し、ビデオ信号内の1つの検出セルを注目セルに定める。
積分路抽出部104は、積分路探索部103から注目セルに対応する探索領域の積分路探索情報を入力し、探索領域から積分路探索評価値が最大となるセルを注目セルに対応する推移元として採用し、かかる積分路探索評価値の最大値と注目セルの尤度比の和を注目セルに対する信号積分処理結果とし、積分処理メモリ105に出力する。
【0004】
積分処理メモリ105は、積分路抽出部104から注目セルに対する信号積分処理結果を入力し、自身の注目セル位置に対応する位置の信号積分処理結果を更新する。閾値処理に必要なスキャン数に対する信号積分処理が行われている場合には、自身の内容のうち信号積分処理結果を閾値処理部3に出力する。
閾値処理部3は、閾値処理に必要なスキャン数に対する信号積分処理が行われた後、積分処理メモリ105より積分処理結果を入力し、各セルのtrack scoreに対する閾値判定処理を実施し、track scoreが閾値を超えたセルについて、目標を検出したものと判定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J. Arnold and S. Shaw: “Efficient Target Tracking Using Dynamic Programming,” IEEE Trans. On Aerospace and Electronic Systems Vol.29, No.1 Jan. 1993.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
動的計画法を用いて目標信号の積分路の探索を行う場合、従来技術の構成そのままではtrack scoreが周囲より高い検出セルに積分路の複数の探索結果が重複する。
このような積分路の重複は、更に探索処理を繰り返すことで新たな積分路の重複を引き起こし、誤警報発生の原因となるという課題が存在する。
【0007】
また、従来技術では目標の移動量を経験的に考慮したうえで、積分路を探索する際の探索領域を固定値で設定する。このため、1スキャンの目標移動量が大きい状況を想定する場合には、探索領域も大きく設定する必要があるため、積分路の探索対象となる検出セルの数が多くなる。かかる検出セルを全探索することは不可能ではないが、計算機負荷および積分損失が大きいという課題が存在する。
また、移動量が想定よりも小さい目標に対しては、探索領域の大きさの設定が過大であり、積分路探索処理が非効率的であるという課題が存在する。
【0008】
この発明は、たとえば上記のような課題を解決するためになされたものであり、積分路の重複を回避または低減することによる誤警報の抑制、積分路探索処理における計算機負荷の低減、目標の移動量に応じた適応的な積分路探索処理の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る目標検出装置においては、信号処理部、スキャンメモリ、受信電力評価部、積分路探索部、積分路抽出部、セル状態量推定部、積分処理メモリ、探索条件設定部および閾値処理部を備え、
スキャンメモリは、1スキャン分ずつのビデオ信号のスキャン結果を信号処理部から読み取り記憶し、
受信電力評価部は、スキャンメモリのビデオ信号から、検出セル毎に受信電力に対する尤度比を算出し、
積分路探索部は、受信電力評価部の尤度比から、ビデオ信号内の検出セルを注目セルと定め、探索条件設定部の積分路探索時使用条件から探索領域を設定し、探索領域内のセル毎に、各セルから注目セルへの状態の遷移確率を算出し、積分処理メモリより入力した各セルについて1スキャン分前までのtrack scoreと、各セルに対応する注目セルへの遷移確率の和を積分路探索評価値として算出し、
積分路抽出部は、積分路探索評価値から注目セルに対応する推移元セルを定め、積分路探索評価値を基に注目セルに対する信号積分処理結果を算出し、注目セルの位置と、注目セルへの推移元セル位置と共に出力し、
セル状態量推定部は、積分路抽出部の注目セル位置と、推移元セル位置から推移元セルの1スキャン分前までのセル位置に対応する現スキャンの状態量を予測し、この予測した状態量と、注目セル位置に基づき、現スキャンの注目セル位置に対する状態量を推定し、この状態量推定結果に基づき、現スキャンに対応する次スキャンにおけるセル位置を求め、
積分処理メモリは、積分路抽出部から注目セルに対する信号積分処理結果を入力し、記憶する対応の信号積分処理結果を更新すると共に、セル状態量推定部よりの現スキャンにおける推定位置に対応する次スキャンのセル位置への対応関係を入力・記憶し、自身の記憶内容を探索条件設定部に出力し、また、信号積分処理結果を閾値処理部に出力し、
探索条件設定部は、積分処理メモリより入力された現スキャンの信号積分処理結果および現スキャンの推定位置から次スキャンにおけるセル位置への対応関係に基づき、次スキャンの積分路探索時に使用する条件を定義し、積分路探索部に出力し、
閾値処理部は、積分処理メモリより積分処理結果を入力し、各セルのtrack scoreに対する閾値判定処理を実施し、track scoreが閾値を超えたセルを目標と判定する構成である。
【発明の効果】
【0010】
この発明にかかる目標検出装置によれば、SN比が低い条件の下で目標信号を早期に検出することが可能となる。
特に、検出セルに対する状態推定の結果と、track scoreの分布状況を用いて積分路の探索領域および探索条件を設定することにより、積分路の重複を回避または低減し、目標信号の積分路の重複による誤警報の発生を抑制することが可能となる。
また、移動量の大きい目標を想定する場合には、目標信号の積分経路探索処理における計算機負荷を低減することが可能となる。
さらに、目標の移動量を考慮した適応的な積分路探索領域を行うことで、多様な運動に対応した目標の検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1における目標検出装置を示す構成図である。
【図2】実施の形態1の処理を示すフローチャート図である。
【図3】この発明の実施の形態2における目標検出装置を示す構成図である。
【図4】実施の形態2の処理を示すフローチャート図である。
【図5】この発明の実施の形態3における目標検出装置を示す構成図である。
【図6】実施の形態3の処理を示すフローチャート図である。
【図7】従来技術における目標検出処理概要についての説明図である。
