直流送電システム
【課題】逆変換器側の交流系統に他の電源装置や直流送電システムの逆変換器を接続した場合でも、接続しない場合でも、システムを安定して運転する。
【解決手段】直流送電システムは、交流電力を直流電力に変換する順変換器8と、直流電力を交流電力に変換する逆変換器12を備える。順変換器8は、直流電圧を一定に維持するように融通電力を制御する。逆変換器12に、交流電圧と周波数を制御する制御装置30を設ける。前記逆変換器12は、逆変換器側の交流系統2に他の電源装置4や直流送電システムの逆変換器がない場合には、交流系統の交流電圧と周波数を指令値に追従させるよう自立的に出力制御を行う。逆変換器12は、他の電源装置4等が存在する場合には、これらの出力する交流電圧と同期を取りつつ交流電圧と周波数を調整する。逆変換器8は、過電流を防止するために出力電流の制限手段を備える。
【解決手段】直流送電システムは、交流電力を直流電力に変換する順変換器8と、直流電力を交流電力に変換する逆変換器12を備える。順変換器8は、直流電圧を一定に維持するように融通電力を制御する。逆変換器12に、交流電圧と周波数を制御する制御装置30を設ける。前記逆変換器12は、逆変換器側の交流系統2に他の電源装置4や直流送電システムの逆変換器がない場合には、交流系統の交流電圧と周波数を指令値に追従させるよう自立的に出力制御を行う。逆変換器12は、他の電源装置4等が存在する場合には、これらの出力する交流電圧と同期を取りつつ交流電圧と周波数を調整する。逆変換器8は、過電流を防止するために出力電流の制限手段を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆変換器に自励式変換器を用いた直流送電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
直流送電システムは、交流電力を順変換器で直流電力に変換し、直流の形態で送電し、逆変換器で直流電力から交流電力へ変換して電力供給するものである。一度直流に変換することで、周波数の異なる系統間の連系や、同一周波数であっても非同期の系統間の連系、また、長距離のケーブルを介した送電に適用されている。特に、逆変換器側の系統に他の電源装置が存在しない場合や、短絡容量が小さい系統では自励式変換器が必要となる。
【0003】
自励式変換器を用いた直流送電システムの制御方法としては、例えば特許文献1に記載されているように、一端の変換器で直流電圧を一定に制御し、他端の変換器で有効電力を制御して電力供給を行う方法が知られている。しかしながら、この制御方法はそれぞれの変換器が他の電源装置の存在する交流系統に接続されていることが前提となっており、各変換器はそれぞれの交流系統の電圧位相を検出し、これに同期しつつ運転制御される。
【0004】
しかしながら、離島や遠隔地需要家への電力供給を想定すると、他の発電装置が存在しない場合や、存在しても極力これらの運転を抑制して運転コストの低減やCO2排出量の低減をねらう場合がある。特に、無電源系統への直流送電のためには負荷の瞬時の変動や力率に応じた無効電力供給を逆変換器から行う必要があるが、特許文献1の制御方法では予想しがたい負荷変動に合わせて瞬時に融通電力を制御することは困難である。
【0005】
このような場合の対策として、特許文献2では、逆変換器側の電源装置が切り離されたことを検出して、逆変換器を交流電圧が一定となるように制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2635660号公報
【特許文献2】特許第4287031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、逆変換器側の交流系統内に小容量の電源装置が分散配置している場合には、これらの電源装置が切り離されたことを伝送するための伝送路が必要となりコストアップの要因となる。その上、電源装置の容量が逆変換器の容量に比較して小さい場合には、逆変換器が安定に運転できる範囲に制約が生じるため、必要以上に電源装置を運転する必要が生じる。また、信頼性確保の観点から直流送電システムを2系列とした場合には、2系列の逆変換器を同時に電圧が一定となるように制御すると、2つの系統間で制御の干渉が生じる可能性がある。
【0008】
本発明は、以上述べた従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。すなわち、本発明の目的は、逆変換器側の交流系統内における電源装置の有無に関わらず、安定な直流送電を実現できる直流送電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、交流電力を直流電力に変換する順変換器と、直流電力を交流電力に変換する逆変換器を備える直流送電システムにおいて、次の構成を特徴とする。
【0010】
(1) 順変換器は、直流電圧を一定に維持するように融通電力を制御する。
(2) 逆変換器に、交流電圧と周波数を制御する手段を設ける。
(3) 逆変換器側の交流系統に他の電源装置や直流送電システムの逆変換器がない場合には、逆変換器は、交流系統の交流電圧と周波数を指令値に追従させるよう自立的に出力制御を行う。
(4) 他の電源装置等が存在する場合には、逆変換器は、これらの出力する交流電圧と同期を取りつつ交流電圧と周波数を調整する。
(5) 逆変換器は、過電流を防止するために出力電流の制限手段を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、次のような効果を発揮する。
(a) 逆変換器に、交流電圧と周波数を制御する手段を設けることにより、逆変換器側の交流系統における他の電源装置や直流送電システムの逆変換器の有無に関わらず、システムを安定して運転することができる。
(b) 出力電流の制限手段を設けることで、交流系統内で事故が発生した場合でも、電流制限を行いつつ、システムの運転を継続することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の直流送電システムを示す回路図。
【図2】実施例1の逆変換器の動作特性を表すグラフ。
【図3】実施例2の直流送電システムおよびその制御装置を示す回路図。
【図4】AC−AVR31の制御特性を説明するグラフ。
【図5】実施例3の直流送電システムおよびその制御装置を示す回路図。
【図6】位相・周波数演算回路32の制御特性を説明するグラフ。
【図7】実施例4の直流送電システムおよびその制御装置を示す回路図。
【図8】電流制限回路33の制御特性を説明するグラフ。
【図9】実施例5の直流送電システムおよびその制御装置、受電側の交流系統を示す回路図。
【図10】直流送電システムと交流系統内の保護リレーとの協調動作を説明するタイムチャート。
【図11】直流送電システムと交流系統内の保護リレーとの協調動作を説明するタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を下記の実施例によって具体的に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、実施例1の直流送電システムの全体構成を示す回路図である。図1において、1は送電側の電力系統、2は受電側の電力系統である。3は送電側の電力系統に含まれる発電機、4は受電側の電力系統に含まれる発電機で、両者は遮断器5を介してそれぞれの電力系統に接続されている。6は直流送電システムの送電端交流母線、7は順変換器用変圧器、8は順変換器、9は直流コンデンサである。一方、受電端は、交流母線10、逆変換器用変圧器11、逆変換器12、直流コンデンサ13が順次接続されている。そして、送電端側の順変換器8と受電端の逆変換器12は共に自励式変換器によって構成され、両者は直流線路14a,14bを介して接続される。
【0015】
20は順変換器から直流線路14a,14bに対する融通電力を制御する制御装置である。この制御装置20は、直流電圧を制御する直流電圧制御回路(以下、DC−AVRという)21、交流電圧を制御する交流電圧制御回路(以下、AC−AVRという)22、交直変換器の無効電力出力を制御する無効電力制御回路(以下、AQRという)23、AC−AVR22とAQR23のいずれか一方の出力を選択する回路24、DC−AVR21と選択回路24の出力から送電端側の順変換器8のスイッチング素子のゲートパルスを生成する変換器出力制御回路25を含む。
【0016】
一方、30は逆変換器の制御装置で、交流電圧を制御するAC−AVR31、交流母線10の電圧位相を検出し、出力周波数を演算する位相・周波数演算回路32、交直変換器の出力電流が一定以上にならない様に制限するAC−AVR33、AC−AVR33と位相・周波数演算回路32の出力から受電端側の逆変換器12のスイッチング素子のゲートパルスを生成する変換器出力制御回路34を含む。
【0017】
送電端側の順変換器8の動作は基本的に従来技術と同じであり、以下に簡単に概要を示す。
交流系統1内の発電機3で発電され、電力系統1を経由して送られてきた電力を、順変換器8で直流に変換するが、その際にDC−AVR21の作用により直流側、すなわちコンデンサ9の両端の電圧を指令値に一致するように演算した制御信号を変換器出力制御回路25に送る。この作用により直流線路14a,14bを経由して受電端側に送電される融通電力の大きさに関わりなく、直流電圧を一定に維持することができる。
【0018】
自励式変換器は有効電力と独立に無効電力を調整できるので、順変換器8は、その交流系統1側に出力する無効電力を直接AQR23により制御するか、または、AC−AVR22の働きにより交流母線6の電圧が指令値に一致するように無効電力を制御する。すなわち、AC−AVR22において、交流母線6の電圧を指令値に一致させるための信号を演算し、その演算結果を変換器出力制御回路25に送る。変換器出力制御回路25では、AC−AVR22とDC−AVR21からの二つの入力を用いてゲートパルスを生成し、このゲートパルスを用いたPWM(パルス幅変調)制御などの手段により、順変換器8内のスイッチング素子のオン/オフ状態を制御する。
【0019】
一方、受電端の逆変換器12の動作は本発明に固有のものであり、以下に作用を説明する。AC−AVR31は受電端の交流母線10の交流電圧を指令値に一致するよう演算した制御信号を変換器出力制御回路34に送る。ただし、指令値が一定値で変化しない制御特性とすると、同様の構成で電圧制御を行う直流送電システムが複数存在する場合や、電力系統2内に発電機4が運転して電圧制御を行っている場合、これらの電圧制御と相互に干渉して、逆変換器12の動作が不安定になることがある。そこで、図2aに示すように、AC−AVR31には、逆変換器12が出力する無効電力が増加するに従って出力電圧が緩やかに低下する特性を持たせておく。
【0020】
このような特性を持たせることによって、例えば、逆変換器12の出力電圧が発電機4の出力電圧よりも高い場合には、交直変換器の無効電力出力を増加させると、出力電圧が低下する方向に運転動作点が移動してバランスが取れる点に落ち着く。また、遮断器5が開放されて発電機4が切り離され、かつ、交流系統2内に他の発電機が存在しない場合には、運転動作点は交流系統2の負荷が必要とする無効電力に対応する電圧となる。すなわち、自端の交流母線10の電圧情報のみを使って交流系統2に対する安定な制御特性を実現できる。
【0021】
次に、電圧位相を検出し出力周波数を演算する回路32は、交流母線10の交流電圧から例えばPLL(位相同期回路)などの演算回路を用いて位相と周波数を演算し、変換器出力制御回路34に送る。変換器出力制御回路34ではこれらの位相や周波数信号を基準として変換器が出力すべき電圧信号を生成し、それを使って逆変換器12のスイッチング素子のゲートパルスをPWM制御などにより生成する。
【0022】
位相・周波数演算32において一般的なPLLを用いた場合、検出した位相や周波数の誤差が発生しないような特性となっているが、本発明では交直変換器の有効電力出力と位相・周波数演算32が出力する周波数基準の間に図2bに示すような特性を持たせておく。このような特性を持たせることによって、例えば逆変換器12の出力周波数指令が発電機4の出力周波数指令よりも高い場合には、交直変換器の有効電力出力を増加させると、出力周波数が低下する方向に運転動作点が移動してバランスが取れる点に落ち着く。
【0023】
また、遮断器5が開放されて発電機4が切り離され、かつ、交流系統2内に他の発電機が存在しない場合には、運転動作点は交流系統2の負荷が必要とする有効電力に対応する周波数となる。すなわち、自端の交流母線10の電圧から演算される情報のみを使って交流系統2に対する安定な制御特性を実現できる。
【0024】
また、AC−ACR33は逆変換器12が交流母線10へ出力する電流を入力とし、内部に設定された出力電流の上限と比較し、上限を超過した場合には超過しないようにAC−AVR31の出力を補正するような信号を演算して出力する。
【0025】
すなわち、従来技術では、次のような場合に、変換器を保護のために停止しないといけないような状況になる。
(a) 交流系統2の負荷が想定以上に大きくなり、逆変換器12の出力可能容量を上回る場合。
(b) 交流系統2内で短絡事故が発生し電流制限回路33がない場合には過電流となる場合。
【0026】
しかし、本発明では、電流制限回路33の作用により逆変換器12の出力電流を運転可能な範囲に抑制することができる。そのため、逆変換器12は運転を継続することが可能となり、その間に交流系統2内の過負荷状態を解消することができる。また、逆変換器12の運転継続の間に、従来から一般的に用いられている保護リレーを使用して短絡事故点を検出し、事故区間を遮断器により切り離し、正常な運転状態に復帰することが可能となる。
【0027】
以上述べたように本実施例によれば、受電側の交流系統2に他の電源装置や直流送電システムの逆変換器の有無に関わらず、自律的に出力電圧と周波数を制御して安定運転できる。また、交流系統2内で短絡事故等が発生しても逆変換器12を停止させることなく運転継続して、従来どおり交流系統内の保護リレーと遮断器により事故除去して正常な運転状態に復帰できる。
【実施例2】
【0028】
図3は本発明の実施例2を示す直流送電システムおよびその制御装置を含む全体構成である。図3において、図1と同一符号を付した要素は同一であり、その説明は省略する。
【0029】
この実施例2が実施例1と異なる点は、AC−AVR31および変換器出力制御回路34の構成である。すなわち、実施例2では、主回路と受電端交直変換器の制御装置30との相互の関係が明確になるように、交流母線10の電圧を検出する電圧検出器15および逆変換器12から交流母線10へ出力される電流を検出する電流検出器16を設けている。さらに、電圧検出器15の出力信号から交流電圧の実効値を検出するための実効値検出回路35、電圧検出器15と電流検出器16の出力信号を用いて無効電力を検出する無効電力検出回路36を設けている。
【0030】
図3のAC−AVR31において、31aは比較器で無効電力基準Qrefと無効電力検出回路36の出力との差分を演算する。その結果は乗算器31bに出力され、スロープゲインXs1との積が出力される。31cは加算器で電圧指令Vrefと乗算器31bの出力が加算される。31dは比較器で加算器31cの出力信号と実効値検出回路35で検出された交流電圧実効値との差分を演算する。
【0031】
31eは誤差増幅回路であり、例えばPI(比例積分)回路で構成され、比較器31dの出力である誤差信号が小さくなるように出力電圧の制御信号の補正分を生成し、加算器31fで加算器31cの出力信号と加算される。31gは出力リミッタであり、AC−AVR31の出力が必要以上に大きくならないように制限する。
【0032】
AC−AVR31はVd、Vqの二つの信号を変換器出力制御回路34に出力しているが、実際にはVqの信号は0である。次に、変換器出力制御回路34は、前述のAC−AVR31からの出力信号と位相・周波数演算回路32の出力を用いてVd、Vqの2軸の信号をdq軸から三相への変換回路34aで三相に変換し、この三相の信号をPWM制御回路34cに送る。PWM制御回路34cは、搬送波生成回路34bの信号を使用して、逆変換器12を構成するスイッチング素子のオン/オフ状態を制御するゲートパルスを生成する。
【0033】
次に、本実施例の作用を説明する。
AC−AVR31の中で乗算器31bの出力は、無効電力基準Qrefと実際の無効電力出力に相当する無効電力検出回路36の出力との差分にスロープゲインXs1を乗じたものであるから、無効電力出力の変化に応じて傾きXs1を有する特性を示す。
【0034】
