説明

直動案内装置用の給油継手固定スリーブ、直動案内装置、および直動案内装置の給油継手の固定方法

【課題】給油継手の取り付けと位置決めを容易にしつつも給油継手の緩みを防止する。
【解決手段】スライダ本体6に形成された給油継手50の装着穴41aに給油継手固定スリーブ60を挿入し、次いで、スライダ本体6にエンドキャップ7およびサイドシール5をこの順に重ね、次いで、給油継手50の軸部51を、サイドシール5,エンドキャップ7およびスライダ本体6に対して同軸に貫通形成された給油継手の装着穴5a,7aおよびスリーブ60の装着穴60dに順に挿入し、次いで、エンドキャップ7を固定するねじ22を締め込むことによって生じる軸方向の押圧力により、スリーブ60の楔の作用でスライダ本体6と給油継手50の軸部51相互の位置を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動テーブル等の直動体をその移動方向に案内する機械部品として工作機械などで使用される直動案内装置(リニアガイド)に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の直動案内装置は、案内レールと、この案内レールにこれに沿って相対移動可能に跨設されるスライダとを有する。スライダおよび案内レールには、相互の対向面に転動体転動溝がそれぞれ形成されるとともに、相互の転動体転動溝間に、複数の転動体(ボール)が介装されており、転動体転動溝間を転動体が転動することでスライダが案内レール上を円滑にスライド移動可能になっている。
【0003】
このような直動案内装置にあっては、スライダと案内レールの転動体転動溝間を複数の転動体が繰り返し転動することから、その円滑な動きを確保すると共に摩耗や異音の発生を防止するために、グリースなどの潤滑剤が絶えず供給されるようになっている。
このような潤滑剤の供給方法としては、例えば特許文献1に開示されるように、スライダ内に油路を形成し、この油路に連通して潤滑油を供給する給油継手を設け、この給油継手を介して転動体転動溝等に給油するものがある。同文献記載の技術では、給油継手の軸部表面に切欠部を形成し、スライダ上面の通し孔から止めネジをねじ込んでその先端を給油継手の切欠部に係合するように構成している。これによって、給油継手の取り付けと位置決めをするとともに、取り付けた給油継手の抜けを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−185564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の直動案内装置は、スライダ上面の通し孔から止めネジをねじ込んでその先端を給油継手の切欠部に係合する構成なので、スライダへの止めネジ穴の加工が必要であり、また、給油継手を固定するに際して、止めネジをねじ込んでその先端を給油継手の切欠部に係合するという作業工程が必要である。そのため、スライダの加工、組み付け作業性およびコスト面において未だ改善の余地がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、給油継手の位置合わせおよび固定を容易としつつ緩みを防止するとともに、スライダの加工、組み付け作業性およびコスト面において有利な直動案内装置用の給油継手固定スリーブおよびこれを備える直動案内装置、並びに直動案内装置の給油継手の固定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る直動案内装置用の給油継手固定スリーブは、案内レールと、該案内レールにこれに沿って相対移動可能に跨設されるスライダとを備え、前記スライダが、軸方向中央のスライダ本体と、該スライダ本体の両端に付設されるエンドキャップと、前記スライダ本体およびエンドキャップに対して同軸に貫通形成された給油継手用の装着穴に装着される軸部を有する給油継手とを備える直動案内装置に用いられ、前記給油継手を前記スライダに固定するための給油継手固定スリーブであって、前記給油継手固定スリーブは、円筒状に形成され且つ前記給油継手の軸部と前記スライダ本体の装着穴との間に介装されるようになっており、前記スライダ本体側に挿入される自身先端部側の外周面に、該先端部に向けて縮径する凸のテーパ面または凸の円弧面が形成されるとともに、前記スライダ本体の装着穴には、当該装着穴の奥に向けて縮径する凹のテーパ面または凹の円弧面が形成されており、前記凸のテーパ面または凸の円弧面は、前記エンドキャップが装着されたときに生じる軸方向の押圧力によって、前記凹のテーパ面または凹の円弧面との協働により径方向内側に縮径して、前記スライダ本体と前記給油継手の軸部相互の位置を着脱可能に固定することを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る給油継手固定スリーブによれば、当該給油継手固定スリーブが、給油継手の軸部とスライダ本体の装着穴との間に介装され、その状態でエンドキャップが装着されたときに生じる軸方向の押圧力によって、給油継手固定スリーブの凸のテーパ面または凸の円弧面が、スライダ本体の装着穴の凹のテーパ面または凹の円弧面との協働により径方向内側に縮径して、いわば「楔の作用」によってスライダ本体と前記給油継手の軸部相互の位置を着脱可能に固定することができる。そのため、給油継手の位置合わせ、および固定を容易としつつ緩みを防止することができる。
【0009】
そして、このような構成であれば、スライダ本体に給油継手を固定するためのねじ穴が不要であり、また、給油継手の位置決めおよび固定に際しても、止めねじが不要なので、上記例示した特許文献1記載の技術と比べて、スライダの加工、組み付け作業性およびコスト面において有利である。
ここで、本発明の一態様に係る給油継手固定スリーブにおいて、前記給油継手固定スリーブは、前記スライダ本体側に挿入される側とは反対側の面に、円環状の弾性体が更に付設されており、当該弾性体は、前記エンドキャップが装着されたときに生じる軸方向の押圧力による弾性変形により、径方向の隙間を塞ぐように、径方向外側に拡径し且つ内側に縮径することは好ましい。
【0010】
このような構成であれば、当該弾性体が、「シーリング部材」として機能するため、スリーブの内外径部分の隙間から潤滑剤が漏れることを防止する上で好適である。さらに、このような構成であれば、上記「楔の作用」に加えて、更に弾性体の内外径方向での弾性変形によってもスライダ本体と給油継手の軸部相互の位置を着脱可能に固定することができる。よって、固定をより確実なものとする上でも好適である。
【0011】
また、本発明の一態様に係る給油継手固定スリーブにおいて、前記給油継手固定スリーブが、前記円筒状の軸線方向に沿って形成されたスリ割りまたは切り欠き溝を有する構成であれば、素材の剛性が高い材料を採用する場合に、サイドシールが装着されたときに生じる軸方向の押圧力によって上記「楔の作用」を奏させる構成とする上で好適である。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る直動案内装置は、案内レールと、該案内レールにこれに沿って相対移動に跨設されるスライダとを備え、前記スライダが、軸方向中央のスライダ本体と、該スライダ本体の両端に付設されるエンドキャップと、前記スライダ本体およびエンドキャップに対して同軸に貫通形成された給油継手用の装着穴に装着される軸部を有する給油継手と、前記給油継手を前記スライダの装着穴に固定するための給油継手固定スリーブとを備えて構成される直動案内装置であって、前記給油継手固定スリーブが、上述した本発明の一態様に係る給油継手固定スリーブのいずれか一つであることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る直動案内装置によれば、本発明の一態様に係る給油継手固定スリーブで給油継手を固定することができるので、上記本発明の一態様に係る給油継手固定スリーブに基づく作用効果を奏する。つまり、給油継手の位置合わせおよび固定を容易としつつ緩みを防止するとともに、スライダの加工、組み付け作業性およびコスト面において有利な直動案内装置を提供することができる。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る直動案内装置の給油継手の固定方法は、案内レールと、該案内レールにこれに沿って相対移動に跨設されるスライダとを備え、前記スライダが、中央のスライダ本体と、該スライダ本体の両端に付設されるエンドキャップと、前記スライダ本体およびエンドキャップに対して同軸に貫通形成された給油継手用の装着穴に装着される軸部を有する給油継手と、前記給油継手を前記スライダの装着穴に固定するための給油継手固定スリーブとを備えて構成される直動案内装置における前記給油継手の固定方法であって、上述した本発明の一態様に係る給油継手固定スリーブのいずれか一つを用い、前記スライダ本体に形成された給油継手の装着穴に当該スリーブを先端部側から挿