【図8】従来技術の一例による目標検出装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
実施の形態1を、図1〜2を用いて説明する。図1は、実施の形態1による目標検出装置の構成を示している。目標検出装置は、信号処理部1、積分処理部20、閾値処理部3を備えて構成される。
さらに、積分処理部20は、内部にスキャンメモリ201、受信電力評価部202、積分路探索部203、積分路抽出部204、セル状態量推定部205、積分処理メモリ206、探索条件設定部207を備える。
なお、この実施の形態は積分路探索の方法に特徴を有するので、センサを含む受信処理、および信号処理部1における処理の詳細に関する説明は省略する。
【0013】
図1において、レーダセンサによる1スキャン分のスキャン結果は、信号処理部1における処理を経て信号積分部20に入力される。
信号積分部20は、信号処理部1から入力された現スキャンに対する信号処理後のビデオ信号を、スキャンメモリ201に読み込み記憶する。
【0014】
受信電力評価部202は、スキャンメモリ201に記録されたビデオ信号を入力し、ビデオ信号内の検出セル毎に受信電力に対する尤度比を算出する。そして、算出した検出セル毎の受信電力に対する尤度比を積分路探索部203に出力する。
【0015】
積分路探索部203は、受信電力評価部202で算出された検出セル毎の受信電力に対する尤度比を入力し、ビデオ信号内の1つの検出セルを注目セルに定める。
また、積分処理メモリ206より探索条件設定部207を介して1スキャン分前までのtrack score更新結果である信号積分処理結果を入力し、さらに、探索条件設定部207より探索処理の対象とする1スキャン分前までの信号積分処理結果内の領域(以下、「探索領域」と呼ぶ)の定義などの、積分路探索時に使用する条件を入力する。
またさらに、積分路探索部203は、探索条件設定部207からの入力によって設定された探索領域内のセル毎に、かかるセルから注目セルへの状態の遷移確率を算出し、この算出した遷移確率に基づき、探索領域内の各セルについて1スキャン分前までのtrack scoreと、かかるセルに対応する注目セルへの遷移確率の和を算出する。
そして、かかる探索領域内の各セル毎の1スキャン分前までのtrack scoreと、かかるセルに対応する注目セルへの遷移確率の和の算出結果を、積分路探索評価値として積分路抽出部204に出力する。
【0016】
積分路抽出部204は、積分路探索部203から注目セルに対応する探索領域の積分路探索情報を入力し、探索領域から積分路探索評価値が最大となるセルを注目セルに対応する推移元として採用し、かかる積分路探索評価値の最大値と注目セルの尤度比の和を注目セルに対する信号積分処理結果とし、注目セルの位置と、注目セルへの推移元として採用された探索領域内のセル位置を、セル状態量推定部205に出力する。
【0017】
セル状態量推定部205は、積分路抽出部204から注目セルの位置と、注目セルへの推移元として採用された探索領域内のセル位置を入力し、推移元として採用された1スキャン分前までのセル位置に対応する現スキャンにおけるセル位置および速度等の状態量を予測する。この予測した現スキャンにおけるセル位置および速度等の状態量と、注目セル位置に基づき、現スキャンの注目セル位置に対する位置および速度等の状態量を推定する。
そして、かかる状態量の推定結果に基づき、現スキャンにおける推定位置、速度等に対応する次スキャンにおけるセル位置、速度等を求め、求めた現スキャンにおける推定位置、速度等から次スキャンにおけるセル位置、速度等への対応関係を、積分処理メモリ206に出力する。
【0018】
積分処理メモリ206は、積分路抽出部204から注目セルに対する信号積分処理結果を入力し、自身の記憶する注目セル位置に対応する位置の信号積分処理結果を更新する。
また、セル状態量推定部205より現スキャンにおける推定位置、速度等に対応する次スキャンにおけるセル位置、速度等への対応関係を入力し、そして、これらの入力と現スキャンの注目セル位置との対応関係を保持し、現スキャンにおける全ての注目セルに対する信号積分処理の完了後、自身の内容を探索条件設定部207に出力する。
また、閾値処理に必要なスキャン数に対する信号積分処理が行われている場合には、自身の内容のうち信号積分処理結果を閾値処理部3に出力する。
【0019】
探索条件設定部207は、積分処理メモリ206より現スキャンにおける信号積分処理結果および現スキャンの推定位置、速度等から次スキャンにおけるセル位置、速度等への対応関係を入力する。そして、かかる入力に基づき、次スキャンの各注目セルに対する探索領域等の、次スキャンの積分路探索時に使用する条件を定義し、定義した次スキャンの積分路探索時に使用する条件を、積分路探索部203に出力する。
【0020】
積分路探索部203、積分路抽出部204、積分処理メモリ205、セル状態量推定部206、探索条件設定部207は、現在のスキャンにおけるビデオ信号内の全ての検出セルに対し、上述[0015]〜[0019]の処理を実施する。
【0021】
閾値処理部3は、閾値処理に必要なスキャン数に対する信号積分処理が行われた後、積分処理メモリ206より積分処理結果を入力し、各セルのtrack scoreに対する閾値判定処理を実施し、track scoreが閾値を超えたセルについて、目標を検出したものと判定する。
スキャン数が閾値処理に必要な数に達していない場合、積分処理部20は必要スキャン数に達するまで[0013]〜[0020]の処理を繰り返す。
【0022】
次に、この発明に係る目標検出装置の、実施の形態1における動作を、フローチャート図および数式を用いて説明する。
図2は、この発明に係る目標検出装置の、実施の形態1における動作を示すフローチャート図である。以下では、図2に示すステップ毎に、第kスキャンにおける動作を説明する。
【0023】
ステップST201;スキャンメモリ201は、信号処理部1より現スキャンに対する信号処理後のビデオ信号を読み込み記憶する。
【0024】
ステップST202;受信電力評価部202は、スキャンメモリ201に記録されたビデオ信号の電力z(i)について、目標が存在するとの仮説に対する尤度p(z(i)|θ)と、雑音であるとの仮説に対する尤度p(z(i)|H)を算出する。そして、ビデオ信号内の電力に対する尤度比LRatio(z(i))を式(1)のように算出する。
【0025】
【数1】