例えば、電圧変動を小さくしたければスロープゲインXs1を小さくすればよい。加算器31cの出力では電圧指令Vrefに加算しており、この特性は図4の実線で示すとおり(Qref、Vref)を通り傾きXs1で示される。これ以降は、加算器31cの出力に交流母線10の電圧実効値が一致するように実効値検出回路35との差分が比較器31dで演算される。この差分が零となるように誤差増幅回路31eで演算した結果が、加算器31cの出力と加算器31fで加算される。このようにして得られた信号は、逆変換器12が出力すべき電圧の大きさを表している。
【0035】
以下の変換器出力制御回路34の作用は公知のものと同等であるが、本発明の作用に関連する部分のみ簡単に説明する。
dq軸から三相への変換回路34aでは出力電圧の大きさを決めるAC−AVR31からの出力信号と、位相と周波数を決める位相・周波数演算回路32との出力信号の二つを用いて三相信号を生成する。さらに、PWM制御回路34cでは、前記三相の信号と搬送波生成回路34bの信号とを使用して逆変換器12を構成するスイッチング素子のオン/オフ状態を制御するゲートパルスを生成する。
【0036】
これらの一連の作用により、逆変換器12ではスイッチング素子を適宜オン/オフさせ、直流コンデンサ13で維持されている直流電圧から目標とする交流電圧を生成して、逆変換器用変圧器11を介して交流母線10に発生させる。
【0037】
以上述べたように、本実施例によれば、逆変換器12の無効電力出力に応じてスロープXs1の傾きで穏やかに出力電圧が変化する指令値を生成し、この指令値に従って逆変換器12の出力電圧を制御する直流送電システムの制御装置を提供できる。
【実施例3】
【0038】
図5は本発明の実施例3を示す直流送電システムおよびその制御装置を含む全体構成である。図5において、図1、図3と同一符号を付した要素は同一であり、その説明は省略する。
【0039】
この実施例が実施例1および実施例2と異なる点は、位相・周波数演算回路32の構成である。すなわち、図5の位相・周波数演算回路32において、32aは位相差検出回路で、電圧検出器15で検出した交流母線10の電圧信号と積分回路32fで演算した自身の位相信号との位相の差分を演算する。その結果は誤差増幅回路32bに出力され、演算結果が加算器32eに出力される。
【0040】
一方、32cは係数乗算器で電力指令Prefに係数Kを乗じた結果が加算器32dに出力される。32dは角周波数指令ωrefと係数乗算器32cの出力信号とを加算して加算器32eに出力し、加算器32eは前述の誤差増幅回路32bの出力とを加算する。32fは積分回路であり、加算器32eの出力信号である出力周波数相当の信号を積分し、位相信号を算出している。
【0041】
次に、本実施例の作用を説明する。
位相・周波数演算回路32の中で、位相検出差回路32aは、電圧検出器15で検出した交流母線10の電圧信号と、積分回路32fで演算した自身の位相同期信号との位相の差分を演算し出力する。
【0042】
誤差増幅回路32bは、前記位相差分が小さくなるように周波数の調整量に相当する値を演算する。すなわち、積分回路32fで演算された自身の位相信号が遅れている場合には位相を早めるために周波数を上昇させる方向に、逆に、自身の位相信号が進んでいる場合には位相を遅らせるために周波数を低下させる方向に、出力信号を加算器32eに出力する。
【0043】
ここで、誤差増幅回路32bは位相差が全くなくなるような積分を含む演算回路を用いずに、比例ゲインのみや一次遅れを追加するなど定常的には位相差に比例した信号を出力するような演算回路を用いる。これによって、位相誤差と周波数調整量が比例関係を有する特性を持たせることができる。
【0044】
一方、電力指令Prefに係数Kを係数乗算器32cで乗じた結果を加算器32dで角周波数指令ωrefと加算する。ここで、係数Kを誤差増幅器32bの制御ゲインK1と逆変換器用変圧器11のインピーダンスXtを使って、K=Xt*K1と定める。これによって、加算器32dの出力は、角周波数指令ωrefよりPref*Kだけ大きな値となる。
【0045】
一方、逆変換器12がちょうどPrefに相当する大きさの有効電力を出力しているときに、逆変換器12の出力端と交流母線10の電圧の位相差Δθは、逆変換器用変圧器11のインピーダンスXtを用いてΔθ≒Pref*Xtで近似される。ここで、逆変換器12の出力電圧位相は積分回路32fの位相に対応し、交流母線10の電圧位相との差分は位相差検出回路32aの出力に対応する。これにより、誤差増幅回路32bで制御ゲインK1を乗じた演算結果は、大きさは係数乗算器32cの出力と同一で極性が逆となり、加算器32eの出力はωrefに相当する値となる。この作用を制御特性図で表すと図6の通りである。
【0046】
次に、積分回路32fでは角周波数に相当する加算器32eの信号を積分することにより、位相同期信号を生成する。ここで得られた位相同期信号は変換器出力制御回路34に出力され、以下の動作は実施例2で説明したのと同一となる。
【0047】
以上述べたように、本実施例の周波数指令値は、逆変換器12の有効電力出力に応じて、誤差増幅器32bの制御ゲインに対応付けられる傾きで、出力周波数が穏やかに変化する。その結果、本実施例によれば、出力周波数が穏やかに変化した周波数指令値に従って、逆変換器12の出力位相と周波数を制御する直流送電システムの制御装置を提供できる。
【実施例4】
【0048】
図7は本発明の実施例4を示す直流送電システムおよびその制御装置を含む全体構成である。図7において、図1および図3と同一符号を付した要素は同一であり、その説明は省略する。
【0049】
この実施例が実施例1および実施例2と異なる点は、電流制限回路33の構成である。すなわち、AC−AVR31の加算器31fと出力リミッタ31gの間に加算器31hが追加され、同様にq軸電圧指令の出力部に加算器31iが追加され、前述の電流制限回路33の出力が加算されている。また、主回路と電流制御回路33との相互の関係が明確になるよう電流検出器16の出力が電流検出回路37に入力され、この出力が電流制限回路33に接続されている。
【0050】
電流制限回路33は、d軸およびq軸の出力電流制限値IdmaxおよびIqmaxと電流検出回路37でdq軸上に座標変換された出力電流値Id,Iqとの差分を比較器33a,33bで演算し、誤差増幅器33c,33dに出力する。さらに、誤差増幅器の出力は、出力リミッタ33e,33fを介して電流制限回路33の出力となる。
【0051】
次に本実施例の作用を説明する。
電流検出回路37では三相の信号である電流検出器16の出力を、位相・周波数演算回路32の出力信号を用いてdq軸上に座標変換する。この結果得られた出力電流値Id,Iqは、比較器33a,33bでd軸およびq軸の出力電流制限値IdmaxおよびIqmaxとの差分を演算される。
【0052】
次に、比較器33a,33bの出力は誤差増幅器33c,33dで例えばPI(比例積分)回路で構成され、入力信号である電流の差分が小さくなるような変換器出力となるように演算される。さらに、誤差増幅器33c,33dの出力は出力リミッタ33e,33fを介して電流制限回路33の出力となる。ただし、出力リミッタの設定は、電流検出回路37で座標変換された電流Id、Iqが電流制限値Idmax、Iqmaxを超過した場合のみ出力が有効となり、Id、Iqが電流制限値Idmax、Iqmaxよりも小さい場合には出力がリミットにかかって零になるようにしておく。
【0053】
このようにすると、逆変換器12の出力電流が電流制限値Idmax、Iqmax相当の値よりも小さい場合には出力リミッタ33e,33fの出力は零となるから、AC−AVR31は影響を受けず実施例2で説明したとおりの動作となる。
【0054】
一方、出力電流が電流制限値Idmax、Iqmax相当の値よりも大きくなるような状況では、誤差増幅回路33c,33dの演算によりId、Iqと電流制限値Idmax、Iqmaxの差分が小さくなるような信号が出力される。この信号は、AC−AVR31の加算器31h,31iで加算され、図8に示すように交流出力電圧を低下する方向に作用して、電流がIdmax、Iqmax相当の値に制限されることになる。
【0055】
従って、交流系統2内で逆変換器12の出力可能容量を上回るような大きな負荷が投入された場合や、交流系統2内で短絡事故が発生して過電流が流れるような状況であっても、電流制限回路33の作用により逆変換器12の出力電流が運転可能な範囲に抑制することができるようになる。そのため、逆変換器12は運転を継続することが可能となり、その間に交流系統2内の過負荷状態を解消することができる。また、その間に、従来から一般的に用いられている保護リレーなどの事故検出手段により短絡事故点を検出して事故区間を遮断器により切り離し、正常な運転状態に復帰することが可能となる。