入し、次いで、前記スライダ本体に前記エンドキャップを重ね、次いで、前記給油継手の軸部を、前記エンドキャップおよびスライダ本体に嵌め込まれたスリーブの各装着穴に順に挿入し、次いで、前記エンドキャップを固定するねじを締め込むことによって、前記スライダ本体と前記給油継手の軸部相互の位置を着脱可能に固定することを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る直動案内装置の給油継手の固定方法によれば、本発明の一態様に係る給油継手固定スリーブで給油継手を固定するので、上記本発明の一態様に係る給油継手固定スリーブに基づく作用効果を奏する。つまり、給油継手の位置合わせおよび固定を容易としつつ緩みを防止するとともに、スライダの加工、組み付け作業性およびコスト面において有利な直動案内装置の給油継手の固定方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
上述のように、本発明によれば、給油継手の位置合わせおよび固定を容易としつつ緩みを防止するとともに、スライダの加工、組み付け作業性およびコスト面において有利である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一態様に係る直動案内装置の一実施形態であるリニアガイドの構造を示す斜視図である。
【図2】図1の直動案内装置を軸方向端部側から見た正面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図1のリニアガイドの分解斜視図(同図(a))および要部(図2のB矢視)の拡大図(同図(b))である。
【図5】本発明の一態様に係る給油継手の一実施形態の平面図である。
【図6】本発明の一態様に係る給油継手固定スリーブの一実施形態を説明する図であり、同図(a)はその正面図、(b)は側面図である。
【図7】本発明の一態様に係る直動案内装置用の給油継手の固定方法を説明する図であり、同図(a)は給油継手が固定前の状態を示し、(b)は給油継手が固定された状態を示している。
【図8】図6の変形例(第一変形例)であり、同図(a)はその正面図、(b)は側面図である。
【図9】図6の変形例(第二変形例)であり、同図(a)はその正面図、(b)は側面図である。
【図10】図6の変形例(第三変形例)であり、同図(a)はその正面図、(b)は側面図である。
【図11】図6の変形例(第四変形例)であり、同図(a)はその正面図、(b)は側面図である。
【図12】図6の変形例(第五変形例)であり、同図(a)はその正面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1および図2に示すように、この直動案内装置30は、直線状に延びて横断面が矩形状の案内レール1と、この案内レール1に沿って移動するスライダ2とから主に構成されている。案内レール1は、その高さ方向に貫通するボルト挿通孔1cがその長さ方向に所定の間隔を隔てて複数形成されている。そして、この案内レール1は、これら各ボルト挿通孔1cに挿通される固定ボルト(不図示)によって機械の基台(不図示)等に固定される。一方、スライダ2の上面には、止めネジ(不図示)によりこのスライダ2を直動テーブル(不図示)などの直動体に固定するためのネジ穴2aが複数箇所に設けられている。
【0019】
また、案内レール1の左右両側面1aの中央部と上端部には、転動体転動溝10がそれぞれ形成されている。これら転動体転動溝10は、横断面が円弧状をなし案内レール1の長手方向全長に亘って直線状に形成されている。一方、スライダ2は、案内レール1を跨ぐようにその上面1bに対向して下向きコ字形をなす軸方向中央のスライダ本体6と、このスライダ本体6の前後方向両端面に取り付けられた一対の循環部品であるエンドキャップ7とを有する。さらに、スライダ2の軸方向両端部(各エンドキャップ7の軸方向外端面)には、案内レール1とスライダ2との間の隙間の開口のうち軸方向端面側に面する部分を密封するサイドシール5が装着されている。エンドキャップ7は左右両側の締めねじ22によってスライダ本体6に固定され、サイドシール5も左右両側の締めねじ20によってエンドキャップ7を挟持しつつスライダ本体6に固定されるようになっている。
【0020】
