説明

目標物探知装置および目標物探知方法

【課題】目標物が停止したのか失探したのかを判別して、追尾の誤りを削減することを目的とする。
【解決手段】ドップラ効果を利用して目標物が探知するレーダ装置の監視領域を分割した複数の分割範囲ごとに、電波到達可能であるか否かを示す電波到達可否情報と、ドップラ効果が有るか無いかを示すドップラ情報を関連付けて記録し、最後に探知された目標物の追尾結果を示す追尾情報と今回探知した目標物の探知結果を示す探知情報を用いて、最後に探知した目標物と今回探知した目標物とを関連付け、追尾処理が中止された対象の最後に探知された目標物の追尾情報に含まれる位置情報を参照して、最後に探知された目標物が含まれる分割範囲を検知し、該分割範囲において電波到達可能か否かとドップラ効果の有無を判定して、最後に探知された目標物が停止したかを判定する目標物探知装置および目標物探知方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標物を探知する目標物探知装置および目標物探知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドップラ効果を用いて目標物を探知するドップラレーダ装置では、目標物を探知できなくなった場合、最後に探知した位置と、その時の移動ベクトルから線形予測(コースト処理)をして、目標物の到達位置を予測している。そして、一定期間経過しても予測した到達位置に目標物が現れない場合、目標物を失探したと判断している。上記のように対象の目標物を追尾する場合、目標物を失探すると、他の場所に移動中であるのか、停止して失探した位置に止まっているかが分からなくなる。
【0003】
例えば、ドップラレーダ装置を用いて、人、動物、乗物などの目標物の移動を検出することで目標物を探知するとき、電波を遮蔽する障害物がある場合や目標物が停止している場合、その目標物を検出することができない。特に地上の目標物の場合、目標物が度々停止すると共に、障害物等により電波遮蔽の影響を受けやすい。その結果、ドップラレーダ装置は、目標物を遮蔽等で失探したのか、目標物が停止したために失探したのかが判定できないことがある。そのため、誤った追尾を行うことがある。
【0004】
また、ドップラレーダ装置は、木々などの揺らぎ、川の流れなどを偽目標物として検出してしまうため、対象の目標物と偽目標物の判別ができなくなり、対象の目標物の追尾を誤ってしまうことがある。例えば、地上において、人、動物、乗物などを検出することを目的としているドップラレーダ装置では、低速で移動する目標物を検出するためにドップラ成分を検出する閾値を低めに設定するため、偽目標物を検出し易くなってしまう。
【0005】
なお、例えば、電波の到達可否を参照する方式として、追尾ゲートに連続して所定回数入る映像を追尾する目標物として符号に変換して追尾するが知られている。この技術では、予め設定されている航路マップ上に映像が表示されるごとに、その映像位置を蓄積して軌跡を求めて、該軌跡が分割されている航路マップ上の領域を電波が到達しない実陰領域として求めて記憶する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−63844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたものであり、目標物が停止したのか失探したのかを判別することにより、追尾の誤りを削減する目標物探知装置および目標物探知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様のひとつであるドップラ効果を利用して目標物を探知するレーダ装置を用いた目標物探知装置は、記録部、追尾処理部、停止判定部を備える。
記録部は、上記レーダ装置の監視領域を複数の分割範囲に分割した分割範囲ごとの、上記レーダ装置を用いて計測した結果に基づく電波到達可能であるか否かを示す電波到達可否情報と、分割範囲にドップラ効果が有るか無いかを示すドップラ情報を関連付けて記録する。
【0009】
追尾処理部は、最後に探知された目標物の追尾結果を示す追尾情報と今回探知した目標物の探知結果を示す探知情報を用いて、上記最後に探知された目標物と上記今回探知した目標物とを関連付ける。
【0010】
停止判定部は、上記追尾処理部で追尾処理が中止された対象の最後に探知された目標物の追尾情報に含まれる位置情報を参照して、上記最後に探知された目標物が含まれる上記分割範囲を検知する。次に、該分割範囲においてドップラ効果の有無を、上記ドップラ情報を用いて判定して、ドップラ効果が無いと判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを、上記電波到達可否情報を用いて判定する。全てにおいて電波到達可能なら上記最後に探知された目標物が最後に探知された位置または前回の探知された位置に停止していると判定する。ドップラ効果が有ると判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを判定し、全てにおいて電波到達可能なら上記最後に探知された目標物の位置に停止していると判定する。
【発明の効果】
【0011】
実施の態様によれば、目標物が停止したのか失探したのかを判別することにより、目標物の追尾の誤りを削減させるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】目標物探知装置の一実施例を示す図である。
【図2】処理部の一実施例を示す図である。
【図3】Aは探知データベースの一実施例を示す図であり、Bは追尾データベースの一実施例を示す図である。図3のCは、メッシュデータベースの一実施例を示す図である。
【図4】メッシュとメッシュを用いた管理の一実施例を示す図である。
【図5】追尾処理中止時における失探が停止であるか否かを判定する処理の一実施例を示すフロー図である。
【図6】隣接メッシュの一実施例を示す図である。
【図7】対象の目標物が停止したのか、対象の目標物を失探したのかを判定する処理の一実施例を示すフロー図である。
【図8】メッシュに重み付けをして、対象の目標物が停止したのか、対象の目標物を失探したのかを判定する処理の一実施例を示すフロー図である。
【図9】メッシュに重み付けをして、対象の目標物が停止したのか、対象の目標物を失探したのかを判定する処理の一実施例を示す図である。
【図10】追尾処理部の一実施例を示す図である。
【図11】Aは位置相関範囲の一実施例を示す図であり、Bは位置相関範囲、速度相関範囲、種別相関範囲の一実施例を示す図である。
【図12】メッシュのドップラ効果の有無しにより位置相関範囲、速度相関範囲、種別相関範囲を変更する処理の一実施例を示すフロー図である。
【図13】ドップラ効果が有るメッシュを通過する時の追尾処理の一実施例を示すフロー図である。
【図14】ドップラ効果が有るメッシュを通過する時の追尾処理の一実施例を示す図である。
【図15】実施形態1〜4を実現できるコンピュータのハードウェア構成の一実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細を説明する。
(実施形態1)
実施形態1における目標物探知装置は、レーダ装置が探知した情報に基づいて目標物の移動推定をする装置である。ここで、レーダ装置は自らの送信機から電波を照射し、目標物から反射されて戻ってくる電波を受信機で受信することにより、目標物の距離、方位、移動速度などの情報を得る装置である。また、目標物探知装置は、目標物を追尾監視できる装置であり、例えばドップラレーダ(Doppler radar)などを用いることが好ましい。また、陸上において、目標物は人、一般車両、特殊車両、軍用車両など、海上においては人、旅客船(客船)、貨客船(貨客混載船)、貨物船、軍艦、巡視船、漁船、特殊船などを対象とし、さらに航空機(重航空機、軽航空機)などを対象としてもよい。
なお、本実施態様においては目標物探知装置としてドップラレーダ装置を用いた場合について説明をする。
【0014】
図1は、目標物探知装置の一例を示すブロック図である。
目標物探知装置100は、アンテナ101、スイッチ102、送信部103、受信部104、処理部105、記録部106、制御部113、入出力部115を備えている。アンテナ101は、送信信号108をスイッチ102を介して受信し、監視対象の領域(以後、監視領域と呼ぶ)に電波D108を照射する。また、監視領域に存在する目標物に反射した電波D109を受け、受信信号109を出力する。
【0015】
スイッチ102は、処理部105から出力されるスイッチ制御信号116を受信して、スイッチ制御信号116に含まれる情報が電波D108を照射することを示しているとき、アンテナ101と送信部103が導通するように切り替える。スイッチ制御信号116に含まれる情報が電波D109を受信することを示しているとき、アンテナ101と受信部104が導通するように切り替える。そして、スイッチ102は、送信時に送信部103から出力される送信信号108をアンテナ101に供給する。また、スイッチ102は、受信時にアンテナ101から出力される受信信号109を受信部104に出力する。
【0016】
送信部103は、処理部105から送信指示信号107を受信すると、目標物を探知するための送信信号108をスイッチ102とアンテナ101に供給する。例えば、送信部103は発振器と増幅器を備え、発振器から出力される高周波信号を電力増幅して送信信号108を生成する。
【0017】