【0056】
以上述べたように本実施例によれば、交流系統2内で短絡事故等が発生しても逆変換器12を停止させることなく運転継続して、従来どおり交流系統内の保護リレーと遮断器により事故除去して正常な運転状態に復帰できる直流送電システムの制御装置を提供できる。
【実施例5】
【0057】
図9は、本発明の実施例5を示す直流送電システムおよびその制御装置、受電側の交流系統を含む構成図である。図9において、図7と同一符号を付した要素は同一であり、その説明は省略する。
【0058】
この実施例が実施例1および実施例4と異なる点は、逆変換器12の制御装置30の中に、タイマー38が追加されている点である。これは、電流検出回路37の出力に接続され、その出力は図中では明記していないが逆変換器12の制御装置30の中で運転/停止に関わる各所に接続されている。また、交流系統2は、送電線2e,2fの両端に配置された遮断器2a,2b,2c,2dと、保護リレー2g,2hを備えている。
【0059】
ここで、交流系統2内の送電線2fにおいて雷などの原因により短絡事故が発生した場合を考える。短絡事故が発生すると短絡電流が流れると同時に近傍の交流電圧は大きく低下する。交流母線10についても、例えば図10に示すように、交流母線電圧は時刻T1で大きく低下し、逆変換器12の出力する電流を電流検出回路37でdq軸座標変換した値は大きく増加する。
【0060】
ただし、電流の最大値は実施例4で説明したように電流制限値Idmax,Iqmaxで制限された状態で運転継続する。この間に、交流系統2内に配置されている事故検出手段である保護リレー2g,2hは電圧や電流の情報により短絡事故が発生していることを時刻T2で検出する。同時に、事故区間を含む遮断器2c,2dに開放指令を送ると、開放信号の動作遅れや遮断器の動作時間を要した後、時刻T3で遮断器2c,2dが開放される。このようにして、短絡事故区間が切り離されるため、逆変換器12の出力電流(d軸電流、q軸電流)は元の状態に戻り、交流母線電圧も復帰する。
【0061】
図9の逆変換器12の制御装置30内のターマー38の整定値がT0であるとすると、この場合には事故発生からT0が経過する以前に短絡事故が除去され、大きな電流は流れなくなる。その結果、タイマー38はカウントがリセットされると同時に、その出力は逆変換器12の動作に影響を与えない。
【0062】
すなわち、交流系統内で短絡事故等が発生しても、タイマー38の整定時間内であれば、逆変換器12およびその制御装置30から構成される直流送電システムは出力電流を制限しつつ運転を継続することができる。このようにして、本実施例によれば、交流系統内の保護リレーおよび遮断器によって短絡事故が除去されると、自動的に元の運転状態に復旧できる制御装置を提供できる。また、この保護リレーと遮断器によるシステムは従来から使われている方式を変更する必要がない。
【実施例6】
【0063】
本実施例の構成は図9と同じであるが、図11を用いて本発明の実施例6の作用を説明する。時刻T1において交流系統2内で短絡事故が発生し、交流母線10の電圧が低下する点までは実施例5と同様である。
【0064】
異なる点は、実施例5では時刻T2において保護リレーが事故を検出し、時刻T3で事故除去を行なっているが、何らかの理由、例えば、保護リレー2g,2hや遮断器2c,2dの不具合により事故除去できずに短絡状態が継続しているものとする。
【0065】
このような状況は電力系統2にとっても電圧低下が継続して好ましくないし、逆変換器12にとっても電流制限値いっぱいの過電流の状態が継続するため不都合である。そこで、タイマー38は、事故発生からT0経過しても過電流が解消されないことを検出して、直流送電システムに停止指令を出す。これによって、交流系統2内に他の電源装置がない場合には全停電状態となり、短絡事故が雷に起因するものであれば短絡事故状態が解消される可能性が高くなる。また、逆変換器12も過電流状態が解消される。
【0066】
以上のように、本実施例によれば、タイマー38の整定時間を超過して逆変換器12の出力電流が制限値から解消されない場合には、タイマー38からの指令により直流送電システム自体を停止させ、事故状況を解消できる制御装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0067】
1…送電側の交流系統、2…受電側の交流系統、2a,2b,2c,2d…遮断器、2e,2f…送電線、2g,2h…保護リレー、3,4…発電機、5…遮断器、6,10…交流母線、7,11…変換器用変圧器、8…順変換器、12…逆変換器、9,13…直流コンデンサ、14a,14b…直流線路、15…電圧検出器、16…電流検出器、20…送電端交直変換器の制御装置、21…直流電圧制御回路、22…交流電圧制御回路、23…無効電力制御回路、24…選択回路、25…変換器出力制御回路、30…受電端交直変換器の制御装置、31…交流電圧制御回路、32…位相・周波数演算回路、33…電流制限回路、34…変換器出力制御回路、35…電圧実効値検出回路、36…無効電力検出回路、37…電流検出回路、38…タイマー、31a,31d…比較器、31b…乗算器、31c,31f,31h,31i…加算器、31e…誤差増幅回路、31g…出力リミッタ、32a…位相差検出回路、32b…誤差増幅回路、32c…係数乗算器、32d,32e…加算器、32f…積分回路、33a,33b…比較器、33c,33d…誤差増幅器、33e,33f…出力リミッタ、34a…dq軸→三相変換回路、34b…搬送波生成回路、34c…PWM制御回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆変換器に自励式変換器を用いた直流送電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
直流送電システムは、交流電力を順変換器で直流電力に変換し、直流の形態で送電し、逆変換器で直流電力から交流電力へ変換して電力供給するものである。一度直流に変換することで、周波数の異なる系統間の連系や、同一周波数であっても非同期の系統間の連系、また、長距離のケーブルを介した送電に適用されている。特に、逆変換器側の系統に他の電源装置が存在しない場合や、短絡容量が小さい系統では自励式変換器が必要となる。
【0003】
自励式変換器を用いた直流送電システムの制御方法としては、例えば特許文献1に記載されているように、一端の変換器で直流電圧を一定に制御し、他端の変換器で有効電力を制御して電力供給を行う方法が知られている。しかしながら、この制御方法はそれぞれの変換器が他の電源装置の存在する交流系統に接続されていることが前提となっており、各変換器はそれぞれの交流系統の電圧位相を検出し、これに同期しつつ運転制御される。
【0004】
しかしながら、離島や遠隔地需要家への電力供給を想定すると、他の発電装置が存在しない場合や、存在しても極力これらの運転を抑制して運転コストの低減やCO2排出量の低減をねらう場合がある。特に、無電源系統への直流送電のためには負荷の瞬時の変動や力率に応じた無効電力供給を逆変換器から行う必要があるが、特許文献1の制御方法では予想しがたい負荷変動に合わせて瞬時に融通電力を制御することは困難である。
【0005】
このような場合の対策として、特許文献2では、逆変換器側の電源装置が切り離されたことを検出して、逆変換器を交流電圧が一定となるように制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2635660号公報
【特許文献2】特許第4287031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、逆変換器側の交流系統内に小容量の電源装置が分散配置している場合には、これらの電源装置が切り離されたことを伝送するための伝送路が必要となりコストアップの要因となる。その上、電源装置の容量が逆変換器の容量に比較して小さい場合には、逆変換器が安定に運転できる範囲に制約が生じるため、必要以上に電源装置を運転する必要が生じる。また、信頼性確保の観点から直流送電システムを2系列とした場合には、2系列の逆変換器を同時に電圧が一定となるように制御すると、2つの系統間で制御の干渉が生じる可能性がある。
【0008】
