説明

直接駆動式の電気機器

【課題】電力を生産する風力タービン発電機、潮力発電機、水力発電機、及び外部電力により回転駆動する電動機などの大型高トルク直接駆動式の永久磁石型電気機器を提供し、特に、最適化構造により材料の量を低減でき、これによって、製作原価を低減し、製作、移動、設置、及びメンテナンスを容易にする直接駆動式の永久磁石型電気機器を提供する。
【解決手段】本発明による直接駆動式の電気機器は、力密度の最大化及び活動性構成部材料(active material)の最小化により原価を低減し、回転子など回転体の支持及びガイドのためにベアリングレス(bearingless)方式を適用することにより非活動性構成部材料(inactive material)を顕著に低減でき、回転子及び固定子などが複数のモジュールに分離構成されたモジュール構造を有することにより、組み立て、取り扱い、輸送、設置、メンテナンスが容易であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接駆動式の電気機器に関するものであって、より詳しくは、電力を生産する風力タービン発電機、潮力発電機、水力発電機、及び外部電力により回転駆動する電動機などのような大型高トルク直接駆動式の永久磁石型電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、直接駆動式の風力タービンの構造物は、大きくローターブレード、発電機、及び固定部の構造物などに分けられる。
【0003】
図1は、低速大型直接駆動式の風力タービン(風力発電機)の典型的な例を示す図面であって、直接駆動式の風力タービン10は、ローターブレード11及び発電機の回転子12などの回転体と、シャフト13及び発電機の固定子14などの固定体と、シャフト13で前記回転体を回転可能に支持する軸受15と、を含む。
【0004】
ここで、発電機の回転子12は、風力により低速回転するローターブレード11に直接連結されているため、発電機の回転子12もローターブレード11と同様の速度で低速回転し、これによって、直接駆動式発電機の高トルク化が要求される。
【0005】
発電機または電動機において、低速時に高トルクを発生させるためには、接線力(tangential force)と直径の増加が必要である。したがって、低速高トルクの直接駆動式の電気機器(発電機/電動機)は、前記理由により大きさが大きくなり、材料がたくさん用いられて重く、価格が高くなる。
【0006】
このような特性は、風力タービンの大きさと出力レベルを増加させるほど、すなわちアップ−スケーリング(up−scaling)するほどさらに顕著になる。
【0007】
直接駆動方式は、ギア駆動方式に比べて価格的には不利であるが、電力生産量と信頼性に優れていると知られている。しかし、上述したように、アップ−スケーリングするほど、直接駆動式発電機の重量と価格が顕著に増加するため、既存の直接駆動技術を大型風力タービンシステムに適用して使用しにくいと予想される。
【0008】
したがって、既存の大型直接駆動方式の限界を克服できる新概念の直接駆動方式が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような点を考慮して発明したもので、最適化された構造により材料の量を低減でき、これによって、製作原価を低下させ、製作、移動、設置、及びメンテナンスが容易な直接駆動式の永久磁石型電気機器を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、発電機及び電動機のように回転子または移動子と共に固定子を有する直接駆動式の電気機器であって、前記回転子または移動子と、これに組み合わされる固定子がそれぞれ分離構成された複数のモジュールが組み合わされ、短い磁束経路を有する複数モジュール組合せ型構造で構成されることを特徴とする直接駆動式の電気機器を提供する。
ここで、前記回転子または移動子と前記固定子の組合わせた構造において、前記回転子または移動子を中心として両側に孔隙を有するように固定子が配置される両側孔隙型構造で構成されることを特徴とする。
また、前記回転子または移動子と前記固定子との間で両側の孔隙は、各固定子の巻線に印加される電流を制御して孔隙を維持するベアリングレスドライブ(drive)により維持されることを特徴とする。
また、前記回転子と前記固定子がそれぞれリング状になることを特徴とする。
また、前記電気機器が横磁束発電機または横磁束電動機であってもよく、または前記電気機器が縦磁束発電機または縦磁束電動機であってもよい。
また、前記回転子と固定子との間で孔隙は、流体圧力及び浮力により回転子を支持する流体静圧軸受と、各固定子の巻線に印加される電流を制御して孔隙を維持するベアリングレスドライブにより維持されることを特徴とする。
また、発電機または電動機として、固定構造物に流体が満たされるリング状の固定部が固定設置され、前記固定部の内部には同心円上に配置されるリング状の回転部が設置され、前記固定部の内側面に固定子が設置され、前記回転部の外側面には前記固定子と対向する位置に回転子が設置され、前記固定部の内部には孔隙を維持するための流体が満たされ、前記回転部は固定部の外部に延長された連結部を介してローターブレードに連結された構成を有することを特徴とする。
ここで、前記ローターブレードが固定部の外径側に配置され、前記回転部が固定部の外径側に延長された連結部を介してローターブレードに連結されることを特徴とする。
また、前記ローターブレードが固定部の内径側に配置され、前記回転部が固定部の内径側に延長された連結部を介してローターブレードに連結されることを特徴とする。
また、前記回転子または移動子では各モジュール毎に2つの永久磁石が設けられ、前記2つの永久磁石の間に永久磁石の磁束経路を形成する三角断面形状の鉄心が配置され、各モジュールに逆三角断面形状の磁束集中型鉄心が設けられ、前記2つの永久磁石が前記磁束集中型鉄心の両側傾斜面に配置され、各永久磁石が磁束集中型鉄心の傾斜面と磁束経路維持用鉄心の傾斜面との間に配置される構造であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による直接駆動式の電気機器は、力密度の最大化及び活動性構成部材料(active material/electromagnetic material)の最小化により原価を低減し、回転子などの回転体の支持及びガイドのためにベアリングレス(bearingless)方式を適用することにより非活動性構成部材料(inactive materialまたはstructural material)を顕著に低減し、回転子及び固定子などが複数のモジュールに分離構成されたモジュール構造を有することにより組み立て、取り扱い、輸送、設置、メンテナンスが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】風力タービンの直接駆動式発電機の例を示す図面である。