受信部104は、目標物から反射した電波D109に基づく受信信号109を受信して、受信信号109から受信結果信号110を生成し、受信結果信号110を処理部105へ送信する。例えば、受信部104は増幅器、混合器、フィルタ、電力増幅器、アナログ−ディジタル変換器などを備え、受信信号109を増幅器で増幅した信号と、上記発振器から出力される局発信号を混合器により周波数変換して、信号を出力する。その後、該信号の高調波成分をフィルタなどにより抑圧し、フィルタの出力信号を電力増幅器により電力増幅して、電力増幅した信号をアナログ−ディジタル変換器によりディジタル変換して受信結果信号110を生成する。なお、受信部の構成は上記説明した構成に限定するものではない。
【0018】
処理部105は、図2に示す探知処理部201、追尾処理部202、停止判定部203、クラッタ情報生成部204、ドップラ情報生成部205などを備えている。また、処理部105は、目標物を探知するための電波D108をアンテナ101から送信するため、送信指示信号107を送信部103に通知する。また、処理部105は、目標物を探知するために電波D108の照射方向を変化させるためのアンテナ制御情報112をアンテナ101に送信する。アンテナ制御情報112には、アンテナの電波照射方向を示す情報が含まれ、その情報に従いアンテナ101はアンテナの向きを変える。
【0019】
探知処理部201は、受信結果信号110を受信してFast Fourier Transform(FFT)などにより周波数ごとに電波強度を求める。また、探知処理部201は、送信信号108と受信結果信号110の周波数ごとの電波強度の差などを用いて目標物を探知し、目標物の位置(目標物所在の有無)、目標物の移動方向、目標物の速度、目標物の種類などを求めて記録部106に記録する。例えば、図3のAに示すように探知結果(探知データベース)を記録する。図3のAの探知データベースでは、「目標物ID」には目標物を識別するための識別子「K1」「K2」「K3」・・・・が記録されている。また、「日時」には目標物を探知した日時「2009/12/01 11:00:00」「2009/12/01 12:21:00」「2009/12/01 13:11:12」・・・・が記録されている。「位置」には目標物を探知した位置が経度、緯度「E11031 N51005」「E21031 N51455」「E11400 N55642」・・・・が記録されている。ここで、Eは経度(東経)、Nは緯度(北緯)を示している。「E11031 N51005」の表示は東経110度31分 北緯51度00分05秒の位置を示している。「速度」には目標物の速度が「1km/h」「31km/h」「5km/h」・・・・が記録されている。「種別」には目標物の種別が「人」「一般車両」「戦車」・・・・が記録されている。
【0020】
追尾処理部202は、前回探知した目標物と今回探知した目標物が同一の目標物であるかを判定して、同一であるとき、前回探知した目標物と今回探知した目標物を関連づけて記録部106に記録する。対象の目標物が同一であるかの判定は、まず前回探知した目標物の最終探知日時の位置と速度を用いて対象の目標物が到達可能な範囲を求める。次に、到達可能な範囲内に存在する今回探知した目標物を抽出する。例えば、今回探知した複数の目標物に対応する図3のAの探知データベースの「位置」を用いて、到達可能な範囲内に存在するかを判定する。次に、到達可能な範囲内に存在する今回探知した目標物の中から、さらに前回探知した目標物の最終探知日時の移動方向、速度、種類などを用いて追尾対象を絞り込み、追尾対象となる目標物を特定する。例えば、到達可能な範囲内に存在する今回探知した目標物に対応する図3のBの追尾データベースの「最終探知時の移動方向」「最終探知時の速度」「種別」のデータを参照する。そして、「最終探知時の移動方向」「最終探知時の速度」「種別」ごとに予め設定された範囲内に、上記データがあるか否かを判定する。その結果、最も類似している今回探知した目標物を前回探知した目標物に関連付ける。例えば、今回探知した目標物の図3のAの探知データベースの「日時」「位置」「速度」「種別」データを、前回探知した目標物の図3のBの「最終探知日時」「最終探知位置」「最終探知時の速度」「種別」に記録する。また、前回と今回の目標物の位置を用いて移動方向を算出して、図3のBの「最終探知時の移動方向」に記録する。
【0021】
図3のBの追尾データベースについて説明する。追尾データベースは、「目標物ID」「停止フラグ」「失探フラグ」「最終探知日時」「最終探知位置」「最終探知時の速度」「最終探知時の移動方向」「種別」を有している。「目標物ID」には目標物を識別するための識別子「1」「110」「201」・・・・が記録されている。また、「停止フラグ」は対象の目標物が停止したか否かを示し、停止していると判定されたときに「1」を記録し、停止以外の場合には「0」を記録する。また、「失探フラグ」は対象の目標物を目標物探知装置100が失探したか否かを示し、失探していると判定されたときに「1」を記録し、失探以外の場合には「0」を記録する。「最終探知日時」には目標物を最後に探知した日時「11:00:00」「12:21:00」「13:11:12」「14:15:31」・・・・が記録されている。「最終探知位置」には目標物を最後に探知した位置が経度、緯度「E11031 N51005」「E21031 N51455」「E11400 N55642」・・・・が記録されている。また、「最終探知時の速度」には目標物を最後に探知したときの速度が「1km/h」「31km/h」「5km/h」・・・・が記録されている。「最終探知時の移動方向」には目標物には目標物を最後に探知したときの移動方向が・・・「東南」「南南西」「北北西」・・・・が記録されている。なお、「移動方向」には方向ベクトルなどを記録してもよい。「種別」には目標物を最後に探知したときの目標物の種別が「人」「一般車両」「戦車」・・・・が記録されている。
【0022】
停止判定部203は、電波の遮蔽や偽目標物が原因で目標物を失探したのか、あるいは目標物が停止したのか判定し、判定結果を用いて目標物の位置を予測する。停止判定部203の詳細については後述する。
【0023】
クラッタ情報生成部204は、後述するメッシュ(分割範囲)ごとに、電波到達可否に関する情報を関連付けた情報111を記録部106に記録する。
ドップラ情報生成部205は、後述するメッシュ(分割範囲)ごとに、ドップラ効果の有無に関する情報を関連付けた情報111を記録部106に記録する。
【0024】
電波到達の可否とドップラ効果の有無は、実際に目標物の探知を開始する前に、実際に目標物探知装置100から電波D108を送信し、送信した電波D108と受信した電波D109から周波数ごとの電波強度の差を参照して取得する。実際に目標物の探知を開始する前とは、例えば、監視対象範囲において目標物探知装置100を運用して目標物を監視する前のことである。(監視対象範囲に目標が進入する前。)また、運用前に実際にドップラレーダ装置で計測したデータを用いて、電波到達の可否とドップラ効果の有無を求める。なお、実際に目標物の探知を開始する前の電波到達の可否の判定では、遮蔽物などがある場合に電波が各メッシュまで到達できるか否かを判定する。また、実際に目標物の探知を開始する前のドップラ効果の有無の判定は、偽目標物が存在するか否かをメッシュごとに判定する。
【0025】
電波到達可否は、電波D109に含まれる電波D108と同一の周波数の電波強度が、閾値以上あれば電波到達可とし、閾値未満であれば電波到達不可とする。または、電波D109に含まれる電波D108と同一の周波数の電波強度と、電波D108の周波数の電波強度との差が、閾値以上あれば電波到達可とし、閾値未満であれば電波到達不可としてもよい。ただし、電波到達可否の判定については上記方法に限定されるものではない。
【0026】
ドップラ効果の有無は、電波D109に含まれる電波D108と異なる周波数の電波強度が、閾値以上あればドップラ効果有りとし、閾値未満であればドップラ効果無しとする。ただし、ドップラ効果の有無の判定については上記方法に限定されるものではない。
【0027】
なお、処理部105は、Central Processing Unit(CPU)やプログラマブルなデバイス(Field Programmable Gate Array(FPGA)、Programmable Logic Device(PLD)など)を用いて処理部105の機能を実行させてもよい。
【0028】
記録部106は、プログラム、テーブル、データなどが記録されている。また、記録部106は、例えばRead Only Memory(ROM)、Random Access Memory(RAM)、ハードディスクなどのメモリである。また、記録部106は、パラメータ値、変数値などのデータを記録してもよいし、ワークエリアとして用いることもできる。さらに、記録部106には、探知した結果(目標物)を表示するための地図情報などを記録している。
【0029】
