説明

相変化膜形成用スパッタリングターゲットおよびその製造方法。

【課題】スパッタリング時にパーティクル発生が少ない相変化膜形成用スパッタリングターゲットおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】原子%でGeを20.2〜24.2%、Sbを20.2〜24.2%含有し、残部がTeおよび不可避不純物からなる組成を有しかつ六方晶構造のGeSbTe相が質量%で90%以上占めている組織を有するターゲットであって、このターゲットは前記組成を有するインゴットを熱処理したのち粉砕もしくは前記インゴットを粉砕して得られた合金粉末を熱処理したのち解砕した原料合金粉末を加圧焼結することにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、相変化膜を形成するためのスパッタリングターゲットおよびその製造方法に関するものであり、この相変化膜形成用スパッタリングターゲットはスパッタリングに際してパーティクルの発生が少なく、歩留良くDVD−RAMなどの相変化記録媒体や半導体不揮発メモリー(Phase Change RAM(PCRAM))のための相変化記録膜を作製することができる。
【背景技術】
【0002】
DVD−RAMなどの相変化記録媒体や半導体不揮発メモリー(Phase Change RAM(PCRAM))などには相変化材料が記録膜として用いられており、レーザー光照射による加熱またはジュール熱によって結晶/非晶質間の可逆的な相変化を生じさせ、結晶/非晶質間の反射率または電気抵抗の違いを1と0に対応させることにより不揮発の記憶を実現している。この相変化膜の一つとして、Ge:20.2〜24.2%、Sb:20.2〜24.2%を含有し、残部がTeおよび不可避不純物からなる組成を有する相変化膜が知られており、そしてこの相変化膜はこの相変化膜とほぼ同じ成分組成を有するターゲットを用いてスパッタリングすることにより形成され、このスパッタリングターゲットは、原子%でGeを20.2〜24.2%、Sbを20.2〜24.2%含有し、残部がTeおよび不可避不純物からなる組成を有するように溶解し鋳造して得られた合金インゴットを粉砕することにより原料合金粉末を作製し、得られた原料合金粉末を450℃以上630℃未満の温度でホットプレス法または熱間静水圧プレス法などにより加圧焼結することにより製造している(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平5−311423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
仕込み時の成分組成をGe:20.2〜24.2%、Sb:20.2〜24.2%を含有し、残部がTeおよび不可避不純物からなる組成を有するように溶解し鋳造しても、鋳造後冷却すると、まず液体からGeTeの初晶が析出し、残部の液体の組成はSbリッチにずれる。さらに冷却していくと、GeSbTe相とこれよりもSbリッチなGeSbTe相などが析出してくる。したがって、通常の方法で溶解し鋳造することにより作製したインゴットは素地中に組成の異なる複数の相が存在し、この素地中に組成の異なる複数の相が存在するインゴットを粉砕して作製した従来の原料合金粉末は素地中に組成の異なる複数の相が存在することとなり、この素地中に組成の異なる複数の相を含む従来の原料合金粉末を真空ホットプレスや熱間静水圧プレスなどの手法により加圧焼結を行って作製したターゲットの素地中にも焼結中にある程度反応してGeSbTe相以外の相は減少するものの複数の異なる相が存在することとなる。
前記複数の異なる相はそれぞれ電気伝導率が異なるところから、この素地中に電気伝導率が異なる複数の異なる相が存在するターゲットを用いてスパッタリングを行うと異常放電の原因となる。さらに、スパッタリング中にターゲットの表面近傍はプラズマ加熱により数百℃に加熱されるため、放電中にターゲット組織内で組成の異なる相間の反応が生じ、これが異常放電やパーティクル発生の原因となる。

