説明

直動ねじ装置

【課題】直動ねじ装置としてのボールねじ装置に供給した新たなグリースを、主にボールが転動する負荷路に供給する手段を提供する。
【解決手段】外周面に螺旋状の軸軌道溝4を形成したねじ軸3と、内周面に軸軌道溝4に対向するナット軌道溝6を形成したナット5と、軸軌道溝4とナット軌道溝6とで形成される負荷路と、該負荷路を転動する複数のボール2とを備えた直動ねじ装置としてのボールねじ装置1において、ナット軌道溝6の間のランド部5aと、軸軌道溝4の間のランド部3aとの間の半径方向隙間をSとし、ボール2の直径をDwとしたときに、半径方向隙間Sを、0 < S ≦ 0.1Dwの範囲とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械やプレス機械、射出成形機等の機械装置の移動台の位置決め用や搬送用等の直線移動機構の駆動や動力伝達用に用いられるボールねじ装置やローラねじ装置等の直動ねじ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の直動ねじ装置としてのボールねじ装置は、外周面に螺旋状の軸軌道溝を形成したねじ軸と、内周面に軸軌道溝に対向するナット軌道溝を形成した一対のナット部分を間座により連結したナットとを複数のボールを介して螺合させ、ナットの両端部に接触シールを装着し、対向配置されたナット軌道溝と軸軌道溝とにより形成される負荷路の両端をナットに設けたリターンチューブにより連通して2つの循環路を形成し、それぞれの循環路によりボールを循環させながらねじ軸の回転運動をナットの直線運動に変換して構成され、ねじ軸を回転させながら、ナットの一端に設けたフランジ部に形成されたグリースの補給穴から新たなグリースを加圧供給し、ナットの他端に設けた接触シールの隙間から劣化グリースを押出して、ナット内部の潤滑剤保持空間に存在している劣化グリースを新たなグリースに交換している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−118017号公報(第2頁段落0011−第3頁段落0016、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、軸軌道溝やナット軌道溝の加工は、加工代を減少させるために、荷重を受けたときの接触楕円がランド部(軸軌道溝間のねじ軸の外周面、またはナット軌道溝間のナットの内周面をいう。)に、はみ出さない範囲でランド部の直径をねじ軸の場合は小さく、ナットの場合は大きくして、軸軌道溝やナット軌道溝を比較的浅い溝に形成することが行われており、ねじ軸のランド部とナットのランド部との間の半径方向隙間は、ボールの直径の20%程度にされている。
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術においては、ナット内部の潤滑剤保持空間に存在しているグリースを一端から他端に押出してグリースの交換を行っているため、ねじ軸のランド部とナットのランド部との間の、ボールの直径の20%程度とされた比較的大きい半径方向隙間にもグリースが流入し、ランド部の間に存在するグリースは負荷路を転動するボールの潤滑には利用され難く、供給したグリースに無駄が生ずるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、ボールねじ装置等の直動ねじ装置に供給した新たなグリースを、主に転動体が転動する負荷路に供給する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、外周面に螺旋状の軸軌道溝を形成したねじ軸と、内周面に前記軸軌道溝に対向するナット軌道溝を形成したナットと、前記軸軌道溝とナット軌道溝とで形成される負荷路と、該負荷路を転動する複数の転動体とを備えた直動ねじ装置において、前記ナット軌道溝間のランド部と、前記軸軌道溝間のランド部との間の半径方向隙間をSとし、前記転動体の直径をDwとしたときに、前記半径方向隙間Sを
0 < S ≦ 0.1Dwの範囲としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
これにより、本発明は、ナットランド部と軸ランド部との間の半径方向隙間へのグリースの充填を抑制して、ナットの内部に供給された新たなグリースを、主に負荷路に供給することができ、必要最小限のグリースの補給で、負荷路を転動するボールを有効に潤滑することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1のボールねじ装置の断面を示す説明図