本発明は、以上述べた従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。すなわち、本発明の目的は、逆変換器側の交流系統内における電源装置の有無に関わらず、安定な直流送電を実現できる直流送電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、交流電力を直流電力に変換する順変換器と、直流電力を交流電力に変換する逆変換器を備える直流送電システムにおいて、次の構成を特徴とする。
【0010】
(1) 順変換器は、直流電圧を一定に維持するように融通電力を制御する。
(2) 逆変換器に、交流電圧と周波数を制御する手段を設ける。
(3) 逆変換器側の交流系統に他の電源装置や直流送電システムの逆変換器がない場合には、逆変換器は、交流系統の交流電圧と周波数を指令値に追従させるよう自立的に出力制御を行う。
(4) 他の電源装置等が存在する場合には、逆変換器は、これらの出力する交流電圧と同期を取りつつ交流電圧と周波数を調整する。
(5) 逆変換器は、過電流を防止するために出力電流の制限手段を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、次のような効果を発揮する。
(a) 逆変換器に、交流電圧と周波数を制御する手段を設けることにより、逆変換器側の交流系統における他の電源装置や直流送電システムの逆変換器の有無に関わらず、システムを安定して運転することができる。
(b) 出力電流の制限手段を設けることで、交流系統内で事故が発生した場合でも、電流制限を行いつつ、システムの運転を継続することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の直流送電システムを示す回路図。
【図2】実施例1の逆変換器の動作特性を表すグラフ。
【図3】実施例2の直流送電システムおよびその制御装置を示す回路図。
【図4】AC−AVR31の制御特性を説明するグラフ。
【図5】実施例3の直流送電システムおよびその制御装置を示す回路図。
【図6】位相・周波数演算回路32の制御特性を説明するグラフ。
【図7】実施例4の直流送電システムおよびその制御装置を示す回路図。
【図8】電流制限回路33の制御特性を説明するグラフ。
【図9】実施例5の直流送電システムおよびその制御装置、受電側の交流系統を示す回路図。
【図10】直流送電システムと交流系統内の保護リレーとの協調動作を説明するタイムチャート。
【図11】直流送電システムと交流系統内の保護リレーとの協調動作を説明するタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を下記の実施例によって具体的に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、実施例1の直流送電システムの全体構成を示す回路図である。図1において、1は送電側の電力系統、2は受電側の電力系統である。3は送電側の電力系統に含まれる発電機、4は受電側の電力系統に含まれる発電機で、両者は遮断器5を介してそれぞれの電力系統に接続されている。6は直流送電システムの送電端交流母線、7は順変換器用変圧器、8は順変換器、9は直流コンデンサである。一方、受電端は、交流母線10、逆変換器用変圧器11、逆変換器12、直流コンデンサ13が順次接続されている。そして、送電端側の順変換器8と受電端の逆変換器12は共に自励式変換器によって構成され、両者は直流線路14a,14bを介して接続される。
【0015】
20は順変換器から直流線路14a,14bに対する融通電力を制御する制御装置である。この制御装置20は、直流電圧を制御する直流電圧制御回路(以下、DC−AVRという)21、交流電圧を制御する交流電圧制御回路(以下、AC−AVRという)22、交直変換器の無効電力出力を制御する無効電力制御回路(以下、AQRという)23、AC−AVR22とAQR23のいずれか一方の出力を選択する回路24、DC−AVR21と選択回路24の出力から送電端側の順変換器8のスイッチング素子のゲートパルスを生成する変換器出力制御回路25を含む。
【0016】
一方、30は逆変換器の制御装置で、交流電圧を制御するAC−AVR31、交流母線10の電圧位相を検出し、出力周波数を演算する位相・周波数演算回路32、交直変換器の出力電流が一定以上にならない様に制限するAC−AVR33、AC−AVR33と位相・周波数演算回路32の出力から受電端側の逆変換器12のスイッチング素子のゲートパルスを生成する変換器出力制御回路34を含む。
【0017】
送電端側の順変換器8の動作は基本的に従来技術と同じであり、以下に簡単に概要を示す。
交流系統1内の発電機3で発電され、電力系統1を経由して送られてきた電力を、順変換器8で直流に変換するが、その際にDC−AVR21の作用により直流側、すなわちコンデンサ9の両端の電圧を指令値に一致するように演算した制御信号を変換器出力制御回路25に送る。この作用により直流線路14a,14bを経由して受電端側に送電される融通電力の大きさに関わりなく、直流電圧を一定に維持することができる。
【0018】
自励式変換器は有効電力と独立に無効電力を調整できるので、順変換器8は、その交流系統1側に出力する無効電力を直接AQR23により制御するか、または、AC−AVR22の働きにより交流母線6の電圧が指令値に一致するように無効電力を制御する。すなわち、AC−AVR22において、交流母線6の電圧を指令値に一致させるための信号を演算し、その演算結果を変換器出力制御回路25に送る。変換器出力制御回路25では、AC−AVR22とDC−AVR21からの二つの入力を用いてゲートパルスを生成し、このゲートパルスを用いたPWM(パルス幅変調)制御などの手段により、順変換器8内のスイッチング素子のオン/オフ状態を制御する。
【0019】
一方、受電端の逆変換器12の動作は本発明に固有のものであり、以下に作用を説明する。AC−AVR31は受電端の交流母線10の交流電圧を指令値に一致するよう演算した制御信号を変換器出力制御回路34に送る。ただし、指令値が一定値で変化しない制御特性とすると、同様の構成で電圧制御を行う直流送電システムが複数存在する場合や、電力系統2内に発電機4が運転して電圧制御を行っている場合、これらの電圧制御と相互に干渉して、逆変換器12の動作が不安定になることがある。そこで、図2aに示すように、AC−AVR31には、逆変換器12が出力する無効電力が増加するに従って出力電圧が緩やかに低下する特性を持たせておく。
【0020】
このような特性を持たせることによって、例えば、逆変換器12の出力電圧が発電機4の出力電圧よりも高い場合には、交直変換器の無効電力出力を増加させると、出力電圧が低下する方向に運転動作点が移動してバランスが取れる点に落ち着く。また、遮断器5が開放されて発電機4が切り離され、かつ、交流系統2内に他の発電機が存在しない場合には、運転動作点は交流系統2の負荷が必要とする無効電力に対応する電圧となる。すなわち、自端の交流母線10の電圧情報のみを使って交流系統2に対する安定な制御特性を実現できる。
【0021】
次に、電圧位相を検出し出力周波数を演算する回路32は、交流母線10の交流電圧から例えばPLL(位相同期回路)などの演算回路を用いて位相と周波数を演算し、変換器出力制御回路34に送る。変換器出力制御回路34ではこれらの位相や周波数信号を基準として変換器が出力すべき電圧信号を生成し、それを使って逆変換器12のスイッチング素子のゲートパルスをPWM制御などにより生成する。
【0022】
位相・周波数演算32において一般的なPLLを用いた場合、検出した位相や周波数の誤差が発生しないような特性となっているが、本発明では交直変換器の有効電力出力と位相・周波数演算32が出力する周波数基準の間に図2bに示すような特性を持たせておく。このような特性を持たせることによって、例えば逆変換器12の出力周波数指令が発電機4の出力周波数指令よりも高い場合には、交直変換器の有効電力出力を増加させると、出力周波数が低下する方向に運転動作点が移動してバランスが取れる点に落ち着く。
【0023】
また、遮断器5が開放されて発電機4が切り離され、かつ、交流系統2内に他の発電機が存在しない場合には、運転動作点は交流系統2の負荷が必要とする有効電力に対応する周波数となる。すなわち、自端の交流母線10の電圧から演算される情報のみを使って交流系統2に対する安定な制御特性を実現できる。
【0024】
