説明

直接酸化型燃料電池用表面処理された炭化水素系高分子電解質膜

第1および第2の相対向する表面を有する、プロトン伝導性の炭化水素系高分子電解質膜は、少なくとも前記第1および第2の表面の上または内部に組み入れられた少なくとも1種のパーフルオロポリマーを有する炭化水素系膜を含む。前記高分子電解質膜を作製する方法は、炭化水素系高分子電解質膜シートを、少なくとも1種のパーフルオロポリマーの水溶液または分散液中に浸漬することにより表面処理した後、表面処理された高分子膜シートを乾燥する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、燃料電池、燃料電池システム、およびこれらに用いられる高分子電解質膜に関する。より詳細には、本開示は、直接メタノール燃料電池などの直接酸化型燃料電池用の、表面処理された高分子電解質膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直接酸化型燃料電池(以下、「DOFC」)は、液体燃料の電気化学的酸化によって電気を発生させる電気化学装置である。DOFCは、あらかじめ燃料を処理する段階を必要としないので、間接型燃料電池、すなわちあらかじめ燃料を処理する必要がある電池よりも、重量およびスペースの点で相当な利点を提供する。DOFCで使用する対象となる液体燃料としては、メタノール(「MeOH」)、ギ酸、ジメチルエーテルなど、ならびにそれらの水溶液が挙げられる。酸化剤は、ほぼ純粋な酸素、または空気中にあるような酸素の希釈流であってもよい。DOFCを移動および携帯用途(例えば、ノートブックコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末など)に利用する重要な利点としては、液体燃料の貯蔵と取り扱いが容易であり、かつそのエネルギー密度が高いことが挙げられる。
【0003】
DOFCシステムの一例は、直接メタノール型燃料電池(以下、「DMFC」)である。DMFCは、一般に、アノードと、カソードと、それらの間に配置されたプロトン伝導性高分子電解質膜(以下、「PEM」)とを有する膜電極接合体(以下、「MEA」)を利用する。PEMの代表例は、疎水性フッ化炭素主鎖と、親水性の高いペンダント基であるスルホン酸基(SO3H)を含むパーフルオロエーテル側鎖と、を有する、パーフルオロスルホン酸−テトラフルオロエチレン共重合体からなるものであり、例えば、ナフィオン(登録商標)(ナフィオン(登録商標)は、デュポン社の登録商標である)などが挙げられる。スルホン酸基の加水分解された形(SO3-3+)は、H2Oにさらされると、膜内のプロトン(H+)輸送を効果的に行うと同時に、熱的、化学的、酸化的安定性を与える。DMFCでは、メタノール/水溶液が燃料としてアノードに直接供給され、空気が酸化剤としてカソードに供給される。アノードにおいて、メタノールは、触媒、通常、PtまたはRu合金系の触媒の存在下で水と反応して、二酸化炭素、H+イオン(プロトン)、および電子を生成する。電気化学反応は式(1)として以下に示される。
【0004】
【化1】

【0005】
DMFCの動作中、プロトンは、電子非伝導性であるプロトン伝導性電解質膜を通ってカソードに移動する。電子は、電力を負荷装置に送達する外部回路を通ってカソードに進む。カソードでは、プロトン、電子、および通常空気から得られる酸素分子が結合して、水を形成する。電気化学反応は次の式(2)で与えられる。
【0006】
【化2】

【0007】
電気化学反応(1)および(2)は、次の式(3)に示されるような全体的な電池反応を形成する。
【0008】
【化3】

【0009】
特に、DMFC技術は現在、リチウムイオン技術に基づくものなど、高度な電池と競合しているため、高濃度燃料が使用可能であることが可搬型の電源にとって望ましい。
【0010】
パーフルオロスルホン酸−テトラフルオロエチレン共重合体(例えば、ナフィオン(登録商標))には、DOFCにおいてPEMとして利用された場合、上記のような特有の利点があるものの、パーフルオロ化された膜には、メタノール(CH3OH)の一部を通過させてしまう傾向があるという欠点があり、このような通過したメタノールは、「クロスオーバーメタノール」と呼ばれている。このクロスオーバーメタノールがカソードで酸素と反応することにより、燃料利用率およびカソード電位が低下し、燃料電池の発電量がその分減少する。したがって、従来から、メタノールクロスオーバーおよび、メタノールクロスオーバーによる不利な影響を抑制するために、DMFCシステムにおいて、アノード反応用に、過度に希釈された(3〜6体積%)メタノール溶液が用いられている。しかし、そのようなDMFCシステムには、可搬型システムにかなりの量の水を搭載する必要があり、これによってシステムのエネルギー密度が減少するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の観点から、DMFCのPEMが、高いプロトン(すなわち、H+)伝導性および低いメタノールクロスオーバー率を有することが望ましいと考えられる。しかし、不都合なことに、現在利用可能な最先端のパーフルオロ化PEMは、メタノールクロスオーバー率が相対的に高く、これによって、カソードでの混合電位の発生や燃料効率の低下による、燃料電池性能に対する悪影響が生じる。