説明

直撃雷検出装置

【課題】 直撃雷の衝撃電流により発生した微小な磁束を確実に検出する。
【解決手段】 直撃雷により円筒状支柱の外表面に流れる衝撃電流でもって発生する磁束を検出する磁界センサ11と、磁界センサ11の出力に整流回路12を介して接続され、磁界センサ11の検出信号を後段へ非接触で伝送する発光ダイオード13aおよびフォトトランジスタ13bと、フォトトランジスタ13bの出力にラッチ回路14を介して接続され、直撃雷の有無を出力する送信器15とを具備し、磁界センサ11は、強磁性体からなるH状コア11aと、コア11aに対して線材を所定ターン数だけ螺旋状に巻回し、その巻回方向が衝撃電流が流れる方向と直交するように配置されたループ状コイル11bとを備え、コア11aは、コイル11bをその巻回方向に沿って貫通するように配置された胴部11a1と、胴部11a1の両端から延び、コイル11bの巻回端部外側で衝撃電流が流れる方向と平行になるように配置された脚部11a2とで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、風力発電システムにおける風車に直撃雷を受けたか否かを検出するため、風車のブレードを支持する円筒状支柱に取り付けられる直撃雷検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧送電線の鉄塔に落雷があった場合に、その位置を自動的に通報する落雷鉄塔通報装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この落雷鉄塔通報装置は、送電線鉄塔に流れる電流により誘起される磁界を検出するセンサと、所定のデータを保持した制御部と、この制御部から出力される所定のデータを送信信号に変調してアンテナに供給する送信部と、センサの検出出力によりオンされ、制御部および送信部の電源オン動作時間を設定するタイマーとで構成されている。
【0004】
送電線鉄塔に落雷があると、自動的に所定のコードが送信部から電波に乗せられて送信されるために、受信機でこのコードをキャッチすれば、夜間および悪天候時であっても、容易に落雷のあった送電線鉄塔を確定することができる。
【0005】
具体的には、送電線鉄塔に落雷がありその鉄塔に衝撃電流が流れると、鉄塔脚に磁束が発生する。この磁束を、鉄塔脚に取り付けられたセンサコイルにより検出する。このセンサコイルの検出出力が一定電圧以上にならないように過電圧保護回路により分圧・分流し、フォトカプラを制御する。このフォトカプラは、センサコイルに流れる電流を利用して発光する発光素子と、この発光素子からの光でパルスを出力する受光素子との光結合でもって、電池によりシステムをオンするタイマーに制御信号を与える。これにより制御部が起動され、自局データが送信部に与えられる。これにより、送信出力はアンテナを介して電波として発射される。そして、一定時間が経過すると、タイマーが動作してシステムをオフ状態にし、全ての機能が初期の待機状態に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−136605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述した特許文献1に開示された落雷鉄塔通報装置では、コイルのみで構成されたセンサを鉄塔脚に取り付けることにより、その鉄塔脚に流れる衝撃電流で発生する磁束を検出するようにしている。落雷時に鉄塔脚に流れる衝撃電流は、複雑に組まれた鉄塔脚で分流し易く、その衝撃電流を確実に検出するためにどの位置の鉄塔脚にセンサを取り付ければよいかを決めるのが非常に困難である。つまり、センサを取り付けた鉄塔脚に流れる衝撃電流が分流により微小なものであると、コイルのみで構成されたセンサではその微小な衝撃電流を検出することができない可能性がある。
【0008】
また、近年、クリーンなエネルギーとして注目されている風力発電システムにおいても、風車に直撃雷があると、その風車のブレードが直撃雷により損傷し、そのまま長期間放置しておくと、ブレードの劣化が進行してブレードの交換作業が必要となる。一方、直撃雷により損傷したブレードをすぐに補修すれば、風車の長寿命化が図れて風力発電システムの設備寿命の間におけるブレードの交換頻度を著しく低減することができる。そのため、風力発電システムにおける風車が直撃雷を受けたか否かを迅速かつ確実に検出できるようにすることが望ましい。