【0026】
式(1)における尤度p(z(i)|θ)、およびp(z(i)|H)の分布については、それぞれ適切に定めるものとする。
【0027】
ステップST203;積分路探索部203は、ビデオ信号内の1つの検出セルiを注目セルに定める。また、積分路探索部203は、積分処理メモリ205より1スキャン分前までのtrack score更新結果である信号積分処理結果Sk−1(i)を入力する。 さらに、積分路探索部203は、探索条件設定部207より、注目セルiに対する探索領域D(i)の定義などの、積分路探索時に使用する条件を入力し、探索条件設定部207からの入力によって設定された探索領域内のセルi´毎に、かかるセルから注目セルへの状態の遷移確率Ptrans(θ(i)|θk−1(i´))を算出する。そして、探索領域内の各セルについて1スキャン分前までのtrack scoreと、かかるセルに対応する注目セルへの推移確率対数値の加算処理を式(2)のように行い、積分路探索評価値T(i|i´)を算出する。
探索条件設定部207による探索領域D(i)の定義などの、積分路探索時に使用する条件を設定する手順は、ステップST207の説明において述べる。
【0028】
【数2】

【0029】
ステップST204;積分路抽出部204は、ステップST203による加算処理で算出された積分路探索評価値T(i|i´)の最大値maxT(i|i´)を採用し、積分路探索評価値T(i|i´)が最大となる探索領域内のセルi´pathを注目セルiに対応する推移元として、式(3)のように積分路探索評価値の最大値maxT(i|i´)と注目セルの尤度比LRatio(z(i))の和S(i)の加算処理を行う。
【0030】
【数3】

【0031】
ステップST205;セル状態量推定部205は、ステップST204において注目セルiへの推移元として採用された探索領域内のセル位置i´pathに基づいて、推移元として採用されたセル位置i´pathに対応する現スキャンにおけるセル位置および速度等の状態量予測値を算出する。
ステップST205における状態量予測値の算出は、レーダセンサによるスキャン間隔をTと表すと、例えば式(4)のように実施する。
【0032】
【数4】

【0033】
セル状態量推定部205は、状態量予測値と、注目セルiに基づき、現スキャンの注目セル位置に対する状態量推定値を、例えば式(5)のように演算し、算出する。
【0034】
【数5】

【0035】
セル状態量推定部205は、式(5)により算出した状態量推定値に基づき、かかる推定値に対応する次スキャンにおけるセル位置、速度等を式(6)のように演算し、算出する。
【0036】
【数6】

【0037】
ステップST206a;積分処理メモリ206は、現スキャンにおける注目セルiに対する信号積分処理結果を、式(3)により算出された積分路探索評価値の最大値と注目セルの尤度比の和S(i)によって更新する。
【0038】
積分処理メモリ206は、セル状態量推定部205よりステップST205で算出された状態量推定値、およびかかる推定値に対応する次スキャンにおけるセル位置、速度等を入力し、注目セルiとこれらの入力、および信号積分処理結果S(i)の対応関係を[表1]のようなテーブルに記録する。
【0039】
【表1】

【0040】
ステップST206b;現スキャンにおける全ての注目セルに対する信号積分処理(ステップST203〜205)が終了していない場合は、ステップST203に戻り、次の注目セルに対する信号積分処理としてステップST203〜205を実行する(ステップST206bの「No」側のフロー)。
現スキャンにおける全ての注目セルに対する信号積分処理が終了した場合は、積分処理メモリ206は上記[表1]のテーブルの内容を探索条件設定部207に入力する(ステップST206bの「Yes」側のフロー)。
【0041】
ステップST207;探索条件設定部207は、ステップ206bのYes側のフローにおいて積分処理メモリ206より入力された[表1]のテーブルに基づき、次スキャンの各注目セルに対する探索条件を例えば以下のように実施し、定義する。
【0042】
探索条件設定部207は、[表1]のテーブルの状態量推定値と、それに対応する次スキャンにおける位置、速度等との関係によって、次スキャンにおける注目セルが探索する領域の基準位置を定める。
【0043】
ここでは、次スキャンにおける注目セルinextが状態量推定値に対応する次スキャンにおける位置、速度等の位置成分と対応する場合、次スキャンにおける注目セルinextが探索する領域D(inext)の基準位置c(inext)を状態量推定値に対応する次スキャンにおける位置、速度等の位置成分と定める。この処理の過程を、式(7)で表す。
【0044】
【数7】