この発明は、パーティクル発生の少ないターゲットおよびその製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく研究を行なった。その結果、
(イ)通常のGe:20.2〜24.2%、Sb:20.2〜24.2%を含有し、残部がTeおよび不可避不純物からなる組成を有するように溶解し鋳造して得られた合金インゴットを、真空または不活性ガス雰囲気中、温度:320〜600℃で熱処理すると、主相であるGeSbTe相と異なるGeTe相およびGeSbTe相など複数の異なる相が減少して六方晶構造を有するGeSbTe相の単相組織となり、この熱処理した合金インゴットを粉砕して得られた原料合金粉末は、GeTe相およびGeSbTe相などの相がほぼ消滅して六方晶構造のGeSbTe相が大部分を占める単相組織となり、この原料合金粉末を450℃以上630℃未満の温度で真空ホットプレス法または熱間静水圧プレス法などの加圧焼結を施して得られたターゲットはX線回折による定量分析において六方晶構造のGeSbTe相が質量%で90%以上を占め、このターゲットを用いてスパッタリングを行なうと、スパッタリングに際してパーティクル発生が極めて少なくなる、
(ロ)原子%でGe:20.2〜24.2%、Sb:20.2〜24.2%を含有し、残部がTeおよび不可避不純物からなる組成を有するように溶解し鋳造して得られた合金インゴットを粉砕して合金粉末を作製し、得られた合金粉末を真空または不活性ガス雰囲気中、温度:320〜600℃で熱処理し、この熱処理した合金粉末を再粉砕することにより得られた原料合金粉末は、GeTe相およびGeSbTe相などの相がほぼ消滅して六方晶構造のGeSbTe相が大部分を占めてほぼ単相組織となり、この原料合金粉末を450℃以上630℃未満の温度で真空ホットプレス法または熱間静水圧プレス法などの加圧焼結を施して得られたターゲットは15%以内の従来粉末を含んでもGeSbTe相は焼成中に反応して消滅するので、X線回折による定量分析において六方晶構造のGeSbTe相が質量%で90%以上を占めるようになり、このターゲットを用いてスパッタリングを行なうと、スパッタリングに際してパーティクル発生が極めて少なくなる、
(ハ)前記(イ)または(ロ)で得られた原料合金粉末に対して、原子%でGe:20.2〜24.2%、Sb:20.2〜24.2%を含有し、残部がTeおよび不可避不純物からなる組成を有するように溶解し鋳造して得られた合金インゴットを粉砕して得られた熱処理することのない従来の原料合金粉末を15質量%以下添加し混合して得られた混合原料粉末を450℃以上630℃未満の温度でホットプレス法または熱間静水圧プレス法などの加圧焼結を施すことにより得られたターゲットは、15%以内での従来粉末を含んでもGeSbTe相以外の相は焼結中に反応して消滅するのでX線回折による定量分析において六方晶構造のGeSbTe相が質量%で90%以上占めるようになり、さらに密度が一層向上して機械的強度が向上し、スパッタリングに際して発生するパーティクル数は少なくて実用上問題となることはない、などの研究結果が得られたのである。
【0005】
この発明は、かかる研究結果に基づいて成されたものであって、

(1)原子%でGeを20.2〜24.2%、Sbを20.2〜24.2%含有し、残部がTeおよび不可避不純物からなる組成を有し、かつX線回折による定量分析において六方晶構造のGeSbTe相が質量%で90%以上占めている組織を有するパーティクル発生の少ない相変化膜形成用スパッタリングターゲット、
(2)原子%でGeを20.2〜24.2%、Sbを20.2〜24.2%含有し、残部がTeおよび不可避不純物からなる組成を有するように溶解し鋳造して得られた合金インゴットを真空または不活性ガス雰囲気中、温度:320〜600℃で熱処理し、この熱処理した合金インゴットを粉砕することにより得られた原料合金粉末を加圧焼結するパーティクル発生の少ない相変化膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法、
