説明

直動案内ユニット

【課題】耐荷重性及び耐久性に優れる直動案内ユニットを提供すること。
【解決手段】互いに対向する側面に直線状V溝11a、11bを対向して設けることにより滑動具案内路12を形成してなる二本のロッド22a、22b、そして案内路12に収容された長尺状滑動具13bを含む直動案内ユニットであって、前記の滑動具13bが、長尺状ローラ保持板14および保持板14に回転可能に直列配置された少なくとも6個の転動ローラを含み、そして前記の少なくとも6個の転動ローラが、中心軸を同一の方向に向けて配置された複数個の第1転動ローラと、中心軸を第1転動ローラの中心軸と交差する方向に向けて配置された、第1転動ローラの個数よりも2個以上多い個数の第2転動ローラ15Hとからなり、そして第1転動ローラのうちの何れか2個の転動ローラが、第2転動ローラ15Hを介して互いに隣接することのないように配置されていることを特徴とする直動案内ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長さ方向に沿って互いに直線移動可能な二本のロッドを備える直動案内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、各種の機械加工が施される物品、あるいは各種の検査が施される物品を位置決めするため、位置決め対象の物品が載置されるテーブル板を直線移動(直動)させる直動テーブルが用いられている。直動テーブルは、テーブル板の下面を直動案内ユニットが組み込まれた直動案内装置の複数個により互いに間隔をあけて支持した構成を有している。
【0003】
次に、これまでに知られている直動案内ユニットの構成例を、添付図面の図1〜図5を参照しながら説明する。
【0004】
図1は、従来の直動案内ユニットを用いた直動案内装置の構成例を示す一部切り欠き斜視図であり、そして図2は、図1に記入した切断線II−II線に沿って切断した直動案内装置20の断面図である。但し、図1において、直動案内ユニット21、22の各々の二本のロッドの間に配置される長尺状滑動具(図2:13a)は記入していない。
【0005】
直動案内装置20は、基台23に、直動案内ユニット21、22を介して滑動台24が直動可能に接続された構成を有している。
【0006】
直動案内ユニット21、22としては、互いに同一の構成のものが用いられている。直動案内ユニット21の一方のロッド21aは基台23に固定され、そして他方のロッド21bは滑動台24に固定されている。同様に、直動案内ユニット22の一方のロッド22aは基台23に固定され、そして他方のロッド22bは滑動台24に固定されている。
【0007】
直動案内ユニット21のロッド21bは、基台23に固定されたロッド21aの長さ方向に沿って直動可動であり、そして直動案内ユニット22のロッド22bもまた、基台23に固定されたロッド22aの長さ方向に沿って直動可能である。従って、直動案内装置20の滑動台24もまた、ロッド21a、22aの長さ方向に沿って直動可能である。
【0008】
このような直動案内装置20の複数個により、位置決め対象の物品が載置されるテーブル板を支持することにより、このテーブル板を位置決め対象の物品と共に直線移動(直動)させる直動テーブルを構成することができる。
【0009】
図3は、図1に示す直動案内ユニット22の構成を示す平面図である。図4は、図3に記入した切断線IV−IV線に沿って切断した直動案内ユニット22の断面図である。そして図5は、図4の直動案内ユニット22が備える長尺状滑動具13aを図の右側から見た図である。但し、図4において、転動ローラ15Hよりも紙面の奥側にある転動ローラ、および長尺状ローラ保持板14の各突起14aよりも紙面の奥側にある突起は記入していない(後に説明する図7についても同様である)。
【0010】
直動案内ユニット22は、互いに対向する側面に直線状V溝11a、11bを長さ方向に沿って且つ対向して設けることにより滑動具案内路12を形成してなる二本のロッド22a、22b、そして滑動具案内路12に滑動可能に収容された長尺状滑動具13aから構成されている。
【0011】