【図2】実施例1のヘリカルスペーサを示す斜視図
【図3】実施例1のヘリカルスペーサの取付状態を示す説明図
【図4】実施例2のボールねじ装置の断面を示す説明図
【図5】実施例2の潤滑剤の供給状態を示す説明図
【図6】実施例3のボールねじ装置の断面を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して本発明による直動ねじ装置の実施例について説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は実施例1のボールねじ装置の断面を示す説明図、図2は実施例1のヘリカルスペーサを示す斜視図、図3は実施例1のヘリカルスペーサの取付状態を示す説明図である。
図1において、1は直動ねじ装置としてのボールねじ装置である。
2はボールねじ装置1の転動体としてのボールであり、合金鋼等の鋼材で製作された球体である。
【0012】
3はボールねじ装置1のねじ軸であり、合金鋼等の鋼材で製作された棒状部材であって、その外周面には2つの円弧凹面を略V字状に配置して構成されたゴシックアーク形状の溝である軸軌道溝4が所定のリードで螺旋状に形成され、軸軌道溝4の間に、ねじ軸3の外周面である螺旋状のランド部(軸ランド部3aという。)が形成されている。
5はボールねじ装置1のナットであり、合金鋼等の鋼材で製作された円筒状部材であって、その内周面には、2つの円弧凹面を略V字状に配置して構成されたゴシックアーク形状の溝であるナット軌道溝6が軸軌道溝4と対向して軸軌道溝4と同じリードで形成され、ナット軌道溝6の間に、ナット5の内周面である螺旋状のランド部(ナットランド部5aという。)が形成されている。
【0013】
本実施例のナットランド部5aと、軸ランド部3aとの半径方向隙間Sは、ボール2の直径をDwとしたときに、S=0.2Dw程度に設定されている。
7は研削逃げ溝であり、ゴシックアーク形状の軸軌道溝4およびナット軌道溝6を研削加工により形成するために、軸軌道溝4およびナット軌道溝6の溝底に設けられた逃げ溝であって、螺旋状の軸軌道溝4およびナット軌道溝6の全長に渡って設けられている。
【0014】
8はフランジ部であり、ナット5の外周部の一方の端部に設けられ、フランジ部8に設けられた取付ボルト穴8aにより図示しない機械装置の移動台に取付ボルト等で固定される。
9はボールねじ装置1の連通部材としてのリターンチューブであり、鋼材や樹脂材料等で製作され、ボール2が通過可能な内径を有する略U字形に曲折した管であって、ナット5の外周面の一部を軸方向と平行に切欠いた平面5bに設けられたナット軌道溝6に達する穴にその端部が嵌合してナット軌道溝6に連通しており、図示しないチューブ固定具等によりナット5に固定される。
【0015】
これにより、軸軌道溝4とナット軌道溝6とにより形成される負荷路の両端部はリターンチューブ9の内径として形成された連通路により連通され、ボール2が循環する循環路が形成される。
本実施例の循環路は、ねじ軸3の軸方向に2箇所形成されている。
10はシール部材としての高密封シールであり、合金鋼等の板材で製作された芯金と、この芯金に焼付けや接着等の接合手段で接合された、合成ゴムや合成樹脂等の弾性を有する弾性材で製作されたシール体とにより形成された円環状部材であって、ナット5の軸方向の両端部に取付けられており、そのシール体のリップ部11の先端は、ナット5の両端部に取付けられたときに、内周縁が摺接するねじ軸3の部位の軸直角断面(ねじ軸3の軸芯が鉛直線となる断面をいう。)の形状に所定のシール代を持たせた相似形状に形成され、ねじ軸3の外周面3aおよび/もしくは軸軌道溝4の円弧凹面で形成されるねじ軸3の外表面に内周縁が摺接して接触式シールとして機能する。
【0016】
13は潤滑剤供給穴であり、ナット5の外周面からナット5を半径方向に貫通して負荷路を構成するナット軌道溝6の溝底の研削逃げ溝7の底面に開口する穴であって、その外周面側には配管用めねじ等を形成した注入アダプタ14がねじ止めされており、それぞれの循環路に潤滑剤としてのグリースを注入するために用いられる。
16は潤滑剤排出穴であり、ナット5のフランジ部8と反対側の端部に設けられた高密封シール10とその近傍の循環路との間に、ナット5を半径方向に貫通して形成されており、ねじ軸3を回転させたときに、ナット5の内部に存在するグリースをナット5の半径方向に導いて外部に排出する機能を有している。
【0017】