(3)原子%でGe:20.2〜24.2%、Sb:20.2〜24.2%を含有し、残部がTeおよび不可避不純物からなる組成を有するように溶解し鋳造して得られた合金インゴットを粉砕して合金粉末を作製し、得られた合金粉末を真空または不活性ガス雰囲気中、温度:320〜600℃で熱処理し、この熱処理した合金粉末を解砕することにより得られた原料合金粉末を加圧焼結するパーティクル発生の少ない相変化膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法、
(4)前記(2)で得られた原料合金粉末に対して、原子%でGe:20.2〜24.2%、Sb:20.2〜24.2%を含有し、残部がTeおよび不可避不純物からなる組成を有するように溶解し鋳造して得られた合金インゴットを粉砕して得られた熱処理することのない従来の原料合金粉末を15質量%以下添加し混合して得られた混合原料粉末を加圧焼結するパーティクル発生の少ない相変化膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法、
(5)前記(3)で得られた原料合金粉末に対して、原子%でGe:20.2〜24.2%、Sb:20.2〜24.2%を含有し、残部がTeおよび不可避不純物からなる組成を有するように溶解し鋳造して得られた合金インゴットを粉砕して得られた従来の原料合金粉末を15質量%以下添加し混合して得られた混合原料粉末を加圧焼結するパーティクル発生の少ない相変化膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法、に特徴を有するものである。
【0006】
この発明の原料合金粉末の製造方法において、熱処理温度を320〜600℃に限定した理由は、320℃未満では十分な元素拡散作用が起らないために組織の均一化および単相化が起らないので好ましくなく、一方、600℃を越えて加熱すると、低融点のSbリッチ相が溶融する可能性が有り、溶融すると、冷却時にさらに相分離が生じるため、固相拡散による均一化の目的を達成しなくなるので好ましくないからである。熱処理温度の一層好ましい範囲は450〜590℃である。この熱処理において前記温度を保持する時間は長いほど好ましく、2時間以上保持することが好ましいが、5時間以上保持することが一層好ましい。また、熱処理雰囲気は各成分の酸化を防ぐため、アルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気または真空中で行うことが必要である。
【0007】
かかる方法で作製した原料合金粉末を加圧焼結するには真空ホットプレス法または熱間静水圧プレス法を用いることが好ましく、その温度を450℃以上630℃未満に限定した理由は、450℃未満では十分な焼結が起らないので好ましくなく、一方、630℃を越えて加熱すると、主相となるGeSbTe相が溶融してしまうので好ましくないからである。焼結温度の一層好ましい範囲は550〜620℃である。この真空ホットプレス法または熱間静水圧プレス法において前記温度を保持する時間は長いほど好ましく、30分以上保持することが好ましいが、1時間以上保持することが一層好ましい。また、真空ホットプレス法または熱間静水圧プレス法で加圧する圧力は15MPa以上あることが必要であり、20MPa以上あることが一層好ましい。
この発明の原料合金粉末は、少量の熱処理することのない従来の原料合金粉末を添加して混合原料粉末を作製し、この混合原料粉末を真空ホットプレスまたは熱間静水圧プレスしてもパーティクル発生の少ないターゲットを製造することができる。しかし、従来の熱処理することのない原料合金粉末の添加量は15質量%を越えた混合原料粉末を使用して作製したターゲットはスパッタリング中に発生するパーティクルの量が多くなるので好ましくない。したがって、この発明の混合原料粉末に含まれる従来の原料合金粉末は15質量%以下に定めた。
なお、Ge:20.2〜24.2%、Sb:20.2〜24.2%を含有し、残部がTeおよび不可避不純物からなる組成は、相変化膜および相変化膜を作製するためのスパッタリングターゲットの組成として一般に知られている組成であるから、その限定理由の説明は省略する。
【発明の効果】
【0008】
