説明

相互固定接続の対象である少なくとも二つの構成部品を着脱自在に仮固定する方法

相互固定接続の対象である少なくとも二つの構成部品、特に車両ボディの相互固定接続の対象である少なくとも二つのボディ部品を着脱自在に仮固定するための、
‐少なくとも一つの突出した第1形状係合要素を具備した第1構成部品を準備する工程、
‐前記第1構成部品の前記第1形状係合要素と協働する少なくとも一つの第2形状係合要素を有する第2構成部品を準備する工程、
‐前記各形状係合要素が互いにかみ合うことにより、前記両構成部品が少なくとも一つの方向には互いに対して相対的に保持し合うように、前記両構成部品をつなぎ合わせることによって、前記両構成部品を着脱自在に仮固定する工程
からなる方法。
前記少なくとも一つの第1形状係合要素は、第1構成部品の製造後に初めて前記第1構成部品に接続される、前記第1構成部品とは異なる別体の部品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念(所謂おいて部分、プリアンブル部分)に記載の、相互固定接続の対象である少なくとも二つの構成部品を着脱自在に仮固定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような方法は、未公開の先行出願である特許文献1から知られている。
車両ボディの大量生産では、多数の個別ボディ部品の組立てが広範にわたり全自動化方式で行われるようになっている。接合工程では先ず、クランピングやピックアップなどのための複雑でコスト高なハンドリング技術を利用して、二つまたはそれ以上の車体部品の互いに対する相対的な位置決めを行い、続いて例えば溶接、クリンチその他の接合方案により相互接続を行っている。
【0003】
車両ボディの優れた寸法精度を保証するためには、接続に先立ち、接合対象である各ボディ部品の互いに対する相対的な位置決めを可能な限り正確に行うことが肝要である。従来の製造設備では、最初に機械的なクランプ装置を使用して、接合対象である各ボディ部品の、設備または別の構成部品に対する位置決めが行われる。続いて接合対象である各部品の接合、例えば相互溶接が行われる。接合対象である各ボディ部品のこの位置決め方法は、長年にわたり定評を博していることからも、「標準手法」と呼ぶことができる。そこでは車両ボディの寸法精度が、一方では、接合対象である各ボディ部品の「設備」に対する位置決めが可能な限り正確に行われるかにかかっており、他方では、この「設備」(例えばクランプ装置)が、これに対する位置決めが行われた接合対象であるボディ部品を、いかに正確に接合位置に持っていけるかにかかっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】DE 10 2008 038 747.9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、簡単に実施可能であるとともに、着脱自在に仮固定された各構成部品の後続の接合工程における簡単かつ正確な位置合わせを可能とする、相互固定接続の対象である少なくとも二つの構成部品を着脱自在に仮固定する方法を提示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の特徴構成により解決される。本発明の有利な構成形態および展開構成例は、従属請求項から読み取ることができる。
本発明が出発点とするのは、相互固定接続の対象である少なくとも二つの構成部品、特に車両ボディの相互固定接続の対象である二つのボディ部品を固定する方法、特に着脱自在に仮固定する方法、または、アタッチメント部品または艤装(内装)部品をボディ部品に固定する方法である。これらの構成部品は、形状同士の係合に利用される突出した形状係合要素(形状拘束要素)を具備した第1構成部品、および、この第1構成部品の形状係合要素と協働する第2形状係合要素を有する第2構成部品である。
【0007】
それぞれの係合要素が互いにかみ合うことにより、両構成部品が少なくとも一つの方向には互いに対して相対的に保持し合うように、両構成部品をつなぎ合わせることによって、両構成部品が固定される、もしくは着脱自在に仮固定されるようにしている。
【0008】
「仮固定」とは、この関連では、それぞれの構成部品が永久的に相互固定接続されるのではなく、問題なく互いから切り離すことができることを意味している。両構成部品は、他方の形状係合要素の中にはまり込んでこれを把持する複数の形状係合要素によって、一つ、二つ、または三つの空間方向に不動であるように、またはある程度の遊びを持たせて、互いに対して相対的に固定されるようにするとよい。特に両構成部品が、両者の形状係合要素によって、一つの方向には互いに対して相対的に変位可能であり、その他の方向には不動であるように、または所定の遊びを除いて殆ど不動であるように、相互に連結されるようにするとよい。
【0009】
本発明の基本的な考え方は、少なくとも一つの第1形状係合要素が、第1部品の製造時または製造後に初めて第1製造部品と接続される、第1構成要素とは異なる別体の部品である点に見出すことができる。
【0010】
それぞれの形状係合要素の付き合わせと、はめ合わせによる相互把持を容易にすると同時に、各形状係合要素の引っ掛かりのない互いに対する相対運動を可能にするために、第1形状係合要素の全体または一部が、第1形状係合要素の取付け地点における第1構成部品の表面に対する垂線に関して回転対称形であると有利である。第1形状係合要素について、基本的に検討される幾何形状は、例えば円筒形、円錐台形、または円錐形である。
【0011】
しかしながら第1形状係合要素については、全体または一部がボールの形状を有するか、もしくは、全体または一部がボールに似た形状を有するものが考慮の対象となることが好ましい。ボールに似ているとは、例えば凸状に、好適には垂線の向きに関して回転対称形に膨出していることを意味するとよい。そのような「円形の、または膨出した、または凸状の幾何形状」により、各形状係合要素の互いの中へのはめ込みが楽になる。そのような幾何形状により、両構成部品の互いに対する相対的な位置合わせを行う際には、形状係合要素の引っ掛かりが回避されることになる。