【図2】(a)活動性構成部材料を低減するための構成、及び(b)鉄心面積を増加させるための構成を示す概略図である。
【図3】ベアリングレスにより孔隙が維持される構成を示す概略図である。
【図4】大型風力タービンのために軽量化及びモジュール化した直接駆動式発電機の概念図である。
【図5】新たなTFPM機器の構造を示す概念図である。
【図6】本発明による磁束集中TFPM機器の構造を示す図面であって、永久磁石の離脱を防止できる構造を示す図面である。
【図7】従来技術によるベアリングレス駆動構造を示す図面であって、(a)4極永久磁石ベアリングレス電動機の巻線構造、(b)基本的なベアリングレス駆動構造の4極及び2極の巻線配置、(c)インセットPMタイプのベアリングレス電動機の回転子、及び(d)ベリードPMタイプのベアリングレス電動機の回転子を示す概略図である。
【図8】本発明によるベアリングレスTFPM機器を示す図面であって、(a)回転子の進行方向と磁束の経路、(b)ギャップセンサを用いて固定子の巻線に流れる電流及び孔隙の長さが制御される状態、及び(c)さらに好ましいベアリングレス駆動の構成を示す図面である。
【図9】孔隙の長さが異なる場合の磁束密度を示す図面である。
【図10】本発明によるリング状の直接駆動式発電機(電動機)を示す図面である。
【図11】本発明によるリング状の直接駆動式発電機(電動機)を示す図面である。
【図12】本発明によるリング状の直接駆動式発電機(電動機)を示す図面である。
【図13】直接駆動式の風力タービンにおける軸受支持構造の様々な形態を示す概略図である。
【図14】浮力のある物体が流体内に存在する時、(a)安定状態と(b)不安定状態を示す図面である。
【図15】流体静圧軸受に対する概念図である。
【図16】本発明で浮力を有する回転体及び流体静圧軸受を適用した例示図である。
【図17】本発明による直接駆動式の風力タービンのローターブレードと発電機回転子の支持及びガイド構造の例示図である。
【図18】本発明による直接駆動式の風力タービンのローターブレードと発電機回転子の支持及びガイド構造の例示図である。
【図19】本発明による直接駆動式の風力タービンのローターブレードと発電機回転子の支持及びガイド構造の例示図である。
【図20】本発明による直接駆動式の風力タービンのローターブレードと発電機回転子の支持及びガイド構造の例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付した図面を参照して本発明に対して詳細に説明する。
【0014】
周知の通り、直接駆動式発電機は、電力の生産に使用される電磁界構成部(electromagnetic part/active part)と構造物を構成する構造的構成部(structural part/inactive part)で大きく分けられる。これら2つの構成部は、発電機の設計、すなわち電磁界設計(electromagnetic design)と機械設計(mechanical design)を行うとき、十分に考慮しなければならない。また、大型直接駆動式機器は、製作、搬送、設置、及びメンテナンスなどが困難な場合が多く発生することもあるため、設計時、実用上の問題に対しても十分に考慮しなければならない。
【0015】
電磁界構成部と構造的構成部に対しては、用いられる材料の量を顕著に低減する構造、そして最終的に価格を低減できる構造が要求される。実用上の問題に対しても製作、移動、設置、及びメンテナンスが容易な構造が要求され、運用面でも電力生産量を最大化できる方法が要求される。問題に対する解決方案は次の通りである。
−電磁界構成部(electromagnetic part/active part)
・永久磁石(Permanent Magnet、PM)型機器により高い力密度を有する構造
・磁束経路の長さを短くして活動性構成部材料(active matierial)を低減する構造
・広い鉄心面積により鎖交磁束を増加させる構造
−構造的構成部(structural part/inactive part)
・ベアリングレス(bearingless)駆動方式を用いて非活動性構成部材料(inactive material)を顕著に低減する構造
−実用上の問題(pratical issues)
・複数のモジュールに分離構成されたモジュール構造を有することにより、組み立て、取り扱い、輸送、設置、メンテナンスが容易な構造
・複数のモジュールに分離構成されたモジュール構造を有することにより、各モジュールが独立して運転される構造、したがって、特定のモジュールまたは特定の部品に問題が発生しても、問題のない他のモジュールでは、継続的に電力生産が可能な構造。例えば、10MWシステムが5個のモジュールの発電機により構成される場合、個別モジュールの出力は2MWである。任意の1個のモジュールに問題が発生した場合、センサにより問題に関する情報を検出でき、その後、残り4個のモジュールだけで継続して電力を生産できるように制御及び運転が可能である。したがって、一部部品に問題があってもシステム全体を停止せず、問題が解決されるまで(8MWの)電力を継続的に生産できるフォールトトレランス(fault tolerance)概念の構造が要求される。
・柔軟で軽量化(flexible and lightweight)された構造、及び大直径を有する軸受(bearing)により、構造物が重くなくても、強固でなくても、精密でなくてもよい構造、及びメインシャフト(main shaft)に対して精密さを要する軸受がなくてもよい構造。
【0016】
以上、上述した解決方案を図2から図4にそれぞれ示す。
【0017】
低速高トルクの直接駆動式の電気機器(発電機/電動機)の問題を解決するためには、上述した解決方案を設計、製作、及び運用時に反映する。以上の解決方案を満足するために、本発明による直接駆動式の電気機器は次の3つの特徴を持つように形成され、各部分を実現するための構成を添付した図面を参照して詳細に説明する。
・力密度の最大化及び活動性構成部材料(active material)の最小化
・非活動性構成部材料(inactive material)の最小化
・新概念のガイド及び軸受システム
【0018】
−力密度の最大化及び活動性構成部材料の最小化