【0009】
ここで、風車のブレードを支持する支柱は、例えば4m程度の直径を有する円筒状をなすのが一般的である。この風車の支柱に特許文献1の落雷鉄塔通報装置を取り付ける場合、その落雷鉄塔通報装置のセンサを支柱の外表面に適宜の手段で取り付けることになる。この場合、直撃雷により支柱の外表面に流れる衝撃電流により発生する磁束は、その支柱の中心に衝撃電流が流れる状態と等価であり、磁束密度は支柱中心からの距離に反比例して小さくなる。このことから、支柱の中心から2m程度も離隔した外表面では、衝撃電流により発生する磁束が微小なものとなっている。
【0010】
前述したように、特許文献1に開示された落雷鉄塔通報装置のセンサ、つまり、コイルのみで構成されたセンサでは、支柱の中心から2m程度も離隔した外表面で、直撃雷の衝撃電流により発生した微小な磁束を検出することが非常に困難である。このことから、特許文献1の落雷鉄塔通報装置を風車の支柱に適用しようとしても、実用に供することができないというのが現状である。
【0011】
そこで、本発明は、前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、直撃雷の衝撃電流により発生した磁束が微小であっても、その微小な磁束を確実に検出し得る直撃雷検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、直撃雷により円筒状支柱の外表面に流れる衝撃電流でもって発生する磁束を検出する磁界センサと、磁界センサの出力に整流部を介して接続され、磁界センサの検出信号を後段へ非接触で伝送する信号伝送部と、信号伝送部の出力に信号変換部を介して接続され、直撃雷の有無を出力する出力部とを具備し、磁界センサは、強磁性体からなるH状コアと、そのコアに対して線材を所定ターン数だけ螺旋状に巻回し、その巻回方向が衝撃電流が流れる方向と直交するように配置されたループ状コイルとを備え、コアは、コイルをその巻回方向に沿って貫通するように配置された胴部と、その胴部の両端から延び、コイルの巻回端部外側で衝撃電流が流れる方向と平行になるように配置された脚部とで構成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明における直撃雷検出装置の磁界センサは、強磁性体からなるH状コアと、そのコアに対して線材を所定ターン数だけ螺旋状に巻回し、その巻回方向が衝撃電流が流れる方向と直交するように配置されたループ状コイルとを備え、コアは、コイルをその巻回方向に沿って貫通するように配置された胴部と、その胴部の両端から延び、コイルの巻回端部外側で衝撃電流が流れる方向と平行になるように配置された脚部とで構成されていることから、直撃雷により円筒状支柱の外表面に流れる衝撃電流でもって発生する磁束が微小であっても、その微小な磁束を磁界センサにより確実に検出することが可能となる。
【0014】
本発明における磁界センサは、コアをコイルの巻回中心よりも衝撃電流が流れる側に偏心させた位置に配置されている構造が望ましい。このようにすれば、磁界センサのコアが、衝撃電流が流れる側に近接した位置に配置されることになり、磁界センサの検出感度を上げることが容易となる。
【0015】
本発明では、磁界センサと整流部との間に、ギャップ素子およびバリスタ素子を並列接続した構造が望ましい。このようにすれば、ギャップ素子およびバリスタ素子が、後段の整流部、信号伝送部、信号変換部および出力部をサージ電流から保護する機能を発揮する。つまり、前段の磁界センサからサージ電流が入力されても、このサージ電流をギャップ素子およびバリスタ素子で阻止することができる。ギャップ素子は、比較的大きなサージ電流を阻止する機能を発揮し、バリスタ素子は比較的小さなサージ電流を阻止する機能を発揮する。
【0016】
本発明における信号伝送部は、整流部の出力に定電流ダイオードを介して接続された発光ダイオードと、その発光ダイオードに所定の間隙を介して対向配置され、出力が信号変換部に接続されたフォトトランジスタとで構成されている構造が望ましい。このようにすれば、発光ダイオードとフォトトランジスタとをそれぞれ単体部品で使用することで、単体部品としての発光ダイオードに超高輝度の赤色発光ダイオードを使用することができ、最適な発光状態でフォトトランジスタに信号を伝送することができる。また、前述の発光ダイオードとは別の発光素子を使用することにより、その発光素子の発光をフォトトランジスタで受けることでフォトトランジスタの後段である信号変換部および出力部の動作テストを実施することができる。