また、記録部106には、監視領域において電波が目標物まで到達可能か否かを判定した結果と、ドップラ効果の有無が、メッシュ(分割範囲)ごとに記録されている。図4は、メッシュとメッシュを用いた管理について示す図である。メッシュ402は、図4に示すように例えば正方形状の範囲であり、メッシュ402の幅は、監視対象の目標物によって精度(分解能)は異なるが、10m〜100m程度を想定する。ただし、メッシュ形状、メッシュ幅は上記に限定されるものではない。また、記録部106は、目標物探知装置100の監視領域を破線403、404に挟まれた領域とする。そして、この監視領域に含まれるメッシュ402ごとに、電波到達可否とドップラ効果の有無に関する情報111を関連付けてメッシュデータベースにより管理する。例えば、メッシュデータベースは上記メッシュを識別する情報(メッシュID)、メッシュの位置情報と電波到達の可否に関する電波到達可否情報(クラッタ情報)とドップラ効果の有無に関する情報(ドップラ情報)を図3のCに示すように記録する。図3のCでは、メッシュを識別する情報を「メッシュID」に記録し、メッシュの位置を示す情報を「メッシュ位置」に記録し、電波到達の可否に関する情報を「クラッタ情報」に記録し、ドップラ効果の有無に関する情報を「ドップラ情報」に記録している。本例では「メッシュID」に・・・「MIDn」「MIDn+1」・・・が記録され、「メッシュ位置」に・・・「座標n」「座標n+1」・・・が記録されている。「座標n」「座標n+1」は、監視対象範囲におけるメッシュの位置を示している。例えば、メッシュが正方形状であれば、正方形の1つの頂点にメッシュ位置(座標)を対応付ける。なお、該頂点と地図情報の位置を関連付けて記録してもよい。また、「クラッタ情報」には・・・「1」「0」・・・が記録され、「1」は電波到達可能を示し、「0」は電波到達不可を示している。「ドップラ情報」には・・・「1」「0」・・・が記録され、「1」はドップラ効果有を示し、「0」はドップラ効果無を示している。なお、メッシュの作成は、利用者が入出力部115を介して入力するメッシュの大きさ、形状、位置座標などの情報を用いて、処理部105または制御部113などにより生成される。
【0030】
制御部113は、CPUやプログラマブルなデバイス(FPGA、PLDなど)を用いて、目標物探知装置100の各部の制御を行うものである。
入出力部115は、入力装置と出力装置を備えている。入力装置は、ドップラレーダ装置の設置位置、ドップラレーダ装置の監視領域、メッシュなどの情報を、制御部113を介して処理部105、記録部106などに入力するものである。例えば、入力装置はキーボード、マウスなどである。出力装置は、処理部105、記録部106などが有している情報を、制御部113を介して表示するものである。例えば、出力装置は、ディスプレイ、プリンタなどである。
【0031】
停止判定部203の動作について説明する。
停止判定部203は記録部106からメッシュごとに関連付けられた電波到達の可否とドップラ効果の有無情報111を用いて処理を行う。停止判定部203は、目標物の位置、移動方向、速度、種類の類似性が薄れて上記追尾処理が中止された場合、または目標物の探知ができず追尾処理が中止された場合に、図5の処理を行う。そして、図5の処理を行うことにより、目標物が停止したのか、目標物を失探したのかを判定する。
【0032】
図5は、追尾処理中止時における失探が停止であるか否かを判定する処理の一実施例を示すフロー図である。送信周波数と受信周波数の違いを検出することによる目標物の追尾ができなくなった際(追尾中止時)、目標物を最後に探知したメッシュに示す範囲の電波到達可否と、ドップラ効果の有無から、目標物が停止したのか目標物を失探したのかを判定する処理である。
【0033】
ステップS501で停止判定部203は、追尾処理部202が追尾処理を中止したか否かを監視し、追尾処理が中止されていればステップS502(Yes)に移行し、追尾処理が継続されていれば引き続き監視をする(No)。なお、複数の目標物を監視する場合、停止判定部203は追尾データベースを参照して、例えば、上から順番に対象の目標物を選択して処理を行う。すなわち、対象の目標物ごとに追尾処理が中止されているかを判定して、中止されている場合は、対象の目標物に対して後述するステップS502以降の処理を行う。また、該処理が終了すると、次の目標物を選択してステップS502以降の処理を行う。ステップS502以降の処理を複数の対象の目標物に対して順次行う。ただし、対象の目標物の選択は上記に限定されるものではない。
【0034】
ステップS502で停止判定部203は、追尾データベースを参照して対象の目標物の最終探知位置を取得する。次に、停止判定部203は、対象の目標物の最終探知位置が含まれるメッシュを、メッシュデータベースの「メッシュ位置」に記録されている座標と最終探知位置を用いて求める。そして、求めたメッシュの座標に対応付けられているメッシュの識別子を「メッシュID」から選択する。次に、停止判定部203は、求めたメッシュの識別子に対応付けられた「ドップラ情報」を参照してドップラ効果が有るか無いかを判定する。ドップラ効果が無ければステップS503(NO)へ移行し、有ればステップS504(Yes)へ移行する。本例では、対象の「ドップラ情報」に「0」がある場合にステップS503へ移行し、「1」がある場合にステップS504へ移行する。
【0035】
ステップ503では、停止判定部203が最終探知位置を含むメッシュに隣接するすべての隣接メッシュが電波到達可能であるか否かを判定する。隣接メッシュすべてにおいて電波到達可能であればステップS507(Yes)へ移行し、隣接メッシュに1つでも電波到達不可のメッシュが存在する場合であればステップS506(No)へ移行する。隣接メッシュとは、例えば、図6に示すようにメッシュ60が最終探知位置を含むメッシュである場合に、メッシュ60に隣接するメッシュ61〜68のことである。本例ではメッシュを正方形状で考えているため隣接メッシュを図6に示すように設定している。なお、他の形状のメッシュにおいても、最終探知位置を含むメッシュに一部でも隣接しているメッシュを全て含むよう設定することが望ましい。
【0036】
ステップS504では、停止判定部203が最終探知位置を含むメッシュに隣接するすべての隣接メッシュが電波到達可能であるか否かを判定する。すべての隣接メッシュが電波到達可能であればステップS505(Yes)へ移行し、隣接メッシュに1つでも電波到達不可のメッシュが存在する場合であればステップS506(No)へ移行する。
【0037】
ステップS505では、停止判定部203が対象の目標物の最終探知位置またはその前の探知位置に停止したと判定して、記録部106の追尾データベースの「停止」に停止を示すデータ「1」を記録する。すなわち、対象のメッシュには探知開始前からドップラ効果があるため、対象のメッシュでは新たに目標物を探知していないと考えられる。また、隣接メッシュはすべて電波到達可能であるので、周りに何も遮蔽物がない見通しがよい状況であると判定できる。その結果、対象の目標物は最終探知位置または前回の探知位置に停止したと判定できる。
【0038】
ステップS506では、停止判定部203が対象の目標物を失探したかまたは停止と判定して、後述する次の処理(図7に示すステップS701)に移行する。すなわち、対象のメッシュに隣接するメッシュには探知開始前から電波到達不可のメッシュが含まれているため、周りに何か遮蔽物があり見通しが悪い状況であると判定できる。その結果、対象の目標物が停止したのか、それとも対象の目標物を失探したのかが判定できない。
【0039】
ステップS507では、停止判定部203が対象の目標物の最終探知位置に停止したと判定して、記録部106の追尾データベースの「停止」に停止を示す「1」を記録する。すなわち、対象のメッシュには探知開始前からドップラ効果が無く、対象のメッシュには偽目標物がなく、隣接メッシュはすべて電波到達可能であるので、周りに何も遮蔽物がない見通しがよい状況であると判定できる。その結果、対象の目標物は最終探知位置に停止したと判定できる。なお、ステップS505の停止とステップS507の停止を分けて記録してもよい。
【0040】
なお、上記図5に示す停止判定は、最初にすべての隣接メッシュが電波到達可能か否かを判定し、隣接メッシュにひとつでも電波到達不可のメッシュが含まれていれば、ステップS506に移行してもよい。また、すべての隣接メッシュが電波到達可であれば、ステップS502の判定を行い、対象のメッシュにドップラ効果が有ればステップS505に移行し、対象のメッシュにドップラ効果が無ければステップS507に移行する。
【0041】
図7は、対象の目標物が停止したのか、対象の目標物を失探したのかを判定する処理の一実施例を示す図である。
ステップS701では、停止判定部203が最終探知時の移動方向を用いて、失探または停止した対象の目標物の移動方向のメッシュを特定する。例えば、図3のBに示した追尾データベースの「最終探知時の移動方向」に記録されている移動方向を示すデータ(移動ベクトルなど)を用いて、最終探知時の対象の目標物が次に移動するメッシュを特定する。最終探知時のメッシュに隣接するメッシュの中から、「最終探知時の移動方向」に記録されている移動ベクトルを用い、対象の目標物が最初に通る移動方向のメッシュを特定する。
【0042】
ステップS702で停止判定部203は、メッシュデータベースを参照して上記移動方向のメッシュが電波到達可能であるか否かを判定する。電波到達可能であればステップS703(Yes)へ移行し、電波到達不可であればステップS704(No)へ移行する。例えば、メッシュデータベースの移動方向のメッシュに関連付けられている「クラッタ情報」を参照して電波到達可能であるか否かを判定する。
【0043】
ステップS703では、停止判定部203がメッシュデータベースを参照して最終探知位置を含むメッシュにドップラ効果が有るか否かを判定する。ドップラ効果が無ければステップS705(No)へ移行し、有ればステップS704(Yes)へ移行する。
【0044】