【0045】
前記の[0042]〜[0043]の処理において、次スキャンにおける注目セルinextに現スキャンの複数の推定値の位置成分が対応している場合は、現スキャンの複数の推定値の位置成分の推定元であるjに対する信号積分処理結果S(j)が最大となる推定値の位置成分を探索領域D(inext)の基準位置c(inext)として割り当てる。この処理過程を、式(8)で表す。
【0046】
【数8】

【0047】
探索条件設定部207は、[表1]のテーブルに記録されている全セルのtrack scoreの平均値を計算する。そして、次スキャンにおける探索領域の基準位置c(inext)のtrack scoreの値S(c(inext))と前記[表1]のテーブルに記録されている全セルのtrack scoreの平均値との差ΔA(inext)を式(9)のように算出する。
【0048】
【数9】

【0049】
探索条件設定部207は、探索領域の基準位置c(inext)のtrack scoreの値S(c(inext))と、セルiのtrack scoreの値S(i)の差ΔS(inext)を式(10)のように算出する。
【0050】
【数10】

【0051】
探索条件設定部207は、次スキャンにおける探索領域の基準位置c(inext)と現スキャンの注目セルiの位置の残差Δinextを式(11)のように算出する。
【0052】
【数11】

【0053】
探索条件設定部207は、式(9)〜(11)によって算出されたΔA(inext)、ΔS(inext)、Δinextの各値を用いて、各々に基づく探索領域の設定値d(ΔA(inext))、d(ΔS(inext))、d(Δinext)を式(12)のように算出する。
【0054】
【数12】

【0055】
式(12)において、a〜a、b〜bはいずれも非負の値を成分とする列ベクトルによるパラメータである。
なお、式(12)の各式の右辺における演算はベクトルa〜a、b〜bの要素毎に行われるものとする。
【0056】
探索条件設定部207は、式(12)によって算出されたd(ΔA(inext))、d(ΔS(inext))、d(Δinext)を用い、次スキャンにおける注目セルinextに対する探索領域D(inext)を、例えば式(13)のように設定する。
【0057】
【数13】

【0058】
なお、式(13)において、第1式の床関数記号はd(ΔA(inext))、d(ΔS(inext))、d(inext)の要素毎に作用し、第2式右辺における等号付き不等号は、c(inext)、d(Δinext)、i´nextの要素毎に成立するものとする。
【0059】
探索条件設定部207は、前記の[0043]において、次スキャンにおける注目セルinextに対応する状態量推定値に対応の次スキャンにおける位置、速度等が存在しない場合、かかる注目セルに対して[0043]〜[0058]とは異なる例外処理により、探索領域D(inext)を設定する。
この例外処理による探索領域D(inext)の設定は、例えば適切に定めた標準探索領域設定値dst1、dst2によって式(14)のように実施する方法がある。
【0060】
【数14】