また、AC−ACR33は逆変換器12が交流母線10へ出力する電流を入力とし、内部に設定された出力電流の上限と比較し、上限を超過した場合には超過しないようにAC−AVR31の出力を補正するような信号を演算して出力する。
【0025】
すなわち、従来技術では、次のような場合に、変換器を保護のために停止しないといけないような状況になる。
(a) 交流系統2の負荷が想定以上に大きくなり、逆変換器12の出力可能容量を上回る場合。
(b) 交流系統2内で短絡事故が発生し電流制限回路33がない場合には過電流となる場合。
【0026】
しかし、本発明では、電流制限回路33の作用により逆変換器12の出力電流を運転可能な範囲に抑制することができる。そのため、逆変換器12は運転を継続することが可能となり、その間に交流系統2内の過負荷状態を解消することができる。また、逆変換器12の運転継続の間に、従来から一般的に用いられている保護リレーを使用して短絡事故点を検出し、事故区間を遮断器により切り離し、正常な運転状態に復帰することが可能となる。
【0027】
以上述べたように本実施例によれば、受電側の交流系統2に他の電源装置や直流送電システムの逆変換器の有無に関わらず、自律的に出力電圧と周波数を制御して安定運転できる。また、交流系統2内で短絡事故等が発生しても逆変換器12を停止させることなく運転継続して、従来どおり交流系統内の保護リレーと遮断器により事故除去して正常な運転状態に復帰できる。
【実施例2】
【0028】
図3は本発明の実施例2を示す直流送電システムおよびその制御装置を含む全体構成である。図3において、図1と同一符号を付した要素は同一であり、その説明は省略する。
【0029】
この実施例2が実施例1と異なる点は、AC−AVR31および変換器出力制御回路34の構成である。すなわち、実施例2では、主回路と受電端交直変換器の制御装置30との相互の関係が明確になるように、交流母線10の電圧を検出する電圧検出器15および逆変換器12から交流母線10へ出力される電流を検出する電流検出器16を設けている。さらに、電圧検出器15の出力信号から交流電圧の実効値を検出するための実効値検出回路35、電圧検出器15と電流検出器16の出力信号を用いて無効電力を検出する無効電力検出回路36を設けている。
【0030】
図3のAC−AVR31において、31aは比較器で無効電力基準Qrefと無効電力検出回路36の出力との差分を演算する。その結果は乗算器31bに出力され、スロープゲインXs1との積が出力される。31cは加算器で電圧指令Vrefと乗算器31bの出力が加算される。31dは比較器で加算器31cの出力信号と実効値検出回路35で検出された交流電圧実効値との差分を演算する。
【0031】
31eは誤差増幅回路であり、例えばPI(比例積分)回路で構成され、比較器31dの出力である誤差信号が小さくなるように出力電圧の制御信号の補正分を生成し、加算器31fで加算器31cの出力信号と加算される。31gは出力リミッタであり、AC−AVR31の出力が必要以上に大きくならないように制限する。
【0032】
AC−AVR31はVd、Vqの二つの信号を変換器出力制御回路34に出力しているが、実際にはVqの信号は0である。次に、変換器出力制御回路34は、前述のAC−AVR31からの出力信号と位相・周波数演算回路32の出力を用いてVd、Vqの2軸の信号をdq軸から三相への変換回路34aで三相に変換し、この三相の信号をPWM制御回路34cに送る。PWM制御回路34cは、搬送波生成回路34bの信号を使用して、逆変換器12を構成するスイッチング素子のオン/オフ状態を制御するゲートパルスを生成する。
【0033】
次に、本実施例の作用を説明する。
AC−AVR31の中で乗算器31bの出力は、無効電力基準Qrefと実際の無効電力出力に相当する無効電力検出回路36の出力との差分にスロープゲインXs1を乗じたものであるから、無効電力出力の変化に応じて傾きXs1を有する特性を示す。
【0034】
例えば、電圧変動を小さくしたければスロープゲインXs1を小さくすればよい。加算器31cの出力では電圧指令Vrefに加算しており、この特性は図4の実線で示すとおり(Qref、Vref)を通り傾きXs1で示される。これ以降は、加算器31cの出力に交流母線10の電圧実効値が一致するように実効値検出回路35との差分が比較器31dで演算される。この差分が零となるように誤差増幅回路31eで演算した結果が、加算器31cの出力と加算器31fで加算される。このようにして得られた信号は、逆変換器12が出力すべき電圧の大きさを表している。
【0035】
以下の変換器出力制御回路34の作用は公知のものと同等であるが、本発明の作用に関連する部分のみ簡単に説明する。
dq軸から三相への変換回路34aでは出力電圧の大きさを決めるAC−AVR31からの出力信号と、位相と周波数を決める位相・周波数演算回路32との出力信号の二つを用いて三相信号を生成する。さらに、PWM制御回路34cでは、前記三相の信号と搬送波生成回路34bの信号とを使用して逆変換器12を構成するスイッチング素子のオン/オフ状態を制御するゲートパルスを生成する。
【0036】
これらの一連の作用により、逆変換器12ではスイッチング素子を適宜オン/オフさせ、直流コンデンサ13で維持されている直流電圧から目標とする交流電圧を生成して、逆変換器用変圧器11を介して交流母線10に発生させる。
【0037】
以上述べたように、本実施例によれば、逆変換器12の無効電力出力に応じてスロープXs1の傾きで穏やかに出力電圧が変化する指令値を生成し、この指令値に従って逆変換器12の出力電圧を制御する直流送電システムの制御装置を提供できる。
【実施例3】
【0038】
図5は本発明の実施例3を示す直流送電システムおよびその制御装置を含む全体構成である。図5において、図1、図3と同一符号を付した要素は同一であり、その説明は省略する。
【0039】
この実施例が実施例1および実施例2と異なる点は、位相・周波数演算回路32の構成である。すなわち、図5の位相・周波数演算回路32において、32aは位相差検出回路で、電圧検出器15で検出した交流母線10の電圧信号と積分回路32fで演算した自身の位相信号との位相の差分を演算する。その結果は誤差増幅回路32bに出力され、演算結果が加算器32eに出力される。
【0040】
一方、32cは係数乗算器で電力指令Prefに係数Kを乗じた結果が加算器32dに出力される。32dは角周波数指令ωrefと係数乗算器32cの出力信号とを加算して加算器32eに出力し、加算器32eは前述の誤差増幅回路32bの出力とを加算する。32fは積分回路であり、加算器32eの出力信号である出力周波数相当の信号を積分し、位相信号を算出している。
【0041】
次に、本実施例の作用を説明する。
位相・周波数演算回路32の中で、位相検出差回路32aは、電圧検出器15で検出した交流母線10の電圧信号と、積分回路32fで演算した自身の位相同期信号との位相の差分を演算し出力する。
【0042】
誤差増幅回路32bは、前記位相差分が小さくなるように周波数の調整量に相当する値を演算する。すなわち、積分回路32fで演算された自身の位相信号が遅れている場合には位相を早めるために周波数を上昇させる方向に、逆に、自身の位相信号が進んでいる場合には位相を遅らせるために周波数を低下させる方向に、出力信号を加算器32eに出力する。
【0043】
ここで、誤差増幅回路32bは位相差が全くなくなるような積分を含む演算回路を用いずに、比例ゲインのみや一次遅れを追加するなど定常的には位相差に比例した信号を出力するような演算回路を用いる。これによって、位相誤差と周波数調整量が比例関係を有する特性を持たせることができる。
【0044】
一方、電力指令Prefに係数Kを係数乗算器32cで乗じた結果を加算器32dで角周波数指令ωrefと加算する。ここで、係数Kを誤差増幅器32bの制御ゲインK1と逆変換器用変圧器11のインピーダンスXtを使って、K=Xt*K1と定める。これによって、加算器32dの出力は、角周波数指令ωrefよりPref*Kだけ大きな値となる。
【0045】
一方、逆変換器12がちょうどPrefに相当する大きさの有効電力を出力しているときに、逆変換器12の出力端と交流母線10の電圧の位相差Δθは、逆変換器用変圧器11のインピーダンスXtを用いてΔθ≒Pref*Xtで近似される。ここで、逆変換器12の出力電圧位相は積分回路32fの位相に対応し、交流母線10の電圧位相との差分は位相差検出回路32aの出力に対応する。これにより、誤差増幅回路32bで制御ゲインK1を乗じた演算結果は、大きさは係数乗算器32cの出力と同一で極性が逆となり、加算器32eの出力はωrefに相当する値となる。この作用を制御特性図で表すと図6の通りである。