さらに、スライダ本体6の左右内側面の中央部と上端部には、スライダ側の転動体転動溝11がスライダ本体6の前端部から後端部に亘って直線状に形成されている。そして、このスライダ側の転動体転動溝11と、案内レール1側の転動体転動溝10は互いに対向して転動体転動路13を構成しており、この転動体転動路13に複数の転動体3が転動自在に介装されている。また、図3に示すように、エンドキャップ7の内部には、一端が前記転動体転動路13と連通するU字型の方向転換路16が、案内レール1を挟んでその左右に上下一対ずつ形成されている。そして、これら各方向転換路16の他端がスライダ本体6内に形成された4つの転動体戻し路14とそれぞれ連通することで転動体3が無限転動するための4つの転動体循環路17を形成している。
【0021】
スライダ本体6内には、図4(a)に示すように、前記転動体転動路13などに潤滑油を供給するための油路40が形成されている。そして、スライダ本体6の端面には、この油路40と連通する給油孔41が軸方向に形成されるとともに、この給油孔41には、スライダ本体6の端面のエンドキャップ7およびサイドシール5を貫通するように、給油継手50が挿脱自在に挿着される。
【0022】
ここで、本発明においては、図4(b)に要部を示すように、スライダ本体6の装着穴41a(給油孔41の開口端部)に、給油継手50を固定するための給油継手固定スリーブ(以下、単にスリーブともいう)60が装着される。
詳しくは、給油継手50は、図5にも示すように、スライダ本体6、エンドキャップ7およびサイドシール5に対して同軸に貫通形成された給油継手50用の装着穴(図4(a)の符号41a,7a,5aに示す貫通孔)に挿通される管状(パイプ状)をした軸部51を有する。そして、この軸部51の端部に、略立方体状の継手部(ジョイント)52を備えたものであり、この継手部52に図示しない給油用のホースなどを連結することで必要な潤滑剤を給油できるようになっている。
【0023】
一方、上記スリーブ60は、樹脂成形品であって、図6に示すように、略円筒状に形成されるとともに、その外径d1がスライダ本体6の装着穴41aに挿入可能な僅かに小さい外径寸法に形成されるとともに、その内径d2が給油継手50の軸部51が挿入可能な僅かに大きい内径寸法に形成されることで軸部51の装着穴60dとされ、給油継手50の軸部51とスライダ本体6の装着穴41aとの間に僅かな隙間をもって介装されるようになっている。なお、この例では、スライダ本体6側に挿入される側とは反対側の面60cに、円環状の弾性体62が一体に溶着によって付設されている。
【0024】
また、このスリーブ60は、その外周面60aに対して、スライダ本体6側に挿入される先端側に、先端部に向けて縮径する凸の円弧面60bが形成されている。そして、スリーブ60の外径d1が嵌め込まれるスライダ本体6の装着穴41aには、凸の円弧面60bに対向する位置に、凹の円弧面41bが形成されている(図4(b)参照)。また、このスリーブ60は、円筒状の軸線方向に沿って形成された切り欠き溝64を凸の円弧面60bの部分に有する。この例では、切り欠き溝64は、周方向に等間隔に4箇所、軸方向に沿って形成されている。
【0025】
そして、このスリーブ60は、その軸方向の長さが、図7(a)に示すように、装着穴41aの深さよりも僅かに長くなっており、この僅かに長い部分が、「締め代」をつくっている。つまり、このスリーブ60は、図7(b)に装着状態を示すように、エンドキャップ7がスライダ本体6側に装着されたときに生じる軸方向の押圧力F(同図(a)参照)によって、凸の円弧面60bが、凹の円弧面41bとの協働により径方向内側に縮径して、いわば「楔の作用」によってスライダ本体6と給油継手50の軸部51相互の位置を着脱可能に固定可能になっている。また、軸方向の押圧力Fにより、弾性体62についても径方向の隙間を塞ぐように径方向内外に拡径し、これにより、スリーブの内外径部分の隙間から潤滑剤が漏れることを防止するとともに、スライダ本体6と給油継手50の軸部51相互の位置を固定するようになっている。
【0026】
次に、この直動案内装置30の作用・効果について説明する。
この直動案内装置30において給油継手50を組み付ける際には、上述のスリーブ60を用い、スライダ本体6に形成された給油継手50の装着穴41aに当該スリーブ60を凸の円弧面60bの側から予め挿入しておく。次いで、スライダ本体6にエンドキャップ7およびサイドシール5をスライダ本体6側からこの順に重ね、次いで、給油継手50の軸部51を、サイドシール5の装着穴5a、エンドキャップ7の装着穴7aおよびスライダ本体6に嵌め込まれたスリーブ60の装着穴60dに順に挿入する。次いで、エンドキャップ7を固定する締めねじ22を締め込む。