したがって、これに代わるPEMとして、プロトン伝導性の低下が抑制された、メタノールクロスオーバー率がより低いPEMを開発することに多大な研究努力がなされている。これに関し、炭化水素系PEMは、これらの特質を達成する上で有望であることが証明されており、炭化水素系(「HC」)PEMの中には、低いメタノールクロスオーバー率を示し、その他にも優れた化学的、機械的安定性などの好ましい特質を示すものもある。しかし、それらの相対的に低いプロトン伝導性および高い膜抵抗は、高い電力密度を得る上で制約となる。さらに、HC系PEMは、ナフィオン(登録商標)などのパーフルオロスルホン酸−テトラフルオロエチレン共重合体からなるアイオノマー結合型電極とは相性が悪く、膜と電極との間の界面抵抗を増加させる。さらに、通常利用されている転写ホットプレス法により、触媒層を膜に転写する時に問題が発生する。すなわち、異質のPEMを、従来のナフィオン(登録商標)結合型電極と共に用いて、通常の転写ホットプレスまたは被覆を行った場合、膜−電極間の剥離、セル抵抗の著しい増加などの不具合が見られた。
【0012】
上記の観点から、DOFC/DMFCシステムに用いられる改良されたPEMおよびその製造方法を開発し、プロトン伝導性の低下が最小限に抑えられ、メタノールクロスオーバーが抑制された、改良された膜を用いて、非常に高濃度の燃料および高い電力効率でのそのようなシステムの最適性能運転を容易にすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の利点には、改良された特徴を有する高分子電解質膜(PEM)およびPEMを製造する方法が含まれる。
【0014】
本開示のさらなる利点および特徴は、以下の開示において説明がなされており、以下を検討することにより当業者に一部明らかになるであろうし、また本開示を実施することにより一部理解されるであろう。これらの利点は、添付の特許請求の範囲に詳しく記載されているように実現および入手することができる。
【0015】
本開示の一観点によれば、上記利点およびその他の利点は、
(a)一対の相対向する表面を含む、炭化水素系高分子膜シートを用意する工程と、
(b)前記膜の前記一対の表面を、少なくとも1種のパーフルオロポリマーで処理して、前記パーフルオロポリマーを少なくとも前記一対の表面上または内部に組み入れる工程と、を具備する高分子電解質膜(PEM)の製造方法により一部達成される。
【0016】
本開示の態様によれば、前記HC系高分子膜シートは、ポリ(アリーレンエーテルエーテルケトン)(「PEEK」)、スルホン化ポリ(アリーレンエーテルエーテルケトン)(「SPEEK」)、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトンケトン)(「SPEEKK」)、スルホン化ポリ(アリーレンエーテルスルホン)(「SPES」)、スルホン化ポリ(アリーレンエーテルベンゾニトリル)、スルホン化ポリイミド(「SPI」)、スルホン化ポリ(スチレン)、およびスルホン化ポリ(スチレン−b−イソブチレン−b−スチレン)(「S−SIBS」)からなる群より選択されたHC高分子材料を含んでもよい。前記HC系高分子膜シートは、適切な厚み、例えば、約15〜約200μmの厚み、あるいはこの範囲の任意の厚みを有するHC高分子材料を含む。
【0017】
本開示の態様によれば、前記パーフルオロポリマーは、パーフルオロ化スルホン酸(例えば、ナフィオン(登録商標)、フレミオン(登録商標)、アシプレックス(登録商標))、スルホン化テトラフルオロエチレン、カルボン酸系フルオロポリマー、および当量(EW)が異なるこれらの変種(ただし、EWは、酸の形で存在する場合の、スルホン酸基1モルあたりのポリマーの乾燥重量を表す)からなる群より選択することができる。
【0018】
本開示の好ましい態様によれば、前記工程(b)が、前記HC系高分子膜シートを、少なくとも1種のパーフルオロポリマーの水溶液または分散液中に、所定の温度で所定の時間浸漬することにより処理した後、表面処理された高分子膜シートを、所定の高温および高圧で、所定の時間ホットプレスすることにより乾燥する工程を含む。
【0019】
本開示の別の観点は、表面処理されたHC系PEM、および前記表面された処理HC系PEMを挟持するアノード電極およびカソード電極を具備する膜電極接合体(MEA)を含む。
【0020】
本開示のさらに別の観点は、第1および第2の相対向する表面を有する、プロトン(H+)伝導性のHC系高分子電解質膜(PEM)であって、少なくとも前記第1および第2の表面の上または内部に、パーフルオロスルホン酸−テトラフルオロエチレン共重合体などの少なくとも1種のパーフルオロポリマーを有するHC系膜を包含する。
【0021】
本開示のまた別の観点は、
(a)相対向する第1および第2の表面を有する、プロトン(H+)伝導性高分子電解質膜(PEM)、
(b)前記第1の表面に隣接するアノード電極、および
(c)前記第2の表面に隣接するカソード電極、を具備し、
前記PEMが、少なくとも前記第1および第2の表面の上または内部に組み入れられた少なくとも1種のパーフルオロポリマーを有するHC系膜を含む、膜電極接合体(MEA)である。