【0046】
次に、積分回路32fでは角周波数に相当する加算器32eの信号を積分することにより、位相同期信号を生成する。ここで得られた位相同期信号は変換器出力制御回路34に出力され、以下の動作は実施例2で説明したのと同一となる。
【0047】
以上述べたように、本実施例の周波数指令値は、逆変換器12の有効電力出力に応じて、誤差増幅器32bの制御ゲインに対応付けられる傾きで、出力周波数が穏やかに変化する。その結果、本実施例によれば、出力周波数が穏やかに変化した周波数指令値に従って、逆変換器12の出力位相と周波数を制御する直流送電システムの制御装置を提供できる。
【実施例4】
【0048】
図7は本発明の実施例4を示す直流送電システムおよびその制御装置を含む全体構成である。図7において、図1および図3と同一符号を付した要素は同一であり、その説明は省略する。
【0049】
この実施例が実施例1および実施例2と異なる点は、電流制限回路33の構成である。すなわち、AC−AVR31の加算器31fと出力リミッタ31gの間に加算器31hが追加され、同様にq軸電圧指令の出力部に加算器31iが追加され、前述の電流制限回路33の出力が加算されている。また、主回路と電流制御回路33との相互の関係が明確になるよう電流検出器16の出力が電流検出回路37に入力され、この出力が電流制限回路33に接続されている。
【0050】
電流制限回路33は、d軸およびq軸の出力電流制限値IdmaxおよびIqmaxと電流検出回路37でdq軸上に座標変換された出力電流値Id,Iqとの差分を比較器33a,33bで演算し、誤差増幅器33c,33dに出力する。さらに、誤差増幅器の出力は、出力リミッタ33e,33fを介して電流制限回路33の出力となる。
【0051】
次に本実施例の作用を説明する。
電流検出回路37では三相の信号である電流検出器16の出力を、位相・周波数演算回路32の出力信号を用いてdq軸上に座標変換する。この結果得られた出力電流値Id,Iqは、比較器33a,33bでd軸およびq軸の出力電流制限値IdmaxおよびIqmaxとの差分を演算される。
【0052】
次に、比較器33a,33bの出力は誤差増幅器33c,33dで例えばPI(比例積分)回路で構成され、入力信号である電流の差分が小さくなるような変換器出力となるように演算される。さらに、誤差増幅器33c,33dの出力は出力リミッタ33e,33fを介して電流制限回路33の出力となる。ただし、出力リミッタの設定は、電流検出回路37で座標変換された電流Id、Iqが電流制限値Idmax、Iqmaxを超過した場合のみ出力が有効となり、Id、Iqが電流制限値Idmax、Iqmaxよりも小さい場合には出力がリミットにかかって零になるようにしておく。
【0053】
このようにすると、逆変換器12の出力電流が電流制限値Idmax、Iqmax相当の値よりも小さい場合には出力リミッタ33e,33fの出力は零となるから、AC−AVR31は影響を受けず実施例2で説明したとおりの動作となる。
【0054】
一方、出力電流が電流制限値Idmax、Iqmax相当の値よりも大きくなるような状況では、誤差増幅回路33c,33dの演算によりId、Iqと電流制限値Idmax、Iqmaxの差分が小さくなるような信号が出力される。この信号は、AC−AVR31の加算器31h,31iで加算され、図8に示すように交流出力電圧を低下する方向に作用して、電流がIdmax、Iqmax相当の値に制限されることになる。
【0055】
従って、交流系統2内で逆変換器12の出力可能容量を上回るような大きな負荷が投入された場合や、交流系統2内で短絡事故が発生して過電流が流れるような状況であっても、電流制限回路33の作用により逆変換器12の出力電流が運転可能な範囲に抑制することができるようになる。そのため、逆変換器12は運転を継続することが可能となり、その間に交流系統2内の過負荷状態を解消することができる。また、その間に、従来から一般的に用いられている保護リレーなどの事故検出手段により短絡事故点を検出して事故区間を遮断器により切り離し、正常な運転状態に復帰することが可能となる。
【0056】
以上述べたように本実施例によれば、交流系統2内で短絡事故等が発生しても逆変換器12を停止させることなく運転継続して、従来どおり交流系統内の保護リレーと遮断器により事故除去して正常な運転状態に復帰できる直流送電システムの制御装置を提供できる。
【実施例5】
【0057】
図9は、本発明の実施例5を示す直流送電システムおよびその制御装置、受電側の交流系統を含む構成図である。図9において、図7と同一符号を付した要素は同一であり、その説明は省略する。
【0058】
この実施例が実施例1および実施例4と異なる点は、逆変換器12の制御装置30の中に、タイマー38が追加されている点である。これは、電流検出回路37の出力に接続され、その出力は図中では明記していないが逆変換器12の制御装置30の中で運転/停止に関わる各所に接続されている。また、交流系統2は、送電線2e,2fの両端に配置された遮断器2a,2b,2c,2dと、保護リレー2g,2hを備えている。
【0059】
ここで、交流系統2内の送電線2fにおいて雷などの原因により短絡事故が発生した場合を考える。短絡事故が発生すると短絡電流が流れると同時に近傍の交流電圧は大きく低下する。交流母線10についても、例えば図10に示すように、交流母線電圧は時刻T1で大きく低下し、逆変換器12の出力する電流を電流検出回路37でdq軸座標変換した値は大きく増加する。
【0060】
ただし、電流の最大値は実施例4で説明したように電流制限値Idmax,Iqmaxで制限された状態で運転継続する。この間に、交流系統2内に配置されている事故検出手段である保護リレー2g,2hは電圧や電流の情報により短絡事故が発生していることを時刻T2で検出する。同時に、事故区間を含む遮断器2c,2dに開放指令を送ると、開放信号の動作遅れや遮断器の動作時間を要した後、時刻T3で遮断器2c,2dが開放される。このようにして、短絡事故区間が切り離されるため、逆変換器12の出力電流(d軸電流、q軸電流)は元の状態に戻り、交流母線電圧も復帰する。
【0061】
図9の逆変換器12の制御装置30内のターマー38の整定値がT0であるとすると、この場合には事故発生からT0が経過する以前に短絡事故が除去され、大きな電流は流れなくなる。その結果、タイマー38はカウントがリセットされると同時に、その出力は逆変換器12の動作に影響を与えない。
【0062】
すなわち、交流系統内で短絡事故等が発生しても、タイマー38の整定時間内であれば、逆変換器12およびその制御装置30から構成される直流送電システムは出力電流を制限しつつ運転を継続することができる。このようにして、本実施例によれば、交流系統内の保護リレーおよび遮断器によって短絡事故が除去されると、自動的に元の運転状態に復旧できる制御装置を提供できる。また、この保護リレーと遮断器によるシステムは従来から使われている方式を変更する必要がない。
【実施例6】
【0063】
本実施例の構成は図9と同じであるが、図11を用いて本発明の実施例6の作用を説明する。時刻T1において交流系統2内で短絡事故が発生し、交流母線10の電圧が低下する点までは実施例5と同様である。
【0064】
異なる点は、実施例5では時刻T2において保護リレーが事故を検出し、時刻T3で事故除去を行なっているが、何らかの理由、例えば、保護リレー2g,2hや遮断器2c,2dの不具合により事故除去できずに短絡状態が継続しているものとする。
【0065】
このような状況は電力系統2にとっても電圧低下が継続して好ましくないし、逆変換器12にとっても電流制限値いっぱいの過電流の状態が継続するため不都合である。そこで、タイマー38は、事故発生からT0経過しても過電流が解消されないことを検出して、直流送電システムに停止指令を出す。これによって、交流系統2内に他の電源装置がない場合には全停電状態となり、短絡事故が雷に起因するものであれば短絡事故状態が解消される可能性が高くなる。また、逆変換器12も過電流状態が解消される。
【0066】
以上のように、本実施例によれば、タイマー38の整定時間を超過して逆変換器12の出力電流が制限値から解消されない場合には、タイマー38からの指令により直流送電システム自体を停止させ、事故状況を解消できる制御装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0067】
