説明

直流モータ

【課題】製造が容易で、かつ端蓋に端子板を十分な強度を持たせて取り付けることができる直流モータを提供する。
【解決手段】一端側が開口されたケース内に、ステータ及びロータを収容し、ケースの開口に、端子板を配設してなる端蓋を取り付けることにより該開口を密閉してなる直流モータであって、端蓋15に設けられ、端子板21を受け入れて保持するための貫通孔27と、端子板21の一端側に設けられ、端子板21の一端側を端蓋15の内面に固定する取付孔39を有した固定部21bと、端子板21他端側に設けられ、貫通孔27を貫通した端子板21の他端側を端蓋15の裏面に掛け止めしてなる折り曲げ部21eを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直流モータに関するものであり、特に、モータケースの開口端を塞いで取り付ける端蓋に端子板を配設してなる直流モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一端側が開口されたケース内に、ステータ及びロータを収容し、そのケースの開口に、端子板を配設してなる端蓋を取り付けて該開口を密閉してなる直流モータは数多く知られている。
【0003】
また、従来の直流モータにおいて、端蓋内に端子板を配設する構造としては、端蓋を樹脂材で成形する際に端子板をインサートして取り付けるようにした構造、あるいは端子板にバネ構造部を設け、そのバネ構造を端蓋側に設けた凹部内に圧入させて片持ち状態で取り付けるようにした構造等が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、モータが駆動による発熱で設定温度を超えると、巻線への電流の流れを制限してモータを保護するための手段として、PTCサーミスタを組み込んだ直流モータも知られている(例えば、特許文献2参照)。そのPTCサーミスタと端子板との固定は、溶接構造、若しくはインサート成形された端子板にPTCサーミスタ側に設けたバネ構造部を圧入して固定する方式が取られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−166646号公報。
【特許文献2】特許第3057001号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、端子板を端蓋に取り付ける構造として、特許文献1のように、端子板側のバネ構造部を端蓋側の凹部内に圧入させて片持ち状態で取り付けるようにした構造では、端子板に塑性変形が発生し易く、また端子板を保持するための十分な強度が確保しにくいという問題点があった。
【0007】
一方、PTCサーミスタと端子板を固定する構造として、PTCサーミスタと端子板を溶接で固定する構造、あるいは特許文献2のように、インサート成形された端子板にPTCサーミスタ側に設けたバネ構造部を圧入して固定する構造では、製造及び作業工程が複雑であり、その結果、コスト高になっている問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、製造が容易で、かつ端蓋に端子板を十分な強度を持たせて取り付けることができる直流モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、本発明の直流モータは、少なくとも一端側が開口されたケース内に、ステータ及びロータを収容し、前記ケースの開口に、端子板を配設してなる端蓋を取り付けることにより該開口を密閉してなる直流モータにおいて、前記端蓋に設けられ、前記端子板を受け入れて保持するための貫通孔と、前記端子板の一端側に設けられ、該端子板の一端側を前記端蓋の内面に固定する取付孔を有した固定部と、前記端子板の他端側に設けられ、前記貫通孔を貫通した前記端子板の他端側を前記端蓋の裏面に掛け止めしてなる折り曲げ部と、を備える構成である。
【0010】