ステップS704では、停止判定部203が対象の目標物は失探と判定し、追尾データベースの「失探」に「1」を記録する。すなわち、移動方向のメッシュの周りには何か遮蔽物があり見通しが悪い状況であると判定できる。また、移動方向のメッシュの周りには何も遮蔽物がなく見通しがよい状況であっても、移動方向のメッシュがドップラ効果の有るメッシュであれば、新たに目標物を探知していないと考えられる。その結果、対象の目標物は停止以外で失探したと判定できる。なお、「停止」に「0」を記録してもよい。
【0045】
ステップS705では、停止判定部203が対象の目標物は最終探知位置に停止したと判定する。追尾データベースの「失探」に「0」を記録する。すなわち、移動方向のメッシュの周りには何も遮蔽物がなく見通しがよい状況であり、移動方向のメッシュはドップラ効果が無いメッシュなので、対象の目標物は失探と判定できる。なお、「停止」に「1」を記録してもよい。また、追尾データベースの「失探」「停止」はひとつの項目にして、失探したときは「1」、停止したときは「0」を記録してもよい。
【0046】
また、実施形態1において対象の目標物の失探および停止を判定した結果を、入出力部115のディスプレイなどに表示してもよい。
メッシュごとに目標物が停止したのか失探したのかを判別することにより、対象の目標物の追尾の誤りを削減させることができる。
【0047】
(実施形態2)
図8は、対象の目標物が停止したのか、対象の目標物を失探したのかを判定する処理の一実施例を示している。また、図9に図8における追尾中止時の停止判定における一実施例を示す。
【0048】
実施形態2に示す処理は、送信周波数と受信周波数の違いを検出することにより、対象の目標物の追尾ができなくなった際(追尾中止時)、目標物を最後に探知した時点の目標物の移動方向から、推測される移動方向のメッシュに重み付けをする。そして、重み付けをしたメッシュの電波到達可否から、対象の目標物が停止したのか目標物を失探したのかを判定する処理である。
【0049】
実施形態2の処理は、実施形態1において説明した図5のステップS508以降に実行される処理である。ステップS801では、停止判定部203が最終探知時の対象の目標物の移動方向から推測される移動範囲を求める。例えば、図9に示すように複数のメッシュ904のひとつに最終探知位置901を端点とする移動方向を示す移動ベクトル902があるとする。移動ベクトル902が示す線分の両側に、端点を共有する線分903aと線分903bを予め設定した角度θだけ広がるように設定する。そして、その線分903aと線分903bにより表される移動方向範囲905とする。移動ベクトル902は、追尾データベースの最終探知時の対象の目標物に関連付けられている「最終探知時の移動方向」に記録されている。なお、角度θは例えば記録部106に記録されている。
【0050】
ステップS802では、停止判定部203が推測される移動方向範囲905から移動する可能性の高いメッシュを特定する。例えば、図9に示すように移動方向範囲905と共有部分の多いメッシュを、対象の目標物が移動する可能性が高いメッシュとして記録する。また、記録部106に記録されている地図データの地形などを参照して、例えば、移動方向に川、海などが有るが場合、建物が有る場合、および標高が高くなっている場合に、これらの条件を含めて対象の目標物が移動する可能性が低いメッシュとして記録してもよい。
【0051】
ステップS803では、停止判定部203が移動する可能性の高さに応じて、隣接するメッシュごとに重み付けを行う。例えば、図9に示すように移動する可能性の高いメッシュに重みを付け、隣接するメッシュ8個の重みの合計が常に100となるようにする。図9の場合、隣接するメッシュのうち、移動方向範囲905に接していない隣接メッシュには重み「5」を割付け、隣接メッシュにおける移動方向範囲905の占める割合が半分以下のとき「10」を割付ける。また、隣接メッシュにおける移動方向範囲905の占める割合が半分以上のとき「20」を割付け、さらに、移動ベクトル902と接する隣接メッシュには「40」を割付けている。
【0052】
なお、(移動方向範囲905に接していない隣接メッシュ)<
(隣接メッシュにおける移動方向範囲905の占める割合が半分以下)<
(隣接メッシュにおける移動方向範囲905の占める割合が半分以上)<
(隣接メッシュにおける移動方向範囲905の占める割合が半分以上で、且つ移
動ベクトル902と接する隣接メッシュ)
の順に重み付けをする。
【0053】
ステップS804では、停止判定部203が隣接するメッシュのうち電波到達可メッシュを抽出する。次に、抽出したメッシュの重みの和を求めて、目標物の停止した確率を求める。図9の例では、隣接するメッシュのうち電波到達可メッシュは4つあり、それぞれのメッシュに「5」「10」「20」「40」の重みが割付けられている。また、重み「5」「10」「20」「40」の合計値75を求め、全ての隣接メッシュの重みの合計値100で割ることにより目標物の停止した比を求める。該比が予め設定した閾値より高いとき停止したと判定する。また、75/100×100%を演算して確率値75%を算出して、記録部106の追尾データベースの「停止」に75%を記録してもよい。なお、「失探」に25%を記録してもよい。
【0054】
また、実施形態2において対象の目標物の失探および停止を判定した結果および確率を、入出力部115のディスプレイなどに表示してもよい。
メッシュごとに目標物が停止したのか失探したのかを判別することにより、対象の目標物の追尾の誤りを削減させることができる。
【0055】
(実施形態3)
実施形態3では、追尾処理が継続される場合でも、目標物が所在しなくなった場合でも、ドップラ効果の有るメッシュにおいて追尾処理を行う場合、偽目標物による追尾処理の誤りを防止する。偽目標物とは、木々などの揺らぎ、川の流れ、エアコンの室外機のファンなどを誤って目標物として検出してしまうことである。
【0056】
図10は、追尾処理部202の構成の一実施例を示す図である。
実施形態3において、追尾処理部202は、予測位置算出部1001、相関処理部1002を備える。
【0057】
予測位置算出部1001は、前回探知した目標物の最終探知日時に対応する最終探知位置、最終探知時の移動方向、最終探知速度、対象の目標物の最終探知日時からの経過時間を用いて、前回探知した目標物が到達すると予測される位置を求める。例えば、最終探知位置、最終探知時の移動方向、最終探知速度は、前回探知した目標物に対応する図3のBの追尾データベースの「最終探知位置」「最終探知時の移動方向」「最終探知時の速度」のデータを参照して取得する。経過時間は、タイマや時計integrated circuit(IC)などを用いて計測することが望ましい。
【0058】
相関処理部1002は、位置相関部1003、速度相関部1004、種別相関部1005を備えている。位置相関部1003は、予測位置算出部1001で求めた前回探知した目標物の予測位置を含むように位置相関範囲を設定して、位置相関範囲に含まれている今回探知した目標物を位置相関がある目標物とする。位置相関範囲は、例えば、図11のAに示すように、予測位置1101を位置相関範囲の中心にして、長方形状(縦Y、横X)の範囲1102を設定する。予測位置1101がドップラ効果の無いメッシュに含まれている場合、後述する図11のBに示されているデータ「X、Y」を用いる。また、予測した位置1101がドップラ効果の有るメッシュに含まれている場合、図11のBに示されているデータ「X−α、Y−β」を用いる。すなわち、ドップラ効果の有るメッシュでは、位置相関範囲をドップラ効果が無いメッシュと比べて縮小することにより、追尾処理における偽目標物による追尾処理の誤りを防止することができる。ここで、X、Y、α、βの示す値は、例えば長さを示す値である。なお、範囲1102は長方形状に限るものではなく他の形状(丸形状、楕円形状、正方形など)であってもよい。
【0059】
図11のBは、ドップラ効果の有無と位置相関、速度相関、種別相関を利用した追尾フィルタの一実施例を示す図である。追尾フィルタは、データベースとして記録部106に記録されており、メッシュごとのドップラ効果の有無を示すデータを記録する「ドップラ効果」、位置相関処理を行うために用いるデータ「位置相関」を有している。また、後述する速度相関処理を行うために用いるデータ「速度相関」、種別相関処理を行うために用いるデータ「種別相関」を有している。本例では、「位置相関」に対象のメッシュにドップラ効果が無いときに用いる「X、Y」と、ドップラ効果が有るときに用いる「X−α、Y−β」が記録されている。
【0060】
また、相関処理部1002は位置相関、速度相関、種別相関が有ると判定した今回探知した目標物については継続して追尾処理を続け、位置相関、速度相関、種別相関のいずれかが無いと判定された今回探知した目標物については、新たな目標物として追尾データベースに記録する。
【0061】
速度相関部1004は、位置相関部1003で位置相関ありと判定された今回探知した目標物に対応する図3のAの探知データベースの「速度」と、対象の前回探知した目標物の図3のBの追尾データベースの「最終探知時の速度」のデータを参照する。
【0062】
次に、速度相関部1004は、位置相関ありと判定された今回探知した目標物の速度と、対象の前回探知した目標物の速度との速度差を求める。
次に、速度相関部1004は、該速度差が予め設定される速度相関範囲内であるか否か判定して、速度相関範囲内に含まれているとき今回探知した目標物を速度相関がある目標物とする。
【0063】