【0022】
本開示のさらなる観点は、前記MEAを具備する、直接酸化型燃料電池(DOFC)システムおよび直接メタノール燃料電池(DMFC)システムを含む。
【0023】
本開示のさらなる利点は、以下の詳細な説明から当業者にとって容易に明らかになるであろう。以下の詳細な説明においては、本開示の好ましい実施の形態のみが、あくまでも本開示を限定するものではない例示として図示および説明される。理解されるとおり、本開示について、他の実施の形態および別の実施の形態も可能であり、本発明のいくつかの詳細は、種々の自明な点において変更が可能であり、それらはすべて本発明の技術的思想に包含される。したがって、図面および明細書は、本質的に例示であると理解すべきであり、本発明を限定するものと理解してはならない。
【0024】
本開示の様々な特徴および利点は、本発明の範囲を限定するためではなく、例示のみを目的として提供される添付の図面を参照することによって、より明らかに、また容易になるであろう。図面では、同じ参照符号が、同様の特徴を示すために全体を通じて使用され、様々な特徴が、必ずしも一定の縮尺で描かれるのではなく、関連する特徴を最も良く示すように描かれている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】高濃度メタノール燃料で運転することができるDOFCシステム、すなわちDMFCシステムの、簡略化された概略図である。
【図2】図1のDOFC/DMFCシステムなどの燃料電池/燃料電池システムで使用するのに適したMEAの、代表的な構成の概略断面図である。
【図3】2M MeOHを用い60℃でDMFCを運転した時の、ナフィオン(登録商標)112、表面処理されたHC PEM、および処理されていないHC PEMの電気抵抗を、運転経過時間の関数として示す図である。
【図4】ナフィオン(登録商標)112、表面処理されたHC PEM、および処理されていないHC PEMをそれぞれ用いたDMFCを、1気圧下で2M MeOHを用い65℃で運転した時の、DMFCの定常電圧性能を、運転経過時間の関数として示す図である。
【図5】ナフィオン(登録商標)112、表面処理されたHC PEM、および処理されていないHC PEMをそれぞれ用いたDMFCを、1気圧下で4M MeOHを用い65℃で運転した時の、DMFCの定常電圧性能を、運転経過時間の関数として示す図である。
【図6】ナフィオン(登録商標)112、表面処理されたHC PEM、および処理されていないHC PEMをそれぞれ用いたDMFCを、2M MeOHを用い65℃で運転した時の、DMFCの開路MeOHクロスオーバー性能を示す図である。
【図7】ナフィオン(登録商標)112、表面処理されたHC PEM、および処理されていないHC PEMをそれぞれ用いたDMFCを、4M MeOHを用い65℃で運転した時の、DMFCの開路MeOHクロスオーバー性能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は、例えば、約2〜約25M MeOH溶液を燃料とするDMFCおよびDMFCシステムのような、高濃度燃料で運転するDOFCおよびDOFCシステムなどの、電力変換効率が高い燃料電池および燃料電池システムに関する。さらに本開示は、燃料電池用の電極/電極組立体に用いられる改良されたPEMを有する燃料電池およびその製造方法に関する。
【0027】
図1を参照すると、図には、高濃度燃料で運転するDOFCシステム、例えばDMFCシステム10の一例示的実施形態が概略的に示されている。このシステムは、高電力および高温運転条件下で、燃料電池内の水のバランスを維持し、十分な量の水をカソードからアノードに戻す。(DOFC/DMFCシステムは、2004年12月27日提出の同時係属出願である、2006年6月29日に公開された米国特許出願公開第2006−0141338A1号において開示されている。)
【0028】
図1に示すように、DMFCシステム10は、一般的にはMEAと呼ばれる多層複合膜電極接合体または構造9を形成する、アノード12、カソード14、およびプロトン伝導性PEM16を含む。典型的には、DMFCシステム10などの燃料電池システムは、複数のそのようなMEAをスタックの形で有するが、図1は、例示を簡単にするために、単一のMEA9のみを示す。しばしばMEA9は、燃料を接合体に供給し、燃料および副生成物をそこから戻すためのサーペンタイン流路を有するバイポーラ板によって分離される(例示の都合上図示せず)。燃料電池スタックでは、MEAおよびバイポーラ板が、交互に層状に並べられて電池のスタックを形成し、スタックの端部は、集電板と電気絶縁板によって挟持され、ユニット全体は締結構造を用いて固定される。例示を単純にするため図1には示されないが、負荷回路がアノード12およびカソード14に電気的に接続される。
【0029】
燃料の供給源、例えば、高濃度燃料19(例えばメタノール)を収容する燃料容器またはカートリッジ18が、以下に説明するように、アノード12と流体的に連通する。酸化剤、例えばファン20および関連する導管21によって供給される空気が、カソード14と流体的に連通する。燃料カートリッジ18からの高濃度燃料が、ポンプ22によって、関連する導管区分23'および25を介して気液分離器28に直接供給されるか、またはポンプ22および24、ならびに関連する導管区分23、23'、23''および23'''を介して、アノード12に直接供給される。