この構成によれば、端蓋の貫通孔に端子板を挿入させ、取付孔にビス等を通して端蓋に固定すると、端子板の一端側における固定部が端蓋の内面側に固定される。また、貫通孔を通って端蓋の裏面側に突出された端子板の他端部を端蓋の裏面側に折り曲げて折り曲げ部を形成すると、端子板の両端が固定された状態の端蓋を有する直流モータが得られる。この構造では、ビス等による締め付けと、端子板の折り曲げ(折り曲げ部)とで、端蓋に端子板の両端を固定して取り付けることができるので、インサート成形、溶接等の難易度の高い工法を必要としない。また、端蓋に対する端子板の取り付けを高い保持強度を有して取り付けることができると共に、相手側端子に対しても高い保持強度が確保でき、塑性変形に対しても強い構造となる。
【0011】
また、前記端子板は、前記端蓋上に配設されたPTCサーミスタのコネクタ部を圧入して保持する圧入連結部を有してなる、構成が好ましい。
【0012】
この構成によれば、PTCサーミスタのコネクタ部を圧入連結に圧入することにより、端子板とPTCサーミスタ部材との間を強固に連結保持することができ、連結の信頼性が確保できる。
【0013】
また、本発明の直流モータは、少なくとも一端側が開口されたケース内に、ステータ及びロータを収容し、前記ケースの開口に、端子板を配設してなる端蓋を取り付けることにより該開口を密閉してなる直流モータにおいて、前記端蓋の内面側に設けられ、少なくとも前記端子板の一部を受け入れて保持するための凹所と、前記端子板の一端側に設けられ、該端子板の一端側を前記端蓋の内面に固定する取付孔を有した固定部と、前記端蓋の凹所に圧入して受け入れられる前記端子板の他端部側面に設けられ、該他端部が該凹所内に受け入れられた状態で該凹所内面に当接して該他端部を抜け止めするための係合突起部と、を備える構成である。
【0014】
この構成によれば、端蓋の凹部内に端子板の他端部を圧入させると共に、ビス等を端子板の固定部の取付孔に通して端蓋に固定すると、端子板の一端側における固定部が端蓋の内面側に固定される。そして、凹部内に圧入された端子板の他端部は、その他端部に設けられた係合突起部が凹部内に当接して抜け止められる。これにより、端子板の両端が固定された状態の端蓋を有する直流モータが得られる。この構造では、凹部への端子板の圧入とビス等による固定部の締め付けとで、端子板を端蓋に固定することができるので、インサート成形、溶接等の難易度の高い工法を必要としない。また、端蓋に対する端子板の取り付けを、高い保持強度を有して取り付けることができると共に、相手側端子に対しても高い保持強度が確保でき、塑性変形に対しても強い構造となる。
【0015】
また、本発明の直流モータは、少なくとも一端側が開口されたケース内に、ステータ及びロータを収容し、前記ケースの開口に、端子板を配設してなる端蓋を取り付けることにより該開口を密閉してなる直流モータにおいて、前記端蓋に設けられた貫通孔と、前記端蓋の内面側に設けられ凹所と、前記端子板の一端側に設けられ、該端子板の一端側を前記端蓋の内面に固定する取付孔を有した固定部と、前記端子板の他端側に設けられ、前記貫通孔を貫通した前記端子板の他端側を前記端蓋の裏面に掛け止めしてなる折り曲げ部と、前記端子板の他端側に前記凹所内に受け入れ可能に設けられ、該凹所内に受け入れられると該凹所内面に当接して該他端側を抜け止めする係合突起部と、を備える構成である。
【0016】
この構成によれば、端蓋の貫通孔に端子板を挿入させ、取付孔にビス等を通して端蓋に固定すると、端子板の一端側における固定部が端蓋の内面側に固定される。一方、他端側は、凹部内に圧入された端子板の他端部に設けられた係合突起部が凹部内に当接して抜け止められ、また貫通孔を通って端蓋の裏面側に突出された端子板の他端部を端蓋の裏面側に折り曲げて折り曲げ部を形成すると、その折り曲げ部が裏面側に係合して抜け止められる。これにより、端子板の両端を強固に固定してなる端蓋を有した直流モータが得られる。この構造では、ビス等による固定部の締め付けと、端子板の折り曲げ(折り曲げ部)による係合及び係合凸部による凹部への圧入とで、端子板の両端を端蓋に固定して取り付けることができるので、インサート成形、溶接等の難易度の高い工法を必要としない。