永久磁石型機器(発電機/電動機)は、巻線型機器に比べて単位重量当たりの出力比、効率、信頼性、及びエネルギーの算出に優れている。したがって、本発明では大型風力タービン発電機の力密度の最大化と活動性構成部材料の最小化のために永久磁石型機器の構造が採用される。この永久磁石型機器は、磁束の形成方向により、軸磁束永久磁石(Axial Flux Permanent Magnet、AFPM)機器、半径磁束永久磁石(Radial Flux Permanent Magnet、RFPM)機器、及び横磁束永久磁石(Transverse Flux Permanent Magnet、TFPM)機器に分類される。この中、横磁束永久磁石機器は、力密度が他の機器に比べて相対的に高く、活動性構成部材料を低減する可能性が高い。したがって、本発明では力密度の最大化と活動性構成部材料の最小化のために、新概念の横磁束永久磁石機器の構造が提示される。
【0019】
図3に示すように、発電機(または電動機)の設計時、損失を最小化するために鉄心と巻線の使用量を最小化することが要求されるが、孔隙で磁束(flux)が鎖交する鉄心(iron core)の面積を一定に維持しながら磁束の経路(flux path)を減らすことにより、鉄心の使用量を低減することができる。磁束経路を減らすためには、スロット間隔(slot pitch)とスロット高さ(slot height)を低減しなければならないが、一般的に用いられる縦磁束(longitudinal flux)発電機(または電動機)は、スロット間隔を減らすと、極間隔(pole pitch)が共に減少して漏洩磁束(leakage flux)が増加する。したがって、縦磁束発電機(または電動機)では、この方法を適用して鉄心の使用量を低減するには限界があり、横磁束(transverse flux)発電機(または電動機)はスロット間隔を減らしても極間隔が減少しないため、鉄心量を減らして鉄損(iron loss)を低減する構造は横磁束発電機(または電動機)に適用する場合に有利である。
【0020】
現在、表面実装永久磁石タイプ(surface mounted PM type)、磁束集中永久磁石タイプ(flux−concentrating PM type)、単一巻線タイプ(single−winding type)、二重巻線タイプ(double−winding type)、単側孔隙タイプ(single−sided air gap type)、両側孔隙タイプ(double−sided air gap type)、C−コアタイプ(C−core type)、E−コアタイプ(E−core type)、及びクローポールコアタイプ(claw pole core type)のように様々な構造のTFPM機器が多数の研究者により提案されている。この中、磁束集中永久磁石タイプは、力密度が高く、他の種類に比べて重量と体積を低減できるという長所がある。また、単一巻線タイプと単側孔隙タイプは、その構造を簡単に、かつ容易に構成できるという長所がある。また、クローポールコアタイプは、磁束が鎖交する鉄心の面積を増加させて印加電圧を増加できるという長所がある。
【0021】
巻線の形状を考慮すると、リング(ring)状の巻線は小さい直径のTF(横磁束)機器に主に適用されてきた。しかし、前記リング状の巻線を大型直接駆動式機器に使用すると、製作、設置、及びメンテナンスが困難である。したがって、リング状の巻線のように大きくないモジュール形状の巻線が大型直接駆動式機器に有効である。上述した内容を要約する。
1)コンセプトA:単側孔隙、単一巻線、磁束集中タイプTFPM機器
2)コンセプトB:リング状の巻線の代わりに、大直径の機器に適当なモジュール形状の巻線
3)コンセプトC及びD:高い印加電圧の生産のために増加された鉄心の面積(Increased iron core area to produce higher induced voltage)
4)コンセプトE:スロット間隔と高さを減らすことにより、活動性構成部材料を低減できる短い磁束経路を有する複数モジュールのコンセプト(Plural module concept with short flux path to reduce the active material by decreasing slot pitch and height)
【0022】
図5は、新たなTFPM機器構成を示す図面であって、左側の図面は前記コンセプトA、B、C、D、及びEを示す構成であり、右側の四角形に示す構成は前記コンセプトA、B、C、D、及びEの長所を全て有する新たなコンセプトを構成する。ここで、クローポールコア(claw pole core)は固定子鉄心であり、「□」状の構成部はレーストラック(racetrack)形態のモジュール型巻線を示す。そして、直六面体の永久磁石(PM)の間に直六面体の磁束集中型鉄心(core)が介在されて永久磁石と鉄心が交互に配置され、永久磁石に表示された矢印は永久磁石の着磁方向を示す。
【0023】
図5の左側図面で、「A」は横磁束発電機(または電動機)の一般的な構造を示し、「B」は大直径を有する横磁束発電機(または電動機)に適する巻線であって、複数のモジュール化した巻線の使用を説明するための図面である。既存の横磁束発電機(または電動機)では、リング状の巻線が主に用いられ、このようなリング状の巻線を大直径の横磁束発電機(または電動機)に用いると、製作、設置、メンテナンスなどの様々な側面で困難な場合が多い。大型直接駆動風力タービン発電機は直径が非常に大きいため、本発明による直接駆動式の電気機器(発電機/電動機)は図5の「B」に示した巻線を複数用いるように構成される。図5の「C」、「D」、「E」は既に知らされている構造であって、「E」は発電機(または電動機)の鉄心(iron core)(または鉄心と永久磁石(PM))の使用量を低減できる初期概念を示す構造である。図5の右側の四角形に示す構成は本発明による基本構造であって、この構造の回転子(または移動子)を図6の(f)に示す構造に変更したことが、本発明による直接駆動式の電気機器(発電機/電動機)の特徴である。
【0024】
直接駆動式永久磁石型機器(direct−drive PM machine)の出力と大きさを増加させる場合、機器の孔隙(air gap)の直径、すなわち回転子と固定子の直径が増加すると共に他の変数の電磁界の設計寸法も増加する。その変数は、孔隙の長さ(air gap length)、極間隔(pole pitch)、極幅(pole width)、永久磁石の長さなどである。大型永久磁石型機器に大きい永久磁石を適用する場合、永久磁石の製造とハンドリングが困難になり、これによって永久磁石の価格と永久磁石型機器の価格が高くなる。そして、図5に示すような永久磁石と磁束集中型鉄心の形状を用いることにより、図6の(a)に示すように、永久磁石の離脱が発生することがある。
【0025】