【0061】
なお、式(14)右辺における等号付き不等号は、c(inext)、dst1、i´next、dst2の要素毎に成立するものとする。
【0062】
ステップST3a;閾値処理に必要なスキャン数に対する信号積分処理が行われていない場合は、ステップST201に戻り、次スキャンに対する信号積分処理としてステップST201〜ステップST207を実施する(ステップST3aの「No」の側のフロー)。
閾値処理に必要なスキャン数に対する信号積分処理が行われた場合は、積分処理メモリ206に記録された現スキャンまでの信号積分処理結果であるtrack scoreの値S(i)を閾値処理部3に入力する(ステップST3aの「Yes」の側のフロー)。
【0063】
ステップST3b;閾値処理部3は、ステップST3aの「Yes」の側のフローによって積分処理メモリ206から入力されたtrack scoreの値S(i)に対する閾値判定処理を実施し、S(i)が閾値を超えたセルについて、目標を検出したものと判定する。
ステップST3bにおける閾値については、適切な手段によって設定するものとする。
【0064】
実施の形態1の効果
この発明の実施の形態1によれば、検出セルに対する状態推定の結果と、track scoreの分布状況を用いて積分路の探索領域および探索条件を設定することにより、積分路の重複を回避または低減し、誤警報の発生を抑制するという効果を奏する。
また、移動量の大きい目標を想定する場合には、目標信号の積分経路探索処理における計算機負荷を低減するという効果を奏する。
さらに、目標の移動量を考慮した適応的な積分路探索領域を行うことで、多様な運動に対応した目標の検出が可能となるという効果を奏する。
以上の効果の相乗作用により、SN比が低い条件の下で目標信号を早期に検出することが可能となるという効果を奏する。
【0065】
実施の形態1による目標検出装置を適用するレーダセンサの種類は、位置や速度等が得られるレーダセンサであれば何でも良く、例えば測距用のレーダや、パルスドップラ周波数を利用する測速度用のレーダに対して適用が可能である。
また、赤外センサなどの光学センサ、画像レーダ等を使用する場合などに対しても適用が可能である。これは実施の形態2以降においても同様である。
【0066】
従来技術の処理概要を示した図7は2次元で表されているが、この発明による目標検出装置が扱う次元数は3次元であっても良く、パルスドップラ周波数差が得られている場合には、4次元でも良い。
更に他の属性情報がレーダセンサによって得られている場合は、n次元でも良い。
また、この発明による信号検出装置が扱う座標系は極座標でも直交座標でも良い。これらは、実施の形態2以降においても同様である。
【0067】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2を、図3〜4を用いて説明する。図3は実施の形態2による目標検出装置の構成を示している。実施の形態2における目標検出装置は、信号処理部1、積分処理部21、閾値処理部3を備えて構成される。
さらに、積分処理部21は、内部にスキャンメモリ201、受信電力評価部202、積分路探索部203、積分路抽出部204、セル状態量推定部205、積分処理メモリ206、探索条件設定部207、目標情報強調条件設定部208を備える。
【0068】
積分処理部21は、実施の形態1における積分処理部20に対し、目標情報強調条件設定部208を新たに備え、積分処理メモリ206から目標情報強調条件設定部208への入力、探索条件設定部207から目標情報強調条件設定部208への入力、目標情報強調条件設定部208から積分路探索部203への入力が追加された状態に相当する。
目標情報強調条件設定部208は、次スキャンにおける注目セルinextが探索対象とする探索領域D(inext)内の各セルi´nextのtrack score強調項E(i´next)を、後述の所定算式により設定する。
【0069】
積分処理部21において、スキャンメモリ201、受信電力評価部202、積分路抽出部204、セル状態量推定部205、探索条件設定部207の機能は、それぞれ実施の形態1における同符号のブロックと同じである。
以下では、実施の形態1とは入出力関係の異なる積分路探索部203、積分処理メモリ206、探索条件設定部207、および実施の形態1に対して新たに加わった目標情報強調条件設定部208についてのみ説明する。
【0070】
積分路探索部203は、受信電力評価部202より現在のスキャンにおけるビデオ信号内の検出セル毎の尤度比を入力し、ビデオ信号内の1つの検出セルを注目セルに定める。
また、積分路探索部203は、積分処理メモリ206より1スキャン分前までのtrack score更新結果である信号積分処理結果を入力する。
さらに、積分路探索部203は、探索条件設定部207より探索領域の定義などの、積分路探索時に使用する条件を入力する。
またさらに、積分路探索部203は、目標情報強調条件設定部208より、積分路探索評価値に付加する目標情報強調条件である、track score強調項の設定条件を入力する。
積分路探索部203は、探索条件設定部207からの入力によって設定された探索領域内のセル毎に、かかるセルから注目セルへの状態の遷移確率を算出する。
【0071】
積分路探索部203は、積分処理メモリ206より入力した1スキャン分前までのtrack score更新結果である信号積分処理結果と、探索条件設定部207より入力した探索領域の定義などの、積分路探索時に使用する条件、および探索領域内のセル毎に、算出されたかかるセルから注目セルへの状態の遷移確率に基づき、探索領域内の各セルについて1スキャン分前までのtrack scoreと、かかるセルに対応する注目セルへの遷移確率の和を積分路探索評価値として算出する。
そして、かかる積分路探索評価値に目標情報強調条件設定部208より入力されたtrack score強調項を加算した結果である拡張積分路探索評価値を積分路抽出部204に入力する。
【0072】
積分処理メモリ206は、積分路抽出部204から注目セルに対する信号積分処理結果を入力し、自身の注目セル位置に対応する位置の信号積分処理結果を更新する。
また、セル状態量推定部205より現スキャンにおける推定位置、速度等から次スキャンにおけるセル位置、速度等への対応関係を入力し、これらの入力と現スキャンの注目セル位置との対応関係を保持する。
積分処理メモリ206は、現スキャンにおける全ての注目セルに対する信号積分処理の完了後、自身の内容を探索条件設定部207および目標情報強調条件設定部208に出力する。
また、閾値処理に必要なスキャン数に対する信号積分処理が行われている場合には、自身の内容のうち信号積分処理結果を閾値処理部3に出力する。
【0073】
探索条件設定部207は、積分処理メモリ206より現スキャンにおける信号積分処理結果および現スキャンの推定位置、速度等から次スキャンにおけるセル位置、速度等への対応関係を入力する。
そして、探索条件設定部207は、かかる入力に基づき、次スキャンの各注目セルに対する探索領域等の、次スキャンの積分路探索時に使用する条件を定義すし、次スキャンの積分路探索時に使用する条件を、積分路探索部203に出力する。
また、探索条件設定部207は次スキャンにおける積分路探索領域の設定を目標情報強調条件設定部208に出力する。
【0074】
目標情報強調条件設定部208は、積分処理メモリ206より現スキャンにおける信号積分処理結果、および現スキャンの推定位置、速度等から次スキャンにおけるセル位置、速度等への対応関係を入力する。
さらに、目標情報強調条件設定部208は、探索条件設定部207より次スキャンにおける積分路探索領域の設定を入力する。
そして、目標情報強調条件設定部208は、かかる入力に基づき、次スキャンの各注目セルが探索対象とする探索領域内の各セルについて、次スキャンの積分路探索時に使用する目標情報強調条件である、track score強調項を定義し、この定義した次スキャンの積分路探索時に使用する条件を、積分路探索部203に出力する。
【0075】
次に、この発明に係る目標検出装置の、実施の形態2における動作を、フローチャート図および数式を用いて説明する。
【0076】
図4は、この発明に係る目標検出装置の、実施の形態2における動作を示すフローチャート図である。
【0077】
図4において、ステップST201、ステップST202、ステップST204、ステップST205、ステップST206a、ステップST206b、ステップST207、ステップST3a、ステップST3bの動作は、実施の形態1における同符号の動作ステップと同一である。
【0078】
以下では、実施の形態1とは入出力関係と動作が異なるステップST203、および実施の形態1に対して新たに加わったステップST208の動作について説明する。
【0079】
ステップST203;積分路探索部203は、ビデオ信号内の1つの検出セルiを注目セルに定める。
また、積分路探索部203は、積分処理メモリ206より1スキャン分前までのtrack score更新結果である信号積分処理結果Sk−1(i)を入力する。
さらに、積分路探索部203は、探索条件設定部207より注目セルiに対する探索領域D(i)の定義などの、積分路探索時に使用する条件を入力し、目標情報強調条件設定部208より探索領域D(i)内の各セルi´についてのtrack score強調項E(i´)の設定を入力する。
探索条件設定部207による探索領域D(i)の定義などの、積分路探索時に使用する条件を設定する手順は、実施の形態1におけるステップST207と同一である。
目標情報強調条件設定部208におけるtrack score強調項の設定手順については、ステップST208の説明において述べる。
【0080】
積分路探索部203は、探索条件設定部207からの入力によって設定された探索領域内のセルi´毎に、かかるセルから注目セルへの状態の遷移確率Ptrans(θ(i)|θk−1(i´))を算出する。
そして、積分路探索部203は、探索領域内の各セルについて1スキャン分前までのtrack score、かかるセルに対応する注目セルへの推移確率対数値、およびかかるセルに対応するtrack score強調項E(i´)の対数値の加算処理を式(15)のように行い、拡張積分路探索評価値T(ext)(i|i´)を算出する。
【0081】
【数15】