また、端蓋に対する端子板の取り付けを高い保持強度を有して取り付けることができると共に、相手側端子に対しても高い保持強度が確保でき、塑性変形に対しても強い構造となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、端子板を端蓋に固定するのに、インサート成形、溶接等の難易度の高い工法を必要としないで製作することができるので、製造が容易でコストダウンを図ることができる。また、端子板を端蓋に、高い保持強度を有して取り付けることができると共に、例えば外部から挿入されて来る相手側端子に対しても高い保持強度が確保できる。さらに、塑性変形に対しても強い構造にすることができ、連結の信頼性が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る直流モータの一形態を端蓋側から見て示す平面図である。
【図2】図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】図1に示す直流モータの端蓋の一部を内側方向より見た拡大平面図である。
【図4】図3のB−B線矢視断面図であり、(a)は端子板の一部に折り曲げ部を形成する前の図、(b)は折り曲げ部を形成した後の図である。
【図5】図3のC−C線矢視断面図であり、(a)は端子板の一部に折り曲げ部を形成する前の図、(b)は折り曲げ部を形成した後の図である。
【図6】PTCサーミスタ部材の斜視図である。
【図7】端子板とPTCサーミスタ部材を連結した状態を示す斜視図である。
【図8】図3に示す端子板19の斜視図である。
【図9】図3に示す端子板20の斜視図である。
【図10】図3に示す端子板21の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)について詳細に説明する。
【0020】
図1及び図2は本発明に係る直流モータの一実施形態を示し、図1はその平面図、図2は図1のA−A線矢視断面図である。
【0021】
図1及び図2において、直流モータ10(以下、単に「モータ10」という)は、モータケース11と、永久磁石12と、モータ軸13と、突極形の電機子14と、端蓋15と、1対のモータブラシ16,16等により構成されている。なお、本実施例でのモータ10は、断面が略四角形のモータであるが、断面が小判形あるいは円筒形等であってもよい。また、永久磁石12は4極着磁された1ピースの磁石であるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
前記モータケース11は、一端側が閉じられ他端側が開口された、有底円筒状のヨークとして形成されている。また、モータケース11は、その開口に端蓋15が取り付けられている。なお、本実施形態例では、一端が閉じられた有底円筒状のモータケースを示すが、両端が開口されたモータケースの場合もある。
【0023】
前記モータ軸13は、電機子14の中心に圧入されており、一端がモータケース11の閉塞端に接触し、他端は端蓋15に形成した貫通孔17から外部に延出している。また、モータ軸13には、端蓋15側の部分に、電機子14の巻線14aと接続されてなる整流子18が取り付けられている。そのモータ軸13は、モータケース11の軸受収容部11aに圧入された軸受メタル40aと、端蓋15の軸受収容部15aに圧入された軸受メタル40bとで回転可能に支持されている。
【0024】
前記永久磁石12は、モータケース11の内面に、電機子14と所定のクリアランスを設けて配置されている。
【0025】
図3に示すように、端蓋15は樹脂製であり、中央に前記貫通孔17と軸受収容部15aを設けている。また、外周形状がモータケース11側の開口内面形状と略同一に形成されている。そして、端蓋15の内面側には、前記1対のモータブラシ16,16と、端子板19と、端子板20と、端子板21と、PTCサーミスタ22等が取り付けられており、また、これらを収容する部分は凹み空間23となっている。
【0026】
前記1対のモータブラシ16,16は、整流子18を挟む位置に別れて、それぞれ端子板19と端子板21に接続されているとともに、ばね付勢力で整流子18に当接して配置されている。そして、このモータ10では、図示しない外部電源からの電流が、端子板19、モータブラシ16、整流子18、電機子14に巻回された巻線14a、整流子18、モータブラシ16、端子板21を順に通って流れるようになっている。