【0017】
本発明における出力部は、直撃雷の有無を報知する出力信号を無線により送信可能とした送信器で構成されている構造が望ましい。このようにすれば、送信器から送信される出力信号を受信器で受信することで、直撃雷の有無に関する情報を現場まで出向くことなく、現地から遠く離れた場所において認知することができる。
【0018】
本発明は、風力発電システムにおける風車のブレードを回転自在に支持する円筒状支柱に適用することが有効である。このようにすれば、直撃雷検出装置の磁界センサが取り付けられる円筒状支柱の直径が大きい場合であっても、その円筒状支柱の中心から離隔した外表面で、直撃雷の衝撃電流により発生した微小な磁束を磁界センサにより確実に検出することが容易である。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、強磁性体からなるH状コアと、そのコアに対して線材を所定ターン数だけ螺旋状に巻回し、その巻回方向が衝撃電流が流れる方向と直交するように配置されたループ状コイルとを備えた磁界センサを使用し、そのコアは、コイルをその巻回方向に沿って貫通するように配置された胴部と、その胴部の両端から延び、コイルの巻回端部外側で衝撃電流が流れる方向と平行になるように配置された脚部とで構成されている。
【0020】
このような構成を具備した磁界センサを使用することにより、直撃雷により円筒状支柱の外表面に流れる衝撃電流でもって発生する磁束が微小であっても、その微小な磁束を磁界センサにより確実に検出することが可能となる。その結果、例えば、風力発電システムにおける風車のブレードへの直撃雷の有無を確実に検出し得る実用的価値の大きな直撃雷検出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態で、直撃雷検出装置の回路構成図である。
【図2】図1の直撃雷検出装置の取り付け状態を示す斜視図である。
【図3】(A)は図1の磁界センサを示す拡大正面図、(B)は(A)の右側面図、(C)は(A)の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る直撃雷検出装置の実施形態を以下に詳述する。なお、以下の実施形態では、風力発電システムにおける風車のブレードを回転自在に支持する大径の円筒状支柱に取り付けられ、その風車のブレードに直撃雷を受けたか否かを検出する直撃雷検出装置を例示する。
【0023】
図1に示す実施形態の直撃雷検出装置20は、直撃雷により円筒状支柱の外表面に流れる衝撃電流でもって発生する磁束を検出する磁界センサ11と、その磁界センサ11の出力に整流部12を介して接続され、磁界センサ11の検出信号を後段へ非接触で伝送する信号伝送部13と、その信号伝送部13の出力に信号変換部14を介して接続され、直撃雷の有無を出力する出力部15とで構成されている。なお、磁界センサ11と整流部12との間には、ギャップ素子16およびバリスタ素子17が並列接続されている。また、整流部12と信号伝送部13との間には、定電流ダイオード18が直列接続されている。
【0024】
整流部12は、4つの整流ダイオード12aをブリッジ構成した整流回路(以下、整流回路12と称す)である。信号伝送部13は、単体部品の発光ダイオード13aと、その発光ダイオード13aに所定の間隙を介して対向配置された単体部品のフォトトランジスタ13bとで構成されている。信号変換部14は、フォトトランジスタ13bの出力を一定時間保持するラッチ回路(以下、ラッチ回路14と称す)で構成されている。出力部15は、ラッチ回路14の出力、つまり、直撃雷の有無を報知する出力信号を無線により送信可能とした送信器(以下、送信器15と称す)で構成されている。ラッチ回路14および送信器15には耐雷トランス19が接続されている。
【0025】