【0030】
運転の際には、高濃度燃料19がMEA9のアノード側に、または電池スタックの場合には、スタックのアノードセパレータの入口マニホールドに導入される。MEA9のカソード14側、すなわちカソード電池スタックで、式(2)で表すような電気化学反応によって生成された水が、そこからカソード排出口ないし出口ポート/導管30を介して取り出されて、気液分離器28に供給される。同様に、過剰な燃料、水、および二酸化炭素ガスが、MEA9のアノード側ないしアノード電池スタックから、アノード排出口ないし出口ポート/導管26を介して取り出されて、気液分離器28に供給される。空気または酸素が、MEA9のカソード側に導入されて、電気化学的に生成される液状の水の量を最大にすると共に、電気化学的に生成される水蒸気の量を最小限に抑えるように調節され、それによって、システム10からの水蒸気の流出が最小限に抑えられる。
【0031】
システム10の運転中に、上記のように空気がカソード14に導入され、過剰な空気および液体の水が、そこからカソード出口ポート/導管30を介して取り出されて、気液分離器28に供給される。以下にさらに論じるように、入力空気流量または空気の化学量論比が、電気化学的に生成される液相の水の量を最大にすると共に、電気化学的に生成される蒸気相の水の量を最小限に抑えるように制御される。酸化剤の化学量論比の制御は、燃料電池システムの運転条件に応じてファン20の速度を一定速度に設定することによって、または電子制御ユニット(以下、「ECU」)40、例えばデジタルコンピュータベースのコントローラまたは同等の働きをする機構によって行うことができる。ECU40が、気液分離器28の液相29と接する温度センサ(例示を簡単にするために、図示せず)から入力信号を受け取り、カソード排気中の液状水相を最大にし、かつ排気中の水蒸気相を最小限に抑えるように、(酸化剤供給ファン20に接続されたライン41を介して)酸化剤の化学量論比を調整することにより、MEA2のカソードで生成および排出された水蒸気を凝縮する水凝縮器の必要性が小さくなるかあるいは不要となる。さらにECU40は、起動時に、最小設定値を上回る値に酸化剤の化学量論比を制御し、燃料電池内に過剰な水が蓄積しないようにすることができる。
【0032】
運転中に気液分離器28内に蓄積する液体の水29は、循環ポンプ24ならびに導管区分25、23''および23'''を介して、アノード12に戻すことができる。排出二酸化炭素ガスは、気液分離器28のポート32を通じて放出される。
【0033】
上述のように、カソード排出水、すなわち、運転中にカソードで電気化学的に生成された水は、液相と気相とに仕切られ、各相での水の相対量は、温度と空気流量によって主に制御される。酸化剤の流量または酸化剤の化学量論比を十分小さくすることにより、液体の水の量を最大にすることができ、水蒸気の量を最小限に抑えることができる。その結果、カソード排気からの液体の水は自動的にシステム内に取り込まれる(すなわち、外部凝縮器用いる必要がない)ので、アノードでの電気化学反応に用いられるに十分な量の液体の水が高濃度燃料(例えば約5Mより高濃度の溶液)と結合される。したがって、燃料の濃度および貯蔵容量を最大にすると同時に、システム全体を小型化することができる。水の回収には、例えば、二酸化炭素ガスとメタノール水溶液とを分離するために一般的に用いられる気液分離器など、適切な任意の従来型の気液分離器28を用いることができる。
【0034】
図1に示すDOFC/DMFCシステム10は、少なくとも1つのMEA9を備え、MEA9は、PEM16と、膜を挟む触媒層およびガス拡散層からそれぞれが構成される一対の電極(アノード12およびカソード14)とを含む。一般的なPEM材料としては、上記のようなパーフルオロスルホン酸基を有するフッ化ポリマー、またはポリ(アリーレンエーテルエーテルケトン)(以下、「PEEK」)などのHCポリマーが挙げられる。PEMは、例えば約25〜約180μmのような、任意の適切な厚さとすることができる。触媒層は一般に、白金(Pt)および/またはルテニウム(Ru)系の金属、あるいはそれらの合金を含む。アノードおよびカソードは一般に、燃料をアノードに、また酸化剤をカソードに供給するための流路を有するバイポーラセパレータ板で挟まれる。燃料電池スタックは、隣接するMEAの間に挟まれてMEAを互いに直列に電気的に接続し、かつ機械的に支持する、少なくとも1つの導電性のセパレータを有する、複数のそのようなMEA9を含むことができる。
【0035】
ECU40は、酸化剤の流量または化学量論比を調整し、カソード排気中の液状水相を最大にすると同時にカソード排気中の水蒸気相を最小限に抑えることができるので、ECU40を用いた場合、水凝縮器の必要がなくなる。
【0036】