図6の(a)の構造に対して詳細に説明すると、磁束集中型永久磁石発電機(または電動機)に適用される構造であって、縦磁束型と横磁束型発電機(または電動機)の両方ともに用いられる構造である。図面に示すように、永久磁石を接着剤だけを使って固定させると、発電機(または電動機)の運転時及び使用時に分離される問題がある。そして、永久磁石が大きいか厚い場合、製作や取り扱いが困難である。また、極間隔(pole pitch)を一定に維持しながら永久磁石の厚さを変化させることができなく、永久磁石の量を増大させるためには、永久磁石と鉄心の高さを同時に増加しなければならない。
【0026】
したがって、上述したように、永久磁石の製作単価を低減し、永久磁石の離脱を防止し、鉄心の量を増大せず、永久磁石の量を増大させる本発明の構造を図6の(f)に示し、これについて次のように説明する。
【0027】
図6の(a)の構造は、図6の(c)のように鉄心と永久磁石を分割して図6の(d)の構造のように再配列することができる。図6の(e)の構造は、鉄心の量を増大せず、図6の(b)と同様に永久磁石の量を増大させた構造である。図6の(f)の構造は、図6の(a)の構造と図6の(b)の構造が有する問題点を改善する構造であって、本発明による回転子(または移動子)の構造である。図面に示すように、永久磁石の脱着を防止し、ハンドリングの問題点を解消するための方案であって、複数のモジュールで構成される回転子または移動子において、各モジュール毎に、1つの厚い永久磁石の代わりに2つの薄い直六面体形状の永久磁石24を用い、永久磁石24の間に永久磁石の磁束経路を形成して維持させるための三角断面形状の鉄心22が配置される。また、各モジュールには、逆三角断面形状(好ましい実施例の図6の(f)に示すように、逆三角断面形状としてひっくり返した円錐型フラスコ断面形状を用いてもよい)の磁束集中型鉄心23が設けられ、前記2つの永久磁石24は、磁束集中型鉄心23の両側傾斜面に配置される。この時、三角断面形状の鉄心22の各傾斜面に、隣接しているモジュールの永久磁石24が1つずつ配置される構造となり、各永久磁石24が磁束集中型鉄心23の傾斜面と磁束経路維持用鉄心22の傾斜面との間に配置される構造となる。
【0028】
このように永久磁石の離脱を防止し、製造とハンドリングを容易にする構造は、横磁束機器だけでなく縦磁束を有する一般RFPM機器とAFPM機器に対しても適用することができる。
【0029】
−非活動性構成部材料の最小化
風力タービンに用いられる発電機における非活動性構成部(inactive part)の役割は次の通りである。
・発電機の回転子と固定子との間の孔隙維持
・タービンのローターブレードから回転力を受けて発電機の回転子に伝達
【0030】
小型の直接駆動式機器では活動性構成部の重量が占める比重が大きいが、大型になるほど全体重量で非活動性構成部が占める比重がさらに大きくなると知られている。その理由は、直接駆動式の風力タービンが大型化するほど、高いトルクを有する発電機が要求されるからである。したがって、非活動性構成部材料の最小化のために次の事項が考慮される。
1)ベアリングレス(bearingless)永久磁石機器
2)シャフト及びその他の構造物がないリング(ring)状の永久磁石機器
【0031】
ベアリングレス駆動方式の永久磁石機器に対して説明する前に、既存のベアリングレス駆動(ドライブ)に対して説明することにより、ベアリングレス駆動方式の原理と長所及び短所に対して理解する。次に、既存のベアリングレス駆動方式が有する短所を解決し、既存のベアリングレス駆動方式をより簡単に実現できる方法を説明する。次に、既存の直接駆動式機器が有するシャフト、トルクの伝達のための構造物、孔隙を維持するための構造物などが不要であるリング状の永久磁石型機器に対して説明する。
【0032】
ベアリングレス駆動方式は宇宙、劣悪な環境、高速運転などに適用する場合に発生する軸受関連問題などを解決するために提案されたものである。前記ベアリングレス駆動方式は多数の研究者が次の分野に適用するために研究されてきた。
1)永久磁石ベアリングレス電動機(PM bearingless motors)
2)同期リラクタンスベアリングレス電動機(synchronous reluctance bearingless motors)
3)ベアリングレス誘導電動機(bearingless induction motors)
4)スイッチドリラクタンスベアリングレス電動機(switched reluctance bearingless motors)
5)単極、複合、及び可変極ベアリングレス電動機(homopolar、hybrid and consequent−pole bearingless motors)
【0033】
前記ベアリングレス駆動方式のうち、永久磁石軸受電動機の長所は次の通りである。
1)小さいサイズ及び軽量化
2)高いパワーファクター(high power factor)と高効率
3)メイン巻線の印加電流がなくても生成されるサスペンションの力(suspension forces generated without excitation current in the main winding)
4)磁気サスペンションが、電動機の巻線電流にかかわらず、独立して作動するため、インバーター故障に対する高い独立性(high inverter fault independence because magnetic suspension operates independently of the motor winding current)
【0034】
したがって、本発明では永久磁石ベアリングレス駆動方式を採用する。
ベアリングレス電動機の大きい特徴は、(磁気)軸受巻線が電動機に結合されていることである。
【0035】
図7の(a)は、4極永久磁石ベアリングレス電動機の巻線構造を示す図面である。半径方向の軸受力とトルクを分離するために軸受巻線とトルク巻線は極数が相異なるように設計される。基本的なベアリングレス駆動構造の巻線配置は、図7の(b)のように簡略化して示すことができる。ここで、4極電動機巻線(トルク巻線)は図面符号「4a」と「4b」であり、2極軸受巻線は図面符号「2a」と「2b」である。様々なタイプのPM(永久磁石)ベアリングレス電動機のうち、インセット(inset)PMタイプのベアリングレス電動機とベリード(buried)PMタイプのベアリングレス電動機の回転子は、図7の(c)と(d)にそれぞれ示す。図7の(d)に示すベリードPMタイプベアリングレス電動機は、永久磁石の磁気抵抗(magnetic reluctance)が小さいため、半径方向の軸受力を向上できる構造である。
【0036】