この直撃雷検出装置20は、前述の磁界センサ11と、ギャップ素子16およびバリスタ素子17、整流回路12(整流ダイオード12a)、定電流ダイオード18、信号伝送部13(発光ダイオード13aおよびフォトトランジスタ13b)、ラッチ回路14、送信器15および耐雷トランス19からなる回路構成部品を配線基板上に実装して非磁性体の樹脂製ケース21に収容した構造を具備し、図2に示すように、取り付け対象物である円筒状支柱22にステンレス製バンド23によりケース21を固定することにより取り付けられる。
【0026】
この実施形態において、取り付け対象物である支柱22は、風力発電システムにおける風車のブレードを回転自在に支持するものである。近年、クリーンなエネルギーとして注目されている風力発電システムにおいても、風車に直撃雷があると、その風車のブレードが直撃雷により損傷し、そのまま長期間放置しておくと、ブレードの劣化が進行してブレードの交換作業が必要となる。一方、直撃雷により損傷したブレードをすぐに補修すれば、風車の長寿命化が図れて風力発電システムの設備寿命の間におけるブレードの交換頻度を著しく低減することができる。そのため、風力発電システムにおける風車が直撃雷を受けたか否かを迅速かつ確実に検出できるようにすることが望ましい。
【0027】
ここで、風車のブレードを支持する支柱22は、例えば4m程度の直径を有する円筒状をなすのが一般的である。この場合、直撃雷により支柱22の外表面に流れる衝撃電流により発生する磁束は、その支柱22の中心に衝撃電流が流れる状態と等価である。磁束密度は支柱22の中心からの距離に反比例して小さくなることから、支柱22の中心から2m程度も離隔した外表面では、衝撃電流により発生する磁束が微小なものとなっている。そこで、この直撃雷検出装置20では、直撃雷の衝撃電流により発生した磁束が微小であっても、その微小な磁束を確実に検出し得るように磁界センサ11を以下の構造としている。
【0028】
この実施形態における磁界センサ11は、図3(A)〜(C)に示すように、例えばフェライト等の強磁性体からなるH状コア11aと、そのコア11aに対して線材を所定ターン数(例えば100ターン)だけ螺旋状に巻回したループ状コイル11bとを備えている。前述のケース21内の配線基板上に実装されてそのケース21を支柱22に固定した状態で、磁界センサ11のコイル11bは、その巻回方向が支柱22の外表面で衝撃電流が流れる方向(図1および図2の白抜き矢印方向)と直交するように配置されている。また、磁界センサ11のコア11aは、コイル11bをその巻回方向に沿って貫通するように配置された胴部11a1と、その胴部11a1の両端から一体的に延び、コイル11bの巻回端部外側で衝撃電流が流れる方向と平行になるように配置された脚部11a2とで構成されている。
【0029】
この実施形態では、2つのコ字状コアを逆向きに突き合わせて対称形状のH状をなすように磁界センサ11のコア11aを構成している。このようにすれば、市販品のコ字状コアを使用することで磁界センサ11を製作することができ、装置のコスト低減が図れる。なお、2つのコ字状コアを逆向きに突き合わせて対称形状のH状をなすように構成する以外に、1つの一体物でH状をなすように磁界センサ11のコア11aを構成するようにしてもよい。また、コア11bの断面形状も図示のような矩形だけでなく、円形や楕円形であってもよく、その形状は任意である。さらに、脚部11a2の形状は、衝撃電流が流れる方向に延びる図示のような矩形の棒状だけでなく、胴部11a1が延びる方向と直交する面を持つ矩形や円形の板状であってもよく、その形状は任意である。要するに、コア11aは、図3(A)の正面から見た平面内でH状をなす形状であればよい。
【0030】
以上のように磁界センサ11は、H状コア11aと、そのコア11aに対して線材を螺旋状に巻回し、その巻回方向が衝撃電流が流れる方向と直交するように配置されたループ状コイル11bとを備え、コア11aは、コイル11bをその巻回方向に沿って貫通するように配置された胴部11a1と、その胴部11a1の両端から一体的に延び、コイル11bの巻回端部外側で衝撃電流が流れる方向と平行になるように配置された脚部11a2とで構成されている。これにより、風車のブレードに直撃雷があると、その直撃雷により支柱22の外表面に流れる衝撃電流でもって発生する磁束が微小であっても、その微小な磁束を磁界センサ11により確実に検出することが可能となる。
【0031】