1…送電側の交流系統、2…受電側の交流系統、2a,2b,2c,2d…遮断器、2e,2f…送電線、2g,2h…保護リレー、3,4…発電機、5…遮断器、6,10…交流母線、7,11…変換器用変圧器、8…順変換器、12…逆変換器、9,13…直流コンデンサ、14a,14b…直流線路、15…電圧検出器、16…電流検出器、20…送電端交直変換器の制御装置、21…直流電圧制御回路、22…交流電圧制御回路、23…無効電力制御回路、24…選択回路、25…変換器出力制御回路、30…受電端交直変換器の制御装置、31…交流電圧制御回路、32…位相・周波数演算回路、33…電流制限回路、34…変換器出力制御回路、35…電圧実効値検出回路、36…無効電力検出回路、37…電流検出回路、38…タイマー、31a,31d…比較器、31b…乗算器、31c,31f,31h,31i…加算器、31e…誤差増幅回路、31g…出力リミッタ、32a…位相差検出回路、32b…誤差増幅回路、32c…係数乗算器、32d,32e…加算器、32f…積分回路、33a,33b…比較器、33c,33d…誤差増幅器、33e,33f…出力リミッタ、34a…dq軸→三相変換回路、34b…搬送波生成回路、34c…PWM制御回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を直流電力に変換する順変換器と、直流電力を交流電力に変換する逆変換器を備える直流送電システムにおいて、
前記順変換器は、直流電圧を一定に維持するように融通電力を制御する制御装置を有し、
前記逆変換器は、逆変換器側交流系統に他の電源装置や直流送電システムの逆変換器の有無に関わらず、これらがない場合には交流系統の交流電圧と周波数を指令値に追従させるよう自立的に出力制御を行い、他の電源装置等が存在する場合にはこれらの出力する交流電圧と同期を取りつつ交流電圧と周波数を調整する制御装置を有し、
この逆変換器に設けられた制御装置は、逆変換器側交流系統に対する過電流を防止するための出力電流を制限する手段を備えていることを特徴とする直流送電システム。
【請求項2】
前記逆変換器の制御装置が、
逆変換器の無効電力出力を検出する回路と、
無効電力出力の指令値と前記検出された無効電力出力の差分を演算する回路と、
前記差分にスロープゲインを乗じる回路と、
この回路の出力を交流電圧指令値と加算することにより逆変換器の無効電力出力に応じて緩やかに出力電圧が変化する指令値を生成し、その指令値と、交流電圧を検出した値を比較し、その誤差分を演算する回路と、
その演算結果と前記指令値を加算する回路とを有し、
これらの回路により、前記逆変換器が出力すべき内部電圧の指令値を生成し、この指令値に応じて座標変換およびPWM制御を行って逆変換器の出力電圧を制御することを特徴とする請求項1に記載の直流送電システム。
【請求項3】
前記逆変換器の制御装置が、
逆変換器側交流系統の交流電圧瞬時値を検出する回路と、
前記交流電圧瞬時値と自身の演算した同期信号との位相差を検出する回路と、
前記位相差を比例ゲインで誤差増幅する回路と、
有効電力指令値に係数を乗じた値と周波数指令値とを加算した値を新たな周波数指令値とし、この周波数指令値と前記誤差増幅した回路の出力値を加算したものを実際に変換装置が出力する周波数として、これを積分することにより出力電圧位相の指令値である同期信号を生成する回路とを備え、
これらの回路により生成した同期信号を利用して、座標変換およびPWM制御を行って逆変換器の出力周波数を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直流送電システム。
【請求項4】
前記逆変換器の制御装置が、逆変換器の交流出力電流を検出する回路と、前記出力電流をd軸とq軸に座標変換する回路を有し、
前記出力電流を制限する手段が、前記d軸とq軸の座標軸上で出力電流の上限値と比較する回路と、上限値を超過した分を誤差増幅する回路と、この誤差増幅した値を前記交流電圧を制御する回路の出力に加算して、過電流が発生する場合には交流出力電圧を低減させるものであることを特徴とすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の直流送電システム。
【請求項5】
前記逆変換器側の制御装置は、逆変換器側の交流系統内で事故が発生したことを検出する事故検出手段と、前記事故検出手段が事故を検出した場合に一定の時間経過しても事故状態から復旧しない場合には逆変換器を停止させるタイマーを備えたことを特徴とする請求項4に記載の直流送電システム。
【請求項1】
交流電力を直流電力に変換する順変換器と、直流電力を交流電力に変換する逆変換器を備える直流送電システムにおいて、
前記順変換器は、直流電圧を一定に維持するように融通電力を制御する制御装置を有し、
前記逆変換器は、逆変換器側交流系統に他の電源装置や直流送電システムの逆変換器の有無に関わらず、これらがない場合には交流系統の交流電圧と周波数を指令値に追従させるよう自立的に出力制御を行い、他の電源装置等が存在する場合にはこれらの出力する交流電圧と同期を取りつつ交流電圧と周波数を調整する制御装置を有し、
この逆変換器に設けられた制御装置は、逆変換器側交流系統に対する過電流を防止するための出力電流を制限する手段を備えていることを特徴とする直流送電システム。
【請求項2】
前記逆変換器の制御装置が、
逆変換器の無効電力出力を検出する回路と、
無効電力出力の指令値と前記検出された無効電力出力の差分を演算する回路と、
前記差分にスロープゲインを乗じる回路と、
この回路の出力を交流電圧指令値と加算することにより逆変換器の無効電力出力に応じて緩やかに出力電圧が変化する指令値を生成し、その指令値と、交流電圧を検出した値を比較し、その誤差分を演算する回路と、
その演算結果と前記指令値を加算する回路とを有し、
これらの回路により、前記逆変換器が出力すべき内部電圧の指令値を生成し、この指令値に応じて座標変換およびPWM制御を行って逆変換器の出力電圧を制御することを特徴とする請求項1に記載の直流送電システム。
【請求項3】
前記逆変換器の制御装置が、
逆変換器側交流系統の交流電圧瞬時値を検出する回路と、
前記交流電圧瞬時値と自身の演算した同期信号との位相差を検出する回路と、
前記位相差を比例ゲインで誤差増幅する回路と、
有効電力指令値に係数を乗じた値と周波数指令値とを加算した値を新たな周波数指令値とし、この周波数指令値と前記誤差増幅した回路の出力値を加算したものを実際に変換装置が出力する周波数として、これを積分することにより出力電圧位相の指令値である同期信号を生成する回路とを備え、
これらの回路により生成した同期信号を利用して、座標変換およびPWM制御を行って逆変換器の出力周波数を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直流送電システム。
【請求項4】
前記逆変換器の制御装置が、逆変換器の交流出力電流を検出する回路と、前記出力電流をd軸とq軸に座標変換する回路を有し、
前記出力電流を制限する手段が、前記d軸とq軸の座標軸上で出力電流の上限値と比較する回路と、上限値を超過した分を誤差増幅する回路と、この誤差増幅した値を前記交流電圧を制御する回路の出力に加算して、過電流が発生する場合には交流出力電圧を低減させるものであることを特徴とすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の直流送電システム。
【請求項5】
前記逆変換器側の制御装置は、逆変換器側の交流系統内で事故が発生したことを検出する事故検出手段と、前記事故検出手段が事故を検出した場合に一定の時間経過しても事故状態から復旧しない場合には逆変換器を停止させるタイマーを備えたことを特徴とする請求項4に記載の直流送電システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−161163(P2012−161163A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19122(P2011−19122)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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