【0027】
さらに詳述すると、前記端蓋15には、図4,図5に示すように端子板19を配設する位置に対応して、PTCサーミスタ収容用凹所24と、端子板19の一端側に設けられた圧入部19aが圧入保持される凹所25と、端子板19の他端側に設けられた固定部19bを固定するための取付孔26が形成されている。
【0028】
また、図4に示すように端子板21を配設する位置に対応して、端子板21の一端側に設けられた入力端子部(+側)21aが貫通される貫通孔27、及び圧入部21cが圧入保持される凹所38と、端子板21の他端側に設けられた固定部21bを固定する取付孔28と、が形成されている。
【0029】
さらに、図5に示すように端子板20を配設する位置に対応して、端子板20の一端側に設けられた入力端子部(−側)20aが貫通される貫通孔29と、同じく一端側に設けられた圧入部20bが圧入保持される凹所30(図3参照)と、端子板20の他端側に設けられた固定部20cを固定する取付孔31が設けられている。
【0030】
前記PTCサーミスタ22は、モータ10の駆動による発熱により、モータ10の温度が設定温度を超えると電流の流れを制限してモータ10を保護するための電流制限素子である。そのPTCサーミスタ22は、図6に示すようにポリマー部32を挟んでその両側に端子板33,33を配設し、全体として板状に形成されている。また、各端子板33,33の一端部には、左右に分かれてコネクタ部33a,33bが設けられている。そして、PTCサーミスタ22は、端蓋15のPTCサーミスタ収容用凹所24内に挿入配置され、PTCサーミスタ収容用凹所24内にはコネクタ部33a,33bがPTCサーミスタ収容用凹所24から電機子14側に突出された状態で配置される。なお、PTCサーミスタ22は、端蓋15の成形時にインサートされて一体化される場合もある。
【0031】
図8に示すように、前記端子板19は、本体部19cと、本体部19cから延出された複数個の前記圧入部19aと、端蓋15の前記取付孔26に対応して本体部19cから内側へ略直角に折り曲げ形成された前記固定部19bと、PTCサーミスタ22の前記コネクタ部33bに対応して形成された圧入連結部19dと、を一体に有してなる。また、固定部19bには端蓋15の取付孔26に対応して取付孔34が設けられている(図5参照)。さらに、圧入部19aの両側端面には抜け方向において端蓋15の凹所25内で引っかかりが生ずるように形成してなる係合突起部としての鋸歯状部35が設けられている。なお、圧入連結部19dは左右両側からそれぞれ内側へ回されて互いに逆回りに270°程度湾曲(カーリング)形成されて弾性を有してなるカーリング部を設けている。そして、コネクタ部33bを圧入連結部19dに挿入するとき、コネクタ部33bがカーリング部分を外側に押し広げて挿入され、挿入後はカーリング部分で弾性挟持し、コネクタ部33bを強固に保持できるようになっている。図7はその挟持状態を示す。
【0032】
このように形成された端子板19を端蓋15に取り付ける場合、図4に示すように端子板19は、端蓋15の内面にそれぞれ、圧入連結部19dをPTCサーミスタ22のコネクタ部33bに対応させると共に固定部19bの取付孔34を取付孔26に対応させ、さらに圧入部19aを凹所25に対応させて押し付けて行く。この押し付けにより、コネクタ部33bが圧入連結部19dに圧入連結されると共に、圧入部19aが端蓋15の凹所25に圧入され、かつ固定部19bが端蓋15の内面に当接位置決めされる。また、この状態で取付孔34を通って取付孔26に固定ビス36を取り付けて締め付けると、他端側における固定部19bが端蓋15に固定される。一方、圧入部19aが凹所25内に圧入された一端側は、圧入部19aの両側端面に鋸歯状部35が形成されているので、その圧入部19aに抜け方向の外力が加えられたとき、鋸歯状部35が凹所25の内面に食い込んで抜け止めされる。これにより、端子板19は、その両端が端蓋15に確実に固定されると共に、圧入連結部19dとコネクタ部33bの圧入連結を介してPTCサーミスタ22に対して強固に連結された状態で、端蓋15に取り付けられる。