また、この磁界センサ11は、図3(B)(C)に示すように、コア11aをコイル11bの巻回中心よりも衝撃電流が流れる側、つまり、支柱22の外表面側に偏心させた位置に配置された構造としている。このようにコア11aをコイル11bに対して偏心させた構造とすることにより、磁界センサ11のコア11aが、衝撃電流が流れる支柱22の外表面側に近接した位置に配置されることになり、磁界センサ11の検出感度を上げることが容易となる点で有効である。
【0032】
この直撃雷検出装置20は、前述したように、磁界センサ11と整流回路12との間に、ギャップ素子16およびバリスタ素子17を並列接続した構造としている。このように磁界センサ11と整流回路12との間に設けられたギャップ素子16およびバリスタ素子17が、後段の整流回路12、発光ダイオード13aおよびフォトトランジスタ13b、ラッチ回路14および送信器15をサージ電流から保護する機能を発揮する。
【0033】
つまり、前段の磁界センサ11からサージ電流が入力されても、このサージ電流をギャップ素子16およびバリスタ素子17で阻止することができる。ギャップ素子16は、比較的大きなサージ電流を阻止する機能を発揮し、バリスタ素子17は比較的小さなサージ電流を阻止する機能を発揮する。これにより、ギャップ素子16およびバリスタ素子17は二重の保護機能を発揮する。
【0034】
信号伝送部13を構成する発光ダイオード13aは、整流回路12の出力に定電流ダイオード18を介して接続され、フォトトランジスタ13bは、その発光ダイオード13aに所定の間隙を介して対向配置されている。この発光ダイオード13aの前段に、抵抗ではなく、定電流ダイオード18を用いることにより、電流ロスを小さくして発光ダイオード13aを発光させるようにしている。また、整流回路12として整流ダイオード12aのブリッジ構成を採用したことにより、直撃雷の極性に関わらず、発光ダイオード13aを発光させるようにしている。
【0035】
この実施形態では、従来のような発光素子と受光素子とを一体化したフォトカプラを使用することなく、発光ダイオード13aとフォトトランジスタ13bとをそれぞれ独立した単体部品で使用する。これにより、最適な発光状態でフォトトランジスタ13bに信号を伝送し得る発光ダイオード13aを選定することができ、例えば、超高輝度の赤色発光ダイオードを使用することができる。また、単体部品の発光ダイオード13aおよびフォトトランジスタ13bを独立して使用することにより、前述のフォトカプラよりも良好な絶縁性を確保することが可能となる。
【0036】
さらに、単体部品の発光ダイオード13aおよびフォトトランジスタ13bを使用することで、両者間が完全に独立していることから、フォトトランジスタ13bの後段であるラッチ回路14および送信器15の動作テストを実施することができる。つまり、ラッチ回路14および送信器15はメンテナンスおよび信頼性の向上を図る上で動作確認を必要とする。そこで、直撃雷検出装置20を設置する現場にて、作業員が持参したデジタルカメラのフラッシュに使用されている発光素子を前述の発光ダイオード13aに代えて発光させることにより、その発光素子の発光をフォトトランジスタ13bで受けることでラッチ回路14および送信器15の動作テストを事前に実施することができる。
【0037】
前述のラッチ回路14は、フォトトランジスタ13bから出力される検出信号を一定時間保持することで送信器15へ出力可能な信号に変換する。また、送信器15は、直撃雷の有無を報知する出力信号を無線により送信可能としている。このようにして、送信器15から送信される出力信号を受信器24で受信することで、直撃雷の有無に関する情報を現場まで出向くことなく、現地から遠く離れた場所において認知することができる。なお、このラッチ回路14および送信器15と電源ラインとの間には耐雷トランス19を設けることにより、電源ラインからのサージ電流の侵入を阻止して絶縁性を確保するようにしている。
【0038】
前述の受信器24としては、一般的な携帯電話を使用することが可能であり、その携帯電話でメール通知を受信することにより直撃雷の有無を認知することができる。なお、携帯電話以外の他の受信器を使用することも可能であり、その受信器の液晶ディスプレイに表示させるようにしてもよい。
【0039】
なお、この実施形態では、出力部として送信器15を例示しているが、この出力部には送信器以外に記録計を選定することも可能である。このように出力部として記録計を使用することにより、ラッチ回路14からの出力信号として得られる直撃雷の有無に関する情報をデータとして蓄積することが可能となる。この記録計に蓄積されたデータは、作業員が現地に出向いて回収するようにすればよい。