図11のBの例で設定された速度相関範囲は「速度相関」に記録されており、ドップラ効果有りのとき「20km/h以下」を用いて判定を行い、ドップラ効果無しのとき「50km/h以下」を用いて判定を行う。ドップラ効果無しのメッシュにはもともと偽目標物がないと考えられるので、設定範囲を広く設定している。ただし、上記「速度相関」の記録するデータは上記データに限定されるものではない。すなわち、ドップラ効果の有るメッシュでは、速度相関範囲をドップラ効果が無いメッシュと比べて縮小することにより、追尾処理における偽目標物による追尾処理の誤りを防止することができる。
【0064】
また、速度相関部1004は速度相関が有ると判定した今回探知した目標物については種別相関処理へ移行し、速度相関が無いと判定された今回探知した目標物については、新たな目標物として追尾データベースに記録する。なお、速度相関については、目標物の移動方向(ベクトル)を加味するために、速度ベクトルをX成分とY成分に分割し、それぞれの速度差の相関を判定する方法も考えられる。
【0065】
種別相関部1005は、速度相関部1004で速度相関ありと判定された今回探知した目標物に対応する図3のAの探知データベースの「種別」と、対象の前回探知した目標物の図3のBの追尾データベースの「種別」のデータを参照する。
【0066】
次に、種別相関部1005は、速度相関ありと判定された今回探知した目標物の種別と、対象の前回探知した目標物の種別との種別相関を求める。例えば、図11のBの表を用いて相関を判定する。
【0067】
図11のBの「種別相関」は、類似条件「探知時の種別」「種別相関範囲」を有している。「探知時の種別」には今回探知した目標物の種別に対応するデータが記録されている。例えば、今回探知した目標物の種別が車両Aであれば「探知時の種別」の「車両A」が選択される。「種別判定範囲」には、本例ではドップラ効果有りに「車両A」「車両B」「車両C」「人」「不明」、ドップラ効果無しに「車両A、車両B、車両C」「人、不明」が記録されている。そして、ドップラ効果有りの場合、今回探知した目標物の種別が「車両A」のとき、前回探知した目標物の種別が「車両A」であれば、種別相関があるとする。ドップラ効果なしの場合、今回探知した目標物の種別が「車両A」のとき、前回探知した目標物の種別が「車両A」「車両B」「車両C」であれば、種別相関があるとする。なお、前回探知した目標物の種別を基準に種別相関をしてもよい。すなわち、ドップラ効果の有るメッシュでは、種別相関範囲をドップラ効果が無いメッシュと比べて同一であることを重視する(類似条件を厳しくする)ことにより、追尾処理における偽目標物による追尾処理の誤りを防止することができる。
【0068】
また、種別相関部1005は種別相関が有ると判定した今回探知した目標物については継続して追尾処理を続け、種別相関が無いと判定された今回探知した目標物については、新たな目標物として追尾データベースに記録する。
【0069】
図12は、メッシュのドップラ効果の有無しにより位置相関範囲、速度相関範囲、種別相関範囲を変更する処理の一実施例を示すフロー図である。
図12の処理は、ドップラ効果が有るメッシュにおいて目標物の追尾処理を行う際に、偽目標物による追尾誤りを防ぐために、位置相関閾値、速度相関閾値、種別相関閾値を変更する処理である。ステップ1201では、追尾処理部202の予測位置算出部1001が予測位置を求めたとき、予測位置を含むメッシュにドップラ効果が有るか否かを判定する。メッシュのドップラ効果有無しは、メッシュデータベースの対象のメッシュに対応する「ドップラ情報」を参照してドップラ効果が有るか否かを判定する。ドップラ効果が有る場合には、ステップS1202(Yes)へ移行し、ドップラ効果が無い場合には、ステップS1203(No)へ移行する。
【0070】
ステップS1202では、追尾処理部202が図11に示した「ドップラ効果」「有」に対応する位置相関範囲、速度相関範囲、種別相関範囲を用いて追尾を行う。現在ドップラ効果が無しの位置相関範囲、速度相関範囲、種別相関範囲を用いて追尾処理をしている場合は、次にドップラ効果有りのメッシュに予測位置が含まれていると判定されたとき、ドップラ効果有りの位置相関範囲、速度相関範囲、種別相関範囲を用いる。
【0071】
ステップS1203では、追尾処理部202が図11に示した「ドップラ効果」「無」に対応する位置相関範囲、速度相関範囲、種別相関範囲を用いて追尾を行う。現在ドップラ効果が有りの位置相関範囲、速度相関範囲、種別相関範囲を用いて追尾処理をしている場合は、次にドップラ効果無いメッシュに予測位置が含まれていると判定されたとき、ドップラ効果無しの位置相関範囲、速度相関範囲、種別相関範囲を用いる。
【0072】
上記のように、メッシュごとのドップラ効果の有無しにより、位置相関範囲、速度相関範囲、種別相関範囲変更することにより、対象の目標物を絞り込むことで追尾処理における偽目標物による追尾処理の誤りを防止することができる。その結果、追尾精度を向上させることができる。
【0073】
(実施形態4)
図13、図14のA、図14のBにドップラ効果が有るメッシュを通過する時の追尾処理の一実施例を示す。図13に示す処理では、ドップラ効果が有るメッシュを通過して目標物の追尾処理を行う際に、ドップラ効果が無いメッシュ内で探知した目標物の情報を優先的に使用して追尾処理を行う。
【0074】
図13に示す処理について説明する。図14のAにおいて、対象の目標物1403が、日時t1においてドップラ効果が無いメッシュで探知されたとする。次に日時t2において、ドップラ効果が有るメッシュの偽目標物1404と対象の目標物1403が関連付けられ、さらに、日時t3において、ドップラ効果が有るメッシュの偽目標物1405と偽目標物1404が関連付けられたとする。ところが、日時t4においてドップラ効果が無いメッシュで対象の目標物1403と実際には同一の目標物1406が探知されたとする。
【0075】
上記のような状況において、追尾処理部202は日時t1〜t3に至る軌跡(移動状況を示すデータ)を用いて次の位置予測を行うため、目標物1406と目標物1403を関連付けることができないことがある。
【0076】
そこで、ドップラ効果の有るメッシュを目標物が追加する場合には、目標物1403と偽目標物1404と偽目標物1405を関連付けて追尾処理を行う。次に、目標物1405の位置から予測位置を求め、予想位置がドップラ効果無しのメッシュである場合、追尾処理部202は、最後に探知された目標物である偽目標物1405から追尾データベースに記録されている追尾結果を遡る。ここで、追尾データベースに記録されている追尾結果とは、目標物ごとの追尾履歴であり、例えば、目標物ごとに探知したデータが時系列に記録されている。また、追尾処理部202は、遡る際に追尾履歴に記録されている位置が、ドップラ効果が無いメッシュに含まれていることも監視する。もし、ドップラ効果が無いメッシュに含まれているときは、その遡った時点の目標物の位置と、現在までの経過時間を用いて予測位置を求める。そして、新たに求めた予測位置を含むメッシュに新たに目標物が探知されていれば、新たな目標物と対象の目標物を関連付ける。その際、偽目標物1404と偽目標物1405に対する追尾処理は停止する。
【0077】
ステップS1301で追尾処理部202は、ドップラ効果が有るメッシュにおいて追尾処理をしている場合に、対象の目標物の位置から予測位置を求め、予測位置がドップラ効果無しのメッシュに含まれるか否かを判定する。ドップラ効果無しのメッシュに含まれる場合、ステップS1302(Yes)に移行する。ドップラ効果有りのメッシュに含まれる場合、ステップS1301(No)に移行する。
【0078】
ステップS1302では、追尾処理部202がドップラ効果無しのメッシュに遡り予測位置を算出する。本例では、図14の目標物1403の探知時t1まで遡り、t1の時点の最終探知位置、最終探知時の移動方向、最終探知速度、t1の時点からの経過時間を用いて、予測位置を求める。
【0079】
ステップS1303で追尾処理部202は、予測位置の付近(例えば、位置相関範囲)に図14のBに示すようにドップラ効果無しメッシュに新たな目標物1406を探知したとき、目標物1403と新たな目標物1406を関連付けて、追尾処理を行う。その際、ドップラ効果有りのメッシュにおいて探知した目標物1404、1405と目標物1403の関連付けを解除する。
【0080】
上記のように、ドップラ効果有のメッシュに含まれた目標物において予測位置を求めた結果、予測位置がドップラ効果無しのメッシュに含まれた場合、ドップラ効果無しのメッシュまで遡り、再度予測位置を求める。そして、予測位置の含まれるドップラ効果無しのメッシュに新たな目標物があるとき、遡った位置の目標物と新たな目標物を関連付けることで追尾処理における偽目標物による追尾処理の誤りを防止することができる。その結果、追尾精度を向上させることができる。
【0081】
本実施形態がコンピュータとして実現される場合の構成について説明する。
図15は、上記実施形態1、2、3、4で説明した装置を実現できるコンピュータのハードウェア構成の一実施例を示す図である。
【0082】
コンピュータのハードウェア1500は、CPU1501、記録部1502、記録媒体読取装置1503、入出力インタフェース1504(入出力I/F)、通信インタフェース1505(通信I/F)などを備えている。また、上記各構成部はバス1506によってそれぞれ接続されている。
【0083】
CPU1501は、記録部1502に格納されている上記説明した目標物探知装置100の各処理を実行する。
記録部1502(ROM、RAM、ハードディスクドライブなど)には、CPU1501が実行するプログラムやデータが記録されている。また、ワークエリアなどとして使用される。また、記録部1502は上記説明した記録部106の機能を有する。
【0084】
