説明

直流モータ用駆動制御装置

【課題】周囲環境変動や経年劣化等により駆動特性が変化しても適切に異常判定を行うことができる直流モータ用駆動制御装置を提供する
【解決手段】本発明の直流モータ用駆動制御装置では、(n-1)回目までに得られた正常駆動時の駆動電圧の平均値pint/Nを用いて、駆動電圧制御値pset(n)の異常判定を行う(ステップB9)。そして、|pset(n)|≦α|pint/N|を満たさない場合には異常が発生している可能性があるとしてロック回数klocを積算していき(ステップB11)、|pset(n)|≦α|pint/N|を満たす場合にはklocを0にセットし直すと共に、駆動電圧積算値pint及び正常駆動回数Nを更新する(ステップB12)。ステップB9の判定を満たさないことがKloc回連続して生じたときは異常が発生しているものとして、モータ駆動フラグをオフにし、モータ駆動を終了する(ステップB13及びB14)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流(DC)モータの駆動を制御する直流モータ用駆動制御装置に関する。本発明は、例えば分光光度計などの各種分析装置に好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
分光光度計では、例えば波長走査を行うために回折格子を回動させる機構や、光路に挿入する試料セルを自動的に入れ替えたり試料交換を行ったりする機構などにおいて、様々な駆動機構が使用されている。これらの駆動機構は、直流モータやステッピングモータなどの駆動源と、ロータリエンコーダなどの角度計測手段、或いはフォトインタラプタやリミットスイッチなどの限界センサによる位置計測手段、などを備える。
【0003】
直流モータでは、印加される駆動電圧とモータの無負荷回転数が比例するため、駆動電圧を調節して回転速度を制御できる。特許文献1には、クロマトグラフ分析装置等に使用されるオートサンプラにおいて、直流モータ及びパルスエンコーダを駆動機構として用いた例が記載されている。ここで、パルスエンコーダは直流モータの回転軸に取り付けられており、その出力は中央演算装置(CPU)に定期的にフィードバックされる。CPUは、パルスエンコーダからの出力に基づいて制御対象物(可動部)の移動速度及び絶対位置を算出し、それぞれが制御目標値となるように駆動電圧を制御する。
このような直流モータとパルスエンコーダを組み合わせた駆動機構は分光光度計で多く用いられており、例えば特許文献2の試料保持駆動部や拭き取り機構駆動部、特許文献3の拭き取り手段、押さえ手段などに使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-90279号公報
【特許文献2】国際公開WO2008/044329号公報
【特許文献3】国際公開WO2007/113895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
直流モータを駆動源としたフィードバック制御では、可動部の実測速度が目標速度を下回った場合、駆動電圧を大きくして実測速度を目標速度に追随させようとする。しかし、可動部が可動限界に達したり異物に接触したりすることによって実測速度が低下すると、目標速度に近づけようとして更に大きな駆動電圧を印加するように作用するため、このままでは駆動機構を含む装置の各部が損傷してしまうことがある。このような事態を防ぐために、フィードバック制御を行う際には何らかの異常判定を行う必要がある。
【0006】
異常判定には、可動部の所定位置への(又は所定範囲の)移動時間が許容範囲内にあるか否かにより判定するタイムアウト方式の判定方法が用いられることがある。しかし、このタイムアウト方式の判定では、過去に異常が生じたことは検出できても、現時点で異常が生じていることを検出することはできない。そのため、駆動電圧が高くなる異常な状態が続いても動作を中断できず、駆動機構を含む装置各部の損傷を招いてしまう。
このようなタイムアウト方式の不具合を解決する方法として、制御部が定期的に取得又は算出する可動部の実測速度及び/又は直流モータに印加する駆動電圧(或いは駆動電流)が、一定回数連続して許容範囲外にある場合を異常と判定する方式が採用されていた。
【0007】
しかしながら、装置の個体差や周囲環境変動等により駆動機構の特性が異なると、直流モータに印加する駆動電圧の最適値も異なってくる。また、この最適値は経年劣化による駆動特性の変化にも依存する。これら装置の個体差・周囲環境変動・経年劣化をすべて考慮して最適な判定基準値を求めることは困難である。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、駆動特性が変化しても適切に異常判定を行うことができる、直流モータ用の駆動制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された第1発明に係る直流モータ用駆動制御装置は、