【0033】
図9に示すように、前記端子板20は、貫通孔29に対応して形成された前記入力端子部20aと、凹所30に対応して固定部20cから入力端子部20aと同方向に延出された前記圧入部20bと、固定部20cから入力端子部20aと反対方向に折り曲げられてPTCサーミスタ22の前記コネクタ部33aに対応して形成された圧入連結部20dと、入力端子部20aの中間部分に形成された外部端子圧入連結部20eと、を一体に有してなる。また、固定部20cには端蓋15の取付孔31に対応して取付孔37が設けられている。さらに、圧入部20bの両側端面には抜け方向において端蓋15の凹所30内で引っかかりが生ずるように形成してなる前記端子板19と同じく係合突起部としての鋸歯状部35が設けられている。
【0034】
なお、圧入連結部20dは左右両側からそれぞれ内側へ回されて互いに逆回りに270°程度湾曲(カーリング)形成されて弾性を有してなるカーリング部を設けている。そして、コネクタ部33aを圧入連結部20dに挿入するとき、コネクタ部33aがカーリング部分を外側に押し広げて挿入され、挿入後はカーリング部分で弾性挟持し、コネクタ部33aを強固に保持できるようになっている。図7はその挟持状態を示す。また、外部端子圧入連結部20eも圧入連結部20dと同様に、左右両側からそれぞれ内側へ回されて互いに逆回りに270°程度湾曲(カーリング)形成されて弾性を有するカーリング部を設けている。そして、外部入力端子(−側)100(図5参照)が貫通孔29を通って挿入されると、外部入力端子100がカーリング部分を外側に押し広げて挿入され、挿入後はカーリング部分で弾性挟持し、外部入力端子100を強固に保持できるようになっている。
【0035】
このように形成された端子板20を端蓋15に取り付ける場合、図5に示すように端子板20は、端蓋15の内面にそれぞれ、圧入連結部20dをPTCサーミスタ22のコネクタ部33aに対応させると共に、入力端子部20aを貫通孔29に、固定部20cの取付孔37を取付孔31に、圧入部20bを凹所30に、各々対応させて押し付けて行く。この押し付け操作により、コネクタ部33aが圧入連結部20dに圧入連結されると共に、圧入部20bが端蓋15の凹所30に圧入され、かつ固定部19bが端蓋15の内面に当接位置決めされる。また、この状態で取付孔37を通って取付孔31に固定ビス36を取り付けて締め付けると、他端側における固定部20cが端蓋15に固定される。一方、圧入部20bが凹所30内に圧入された一端側は、圧入部20bの両側端面に鋸歯状部35が形成されているので、その圧入部20bに抜け方向の外力が加えられたとき、鋸歯状部35が凹所30の内面に食い込んで抜け止めされる。さらに、貫通孔29内に挿入された入力端子部20aの長さは、図5の(a)に示すように一部20fが端蓋15の外側に突出するように設定されており、取付後は同図(b)に示すようにその一部20fを端蓋15の裏面側に折り曲げ、その一部20fで折り曲げ部(以下、「折り曲げ部20f」という)を形成する。
【0036】
これにより、端子板20は、その両端が端蓋15に確実に固定されると共に、圧入連結部20dとコネクタ部33aの圧入連結を介してPTCサーミスタ22が強固に連結された状態で端蓋15に取り付けられる。また、この連結板Bでは、外部入力端子100が貫通孔29を通って挿入されると、その外部入力端子100がカーリング部分を外側に押し広げて、外部端子圧入連結部20eに圧入連結される。そして、外部入力端子100が外部端子圧入連結部20eに圧入されるとき、入力端子部20aには端蓋15の内側方向に移動する外力を受けるが、その外力は折り曲げ部20fによる掛止めで阻止される。したがって、端子板20が動くことなく、外部入力端子100を外部端子圧入連結部20eに圧入させて強固に連結することができる。
【0037】