なお、上記説明においては、MEA9において電気化学反応により生成され、気液分離器28に供給される液体(例えば、水)の量は、基本的に一定であり、したがって、ポンプ24および導管区分25、23''および23'''を介してアノード12の入口に戻される液状生成物の量も基本的に一定であり、燃料容器またはカートリッジ18からの濃厚な液体燃料19と適切な比率で混合されて、理想的な濃度の燃料をアノード12に供給する、と仮定したが、これが必要とされるものではない。
【0037】
次に図2を参照すると、図2は、MEA9の代表的な構成の概略断面図を示し、図中にはMEA9の様々な構成要素がより詳細に図示されている。図示のように、カソード電極14およびアノード電極12が、運転中にアノードからカソードに水素イオンを輸送する、上述のような材料製のPEM16を挟んでいる。アノード電極12は、PEM16から順番に、PEM16に接する金属系触媒層2A、およびその上にあるガス拡散層(以下、「GDL」)3Aを備え、一方カソード電極14は、電解質膜16から順番に、(1)電解質膜16に接する金属系触媒層2C、(2)介在する疎水性微多孔層(以下、「MPL」)4C、および(3)その上にあるガス拡散媒体(以下、「GDM」)3Cを備える。GDL3AおよびGDM3Cはそれぞれ、ガス透過性および導電性を有しており、カーボン粉末およびフッ素化樹脂を含む多孔性カーボン系の材料と、例えばカーボンペーパー、カーボン織布またはカーボン不織布、カーボンフェルトなどの材料からなる支持体と、で構成してもよい。金属系触媒層2Aおよび2Cは、例えば、PtまたはRuを含むものであってもよい。MPL4Cは、カーボンブラックなどの導電性粉末とPTFEなどの疎水性材料とからなる複合材料で形成してもよい。
【0038】
導電性のアノードセパレータ6Aおよびカソードセパレータ6Cでアノード電極12およびカソード電極14のそれぞれをPEM16に対して機械的に固定することにより、MEA9は完成する。図示のとおり、アノードセパレータ6Aおよびカソードセパレータ6Cはそれぞれ、反応剤をアノード電極およびカソード電極へ供給し、余分な反応剤ならびに電気化学反応によって形成される液状およびガス状の生成物を取り除くための流路7Aおよび7Cを備えている。最後に、MEA9には、燃料および酸化剤が接合体の外部へ漏れるのを防止するためのガスケット5が、カソード電極およびアノード電極の縁周辺に設けられている。ガスケット5としては、一般的に、Oリング、ゴムシート、あるいは弾性ポリマー材料および硬質ポリマー材料からなる複合シートで作られる。
【0039】
上述のように、従来のDMFCには、メタノール(CH3OH)燃料の一部が、MEA9のPEM16を透過し、アノード12からカソード14に到達する、という欠点があり、このような透過したメタノールは、「クロスオーバーメタノール」と呼ばれている。このクロスオーバーメタノールがカソード12で酸素と反応することにより、燃料利用率およびカソード電位が低下し、燃料電池の発電量がその分減少する。
【0040】
本開示によれば、上述のような、DOFC/DMFCシステム用の炭化水素系PEMの制約/欠点は、HC系PEMの表面を改質して、少なくともパーフルオロポリマーと同様の、所望の表面構造や特性を付与することにより、最小限に抑えることができる。この表面処理されたPEMは、メタノールクロスオーバー率が低いだけでなくプロトン伝導性の低下が少ないので、DOFC/DMFCシステムを、非常に高濃度の燃料および高い電力効率で最適性能運転できるようすることができる。さらに、そのような表面処理されたPEMは、MEAのアノード電極およびカソード電極との相性がよいのでこれら電極との界面接触がより良好であり、したがって、燃料電池の性能および長期安定性を向上させることができる。
【0041】
本開示によれば、パーフルオロスルホン酸−テトラフルオロエチレン共重合体などのパーフルオロポリマーの溶液または分散液でHC系PEMの表面を改質する方法が提供され、これによって、表面処理されたPEMは、その表面の少なくとも上または内部に前記パーフルオロポリマーを組み入れている。このようにしてPEMは、HC系膜およびパーフルオロポリマーに由来の利点を発揮する。なお、ここで用いられる「炭化水素系膜」(すなわち、「HC系膜」)という用語は、種々のHC系高分子材料を含むものであり、例えば、ポリ(アリーレンエーテルエーテルケトン)(「PEEK」)、スルホン化ポリ(アリーレンエーテルエーテルケトン)(「SPEEK」)、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトンケトン)(「SPEEKK」)、スルホン化ポリ(アリーレンエーテルスルホン)(「SPES」)、スルホン化ポリ(アリーレンエーテルベンゾニトリル)、スルホン化ポリイミド(「SPI」)、スルホン化ポリ(スチレン)、およびスルホン化ポリ(スチレン−b−イソブチレン−b−スチレン)(「S−SIBS」)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、ここで用いられる「ポリフルオロポリマー」という用語は、パーフルオロ化スルホン酸(例えば、ナフィオン(登録商標)、フレミオン(登録商標)、アシプレックス(登録商標))、スルホン化テトラフルオロエチレン、カルボン酸系フルオロポリマー、および当量(EW)が異なるこれらの変種(ただし、EWは、酸の形で存在する場合の、スルホン酸基1モルあたりのポリマーの乾燥重量を表す)を含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0042】