18は螺旋状部材としてのヘリカルスペーサであり、図2に示すように、樹脂材料または金属材料からなる矩形断面の薄板を、ナット軌道溝6の溝筋に沿った螺旋状に成形して形成され、その内径はねじ軸3の軸ランド部3aの外径に遊嵌するように、その外径はナット5のナットランド部5aの内径と同等に形成され、その矩形断面のナット軌道溝6の溝筋と直交する方向(溝直交方向という。)の幅は、負荷路を形成するナット軌道溝6を転動するボール2間の溝直交方向の距離より狭くなるように形成されている。
【0018】
また、ヘリカルスペーサ18は、その幅方向の中央部で、その巻方向の中央部に設けられたねじ穴19(図2参照)に、図3に示すように、ナット5を半径方向に挿通させたボルト20を螺合させて締結することにより、回転方向および軸方向の自由度を拘束された状態でナットランド部5aに取付けられる。
なお、ヘリカルスペーサ18の取付方法は、ナット5の外周面から半径方向に挿入した取付棒の先端を、ねじ穴19と同様の位置に設けた嵌合穴に嵌合させ、回転方向および軸方向の自由度を拘束した状態でナットランド部5aに取付けるようにしてもよい。
【0019】
上記の循環路には、複数のボール2が装填されると共に、潤滑剤供給穴13からと所定の量のグリースが負荷路に注入され、ねじ軸3を回転させることによってボール2が循環路を循環し、負荷路を転動するボール2がグリースにより潤滑されながらナット5に加えられた荷重を往復動自在に支持して、ナット5をねじ軸3の軸方向に沿って直線的に往復移動させ、ねじ軸3の回転運動がナット5の直線運動に変換され、ボールねじ装置1が直動ねじ装置として機能する。
【0020】
このボールねじ装置1の作動のときに、図示しない自動給脂装置から供給されたグリースが潤滑剤供給穴13から間欠的に負荷路に自動補給され、劣化したグリースは、ねじ軸3の回転に伴って、潤滑剤供給穴13から離れた位置に配置された潤滑剤排出穴16からナット5の外部に排出される。
このとき、本実施例のナット5のナットランド部5aには、軸ランド部3aとの間の半径方向隙間Sを塞ぐヘリカルスペーサ18が取付けられているので、ナットランド部5aと軸ランド部3aとの間の半径方向隙間Sへのグリースの流入を抑制して、潤滑剤供給穴13から供給された新たなグリースを、主に負荷路に配分することができ、ボール2の潤滑に利用できないグリースの無駄な補給を排除して、必要最小限のグリースの補給で、負荷路を転動するボール2を有効に潤滑することができる。
【0021】
また、グリースが、潤滑剤供給穴13から直接負荷路に供給されるので、ナット5に加えられた荷重を支持するボール2にグリースを直接作用させることができ、負荷路を転動するボール2の潤滑効率を高めることができる。
更に、ナット5の両端部には、ねじ軸3の外表面に摺接するリップ部11を有する高密封シール10が取付けられているので、ナット5の外部からの塵埃等の異物の侵入を防止することができると共に、ナット5の端面からのグリースの漏洩を防止することができる。
【0022】
このように、本実施例のボールねじ装置1においては、ヘリカルスペーサ18により半径方向隙間Sへのグリースの流入を抑制しながら、劣化したグリースを潤滑剤排出穴16から排出するので、負荷路に新たなグリースを常に存在させることができ、必要最小限のグリースの補給により、ボールねじ装置1の寿命の延長や、磨耗の低減を図ることができる。
【0023】
以上説明したように、本実施例では、ボールねじ装置のナットのナットランド部に、軸ランド部に遊嵌する、ナット軌道溝の溝筋に沿ったヘリカルスペーサを設けたことによって、ナットランド部と軸ランド部との間の半径方向隙間Sへのグリースの流入を抑制して、ナットの内部に供給された新たなグリースを主に負荷路に供給することができ、必要最小限のグリースの補給で、負荷路を転動するボールを有効に潤滑することができる。
【0024】
なお、本実施例においては、潤滑剤供給穴には潤滑剤としてのグリースを供給するとして説明したが、潤滑剤としての潤滑油等を供給するようにしてもよい。
【実施例2】
【0025】
図4は実施例2のボールねじ装置の断面を示す説明図、図5は実施例2の潤滑剤の供給状態を示す説明図である。
なお、上記実施例1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施例のボールねじ装置1には、図4に示すように、上記実施例1のヘリカルスペーサ18に代えて、螺旋状部材としてのヘリカルチューブ25が設けられている。
【0026】
ヘリカルチューブ25は、樹脂材料または金属材料で形成されたチューブを、ナット軌道溝6の溝筋に沿った螺旋状に成形して形成され、その内径はねじ軸3の軸ランド部3aの外径に遊嵌するように、その外径はナット5のナットランド部5aの内径と同等に形成され、ナットランド部5aの溝直交方向の中央部に配置されている。