長尺状滑動具13aは、長尺状ローラ保持板14およびローラ保持板14に回転可能に直列配置された15個の転動ローラから構成されている。上記の15個の転動ローラは、それぞれの中心軸CLを同一の方向に向けて配置された複数個(合計で8個)の第1転動ローラ15Lと、それぞれの中心軸CHを第1転動ローラ15Lの中心軸CLと交差する方向に向けて配置された複数個(合計で7個)の第2転動ローラ15Hとから構成されている。第1転動ローラ15Lと第2転動ローラ15Hとは、長尺状ローラ保持板14の長さ方向に沿って交互に配置されている。
【0012】
なお、複数個の第1転動ローラ15Lを互いに区別するため、第1転動ローラを示す符号15Lの右側には、1、2、・・・の数字を記入している。同様に、複数個の第2転動ローラ15Hを互いに区別するため、第2転動ローラを示す符号15Hの右側には、1、2、・・・の数字を記入している。後に説明する図6及び図9についても同様である。
【0013】
特許文献1には、上記の直動案内ユニット22と同様の構成を有する直動案内ユニット(クロスローラガイド)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003−13950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前記の図4に示す直動案内ユニット22において、ロッド22bに上方から(図4に記入した矢印1aが示す方向に沿って)荷重が付与される場合、この荷重の方向は、V溝表面16aとV溝表面16bとの間隔を狭くするような方向である。このため、V溝表面16aとV溝表面16bとの各々に周面が接触している複数個の第2転動ローラ15Hに、上記荷重の殆どが付与される。その一方で、上記の荷重の方向は、V溝表面16cとV溝表面16dとの間隔を広くするような方向である。このため、V溝表面16cとV溝表面16dとの各々に周面が接触している複数個の第1転動ローラ(図5:15L)に、上記荷重は殆ど付与されない。
【0016】
これとは逆に、ロッド22bに下方から(図4に記入した矢印1bが示す方向に沿って)荷重が付与される場合、この荷重の方向は、V溝表面16aとV溝表面16bとの間隔を広くするような方向である。このため、V溝表面16aとV溝表面16bとの各々に周面が接触している複数個の第2転動ローラ15Hに、上記荷重は殆ど付与されない。その一方で、上記の荷重の方向は、V溝表面16cとV溝表面16dとの間隔を狭くするような方向である。このため、V溝表面16cとV溝表面16dとの各々に周面が接触している複数個の第1転動ローラ(図5:15L)に、上記荷重の殆どが付与される。
【0017】
すなわち、直動案内ユニット22では、ロッド22bに上方から荷重が付与された場合には、複数個(合計で7個)の第2転動ローラ15Hが上記荷重の殆どを支え、そしてロッド22bに下方から荷重が付与された場合には、複数個(合計で8個)の第1転動ローラ15Lが上記荷重の殆どを支えることになる。
【0018】
このように、従来の直動案内ユニットでは、第1転動ローラと第2転動ローラとが交互に配置されるため、第1転動ローラの総数と第2転動ローラの総数とは、互いに等しくなるか、あるいは差が1個となる(以下「ほぼ等しい」と云う)。このため、従来の直動案内ユニット、例えば、図4の直動案内ユニット22は、ロッド22bに上方及び下方の何れから荷重が付与された場合であっても、荷重を受ける第1転動ローラ15Hの総数と第2転動ローラ15Lの総数とがほぼ等しいことから、概ね同等の耐荷重性を示す。従って、直動案内ユニット22は、各種の機械装置に取り付ける際にロッド22bに付与される荷重の向きを考慮することなく、簡易に使用することができる。
【0019】
しかしながら、直動案内ユニット22を各種の機械装置に水平方向に取り付けたのちには、ロッド22bに、上方及び下方の何れか一方の方向から継続的に荷重が付与されることが多い。このため、例えば、ロッド22bに上方から荷重が付与された場合、滑動具案内路12に収容された合計で15個の転動ローラのうちの約半数の転動ローラ、すなわち合計で7個の第2転動ローラ15Hが上記荷重の殆どを支え、残りの約半数の転動ローラ、すなわち合計で8個の第1転動ローラ15Lは上記荷重を殆ど支えることがない。すなわち、従来の直動案内ユニット22においては、滑動具案内路12に収容された合計で15個の転動ローラのうちの約半数の転動ローラ、すなわち合計で8個の第1転動ローラ15Lは、耐荷重性の発揮に有効に利用されていない。
【0020】