上述したように、ベアリングレス駆動構造では、軸受巻線と電動機巻線(トルク巻線)を用いて軸受力とトルクを同時に制御しなければならない。したがって、ベアリングレス駆動構造は、一般的な電気機器(電動機/発電機)の駆動構造よりも構成及び制御が複雑で、価格も高い。
【0037】
大型直接駆動式の風力タービン発電機は、発電機の全体重量で非活動性構成部の重量が占める比重が大きい。もし、ベアリングレス駆動方式を適用して非活動性構成部の重量を顕著に減らし、ベアリングレス駆動方式を適用した発電機の価格を顕著に下げる方法があるならば、大型直接駆動にベアリングレス駆動を適用してもよい。しかし、大型直接駆動は、回転子の重量(活動性構成部の重量と非活動性構成部の重量を含む)が非常に重いため、軸受力(bearing force)により回転子の重量を支えて要求位置を維持するためにはベアリングレス駆動の電力消耗が大きくなると予想される。したがって、大型直接駆動に適用するための新概念のベアリングレス駆動は、次の事項を満足しなければならない。
(1)非活動性構成部の重量を顕著に減少(significant mass reduction of the inactive part)
(2)軸受力の発生に消費される電力の最小化(minimized power consumption to produce the bearing force)
(3)単純化した制御及び構成要素(simplified control and components)
【0038】
本発明で用いられる新たな永久磁石ベアリングレス駆動(ドライブ)構造も回転子が鉄心と永久磁石を有する構造である。また、固定子は鉄心と巻線で構成される。図8は、本発明による永久磁石ベアリングレス駆動(ドライブ)構造を示す図面であって、図8に示すように、両側型軸磁束機器(axial flux machine)の形状を有する。図8に示すように、軸受力は単に回転子と固定子の孔隙の長さを一定に維持するためだけに用いられ、回転子の重量の支持には用いない構造である。図8に示すベアリングレス駆動構造は、図5に示すTFPM機器の構造を有するが、通常の永久磁石(PM)機器(縦磁束永久磁石機器など)に適用してもよい。
【0039】
図8の構造は、既存の一般的な発電機(または電動機)のような構造的構成部がなく、新たなベアリングレス駆動方式の構造により回転力を伝達し、孔隙(air gap)を維持する構造である。一般的な発電機(または電動機)は、電気を生産する電磁界構成部(electromagnetic part/active part)、軸受、軸(shaft)、及び回転力の伝達と孔隙(air gap)を維持するための構造物である構造的構成部(structural part/inactive part)で構成される。本発明によるベアリングレス駆動方式の発電機(または電動機)は、軸受巻線とトルク巻線が両方とも必要な既存のベアリングレス駆動方式発電機(または電動機)とは明らかな差がある。
【0040】
図8に示すように、本発明によるベアリングレス駆動方式の発電機(または電動機)の構造は両側孔隙型構造であり、両側孔隙の長さが同一でない場合、巻線に異なる大きさの電流を印加することにより、両側孔隙を一定(同一)に維持することができる。すなわち、既存のベアリングレス駆動方式の構造のように、トルクと軸受力の発生のために2種類の巻線が両方とも必要であることではなく、1つの巻線だけで2種類の役割を行える構造である。
【0041】
回転子(rotor)の進行方向と磁束(flux)の経路を図8の(a)に示す。新たなベアリングレス駆動構造が安定状態(stable state)の場合は、孔隙1(air gap 1)と孔隙2(air gap 2)の長さが同じである。孔隙1と孔隙2の長さが同一でない状態、すなわち不安定状態(unstable state)の場合はギャップセンサ(gap sensor)または両側固定子1,2(stator 1,2)に印加される無負荷電圧(no−load induced voltage)の差により、両側の孔隙の長さの差が分かる。孔隙1の長さが孔隙2の長さよりも大きい場合、孔隙1の固定子と回転子との間の吸引力(attraction force)を増加させ、孔隙2での吸引力を減少させると、両側孔隙の長さが同じになる地点に回転子が移動する。このためには、固定子1(stator 1)の巻線に流れる電流(current、i)の大きさを増加させ、固定子2(stator 2)の巻線に流れる電流の大きさを減少させる。
【0042】
永久磁石による磁束と吸引力が存在するため、孔隙2の長さが小さすぎる場合は孔隙2での吸引力が孔隙1での吸引力よりも相対的に大きくなって、固定子1の電流を増加させ、固定子2の電流を減少させても両側孔隙を同一にすることは困難である。このような場合は、固定子2に流れる電流の方向を逆にして孔隙2での吸引力を減らす方法も可能である。
【0043】
回転子が回転方向または進行方向を軸にして揺れる場合は、両側孔隙における上部側孔隙の長さと下部側孔隙の長さが異なる。したがって、図8の(a)と図8の(b)に示すベアリングレス駆動構造だけではこの問題を解決することができない。図8の(c)はこの問題を解決可能にする、さらに好ましい本発明のベアリングレス駆動構造を示す。このような構造を使用することにより、回転子が進行方向を軸にして揺れても孔隙1と孔隙2を一定に維持する制御が可能になる。
したがって、何れの方法やガイドを用いて回転子の重力方向の位置を要求範囲内で一定に維持できるならば、本発明によるベアリングレス駆動構造は、風力タービンだけでなく、他の大型直接駆動式装置にも使用可能である。さらに、線形駆動システム(linear drive system)にも適用が可能であり、この時、制御対象が回転子(rotor)でなく、移動子(mover)となる。
孔隙1と孔隙2の長さが異なる場合は、各孔隙での磁束密度(flux density、B)が変わって最終的に回転子と固定子との間に存在する吸引力の大きさも変わるようになる。すなわち、他の寸法とパラメータは変わらず、孔隙の長さだけ変わるようになって、孔隙の長さが増加した側では磁束密度が減少し、孔隙の長さが減少した側では磁束密度が増加する。
【0044】
図8でギャップセンサは、孔隙の長さの変化を検出するために補助的に用いられるもので、発電機(または電動機)が運転中の場合はギャップセンサを用いず、各巻線に印加される無負荷電圧(no−load induced voltage)などを測定比較してギャップの変化を検出する。ただし、発電機(または電動機)の初期起動または非定常状態の場合は無負荷電圧を測定し難いため、ギャップセンサを用いる。
【0045】