【0040】
以上の構成からなる直撃雷検出装置20の動作は次のとおりである。
【0041】
風車のブレードに直撃雷があると、その直撃雷により支柱22の外表面に流れる衝撃電流でもって発生する微小な磁束を磁界センサ11により確実に検出する。この時、磁界センサ11のコア11aをコイル11bの巻回中心よりも衝撃電流が流れる支柱22の外表面側に偏心させた位置に配置された構造としていることにより〔図3(B)(C)参照〕、衝撃電流により発生した磁束を高感度で検出することができる。
【0042】
この磁界センサ11から出力される検出信号をギャップ素子16およびバリスタ素子17を介して整流回路12で整流して定電流ダイオード18を介して発光ダイオード13aを発光させる。前述のギャップ素子16およびバリスタ素子17は、直撃雷の検出信号以外のサージ電流が後段の整流回路12に流入することを阻止する。また、定電流ダイオード18は、電流ロスを小さくして発光ダイオード13aを発光させる。
【0043】
この発光ダイオード13aの発光をフォトトランジスタ13bで受光し、そのフォトトランジスタ13bから出力される検出信号をラッチ回路14により一定時間保持し、送信器15により外部へ送信する。この送信信号を携帯電話などの受信器24で受信することにより、直撃雷の有無に関する情報を得ることができる。
【0044】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0045】
11 磁界センサ
11a H状コア
11a1 胴部
11a2 脚部
11b ループ状コイル
12 整流部(整流回路)
13 信号伝送部
13a 発光ダイオード
13b フォトトランジスタ
14 信号変換部(ラッチ回路)
15 出力部(送信器)
16 ギャップ素子
17 バリスタ素子
18 定電流ダイオード
20 直撃雷検出装置
22 円筒状支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直撃雷により円筒状支柱の外表面に流れる衝撃電流でもって発生する磁束を検出する磁界センサと、前記磁界センサの出力に整流部を介して接続され、磁界センサの検出信号を後段へ非接触で伝送する信号伝送部と、前記信号伝送部の出力に信号変換部を介して接続され、直撃雷の有無を出力する出力部とを具備し、
前記磁界センサは、強磁性体からなるH状コアと、前記コアに対して線材を所定ターン数だけ螺旋状に巻回し、その巻回方向が前記衝撃電流が流れる方向と直交するように配置されたループ状コイルとを備え、前記コアは、前記コイルをその巻回方向に沿って貫通するように配置された胴部と、前記胴部の両端から延び、前記コイルの巻回端部外側で衝撃電流が流れる方向と平行になるように配置された脚部とで構成されていることを特徴とする直撃雷検出装置。
【請求項2】
前記磁界センサは、コアをコイルの巻回中心よりも衝撃電流が流れる側に偏心させた位置に配置されている請求項1に記載の直撃雷検出装置。
【請求項3】
前記磁界センサと前記整流部との間に、ギャップ素子およびバリスタ素子を並列接続した請求項1又は2に記載の直撃雷検出装置。
【請求項4】
前記信号伝送部は、整流部の出力に定電流ダイオードを介して接続された発光ダイオードと、前記発光ダイオードに所定の間隙を介して対向配置され、出力が信号変換部に接続されたフォトトランジスタとで構成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の直撃雷検出装置。
【請求項5】
前記出力部は、直撃雷の有無を報知する出力信号を無線により送信可能とした送信器で構成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の直撃雷検出装置。
【請求項6】
前記円筒状支柱は、風力発電システムにおける風車のブレードを回転自在に支持するものである請求項1〜5のいずれか一項に記載の直撃雷検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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