記録媒体読取装置1503は、CPU1501の制御にしたがって記録媒体1507に対するデータのリード/ライトを制御する。そして、記録媒体1507に記録媒体読取装置1503の制御で書き込まれたデータを記憶させたり、記録媒体1507に記憶されたデータを読み取らせたりする。また、着脱可能な記録媒体1507は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体として、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリなどがある。磁気記録装置には、ハードディスク装置(HDD)などがある。光ディスクには、Digital Versatile Disc (DVD)、DVD−RAM、Compact Disc Read Only Memory (CD−ROM)、CD−R(Recordable)/RW(ReWritable)などがある。光磁気記録媒体には、Magneto-Optical disk (MO)などがある。
【0085】
入出力インタフェース1504には、入出力装置1508(例えば、タッチパネルなど)が接続され、ユーザが入力した情報を受信し、バス1506を介してCPU1501に送信する。また、CPU1501からの命令に従ってディスプレイの画面上に操作情報などを表示する。
【0086】
通信インタフェース1505は、必要に応じ、他のコンピュータとの間のLAN接続やインターネット接続や無線接続を行うためのインタフェースである。また、他の装置に接続され、外部装置からのデータの入出力を制御する。
【0087】
このようなハードウェア構成を有するコンピュータを用いることによって、上記説明した各種処理機能(実施形態で説明した処理(フローチャートなど))が実現される。その場合システムが有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体1507に記録しておくことができる。
【0088】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD、CD−ROMなどの記録媒体1507が販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0089】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、記録媒体1507に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記録部1502に格納する。そして、コンピュータは、自己の記録部1502からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、記録媒体1507から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【0090】
また、目標物探知装置100の機能を、ドップラレーダ装置本体や、複数のレーダ装置を使用して目標物を検出するシステムにおいて、検出した目標物の整理統合を行う装置やアプリケーションに搭載して使用する。
【0091】
また、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。なお、各実施形態は処理に矛盾の無い限りにおいて、互いに組み合わせても構わない。
【0092】
以上実施形態1、2、3、4を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
ドップラ効果を利用して目標物を探知するレーダ装置を用いた目標物探知装置であって、
前記レーダ装置の監視領域を複数の分割範囲に分割した分割範囲ごとの、前記レーダ装置を用いて計測した結果に基づく電波到達可能であるか否かを示す電波到達可否情報と、分割範囲ドップラ効果が有るか無いかを示すドップラ情報を関連付けて記録する記録部と、
最後に探知された目標物の追尾結果を示す追尾情報と今回探知した目標物の探知結果を示す探知情報を用いて、前記最後に探知された目標物と前記今回探知した目標物とを関連付ける追尾処理部と、
前記追尾処理部で追尾処理が中止された対象の最後に探知された目標物の前記追尾情報に含まれる位置情報を参照して、前記最後に探知された目標物が含まれる前記分割範囲を検知し、該分割範囲においてドップラ効果の有無を、前記ドップラ情報を用いて判定して、ドップラ効果が無いと判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを、前記電波到達可否情報を用いて判定し、全てにおいて電波到達可能なら前記最後に探知された目標物が最後に探知された位置または前回の探知された位置に停止していると判定し、ドップラ効果が有ると判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを判定し、全てにおいて電波到達可能なら前記最後に探知された目標物の位置に停止していると判定する、停止判定部と、
を備えることを特徴とする目標物探知装置。
(付記2)
停止判定部は、
前記追尾処理部で追尾処理が中止された対象の最後に探知された目標物の前記追尾情報に含まれる位置情報を参照して、前記最後に探知された目標物が含まれる前記分割範囲を検知し、該分割範囲においてドップラ効果の有無を、前記ドップラ情報を用いて判定して、ドップラ効果が有ると判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを、前記電波到達可否情報を用いて判定し、1つ以上の分割範囲において電波到達可能でない場合、またはドップラ効果が無いと判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを判定し、1つ以上の分割範囲において電波到達可能でない場合、前記最後に探知された目標物の前記追尾情報の移動方向を示す情報を用いて、前記最後に探知された目標物が移動可能な分割範囲を予測し、該分割範囲において電波到達可能であると判定し、該分割範囲において電波到達可能で無い場合、前記最後に探知された目標物を失探したと判定し、該分割範囲において電波到達可能で有り、ドップラ効果が無いと判定されるとき、前記最後に探知された目標物は停止したと判定し、該分割範囲において電波到達可能で有り、ドップラ効果が有ると判定されるとき、前記最後に探知された目標物は失探したと判定する、
ことを特徴とする付記1に記載の目標物探知装置。
(付記3)
停止判定部は、
前記追尾処理部で追尾処理が中止された対象の最後に探知された目標物の前記追尾情報に含まれる位置情報を参照して、前記最後に探知された目標物が含まれる前記分割範囲を検知し、該分割範囲においてドップラ効果の有無を、前記ドップラ情報を用いて判定して、ドップラ効果が有ると判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを、前記電波到達可否情報を用いて判定し、1つ以上の分割範囲において電波到達可能でない場合、またはドップラ効果が無いと判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを判定し、1つ以上の分割範囲において電波到達可能でない場合、前記最後に探知された目標物の前記追尾情報の移動方向を示す情報を用いて、前記最後に探知された目標物が移動可能な移動方向範囲を求め、前記移動方向範囲を有する該分割範囲に隣接する分割範囲に、前記移動方向範囲を含む割合により重み付けをし、電波到達可能な前記隣接する分割範囲の重み付けの和と、全ての前記隣接する分割範囲の重み付けの和を用いて停止確率値を求め、前記最後に探知された目標物を含む分割範囲の停止確率値とする、
ことを特徴とする付記1に記載の目標物探知装置。
(付記4)
前記追尾処理部は、
前記最後に探知された目標物の前記追尾結果を示す追尾情報を用いて予測される予測位置が含まれる前記分割範囲を検出し、該分割範囲においてドップラ効果の有無を判定して、ドップラ効果が有りと判定された場合に、前記追尾情報の位置情報と今回探知した目標物の探知情報の位置情報を関連付けられるか否かを判定するために用いる、前記予測位置を含む前記最後に探知された目標物の到達可能な位置相関範囲を縮小して、縮小した位置相関範囲に含まれる前記今回探知した目標物と前記最後に探知した目標物とを関連付けることを特徴とする付記1に記載の目標物探知装置。
(付記5)
前記追尾処理部は、
前記追尾情報の速度情報と前記今回探知した目標物の探知情報の速度情報を関連付けられるか否かを判定するために用いる、前記追尾情報の速度情報と前記探知情報の速度情報との速度差を比較する速度相関範囲を縮小して、縮小した速度相関範囲に含まれる前記縮小した位置相関範囲を用いて関連付けられた前記今回探知した目標物と前記最後に探知した目標物とを関連付けることを特徴とする付記4に記載の目標物探知装置。
(付記6)
前記追尾処理部は、
前記追尾情報の種別情報と前記今回探知した目標物の探知情報の種別情報を関連付けられるか否かを判定するために用いる、前記追尾情報の種別情報と前記探知情報の種別情報を比較して種別の類似を判定する種別相関範囲の類似条件を厳しくして判定し、判定した種別相関範囲に含まれる前記縮小した速度相関範囲を用いて関連付けられた前記今回探知した目標物と前記最後に探知した目標物とを関連付けることを特徴とする付記5に記載の目標物探知装置。
(付記7)
前記追尾処理部は、