一例として、本開示に従い表面処理された、DOFC/DMFCシステムでの使用に適したPEMは、少なくとも1種のパーフルオロポリマーの水溶液または分散液(例えば、ナフィオン(登録商標)の水溶液または分散液)に、炭化水素系膜を浸漬させることにより作製してもよい。一般的な例としての手順においては、HC系高分子膜のシートを約1.0〜約15.0重量%(例えば、約5.0重量%)ナフィオン(登録商標)溶液または分散液に、約20〜約50℃の範囲の温度(例えば、25℃)で約5〜約60分間(例えば、約30分間)浸漬した後、一対の適切に構成されたシート(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))シートと、これに接合された金属製の裏打板とからなるシート)の間に挟み、約90〜約150℃の範囲の高温および約0.01〜約0.1トン/cm2の範囲の高圧で、約1〜約20分間の所定時間(例えば、120℃および0.02トン/cm2(40ポンド/cm2)で3分間)、ホットプレスにより乾燥させる。その後、表面処理されたPEMは、MEAの作製に利用してもよい。
【0043】
本開示の種々の実施態様または同等の手順によって作製され、HC系膜の少なくとも表面がパーフルオロポリマーでの処理により改質された、表面処理HC系PEMは、これに限定されるものではないが、好ましいことに、以下の利点を含む多くの利点を示す。
1.PEMとアイオノマー含有カソードおよびアノード電極との間の接合性が向上し、それによってMEAの製造が容易になる。
2.MEAのイオン抵抗が下がる。
3.パーフルオロスルホン酸−テトラフルオロエチレン共重合体で処理されたHC系PEMによりH2Oの保持性が確保され、プロトン(H+)伝導性が向上する。
4.HC系膜に特有の、低いMeOHクロスオーバー率が得られる。
【0044】
上記のような利点が組み合わされているので、非常に高い電力密度で、特に、高いMeOH供給濃度の下でのDOFC/DMFCシステムの運転を可能とするMEAを提供することができる。
【0045】
上記説明から理解されるように、本開示の方法により得られる表面処理HC系PEMは、プロトン(H+)伝導性とMeOHクロスオーバーとが有利に妥協していることを特徴とする。したがって、特に、高MeOH濃度の供給原料(例えば、約2〜4Mまたはそれより高濃度のMeOH溶液)で運転した場合、従来の高分子電解質を用いたDOFC/DMFCシステムと比べ、向上した性能を有するDOFC/DMFCシステムが得られる。
【0046】
図3を参照すると、図3には、2M MeOHを用い60℃でDMFCを運転した場合の、ナフィオン(登録商標)112、表面処理されたHC系PEM、および処理されていないHC系PEMの電気抵抗が、運転経過時間の関数として示されている。図から明らかなように、HC系PEMを用いたDMFCの内部電気抵抗は、パーフルオロスルホン酸−テトラフルオロエチレン共重合体(ナフィオン(登録商標)112)の溶液または分散液を用いて表面処理することにより約50%低下する(すなわち、約0.33〜約0.17Ω/cm2となる)。図4は、ナフィオン(登録商標)112、表面処理されたHC系PEM、および処理されていないHC系PEMをそれぞれ用いたDMFCを、2M MeOHを用い65℃で運転した時のDMFCの定常電圧性能を、運転経過時間の関数として示す図であるが、ここに示されているように、表面処理HC系PEMを用いたDMFCの内部抵抗が低下した結果、処理されていないHC系PEMに比べ、電力密度が増加している(すなわち、2M MeOH溶液を供給して65℃で運転した場合、約60〜約65mW/cm2となる)。これに比べ、パーフルオロスルホン酸−テトラフルオロエチレン共重合体(ナフィオン(登録商標)112)系のPEMを用いたDMFCは、同じ条件で運転した場合、約68mW/cm2の電力密度を示した。
【0047】
図5を参照すると、図5には、ナフィオン(登録商標)112、表面処理されたHC系PEM、および処理されていないHC系PEMをそれぞれ用いたDMFCを、1気圧下で4M MeOHを用い65℃で運転した時の、DMFCの定常電圧性能が、運転経過時間の関数として示されている。表面処理HC系PEMを用いたDMFCを4M MeOHを供給して運転した時に得られる利点は顕著である。具体的には、処理されていないHC系PEMを用いたDMFCおよびナフィオン(登録商標)112PEMを用いたDMFCは、約56mW/cm2の電力密度を示したが、厚さ62mmの表面処理HC系PEMを用いたDMFCは、約63mW/cm2という高い電力密度を示した。
【0048】