【0082】
ステップST204は、処理対象を実施の形態1のステップST204における積分路探索評価値T(i|i´)から式(15)によって算出された拡張積分路探索評価値T(ext)(i|i´)に置き換えたものであり、動作は実施の形態1のステップST204と同様である。
すなわち、積分路抽出部204は、ステップST203の式(15)による加算処理で算出された拡張積分路探索評価値T(ext)(i|i´)の最大値maxT(ext)(i|i´)を採用する。
そして、拡張積分路探索評価値T(ext)(i|i´)が最大となる探索領域内のセルi´pathを注目セルiに対応する推移元として採用し、式(16)のように拡張積分路探索評価値の最大値と注目セルの尤度比の和との加算処理を行う。
【0083】
【数16】

【0084】
ステップST208;目標情報強調条件設定部208は、積分処理メモリ206より入力された前述の[表1]の対応関係、およびステップST207において算出されたΔA(inext)(算出式は式(9)を参照)に基づき、次スキャンにおける注目セルinextが探索対象とする探索領域D(inext)内の各セルi´nextのtrack score強調項E(i´next)を、例えば式(17)のように設定する。
【0085】
【数17】

【0086】
なお、式(17)中のa、b、bは1以上の定数、bは0<b≦1を満たす定数である。
【0087】
目標情報強調条件設定部208は、前記において、次スキャンにおける注目セルinextに対応する状態量推定値対応の次スキャンにおける位置、速度等が存在しない場合、かかる注目セルに対して式(17)とは異なる例外処理により、track score強調項E(i´next)を設定する。
【0088】
前記の例外処理によるtrack score強調項E(i´next)の設定方法としては、式(18)のようにその値を1とおくものとする。
【0089】
【数18】