図9には磁界強度(magnetic intensity、H)の大きさに応じて非線形的に変わる特性を有する鉄心(iron core)の磁束密度の特性を考慮して、孔隙の長さが異なる場合の磁束密度を表示した(実際に、鉄心での磁束密度の特性は図9に示すように直線形態ではなく、曲線形態である。すなわち、図9は、概略化して示している)。本発明によるベアリングレス駆動方式の発電機(または電動機)は、上述したように一方の孔隙の長さが減少すると、他方の孔隙の長さは反対に増加するが、図9は、両側孔隙での磁束密度の変化をB−H曲線上に簡略に示す図面である。
【0046】
図9で、B 孔隙(air gap)は孔隙1と孔隙2が同一である安定状態での磁束密度であり、B より小さい孔隙(smaller air gap)とB より大きい孔隙(larger air gap)は孔隙1と孔隙2が同一でない状態での小さい孔隙と大きい孔隙の磁束密度をそれぞれ示す。
【0047】
構造物の重量(inactive mass)を顕著に減らす第2の方法は、図4に示すようなリング状の発電機(電動機)構造である。その形状を概略的に図10から図12に示し、これに対して説明する。
【0048】
図10から図12は、リング状の横磁束発電機(または電動機)を示す図面であって、リング状の横磁束発電機(または電動機)は両側孔隙型であり、孔隙で鎖交する磁束の方向が軸方向の軸磁束機器(axial flux machine)の構造を有する。固定子(stator)は、回転子(rotor)を中心として両側に位置しており、各固定子は鉄心(iron core)と巻線(copper winding)で構成される。回転子は鉄心と永久磁石(permanent magnet)で構成され、図8に示す磁束経路(flux path)から分かるように、両側の各固定子に対応する回転子がそれぞれ存在する。したがって、この構造は左側の固定子+回転子の1セットと右側の固定子+回転子の1セットで構成される。
【0049】
図10に示す構造は、既存の発電機(または電動機)が有するシャフト(shaft)、孔隙の維持とトルクの伝達のために必要な構造物(inactive structure)を最大限に除去した形態である。したがって、上述した大型高トルク直接駆動式発電機(または電動機)において構造物の重さを顕著に減少することができる。
【0050】
大型機器を1つのボディに構成すると、製作から組み立て、移動、設置、及びメンテナンスに相当の手間が要する。それによって、製品の価格を上昇させる要因になる。このような構造は、従来主に用いられる構造である。既存の一般発電機(または電動機)の場合は、システムの一部分または一部部品だけに問題が生じても発電機(または電動機)の運転を停止し、問題を解決した後、再び運転しなければならなかった。発電機(または電動機)の出力が大きい場合、発電機(または電動機)の運転が停止すると、全体運用システムに及ぼす影響が非常に大きい。
【0051】
したがって、上述した既存の問題を改善するために、本発明ではリング状の発電機(または電動機)を複数のモジュール化した構成にして次の事項を実現する。
(1)製作、組み立て、移動、設置、及びメンテナンスなどで発生する問題を解決
(2)発電機(または電動機)の一部部品または一部のモジュールで問題が発生しても問題のない他のモジュールは継続的に電力生産(または運転)が可能
このためには、発電機(または電動機)の回転子、固定子、電力変換装置、及び構造物を一体型ではなく、モジュール型に構成する。この場合、発電機(または電動機)が3相(3 phase)の構造であれば、各固定子モジュールは、個別的に3相の発電機(または電動機)の固定子となり、単に出力だけ小さい。したがって、各モジュールの出力は「発電機(電動機)の全体出力/モジュールの数」となる。
【0052】
図11と図12は、本発明による大型リング状の横磁束発電機(または電動機)を示す図面であって、複数のモジュールに分離構成されることを示す。回転子はモジュール型であって、一部分ずつ製作され、連結して組み立てることにより、最終的に円形の回転子になる。モジュール型に構成された固定子は、モジュール別に分解/組み立てが容易な構造であり、各固定子モジュールの表面に各モジュールに該当する電力変換装置の結合が可能である。このようにモジュール型構造を用いることにより、上述した通り一部の固定子及び一部の電力変換装置モジュールに問題があっても、他のモジュールでは継続的に電力生産(または運転)が可能である。
【0053】
このようなモジュール型構造を風力タービンに適用すると、一部のモジュールが故障してもメンテナンスするまで残りモジュールで電力生産が可能であるため、電力生産量を向上させる1つの方法である。そして、このようなモジュール型構造は、風力タービンだけでなく、大型直接駆動方式を用いた発電機と電動機に適用可能である。
【0054】
また、図10から図12には、横磁束発電機(または電動機)としてリング状の発電機(または電動機)の構造を示しているが、縦磁束発電機(または電動機)にもこのようなリング状の構造を適用してもよい。
【0055】
また、図10から図12に示すように、トルク(torque)の伝達と孔隙(air gap)の維持のための軸(shaft)と構造物のないリング状の発電機(または電動機)の構造は、風力タービン用だけでなく、低速高トルク発電機(または電動機)にも適用可能である(例えば、船舶、潜水艦などの推進用電動機、潮力または水力発電用発電機など)。
【0056】
また、このような原理及び構造は、回転型発電機(または電動機)だけでなく、直線型電動機(または発電機)にも適用可能である(例えば、搬送システム用線形電動機、線形往復運動をする発電機など)。
【0057】
−新概念のガイド及び軸受システム
既存の直接駆動式の風力タービンには、回転体と固定体のガイドと支持のために一般の軸受(例えば、機械軸受)を用いる。軸受と発電機の回転子の構成を考慮すると、風力タービンを(1)ダブル軸受システム(double bearing system)、(2)シングル軸受システム(single bearing system)、(3)内部回転子システム(internal rotor system)、(4)外部回転子システム(external rotor system)などのように分類することができる。風力タービンに使用可能な通常の直接駆動式システムの構造を図13に示す。図13を参照すると、回転する部分、固定体、軸受が示されており、既存の軸受システムが有する問題点は次の通りである。
【0058】
軸受と軸受が設置される構造は、製作と運転時に精密度が要求され、この精密度を維持しなければならない。既存の軸受構造は、非常に大きい直径に適用することは可能であるが、要求される精密度を大直径の構造で満足させることは困難であった。
【0059】