直流モータの回転軸の回転トルクを駆動対象の所定の運動に変換する変換手段と、前記駆動対象の位置を含む情報を取得する駆動対象測定手段と、前記駆動対象測定手段により得られた情報に基づいて定期的に前記直流モータに印加する駆動電圧を算出し、該算出値に基づいて駆動電圧を制御する制御手段と、を有する直流モータ用駆動制御装置において、
前記制御手段が、所定の期間内に算出した正常駆動時における駆動電圧値の平均を判定基準に用いて、今回算出した駆動電圧値の異常判定を行う
ことを特徴とする。
【0010】
なお、前記所定の期間は、直流モータへの制御を開始した時点から異常判定を行う直前の時点までとすることが望ましい。これにより、制御中に判定基準を更新することができ、駆動特性をより反映した異常判定を行うことができる。
【0011】
上記発明では、異常判定を駆動電圧の算出値を用いて行っているが、直流モータでは駆動電流がトルクに比例するため、以下に示すように直流モータに供給される駆動電流を直接測定し、その測定値を用いて異常判定を行うこともできる。
【0012】
すなわち、上記課題を解決するために成された第2発明に係る直流モータ用駆動制御装置は、
直流モータの回転軸の回転トルクを駆動対象の所定の運動に変換する変換手段と、前記駆動対象の位置を含む情報を取得する駆動対象測定手段と、前記駆動対象測定手段により得られた情報に基づき、定期的に前記直流モータに印加する駆動電圧を制御する制御手段と、を有する直流モータ用駆動制御装置において、
前記直流モータに供給される駆動電流を測定する駆動電流測定手段を有し、
前記制御手段が、所定の期間内に測定した正常駆動時における駆動電流値の平均を判定基準に用いて、今回測定した駆動電流値の異常判定を行う
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の直流モータ用駆動制御装置では、判定基準をフィードバック制御の対象とする駆動電圧の算出値又は駆動電流の実測値(測定値)に基づいて与えているため、実際に駆動機構を使用する際の特性に依存した異常判定を行うことができる。これにより、駆動機構を含む装置の個体差や周囲環境の変化にも対応することができると共に、経年劣化などによって駆動特性が変化しても長期に亘って適切に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る駆動制御装置の第1実施例を備える駆動機構を示す概略構成図。
【図2】第1実施例の駆動制御装置の制御部の動作を示すフローチャート。
【図3】第1実施例の駆動制御装置の制御部の動作を示すフローチャート。
【図4】第1実施例の駆動制御装置の制御部の動作を示すフローチャート。
【図5】本発明に係る駆動制御装置の第2実施例を備える駆動機構を示す概略構成図。
【図6】第2実施例の駆動制御装置の制御部の動作を示すフローチャート。
【図7】第2実施例の駆動制御装置の制御部の動作を示すフローチャート。
【図8】第2実施例の駆動制御装置の制御部の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
本発明に係る直流モータ用駆動制御装置の第1実施例を備える駆動機構の概略構成を図1に示す。この駆動機構は、CPU(制御部)1、駆動電圧生成部2、直流モータ3、駆動対象測定部4、変換部5、及び駆動対象である可動部6を備えている。
【0016】
ここで、変換部5は、多段歯車やボールねじなどの各種の機械要素から構成されており、これらが直流モータ3の回転軸と連結されることにより、直流モータ3の回転トルクを可動部6の所定の運動に変換する。
【0017】
本実施例の駆動対象測定部4は、パルスエンコーダ11とアップダウンカウンタ12とから構成されている。ここで、パルスエンコーダ11は、直流モータ3の回転軸に取り付けられており、位相の異なる2つの矩形波信号をアップダウンカウンタ12に出力する。アップダウンカウンタ12は、パルスエンコーダ11からの入力信号に基づき、直流モータ3の回転軸の回転角度に比例したカウント値を出力する。CPU1は、アップダウンカウンタの出力値(カウント値)と変換部5におけるボールねじや歯車等の特性を基に、可動部6の位置を算出することができる。
【0018】
なお、図1の駆動機構は、直流モータ3の回転軸の回転角度や回転数から可動部6の位置や速度を間接的に検出してこれらの制御(すなわちモータ駆動電圧の制御)を行う、いわゆるセミクローズド制御を用いた機構であるが、可動部6の位置や速度を直接的に測定して直流モータ3を制御するフルクローズド制御を用いることもできる。
【0019】