図6〜図7を参照すると、これらの図には、ナフィオン(登録商標)112、表面処理されたHC系PEM、および処理されていないHC系PEMをそれぞれ用いたDMFCを、2M MeOHまたは4M MeOHを用い65℃で運転した時の、DMFCの開路MeOHクロスオーバー性能がそれぞれ示されている。これらの図から、表面処理HC系PEMのMeOHクロスオーバー率は、パーフルオロスルホン酸−テトラフルオロエチレン共重合体(ナフィオン(登録商標)112)系膜および処理されていないHC系PEMのMeOHクロスオーバー率の間に入ることがわかる。処理されていないHC系PEM(PF−62)の高い抵抗が、高い電力密度を得ることを妨げ、また、パーフルオロスルホン酸−テトラフルオロエチレン共重合体(ナフィオン(登録商標)112)系PEMの高いMeOHクロスオーバー率が、高濃度のMeOH供給源溶液で運転する場合のDMFCの性能を低下させる。一方、本開示に従って作製された表面処理HC系PEMは、炭化水素およびパーフルオロスルホン酸−テトラフルオロエチレン共重合体の双方の魅力的な特性を有している。
【0049】
したがって、上述のように、本開示によれば、DMFCなどのDOFCに用いられる、改良されたPEMを容易に作製することができる。本開示により提供される改質された、すなわち、表面処理されたPEMは、複数の特性の有利な組み合わせ(例えば、高いプロトン(H+)伝導性と低いMeOHクロスオーバー率)を示すので、高電力密度、高エネルギー密度のDMFCの用途に特に有用である。本開示の顕著な特徴および利点として、以下の点が挙げられる。
1.PEMを改質することは、DOFC/DMFCの性能を向上させる上で効果的である。具体的には、表面処理されたPEMの電気抵抗は、処理されていないHC系PEMに比べ約50%低下する一方で、MeOHクロスオーバー率はあまり増加しない。電気抵抗が大きく低下する理由の少なくとも一部は、実質的にH2Oの保持率が向上すること、および主として炭化水素構造を有することから、そのような構造に伴う、MeOHクロスオーバー率が低いという利点が維持されることにあると考えられる。さらに、このPEMとカソード電極およびアノード電極のアイオノマー系層との間の界面接触が向上する。
2.表面処理HC系PEMを作製する方法は、大量生産において簡単かつコスト効果的である。表面処理PEMの特性は、これを構成するポリマー(すなわち、HCとパーフルオロスルホン酸−テトラフルオロエチレン共重合体)の特性の間に入り、これはブレンドポリマー複合材料での状況に酷似している。表面処理HC系PEMにおいて観察される挙動についての特定の理論または説明に拘束されることは望ましくないが、本開示により得られる有利な特性は、HCポリマーの細孔がパーフルオロスルホン酸−テトラフルオロエチレン共重合体の粒子で充填されていること、および異なるポリマー間の結合が、水素結合などの分子間力により十分強いものであることから得られると考えられる。
3.開示された方法は、あらゆる方式および種類のHC系膜の改質処理に有用である。
【0050】
上記記載において、本開示のよりよい理解のために、具体的な材料、構造、反応剤、工程等、具体的な詳細を数多く述べたが、本開示は、具体的に記載した詳細に頼らずとも実施可能である。しかし、公知の加工材料および技術については、本開示を不必要に曖昧にすることを避けるために、詳細に記載していない。
【0051】
本開示の好ましい実施態様のみを、その多用な用途のうちのほんの数例とともに本開示で示し説明した。本開示は、そのほかの種々の組み合わせおよび環境においても用いられること、ならびにここに記載の開示概念の範囲内で変更および/または改変の余地があることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一対の相対向する表面を含む、炭化水素系高分子膜シートを用意する工程と、
(b)前記膜の前記一対の表面を、少なくとも1種のパーフルオロポリマーで処理して、前記ポリマーを少なくとも前記一対の表面上または内部に組み入れる工程と、を具備する高分子電解質膜の製造方法。
【請求項2】
前記工程(a)が、ポリ(アリーレンエーテルエーテルケトン)(「PEEK」)、スルホン化ポリ(アリーレンエーテルエーテルケトン)(「SPEEK」)、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトンケトン)(「SPEEKK」)、スルホン化ポリ(アリーレンエーテルスルホン)(「SPES」)、スルホン化ポリ(アリーレンエーテルベンゾニトリル)、スルホン化ポリイミド(「SPI」)、スルホン化ポリ(スチレン)、およびスルホン化ポリ(スチレン−b−イソブチレン−b−スチレン)(「S−SIBS」)からなる群より選択された炭化水素高分子材料を含む炭化水素系高分子膜シートを用意する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記工程(a)が、約15〜約200μmの厚みを有する炭化水素高分子材料を含む炭化水素系高分子膜シートを用意する工程を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記工程(b)が、パーフルオロ化スルホン酸、スルホン化テトラフルオロエチレン、カルボン酸系フルオロポリマー、および当量(EW)が異なるこれらの変種(ただし、EWは、酸の形で存在する場合の、スルホン酸基1モルあたりのポリマーの乾燥重量を表す)からなる群より選択される、少なくとも1種のパーフルオロポリマーを用意する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記工程(b)が、前記膜の前記一対の表面を、前記少なくとも1種のパーフルオロポリマーの水溶液または分散液で処理する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記工程(b)が、前記炭化水素系高分子膜シートを、前記少なくとも1種のパーフルオロポリマーの水溶液または分散液中に、所定の温度で所定の時間浸漬することにより処理した後、表面処理された高分子膜シートを乾燥する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法により製造された、表面処理炭化水素系高分子電解質膜。