また、前記のように、例えば、ロッド22bに上方から継続的に荷重が付与されると、この荷重の殆どが、滑動具案内路12に収容された合計で15個の転動ローラのうちの約半数の転動ローラ、すなわち合計で7個の第2転動ローラ15Hに集中して、かつ継続して付与されるため、第2転動ローラ15Hの外周面に大きな摩耗を生じ易い。従って、従来の直動案内ユニット22は、必ずしも耐久性が十分であるとは云えない。
【0021】
本発明の課題は、耐荷重性及び耐久性に優れる直動案内ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者は、直動案内ユニットの滑動具案内路に収容される複数個の転動ローラの配置を、ロッドに加わる荷重が、滑動具案内路に収容したより多くの個数の転動ローラに分散して付与されるよう工夫することにより、直動案内ユニットの耐久性及び耐荷重性の向上が可能になることを見出し、本願発明に到達した。
【0023】
本発明は、互いに対向する側面に直線状V溝を長さ方向に沿って且つ対向して設けることにより滑動具案内路を形成してなる二本のロッド、そして滑動具案内路に滑動可能に収容された長尺状滑動具を含む直動案内ユニットであって、上記の長尺状滑動具が、長尺状ローラ保持板および長尺状ローラ保持板に回転可能に直列配置された少なくとも6個の転動ローラを含む長尺状滑動具であり、各転動ローラが下記の配置にあることを特徴とする直動案内ユニットにある。
すなわち、長尺状滑動具に含まれる少なくとも6個の転動ローラが、それぞれの中心軸を同一の方向に向けて配置された複数個の第1転動ローラと、それぞれの中心軸を第1転動ローラの中心軸と交差する方向に向けて配置された、第1転動ローラの個数よりも2個以上多い個数の第2転動ローラとからなり、そして第1転動ローラのうちの何れか2個の転動ローラが、1個もしくは2個以上の第2転動ローラを介して互いに隣接することのないように配置されている。
【0024】
なお、本明細書において、2個の転動ローラの中心軸が同一の方向に向くとは、ロッドの端面の側から見て、2個の転動ローラの中心軸が一致する配置にあることを意味する。また、2個の転動ローラの中心軸が交差する方向に向くとは、ロッドの端面の側から見て、2個の転動ローラの中心軸が互いに交差する配置にあることを意味する。この場合、2個の転動ローラの中心軸が交差する角度は、90度±10度の範囲にあることが好ましく、90度±5度の範囲にあることが更に好ましく、90度であることが特に好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の直動案内ユニットは、特に水平方向に配置して使用した際に、上方及び下方の何れか一方の方向からロッドに加わる荷重が、従来の直動案内ユニットと比較して、より多くの個数の転動ローラに分散して付与されるため優れた耐荷重性を発揮し、また分散された小さな荷重が付与され、各々の転動ローラの摩耗が低減されるため優れた耐久性をも発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来の直動案内ユニットを用いた直動案内装置の構成例を示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】図1に記入した切断線II−II線に沿って切断した直動案内装置20の断面図である。
【図3】図1に示す直動案内ユニット22の構成を示す平面図である。
【図4】図3に記入した切断線IV−IV線に沿って切断した直動案内ユニット22の断面図である。
【図5】図4の直動案内ユニット22が備える長尺状滑動具13aを図の右側から見た図である。
【図6】本発明の直動案内ユニットに用いられる長尺状滑動具13bの構成例を示す図である。
【図7】図6に示す長尺状滑動具13bを用いた本発明の直動案内ユニットの構成を示す断面図である。
【図8】図7の直動案内ユニット32を用いた直動案内装置30の構成例を示す断面図である。
【図9】本発明の直動案内ユニットに用いられる長尺状滑動具の別の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の直動案内ユニットの構成は、長尺状滑動具が備える第1転動ローラ及び第2転動ローラの配置が異なること以外は、従来の直動案内ユニットの構成と同様である。以下では、本発明の直動案内ユニットの構成について、従来の直動案内ユニットとの相違点、すなわち長尺状滑動具の構成を中心に説明を行なう。
【0028】