図10に示すように、前記端子板21は、貫通孔27に対応して形成された前記入力端子部21aと、凹所38に対応して固定部21bから入力端子部21aと同方向に延出された前記圧入部21cと、固定部21bから入力端子部21aの中間部分に形成された外部端子圧入連結部21dと、を一体に有してなる。また、固定部21bには端蓋15の取付孔28に対応して取付孔39(図4参照)が設けられている。さらに、圧入部21cの両側端面には、抜け方向において端蓋15の凹所38内で引っかかりが生ずるように形成してなる、前記端子板19,端子板20と同じく係合突起部としての鋸歯状部35が設けられている。
【0038】
なお、外部端子圧入連結部21dは、左右両側からそれぞれ内側へ回されて互いに逆回りに270°程度湾曲(カーリング)形成されて弾性を有してなるカーリング部を設けている。そして、外部入力端子(+側)101(図4参照)が貫通孔27を通って挿入されると、外部入力端子101がカーリング部分を外側に押し広げて挿入され、挿入後はカーリング部分で弾性挟持し、外部入力端子101を強固保持できるようになっている。
【0039】
このように形成された端子板21を端蓋15に取り付ける場合、図4に示すように端子板21は、端蓋15の内面にそれぞれ、入力端子部21aを貫通孔27に、固定部21bの取付孔39を取付孔28に、圧入部21cを凹所38に各々対応させて押し付けて行く。この押し付け操作により、圧入部21cが端蓋15の凹所38に圧入され(図2参照)、かつ固定部21bが端蓋15の内面に当接位置決めされる。また、この状態で取付孔39を通って取付孔28に固定ビス36を取り付けて締め付けると、他端側における固定部21bが端蓋15に固定される。一方、圧入部21cが凹所38内に圧入された一端側は、圧入部21cの両側端面に鋸歯状部35が形成されているので、その圧入部21cに抜け方向の外力が加えられたとき、鋸歯状部35が凹所38の内面に食い込んで抜け止めされる。さらに、貫通孔27内に挿入された入力端子部21aの長さは、図4の(a)に示すように一部21eが端蓋15の外側に突出するように設定されており、取付後は同図(b)に示すように、その一部21eを端蓋15の裏面側に折り曲げ、その一部21eで折り曲げ部(以下、「折り曲げ部21e」という)を形成する。
【0040】
これにより、端子板21は、その両端が端蓋15に強固に固定される。また、この連結板Cでは、外部入力端子101が貫通孔27を通って挿入されると、外部入力端子101がカーリング部分を外側に押し広げて、外部端子圧入連結部21dに圧入連結される。そして、外部入力端子101が外部端子圧入連結部21dに圧入されるとき、入力端子部21aには端蓋15の内側方向に移動する外力を受けるが、その外力は折り曲げ部21eによる掛止めで阻止される。これにより、端子板21が動くことなく、外部入力端子101を外部端子圧入連結部21dに圧入させて強固に連結することができる。
【0041】
なお、上記実施例の説明では、主としてPTCサーミスタ22と各端子板19,20,21を端蓋15に組み付ける構造を個々に説明したが、その組立全体の流れの一例を示すと、(1)〜(5)のようになる。
(1)端蓋15のPTCサーミスタ収容用凹所24にPTCサーミスタ22を挿入する。
(2)3種類の端子板19,20,21を端蓋15の上記所定の位置にそれぞれ仮挿入する。
(3)ハンドプレス等により端蓋15に各端子板19,20,21を本挿入する。
(4)各端子板19,20,21を固定ビス36で固定する。なお、固定ビス36による固定に変えて熱加締めまたは冷間加締め等での固定の場合もある。
(5)端子板20の折り曲げ部20f及び端子板21の折り曲げ部21eをそれぞれ折り曲げる。このようにすることにより、非常に簡単に組み立てることができる。
【0042】
したがって、この実施例の直流モータ10によれば、端子板19,端子板20,端子板21を端蓋15に固定するのに、インサート成形、溶接等の難易度の高い工法を用いずに製作することができる。また、端蓋15に対する端子板19,端子板20,端子板21の取り付けを、高い保持強度を有して取り付けることができると共に、相手側端子、すなわち外部入力端子100,101に対しても高い保持強度が確保でき、塑性変形に対しても強い構造にすることが可能となる。