【請求項8】
請求項6記載の方法により製造された表面処理炭化水素系高分子電解質膜を挟持するアノード電極およびカソード電極を具備する、膜電極接合体。
【請求項9】
第1および第2の相対向する表面を有する、プロトン伝導性の炭化水素系高分子電解質膜であって、少なくとも前記第1および第2の表面の上または内部に少なくとも1種のパーフルオロポリマーが組み入れられた炭化水素系膜を含む、炭化水素系高分子電解質膜。
【請求項10】
前記炭化水素系膜が、ポリ(アリーレンエーテルエーテルケトン)(「PEEK」)、スルホン化ポリ(アリーレンエーテルエーテルケトン)(「SPEEK」)、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトンケトン)(「SPEEKK」)、スルホン化ポリ(アリーレンエーテルスルホン)(「SPES」)、スルホン化ポリ(アリーレンエーテルベンゾニトリル)、スルホン化ポリイミド(「SPI」)、スルホン化ポリ(スチレン)、およびスルホン化ポリ(スチレン−b−イソブチレン−b−スチレン)(「S−SIBS」)からなる群より選択された炭化水素高分子材料を含む、請求項9記載の高分子電解質膜。
【請求項11】
前記炭化水素系膜が、約15〜約200μmの厚みを有する、請求項9記載の高分子電解質膜。
【請求項12】
前記少なくとも1種のポーフルオロポリマーが、疎水性フッ化炭素主鎖と、親水性の高いペンダント基であるスルホン酸基(SO3H)を含むパーフルオロエーテル側鎖と、を有する、請求項9記載の高分子電解質膜。
【請求項13】
前記少なくとも1種のポーフルオロポリマーが、パーフルオロ化スルホン酸、スルホン化テトラフルオロエチレン、カルボン酸系フルオロポリマー、および当量(EW)が異なるこれらの変種(ただし、EWは、酸の形で存在する場合の、スルホン酸基1モルあたりのポリマーの乾燥重量を表す)からなる群より選択される、請求項9記載の高分子電解質膜。
【請求項14】
(a)相対向する第1および第2の表面を有する、プロトン伝導性高分子電解質膜、
(b)前記第1の表面に隣接するアノード電極、および
(c)前記第2の表面に隣接するカソード電極、を具備し、
前記高分子電解質膜が、少なくとも前記第1および第2の表面の上または内部に組み入れられた少なくとも1種のパーフルオロポリマーを有する炭化水素系膜を含む、膜電極接合体。
【請求項15】
前記高分子電解質膜が、ポリ(アリーレンエーテルエーテルケトン)(「PEEK」)、スルホン化ポリ(アリーレンエーテルエーテルケトン)(「SPEEK」)、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトンケトン)(「SPEEKK」)、スルホン化ポリ(アリーレンエーテルスルホン)(「SPES」)、スルホン化ポリ(アリーレンエーテルベンゾニトリル)、スルホン化ポリイミド(「SPI」)、スルホン化ポリ(スチレン)、およびスルホン化ポリ(スチレン−b−イソブチレン−b−スチレン)(「S−SIBS」)からなる群より選択された炭化水素高分子材料を含む炭化水素系膜を含む、請求項14記載の膜電極接合体。
【請求項16】
前記炭化水素系膜が、約15〜約200μmの厚みを有する、請求項14記載の膜電極接合体。
【請求項17】
前記少なくとも1種のポーフルオロポリマーが、パーフルオロ化スルホン酸、スルホン化テトラフルオロエチレン、カルボン酸系フルオロポリマー、および当量(EW)が異なるこれらの変種(ただし、EWは、酸の形で存在する場合の、スルホン酸基1モルあたりのポリマーの乾燥重量を表す)からなる群より選択される、請求項14記載の膜電極接合体。
【請求項18】
請求項14記載の膜電極接合体を具備する、直接酸化型燃料電池システム。
【請求項19】
請求項14記載の膜電極接合体を具備する、直接メタノール燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−536150(P2010−536150A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520046(P2010−520046)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/069727
【国際公開番号】WO2009/020733
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(501456515)ザ ペン ステート リサーチ ファウンデイション (15)
【Fターム(参考)】