本発明の直動案内ユニットでは、長尺状滑動具の第2転動ローラの個数が、第1転動ローラの個数よりも2個以上多い個数とされていて、直動案内ユニットのロッドに付与される荷重が、従来の直動案内ユニットの場合と比較して、より多くの個数の第2転動ローラに分散して付与される。従って、本発明の直動案内ユニットは、優れた耐荷重性を発揮する。また、分散された小さな荷重が付与されるため、各々の第2転動ローラの摩耗が低減される。従って、本発明の直動案内ユニットは、優れた耐久性をも発揮する。
【0029】
また、第1転動ローラのうちの何れか2個の転動ローラが、1個もしくは2個以上の第2転動ローラを介して互いに隣接することのないように配置されていると、後述のように直動案内ユニットのロッドの幅方向の微動と傾斜移動とが抑制されるため、ロッドが良好な直進性を示す。
なお、上記の2個の第1転動ローラの間には、上記のように1個もしくは2個以上の第2転動ローラが介在していれば、更に別の1個もしくは2個以上の第1転動ローラが介在していてもよい。
【0030】
本発明の直動案内ユニットの好ましい態様は、次の通りである。
(1)上記の互いに隣接することのないように配置された2個の転動ローラのそれぞれが、長尺状ローラ保持板の両端部に隣接する位置に配置された転動ローラもしくはその転動ローラに隣接する位置に配置された転動ローラである。このような構成により、後述のようにロッドの傾斜移動を効果的に抑制することができるため、ロッドの直進性が向上する。
なお、上記の2個の転動ローラのうちの一方が、長尺状ローラ保持板の両端部に隣接する位置に配置された転動ローラであって、そして他方が、長尺状ローラ保持板の両端部に隣接する位置に配置された転動ローラに隣接する位置に配置された転動ローラであってもよい。
【0031】
(2)上記の長尺状滑動具に含まれる転動ローラの個数が少なくとも8個であり、かつ上記の互いに隣接することのないように配置された2個の転動ローラの間に介在する第2転動ローラの個数が3個以上である。更に好ましくは、上記の長尺状滑動具に含まれる転動ローラの個数が少なくとも10個であり、かつ上記の互いに隣接することのないように配置された2個の転動ローラの間に介在する第2転動ローラの個数が4個以上である。特に好ましくは、上記の長尺状滑動具に含まれる転動ローラの個数が少なくとも14個であり、かつ上記の互いに隣接することのないように配置された2個の転動ローラの間に介在する第2転動ローラの個数が6個以上である。このような構成により、後述のようにロッドの傾斜移動を効果的に抑制することができるため、ロッドの直進性が向上する。
なお、長尺状滑動具に含まれる転動ローラの個数は、通常は6〜100個、好ましくは6〜80個、特に6〜60個の範囲内に設定される。
【0032】
(3)第2転動ローラの個数が第1転動ローラの個数の2〜5倍の範囲内にある。これにより、直動案内ユニットの耐荷重性や耐久性が更に良好になる。
(4)少なくとも1個の第1転動ローラの両側のそれぞれに、2個以上かつ互いに同数の第2転動ローラが配置されている。このような構成により、後述のように本願発明で採用する第1転動ローラと第2転動ローラとが所定の配置にある長尺状保持板を、直動案内ユニットの長さに応じた長さにて作製することが容易になる。
(5)2本のロッドの内の一方が固定部材に固定され、他方が滑動部材に固定されていて、第2転動ローラの中心軸が滑動部材に固定されたロッドの側から固定部材に固定されたロッドの側へと上方に伸びている。これにより、滑動部材に固定されたロッドに上方から付与される荷重に対する耐荷重性を向上させることができる。
【0033】
本発明の直動案内ユニットのロッド、長尺状ローラ保持板、および転動ローラは、通常は鋼に代表される金属材料、あるいはセラミック材料から形成される。長尺状ローラ保持板を、樹脂材料から形成することもできる。
【0034】
長尺状滑動具の転動ローラとしては、厳密な円柱形状の転動ローラのみでなく、公知の直動案内ユニットに用いられている転動ローラ(例、円柱の各端面周縁を面取りした形状のもの、円柱の周面を膨出させた太鼓状の形状のもの)も用いることができる。転動ローラの形状に応じて、ロッドの直線状V溝の形状を変形する、例えば、V溝の表面を湾曲させたり、あるいはV溝の角部を面取りもしくは円弧の形状にしたりすることもできる。
【0035】
長尺状ローラ保持板としては、公知の直動案内ユニットが備える長尺状ローラ保持板と同様の構成のものを用いることができる。