【0090】
実施の形態2の効果
この発明の実施の形態2によれば、積分経路探索時の探索領域内の基準位置となるセルのtrack scoreが周囲よりも高い状況において、かかるセルに対する積分路探索評価値を、同じ探索領域内の他のセルに対する積分路探索評価値よりも高くすることが可能となるという効果を奏する。
上記の効果により、実施の形態2は、track scoreの分布状況に偏りが生じている状況において、目標検出の確実性を高めるという効果を奏する。
【0091】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3を、図5〜6を用いて説明する。図5は実施の形態3による目標検出装置の構成を示している。
実施の形態3における目標検出装置は、信号処理部1、積分処理部22、閾値処理部3を備えて構成される。
さらに、積分処理部22は、内部にスキャンメモリ201、受信電力評価部202、積分路探索部203、積分路抽出部204、セル状態量推定部205、積分処理メモリ206、探索条件設定部207、目標情報強調条件設定部208、状態遷移条件設定部209を備える。
【0092】
積分処理部22は、実施の形態2における積分処理部21に対し、状態遷移条件設定部209を新たに備え、積分処理メモリ206から状態遷移条件設定部209への入力、探索条件設定部207から状態遷移条件設定部209への入力、状態遷移条件設定部209から積分路探索部203への入力が追加された状態に相当する。
【0093】
積分処理部22において、スキャンメモリ201、受信電力評価部202、積分路抽出部204、セル状態量推定部205、目標情報強調条件設定部208の機能は、それぞれ実施の形態2における同符号のブロックと同じである。以下では、実施の形態2とは入出力関係の異なる積分路探索部203、積分処理メモリ206、探索条件設定部207、および実施の形態2に対して新たに加わった状態遷移条件設定部209についてのみ説明する。
【0094】
積分路探索部203は、受信電力評価部202より現在のスキャンにおけるビデオ信号内の検出セル毎の尤度比を入力し、ビデオ信号内の1つの検出セルを注目セルに定める。
また、積分路探索部203は、積分処理メモリ206より1スキャン分前までのtrack score更新結果である信号積分処理結果を入力する。
さらに、積分路探索部203は、探索条件設定部207より探索領域の定義などの、積分路探索時に使用する条件を入力する。
またさらに、積分路探索部203は、目標情報強調条件設定部208より、積分路探索評価値に付加する目標情報強調条件である、track score強調項の設定条件を入力する。
【0095】
積分路探索部203は、状態遷移条件設定部209からの入力に基づき、探索条件設定部207からの入力によって設定された探索領域内のセル毎に、かかるセルから注目セルへの状態の遷移確率を設定する。
【0096】
積分路探索部203は、積分処理メモリ206より入力した1スキャン分前までのtrack score更新結果である信号積分処理結果と探索条件設定部207より入力した探索領域の定義などの、積分路探索時に使用する条件、および設定した遷移確率に基づき、探索領域内の各セルについて1スキャン分前までのtrack scoreと、かかるセルに対応する注目セルへの遷移確率の和を積分路探索評価値として算出する。
そして、かかる積分路探索評価値に、目標情報強調条件設定部208より、入力されたtrack score強調項を加算した結果である拡張積分路探索評価値を積分路抽出部204に入力する。
【0097】
積分処理メモリ206は、積分路抽出部204から注目セルに対する信号積分処理結果を入力し、自身の注目セル位置に対応する位置の信号積分処理結果を更新する。
積分処理メモリ206は、セル状態量推定部205より現スキャンにおける推定位置、速度等から次スキャンにおけるセル位置、速度等への対応関係を入力し、そして、これらの入力と現スキャンの注目セル位置との対応関係を保持する。
【0098】
積分処理メモリ206は、現スキャンにおける全ての注目セルに対する信号積分処理の完了後、自身の内容を探索条件設定部207、目標情報強調条件設定部208、および状態遷移条件設定部209に出力する。
また、閾値処理に必要なスキャン数に対する信号積分処理が行われている場合には、自身の内容のうち信号積分処理結果を閾値処理部3に入力する。
【0099】
探索条件設定部207は、積分処理メモリ206より現スキャンにおける信号積分処理結果、および現スキャンの推定位置、速度等から次スキャンにおけるセル位置、速度等への対応関係を入力する。
そして、探索条件設定部207は、かかる入力に基づき、次スキャンの各注目セルに対する探索領域等の、次スキャンの積分路探索時に使用する条件を定義し、この定義した次スキャンの積分路探索時に使用する条件を、積分路探索部203に出力する。
また、探索条件設定部207は次スキャンにおける積分路探索領域の設定を目標情報強調条件設定部208および状態遷移条件設定部209に出力する。
【0100】
状態遷移条件設定部209は、積分処理メモリ206より現スキャンの推定位置、速度等から次スキャンにおけるセル位置、速度等への対応関係を入力する。
また、状態遷移条件設定部209は、探索条件設定部207より次スキャンにおける積分路探索領域の設定を入力する。
【0101】
状態遷移条件設定部209は、積分処理メモリ206より入力した現スキャンの推定位置、速度等から次スキャンにおけるセル位置、速度等への対応関係と、探索条件設定部207より入力した次スキャンにおける積分路探索領域の設定に基づき、次スキャンの各注目セルに対する探索領域内の各セルから注目セルへの、状態遷移確率を設定し、設定した状態遷移確率を積分路探索部203に出力する。
【0102】
次に、この発明に係る目標検出装置の、実施の形態3における動作を、フローチャート図を用いて説明する。図6は、この発明に係る目標検出装置の、実施の形態3における動作を示すフローチャート図である。
【0103】
図6において、ステップST201、ステップST202、ステップST204、ステップST205、ステップST206a、ステップST206b、ステップST207、ステップST208、ステップST3a、ステップST3bの動作は、実施の形態2における同符号の動作ステップと同一である。
【0104】
以下では、実施の形態1とは入出力関係と動作が異なるステップST203、および実施の形態2に対して新たに加わったステップST209の動作について説明する。
【0105】
ステップST203;積分路探索部203は、ビデオ信号内の1つの検出セルiを注目セルに定める。
積分路探索部203は、積分処理メモリ206より1スキャン分前までのtrack score更新結果である信号積分処理結果Sk−1(i)を入力する。 また、積分路探索部203は、探索条件設定部207より注目セルiに対する探索領域D(i)の定義などの、積分路探索時に使用する条件を入力し、目標情報強調条件設定部208より探索領域D(i)内の各セルi´についてのtrack score強調項E(i´)の設定を入力する。
さらに、積分路探索部203は、状態遷移条件設定部209より注目セルiに対する探索領域D(i)内の各セルから注目セルiへの状態の遷移確率を入力する。