既存の軸受は、ローターブレード(rotor blade)を支持し、ガイドする以外に、発電機の回転子と固定子との間に存在する吸引力(attraction force)を克服して孔隙の長さを一定の範囲内に維持しなければならないため、軸受が耐えなければならない負荷が非常に大きい。
【0060】
上述した理由などにより既存の機械的な軸受システムは、強固で、かつ精密でなければならない。このような既存の軸受を上述した本発明によるベアリングレス駆動構造に用いるためには、軸受の直径を発電機の直径とほぼ同様に大きくしなければならない。そして、軸受は風力タービンのローターブレードの重量と発電機の回転子の重量を同時に支えてガイドしなければならない。大直径の軸受を用いてローターブレードの重量と発電機の回転子の重量を両方とも支持してガイドするためには、構造が非常に精密、強固で、重量が重く、価格が高くなる。
【0061】
回転体の回転速度または直線移動物体の移動速度が高速であれば、対象物体の支持とガイドのために高精密度の構造が要求される。しかし、相対的に低速の大型高トルク(または高推力)機器であれば、高速機器よりも相対的に低精密度の構造であっても対象物体の支持とガイドが可能である。特に、直接駆動式の風力タービンは、大型化するほど回転体の回転速度が減少する傾向がある。したがって、既存の軸受システムよりも低精密度を有する軸受システムを用いても重荷重の大型物体を所定の誤差範囲内で支持し、ガイドできるものであれば、上述した既存の軸受により発生する問題を克服することができる。
【0062】
このためには軸受システムにおいて、既存の軸受が有する機械的な接触を排除することが一方法である。したがって、流体軸受または磁気軸受を用いることにより、この条件を満足し、対象物体の支持とガイドが可能になる。
【0063】
先ず、流体軸受を用いて対象物体を重力方向に一定の位置に維持させるためには、物体の重量が克服できる圧力の流体を重力反対方向に物体に衝突させる。磁気軸受を用いる場合は、重力反対方向の軸受力を増加させるが、このために軸受の巻線電流を増加しなければならない。対象物体が重いほど、重量を支えてガイドするためのエネルギーもとても大きくなる。したがって、機械的な接触がなく、重量を支えるために消耗されるエネルギーの量が少ない新概念の軸受が必要である。このために本発明では、対象物体の支持及び維持のために浮力を有する回転体(または移動体)が用いられる。そして、回転子(または移動子)と固定子との間の接触(contact or touchdown)を防止するための流体静圧軸受(hydrostatic bearing)が用いられる。前記流体静圧軸受を用いることにより、孔隙を維持するためのベアリングレス駆動の負担を減らすことができる。すなわち、流体静圧軸受も孔隙を維持する役割を行うため、ベアリングレス駆動のピーク(peak)負荷を減らす効果がある。この新たな軸受システムに対する追加説明は次の通りである。
1)浮力を有する回転体(または移動体)
浮力を用いて重い構造物を流体内で容易に持ち上げることができる。回転体または移動体が流体内で浮力を有する構造であれば、重力を克服して回転体または移動体を所定の地点に容易に位置させることができる。したがって、回転体または移動体の重力方向位置を一定の範囲内で維持するための既存の重くて、強固で、精密な構造が不要である。
2)流体静圧軸受
【0064】
発電機(または電動機)の制御異常や電力変換装置などの一部部品で異常が発生すると、発電機(または電動機)とベアリングレスドライブの運転が同時に停止し、これによって回転体が固定体に接触して構造物の損傷が発生することがある。したがって、流体静圧軸受は、ベアリングレスドライブと共に孔隙を維持する機能だけでなく、回転体が固定体に接触して損傷が発生することを防止する機能もある。
【0065】
このような新たなガイド及び支持方式は、大型直接駆動式発電機/電動機の回転子構造に用いられる。また、このようなガイド及び支持方式は、ローターブレード(またはインペラ、スクリューなど)と発電機/電動機の回転子構造物のガイドと支持にも用いられる。したがって、回転部品を支持し、ガイドする重い構造物が除去されるために、大型直接駆動式の風力タービンの重量を大きく減少させることになる。
【0066】
上述した浮力を有する回転体(または移動体)と流体静圧軸受を図面を参照して説明する。
【0067】
図14は浮力を有する回転子を、図15は流体静圧軸受の基本原理を説明するための図面である。
【0068】
図14の(a)は浮力のある対象物体が流体内で安定状態であることを示す図面である。このように浮力のある物体は、流体で浮かび上がるようになる。そして、図14の(b)は、対象物体が不安定状態であることを示す図面で、物体が揺れたりひっくり返る力が発生する。したがって、対象物体が不安定状態になって揺れたりひっくり返ろうとする時、外部でこれと反対方向の力を加えることにより、物体は再び安定状態に戻る。本発明ではこのような点を用いるために流体静圧軸受を用い、その基本的な概念と構造は図15に示す。図15を参照すると、ポンプにより流体通路に供給された流体が回転体の周辺で一定の圧力状態を維持し、浮力により回転体を支持する構造である。
【0069】
浮力を有する回転体及び流体静圧軸受という2種類の方式を適用すると、図16に示すように回転体を構成することができる。このような構造は、大型直接駆動式システムに適用可能であり、特に図17に示すように直接駆動式の風力タービンのローターブレードと発電機の回転子の支持及びガイドにも適用可能である。すなわち、風力タービンに本発明による発電機の構造を適用する場合、直接駆動式の風力タービン発電機に限定せず、風力タービンのローターを共に結合させた構造も可能であり、これを図17に例示した。本発明によるリング状のベアリングレス構造の発電機と浮力を有する回転子の構造及び流体静圧軸受システムを風力タービンの回転子のガイドにも統合して適用することができる。
【0070】
図16と図17に示す流体静圧軸受が適用される構造に対して説明すると、固定構造物に流体が満たされるリング状の固定部が固定設置され、前記固定部の内部に同心円上に配置されるリング状の回転部が設置される。そして、前記固定部の内側面には固定子が設置され、前記回転部の外側面には前記固定子と対向する位置に回転子が設置される。また、前記固定部の内部には孔隙を維持するための流体が満たされ、回転部の内部には空気が満たされ、特に回転部の外径面に半径方向に突出形成された連結部にはローターブレード(インペラまたはプロペラなど)が一体に連結される。前記連結部は、固定部の外径面に設置されたシーリング部材(流体をシーリング)を介して外部に延長されて外側のローターブレードに連結され、固定部の内部で回転子及び回転部がローターブレードと一体に回転する。このような流体静圧軸受を適用することにより、固定子を含む固定構造物に対して回転子を含む回転構造物が流体の圧力及び浮力により支持され、回転される。