【0036】
本発明の直動案内ユニットは、通常は、ロッドを水平方向に向けて使用される。直動案内装置に上方から荷重が付与される場合には、荷重が付与されるロッドの第2転動ローラの周面に接触するV溝表面が、第2転動ローラの周面に接触しないV溝表面よりも上方に位置するように直動案内ユニットを配置する。直動案内装置に下方から荷重が付与される場合には、荷重が付与されるロッドの第2転動ローラの周面に接触するV溝表面が、第2転動ローラの周面に接触しないV溝表面よりも下方に位置するように直動案内ユニットを配置する。
【0037】
以下では、本発明の直動案内ユニットの構成を、添付の図面に示した実施態様を参照しながら、更に詳しく説明する。
【0038】
図6は、本発明の直動案内ユニットに用いられる長尺状滑動具13bの構成例を示す図である。図7は、図6に示す長尺状滑動具13bを用いた本発明の直動案内ユニット32の構成を示す断面図である。
【0039】
直動案内ユニット32は、互いに対向する側面に直線状V溝11a、11bを長さ方向に沿って且つ対向して設けることにより滑動具案内路12を形成してなる二本のロッド22a、22b、そして滑動具案内路12に滑動可能に収容された長尺状滑動具13bから構成されている。
【0040】
図7に示す本発明の直動案内ユニット32の構成は、長尺状滑動具13bが備える第1転動ローラ(図6:15L)及び第2転動ローラ15Hの配置が異なること以外は、図4に示す従来の直動案内ユニット22の構成と同様である。
【0041】
本発明の直動案内ユニット32は、長尺状滑動具13bが、長尺状ローラ保持板14およびローラ保持板14に回転可能に直列に(保持板14の長さ方向に一列に並べられた状態で)配置された15個(少なくとも6個)の転動ローラを含む長尺状滑動具であって、各転動ローラが下記の配置にあることに特徴がある。
【0042】
すなわち、長尺状滑動具13bに含まれる上記の15個の転動ローラは、それぞれの中心軸CLを同一の方向に向けて配置された複数個(合計で2個)の第1転動ローラ15Lと、それぞれの中心軸CHを第1転動ローラ15Lの中心軸CLと交差する方向に向けて配置された、第1転動ローラ15Lの個数よりも2個以上多い個数(合計で13個)の第2転動ローラ15Hとからなり、そして第1転動ローラ15Lのうちの2個の転動ローラ15L1、15L2が、2個以上(合計で13個)の第2転動ローラ15Hを介して互いに隣接することのないように配置されている。
【0043】
このように、本発明の直動案内ユニット32では、長尺状滑動具13bの第2転動ローラ15Hの個数が、第1転動ローラ15Lの個数よりも2個以上多い個数とされている。このため、直動案内ユニット32のロッド22bに上方から付与される荷重は、従来の直動案内ユニットの場合と比較して、より多くの個数の第2転動ローラ15Hに分散して付与される。従って、直動案内ユニット32は、優れた耐荷重性を発揮する。
【0044】
また、前記のように直動案内ユニット32のロッド22bに上方から付与される荷重が、より多くの個数の第2転動ローラ15Hに分散して付与されると、各々の第2転動ローラ15Hには、分散された小さな荷重が付与される。このため、各々の第2転動ローラ15Hの摩耗が低減される。従って、直動案内ユニット32は、優れた耐久性をも発揮する。
【0045】
直動案内ユニットの耐荷重性や耐久性を向上させるため、第2転動ローラの個数が第1転動ローラの個数の2〜5倍の範囲内にあることが好ましい。
【0046】
その一方で、仮に直動案内ユニット22の長尺状滑動具が備える全ての転動ローラが、それぞれの中心軸を上記の第2転動ローラ15Hの中心軸CHの方向と同一の方向に向けて配置された転動ローラであるとすると、ロッド22bに上方から付与される荷重は、長尺状滑動具が備える全ての転動ローラに分散して付与されるため、直動案内ユニットの耐荷重性や耐久性が極めて良好になるものの、何れの転動ローラもロッド22bに下方から付与される荷重を殆ど受けることができなくなる。このため、例えば、外部から付与される振動や衝撃により、ロッド22bに下方から荷重が付与された際にロッド22bが上方に微動し、次いで上方から荷重が付与された際にロッド22bが下方に微動して、ロッド22bの直進性が低下することがある。
【0047】