【0027】
これにより、エンドキャップ7が装着されたときに生じる軸方向の押圧力Fによって、スリーブ60の凸の円弧面60bが、スライダ本体6の装着穴41aの凹の円弧面41bとの協働により径方向内側に縮径し、「楔の作用」によってスライダ本体6と給油継手50の軸部51相互の位置を着脱可能に固定することができる。そのため、給油継手50の位置合わせおよび固定を容易としつつ緩みを防止することができる。そして、このような構成であれば、スライダ本体6に給油継手50を固定するためのねじ穴が不要であり、また、給油継手50の位置決めおよび固定に際しても、専用の止めねじが不要なので、上記例示した特許文献1記載の技術と比べて、スライダの加工、組み付け作業性およびコスト面において有利である。
【0028】
さらに、上述のスリーブ60は、スライダ本体6側に挿入される側とは反対側の面60cに、円環状の弾性体62が更に付設されており、この弾性体62が、エンドキャップ7が装着されたときに生じる軸方向の押圧力Fによって、径方向外側に拡径し且つ内側に縮径する弾性変形により、スライダ本体6と給油継手50の軸部51相互の位置を着脱可能に固定するので、この弾性体62が、径方向の隙間を塞ぐことで「シーリング部材」として機能する。そのため、スリーブ60の内外径部分の隙間から潤滑剤が漏れることを防止する上で好適である。さらに、このような構成であれば、上記「楔の作用」に加えて、更にこの弾性体60の内外径方向での弾性変形によってもスライダ本体6と給油継手50の軸部51相互の位置を着脱可能に固定することができるから、固定をより確実なものとする上でも好適である。
【0029】
また、上述のスリーブ60は、円筒状の軸線方向に沿って形成された切り欠き溝64を有するので、上記「楔の作用」を奏させる構成とする上で好適である。特に、素材の剛性が高い材料を採用する場合により望ましい。
なお、本発明に係る直動案内装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
【0030】
例えば、上記実施形態では、上記「楔の作用」を奏させるための構成として、スライダ本体6側に挿入される側の外周面に、先端部に向けて縮径する凸の円弧面60bが形成されている例で説明したが、これに限定されず、図8に変形例を示すように、凸の円弧面に替えて、凸のテーパ面60bを形成してもよい。このような構成であっても上記「楔の作用」を奏させることができる。
【0031】
また、例えば上記実施形態では、スライダ本体6側に挿入される側とは反対側の面60cに、円環状の弾性体62が更に付設されている例で説明したが、これに限定されず、変形例として図9に示すように、弾性体62を付設しない構成としてもよい。しかし、シーリング機能を付与しつつ、固定をより確実なものとする上では、スライダ本体側に挿入される側とは反対側の面に、円環状の弾性体を更に付設することが望ましい。
【0032】
また、例えば上記実施形態では、スリーブ60は、円筒状の軸線方向に沿って形成された切り欠き溝64を、周方向に等間隔に4箇所有する例で説明したが、これに限定されず、変形例として図10に示すように、切り欠き溝64とスリ割り65を組み合わせてもよい。なお、同図では、周方向に切り欠き溝64とスリ割り65を交互に等配して各4箇所形成した例である。さらに、図11に示すように、切り欠き溝64に替えてスリ割り65のみを設けてもよいし、さらにまた、切り欠き溝64やスリ割り65を形成する数についても、一(図11参照)または複数としてよく、更には図12に例示するように、切り欠き溝やスリ割り等を形成しない構成とすることもできる。
【0033】
しかし、上記「楔の作用」を効果的に奏させる上では、スリーブ60に、円筒状の軸線方向に沿って形成された切り欠き溝64またはスリ割り65を設けることが望ましい。また、上記実施形態では、スリーブ60が樹脂成形品である例で説明したが、素材についてもこれに限定されず、上記「楔の作用」を奏するものであれば、例えば鋼やその他の金属材料を使用してもよい。この場合に、特に円筒状の軸線方向に沿って形成された切り欠き溝またはスリ割りを設けることが望ましい。
【符号の説明】
【0034】
1 案内レール
2 スライダ
3 転動体
5 サイドシール
6 スライダ本体
7 エンドキャップ
10 (案内レール側の)転動体転動溝
11 (スライダ側の)転動体転動溝
13 転動体転動路
14 転動体戻し路
16 方向転換路
20 締めねじ
22 締めねじ