CPU1は、アップダウンカウンタ12から入力されるカウント値を用いて可動部6の位置や速度を算出し、これらが予め与えられた制御目標値になるように、駆動電圧生成部2に定期的な割り込み処理を行い、直流モータ3に印加する駆動電圧を制御する。この駆動電圧の制御には、様々なフィードバック制御の手法を用いることができるが、本実施例では次式に示すPID制御により駆動電圧の制御を行う。
pset(n)=gp×(vset-vact(n))+gi×Σj=0〜n(vset-vact(j))
+gd×(vact(n-1)-vact(n)) …(1)
ここで、vset, gp, gi, gdはそれぞれ可動部6の目標速度、P項ゲイン、I項ゲイン、D項ゲインであり、予め与えられた設定値である。また、vactは駆動対象測定部4の測定値から決まる可動部6の実測速度である。PID制御では、これらの設定値と測定値を基に、式(1)より、n回目の割り込み処理における駆動電圧の制御値pset(n)を算出する。
【0020】
なお、可動部6の実測速度vact(n)は、例えば、現時点(n回目)での可動部6の位置xact(n)と前回の可動部6の位置xact(n-1)との差分により算出することができるが、速度センサ等により可動部6の移動速度が直接的に測定されている場合は、その測定値を用いることができる。
【0021】
このようにPID制御では、これまでの実測速度vactと予め与えられた目標速度vset及び各項ゲインgp, gi, gdとから、今回(n回目)の割り込み処理における駆動電圧の制御値pset(n)を算出することができる。駆動電圧生成部2は、CPU1で算出した駆動電圧の制御値pset(n)をPWM信号として受け取り、それに基づいて直流モータ3に印加する駆動電圧を生成する。
【0022】
次に、CPU1における具体的な処理の手順を、図2〜4のフローチャートを参照して説明する。
図2は、CPU1の大まかな処理の手順を示している。CPU1は、直流モータ3を駆動する前に、定期割り込み処理に用いる各種のパラメータの値を設定若しくは初期化すると共にモータ駆動フラグをオンにし(ステップA1及びA2)、その後、駆動電圧生成部2への定期的な割り込み処理を行う(ステップA3)。これを定期割り込み処理においてモータ駆動フラグがオフになるまで続け(ステップA4及びA5)、モータ駆動フラグがオフになると、可動部6が目標位置に到達したか又は異常が発生したものと見なして、駆動機構全体の動作を終了する。
【0023】
なお、ステップA1におけるxset, xstart, xdev, vset, vstp, Kstl, Kstp, Kloc, plimit, αはそれぞれ、可動部6の目標位置、始動位置、到達判定位置偏差、目標速度、停止判定基準速度、到達判定基準回数、停止判定基準回数、ロック判定基準回数、駆動電圧上限値、ロック判定係数を示している。
また、ステップA2におけるN, pint, kstl, kstp, klocはそれぞれ、正常駆動回数、正常駆動時の駆動電圧積算値、到達回数、停止回数、ロック回数を示している。なお、xact(-1)はvact(0)を差分により算出する場合に用いられる。また、vact(-1)はpset(0)を算出する際に必要となる。
【0024】
図3及び図4は、図2のフローチャートにおける定期割り込み処理の具体的な手順を示している。この定期割り込み処理では、まずアップダウンカウンタ12からカウント値を取得し(ステップB1)、それを基に現時点(n回目の割り込み処理時)での可動部6の位置xact(n)及び速度vact(n)を算出すると共に、次回の割り込み処理まで直流モータ3に印加する駆動電圧の制御値pset(n)を式(1)を用いて算出する(ステップB2)。
【0025】
ステップB3〜B7は、可動部6の目標位置xsetへの到達判定と実測速度vact(n)に対する異常判定、及びそれらの判定に伴う各種の処理を示している。これらの判定及び処理には、従来の駆動機構と同じものを用いることができる。本実施例では、これらの判定及び処理を以下のように行う。
【0026】
[到達判定]
ステップB3は可動部6の目標位置xsetへの到達判定である。このステップでは、可動部6の現在位置xact(n)が目標位置xsetに接近しているかどうかを判定する。ここで、十分に接近していれば(|xact(n)-xset|<xdevであれば)、到達回数kstlを1ずつ積算していく(ステップB4)。そして、kstlが到達判定基準回数Kstlに達すると(ステップB13)、可動部6が目標位置xsetに到達したものと見なして、モータ駆動フラグをオフにする(ステップB14)。なお、移動所要時間を最短にし、且つオーバーランを防ぐために、Kstlは通常は1に設定される。
【0027】
[速度異常判定(停止判定)]