このようなロッドの上下方向(幅方向)の微動を抑制するため、本発明の直動案内ユニットでは、ロッドに下方から付与される荷重を受けてロッドを支持することのできる2個の第1転動ローラ15L、例えば、直動案内ユニット32の場合には、2個の第1転動ローラ15L1、15L2が用いられる。
【0048】
なお、第1転動ローラの個数が1個である(あるいは第1転動ローラの個数が2個であっても、2個の第1転動ローラが互いに隣接して配置されている)と、例えば、外部から付与される振動や衝撃により、上記の1個の第1転動ローラ(あるいは互いに隣接して配置された2個の第1転動ローラ)を中心として、ロッド22bが僅かに傾斜移動して、ロッド22bの直進性を低下させることがある。
【0049】
このようなロッドの傾斜移動を抑制するため、本発明の直動案内ユニットで用いる2個の第1転動ローラは、1個もしくは2個以上の第2転動ローラを介して互いに隣接することのないように配置される。例えば、直動案内ユニット32の場合には、2個の第1転動ローラ15L1、15L2は、2個以上(合計で13個)の第2転動ローラ15H1、15H2、・・・、15H12、15H13を介して互いに隣接することのないように配置されている。
【0050】
図6に示すように、互いに隣接することのないように配置された2個の第1転動ローラ15L1、15L2のそれぞれは、上記のようなロッド22bの傾斜移動を効果的に抑制するため、長尺状ローラ保持板14の両端部に隣接する位置(一番端)に配置された転動ローラであることが好ましい。
【0051】
互いに隣接することのないように配置された2個の第1転動ローラのそれぞれは、長尺状ローラ保持板の両端部に隣接する位置(一番端)に配置された転動ローラに隣接する位置(端から二番目)に配置された転動ローラであってもよい。また、上記の2個の第1転動ローラのうちの一方の転動ローラが、長尺状ローラ保持板の両端部に隣接する位置に配置された転動ローラであって、そして他方の転動ローラが、ローラ保持板の両端部に隣接する位置に配置された転動ローラに隣接する位置に配置された転動ローラであってもよい。
【0052】
長尺状滑動具が備える転動ローラの個数が多い場合には、上記の2個の第1転動ローラの間に介在する第2転動ローラの個数を多くすることにより、上記のようなロッドの傾斜移動を効果的に抑制することができる。
【0053】
例えば、図6の長尺状滑動具13bは、滑動具13bに含まれる転動ローラの個数が15個(少なくとも14個)であり、かつ上記の互いに隣接することのないように配置された2個の転動ローラ15L1、15L2の間に介在する第2転動ローラの個数が13個(6個以上)とされている。
【0054】
長尺状滑動具に含まれる転動ローラの個数が少なくとも8個である場合には、上記の互いに隣接することのないように配置される2個の転動ローラの間に介在する第2転動ローラの個数は3個以上であることが好ましく、長尺状滑動具に含まれる転動ローラの個数が少なくとも10個である場合には、上記の互いに隣接することのないように配置される2個の転動ローラの間に介在する第2転動ローラの個数は4個以上であることが更に好ましく、長尺状滑動具に含まれる転動ローラの個数が少なくとも14個である場合には、上記の互いに隣接することのないように配置された2個の転動ローラの間に介在する第2転動ローラの個数は6個以上であることが特に好ましい。
【0055】
以下では、図6に示す長尺状ローラ保持板14を例として、ローラ保持板14への転動ローラの取り付け方法について説明する。
【0056】
図6に示すように、長尺状ローラ保持板14には、転動ローラが保持される複数個の開口部14bが形成されている。開口部14bの形状は、略楕円形に設定されている。例えば、転動ローラ15L1は、その中心軸CLがローラ保持板14に概ね直交するような配置にて、開口部14bに挿入される。この転動ローラ15L1を、保持板14の手前側に配置された端面が上方を向くように傾斜移動させると、その周面が開口部14bの縁部に接触するため、更に傾斜移動させることはできなくなる。この状態で、開口部14bの上下に設けた各突起14aをかしめて(塑性変形させて)、各突起14aを転動ローラ15L1の各端面に接触させて係合させる。これにより、転動ローラ15L1は、上記傾斜移動の向きとは逆向きにも移動することができなくなり、ローラ保持板14の開口部14bに回転可能な状態にて保持される。
【0057】