30 直動案内装置
40 油路
41 給油孔
50 給油継手
51 軸部
52 継手部
60 給油継手固定スリーブ
60a スリーブの外周面
60b スリーブの凸の円弧面
60d スリーブの装着穴
d1 スリーブの外径
d2 スリーブの内径
62 弾性体
64 切り欠き溝
65 スリ割り
F 押圧力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内レールと、該案内レールにこれに沿って相対移動可能に跨設されるスライダとを備え、前記スライダが、軸方向中央のスライダ本体と、該スライダ本体の両端に付設されるエンドキャップと、前記スライダ本体およびエンドキャップに対して同軸に貫通形成された給油継手用の装着穴に装着される軸部を有する給油継手とを備える直動案内装置に用いられ、前記給油継手を前記スライダに固定するための給油継手固定スリーブであって、
前記給油継手固定スリーブは、円筒状に形成され且つ前記給油継手の軸部と前記スライダ本体の装着穴との間に介装されるようになっており、前記スライダ本体側に挿入される自身先端部側の外周面に、該先端部に向けて縮径する凸のテーパ面または凸の円弧面が形成されるとともに、前記スライダ本体の装着穴には、当該装着穴の奥に向けて縮径する凹のテーパ面または凹の円弧面が形成されており、
前記凸のテーパ面または凸の円弧面は、前記エンドキャップが装着されたときに生じる軸方向の押圧力によって、前記凹のテーパ面または凹の円弧面との協働により径方向内側に縮径して、前記スライダ本体と前記給油継手の軸部相互の位置を着脱可能に固定することを特徴とする直動案内装置用の給油継手固定スリーブ。
【請求項2】
前記給油継手固定スリーブは、前記スライダ本体側に挿入される側とは反対側の面に、円環状の弾性体が更に付設されており、当該弾性体は、前記エンドキャップが装着されたときに生じる軸方向の押圧力による弾性変形により、径方向の隙間を塞ぐように、径方向外側に拡径し且つ内側に縮径することを特徴とする請求項1に記載の直動案内装置用の給油継手固定スリーブ。
【請求項3】
前記給油継手固定スリーブは、前記円筒状の軸線方向に沿って形成されたスリ割りまたは切り欠き溝を有することを特徴とする請求項1または2に記載の直動案内装置用の給油継手固定スリーブ。
【請求項4】
案内レールと、該案内レールにこれに沿って相対移動に跨設されるスライダとを備え、前記スライダが、軸方向中央のスライダ本体と、該スライダ本体の両端に付設されるエンドキャップと、前記スライダ本体およびエンドキャップに対して同軸に貫通形成された給油継手用の装着穴に装着される軸部を有する給油継手と、前記給油継手を前記スライダの装着穴に固定するための給油継手固定スリーブとを備えて構成される直動案内装置であって、
前記給油継手固定スリーブが、請求項1〜3のいずれか一項に記載の給油継手固定スリーブであることを特徴とする直動案内装置。
【請求項5】
案内レールと、該案内レールにこれに沿って相対移動に跨設されるスライダとを備え、前記スライダが、軸方向中央のスライダ本体と、該スライダ本体の両端に付設されるエンドキャップと、前記スライダ本体およびエンドキャップに対して同軸に貫通形成された給油継手用の装着穴に装着される軸部を有する給油継手と、前記給油継手を前記スライダの装着穴に固定するための給油継手固定スリーブとを備えて構成される直動案内装置における前記給油継手の固定方法であって、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の直動案内装置用の給油継手固定スリーブを用い、前記スライダ本体に形成された給油継手の装着穴に当該スリーブを先端部側から挿入し、次いで、前記スライダ本体に前記エンドキャップを重ね、次いで、前記給油継手の軸部を、前記エンドキャップおよびスライダ本体に嵌め込まれたスリーブの各装着穴に順に挿入し、次いで、前記エンドキャップを固定するねじを締め込むことによって、前記スライダ本体と前記給油継手の軸部相互の位置を着脱可能に固定することを特徴とする直動案内装置用の給油継手の固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−96532(P2013−96532A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241454(P2011−241454)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】