ステップB5は、可動部6の実測速度vact(n)に対する異常判定である。このステップでは実測速度vact(n)が停止判定基準速度vstpより小さいか否かを判定するが、vstpより小さいことがKstp回連続して生じた場合には異常が発生しているものとして、モータ駆動フラグをオフにする(ステップB13及びB14)。そのため、ステップB5では、実測速度vact(n)が停止判定基準速度vstpより小さい場合には異常が発生している可能性があるとして停止回数kstpを1ずつ積算していき(ステップB6)、vstp以上の場合にはkstpを0にセットし直す(ステップB7)。
【0028】
次に、本発明に特徴的な、駆動電圧制御値pset(n)の異常判定及びそれに伴う処理について、ステップB8〜B12を用いて説明する。
【0029】
[駆動電圧異常判定(ロック判定)]
本発明では、ステップB9に示すように、ステップB2で算出した駆動電圧制御値pset(n)に対して、これまでの正常駆動時における駆動電圧の平均値pint/Nを判定基準に用いて異常判定を行う。これにより、駆動機構を使用する際の環境・駆動特性に応じた基準値を異常判定に用いることができる。
【0030】
しかしながら、直流モータ3を駆動した直後は異常判定に用いる基準値が得られていない。従って、ステップB8に示すように、可動部6が所定の位置(|xact(n)-xstart|≧xdevとなる位置)に到達するまでは異常判定を行わず、駆動電圧積算値pint及び正常駆動回数Nの積算のみを行う(ステップB12)。なお、駆動直後は初速を得るために直流モータ3に大きな駆動電圧を印加することが多いため、駆動電圧が安定するまでは(すなわち|pset(n)|≦plimitとなるまでは)、駆動電圧制御値pset(n)をpintに積算しない(ステップB10)。
【0031】
可動部6が所定の位置に到達した後は、(n-1)回目までに得られた正常駆動時の駆動電圧の平均値pint/Nを用いて、駆動電圧制御値pset(n)の異常判定を行う(ステップB9)。
【0032】
なお、このロック判定においても、上記の停止判定と同様に、ステップB9の判定を満たさないことがKloc回連続して生じた場合に異常が発生しているものとして、モータ駆動フラグをオフにする(ステップB13及びB14)。そのため、|pset(n)|≦α|pint/N|を満たさない場合には異常が発生している可能性があるとしてロック回数klocを積算していき(ステップB11)、|pset(n)|≦α|pint/N|の場合はklocを0にセットし直す(ステップB12)。また、ステップB12ではさらに駆動電圧積算値pint及び正常駆動回数Nを更新する。
【0033】
以上の判定が全て終了すると、ステップB13においてkstl, kstp, klocが基準回数に達しているか否かの判定を行う。これらのいずれかが基準回数に達していた場合には、可動部6の位置が目標位置に到達したか又は異常が発生したものと見なして、モータ駆動フラグをオフにし、pset(n)を0にする(ステップB14)。
【0034】
また、pset(n)の絶対値が駆動電圧上限値plimitよりも大きい場合は、pset(n)を
pset(n)←sgn(pset(n))×plimit
で与える(ステップB15及びB16)。なお、sgn(・)は符号関数を示している。
【0035】
最後に、駆動電圧制御値pset(n)をPWM信号として駆動電圧生成部2に送信し、定期割り込み処理を終了する。
【0036】
なお、式(1)では、速度偏差(実測速度vact(n)と目標速度vsetとの差)が大きい状態が連続すると、I項(右辺第2項)が支配的となり、それに応じてpset(n)の絶対値が大きくなる。そのため、停止判定基準速度vstpを小さくしたり、停止判定基準回数Kstpを大きくしたりすることで停止判定を緩めに設定したとしても、ロック判定で確実に異常を検出することができる。また、停止判定を緩めに設定することができるため、駆動直後の場合や可動部6の移動距離が長い場合、低温環境などで駆動機構を含む装置各部の動作が鈍い場合であっても、停止の誤判定を生じにくくすることができる。
【実施例2】
【0037】
次に、本発明に係る直流モータ用駆動制御装置の第2実施例を備える駆動機構の概略構成を図5に示す。本実施例の駆動制御装置は、図1の構成に駆動電流測定部7を追加したものである。この実施例の駆動機構では、第1実施例で示した駆動電圧の異常判定の代わりに、駆動電流の測定値に対して異常判定を行う。
【0038】
図6〜8のフローチャートに、本実施例のCPU1の処理の手順を示す。これらのフローチャートのステップC1〜C5及びステップD1〜D17は、第1実施例のステップA1〜A5及びステップB1〜B17にほぼ対応している。以下、第1実施例と異なる処理を行うステップについてのみ説明する。
【0039】
本実施例では、図6に示すように、ステップC1で設定すべきパラメータとして電流上限値qlimitを追加している。ステップC2では、図2のステップA1の駆動電圧積算値pintの代わりに、駆動電流積算値qintの初期化を行っている(pintは用いない)。