図8は、図7の直動案内ユニット32を用いた直動案内装置30の構成例を示す断面図である。
【0058】
図8の直動案装置30の構成は、本発明の直動案内ユニット31、32が用いられていること以外は図2の直動案内装置20の構成と同様である。直動案内ユニット31の構成は、直動案内ユニット32の構成と同一である。
【0059】
図8に示すように、本発明の直動案内ユニット、例えば、直動案内ユニット32においては、2本のロッドの内の一方、すなわちロッド22aが固定部材(基台23)に固定され、他方、すなわちロッド22bが滑動部材(滑動台24)に固定されていて、第2転動ローラ15Hの中心軸CHが、滑動部材に固定されたロッド22bの側から固定部材に固定されたロッド22aの側へと上方に伸びていることが好ましい。
【0060】
このような条件を満足するようにして、直動案内ユニットの一方のロッドを固定部材に、そして他方のロッドを滑動部材に、それぞれ固定することにより、滑動部材に固定されたロッドに上方から付与される荷重に対する耐荷重性を向上させることができる。
【0061】
直動案内装置30は、例えば、以下の手順に従って組み立てることができる。先ず、直動案内ユニット31のロッド21a、そして直動案内ユニット32のロッド22aを、それぞれ基台23のねじ孔23aにねじ込んだボルト29aを締め付けることにより基台23に固定する。次に、直動案内ユニット31、32の上に滑動台24を配置する。この滑動台24の各透孔24bにボルト29bを挿入してロッド21b、22bの各々のねじ孔28aに嵌め合わせる。この状態で、滑動台24の側面のねじ孔24aにボルト29cをねじ込んで締め付けると、直動案内ユニット31のロッド21aとロッド21b、そして直動案内ユニット32のロッド22aとロッド22bとが、それぞれ互いに締め付けられて加圧される(予圧が付与される)。これにより各直動案内ユニットの2本のロッドとその間に配置された複数個(少なくとも6個)の転動ローラとが隙間無く密着する。そして最後に各ボルト29bを締め付けることにより、ロッド21b、22bを滑動台24に固定する。
【0062】
なお、以上の説明では、図7及び図8に示す直動案内ユニット32のロッド22bに上方から荷重が付与される場合を例として、耐荷重性(および耐久性)の向上の効果について説明した。これとは逆に、ロッド22bに下方から荷重が付与される場合には、上記直動案内ユニット32の上下の向きを逆向きにして使用すれば、ロッド22bに下方から付与される荷重に対する耐荷重性を向上させることができる。
【0063】
図9は、本発明の直動案内ユニットに用いられる長尺状滑動具の別の構成例を示す図である。
【0064】
図9に示す長尺状滑動具13cでは、少なくとも一個の第1転動ローラ、具体的には、長尺状ローラ保持板14の長さ方向の両端に配置された2個の第1転動ローラ15L1、15L6よりも内側に配置された各々の第1転動ローラ15Lの両側のそれぞれに、2個かつ同数の第2転動ローラ15Hが配置されている。
【0065】
例えば、第1転動ローラ15L2の左側には、2個の第2転動ローラ15H1、15H2が配置されていて、そして右側にもまた、2個の第2転動ローラ15H3、15H4が配置されている。また、例えば、第1転動ローラ15L5の左側には、2個の第2転動ローラ15H7、15H8が配置されていて、そして右側にもまた、2個の第2転動ローラ15H9、15H10が配置されている。
【0066】
長尺状滑動具13cは、長尺状ローラ保持板14の長さ方向の両端に配置された2個の第1転動ローラ15L1、15L6よりも内側に、1個の第1転動ローラ15Lと2個の第2転動ローラ15Hとが、ローラ保持板14の長さ方向に沿って交互に繰り返して配置された構成にある。
【0067】
長尺状滑動具13cは、1個の第1転動ローラと2個の第2転動ローラとが、長尺状ローラ保持板の長さ方向に沿って交互に繰り返して配置された構成を有する長さの長い長尺状滑動具を予め作製しておき、これを直動案内ユニットの長さに応じた長さに切断することにより簡単に製造することができる。従って、長さの異なる直動案内ユニットの製造が容易になる。
【0068】
このように、本発明の直動案内ユニットにおいては、長尺状ローラ保持板の長さ方向の両端に配置された2個の第1転動ローラよりも内側に配置された各々の第1転動ローラの両側のそれぞれに、2個以上かつ互いに同数の第2転動ローラが配置されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0069】