ドップラ効果が有る分割範囲において前記最後に探知された目標物の前記追尾結果を示す追尾情報を用いて予測される予測位置が含まれる前記分割範囲を検出し、検出した分割範囲においてドップラ効果の有無を、前記ドップラ情報を用いて判定して、ドップラ効果が無いと判定された場合に、前記最後に探知された目標物の追尾結果をドップラ効果が無い分割範囲に含まれている時点まで遡り、遡った時点の目標物で予測位置を検出し、該予測位置が今回新たに探知された目標物が含まれるドップラ効果無しの分割範囲に含まれていると判定されたとき、前記遡った時点の目標物と前記今回新たに探知された目標物を関連付けることを特徴とする付記1に記載の目標物探知装置。
(付記8)
ドップラ効果を利用して目標物を探知するレーダ装置の計測結果を用いて目標物の追尾をする目標物探知方法であって、
コンピュータが、
前記レーダ装置の監視領域を複数の分割範囲に分割した分割範囲ごとの、前記レーダ装置を用いて計測した結果に基づく電波到達可能であるか否かを示す電波到達可否情報と、分割範囲にドップラ効果が有るか無いかを示すドップラ情報を関連付けて記録部に記録し、
最後に探知された目標物の追尾結果を示す追尾情報と今回探知した目標物の探知結果を示す探知情報を用いて、前記最後に探知された目標物と前記今回探知した目標物とを関連付ける追尾処理をし、
前記追尾処理が中止された対象の最後に探知された目標物の前記追尾情報に含まれる位置情報を参照して、前記最後に探知された目標物が含まれる前記分割範囲を検知し、
該分割範囲においてドップラ効果の有無を、前記ドップラ情報を用いて判定して、ドップラ効果が無いと判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを、前記電波到達可否情報を用いて判定し、全てにおいて電波到達可能なら前記最後に探知された目標物が最後に探知された位置または前回の探知された位置に停止していると判定し、
ドップラ効果が有ると判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを判定し、全てにおいて電波到達可能なら前記最後に探知された目標物の位置に停止していると判定する、
処理を実行することを特徴とする目標物探知方法。
(付記9)
コンピュータが
前記追尾処理が中止された対象の最後に探知された目標物の前記追尾情報に含まれる位置情報を参照して、前記最後に探知された目標物が含まれる前記分割範囲を検知し、該分割範囲においてドップラ効果の有無を、前記ドップラ情報を用いて判定して、ドップラ効果が有ると判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを、前記電波到達可否情報を用いて判定し、1つ以上の分割範囲において電波到達可能でない場合、またはドップラ効果が無いと判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを判定し、
1つ以上の分割範囲において電波到達可能でない場合、前記最後に探知された目標物の追尾情報の移動方向を示す情報を用いて、前記最後に探知された目標物が移動可能な分割範囲を予測し、該分割範囲において電波到達可能であると判定し、該分割範囲において電波到達可能で無い場合、前記最後に探知された目標物を失探したと判定し、
該分割範囲において電波到達可能で有り、ドップラ効果が無いと判定されるとき、前記最後に探知された目標物は停止したと判定し、
該分割範囲において電波到達可能で有り、ドップラ効果が有ると判定されるとき、前記最後に探知された目標物は失探したと判定する、
処理を実行することを特徴とする付記8に記載の目標物探知方法。
(付記10)
コンピュータが
前記追尾処理が中止された対象の最後に探知された目標物の前記追尾情報に含まれる位置情報を参照して、前記最後に探知された目標物が含まれる前記分割範囲を検知し、該分割範囲においてドップラ効果の有無を、前記ドップラ情報を用いて判定して、ドップラ効果が有ると判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを、前記電波到達可否情報を用いて判定し、1つ以上の分割範囲において電波到達可能でない場合、またはドップラ効果が無いと判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを判定し、
1つ以上の分割範囲において電波到達可能でない場合、前記最後に探知された目標物の追尾情報の移動方向を示す情報を用いて、前記最後に探知された目標物が移動可能な移動方向範囲を求め、前記移動方向範囲を有する該分割範囲に隣接する分割範囲に、前記移動方向範囲を含む割合により重み付けをし、
電波到達可能な前記隣接する分割範囲の重み付けの和と、全ての前記隣接する分割範囲の重み付けの和を用いて停止確率値を求め、前記最後に探知された目標物を含む分割範囲の停止確率値とする、
処理を実行することを特徴とする付記8に記載の目標物探知方法。
(付記11)
コンピュータが
前記最後に探知された目標物の追尾結果を示す前記追尾情報を用いて予測される予測位置が含まれる前記分割範囲を検出し、該分割範囲においてドップラ効果の有無を、前記ドップラ情報を用いて判定して、ドップラ効果が有りと判定された場合に、前記追尾情報の位置情報と今回探知した目標物の探知情報の位置情報を関連付けられるか否かを判定するために用いる、前記予測位置を含む前記最後に探知された目標物の到達可能な位置相関範囲を縮小して、縮小した位置相関範囲に含まれる前記今回探知した目標物と前記最後に探知した目標物とを関連付ける、
処理を実行することを特徴とする付記8に記載の目標物探知方法。
(付記12)
コンピュータが
前記追尾情報の速度情報と前記今回探知した目標物の探知情報の速度情報を関連付けられるか否かを判定するために用いる、前記追尾情報の速度情報と前記探知情報の速度情報との速度差を比較する速度相関範囲を縮小して、縮小した速度相関範囲に含まれる前記縮小した位置相関範囲を用いて関連付けられた前記今回探知した目標物と前記最後に探知した目標物とを関連付ける、
処理を実行することを特徴とする付記11に記載の目標物探知方法。
(付記13)
コンピュータが
前記追尾情報の種別情報と前記今回探知した目標物の探知情報の種別情報を関連付けられるか否かを判定するために用いる、前記追尾情報の種別情報と前記探知情報の種別情報を比較して種別の類似を判定する種別相関範囲の類似条件を厳しくして判定し、判定した種別相関範囲に含まれる前記縮小した速度相関範囲を用いて関連付けられた前記今回探知した目標物と前記最後に探知した目標物とを関連付ける、
処理を実行することを特徴とする付記12に記載の目標物探知方法。
(付記14)
コンピュータが
ドップラ効果が有る分割範囲において前記最後に探知された目標物の追尾結果を示す追尾情報を用いて予測される予測位置が含まれる前記分割範囲を検出し、検出した分割範囲においてドップラ効果の有無を、前記ドップラ情報を用いて判定して、ドップラ効果が無いと判定された場合に、前記最後に探知された目標物の追尾結果をドップラ効果が無い分割範囲に含まれている時点まで遡り、遡った時点の目標物で予測位置を検出し、該予測位置が今回新たに探知された目標物が含まれるドップラ効果無しの分割範囲に含まれていると判定されたとき、前記遡った時点の目標物と前記今回新たに探知された目標物を関連付ける
処理を実行することを特徴とする付記8に記載の目標物探知方法。
【符号の説明】
【0093】
100 目標物探知装置
101 アンテナ
102 スイッチ
103 送信部
104 受信部
105 処理部
106 記録部
107 送信指示信号
113 制御部
115 入出力部
201 探知処理部
202 追尾処理部
203 停止判定部
204 クラッタ情報生成部
205 ドップラ情報生成部
1001 予測位置算出部
1002 相関処理部
1003 位置相関部
1004 速度相関部
1005 種別相関部
1500 ハードウェア
1501 CPU
1502 記録部
1503 記録媒体読取装置
1504 入出力インタフェース
1505 通信インタフェース
1506 バス
1507 記録媒体
1508 入出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドップラ効果を利用して目標物を探知するレーダ装置を用いた目標物探知装置であって、
前記レーダ装置の監視領域を複数の分割範囲に分割した分割範囲ごとの、前記レーダ装置を用いて計測した結果に基づく電波到達可能であるか否かを示す電波到達可否情報と、分割範囲にドップラ効果が有るか無いかを示すドップラ情報を関連付けて記録する記録部と、
最後に探知された目標物の追尾結果を示す追尾情報と今回探知した目標物の探知結果を示す探知情報を用いて、前記最後に探知された目標物と前記今回探知した目標物とを関連付ける追尾処理部と、
前記追尾処理部で追尾処理が中止された対象の最後に探知された目標物の前記追尾情報に含まれる位置情報を参照して、前記最後に探知された目標物が含まれる前記分割範囲を検知し、該分割範囲においてドップラ効果の有無を、前記ドップラ情報を用いて判定して、ドップラ効果が無いと判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを、前記電波到達可否情報を用いて判定し、全てにおいて電波到達可能なら前記最後に探知された目標物が最後に探知された位置または前回の探知された位置に停止していると判定し、ドップラ効果が有ると判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを判定し、全てにおいて電波到達可能なら前記最後に探知された目標物の位置に停止していると判定する、停止判定部と、
を備えることを特徴とする目標物探知装置。
【請求項2】
停止判定部は、