この発明の方法で作製したスパッタリングターゲットは、パーティクルの発生が少なく、歩留良く相変化膜を作製することができ、光記録ディスク産業および新しい半導体メモリー産業の発展に大いに貢献し得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施例1〜8および比較例1〜3
単体原料であるGe、Sb、TeをGe:22.2原子%、Sb:22.2原子%を含有し、残部がTeとなるように秤量し、Arガス雰囲気中、温度:800℃で溶解し、得られた溶湯を鋳造して合金インゴットを作製し、この合金インゴットをAr雰囲気中、表1に示される温度で表1に示される時間保持することにより熱処理し、この熱処理した合金インゴットを粉砕することにより原料合金粉末を作製した。この実施例1で作製した原料合金粉末をX線回折したところ、図1(a)に見られるように、ほぼGeSbTe相の安定相(六方晶構造)のピーク(図1ではGeSbTe相のピークをGST225として示している)のみが観察されている。

この実施例1〜8および比較例1〜3で作製した原料合金粉末を真空ホットプレス法により表1に示される圧力、温度および時間保持することにより焼結体を得た。この焼結体を機械加工して直径:152.4mm、厚さ:6mmの寸法を有する円盤状のターゲットを作製した。また、ターゲットを切り出したのち、残った焼結体を切断してX線回折測定用のサンプルを採取し、これを平均粒径が5〜20μmの範囲に入るように粉砕して粉末化した。得られたサンプル粉末を下記の条件でX線回折による定量分析を行ったところ、六方晶構造のGeSbTe相が実施例1〜8のサンプルでは質量%で90%以上を、比較例1〜3のサンプルでは90%未満を占めていることがわかった。
【0010】
X線回折による定量分析方法:
X線回折測定にはブルカーAXS社製MXP18VAHFを用い、Bragg Brentano集中法光学系による2θ/θ走査測定を行った。測定条件は以下の通りである。
ターゲット:Cu
特性X線種類:Kα線(カウンターモノクロメータにより単色化)
管電圧40kV,管電流300mA、
走査方法:ステップスキャン、
2θステップ=0.02度、
取り込み時間:10秒/step、
予備測定から、従来製法のターゲットは焼結後には、ほぼGeSbTe相、GeSbTe相の2成分から構成されると考えられたため、この2相のみがターゲット内に存在するとして、2成分定量によりGeSbTe相の質量%濃度を求めた。以下に、その方法を記す。
まず、それぞれGeSbTe相、GeSbTe相単独からなる粉末を、質量比で0:100、25:75、50:50、75:25、100:0の割合で秤量・混合した4つの標準試料を用意した。なお、標準試料に用いたGeSbTe単独粉およびGeSbTe単独粉は以下のようにして作製した。Ge,SbおよびTe単体原料をGe:Sb:Teの原子比それぞれ2:2:5、1:2:4となるように秤量して混合し、これをAr雰囲気中、温度:800℃で溶解し、得られた溶湯を鋳造して合金インゴットとし、これをGeSbTeの場合は580℃、GeSbTeの場合は560℃にて48時間熱処理を行なった。この合金インゴットを粉砕し、さらに均一化を図るため、これらの粉末を、GeSbTeの場合は580℃、GeSbTeの場合は560℃、保持時間:10時間の条件にて真空ホットプレスにより焼結を行なった。この焼結体を再度粉砕して、平均粒径が5〜20μmの範囲にある粉末とした。これら粉末をX線回折にて測定したところ、それぞれGeSbTe相およびGeSbTe相のみが検出されたため、これらを標準試料用粉末とした。
次に各標準試料のGeSbTe相の(004)ピーク、GeSbTe相(009)ピークを測定して、その積分強度を求めた。なお、各ピークの測定範囲は以下の通りである。
GeSbTe相(004)ピーク:2θ=20.0°〜21.2°

GeSbTe相(009)ピーク:2θ=18.8°〜20.0°
積分強度は、スムージング、バックグラウンド除去の後、ピーク分離を行なって求めた。以下の解析、濃度計算に使用したソフトウェアはMaterials DaTa,Inc.(MDI)製「JADE6.0」、およびMicrosoft Excelである。