26は供給口であり、ナット5外周面から半径方向に、ナットランド部5aへ貫通する挿入穴27に挿入された、ヘリカルチューブ25と同様の材料で形成された直管状のチューブであって、ヘリカルチューブ25の巻方向の中央部でヘリカルチューブ25と接続しており、ヘリカルチューブ25の中空穴28(図5参照)にグリースを供給すると共に、ヘリカルチューブ25を回転方向および軸方向の自由度を拘束した状態でナットランド部5aに取付ける機能を有している。
【0027】
図5において、29は吐出穴であり、ヘリカルチューブ25の外周面から溝直交方向に中空穴28へ貫通する穴であって、その開口はナット軌道溝6の方向に向けられており、ナット軌道溝6と軸軌道溝4とで形成される負荷路の方向へ、図5に網掛けを付して示したグリースを供給する機能を備えており、ヘリカルチューブ25の巻方向に沿って等間隔に複数設けられている。
【0028】
このようなヘリカルチューブ25を設けたボールねじ装置1は、その作動のときに図示しない自動給脂装置から供給口26に間欠的に自動補給されたグリースが、吐出穴29から負荷路に供給され、劣化したグリースは、ねじ軸3の回転に伴って、潤滑剤排出穴16からナット5の外部に排出される。
このとき、本実施例のナット5のナットランド部5aには、ヘリカルチューブ25が取付けられているので、負荷路を転動するボール2により押出されてナットランド部5aと軸ランド部3aとの間の半径方向隙間Sへ流入したグリースを、吐出穴29から噴出させた新たなグリースでナット軌道溝6や軸軌道溝4に押戻すことができ、半径方向隙間Sへのグリースの流入を抑制して、供給口26から供給された新たなグリースを、主に負荷路に配分することができ、必要最小限のグリースの補給で、負荷路を転動するボール2を有効に潤滑することができる。
【0029】
また、グリースが、ヘリカルチューブ25の吐出穴29から直接負荷路に供給されるので、ナット5に加えられた荷重を支持するボール2にグリースを直接作用させることができ、負荷路を転動するボール2の潤滑効率を高めることができる。
更に、ナット5の両端部には、ねじ軸3の外表面に摺接するリップ部11を有する高密封シール10が取付けられているので、ナット5の外部からの塵埃等の異物の侵入を防止することができると共に、ナット5の端面からのグリースの漏洩を防止することができる。
【0030】
このように、本実施例のボールねじ装置1においては、ヘリカルチューブ25により半径方向隙間Sへのグリースの流入を抑制しながら、劣化したグリースを潤滑剤排出穴16から排出するので、負荷路に新たなグリースを常に存在させることができ、必要最小限のグリースの補給により、ボールねじ装置1の寿命の延長や、磨耗の低減を図ることができる。
【0031】
以上説明したように、本実施例では、ボールねじ装置のナットのナットランド部に、軸ランド部に遊嵌する、ナット軌道溝の溝筋に沿ったヘリカルチューブを設けたことによって、負荷路を転動するボールによりナットランド部と軸ランド部との間の半径方向隙間Sへ押出されたグリースを、吐出穴から噴出させた新たなグリースによりナット軌道溝や軸軌道溝へ押戻すことができ、半径方向隙間Sへのグリースの流入を抑制して、ナットの内部に供給された新たなグリースを主に負荷路に供給することが可能になり、必要最小限のグリースの補給で、負荷路を転動するボールを有効に潤滑することができる。
【0032】
なお、本実施例においては、吐出穴はヘリカルチューブの巻方向に、等間隔に複数設けるとして説明したが、1箇所以上に設けるようにすれば足りる。
また、本実施例においては、グリースの供給口は、ヘリカルチューブの巻方向の中央部に設けるとして説明したが、複数箇所に設けるようにしても、中央部以外の位置に設けるようにしてもよく、潤滑剤排出穴の反対側の端部に設けるようにしてもよい。
【0033】
更に、本実施例においては、供給口には潤滑剤としてのグリースを供給するとして説明したが、潤滑剤としての潤滑油や、加圧空気に潤滑油の粒子を分散させたオイルミスト等を供給するようにしてもよい。
更に、本実施例においては、ヘリカルチューブ25の供給口26にはグリースを供給するとして説明したが、ナット5に、上記実施例1で説明した潤滑剤供給穴13を設けておき、供給口26に加圧空気を供給して、負荷路を転動するボール2により半径方向隙間Sに押出されたグリースを吐出穴29から噴出させた空気によりナット軌道溝6や軸軌道溝4へ押戻すようにしてもよい。このようにしても上記と同様の効果を得ることができる。
【0034】