【0071】
図17には発電機(または電動機)及び固定部の外径側にローターブレードが設置された実施例が示されているが、図18及び図19、図20に示すように、発電機及び固定部の内径側にローターブレードが設置される構造も実現可能である。この場合、連結部は固定部の内径面に設置されたシーリング部材を介して外部に延長されるが、連結部が固定部の内径側に延長され、ローターブレードも固定部の内径側で連結部と一体に連結されるように設置される。
上記のように流体静圧軸受が適用されたリング状の発電機(または電動機)構造は、風力タービン用以外にも、低速高トルク発電機(または電動機)にも適用可能である(例えば、船舶、潜水艦などの推進用電動機、潮力または水力発電用発電機など)。
【0072】
以上、本発明の実施例に対して詳細に説明したが、本発明の権利範囲は上述した実施例に限定されることなく、次の特許請求の範囲で定義する本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形及び改良形態も本発明の権利範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
10 風力タービン
11 ローターブレード
12 回転子
13 シャフト
14 固定子
15 軸受
22,23 鉄心
24 永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機及び電動機のように回転子または移動子と共に固定子を有する直接駆動式の電気機器であって、
前記回転子または前記移動子と、これに組み合わされる前記固定子がそれぞれ分離構成された複数のモジュールが1つの相(phase)を構成するように組み合わされ、短い磁束経路を有する複数のモジュール組合せ型構造で構成されることを特徴とする直接駆動式の電気機器。
【請求項2】
前記回転子または前記移動子と前記固定子の組合わせ構造において、前記回転子または前記移動子を中心として両側に孔隙を有するように固定子が配置される両側孔隙型構造で構成されることを特徴とする請求項1に記載の直接駆動式の電気機器。
【請求項3】
前記回転子または前記移動子と前記固定子との間の両側の孔隙は、各固定子の巻線に印加される電流を制御して孔隙を維持するベアリングレスドライブにより維持され、前記ベアリングレスドライブは、前記回転子または前記移動子の重量の支えに用いられないように形成されることを特徴とする請求項2に記載の直接駆動式の電気機器。
【請求項4】
前記両側の孔隙で鎖交する磁束の方向が軸方向の軸磁束機器の構造を有することを特徴とする請求項2または3に記載の直接駆動式の電気機器。
【請求項5】
両側の各前記固定子に対応する前記回転子または前記移動子がそれぞれ設けられ、左側の前記固定子+前記回転子(または前記移動子)の1セットと、右側の前記固定子+前記回転子(または前記移動子)の1セットで構成されることを特徴とする請求項2または3に記載の直接駆動式の電気機器。
【請求項6】
前記回転子と前記固定子がそれぞれリング状になることを特徴とする請求項2または3に記載の直接駆動式の電気機器。
【請求項7】
前記電気機器が横磁束発電機または横磁束電動機であることを特徴とする請求項1から3のうち何れか1項に記載の直接駆動式の電気機器。
【請求項8】
前記電気機器が縦磁束発電機または縦磁束電動機であることを特徴とする請求項1から3のうち何れか1項に記載の直接駆動式の電気機器。
【請求項9】
前記回転子と前記固定子との間の孔隙は、流体圧力及び浮力により前記回転子を支持する流体静圧軸受と、各前記固定子の巻線に印加される電流を制御して前記孔隙を維持するベアリングレスドライブにより維持されることを特徴とする請求項2に記載の直接駆動式の電気機器。
【請求項10】
発電機または電動機として、
固定構造物に流体が満たされるリング状の固定部が固定設置され、前記固定部の内部には同心円上に配置されるリング状の回転部が設置され、前記固定部の内側面に前記固定子が設置され、前記回転部の外側面には前記固定子と対向する位置に前記回転子が設置され、前記固定部の内部には前記孔隙を維持するための前記流体が満たされ、前記回転部は前記固定部の外部に延長された連結部を介してローターブレードに連結された構成を有することを特徴とする請求項9に記載の直接駆動式の電気機器。
【請求項11】
前記ローターブレードが前記固定部の外径側に配置され、前記回転部が前記固定部の外径側に延長された前記連結部を介して前記ローターブレードに連結されることを特徴とする請求項10に記載の直接駆動式の電気機器。
【請求項12】
前記ローターブレードが前記固定部の内径側に配置され、前記回転部が前記固定部の内径側に延長された前記連結部を介して前記ローターブレードに連結されることを特徴とする請求項10に記載の直接駆動式の電気機器。
【請求項13】
前記回転子または前記移動子では各モジュール毎に2つの永久磁石が設けられ、前記2つの永久磁石の間に永久磁石の磁束経路を形成する三角断面形状の鉄心が配置され、
前記各モジュールに逆三角断面形状の磁束集中型鉄心が設けられ、前記2つの永久磁石が前記磁束集中型鉄心の両側傾斜面に配置され、各前記2つの永久磁石が磁束集中型鉄心の傾斜面と磁束経路維持用鉄心の傾斜面との間に配置される構造であることを特徴とする請求項1に記載の直接駆動式の電気機器。
【請求項14】
前記各モジュールは、独立した機能及び運転を行うように、独立した構成を有することを特徴とする請求項1に記載の直接駆動式の電気機器。
【請求項15】
前記巻線は、レーストラック(racetrack)状の構造を有することを特徴とする請求項3に記載の直接駆動式の電気機器。
【請求項16】
前記直接駆動式の電気機器は、前記移動子と前記固定子で構成される線形駆動の電気機器であることを特徴とする請求項3に記載の直接駆動式の電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2013−505697(P2013−505697A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529669(P2012−529669)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【国際出願番号】PCT/KR2010/006290
【国際公開番号】WO2011/034336
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(500581814)コリア エレクトロテクノロジー リサーチ インスティチュート (14)
【Fターム(参考)】