状態遷移条件設定部209における、注目セルiに対する探索領域D(i)内の各セルから注目セルiへの状態の遷移確率の設定手順については、ステップST209の説明において述べる。
【0106】
積分路探索部203は、探索条件設定部207からの入力によって設定された探索領域内のセルi´毎に、状態遷移条件設定部209からの入力に基づき、かかるセルから注目セルへの状態の遷移確率Ptrans(θ(i)|θk−1(i´))を設定する。
そして、探索領域内の各セルについて1スキャン分前までのtrack score、かかるセルに対応する注目セルへの推移確率対数値、およびかかるセルに対応するtrack score強調項E(i´)の対数値の加算処理を前記の式(15)のように行い、拡張積分路探索評価値T(ext)(i|i´)を算出する。
【0107】
ステップST209;状態遷移条件設定部209は、積分処理メモリ206より入力された[表1]の対応関係、およびステップST207おいて算出された
(ΔA(inext))、d(ΔS(inext))、d(Δinext)(算出式は式(12))を用い、次スキャンにおける注目セルinextが探索対象とする探索領域D(inext)内の各セルi´nextから次スキャンにおける注目セルinextの状態の遷移確率Ptrans(θ(i)|θk−1(i´))を設定する。
【0108】
実施の形態3の効果
この発明の実施の形態3によれば、積分路探索時に使用する状態遷移確率をtrack scoreの分布状況および注目セルに対する状態推定結果を考慮して定義することが可能となるという効果を奏する。
上記の効果により、実施の形態3は、track scoreの分布状況に偏りが生じている状況、または目標運動に変化が生じている状況において、目標検出の確実性を高めるという効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0109】
この発明は、特に移動する目標を検出するレーダシステムや目標追尾装置などで広く活用される可能性がある。
【符号の説明】
【0110】
1 信号処理部、3 閾値処理部、20、21、22 積分処理部、201 スキャンメモリ、202 受信電力評価部、203 積分路探索部、204、積分路抽出部、205 セル状態量推定部、206 積分処理メモリ、207 探索条件設定部、208 目標情報強調条件設定部、209 状態遷移条件設定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダセンサによる複数スキャン分のビデオ信号に対し積分処理を行い、目標信号を検出する目標検出装置であって、信号処理部、スキャンメモリ、受信電力評価部、積分路探索部、積分路抽出部、セル状態量推定部、積分処理メモリ、探索条件設定部および閾値処理部を備え、
スキャンメモリは、1スキャン分ずつのビデオ信号のスキャン結果を信号処理部から読み取り記憶し、
受信電力評価部は、スキャンメモリのビデオ信号から、検出セル毎に受信電力に対する尤度比を算出し、
積分路探索部は、受信電力評価部の尤度比から、ビデオ信号内の検出セルを注目セルと定め、探索条件設定部の積分路探索時使用条件から探索領域を設定し、探索領域内のセル毎に、各セルから注目セルへの状態の遷移確率を算出し、積分処理メモリより入力した各セルについて1スキャン分前までのtrack scoreと、各セルに対応する注目セルへの遷移確率の和を積分路探索評価値として算出し、
積分路抽出部は、積分路探索評価値から注目セルに対応する推移元セルを定め、積分路探索評価値を基に注目セルに対する信号積分処理結果を算出し、注目セルの位置と、注目セルへの推移元セル位置と共に出力し、
セル状態量推定部は、積分路抽出部の注目セル位置と、推移元セル位置から推移元セルの1スキャン分前までのセル位置に対応する現スキャンの状態量を予測し、この予測した状態量と、注目セル位置に基づき、現スキャンの注目セル位置に対する状態量を推定し、この状態量推定結果に基づき、現スキャンに対応する次スキャンにおけるセル位置を求め、
積分処理メモリは、積分路抽出部から注目セルに対する信号積分処理結果を入力し、記憶する対応の信号積分処理結果を更新すると共に、セル状態量推定部よりの現スキャンにおける推定位置に対応する次スキャンのセル位置への対応関係を入力・記憶し、自身の記憶内容を探索条件設定部に出力し、また、信号積分処理結果を閾値処理部に出力し、
探索条件設定部は、積分処理メモリより入力された現スキャンの信号積分処理結果および現スキャンの推定位置から次スキャンにおけるセル位置への対応関係に基づき、次スキャンの積分路探索時に使用する条件を定義し、積分路探索部に出力し、
閾値処理部は、積分処理メモリより積分処理結果を入力し、各セルのtrack scoreに対する閾値判定処理を実施し、track scoreが閾値を超えたセルを目標と判定する目標検出装置。
【請求項2】
セル状態量推定部は、積分路抽出部の注目セル位置と、推移元セル位置から推移元セルの1スキャン分前までのセル位置に対応する現スキャンの状態量として現スキャンにおけるセル位置と速度を予測し、この予測した状態量と、注目セル位置に基づき、現スキャンの注目セル位置に対する位置と速度の状態量を推定し、この状態量推定結果に基づき、現スキャンに対応する次スキャンにおけるセル位置と速度を求め、
積分処理メモリは、積分路抽出部から注目セルに対する信号積分処理結果を入力し、記憶する対応の信号積分処理結果を更新すると共に、セル状態量推定部よりの現スキャンにおける推定位置・速度に対応する次スキャンのセル位置・速度への対応関係を入力・記憶し、自身の記憶内容を探索条件設定部に出力し、また、信号積分処理結果を閾値処理部に出力し、
探索条件設定部は、積分処理メモリより入力された現スキャンの信号積分処理結果および現スキャンの推定位置・速度から次スキャンにおけるセル位置・速度への対応関係に基づき、次スキャンの積分路探索時に使用する条件を定義し、積分路探索部に出力することを特徴とする請求項1記載の目標検出装置。
【請求項3】
積分処理メモリと探索条件設定部から信号を入力し、次スキャンの各注目セルが探索対象とする探索領域内の各セルについて、次スキャンの積分路探索時に使用するtrack score強調項を設定し、積分路探索部に出力する標情報強調条件設定部を備えたことを特徴とする請求項2記載の目標検出装置。
【請求項4】
積分処理メモリより入力した現スキャンの推定位置、速度等から次スキャンにおけるセル位置、速度等への対応関係と、探索条件設定部より入力した次スキャンにおける積分路探索領域の設定に基づき、次スキャンの各注目セルに対する探索領域内の各セルから注目セルへの、状態遷移確率を設定し、設定した状態遷移確率を積分路探索部に出力する状態遷移条件設定部を備えたことを特徴とする請求項2または3に記載の目標検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−261734(P2010−261734A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110622(P2009−110622)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】