スムージングはSavitzky−Golay法により行なった。JADE6.0における設定時には、フィルタには通常放物線フィルタを使用し、ポイント数は9ポイントを指定した。バックグラウンド除去では、JADE6.0において、バックグラウンドを近似する関数は3次元多項式、バックグラウンドとして指定するポイント数は少ないほうから2番目の値、バックグラウンドから大きく外れた指定点を除外するためのしきい値は3、設定点からどの程度はなれた位置にバックグラウンドを引くか、にはσ=0.2を設定した。
JADE6.0によるピーク分離は以下の条件設定で実施した。
フィッティング関数:PearsonVII
Kα2線有無:有り
非対称性有無:無し
初期半値幅:0.15度
初期ピーク位置:ピークサーチ結果を利用
バックグラウンド処理:リニア
上記測定により得られたこれら組成既知の標準試料の測定結果から積分強度を縦軸に、質量%濃度を横軸にしてプロットし、検量線を作成した。
次に、実施例1〜8および比較例1〜3で作製した粉末サンプルについてGeSbTe相(004)ピーク、GeSbTe相(009)ピークを同様に測定してその積分強度を求め、上で作製した検量線を用いて各相の質量%濃度を計算した。
なお、以上のX線測定は、標準試料、ターゲット粉末サンプルとも同じ試料にて1度測定した後、粉末を試料ホルダーから取り出して、再度試料ホルダーにつめて再測定するという作業を3回繰り返し、測定値としては3回の平均値を用いた。このようにして得られたGeSbTe相とGeSbTe相の質量濃度測定結果の合計が100%にならない場合は、合計が100%になるように規格化して、つまり各相の質量濃度={各相の質量濃度測定結果/各相の質量濃度測定結果の合計}×100と計算しなおして、その相の質量濃度とした。
実施例1〜8および比較例1〜3で作製したターゲットを銅製バッキングプレートに接合し、スパッタ装置に装着し、
到達真空度:5×10-5Pa、
スパッタ電力:120W、
スパッタガス(Arガス)圧力:1.0Pa、
ターゲットと基板の間の距離:70mm、
基板加熱:なし、
の条件でターゲット表面の加工層を除去するために1時間のプレスパッタリングを行い、その後、一旦チャンバーを大気開放し、防着板などのチャンバー内部の部材をクリーニングし、再び所定の真空度まで真空引きを行った。さらに上と同じ条件で1時間のプレスパッタリングを行い、ターゲット表面の大気から吸着成分や酸化層を除去したのち25枚の6インチSiウエーハ上に厚さ:100nmの相変化膜を成膜した。この成膜したウエーハについて市販の異物検査装置によりウエーハ表面に付着している0.2μm以上のパーティクル数を計測し、ウエーハ25枚の平均パーティクル数を表1に示した。
【0011】
従来例1
単体原料であるGe、Sb、TeをGe:22.2原子%、Sb:22.2原子%を含有し、残部がTeとなるように秤量し、Arガス雰囲気中、温度:800℃で溶解し、得られた溶湯を鋳造して合金インゴットを作製し、この合金インゴットを粉砕することにより合金粉末を作製した。この従来例で作製した原料合金粉末をX線回折したところ、図1(b)に見られるように、GeSbTe相の安定相(六方晶構造)のピーク以外に非GeSbTe相のピークが観察されている(図1ではGeSbTe相のピークをGST225、それ以外のピークをNon−GST225として示している)。
この合金粉末を真空ホットプレス法により表1に示される圧力、温度および時間保持することにより焼結体を得た。この焼結体を機械加工して直径:152.4mm、厚さ:6mmの寸法を有する円盤状のターゲットを作製した。また、ターゲットを切り出したのち、残った焼結体を切断してX線回折測定用のサンプルを採取し、これを平均粒径が5〜20μmの範囲に入るように粉砕して粉末化した。このサンプル粉末を同様にX線回折による定量分析を行ったところ、六方晶構造のGeSbTe相が質量%で90%未満占めていることがわかった。
このターゲットを銅製バッキングプレートに接合し、スパッタ装置に装着し、
到達真空度:5×10-5Pa、
スパッタ電力:120W、
スパッタガス(Arガス)圧力:1.0Pa、
ターゲットと基板の間の距離:70mm、
基板加熱:なし、