1a、1b ロッドに付与される荷重の方向を示す矢印
11a、11b 直線状V溝
12 滑動具案内路
13a、13b、13c 長尺状滑動具
14 長尺状ローラ保持板
14a 突起
14b 開口部
15L 第1転動ローラ
15L1、15L2、15L3、15L5 第1転動ローラ
15L6、15L7、15L8 第1転動ローラ
15H 第2転動ローラ
15H1、15H2、15H3、15H4、15H5 第2転動ローラ
15H6、15H7、15H8、15H9、15H10 第2転動ローラ
15H11、15H12、15H13 第2転動ローラ
16a、16b、16c、16d V溝表面
20 直動案内装置
21 直動案内ユニット
21a、21b ロッド
22 直動案内ユニット
22a、22b ロッド
23 基台(固定部材)
23a ねじ孔
24 滑動台(滑動部材)
24a ねじ孔
24b 透孔
28a ねじ孔
29a、29b、29c ボルト
30 直動案内装置
31、32 直動案内ユニット
L、CH 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する側面に直線状V溝を長さ方向に沿って且つ対向して設けることにより滑動具案内路を形成してなる二本のロッド、そして該滑動具案内路に滑動可能に収容された長尺状滑動具を含む直動案内ユニットであって、該長尺状滑動具が、長尺状ローラ保持板および該ローラ保持板に回転可能に直列配置された少なくとも6個の転動ローラを含む長尺状滑動具であり、各転動ローラが下記の配置にあることを特徴とする直動案内ユニット:
該長尺状滑動具に含まれる少なくとも6個の転動ローラが、それぞれの中心軸を同一の方向に向けて配置された複数個の第1転動ローラと、それぞれの中心軸を第1転動ローラの中心軸と交差する方向に向けて配置された、第1転動ローラの個数よりも2個以上多い個数の第2転動ローラとからなり、
第1転動ローラのうちの何れか2個の転動ローラが、1個もしくは2個以上の第2転動ローラを介して互いに隣接することのないように配置されている。
【請求項2】
上記の互いに隣接することのないように配置された2個の転動ローラのそれぞれが、長尺状ローラ保持板の両端部に隣接する位置に配置された転動ローラもしくはその転動ローラに隣接する位置に配置された転動ローラである請求項1に記載の直動案内ユニット。
【請求項3】
上記の長尺状滑動具に含まれる転動ローラの個数が少なくとも8個であり、かつ上記の互いに隣接することのないように配置された2個の転動ローラの間に介在する第2転動ローラの個数が3個以上である請求項1に記載の直動案内ユニット。
【請求項4】
上記の長尺状滑動具に含まれる転動ローラの個数が少なくとも10個であり、かつ上記の互いに隣接することのないように配置された2個の転動ローラの間に介在する第2転動ローラの個数が4個以上である請求項3に記載の直動案内ユニット。
【請求項5】
上記の長尺状滑動具に含まれる転動ローラの個数が少なくとも14個であり、かつ上記の互いに隣接することのないように配置された2個の転動ローラの間に介在する第2転動ローラの個数が6個以上である請求項4に記載の直動案内ユニット。
【請求項6】
第2転動ローラの個数が第1転動ローラの個数の2〜5倍の範囲内にある請求項1もしくは2に記載の直動案内ユニット。
【請求項7】
少なくとも1個の第1転動ローラの両側のそれぞれに、2個以上かつ互いに同数の第2転動ローラが配置されている請求項1もしくは2に記載の直動案内ユニット。
【請求項8】
2本のロッドの内の一方が固定部材に固定され、他方が滑動部材に固定されていて、第2転動ローラの中心軸が滑動部材に固定されたロッドの側から固定部材に固定されたロッドの側へと上方に伸びている請求項1乃至7のうちのいずれかの項に記載の直動案内ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−32798(P2013−32798A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168562(P2011−168562)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(394000493)ヒーハイスト精工株式会社 (76)
【Fターム(参考)】