【0043】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれものである。
【符号の説明】
【0044】
10 直流モータ
11 モータケース
12 永久磁石
13 モータ軸
14 電機子
15 端蓋
19 端子板
19a 圧入部
19b 固定部
19d 圧入連結部
20 端子板
20a 入力端子部(−側)
20b 圧入部
20c 固定部
20d 圧入連結部
20e 外部端子圧入連結部
20f 一部(折り曲げ部)
21 端子板
21a 入力端子部(+側)
21b 固定部
21c 圧入部
21d 外部端子圧入連結部
21e 一部(折り曲げ部)
22 PTCサーミスタ
25 凹所
26 取付孔
27 貫通孔
28 取付孔
29 貫通孔
30 凹所
31 取付孔
33a,33b コネクタ部
34 取付孔
35 鋸歯状部(係合突起部)
37 取付孔
38 凹所
39 取付孔
100 外部入力端子(−側)
101 外部入力端子(+側)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一端側が開口されたケース内に、ステータ及びロータを収容し、前記ケースの開口に、端子板を配設してなる端蓋を取り付けることにより該開口を密閉してなる直流モータにおいて、
前記端蓋に設けられ、前記端子板を受け入れて保持するための貫通孔と、
前記端子板の一端側に設けられ、該端子板の一端側を前記端蓋の内面に固定する取付孔を有した固定部と、
前記端子板の他端側に設けられ、前記貫通孔を貫通した前記端子板の他端側を前記端蓋の裏面に掛け止めしてなる折り曲げ部と、
を備えることを特徴とする直流モータ。
【請求項2】
前記端子板は、前記端蓋上に配設されたPTCサーミスタのコネクタ部を圧入して保持する圧入連結部を有してなることを特徴とする請求項1記載の直流モータ。
【請求項3】
少なくとも一端側が開口されたケース内に、ステータ及びロータを収容し、前記ケースの開口に、端子板を配設してなる端蓋を取り付けることにより該開口を密閉してなる直流モータにおいて、
前記端蓋の内面側に設けられ、少なくとも前記端子板の一部を受け入れて保持するための凹所と、
前記端子板の一端側に設けられ、該端子板の一端側を前記端蓋の内面に固定する取付孔を有した固定部と、
前記端蓋の凹所に圧入して受け入れられる前記端子板の他端部側面に設けられ、該他端部が該凹所内に受け入れられた状態で該凹所内面に当接して該他端部を抜け止めするための係合突起部と、
を備えることを特徴とする直流モータ。
【請求項4】
前記端子板は、前記端蓋上に配設されたPTCサーミスタのコネクタ部を圧入して保持する圧入連結部を有してなることを特徴とする請求項3記載の直流モータ。
【請求項5】
少なくとも一端側が開口されたケース内に、ステータ及びロータを収容し、前記ケースの開口に、端子板を配設してなる端蓋を取り付けることにより該開口を密閉してなる直流モータにおいて、
前記端蓋に設けられた貫通孔と、
前記端蓋の内面側に設けられ凹所と、
前記端子板の一端側に設けられ、該端子板の一端側を前記端蓋の内面に固定する取付孔を有した固定部と、
前記端子板の他端側に設けられ、前記貫通孔を貫通した前記端子板の他端側を前記端蓋の裏面に掛け止めしてなる折り曲げ部と、
前記端子板の他端側に前記凹所内に受け入れ可能に設けられ、該凹所内に受け入れられると該凹所内面に当接して該他端側を抜け止めする係合突起部と、
を備えることを特徴とする直流モータ。
【請求項6】
前記端子板は、前記端蓋上に配設されたPTCサーミスタのコネクタ部を圧入して保持する圧入連結部を有してなることを特徴とする請求項5記載の直流モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−93998(P2013−93998A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235392(P2011−235392)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(504257302)ミネベアモータ株式会社 (112)
【Fターム(参考)】