この場合に、ヘリカルチューブ25を樹脂材料等の弾性材料で形成し、吐出口29、およびヘリカルチューブ25の両端部の開口を塞いで、中空穴28に空気を供給し、その空気を加圧、減圧してヘリカルチューブ25を軸ランド部3aに干渉しない程度に伸縮させて、負荷路を転動するボール2により半径方向隙間Sに押出されたグリースをナット軌道溝6や軸軌道溝4へ押戻すようにしてもよい。このようにすれば、半径方向隙間Sの空間容積を変化させて、上記と同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0035】
図6は実施例3のボールねじ装置の断面を示す説明図である。
なお、上記実施例1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施例は、軸ランド部3aと、ナットランド部5aとの間の半径方向隙間Sを、上記実施例1および実施例2の半径方向隙間S(=0.2Dw程度)より狭くしたものである。
【0036】
この場合に、半径方向隙間Sを、0<S≦0.1Dwの範囲とすれば、半径方向隙間Sを実施例1のヘリカルスペーサ18等で塞がなくても、ナットランド部5aと軸ランド部3aとの間の半径方向隙間Sへのグリースの流入を抑制して、ナット5の内部に供給されたグリースを主に負荷路に配分することができ、必要最小限のグリースの補給で、負荷路を転動するボール2を有効に潤滑することができる。
【0037】
以上説明したように、本実施例では、ナットランド部と軸ランド部との間の半径方向隙間Sを、0<S≦0.1Dwの範囲としたことによって、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。
なお、上記各実施例においては、循環路が2箇所に設けられたボールねじ装置を例に説明したが、循環路が1箇所のボールねじ装置の場合も同様である。
【0038】
また、上記各実施例においては、ナット内部へのグリースの供給は自動給脂装置により間欠的に行うとして説明したが、自動給脂装置により連続的に供給するようにしてもよく、グリースガンを用いた手動給脂であってもよい。
また、上記各実施例においては、リターンチューブによりボールを循環させるチューブ式の循環方式を用いたボールねじ装置に本発明を適用した場合を例に説明したが、エンドキャップ式やデフレクタ式等の循環方式のボールねじ装置に本発明を適用しても同様の効果を得ることができる。
【0039】
更に、上記各実施例においては、直動ねじ装置は、転動体をボールとしたボールねじ装置であるとして説明したが、直動ねじ装置は前記に限らず、転動体を円柱状のローラとしたローラねじ装置であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 ボールねじ装置
2 ボール
3 ねじ軸
3a 軸ランド部
4 軸軌道溝
5 ナット
5a ナットランド部
5b 平面
6 ナット軌道溝
7 研削逃げ溝
8 フランジ部
8a 取付ボルト穴
9 リターンチューブ
10 高密封シール
11 リップ部
13 潤滑剤供給穴
14 注入アダプタ
16 潤滑剤排出穴
18 ヘリカルスペーサ
19 ねじ穴
20 ボルト
25 ヘリカルチューブ
26 供給口
27 挿入穴
28 中空穴
29 吐出穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に螺旋状の軸軌道溝を形成したねじ軸と、内周面に前記軸軌道溝に対向するナット軌道溝を形成したナットと、前記軸軌道溝とナット軌道溝とで形成される負荷路と、該負荷路を転動する複数の転動体とを備えた直動ねじ装置において、
前記ナット軌道溝間のランド部と、前記軸軌道溝間のランド部との間の半径方向隙間をSとし、前記転動体の直径をDwとしたときに、前記半径方向隙間Sを
0 < S ≦ 0.1Dw
の範囲としたことを特徴とする直動ねじ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ナットの両端部に、前記ねじ軸の外表面に摺接するリップ部を有するシール部材を設けたことを特徴とする直動ねじ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−37063(P2012−37063A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258320(P2011−258320)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【分割の表示】特願2007−177500(P2007−177500)の分割
【原出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】