の条件でターゲット表面の加工層を除去するために1時間のプレスパッタリングを行い、その後、一旦チャンバーを大気開放し、防着板などのチャンバー内部の部材をクリーニングし、再び所定の真空度まで真空引きを行ったのち、さらに上と同じ条件で1時間のプレスパッタリングを行い、ターゲット表面の大気から吸着成分や酸化層を除去したのち25枚の6インチSiウエーハ上に厚さ:100nmの相変化膜を成膜した。この成膜したウエーハについて市販の異物検査装置によりウエーハ表面に付着している0.2μm以上のパーティクル数を計測し、ウエーハ25枚の平均パーティクル数を表1に示した。
【0012】
【表1】

【0013】
実施例9〜16および比較例4〜6
単体原料であるGe、Sb、TeをGe:22.2原子%、Sb:22.2原子%を含有し、残部がTeとなるように秤量し、Arガス雰囲気中、温度:800℃で溶解し、得られた溶湯を鋳造して合金インゴットを作製し、この合金インゴットをAr雰囲気中で粉砕することにより粉砕合金粉末を作製し、得られた粉砕合金粉末を表2に示される温度で表2に示される時間保持することにより熱処理し、この熱処理した合金粉末を解砕することにより原料合金粉末を作製した。
この実施例9〜16および比較例4〜6で作製した原料合金粉末を真空ホットプレス法により表2に示される圧力、温度および時間保持することにより焼結体を得た。この焼結体を機械加工して直径:152.4mm、厚さ:6mmの寸法を有する円盤状のターゲットを作製した。また、ターゲットを切り出したのち、残った焼結体を切断してX線回折測定用のサンプルを採取し、これを平均粒径が5〜20μmの範囲に入るように粉砕して粉末化した。このサンプル粉末を実施例1〜8および比較例1〜3に示されるX線回折により定量分析したところ、六方晶構造のGeSbTe相が実施例9〜16では質量%で90%以上、比較例4〜6では90%未満を占めていることがわかった。
これらターゲットを銅製バッキングプレートに接合し、スパッタ装置に装着し、実施例1〜8および比較例1〜3と同じ条件でターゲット表面の加工層を除去するために10時間のプレスパッタリングを行い、その後、一旦チャンバーを大気開放し、防着板などのチャンバー内部の部材をクリーニングし、再び所定の真空度まで真空引きを行った。さらに実施例1〜8および比較例1〜3と同じ条件で1時間のプレスパッタリングを行い、ターゲット表面の大気から吸着成分や酸化層を除去したのち25枚の6インチSiウエーハ上に厚さ:100nmの相変化膜を成膜した。この成膜したウエーハについて市販の異物検査装置によりウエーハ表面に付着している0.2μm以上のパーティクル数を計測し、ウエーハ25枚の平均パーティクル数を表2に示した。
【0014】
【表2】

【0015】
実施例17〜20および比較例7
表1の実施例3で得られた原料合金粉末に対して従来例で得られた原料合金粉末を表3に示される割合となるように混合して混合原料粉末を作製し、これら混合原料粉末を真空ホットプレス法により表3に示される圧力、温度および時間保持することにより焼結体を得た。この焼結体を機械加工して直径:152.4mm、厚さ:6mmの寸法を有する円盤状のターゲットを作製した。また、ターゲットを切り出したのち、残った焼結体を切断してX線回折測定用のサンプルを採取し、これを平均粒径が5〜20μmの範囲に入るように粉砕して粉末化した。このサンプル粉末を実施例1〜8および比較例1〜3に示されるX線回折により定量分析したところ、六方晶構造のGeSbTe相が実施例17〜20では質量%で90%以上、比較例7では90%未満占めていることがわかった。
これらターゲットを銅製バッキングプレートに接合し、スパッタ装置に装着し、実施例1〜8および比較例1〜3と同じ条件でターゲット表面の加工層を除去するために5時間のプレスパッタリングを行い、その後、一旦チャンバーを大気開放し、防着板などのチャンバー内部の部材をクリーニングし、再び所定の真空度まで真空引きを行った。さらに実施例1〜8および比較例1〜3と同じ条件で1時間のプレスパッタリングを行い、ターゲット表面の大気から吸着成分や酸化層を除去したのち25枚の6インチSiウエーハ上に厚さ:100nmの相変化膜を成膜した。この成膜したウエーハについて市販の異物検査装置によりウエーハ表面に付着している0.2μm以上のパーティクル数を計測し、ウエーハ25枚の平均パーティクル数を表3に示した。