【0012】
本発明のさらにもう一つの展開構成例によれば、第1形状係合要素が、少なくとも一つの領域において、第1構成部品に向かって「先細り」するように構成されているが、それにより、両構成部品をつなぎ合わせる際には、一種の「アンダーカット部」が作成されることになる。これは特に、第1構成部品に接続される形状係合要素が円錐形である場合についていえる。
【0013】
第1形状係合要素は、第1構成部品と、例えばボルト締結、リベット締結、接着またはその他の方法により接続されるとよい。ほかにも検討されるのは特に、第1形状係合要素と第1構成部品との材料同士の融合による接続(密着)である。第1形状係合要素および第1構成部品は、いずれも金属製であるとよい。この場合は第1形状係合要素を第1構成部品上に簡単に溶接することができる。
【0014】
本発明のさらに別の展開構成例によれば、第2形状係合要素が、第2構成部品に設けられた切欠きからなっている。この切欠きは、スロット状に構成されたものであるとよい。この展開構成例にしたがって、両構成部品が着脱自在に仮固定される位置にあるときには、第1形状係合要素が、この第2形状係合要素の少なくとも一つの領域を形状同士の係合により背後から把持するとともに、第2形状係合要素ないしは切欠きに対して相対的に、その長手方向に沿って変位可能であるようにするとよい。
【0015】
本発明のさらにもう一つの展開構成例によれば、第2形状係合要素を形成する切欠きが、第1形状係合要素をこれに差し込んで通すことができるように寸法諸元が決定された第1領域と、この第1領域に直接隣接している、それよりも細長い第2領域とを有するように構成されており、それによって、第1形状係合要素をこの第2領域の中に押し込むことはできるものの、そこから、それに対して垂直な方向には引き出せないようにしている。
以下では、図面との関連で本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1形状係合要素として機能するボールが溶接されている、鋼製またはアルミニウム製の薄板である第1構成部品を示す図である。
【図2】図1に示されるボールが溶接された第1構成部品と第2構成部品との構成部品接続部の上面図である。
【図3】第2形状係合要素が鍋型に構成された実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1には、薄板である第1構成部品1が示されるが、この薄板は、例えば鋼製またはアルミニウム製であるとよい。この第1構成部品1上には、第1形状係合要素として機能するボール2が溶接されている。このボール2は、その下側の領域のところで、一つの溶接シーム3を介して第1構成部品に接続されている。
【0018】
一点鎖線で示される対称軸10は、「接地点」における、すなわち、ボール2が薄板1に接続される「点」ないしは箇所における、薄板1の表面に対する垂線に関して、この第1「形状係合要素」1が回転対称形であることを示唆している。
【0019】
図2には、図1に示されるボール2が溶接された第1構成部品1と、第2構成部品4とからなる、構成部品接続部が上面図で示されている。この第2構成部品4も同様に薄板であるとよい。
【0020】
この第2構成部品4には、第1領域5aと、ここでは第1構成部品1上に溶接されたボール2により部分的に覆い隠されている第2領域5bとを有する、鍵穴状の切欠き5が設けられている。
【0021】
両構成部品1、4を接合する前には先ず、第1構成部品1上に溶接されたボール2が、第2構成部品4に設けられた鍵穴状の切欠き5の第1領域5aに通される。続いて両構成部品1、4が互いに対して相対的に変位されることによって、ボール2は図2に示される位置に到達する。この図2に示される位置において、ボール2は、鍵穴状の切欠き5を領域5bのところで手前側もしくは向こう側から把持している。それにより両構成部品1、4は、この図の平面に対して垂直な方向にも、また方向6にも、互いに対して相対的に固定されることになる。
【0022】
「固定される」とは、この関連では、両構成部品1、4が、図の平面に対して垂直な方向への変位が全く不可能であるか、または、所定の遊びを除いて変位不能である、すなわち「実質的に」位置を固定されることを意味している。
【0023】
これとは逆に両構成部品1、4は、横方向、すなわち両方向矢印7の方向には、互いに対して相対的に変位可能である。したがって両構成部品1、4は、それぞれの「形状係合要素」2、5により着脱自在に仮固定されている。
【0024】
両構成部品1、4を、例えば溶接によって、永久的に相互固定接続する前には、両構成部品1、4の変位方向7へのさらに厳密な互いに対する相対的な位置決めを行うことができる。
構成部品1上に溶接される、ボールの形状を有する形状係合要素は、例えば鍵穴状に構成された切欠きの中に、非常に簡単に、引っ掛かることなく、差し込むことができる。球形であるために、第1形状係合要素は、第1構成部品1に向かって(図1を参照)「先細り」しているが、その結果、ボール2により切欠き5の領域5b(図2を参照)が手前側もしくは向こう側から把持されるだけではなく、それにより両方向矢印6の方向にも、構成部品4に対する構成部品1の「心合わせ」が行われることになる。
【0025】
図3には、第2形状係合要素が、内径がボール2の外径と実質的に等しい、ボール2の上から「被せられる」「鍋」8の形状を有している、実施例が示されている。この鍋状の形状係合要素8は、円形に構成されたものであるとよく、それにより第2構成部品4は、矢印9により示唆される方向を除き、第1構成部品に関してそれ以外のすべての空間方向に仮固定されることになる。
【0026】
あるいはその代わりに、この鍋状の第2形状係合要素をほかにも縦長もしくは楕円形に構成することによって、第2構成部品4を、それ以外にもさらに図の平面に対して垂直な方向にも、第1構成部品に対して相対的に変位可能であるようにしてもよい。
【0027】