【0040】
また、図7の定期割り込み処理では、ステップD1においてアップダウンカウンタ12のカウント値に加えて、駆動電流測定部7の駆動電流測定値q(n)を取得している。さらに、図8のステップD8〜D12では、図4のステップB8〜B12で行っていた駆動電圧に対する異常判定に代わり、駆動電流測定値に対して異常判定(ロック判定)を行っている。なお、本実施例の駆動機構は、このロック判定において正常駆動時の駆動電流測定値の平均を判定基準として用いる点が、第1実施例や従来のものと異なる特徴的な処理である。これらのステップ以外は第1実施例と同じ処理を用いることができる。
【0041】
以上、本発明に係る直流モータ用駆動制御装置について実施例を用いて説明したが、上記は例に過ぎないことは明らかであり、本発明の趣旨の範囲内で適宜に変更や修正、又は追加を行っても構わない。
【0042】
例えば、上記実施例では平均値を算出する期間を、|xact(n)-xstart|≧xdevとなる時点から異常判定を行う直前(具体的には(n-1)回目)までとしているが、所定の回数に亘る直近の定期割り込み処理での平均値とすることもできる。また、過去(制御を開始する以前)の正常動作した際のデータを用いることもできる。さらに、これらのいずれを採用するか、ユーザが選択できるようにしても良い。
【0043】
また、上記実施例では等速駆動方式(目標速度がvsetで一定)で説明を行ったが、台形駆動方式であっても本発明は適用可能である。台形駆動方式とは、始動時に加速、目的位置手前までは等速、目標位置手前で減速するように、目標速度を調整する方式のことである。ここで、n回目の割り込み処理時における目標速度をvset*(n)とし、加減速する距離をxaccとすると、目標速度vset*(n)は、実測位置xact(n)に基づいて次式で表される。
【数1】

台形駆動方式では、図2のステップA1又は図6のステップC1において加減速距離xaccの設定を追加し、さらに図3のステップB2又は図7のステップD2における駆動電圧値pset(n)の算出の際に、vsetの代わりに上記のvset*(n)を用いれば良い。また、上記の台形駆動方式では目標速度が直線的に変化するようにしているが、例えば加速度が一定となるように変化させても良い。
【符号の説明】
【0044】
1…CPU
2…駆動電圧生成部
3…直流モータ
4…駆動対象測定部
5…変換部
6…可動部
7…駆動電流測定部
11…パルスエンコーダ
12…アップダウンカウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流モータの回転軸の回転トルクを駆動対象の所定の運動に変換する変換手段と、前記駆動対象の位置を含む情報を取得する駆動対象測定手段と、前記駆動対象測定手段により得られた情報に基づいて定期的に前記直流モータに印加する駆動電圧を算出し、該算出値に基づいて駆動電圧を制御する制御手段と、を有する直流モータ用駆動制御装置において、
前記制御手段が、所定の期間内に算出した正常駆動時における駆動電圧値の平均を判定基準に用いて、今回算出した駆動電圧値の異常判定を行う
ことを特徴とする直流モータ用駆動制御装置。
【請求項2】
直流モータの回転軸の回転トルクを駆動対象の所定の運動に変換する変換手段と、前記駆動対象の位置を含む情報を取得する駆動対象測定手段と、前記駆動対象測定手段により得られた情報に基づき、定期的に前記直流モータに印加する駆動電圧を制御する制御手段と、を有する直流モータ用駆動制御装置において、
前記直流モータに供給される駆動電流を測定する駆動電流測定手段を有し、
前記制御手段が、所定の期間内に測定した正常駆動時における駆動電流値の平均を判定基準に用いて、今回測定した駆動電流値の異常判定を行う
ことを特徴とする直流モータ用駆動制御装置。
【請求項3】
前記駆動対象測定手段が、前記直流モータの回転軸に取り付けられたエンコーダと、該エンコーダの出力信号を計数するカウンタと、から構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の直流モータ用駆動制御装置。
【請求項4】
前記所定の期間が、前記直流モータへの制御を開始した時点から前記異常判定を行う直前の時点までであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の直流モータ用駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−235612(P2012−235612A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102406(P2011−102406)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】