【0016】
【表3】

【0017】
表1〜2に示される結果から、実施例1〜16で作製した原料合金粉末を用いて作製したターゲットは、表1の従来例で作製した原料合金粉末を用いて作製したターゲットと比較して、スパッタリングに際してパーティクルの発生が少ないことがわかる。また、表3に示される結果から、実施例1で作製した原料合金粉末に対して従来例で作製した原料合金粉末を15質量%まで添加した実施例17〜20で作製した原料合金粉末を用いて作製したターゲットは密度が向上しかつパーティクルの発生が少ないことから従来の原料合金粉末を15質量%まで添加することが実用上可能であることが分かる。しかし、表1〜3の比較例1〜7に見られるようにこの発明の範囲を外れると好ましくない特性が現れることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】原料合金粉末をX線回折して得られたグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子%でGeを20.2〜24.2%、Sbを20.2〜24.2%含有し、残部がTeおよび不可避不純物からなる組成を有し、かつX線回折による定量分析において六方晶構造のGeSbTe相が質量%で90%以上占めている組織を有することを特徴とする相変化膜形成用スパッタリングターゲット。
【請求項2】
原子%でGeを20.2〜24.2%、Sbを20.2〜24.2%含有し、残部がTeおよび不可避不純物からなる組成を有するように溶解し鋳造して得られた合金インゴットを真空または不活性ガス雰囲気中、温度:320〜600℃で熱処理し、この熱処理した合金インゴットを粉砕することにより得られた原料合金粉末を加圧焼結することを特徴とするパーティクル発生の少ない相変化膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項3】
原子%でGe:20.2〜24.2%、Sb:20.2〜24.2%を含有し、残部がTeおよび不可避不純物からなる組成を有するように溶解し鋳造して得られた合金インゴットを粉砕して合金粉末を作製し、得られた合金粉末を真空または不活性ガス雰囲気中、温度:320〜600℃で熱処理し、この熱処理した合金粉末を解砕することにより得られた原料合金粉末を加圧焼結することを特徴とするパーティクル発生の少ない相変化膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項4】
請求項2で得られた原料合金粉末に対して、原子%でGe:20.2〜24.2%、Sb:20.2〜24.2%を含有し、残部がTeおよび不可避不純物からなる組成を有するように溶解し鋳造して得られた合金インゴットを粉砕して得られた熱処理することのない従来の原料合金粉末を15質量%以下添加し混合して得られた混合原料粉末を加圧焼結することを特徴とするパーティクル発生の少ない相変化膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項5】
請求項3で得られた原料合金粉末に対して、原子%でGe:20.2〜24.2%、Sb:20.2〜24.2%を含有し、残部がTeおよび不可避不純物からなる組成を有するように溶解し鋳造して得られた合金インゴットを粉砕して得られた従来の原料合金粉末を15質量%以下添加し混合して得られた混合原料粉末を加圧焼結することを特徴とするパーティクル発生の少ない相変化膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2007−45697(P2007−45697A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179153(P2006−179153)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】