本発明により、二つまたはそれ以上の構成部品の互いに対して相対的な仮固定を簡単に行うことができる。「仮固定」とは、この関連では、各構成部品が着脱自在に相互接合される上に、なんと所定の空間方向については、互いに対して変位可能であるように接続され得ることを意味している。そのような仮固定により、各構成部品を永久的に固定接続する前に必要な、各構成部品の厳密な互いに対する相対的位置合わせが劇的に簡素化されることになる。三つ以上の構成部品からなる構成部品複合体については、なんと、そのような構成部品複合体の「最後の構成部品」を付け足すことによって、構成部品複合体の全構成部品の厳密な、または既に十二分に厳密な、互いに対する相対的な位置決めが行われるようにすることも可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1 第1構成部品
2 第1形状係合要素
3 溶接シーム
4 第2構成部品
5 第2形状係合要素
5a 第1領域
5b 第2領域
6 方向
7 方向
8 第2形状係合要素
9 方向
10 対称線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互固定接続の対象である少なくとも二つの構成部品(1,4)、特に車両ボディの相互固定接続の対象である少なくとも二つのボディ部品を固定する、特に着脱自在に仮固定する方法であって、
‐少なくとも一つの突出した第1形状係合要素(2)を具備した第1構成部品(1)を準備する工程、
‐前記第1構成部品(1)の前記第1形状係合要素(2)と協働する少なくとも一つの第2形状係合要素(5,8)を有する第2構成部品(4)を準備する工程、
‐前記第1形状係合要素(2)と前記第2形状係合要素(5,8)が互いにかみ合って、それで前記両構成部品(1,4)が少なくとも一つの方向には互いに対して相対的に保持し合うように、前記両構成部品を互いにつなぎ合わせることによって、前記両構成部品を固定する、特に着脱自在に仮固定する工程
からなる方法において、
前記少なくとも一つの第1形状係合要素(2)が、第1構成部品(1)の製造時または製造後に初めて第1構成部品(1)に接続される、前記第1構成部品(1)とは異なる別体の部品であることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1形状係合要素(2)の全体または一部が、前記第1形状係合要素(2)の取付け点における前記第1構成部品(1)の表面に対する垂線(10)に関して回転対称形であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1形状係合要素(2)が、少なくとも一つの領域にて、前記第1構成部品(1)に向かって先細りしていることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも一つの第1形状係合要素(2)の全体または一部がボールの形状を有するか、もしくは全体または一部がボールに似た形状を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも一つの第1形状係合要素(2)を、前記第1構成部品(1)に、材料同士の融合により接続する工程を特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1構成部品(1)が金属薄板であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第1形状係合要素(2)も同様に金属製であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも一つの第1形状係合要素(2)を前記第1構成部品(1)上に溶接する工程を特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも一つの第2形状係合要素(5)が、前記第2構成部品(4)に設けられた切欠きからなることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記切欠きが、スロット状、特に鍵穴の形状に構成されていることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記両構成部品(1,4)が前記着脱自在な仮固定位置にあるときには、前記第1形状係合要素(2)が前記第2形状係合要素(5)の少なくとも一つの領域(5b)を形状同士の係合により背後から把持することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記切欠きが、前記第1形状係合要素を差し込んで通すことができるように寸法諸元が決定された第1領域(5a)と、前記第1領域(5a)に直接接続している第2領域(5b)とを有しており、前記第1形状係合要素(2)が前記第2領域(5b)内に位置するときに、前記第1形状係合要素(2)が前記第2領域(5b)を形状同士の係合により背後から把持するように、前記第2領域(5b)の寸法諸元が決定されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
着脱自在に仮固定された前記両構成部品(1,4)の互いに対する相対的位置合わせを、所定の基準相対位置に則して厳密に行い、続いて前記両構成部品(1,4)を永久的に相互固定接続する工程を特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−506521(P2012−506521A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532672(P2011−532672)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004746
【国際公開番号】WO2011/029501
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(391009671)バイエリッシェ モートーレン ウエルケ アクチエンゲゼルシャフト (194)
【氏名又は名称原語表記】BAYERISCHE MOTOREN WERKE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】