前記追尾処理部で追尾処理が中止された対象の最後に探知された目標物の前記追尾情報に含まれる位置情報を参照して、前記最後に探知された目標物が含まれる前記分割範囲を検知し、該分割範囲においてドップラ効果の有無を、前記ドップラ情報を用いて判定して、ドップラ効果が有ると判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを、前記電波到達可否情報を用いて判定し、1つ以上の分割範囲において電波到達可能でない場合、またはドップラ効果が無いと判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを判定し、1つ以上の分割範囲において電波到達可能でない場合、前記最後に探知された目標物の前記追尾情報の移動方向を示す情報を用いて、前記最後に探知された目標物が移動可能な分割範囲を予測し、該分割範囲において電波到達可能であると判定し、該分割範囲において電波到達可能で無い場合、前記最後に探知された目標物を失探したと判定し、該分割範囲において電波到達可能で有り、ドップラ効果が無いと判定されるとき、前記最後に探知された目標物は停止したと判定し、該分割範囲において電波到達可能で有り、ドップラ効果が有ると判定されるとき、前記最後に探知された目標物は失探したと判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の目標物探知装置。
【請求項3】
停止判定部は、
前記追尾処理部で追尾処理が中止された対象の最後に探知された目標物の前記追尾情報に含まれる位置情報を参照して、前記最後に探知された目標物が含まれる前記分割範囲を検知し、該分割範囲においてドップラ効果の有無を、前記ドップラ情報を用いて判定して、ドップラ効果が有ると判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを、前記電波到達可否情報を用いて判定し、1つ以上の分割範囲において電波到達可能でない場合、またはドップラ効果が無いと判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを判定し、1つ以上の分割範囲において電波到達可能でない場合、前記最後に探知された目標物の前記追尾情報の移動方向を示す情報を用いて、前記最後に探知された目標物が移動可能な移動方向範囲を求め、前記移動方向範囲を有する該分割範囲に隣接する分割範囲に、前記移動方向範囲を含む割合により重み付けをし、電波到達可能な前記隣接する分割範囲の重み付けの和と、全ての前記隣接する分割範囲の重み付けの和を用いて停止確率値を求め、前記最後に探知された目標物を含む分割範囲の停止確率値とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の目標物探知装置。
【請求項4】
前記追尾処理部は、
前記最後に探知された目標物の前記追尾結果を示す追尾情報を用いて予測される予測位置が含まれる前記分割範囲を検出し、該分割範囲においてドップラ効果の有無を判定して、ドップラ効果が有りと判定された場合に、前記追尾情報の位置情報と今回探知した目標物の探知情報の位置情報を関連付けられるか否かを判定するために用いる、前記予測位置を含む前記最後に探知された目標物の到達可能な位置相関範囲を縮小して、縮小した位置相関範囲に含まれる前記今回探知した目標物と前記最後に探知した目標物とを関連付けることを特徴とする請求項1に記載の目標物探知装置。
【請求項5】
前記追尾処理部は、
前記追尾情報の速度情報と前記今回探知した目標物の探知情報の速度情報を関連付けられるか否かを判定するために用いる、前記追尾情報の速度情報と前記探知情報の速度情報との速度差を比較する速度相関範囲を縮小して、縮小した速度相関範囲に含まれる前記縮小した位置相関範囲を用いて関連付けられた前記今回探知した目標物と前記最後に探知した目標物とを関連付けることを特徴とする請求項4に記載の目標物探知装置。
【請求項6】
前記追尾処理部は、
前記追尾情報の種別情報と前記今回探知した目標物の探知情報の種別情報を関連付けられるか否かを判定するために用いる、前記追尾情報の種別情報と前記探知情報の種別情報を比較して種別の類似を判定する種別相関範囲の類似条件を厳しくして判定し、判定した種別相関範囲に含まれる前記縮小した速度相関範囲を用いて関連付けられた前記今回探知した目標物と前記最後に探知した目標物とを関連付けることを特徴とする請求項5に記載の目標物探知装置。
【請求項7】
前記追尾処理部は、
ドップラ効果が有る分割範囲において前記最後に探知された目標物の前記追尾結果を示す追尾情報を用いて予測される予測位置が含まれる前記分割範囲を検出し、検出した分割範囲においてドップラ効果の有無を、前記ドップラ情報を用いて判定して、ドップラ効果が無いと判定された場合に、前記最後に探知された目標物の追尾結果をドップラ効果が無い分割範囲に含まれている時点まで遡り、遡った時点の目標物で予測位置を検出し、該予測位置が今回新たに探知された目標物が含まれるドップラ効果無しの分割範囲に含まれていると判定されたとき、前記遡った時点の目標物と前記今回新たに探知された目標物を関連付けることを特徴とする請求項1に記載の目標物探知装置。
【請求項8】
ドップラ効果を利用して目標物を探知するレーダ装置の計測結果を用いて目標物の追尾をする目標物探知方法であって、
コンピュータが、
前記レーダ装置の監視領域を複数の分割範囲に分割した分割範囲ごとの、前記レーダ装置を用いて計測した結果に基づく電波到達可能であるか否かを示す電波到達可否情報と、分割範囲にドップラ効果が有るか無いかを示すドップラ情報を関連付けて記録部に記録し、
最後に探知された目標物の追尾結果を示す追尾情報と今回探知した目標物の探知結果を示す探知情報を用いて、前記最後に探知された目標物と前記今回探知した目標物とを関連付ける追尾処理をし、
前記追尾処理が中止された対象の最後に探知された目標物の前記追尾情報に含まれる位置情報を参照して、前記最後に探知された目標物が含まれる前記分割範囲を検知し、
該分割範囲においてドップラ効果の有無を、前記ドップラ情報を用いて判定して、ドップラ効果が無いと判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを、前記電波到達可否情報を用いて判定し、全てにおいて電波到達可能なら前記最後に探知された目標物が最後に探知された位置または前回の探知された位置に停止していると判定し、
ドップラ効果が有ると判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを判定し、全てにおいて電波到達可能なら前記最後に探知された目標物の位置に停止していると判定する、
処理を実行することを特徴とする目標物探知方法。
【請求項9】
コンピュータが
前記追尾処理が中止された対象の最後に探知された目標物の前記追尾情報に含まれる位置情報を参照して、前記最後に探知された目標物が含まれる前記分割範囲を検知し、該分割範囲においてドップラ効果の有無を、前記ドップラ情報を用いて判定して、ドップラ効果が有ると判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを、前記電波到達可否情報を用いて判定し、1つ以上の分割範囲において電波到達可能でない場合、またはドップラ効果が無いと判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを判定し、
1つ以上の分割範囲において電波到達可能でない場合、前記最後に探知された目標物の追尾情報の移動方向を示す情報を用いて、前記最後に探知された目標物が移動可能な分割範囲を予測し、該分割範囲において電波到達可能であると判定し、該分割範囲において電波到達可能で無い場合、前記最後に探知された目標物を失探したと判定し、
該分割範囲において電波到達可能で有り、ドップラ効果が無いと判定されるとき、前記最後に探知された目標物は停止したと判定し、
該分割範囲において電波到達可能で有り、ドップラ効果が有ると判定されるとき、前記最後に探知された目標物は失探したと判定する、
処理を実行することを特徴とする請求項8に記載の目標物探知方法。
【請求項10】
コンピュータが
前記追尾処理が中止された対象の最後に探知された目標物の前記追尾情報に含まれる位置情報を参照して、前記最後に探知された目標物が含まれる前記分割範囲を検知し、該分割範囲においてドップラ効果の有無を、前記ドップラ情報を用いて判定して、ドップラ効果が有ると判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを、前記電波到達可否情報を用いて判定し、1つ以上の分割範囲において電波到達可能でない場合、またはドップラ効果が無いと判定された場合に、該分割範囲に隣接する分割範囲の全てにおいて電波到達可能かを判定し、
1つ以上の分割範囲において電波到達可能でない場合、前記最後に探知された目標物の追尾情報の移動方向を示す情報を用いて、前記最後に探知された目標物が移動可能な移動方向範囲を求め、前記移動方向範囲を有する該分割範囲に隣接する分割範囲に、前記移動方向範囲を含む割合により重み付けをし、
電波到達可能な前記隣接する分割範囲の重み付けの和と、全ての前記隣接する分割範囲の重み付けの和を用いて停止確率値を求め、前記最後に探知された目標物を含む分割範囲の停止確率値とする、
処理を実行することを特徴とする請求項8に記載の目標物探知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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